(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018972
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】スピン波励起検出構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/82 20060101AFI20230202BHJP
H10N 50/01 20230101ALI20230202BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H01L29/82 Z
H01L43/12
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123389
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 聡明
(72)【発明者】
【氏名】井上 光輝
(72)【発明者】
【氏名】後藤 太一
【テーマコード(参考)】
5F092
【Fターム(参考)】
5F092AA04
5F092AA20
5F092AB10
5F092AC21
5F092AC25
5F092BD04
5F092BD20
5F092BD22
5F092BD23
5F092BD24
5F092CA40
(57)【要約】
【課題】 構造の強度が高いとともに、励起できるスピン波強度が高く、励起できるスピン波の周波数帯域幅が広いスピン波励起検出構造体を製造できる方法を提供する。
【解決手段】 スピン波を励起し、検出するスピン波励起検出構造体を製造する方法であって、ドナー基板上に絶縁磁性体膜を形成する工程と、前記ドナー基板上の前記絶縁磁性体膜の表面を、支持基板の表面と、導電体膜を介して貼り合わせることにより貼り合わせ基板を作製する工程と、前記貼り合わせ基板から、前記ドナー基板を除去する工程と、前記絶縁磁性体膜上に導電体線を形成する工程とを有し、これにより、前記支持基板と、該支持基板上に設けられた前記導電体膜と、該導電体膜上に設けられた前記絶縁磁性体膜と、該絶縁磁性体膜上に設けられた前記導電体線とを具備するスピン波励起検出構造体を製造するスピン波励起検出構造体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピン波を励起し、検出するスピン波励起検出構造体を製造する方法であって、
ドナー基板上に絶縁磁性体膜を形成する工程と、
前記ドナー基板上の前記絶縁磁性体膜の表面を、支持基板の表面と、導電体膜を介して貼り合わせることにより貼り合わせ基板を作製する工程と、
前記貼り合わせ基板から、前記ドナー基板を除去する工程と、
前記絶縁磁性体膜上に導電体線を形成する工程と
を有し、これにより、前記支持基板と、
該支持基板上に設けられた前記導電体膜と、
該導電体膜上に設けられた前記絶縁磁性体膜と、
該絶縁磁性体膜上に設けられた前記導電体線と
を具備するスピン波励起検出構造体を製造することを特徴とするスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項2】
前記導電体膜を前記支持基板上に形成し、前記支持基板上に形成した前記導電体膜を前記絶縁磁性体膜の表面と貼り合わせることを特徴とする請求項1に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項3】
前記導電体膜を前記絶縁磁性体膜上に形成し、前記絶縁磁性体膜上に形成した前記導電体膜を前記支持基板の表面と貼り合わせることを特徴とする請求項1に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項4】
前記導電体膜を前記支持基板上及び前記絶縁磁性体膜上の両方に形成し、前記支持基板上に形成した第1の導電体膜と、前記絶縁磁性体膜上に形成した第2の導電体膜とを貼り合わせることを特徴とする請求項1に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁磁性体膜を磁性ガーネットからなるものとすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁磁性体膜をイットリウム鉄ガーネットからなるものとすることを特徴とする請求項5に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項7】
前記ドナー基板を常磁性ガーネットからなる基板とすることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項8】
前記貼り合わせ基板から前記ドナー基板を除去する工程を、
研削及び研磨によって行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁磁性体膜を前記ドナー基板上に形成した後に、前記絶縁磁性体膜にイオン注入を行ってイオン注入面を形成する工程をさらに有し、
前記貼り合わせ基板から前記ドナー基板を除去する工程を、前記貼り合わせ基板を作製した後、前記イオン注入面で該貼り合わせ基板を分割することによって行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項10】
前記導電体膜及び導電体線を銅、アルミニウム、金、銀、プラチナ、鉄、透明導電体、超伝導体、グラフェン、導電性のある磁性体の少なくともいずれか一種を含んでなるものとすることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【請求項11】
前記支持基板を、シリコン基板、誘電体基板、導電性基板、絶縁性基板、磁性基板、非磁性基板、木材基板、石材基板の少なくともいずれか一種であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のスピン波励起検出構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピン波励起検出構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のインターネット等で扱われる情報量の爆発的な増大に伴い、CPUの高速化、RF(高周波)・光通信による中・長距離通信の高速化、データストレージ量増大、および各部品の小型化が急速に発展しているが、処理速度向上のボトルネックとなっているのが、(1)微細化による性能向上が物理限界に近づいたことによる発熱問題、(2)CPU―メモリ間でのデータ通信速度(Latency)の発達スピードの鈍化である。上記問題(1)に対しては、低消費電力キャリアへの代替が叫ばれているが、上記問題(2)も近年の周辺技術の発展に伴い、顕著化しつつある。
【0003】
例えば、人間と同程度の感覚を検知し得るセンサ群(いわゆる人工皮膚)においては、これまでの電子デバイスによるアクセスを可能にする場合、トランジスタの数は膨大となり、制御部は大型化し、同時に通信遅延を招来させる。また、医療分野やエンターテイメント分野における高解像度の三次元ディスプレイについて、視野角を拡大(45度程度に確保)させることによって複数人が同時に観ることができるものの、これを電子デバイスによって構成する場合には、やはりトランジスタの数が膨大なものとなる。そのため、通信遅延や配線での発熱が無視できず、配線の焼き切れや、発熱による不安定動作が懸念される。
【0004】
このように、大量素子が必須となる場面が増え、集積度が急速に増加したことで、速度と小型化の両面でCMOSを使ったシステムが、アプリケーション全体のボトルネックとなっている。
【0005】
このような従来のCMOSを使ったシステムの問題について、スピン波を用いて解決しようとする技術がある。
【0006】
スピン波(すぴんは)とは、磁性体の中の磁化(スピン)が作る位相波である。これは、静磁波(せいじは)とも言う。磁性体の中には、
図6のようにスピンが沢山入っている。このスピンが回転するタイミング(位相)が揃っている面が波面をつくる。この波面が伝わると情報を伝えられる。これがスピン波であり、電荷は移動すること無く、情報を伝達できる。スピン波は、物質の磁性のみが関係する現象であり、電気的な特性に関係しない。すなわち、導電体であっても、絶縁体であっても、磁性体であれば、伝わる波である。このことから、絶縁体を使えば、電気は流れないが、スピン波は流れる配線を作ることできる。また、このスピン波はGHz(ギガヘルツ)帯域の波であることから情報処理に使えるくらい速い。
【0007】
このように、スピン波は、電荷移動を不要とする情報伝達方法であることから、次世代の超低消費電力情報処理デバイスになり得ると着目されている。XNOR回路[非特許文献1参照]、AND回路、OR回路[非特許文献2参照]などの基本的なロジック回路が既に実証された研究段階である。基本的な素子が実証されたことでより複雑で実用的な回路やアプリケーションが提案・実証・特許化されている状況にある。最近は、このスピン波を使うとコンパクトなアドレスデコーダーが作製できることを計算で示した研究も開示されている(特許文献1参照)。また、機能の発展の他に、サイズの小型化も進んでいく。マイクロメートル、ナノスケールへの小型化が進んでいくと考えられる。
【0008】
スピン波を作り出す方法は、いくつかあるが、現在は、電流を使ってスピン波を作り出す手法が主流である。
【0009】
特許文献2には、コプレーナウェブガイド型(一層で完結するタイプ)のスピン波励起構造体が記載されている。これは、シグナルレベルの銅線と、グランドレベルの銅線を、一層で作るタイプのスピン波励起構造体(アンテナ)である。特許文献2に記載されているような構造により、高周波電気信号を入力できる。この構造は、上記のように、コプレーナウェブガイド構造と呼ばれており、広く知られた構造である。アンテナ部を一層で完結して作製でき、かつ、ナノメートルスケールまで、小さく出来るため、広く使われている。しかし、発生できるスピン波(静磁波)の周波数帯域幅が狭いという問題があった。
【0010】
特許文献3には、マイクロストリップライン型のスピン波励起構造体が記載されている。マイクロストリップラインとは、一本の電流が流れる銅線(シグナルレベル)を、スピン波が流れる媒体の上に配置し、グランドレベルを、スピン波が流れる媒体(特許文献3では、YIG(イットリウム鉄ガーネット)が例示されている。)の下に設ける構造体をいう。
【0011】
特許文献3に開示されたマイクロストリップライン型の構造は、発生できるスピン波の帯域が広いという利点を持つ。一方で、シグナルレベルとグランドレベルがYIGをまたぐ多段構造であるため、集積化はしづらい。
【0012】
小型化・集積化が進み、マイクロストリップラインを細くしていくと、シグナルレベルとグランドレベルの間の距離(=YIGの厚さ)はそのままであるため、高周波回転磁界が、うまくスピン波が流れる媒体の中に、つくることができなくなり、スピン波の強度が小さくなる。シグナルレベルとグランドレベルは近く、その間にあるYIGが多いほど、励起できるスピン波強度が強くなる。
【0013】
マイクロストリップラインを細くしていったときも、スピン波強度を保つ方策として、同時にYIGを薄くしていくことが考えられる。しかし、厚さが1マイクロメートル以下になると、YIGは、自立することが出来ない(割れたりする)。そのため、YIGは厚さが100マイクロメートル級の基板上にある状態で、ハンドリングされるのが一般的であり、構造検討もその範囲で行なわれる。
【0014】
具体的には、
図5(a)に示したマイクロストリップライン(Microstrip line)という導電体(銅線が多い)が使われている。テフロン(登録商標)基板(Teflon substrate)の下側には、テフロン(登録商標)基板一面に銅が成膜されている。銅の膜の厚さは10μm程度である。テフロン(登録商標)基板の上の、銅線の幅は10μm程度であり、厚さも10μm程度である。このラインに電気を流すと、この銅線の周りに、GHzくらいの速度で回転する回転磁界が発生する。この回転磁界が発生している部分に、直流磁界を印加した状態で、磁性絶縁体(
図5(a)ではYIGという名前の材料)を置くと、回転磁界によって、スピン波が励起される。この結果、片一方のマイクロストリップライン(インプットマイクロストリップライン、Input microstrip line)から、もう片一方のマイクロストリップライン(アウトプットマイクロストリップライン、Output microstrip line)へとスピン波が伝えられる。アウトプットマイクロストリップラインの地点では、逆に、スピン波が作る回転磁界が、マイクロストリップラインの中に電流を作り出す。すなわち、電気を流してスピン波を励起し、スピン波伝搬が生じて、この伝搬の最中に演算を行ない、演算結果を伝搬し、スピン波から電流への変換をして、電気信号として検出する。このようにすることで、
図5(b)の「磁界あり」の線に示したようなスピン波伝搬スペクトルを得ることができる。
図5(b)の「YIGなし」は
図5(a)の構造においてYIGがない場合のスペクトルを示しており、
図5(b)の「磁界なし」は
図5(a)の構造において直流磁界を印加しない場合のスペクトルを示す。なお、
図5(a)を参照すると、インプットマイクロストリップラインの部分がスピン波励起構造体であり、アウトプットマイクロストリップラインの部分がスピン波検出構造体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2017-162937号公報
【特許文献2】特表2006-504345号公報
【特許文献3】特開平1-91514号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Taichi Goto, Takuya Yoshimoto, Bungo Iwamoto, Kei Shimada, Caroline A. Ross, Koji Sekiguchi, Alexander B. Granovsky, Yuichi Nakamura, Hironaga Uchida and Mitsuteru Inoue, “Three port logic gate using forward volume spin wave interference in a thin yttrium iron garnet film”, Scientific Reports, 9, 16472 (2019/11/11).
【非特許文献2】Naoki Kanazawa, Taichi Goto, Koji Sekiguchi, Alexander B. Granovsky, Caroline A. Ross, Hiroyuki Takagi, Yuichi Nakamura, Hironaga Uchida and Mitsuteru Inoue, “The role of Snell’s law for a magnonic majority gate”, Scientific Reports, 7, 7898 (2017/08/11).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記したような新しい情報処理デバイスとして着目されるスピン波デバイスにも課題がある。これは、スピン波の強度が小さい点である。
【0018】
現在使用されている電気利用のスピン波励起構造(別名、トランスデューサー、あるいは、アンテナ)(これは、上記のようにスピン波検出構造にもなる)は、断面図を書くと、
図4のようになる。従来のスピン波励起検出構造体200は、誘電体基板22の下に銅膜24を有しており、YIG膜26はガドリニウムガリウムガーネット基板25とともに、銅線28に載せられているという構造である。これは、小型化・集積化に向かない。単純にスケールダウンする方法で小型化すると、励起効率が極めて低くなり、バンド幅が極めて狭くなるためである。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、構造の強度が高いとともに、励起できるスピン波強度が高く、励起できるスピン波の周波数帯域幅が広いスピン波励起検出構造体を製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明では、スピン波を励起し、検出するスピン波励起検出構造体を製造する方法であって、ドナー基板上に絶縁磁性体膜を形成する工程と、前記ドナー基板上の前記絶縁磁性体膜の表面を、支持基板の表面と、導電体膜を介して貼り合わせることにより貼り合わせ基板を作製する工程と、前記貼り合わせ基板から、前記ドナー基板を除去する工程と、前記絶縁磁性体膜上に導電体線を形成する工程とを有し、これにより、前記支持基板と、該支持基板上に設けられた前記導電体膜と、該導電体膜上に設けられた前記絶縁磁性体膜と、該絶縁磁性体膜上に設けられた前記導電体線とを具備するスピン波励起検出構造体を製造することを特徴とするスピン波励起検出構造体の製造方法を提供する。
【0021】
このようなスピン波励起検出構造体の製造方法では、簡便な貼り合わせの方法により絶縁磁性体膜の表面と支持基板の表面とを導電体膜を介して接合できる。またこのような製造方法により製造されたスピン波励起検出構造体は、構造の強度が高いとともに、励起できるスピン波強度が高い。また、励起できるスピン波の周波数帯域幅が広い。
【0022】
この場合、前記導電体膜を前記支持基板上に形成し、前記支持基板上に形成した前記導電体膜を前記絶縁磁性体膜の表面と貼り合わせることができる。
【0023】
また、前記導電体膜を前記絶縁磁性体膜上に形成し、前記絶縁磁性体膜上に形成した前記導電体膜を前記支持基板の表面と貼り合わせることもできる。
【0024】
また、前記導電体膜を前記支持基板上及び前記絶縁磁性体膜上の両方に形成し、前記支持基板上に形成した第1の導電体膜と、前記絶縁磁性体膜上に形成した第2の導電体膜とを貼り合わせることもできる。
【0025】
これらの貼り合わせ方法のいずれによっても、ドナー基板上の絶縁磁性体膜の表面と、支持基板の表面とを導電体膜を介して貼り合わせることを容易に行うことができる。
【0026】
ここで、前記絶縁磁性体膜を磁性ガーネットからなるものとすることが好ましい。さらに、前記絶縁磁性体膜をイットリウム鉄ガーネットからなるものとすることが好ましい。
【0027】
絶縁磁性体膜をこのような種類のものとすることにより、良好なスピン波を励起することができる。また、スピン波の検出も問題なく行うことができる。
【0028】
さらにこの場合、前記ドナー基板を常磁性ガーネットからなる基板とすることが好ましい。
【0029】
このように、ドナー基板を常磁性ガーネットからなる基板とし、該ドナー基板上に形成する絶縁磁性体膜を磁性ガーネットからなるものとすることにより、類似の構造を有するガーネット同士であるため、良好な構造を有するものとして絶縁磁性体である磁性ガーネット膜を形成することができる。
【0030】
また、本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法では、前記貼り合わせ基板から前記ドナー基板を除去する工程を、研削及び研磨によって行うことができる。
【0031】
また、本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法では、前記絶縁磁性体膜を前記ドナー基板上に形成した後に、前記絶縁磁性体膜にイオン注入を行ってイオン注入面を形成する工程をさらに有し、前記貼り合わせ基板から前記ドナー基板を除去する工程を、前記貼り合わせ基板を作製した後、前記イオン注入面で該貼り合わせ基板を分割することによって行うこともできる。
【0032】
貼り合わせ基板からのドナー基板の除去は、これらの方法を用いることができる。
【0033】
また、前記導電体膜及び導電体線を、銅、アルミニウム、金、銀、プラチナ、鉄、透明導電体、超伝導体、グラフェン、導電性のある磁性体の少なくともいずれか一種を含んでなるものとすることができる。
【0034】
本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法では、導電体の成分として銅の他、上記のような種類の導電体を用いることができる。
【0035】
また、前記支持基板を、シリコン基板、誘電体基板、導電性基板、絶縁性基板、磁性基板、非磁性基板、木材基板、石材基板の少なくともいずれか一種とすることができる。
【0036】
本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法では、支持基板としてシリコン基板の他、上記のような種類の基板を用いることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法は、簡便な貼り合わせの方法により絶縁磁性体膜の表面と支持基板の表面とを導電体膜を介して接合できる。またこのような製造方法により製造されたスピン波励起検出構造体は、構造の強度が高いとともに、励起できるスピン波強度が高い。また、励起できるスピン波の周波数帯域幅が広い。より詳細には、本発明の製造方法により製造されたスピン波励起検出構造体は、絶縁磁性体膜と支持基板が導電体膜を介しており、マイクロストリップラインのもつ、広い励起帯域幅の特徴をもちつつ、シグナルレベルとグランドレベルが近く、その間にスピン波が流れる領域である絶縁磁性体膜があるため、励起されるスピン波強度が高い。さらに、絶縁磁性体膜は、導電体膜を介して支持基板に接着されているため、構造の機械的強度が高く、ハンドリングも可能であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図2】本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法の別の一例を示すフロー図である。
【
図3】本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法で製造されるスピン波励起検出構造体の一例を示す概略断面図である。
【
図4】従来のスピン波励起検出構造体の構造の一例を示す概略断面図である。
【
図5】(a)は従来のマイクロストリップ型のスピン波励起検出構造体を示す斜視図であり、(b)は、そのスピン波伝搬スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
上記のように、
図4に示した、現在使用されている電気利用のスピン波励起構造(別名、トランスデューサー、あるいは、アンテナ)は、小型化・集積化に向かない。単純にスケールダウンする方法で小型化すると、励起効率が極めて低くなり、バンド幅が極めて狭くなるためである。具体的には、小型化と集積化をするために、上部の銅線28を薄く、細くすると、スピン波の強度が弱まる。これは、上部の銅線28と下部の銅膜24が遠すぎるためである。したがって、誘電体基板22の部分を薄くすると言う方策が浮かぶが、そうすると上部のYIG膜26に回転磁界が生じない。そのため、YIG膜26は上部の銅線28と下部の銅膜24の間に位置する必要がある。さらに、余りに薄いと試料はバラバラになってしまうため、基板(誘電体基板22)は必要である。
【0041】
本発明者らは、
図4のような従来のスピン波励起検出構造体200の問題点に基づき、
図3のような構造が有用であることを発案し、計算によって、これが有用であることを発見した。このことから
図3に示したスピン波励起検出構造体100の構造を提案する。
【0042】
図3に本発明の製造方法で製造するスピン波励起検出構造体100の一例を示した。スピン波励起検出構造体100は、スピン波を励起することができるものである。また、スピン波を検出することができるものでもある。スピン波励起検出構造体100は、支持基板12と、該支持基板12上に設けられた導電体膜14と、該導電体膜14上に設けられた絶縁磁性体膜16と、該絶縁磁性体膜16上に設けられた導電体線18とを具備する。すなわち、支持基板12、導電体膜14、絶縁磁性体膜16、導電体線18はこの順序で積層されている。
【0043】
スピン波励起検出構造体100は、上部の導電体線18を電気的なシグナルレベル、下部の導電体膜14を電気的なグランドレベルとし、2つの間にギガヘルツ帯の高周波信号を流すことで、絶縁磁性体膜16にスピン波を励起する。
【0044】
図3のスピン波励起検出構造体100の製造はドナー基板上に絶縁磁性体膜を形成する工程と、前記ドナー基板上の前記絶縁磁性体膜の表面を、支持基板の表面と、導電体膜を介して貼り合わせることにより貼り合わせ基板を作製する工程と、前記貼り合わせ基板から、前記ドナー基板を除去する工程と、前記絶縁磁性体膜上に導電体線を形成する工程とを有する方法にて行う。
【0045】
図1に本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法の一例を示した。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0046】
本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法では、まず、
図1の工程S11に示したように、ドナー基板15上に絶縁磁性体膜16を形成する。
【0047】
ドナー基板15及び絶縁磁性体膜16は様々な材質を用いることができる。その中でもドナー基板15を常磁性ガーネットからなる基板とすることが好ましい。常磁性ガーネットとしては、例えば、ガドリニウムガリウムガーネットGd
3Ga
5O
12(GGG)などの常磁性ガーネット基板を用いることができる。絶縁磁性体膜16は、磁性ガーネットからなるものであることが好ましい。特に、絶縁磁性体膜16がイットリウム鉄ガーネット(YIG)からなるものであることが好ましい。なお、イットリウム鉄ガーネットは、Y
3Fe
5O
12を基本とし、Yの部分やFeの部分を他の元素で置換した材料とすることができる。絶縁磁性体膜16を磁性ガーネット、特にイットリウム鉄ガーネットとすることにより、
図3に示したスピン波励起検出構造体100は、良好なスピン波を励起することができる。また、スピン波の検出も問題なく行うことができる。
【0048】
ドナー基板上に絶縁磁性体膜を形成する工程は、液相エピタキシーによることが好ましい。例えば、ガドリニウムガリウムガーネットGd3Ga5O12(GGG)などの常磁性ガーネット基板上での液体エピタキシャル成長により作られる、イットリウム鉄ガーネットY3Fe5O12(YIG)の単結晶を絶縁磁性体膜16として形成することができる。
【0049】
ドナー基板15の厚さは特に限定されないが、100μm以上であることにより機械的強度を確保できる。この厚さは300μm以上であることがさらに好ましく、500μm以上であることが特に好ましい。
【0050】
ドナー基板15上に形成する絶縁磁性体膜16の厚さは、特に限定されない。後述のように、最終的にスピン波励起検出構造体100としたときに、絶縁磁性体膜16の厚さが10μm以下となる厚さとすることが好ましい。この段階でドナー基板15上に形成する絶縁磁性体膜16の厚さは、例えば経済性等を考慮して決めることができ、例えば200μm以下とすることができる。
【0051】
以上のようにドナー基板15上に絶縁磁性体膜16を形成した後、
図1の工程S12に示したように、ドナー基板15上の絶縁磁性体膜16の表面を、支持基板12の表面と、導電体膜14を介して貼り合わせることにより貼り合わせ基板を作製する。
【0052】
支持基板12としては、シリコン基板、誘電体基板、導電性基板、絶縁性基板、磁性基板、非磁性基板、木材基板、石材基板の少なくともいずれか一種とすることができる。このように、様々な支持基板を用いることができる。この中でもシリコン基板は安価で良質なものが得られ、支持基板12として好ましい。絶縁性基板としては、ガラス、石英、サファイア、窒化アルミニウム、アルミナ等が例示できる。非磁性基板としては、常磁性ガーネット基板も用いることができる。支持基板12の厚さは100μm以上500μm以下であることが好ましい。支持基板12の厚さが100μm以上であれば、製造するスピン波励起検出構造体100の機械的強度が高く、よりハンドリングしやすくなる。また、支持基板12の厚さは500μm以下であれば、製造するスピン波励起検出構造体100において十分な機械的強度を確保でき、十分である。
【0053】
支持基板12は貼り合わせの前に鏡面研磨しておくことが望ましい。また、ドナー基板15上に形成した絶縁磁性体膜16の表面も研磨により平坦化しておくことが好ましい。
【0054】
貼り合わせは種々の方法を用いることができる。例えば、導電体膜を支持基板12上のみに形成し、支持基板12上に形成した導電体膜を絶縁磁性体膜16の表面と貼り合わせることができる。また、導電体膜を絶縁磁性体膜16上のみに形成し、絶縁磁性体膜16上に形成した導電体膜を支持基板12の表面と貼り合わせることもできる。また、導電体膜を支持基板12上及び絶縁磁性体膜16上の両方に形成し、支持基板12上に形成した第1の導電体膜と、絶縁磁性体膜16上に形成した第2の導電体膜とを貼り合わせることとしてもよい。
【0055】
いずれの場合も導電体膜はスパッタリングなどにより形成することができる。貼り合わせは導電体膜の材質によっては室温での圧着のみにより接合を行うことができる。また、必要に応じて加熱を行ってもよい。また、接着剤を使用しても良い。
【0056】
次に、
図1の工程S13に示したように、貼り合わせ基板から、ドナー基板15を除去する。貼り合わせ基板からドナー基板15を除去することは、研削及び研磨によって行うことができる。ドナー基板15を除去した後、研削及び研磨等により、絶縁磁性体膜16の厚さは、10μm以下とすることが好ましい。この絶縁磁性体膜16の厚さは、5μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。このようにすることで、製造するスピン波励起検出構造体100において、絶縁磁性体膜16が10μm以下と薄いものとすることができる。
【0057】
その後、
図1の工程S14に示したように、絶縁磁性体膜16上に導電体線18を形成する。導電体線18の形成方法は特に限定されず、フォトリソグラフィーなどを適宜適用することができる。
【0058】
以上の工程S11~S14に沿ったスピン波励起検出構造体の製造方法により、
図3に示したようなスピン波励起検出構造体100を製造することができる。
【0059】
本発明においては、導電体膜14及び導電体線18を、銅、アルミニウム、金、銀、プラチナ、鉄、透明導電体、超伝導体、グラフェン、導電性のある磁性体の少なくともいずれか一種を含んでなるものとすることができる。この中でも特に銅が好ましい。また、導電体膜14及び導電体線18の材質としては、その他の導体を用いることもでき、例えば、カーボンナノチューブや有機導電性材料も用いることができる。また、導電体膜14及び導電体線18の材質は支持基板12や絶縁磁性体膜16よりも導電性が高いものであることが好ましい。導電体膜14及び導電体線18の成分は同じであっても異なっていても良い。
【0060】
このうち、導電体線18は、厚さが1μm以下であり、幅が5μm以下であることが好ましい。この厚さは0.5μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。また、この幅は2μm以下がさらに好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。また、導電体線18の厚さの下限は特に限定されないが、あまりに厚さが薄くなると、線が分離し切れて導電性が保てなくなるため0.01μm以上が好ましい。また、上部の導電体線18は1本でも十分である。ただし、2本以上あってもよい。
【0061】
また、導電体膜14の厚さが1μm以下であることが好ましい。この厚さは、0.5μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。また、導電体膜14の厚さの下限は特に限定されないが、あまりに厚さが薄くなると、膜が分離し切れて導電性が保てなくなるため0.01μm以上が好ましい。
【0062】
本発明の製造方法により製造するスピン波励起検出構造体100の構成要素の寸法は上記列挙したようなものであることが好ましく、スピン波励起検出構造体100を小型化することができる。
【0063】
また、本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法では、
図2のようにして工程S13の貼り合わせ基板からドナー基板を除去することを行うことができる。
【0064】
図2の態様では、工程S11は
図1の態様と同様に、絶縁磁性体膜16をドナー基板15上に形成する。その後、絶縁磁性体膜16にイオン注入を行ってイオン注入面(イオン注入層)17を形成する工程をさらに有する(
図2の「追加工程」)。イオン注入するイオンとしては、水素イオンやヘリウムイオンを用いることができる。
【0065】
その後、貼り合わせ工程であるS12は
図1の態様と同様に行う。次の工程S13では、貼り合わせ基板からドナー基板15を除去する工程を、イオン注入面17で貼り合わせ基板を分割することによって行う。これにより、貼り合わせ基板からドナー基板15を除去することができる。また、ドナー基板15上に形成されている絶縁磁性体膜16の一部もドナー基板15上に残る。この分割はイオン注入面17に機械的衝撃を加えることによって行うことができる。また、同時に加熱してもよい。
【0066】
分割(剥離)の後、絶縁磁性体膜16の表面の分割面で研磨等を行ってもよい。
【0067】
ドナー基板15の除去と同時に、前述のイオン注入工程においてイオン注入の深さを調節することにより、絶縁磁性体膜16の厚さを調整することができる。この絶縁磁性体膜16の厚さは、5μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。このようにすることで、製造するスピン波励起検出構造体100において、絶縁磁性体膜16が10μm以下と薄いものとすることができる。
【0068】
この手法では剥離させたドナー基板15上の例えば絶縁磁性体膜を再度鏡面加工し、イオン注入することで再度同様の工程へ投入することもできる。
【0069】
貼り合わせ基板の分割後は、適宜表面研磨を行うことができる。その後、
図1と同様に、絶縁磁性体膜16上に導電体線18を形成する。
【0070】
以上のような、本発明の製造方法により製造するスピン波励起検出構造体は、次世代のCPUを作ると言われるスピン波コンピュータの中で、スピン波の励起構造(電気とスピン波の変換素子)として、必須コンポーネントになると期待される。
【0071】
スピン波は、電子をその場に固定した状態で、伝搬する位相波であるため、電荷移動によって生じるはずだったジュール熱損という損失が原理的にゼロである。しかも、特にYIGは、磁性酸化物材料であるため、絶縁体で、渦電流の発生もない。このように、定常電流と渦電流の両要素で、損失が原理的にゼロであるスピン波は、CMOSで実現されているような、配線、NANDやNORなどの論理素子等を全て代替出来る可能性を秘めている。即ち、ナノテクノロジーと組み合わせることで、熱発生のない、冷たいコンピュータを実現できると期待される。
【0072】
本発明のスピン波励起検出構造体の関連分野への波及効果としては、以下のものが挙げられる。
【0073】
(1)コンピュータ
現在コンピュータを使用している全ての分野、CPU等の演算素子を搭載するデバイス分野への波及効果がある。その中でも特に、ミリメートル、マイクロメートルスケールでの、コンピュータが必要な場面で有用である。例えば、携帯機器、ウェアラブルデバイス、家電類に搭載されつつあるセンサー、マイクロチップ、が挙げられる。
【0074】
(2)高周波、無線、通信分野
スピン波は、GHzオーダで応答する波である点はマイクロ波と同じであるが、磁性体中を伝搬する波に変換することで、波長が100倍以上短縮される。これは、デバイス(素子)のサイズで考えると、チップ全体が、100倍小さくできることを表す。従来、アナログ高周波機器の小型化は、それほど進んでおらず、携帯するには程遠い大きさである。そのため、スピン波位相変調素子を含む、スピン波デバイスの実現によって、高周波機器の小型化が期待される。
【実施例0075】
以下、本発明の実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
図1に示した本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法に沿ってスピン波励起検出構造体を製造した。
【0077】
ドナー基板15として、直径3インチ(7.62センチメートル)のGGG(Gd3Ga5O12)基板を準備した。このドナー基板15上に、LPE法(液相エピタキシャル法)にて、絶縁磁性体膜16として、磁性ガーネット膜である単結晶((BiYLu)3(FeM)5O12)を100μm成長させた(工程S11)。ここで、Mはガーネット構造体中のFeを置換しうる元素で、Ga、Al、Sc、Inがあげられるのであるが、ここでは、具体的にはGaとした。その際の単結晶成膜方法に関しては、特開平03-223199号公報の方法に準じた。その後、絶縁磁性体膜16の表面を鏡面研磨した。鏡面研磨した後にスパッタ法にて、導電体膜14として、銅(Cu)を100nm成膜した。
【0078】
一方、支持基板12(キャリア基板)として、鏡面研磨を施した直径3インチ(7.62センチメートル)のSi基板を準備した。この支持基板12に、導電体膜14として、スパッタ法にて銅(Cu)を100nm成膜した。
【0079】
その後、真空下とした装置内で両基板の銅膜形成面を重ね合わせ、加圧・加熱することで支持基板12とドナー基板15、及び絶縁磁性体膜16、導電体膜14が一体化した構造体(貼り合わせ基板)を得た(工程S12)。
【0080】
装置内から取り出した、貼り合わせ基板のドナー基板15(GGG基板)側を研削し、その後、研磨加工を施し絶縁磁性体膜16である磁性ガーネット膜を厚さ1~10μmになるようにした(工程S13)。
【0081】
その後、絶縁磁性体膜16上に導電体線18として銅線を形成した(工程S14)。これにより、スピン波励起検出構造体100を得た。
【0082】
[実施例2]
図2に示した本発明のスピン波励起検出構造体の製造方法に沿ってスピン波励起検出構造体を製造した。
【0083】
ドナー基板15として、直径3インチ(7.62センチメートル)のGGG(Gd3Ga5O12)基板を準備した。このドナー基板15上に、LPE法(液相エピタキシャル法)にて、絶縁磁性体膜16として、磁性ガーネット膜である単結晶((BiYLu)3(FeM)5O12)を110μm成長させた(工程S11)。ここで、MはGaとした。その際の単結晶成膜方法に関しては、特開平03-223199号公報の方法に準じた。その後、絶縁磁性体膜16の表面を鏡面研磨した。鏡面研磨した表面に、イオン注入を行った。イオン種は水素イオンとした。その際の手法は特開2020-043591号公報に開示されたものに準じた。その後、鏡面研磨した表面(イオン注入した表面)に対して、スパッタ法にて、導電体膜14として、銅(Cu)を100nm成膜した。
【0084】
一方、支持基板12(キャリア基板)として、鏡面研磨を施した直径3インチ(7.62センチメートル)Si基板表面を準備した。この支持基板12に、導電体膜14として、スパッタ法にて銅(Cu)を100nm成膜した。
【0085】
その後、真空下とした装置内で両基板の銅膜形成面を重ね合わせ、加圧・加熱することで支持基板12とドナー基板15、及び絶縁磁性体膜16、導電体膜14が一体化した構造体(貼り合わせ基板)を得た(工程S12)。
【0086】
一体構造の貼り合わせ基板を加熱し、側面から機械的衝撃を加えることで、イオン注入面において基板を分割し、剥離させた(工程S13)。その後、絶縁磁性体膜16の表面を鏡面加工し0.3~2μmの磁性ガーネット膜になる構成とした。
【0087】
その後、絶縁磁性体膜16上に導電体線18として銅線を形成した(工程S14)。これにより、スピン波励起検出構造体100を得た。
【0088】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。