(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019210
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230202BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20230202BHJP
B41J 2/045 20060101ALI20230202BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/015 101
B41J2/045
B41J2/01 403
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123743
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小山内 進一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB35
2C056EC38
2C056EC53
2C056FA04
2C056FA13
2C057AF72
2C057AG12
2C057AL21
2C057AM22
2C057AM31
2C057AN05
(57)【要約】
【課題】ヘッドからの液体吐出を安定化させること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体を吐出するヘッドと、前記液体を吐出させる吐出駆動波形のデータと前記液体を吐出させずに前記ヘッド内の前記液体を振動させる振動駆動波形のデータとを含む駆動波形のデータを前記ヘッドに出力する出力部と、前記ヘッドに前記駆動波形が出力される第1周波数に応じて、前記ヘッドに前記振動駆動波形が出力される第2周波数を前記第1周波数に対して異ならせる変更部と、を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
前記液体を吐出させる吐出駆動波形のデータと、前記液体を吐出させずに前記ヘッド内の前記液体を振動させる振動駆動波形のデータと、を含む駆動波形のデータを前記ヘッドに出力する出力部と、
前記ヘッドに前記駆動波形が出力される第1周波数に応じて、前記ヘッドに前記振動駆動波形が出力される第2周波数を前記第1周波数に対して異ならせる変更部と、を有する液体吐出装置。
【請求項2】
前記変更部は、前記第1周波数が所定の周波数範囲における上限周波数よりも高い場合には、前記第2周波数を前記第1周波数よりも低くし、前記第1周波数が前記周波数範囲における下限周波数よりも低い場合には、前記第2周波数を前記第1周波数よりも高くする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記ヘッドは、前記液体を吐出することにより、記録媒体に前記液体を付与し、
前記周波数範囲は、前記液体の種類、前記記録媒体の種類、又は前記記録媒体に付与された前記液体を加熱する方式、の少なくとも1つに応じて予め定められている請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記駆動波形のデータから、前記吐出駆動波形のデータ又は前記振動駆動波形のデータの少なくとも一方を選択する選択部を有し、
前記変更部は、前記第1周波数が所定の周波数範囲における上限周波数よりも高い場合には、前記振動駆動波形が出力される回数が間引かれるように変更する請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記ヘッド内の前記液体を振動させる所定のトリガー信号よりも周波数が高いラッチ信号を発するラッチ発生部を有し、
前記変更部は、前記第1周波数が所定の周波数範囲における下限周波数よりも低い場合には、前記ヘッドに、前記ラッチ信号に応じて前記ヘッド内の前記液体を振動させるように変更する請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
液体吐出装置による液体吐出方法であって、
ヘッドにより、液体を吐出し、
出力部により、前記液体を吐出させる吐出駆動波形のデータと、前記液体を吐出させずに前記ヘッド内の前記液体を振動させる振動駆動波形のデータと、を含む駆動波形のデータを前記ヘッドに出力し、
変更部により、前記ヘッドに前記駆動波形が出力される第1周波数に応じて、前記ヘッドに前記振動駆動波形が出力される第2周波数を前記第1周波数に対して異ならせる液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出するヘッドを有する液体吐出装置において、吐出を行わない期間にヘッド内の液体を振動させるものが知られている。
【0003】
このような液体吐出装置として、ヘッドからの液体吐出を安定化させるために、吐出を行わない期間に、ヘッドに充填されている液体の振動のタイミングを制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の構成では、ヘッドに液体を吐出させる駆動波形がヘッドに出力される第1周波数と、ヘッドに液体を吐出させずにヘッド内の液体を振動させる振動駆動波形がヘッドに出力される第2周波数と、が等しい。そのため、液体の振動を適切な周波数により制御できず、ヘッドからの液体吐出を安定化できない懸念がある。
【0005】
本発明は、ヘッドからの液体吐出を安定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体を吐出するヘッドと、前記液体を吐出させる吐出駆動波形のデータと前記液体を吐出させずに前記ヘッド内の前記液体を振動させる振動駆動波形のデータとを含む駆動波形のデータを前記ヘッドに出力する出力部と、前記ヘッドに前記駆動波形が出力される第1周波数に応じて、前記ヘッドに前記振動駆動波形が出力される第2周波数を前記第1周波数に対して異ならせる変更部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘッドからの液体吐出を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る印刷システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る画像形成部の構成例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るヘッドにおけるノズルを示す拡大図である。
【
図4】実施形態に係るヘッドのノズル配列方向に沿った断面図である。
【
図5】実施形態に係るヘッドのノズル配列方向の直交方向に沿った断面図である。
【
図6】実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成例のブロック図である。
【
図7】実施形態に係るヘッドドライバの構成例を示すブロック図である。
【
図8】実施形態に係る画像処理部の機能構成例のブロック図である。
【
図9】ロール紙の搬送速度の変化を例示する図である。
【
図10】ヘッドにおける振動駆動を説明する図である。
【
図11】ヘッドの駆動波形データを説明する図である。
【
図12】実施形態に係る画像処理部による処理例のフローチャートである。
【
図13】変更部によるマスク制御信号データの変更例を説明する図である。
【
図14】第2周波数変更前の振動駆動波形の第1例を示す図である。
【
図15】第2周波数変更後の振動駆動波形の第1例を示す図である。
【
図16】第2周波数変更前の振動駆動波形の第2例を示す図である。
【
図17】第2周波数変更後の振動駆動波形の第2例を示す図である。
【
図18】実施形態に係る第2周波数の遷移例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
<印刷システム1の全体構成例>
図1は、第1実施形態に係る印刷システム1の全体構成の一例を示す図である。印刷システム1は、液体吐出装置の一例であるインクジェット方式の画像形成装置2を備えている。画像形成装置2が吐出するインクは、液体の一例である。
【0011】
図1に示すように、印刷システム1は、ロール紙Mdを搬入する搬入部10と、搬入されたロール紙Mdを前処理する前処理部20と、前処理されたロール紙Mdを加熱することにより乾燥させる乾燥部30と、を有する。また、印刷システム1は、ロール紙Mdの表面に画像を形成する画像形成部40と、画像が形成されたロール紙Mdを後処理する後処理部50と、後処理されたロール紙Mdを搬出する搬出部60と、維持回復部90A及び90Bと、を有する。
【0012】
ロール紙Mdは記録媒体の一例である。ロール紙Mdは、例えば切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連帳紙、またはロール状に巻かれた連続帳票等の連続紙である。ロール紙におけるページは、例えば所定間隔のミシン目で挟まれる領域である。
【0013】
印刷システム1は、搬入部10によってロール紙Mdを搬入し、前処理部20及び乾燥部30によってロール紙Mdの表面を前処理すると共に乾燥させる。
【0014】
印刷システム1は、前処理され、乾燥された後のロール紙Mdの表面に、画像形成装置2における画像形成部40によって画像を形成する。印刷システム1は、画像が形成されたロール紙Mdに、後処理部50によって後処理する。その後、印刷システム1は、搬出部60によってロール紙Mdを巻き取った後、搬出する。
【0015】
搬入部10は、ロール紙Mdを前処理部20などに搬送する手段である。搬入部10は、給紙部11と、複数の搬送ローラ12と、を有する。搬入部10は、搬送ローラ12等を用いて、給紙部11の給紙ロールに巻き付けて保持されたロール紙Mdを搬入して移動し、前処理部20(プラテン)等に搬送する。
【0016】
前処理部20は、画像が形成される前のロール紙Mdを処理する手段である。前処理部20は、搬入部10によって搬入されたロール紙Mdの表面を、前処理液で前処理する。前処理は、例えばロール紙Md表面に、インクを凝集させる機能を有する前処理液を均一に塗布する処理である。前処理液は、水溶性脂肪族系有機酸を含有した処理液等である。水溶性脂肪族系有機酸を含有した処理液とは、水分散性着色剤を凝集させる性質を有する処理液である。また、凝集するとは、水分散性着色剤粒子同士が吸着集合することをいう。
【0017】
前処理部20は、前処理液に水溶性脂肪族系有機酸等のイオン性物質を加えることによって、水分散性着色剤の表面にイオンを吸着させることができる。これにより、前処理部20は、水分散性着色剤の表面電荷を中和することができる。また、前処理部20は、分子間力による凝集作用を増強し、水分散性着色剤を更に凝集させることができる。
【0018】
前処理部20は、前処理液の塗布方法として、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法等を適用できる。
【0019】
乾燥部30は、ロール紙Mdを加熱などにより乾燥する手段である。乾燥部30は、前処理部20によって前処理されたロール紙Mdを乾燥させる前処理用乾燥部31と、後処理部50によって後処理されたロール紙Mdを乾燥させる後処理用乾燥部32と、を含む。
【0020】
前処理用乾燥部31は、例えばヒートローラを有する。前処理用乾燥部31は、ヒートローラを例えば50~100℃に加熱し、前処理液を塗布されたロール紙Mdの表面をヒートローラに接触させる。前処理用乾燥部31は、前処理液を塗布されたロール紙Mdの表面をヒートローラにより加熱し、前処理液の水分を蒸発させ、ロール紙Mdを乾燥させることができる。後処理用乾燥部32は、前処理用乾燥部31と同様の構成である。
【0021】
画像形成部40は、ロール紙Mdに画像を形成する手段である。画像形成部40は、乾燥部30によって乾燥されたロール紙Md上にインクを吐出することによって、ロール紙Mdの表面に画像を形成する。
【0022】
後処理部50は、画像が形成された後のロール紙Mdを処理する手段である。後処理部50は、画像形成部40によって画像を形成されたロール紙Mdの表面に後処理液を塗布することにより後処理する。後処理は、ロール紙Md上に斑点形状に後処理液を吐出して塗布する処理である。
【0023】
画像形成部40及び後処理部50の近傍には、維持回復部90A及び90Bが設けられている。維持回復部90A及び90Bは、画像形成部40及び後処理部50に含まれている各ヘッドのノズル及びノズル面の維持回復動作であるクリーニング又はメンテナンス等を行う。
【0024】
画像形成部40と、後処理部50と、維持回復部90A及び90Bは、筐体74の上に配置されている。筐体74は搬送ユニット80を備えている。
【0025】
<画像形成部40の構成例>
図2は、画像形成部40の構成の一例を示す図であり、ロール紙Mdに向き合う画像形成部40をロール紙Md側から視た図である。画像形成部40は、フルライン型のヘッドユニットである。
【0026】
画像形成部40は、ロール紙Mdの搬送方向Xmの上流からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順で各色のヘッドモジュール40K、40Ca、40M及び40Yを備えている。但し、画像形成部40における各ヘッドの配置順序は、上記の順序に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、色の組み合わせは、上記の4色に限られるものではなく、ブラック(K)1色でもよいし、グリーン(G)、レッド(R)及びライトシアン(LC)の3色等であってもよい。
【0027】
ブラック(K)のヘッドモジュール40Kは、ヘッド40K-1、40K-2、40K-3及び40K-4の4つのヘッドをロール紙Mdの搬送方向Xmと略直交する幅方向に沿って千鳥状に配置している。画像形成部40は、幅方向全域に亘って4つのヘッドを配置することにより、幅方向にヘッドを移動させることなくロール紙Mdの幅方向全域に画像を形成できる。また画像形成部40は、4つのヘッドを千鳥状に配置することにより、ロール紙Mdの幅方向全域に欠落なく画像を形成することができる。なお、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のヘッドは同様であるため、以下、ブラック(K)のヘッド40K-1を例に説明する。
【0028】
後処理部50も、ヘッドモジュール50Hで、4つの処理液吐出ヘッドを千鳥状に配置しているため、幅方向全域に亘って後処理液を吐出させることができる。なお、
図2では、複数のヘッドを千鳥状に配置した構成を例示するが、この構成に限定されるものではない。画像形成部40は、直線状に配置された複数のヘッドや、幅方向に沿って長尺の1つのヘッドを用いて幅方向全域にインクを吐出してもよい。
【0029】
図3は、ヘッド40K-1におけるノズルを説明する図である。ヘッド40K-1は、複数のノズル40Nを有する。ノズル40Nは、搬送方向Xmと直交する幅方向に沿って配置され、ノズル列を構成している。なお、ヘッド40K-1は、搬送方向Xmに沿って並ぶ複数のノズル列を備えてもよい。
【0030】
<ヘッド40K-1の内部構造例>
図4及び
図5を参照して、ヘッド40K-1の内部構造について説明する。
図4は、ヘッド40K-1のノズル配列方向に沿った断面図である。
図5は、ヘッド40K-1のノズル配列方向に直交する方向に沿った断面図である。本実施形態では、ヘッド40K-1は、ノズル配列方向が搬送方向Xmに直交するように設置される。画像形成部40に含まれているヘッド40K-1以外の各ヘッドも同様である。
【0031】
図4において、ヘッド40K-1は、吐出するインクの通路を形成する流路板41と、流路板41の下面(ヘッド40K-1の内側方向)に接合された振動板42と、流路板41の上面(ヘッド40K-1の外側方向)に接合されたノズル板43と、振動板42の周縁部を保持するフレーム部材44と、を備える。またヘッド40K-1は、振動板42を変形させるための圧力発生部45を有する。
【0032】
ヘッド40K-1は、流路板41と、振動板42と、ノズル板43とを積層することによって、ノズル40Nに連通する流路であるノズル連通路40R及び液室40Fを形成している。またヘッド40K-1は、フレーム部材44を更に積層することによって、液室40Fにインクを供給するためのインク流入口40S及びインクを液室40Fに供給する共通液室40C等を形成している。
【0033】
フレーム部材44には、圧力発生部45を収納する収容部、共通液室40Cとなる凹部及び共通液室40Cにヘッド40K-1外部からインクを供給するためのインク供給口40INが形成されている。
【0034】
圧力発生部45は、電気機械変換素子である圧力発生素子45P(圧電素子)と、圧力発生素子45Pを接合固定するベース基板45Bと、隣り合う圧力発生素子45Pの間隙に配置された支柱部とを備える圧電アクチュエータである。また圧力発生部45は、圧力発生素子45Pを駆動回路に接続するためのFPCケーブル45C等を備えている。
【0035】
圧力発生素子45Pは、
図5に示すように、圧電材料45Ppと内部電極45Peとを交互に積層した積層型圧電素子(PZT)である。内部電極45Peは、複数の個別電極45Peiと複数の共通電極45Pecとを有する。内部電極45Peは、圧電材料45Ppの端面に交互に個別電極45Pei又は共通電極45Pecを接続している。
【0036】
ここで、ヘッド40K-1がノズル40Nからインクを吐出する動作(引き-押し打ち動作)を説明する。
【0037】
まず、ヘッド40K-1は、圧力発生素子45Pに印加されている電圧が基準電位から下げられることにより、圧力発生素子45Pを積層方向に沿って縮小させる。またヘッド40K-1は、圧力発生素子45Pの縮小によって振動板42を撓み変形させる。このときヘッド40K-1は、振動板42の撓み変形によって液室40Fの容積を拡大させる。この動作により、ヘッド40K-1は、共通液室40Cから液室40F内にインクを流入させる。
【0038】
次に、ヘッド40K-1は、圧力発生素子45Pに印加されている電圧が上げられることにより、圧力発生素子45Pを積層方向に沿って伸長させる。またヘッド40K-1は、圧力発生素子45Pの伸長によって、振動板42をノズル40N方向に変形させる。このときヘッド40K-1は、振動板42の変形によって、液室40Fの容積を縮小させる。この動作により、ヘッド40K-1は、液室40F内のインクに圧力を付与し、ノズル40Nからインクを吐出(噴射)する。
【0039】
その後、ヘッド40K-1は、圧力発生素子45Pに印加されている電圧を基準電位に戻し、振動板42を初期位置に復元させる。このときヘッド40K-1は、液室40Fの膨張によって液室40F内を減圧し、共通液室40C内から液室40F内にインクを引き込んで補充する。次いで、ヘッド40K-1は、ノズル40Nのメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次のインクの吐出のための動作に移行し、上記動作を繰り返す。
【0040】
このように、ヘッド40K-1は、圧力発生部45を用いて、振動板42を変形させることにより、液室40Fの容積を変化させ、液室40F内のインクに作用する圧力を変化させる。その結果、ヘッド40K-1は、ノズル40Nからインクを吐出させることができる。
【0041】
なお、ヘッド40K-1の駆動方法は、引き-押し打ちに限定されるものではない。例えば、ヘッド40K-1の駆動方法は、圧力発生素子45Pに印加する電圧(駆動波形)を制御することによって、引き打ち又は押し打ち等であってもよい。
【0042】
画像形成部40では、複数のヘッド40-1、40-2、40-3及び40-4を夫々備えた各色のヘッドモジュール40K、40Ca、40M及び40Yを用いて、ロール紙Mdの1回の搬送動作により、幅方向に沿ったロール紙Mdの全域に単色又はフルカラーの画像を形成することができる。
【0043】
ここで、印刷システム1は、画像が形成される記録媒体の種類に応じて、前処理部20、乾燥部30又は後処理部50等のうちの何れか1つ又は複数を含まない構成であってもよい。記録媒体は、ロール紙Mdに限定されるものではなく、例えばカット紙等であってもよい。記録媒体は、記録が可能な媒体であればよい。例えば、記録媒体は、普通紙、上質紙、薄紙、厚紙、記録紙、OHP(Overhead Projector)シート、合成樹脂フィルム及び金属薄膜等であってもよい。
【0044】
画像形成部40は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の4色のヘッドモジュールを備えるものに限定されるものではない。例えば、画像形成部40は、グリーン(G)、レッド(R)、ライトシアン(LC)等の他色のインクを吐出するヘッドを備えてもよい。また画像形成部40は、ブラック(K)等の単色インクを吐出するものであってもよい。
【0045】
また実施形態に係る液体吐出装置は、画像形成装置の形態に限定されない。例えば、液体吐出装置は、プリンタ、スキャナ、被写機、プロッタ及びファクシミリ等において、ヘッドからインク等の液滴を吐出する装置であってもよい。
【0046】
<画像形成装置2のハードウェア構成例>
図6は、画像形成装置2のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。画像形成装置2は、メイン制御基板100と、ヘッド中継基板200と、画像処理基板300と、を有する。メイン制御基板100及び画像処理基板300を制御部400とする。
【0047】
メイン制御基板100は、CPU(Central Processing Unit)101と、FPGA(Field-Programmable Gate Array)102と、RAM(Random Access Memory)103と、ROM(Read Only Memory)104と、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)105と、モータドライバ106と、駆動波形生成回路107と、を有する。
【0048】
CPU101は、画像形成装置2の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM104に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置2における各種動作を制御するための制御指令を出力する。この際CPU101は、FPGA102と通信しながら、FPGA102と協働して画像形成装置2における各種の動作制御を行う。
【0049】
FPGA102は、CPU制御部111と、メモリ制御部112と、I2C制御部113と、センサ処理部114と、モータ制御部115と、ヘッド制御部116と、維持回復制御部117と、を有する。
【0050】
CPU制御部111は、CPU101と通信を行う。メモリ制御部112は、RAM103やROM104にアクセスする。I2C制御部113は、NVRAM105と通信を行う。センサ処理部114は、各種センサ130のセンサ信号の処理を行う。各種センサ130は、画像形成装置2における各種の状態を検知するセンサの総称である。各種センサ130には、ロール紙Mdの幅方向端部の位置を検知する用紙位置センサ、環境温度や湿度を検知する温湿度センサ、インクカートリッジのインク残量を検知する残量検知センサ、維持回復時の位置を検出する位置センサ等が含まれる。なお、温湿度センサなどから出力されるアナログのセンサ信号は、例えばメイン制御基板100等に実装されるAD(Analog/Digital)コンバータによりデジタル信号に変換されてFPGA102に入力される。
【0051】
モータ制御部115は、各種モータ140の制御を行う。各種モータ140は、画像形成装置2が備えるモータの総称である。各種モータ140には、ロール紙Mdを搬送するための副走査モータ、画像形成部40及び後処理部50を昇降させるモータ、維持回復部90A及び90Bを動作させるための維持モータ等が含まれる。
【0052】
モータ制御部115は駆動ファイルを生成する。或いはCPU101が駆動プロファイルを生成してモータ制御部115に指示する構成であってもよい。CPU101は、画像形成枚数のカウント等も行っている。
【0053】
ヘッド制御部116は、ROM104に格納されたヘッド駆動データ、吐出同期信号LINE、吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107に渡して、駆動波形生成回路107に共通駆動波形信号Vcomを生成させる。駆動波形生成回路107により生成された共通駆動波形信号Vcomは、ヘッド中継基板200に実装されたヘッドドライバ210に入力される。
【0054】
維持回復制御部117は、維持回復部90A及び90Bを動作させるための維持モータを制御すると共に、画像処理部310と放置時間カウント値を通信する。
【0055】
画像処理基板300は、PC(Personal Computer)等の外部装置から画像データImを入力し、また印刷システム1におけるロール紙Mdの搬送速度情報Veを入力する。画像処理基板300は、これらの情報に基づいて所定の処理を実行する。画像処理基板300の機能については別途
図8を用いて詳述する。
【0056】
ヘッド中継基板200は、メイン制御基板100から入力した複数の信号に基づき、圧力発生素子45Pを駆動させる。ヘッド中継基板200の構成については
図7を用いて次述する。
【0057】
図7は、ヘッドドライバ210の構成の一例を示すブロック図である。ヘッド制御部116は、吐出のタイミングのトリガーとなるトリガー信号Trigを受信すると、駆動波形生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成回路107へ出力する。さらに、ヘッド制御部116は、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107へ出力する。駆動波形生成回路107は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEと、に基づいたタイミングで共通駆動波形信号Vcomを生成する。また駆動波形生成回路107は、アドレスを指定したROM104から波形データを取得する。
【0058】
ヘッド制御部116は、画像処理基板300に設けられた画像処理部310から画像処理後の画像データSD'を受け取り、この画像データSD'に基づき、ヘッド40K-1の各ノズルから吐出させるインク滴の大きさに応じて共通駆動波形信号Vcomの所定波形を選択するためのマスク制御信号MNを生成する。マスク制御信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。ヘッド制御部116は、画像データSD'と、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成したマスク制御信号MNと、をヘッドドライバ210に転送する。ヘッド制御部116は、トリガー信号よりも周波数が高いラッチ信号を発するラッチ発生部の一例である。
【0059】
ヘッドドライバ210は、シフトレジスタ211と、ラッチ回路212と、階調デコーダ213と、レベルシフタ214と、アナログスイッチ215と、を有する。
【0060】
シフトレジスタ211は、ヘッド制御部116から転送される画像データSD'及び同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路212は、シフトレジスタ211の各レジスト値を、ヘッド制御部116から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
【0061】
階調デコーダ213は、ラッチ回路212でラッチした値(画像データSD')とマスク制御信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ214は、階調デコーダ213のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ215が動作可能なレベルへ変換する。
【0062】
アナログスイッチ215は、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力でオン又はオフするスイッチである。アナログスイッチ215は、ヘッド40K-1が備えるノズルに対応づけられた圧力発生素子(圧電素子)45Pごとに設けられており、各ノズルに対応する圧力発生素子45Pの個別電極45Peiに接続している。また、アナログスイッチ215には、駆動波形生成回路107からの共通駆動波形信号Vcomが入力されている。またマスク制御信号MNは、共通駆動波形信号Vcomと同期している。
【0063】
ヘッドドライバ210は、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力に応じ、適切なタイミングにおいてアナログスイッチ215のオン又はオフを切り替えることにより、共通駆動波形信号Vcomを構成する駆動波形の中から各ノズルに対応する圧力発生素子45Pに印加する波形を選択する。その結果、ノズルから吐出されるインク滴の大きさが制御される。
【0064】
<画像処理部310の機能構成例>
図8は、画像処理部310の機能構成の一例を示すブロック図である。画像処理部310及びヘッド制御部116は、画像形成装置2の制御部として機能する。
【0065】
画像処理部310は、受け付けた画像データImに対し、階調処理及び画像変換処理等を実行し、ヘッド制御部116で処理可能な形式の画像データSD'に変換する。画像処理部310は、変換後の画像データSD'をヘッド制御部116へ出力する。
【0066】
図8に示すように、画像処理部310は、入力部311と、階調処理部312と、判定部313と、変更部314と、画像変換部315と、出力部316と、を有する。
【0067】
入力部311は、外部装置から画像データImを入力すると共に、外部装置やCPU101、FPGA102等と通信するインターフェイスである。
【0068】
階調処理部312は、入力した多値の画像データImに対して階調処理を行い、少値の画像データSDへ変換する。少値の画像データSDは、ヘッド40K-1が吐出する液滴の種類(大滴、中滴、小滴)に等しい階調数の画像データ(元画像データ)である。
【0069】
判定部313は、印刷システム1におけるロール紙Mdの搬送速度情報Veに基づいて取得される第1周波数に応じて、第1周波数が所定の周波数範囲内であるか否かを判定する。換言すると、判定部313は、第1周波数が所定の周波数範囲における上限周波数よりも高いか否か、或いは第1周波数が所定の周波数範囲における下限周波数よりも低いか否かを判定する。また判定部313は、第1周波数が上限周波数よりも高いと判定した場合には、振動駆動を選択するマスク制御信号データMN'が連続するか否かを判定する。判定部313は、判定結果を変更部314に出力する。ここで、マスク制御信号データMN'は、マスク制御信号MNを生成する元となるデータである。
【0070】
第1周波数は、ヘッド40K-1に駆動波形が出力される周波数に対応する。駆動波形は、ヘッド40K-1にインクを吐出させる吐出駆動波形と、ヘッド40K-1にヘッド40K-1内のインクを振動させる振動駆動波形と、を含む波形である。
【0071】
第2周波数は、ヘッドに振動駆動波形が出力される周波数に対応する。振動駆動波形が入力された場合には、ヘッド40K-1はインクを吐出せず、ヘッド40K-1が有するノズルにおける大気とインクとの気液界面であるメニスカスを振動させる。
【0072】
搬送速度情報Veは、搬送ユニット80によるロール紙Mdの搬送速度を示す情報又はロール紙Mdの搬送速度に関連する情報等である。判定部313は、例えば、搬送ユニット80に設けられているロータリーエンコーダ等の検出器による検出結果から搬送速度情報Veを取得する。ロータリーエンコーダは、搬送ユニット80が備える搬送ローラ等に設けられており、搬送ローラの回転角度情報を検出結果として出力する。
【0073】
また判定部313は、印刷システム1のユーザ(以下、単にユーザという)による印刷システム1への操作入力を受け付ける操作部等を介して搬送速度情報Veを取得することもできる。この点についてさらに詳しく説明する。ユーザによる印刷システム1の使用方法には、ロール紙Mdを一定の搬送速度で搬送しながら画像形成を行う場合と、ロール紙Mdの搬送速度を適宜変更しながら画像形成を行う場合等がある。
【0074】
ロール紙Mdの搬送速度を適宜変更しながら画像形成を行う場合には、高解像度に画像形成を行うために搬送速度を比較的遅くする場合や、速く大量に画像形成を行うために搬送速度を比較的速くする場合等が挙げられる。
【0075】
ここで、
図9は、ロール紙Mdの搬送速度Vの変化を例示する図である。
図9の横軸は、印刷時間を示し、縦軸はロール紙Mdの搬送速度Vを示している。
図9は、ユーザが搬送速度の設定又は変更を適宜行った結果としての搬送速度Vの変化を示している。
【0076】
期間t1は、高解像度に画像形成を行うために搬送速度を比較的遅くした期間であり、期間t2は、速く大量に画像形成を行うために搬送速度を比較的速くした期間である。
【0077】
一方、印刷システム1では、画像形成条件の再設定を行う場合がある。この場合に、印刷システム1を完全に停止させると、ヘッド40K-1等のヘッドに信号が供給されずにインクが動かない状態になり、大気開放されたノズルを通じてヘッド内のインクが乾燥して増粘する。インクが増粘すると、印刷システム1の動作を再開させた際に不吐出や吐出不良等が発生する場合がある。特に乾燥しやすいインクを用いる場合には吐出不良が発生しやすい。
【0078】
吐出不良を元の正常な状態に戻すためには、増粘インクを排出する捨て吐出(空吐出)や、増粘インクを吸い出す吸引動作等を行う必要があり、時間がかかるうえ、廃棄するインクが増えることによるインクの無駄が生じる。そのため、本実施形態では、印刷システム1による画像形成条件の再設定を行う場合にも印刷システム1を完全に停止させず、画像形成と並行してユーザが再設定作業を行えるような非常に遅い搬送速度によりロール紙Mdを搬送しながらゆっくり画像を形成可能にしている。
図9における期間t3は、上記のゆっくり画像を形成する期間に対応する。
【0079】
ユーザは、
図9に示すような搬送速度の設定又は変更を、操作部等を介して適宜行うことができ、判定部313は、操作部等を介して設定又は変更された搬送速度情報Veを取得することができる。
【0080】
印刷システム1は、ロール紙Mdの搬送速度に比例して第1周波数を決定する。判定部313は、搬送速度情報Veに応じて第1周波数情報を取得し、第1周波数が所定の周波数範囲内であるか否かを判定することができる。
【0081】
図8に戻り、画像処理部310の機能構成の説明を続ける。
【0082】
変更部314は、第1周波数に応じて、第2周波数を第1周波数に対して異ならせる処理を行う。具体的には、変更部314は、判定部313によって、第1周波数が所定の周波数範囲における下限周波数よりも低いと判定された場合には、所定の駆動波形データに、ラッチ信号に応じた振動駆動波形データを追加する。これにより、変更部314は、ヘッド40K-1に、ラッチ信号LTに応じてヘッド40K-1内のインクを振動させる。その結果、第2周波数が第1周波数よりも高くなる。振動駆動波形データは、インクを吐出させずにヘッド40K-1内のインクを振動させる振動駆動波形のデータである。駆動波形データは、インクを吐出させる吐出駆動波形のデータと、振動駆動波形データと、を含む波形データである。
【0083】
また変更部314は、判定部313によって、第1周波数が所定の周波数範囲における上限周波数よりも高いと判定され、且つ振動駆動を選択するマスク制御信号が連続すると判定された場合には、画像変換部315が振動駆動波形を選択するためのマスク制御信号データMN'を変更することにより、振動駆動波形データが出力される回数を間引く。その結果、第2周波数が第1周波数よりも低くなる。変更部314は、第1周波数が所定の周波数範囲内にある場合には、第2周波数の変更を行わない。その結果、第2周波数は第1周波数と等しくなる。
【0084】
画像変換部315は、大滴・中滴・小滴の画像データSDに、変更部314によって変更された第2周波数の情報を含む振動駆動情報を追加し、画像データSDを画像データSD'に変換する。この変換は、入力部311を介して画像データImから取得した画像形成順序等の情報に従い、ヘッド40K-1の構成に合わせて変換する。
【0085】
また画像変換部315は、吐出駆動波形データ又は振動駆動波形データの少なくとも一方を選択する選択部の一例である。画像変換部315は、画像データSD'にマスク制御信号データMN'を付与することにより、吐出駆動波形又は振動駆動波形の少なくとも一方を選択することができる。
【0086】
画像変換部315は、変換後の画像データSD'を、出力部316を介してメイン制御基板100のFPGA102へ出力する。換言すると、出力部316は、吐出駆動波形データと、振動駆動波形データを含む駆動波形データを、メイン制御基板100を介してヘッド40K-1に出力できる。
【0087】
画像処理部310の機能は、FPGAやASIC等のハードウェア機能として実行されても良いし、画像処理部310内部の記憶装置に記憶された画像処理プログラムによって実施されるものであってもよい。また、画像処理部310の機能は画像形成装置2の内部ではなく、コンピュータにインストールされたソフトウェアにより実現されてもよい。
【0088】
<振動駆動の一例>
図10は、ヘッド40K-1における振動駆動の一例を説明する図である。
図10は、インク吐出方向81と直交する方向から視た、ヘッド40K-1におけるノズル40N周辺の断面図である。また
図10は、ノズル40Nにおける状態91から状態99までの9つの状態を示している。
【0089】
図10において、ヘッド40K-1の内部に充填されているインク90は、ノズル40Nにより大気開放されている。メニスカス90aは、インク90と大気との気液界面である。ヘッド40K-1内のインク90に対し、インク吐出方向81とは反対側の方向に作用する負圧が加えられることにより、メニスカス90aは、インク吐出方向81とは反対側に向かって凹んだ状態においてメニスカス90aを形成する。
【0090】
状態91から状態93において、ヘッド40K-1が吐出を行わずに停止していると、大気開放されているノズル40Nを通してインク90の水分が蒸発し、時間の経過と共にメニスカス90a付近のインク90の粘度が増加(増粘)する。インク90の増粘によりメニスカス90a近傍の流体抵抗が大きくなり、狙った吐出を行えなくなる場合がある。
【0091】
画像形成装置2は、状態94から状態96に示すように、ヘッド40K-1内のインク90にインク90を吐出しない程度の圧力を加え、ヘッド40K-1内のインク90を振動させる振動駆動を行う。
図10における矢印90bは、ヘッド40K-1内のインク90が振動駆動により撹拌されるインク90の流れを表している。画像形成装置2は、振動駆動による攪拌によって、メニスカス90a近傍の増粘したインク90をヘッド40K-1に移動させることにより、吐出不良の発生を抑制できる。
【0092】
但し、インク90を振動駆動させる周波数(単位時間当たりの振動駆動回数)が高すぎると、ヘッド40K-1内部に流れる増粘したインク90の量が多くなり、ヘッド40K-1内部のインク90全体が増粘することにより、吐出不良の抑制効果を十分に得られなくなる。またインク90を振動駆動させる周波数が低すぎると、攪拌効果が不十分になり、吐出不良の抑制効果を十分に得られなくなる。
【0093】
<駆動波形の一例>
図11は、ヘッド40K-1を駆動させる駆動波形データの一例を説明する図である。駆動波形データDaは、電圧波形を表すデジタルデータである。駆動波形データDaは、ヘッドドライバ210に供給され、アナログ電圧信号に変換された後、圧力発生素子45Pに駆動波形として印加される。圧力発生素子45Pは、駆動波形に応じてヘッド40K-1内のインク90に圧力を付与し、インク90をノズル40Nから吐出させる。
【0094】
駆動波形データDaは、区間111a、111b、111c及び111dの4つの区間の波形データを含んでいる。マスク制御信号データMN0'、MN1'、MN2'及びMN3'は、駆動波形データDaにおける区間ごとの波形データを無効化するための信号である。なお、マスク制御信号データMN0'、MN1'、MN2'及びMN3'を区別しない場合には、マスク制御信号データMN'と総称表記する。
【0095】
マスク制御信号データMN0'は、駆動波形データDaのうちの区間111bのみの波形データを有効にし、他の区間111a、111c及び111dを無効化することにより、ヘッド410K-1による駆動として振動駆動を選択する。マスク制御信号データMN0'が適用された駆動波形データDaは、ヘッド40K-1を振動駆動させる。
【0096】
マスク制御信号データMN1'は、駆動波形データDaのうちの区間111dのみの波形データを有効にし、他の区間111a、111b及び111cを無効化することにより、ヘッド410K-1による駆動として小滴の吐出を選択する。マスク制御信号データMN1'が適用された駆動波形データDaは、ヘッド40K-1に小滴を吐出させる。
【0097】
マスク制御信号データMN2'は、駆動波形データDaのうちの区間111c及び111dの波形データを有効にし、他の区間111a及び111bを無効化することにより、ヘッド410K-1による駆動として中滴の吐出を選択する。マスク制御信号データMN2'が適用された駆動波形データDaは、ヘッド40K-1に中滴を吐出させる。
【0098】
マスク制御信号データMN3'は、駆動波形データDaのうちの全ての区間111a、111b、111c及び111dの波形データを有効にすることにより、ヘッド410K-1の駆動として大滴の吐出を選択する。マスク制御信号データMN3'が適用された駆動波形データDaは、ヘッド40K-1に大滴を吐出させる。
【0099】
画像処理部310は、駆動波形データDa及びマスク制御信号データMN'を含む画像データSD'を、ヘッド制御部116を介してヘッドドライバ210に供給することができる。
【0100】
区間111bのみが有効な駆動波形データDaに基づく駆動波形データは、振動駆動波形データに対応する。区間111b以外の区間が有効な駆動波形データDaに基づく駆動波形データは、吐出駆動波形データに対応する。出力部316は、吐出駆動波形データと、振動駆動波形データと、を含む駆動波形データをヘッド40K-1に出力することができる。
【0101】
<画像処理部310による処理例>
図12は、画像処理部310による処理の一例を示すフローチャートである。画像処理部310は、入力部311により外部装置から画像データImを入力すると、
図12の処理を開始する。
【0102】
まず、ステップS121において、画像処理部310は、階調処理部312により、入力部311を介して入力した多値の画像データImに対して階調処理を行い、少値の画像データSDへ変換し、画像データSDを画像変換部315に出力する。
【0103】
続いて、ステップS122において、画像処理部310は、判定部313により、ロール紙Mdの搬送速度情報Veから第1周波数の情報を取得する。
【0104】
続いて、ステップS123において、画像処理部310は、判定部313により、第1周波数が下限周波数よりも低いか否かを判定する。
【0105】
ステップS123において、第1周波数が下限周波数よりも低いと判定された場合には(ステップS123、Yes)、ステップS124において、画像処理部310は、変更部314によって、駆動波形データにラッチ信号に応じた振動駆動波形データを追加する。これにより、ヘッド40K-1に、ラッチ信号LTに応じてヘッド40K-1内のインクを振動させる。その結果、第2周波数が第1周波数よりも高くなる。その後、画像処理部310は、ステップS128に処理を移行する。
【0106】
一方、ステップS123において、第1周波数が下限周波数よりも低くないと判定された場合には(ステップS123、No)、ステップS125において、画像処理部310は、判定部313により、第1周波数は、上限周波数よりも高いか否かを判定する。
【0107】
ステップS125において、第1周波数は上限周波数よりも高くないと判定された場合には(ステップS125、No)、画像処理部310は、ステップS128に処理を移行する。
【0108】
一方、ステップS125において、第1周波数は上限周波数よりも高いと判定された場合には(ステップS125、Yes)、ステップS126において、画像処理部310は、判定部313により振動駆動を選択するマスク制御信号データMN'が連続するか否かを判定する。
【0109】
ステップS126において、マスク制御信号データMN'が連続しないと判定された場合には(ステップS126、No)、画像処理部310は、ステップS128に処理を移行する。一方、マスク制御信号データMN'が連続すると判定された場合には(ステップS126、Yes)、ステップS127において、画像処理部310は、変更部314によって、画像変換部315が振動駆動波形を選択するためのマスク制御信号データMN'を変更することにより、振動駆動波形が出力される回数を間引く。これにより、第2周波数が第1周波数よりも低くなる。
【0110】
続いて、ステップS128において、画像処理部310は、画像変換部315により、大滴、中滴及び小滴の画像データSDに、第2周波数の情報を含む振動駆動情報を追加し、画像データSDを画像データSD'に変換する。
【0111】
続いて、ステップS129において、画像処理部310は、出力部316により、画像データSD'をヘッド制御部116に出力する。
【0112】
このようにして、画像処理部310は、画像データImに基づいて生成した画像データSD'をヘッド制御部116に出力することができる。
【0113】
<変更部314によるマスク制御信号データMN'の変更例>
図13は、変更部314によるマスク制御信号データMN'の変更の一例を説明する図である。
図12は、画像形成装置2が、ヘッド40K-1に含まれている1つのノズル40Nにより、搬送方向Xmに沿って搬送されるロール紙Mdにインク90を吐出するためのマスク制御信号データMN"及びMN'と、画像データP(X)と、を示している。搬送方向Xmに沿って配列されている複数の格子それぞれは、画像データSD'における1つ1つの画素を表している。マスク制御信号データMN"は、変更部314による変更前のマスク制御信号データを示し、マスク制御信号データMN'は、変更部314による変更後のマスク制御信号データを示している。
【0114】
マスク制御信号データMN"のうち、信号群121では振動駆動を選択するマスク制御信号データMN"である「0」が2回連続している。変更部314は、マスク制御信号データMN'における信号群122のように、2回連続する「0」の一方を「-1」に変更する。この変更により、マスク制御信号データMN'が「-1」になった画素では振動駆動波形が出力されなくなるため、振動駆動波形が出力される回数を間引かれる。
【0115】
<第2周波数の変更動作例>
図14から
図17を参照して、変更部314により第2周波数を変更する動作について説明する。
図14は、第2周波数を変更する前の振動駆動波形の第1例を示す図である。
図15は、第2周波数を変更した後の振動駆動波形の第1例を示す図である。
図16は、第2周波数を変更する前の振動駆動波形の第2例を示す図である。
図17は、第2周波数を変更した後の振動駆動波形の第2例を示す図である。
【0116】
図14から
図17は、トリガー信号Trig、ラッチ信号LT及び駆動波形Da'の3つを示すタイミングチャートである。各図において、上段に示されている信号はトリガー信号Trigであり、中段に示されている信号はラッチ信号LTであり、下段に示されている信号は駆動波形Da'である。ラッチ信号LTは、トリガー信号Trigよりも周波数が高い。駆動波形Da'は、マスク制御信号データMN'が適用された後の駆動波形データDaに基づくアナログ信号である。期間t4、期間t5及び期間t6それぞれは、第1周波数の1つの周期に対応する期間である。
【0117】
図14及び
図15においては、トリガー信号Trigに応じて振動駆動波形のみを含む駆動波形Da'が出力されている。
図14に示した変更前の駆動波形Da'と比較して、
図15に示した変更後の駆動波形Da'は、期間t5において振動駆動波形が間引かれている。2周期分の振動駆動波形のうち、片方の振動駆動波形が間引かれることで、第2周波数は、第1周波数に対して1/2の周波数になる。
【0118】
図16及び
図17においては、トリガー信号Trigに応じて、吐出駆動波形及び振動駆動波形の両方を含む駆動波形Da'が表示されている。期間t7は、第1周波数に対応する1つの周期に対して駆動波形Da'に対応する期間が短いため、駆動波形Da'の電圧が印加されない期間である。
【0119】
図16においては期間t7に電圧が印加されていないのに対し、
図17においては期間t7に電圧171が印加されている。この電圧171は、ラッチ信号LTに応じて印加され、期間t7に出力された振動駆動波形に対応するものである。電圧171は、第1周波数に対応する1つの周期内において、駆動波形Da'に対応する期間が終了後、ラッチ信号LTのカウント数を用いて予め定められた時間の経過後に出力される。駆動波形Da'内にも振動駆動波形が含まれているため、振動駆動波形に対応する電圧171の印加により、第1周波数に対応する1つの周期内において、2つの振動駆動波形が出力されることになる。その結果、第2周波数は、第1周波数に対して2倍の周波数になる。
【0120】
<第2周波数の遷移例>
図18は、第2周波数の遷移の一例を示す図である。
図18の横軸は、印刷時間を示し、縦軸は周波数fを示している。
図18は、ユーザが搬送速度の設定又は変更を適宜行った結果である搬送速度V変化に応じて、第1周波数f1(実線)及び第2周波数f2(破線)が遷移する様子を示している。
図18の見方は、上述した
図9と同様であるが、
図9と比較して縦軸が周波数に変わっている。
【0121】
第1周波数f1は、搬送速度Vの変化に応じて期間t1では比較的低くなり、期間t2で比較的高くなり、期間t3では非常に低くなっている。
【0122】
一方、第2周波数f2は、変更部314による変更処理によって、第1周波数f1に対して異なるものとなり、全体的に所定の周波数範囲fth内に収まっている。具体的には、期間t1においては、第1周波数f1は周波数範囲fth内であるため、変更部314は第2周波数f2を変更しない。その結果、第2周波数f2は第1周波数f1と等しい。
【0123】
期間t2においては、第1周波数f1は周波数範囲fthにおける上限周波数th1より高いため、変更部314は第2周波数f2が第1周波数f1よりも低くなるように変更する。その結果、第2周波数f2は第1周波数f1よりも低くなり、周波数範囲fth内に収まっている。
【0124】
期間t3においては、第1周波数f1は周波数範囲fthにおける下限周波数th2より低いため、変更部314は第2周波数f2が第1周波数f1よりも高くなるように変更する。その結果、第2周波数f2は第1周波数f1よりも高くなり、周波数範囲fth内に収まっている。
【0125】
ここで、インクの種類、ロール紙Mdの種類、又はロール紙Mdに付与されたインクを加熱する方式等によって、ヘッド40K-1内のインクの増粘のしやすさが異なる。インクを加熱する方式には、ヒータで加熱する方式、温風を吹き付けて加熱する方式等が挙げられる。本実施形態では、周波数範囲fthは、インクの種類、ロール紙Mdの種類、又はロール紙Mdに付与されたインクを加熱する方式、の少なくとも1つに応じて予め定められている。これにより、ヘッド40K-1内のインクの増粘のしやすさに応じて、振動駆動の周波数をより適正化できる。
【0126】
<画像形成装置2の作用効果>
次に画像形成装置2の作用効果について説明する。
【0127】
液体吐出方式の画像形成装置においては、ヘッドからインクを吐出しない期間に、ヘッド内のインクが乾燥により増粘することを防ぐために、ヘッド内のインクを振動させる技術が知られている。
【0128】
ヘッド内のインクを振動させる際には、例えば画像形成装置は、ヘッドにインクを吐出させる駆動波形のデータ内にインクを振動させる振動駆動波形データを設け、ヘッドからインクを吐出しない期間に、振動駆動波形のデータのみを有効にした駆動波形のデータをヘッドに出力することによりインクを振動させる。
【0129】
一方、液体吐出方式の画像形成装置は、ヘッドに駆動波形を出力する第1周波数を記録媒体の搬送速度等に応じて変化させる場合がある。この場合、振動駆動波形は駆動波形に含まれているため、振動駆動波形を出力する第2周波数は、第1周波数の変化に応じて等しく変化する。第2周波数には適正な周波数範囲があり、この周波数範囲よりも高いと振動が過剰となってヘッド内のインク増粘を逆に促進したり、上記周波数範囲よりも低いとインク増粘の抑制効果が低減したりし、ヘッドからのインク吐出が安定化しない場合がある。
【0130】
本実施形態に係る画像形成装置2は、インク(液体)を吐出するヘッド40K-1と、インクを吐出させる吐出駆動波形のデータと、インクを吐出させずにヘッド40K-1内のインクを振動させる振動駆動波形のデータと、を含む駆動波形のデータをヘッド40K-1に出力する出力部316を有する。また画像形成装置2は、ヘッド40K-1に駆動波形が出力される第1周波数f1に応じて、ヘッド40K-1に振動駆動波形が出力される第2周波数f2を第1周波数f1に対して異ならせる変更部314を有する。
【0131】
例えば変更部314は、第1周波数f1が周波数範囲fthにおける上限周波数th1よりも高い場合には、第2周波数f2を第1周波数f1よりも低くし、第1周波数f1が周波数範囲fthにおける下限周波数th2よりも低い場合には、第2周波数f2を第1周波数f1よりも高くする。これにより、第2周波数f2を周波数範囲fth内に収めることができるため、画像形成装置2は、振動駆動によりインク増粘を適切に抑制することができ、ヘッド40K-1からの液体吐出を安定化させることができる。
【0132】
また、画像形成装置2は、インクを吐出することにより、ロール紙Mdにインクを付与し、周波数範囲fthは、インクの種類、ロール紙Mdの種類、又はロール紙Mdに付与されたインクを加熱する方式、の少なくとも1つに応じて予め定められている。これにより、ヘッド40K-1内のインクの増粘のしやすさに応じて、振動駆動の周波数をより適正化することができる。
【0133】
また、画像形成装置2は、駆動波形データDaから、吐出駆動波形のデータ又は振動駆動波形のデータの少なくとも一方を選択する画像変換部315(選択部)を有し、変更部314は、第1周波数f1が周波数範囲fthにおける上限周波数th1よりも高い場合には、振動駆動波形が出力される回数が間引かれるように変更する。これにより、画像形成装置2は、第2周波数f2を第1周波数f1よりも低くすることができる。
【0134】
また、画像形成装置2は、ヘッド40K-1内のインクを振動させるトリガー信号Trigよりも周波数が高いラッチ信号LTを発するヘッド制御部116(ラッチ発生部)を有する。変更部314は、第1周波数f1が周波数範囲fthにおける下限周波数th2よりも低い場合には、ヘッド40K-1に、ラッチ信号LTに応じてヘッド40K-1内のインクを振動させるように変更する。これにより、画像形成装置2は、第2周波数f2を第1周波数f1よりも高くすることができる。
【0135】
本実施形態では、ヘッド40K-1を例に挙げて説明したが、画像形成部40に含まれている他のヘッドについてもヘッド40K-1と同様に動作させることができる。
【0136】
また、ロール紙Mdの搬送速度Vの変化には、ユーザの指示等による意図的な変化と、搬送ユニット80を構成する部品誤差等に応じた意図しない変化の両方を含む。何れの変化があった場合にも、画像形成装置2は、第1周波数f1に応じて、第2周波数f2を変更することができる。
【0137】
[その他の好適な実施形態]
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0138】
例えば、上記実施の形態では、本発明に係る記録ヘッドを備えた画像形成装置について説明したが、本発明に係る液体吐出ヘッド及びその制御は、画像形成装置を含めた液体を吐出する装置に広く適用することができる。
【0139】
例えば、本例では、ヘッドとして、インクを吐出する画像形成手段に含まれるヘッド40K-1を例として説明したが、
図1に示した前処理部20や後処理部50に含まれるヘッドに実施形態を適用することもできる。
【0140】
また、上記例では、幅方向に沿ってヘッドを移動させないライン型の液体吐出装置に実施形態を適用する例を説明したが、キャリッジを介してヘッドが幅方向に移動するシリアル型の液体吐出装置に実施形態を適用することもできる。
【0141】
実施形態において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0142】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0143】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0144】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0145】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0146】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0147】
又、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生素子が限定されるものではない。例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用することができる。
【0148】
実施形態の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
【0149】
また、実施形態は、液体吐出方法を含む。例えば、液体吐出方法は、液体吐出装置による液体吐出方法であって、ヘッドにより、液体を吐出し、出力部により、前記液体を吐出させる吐出駆動波形のデータと、前記液体を吐出させずに前記ヘッド内の前記液体を振動させる振動駆動波形のデータと、を含む駆動波形のデータを前記ヘッドに出力し、変更部により、前記ヘッドに前記駆動波形が出力される第1周波数に応じて、前記ヘッドに前記振動駆動波形が出力される第2周波数を前記第1周波数に対して異ならせる。この液体吐出方法により、上述した画像形成装置2と同様の作用効果を得ることができる。
【0150】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0151】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0152】
1 印刷システム
2 画像形成装置(液体吐出装置)
40 画像形成部
40K、40Ca、40M、40Y ヘッドモジュール
40K-1、40K-2、40K-3、40K-4 ヘッド
40N ノズル
45P 圧力発生素子
100 メイン制御基板
116 ヘッド制御部(ラッチ発生部の一例)
200 ヘッド中継基板
210 ヘッドドライバ
300 画像処理基板
310 画像処理部
311 入力部
312 階調処理部
313 判定部
314 変更部
315 画像変換部
316 出力部
Da 駆動波形データ
Da' 駆動波形
f1 第1周波数
f2 第2周波数
fth 周波数範囲
th1 上限周波数
th2 下限周波数
Trig トリガー信号
LT ラッチ信号
MN マスク制御信号
MN' マスク制御信号データ
Im、SD、 SD' 画像データ
V 搬送速度
Ve 搬送速度情報
Md ロール紙(記録媒体)
Xm 搬送方向
t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7 期間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】