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  • 特開-液晶配向膜用樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019407
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】液晶配向膜用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20230202BHJP
   C08F 12/24 20060101ALI20230202BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
G02F1/1337 520
C08F12/24
C08L25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124100
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】奈良 和美
【テーマコード(参考)】
2H290
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2H290AA33
2H290BD01
2H290BF13
2H290CA31
2H290CA61
2H290DA01
2H290DA03
4J002BC121
4J002CD022
4J002EU226
4J002FD142
4J002FD146
4J002FD317
4J002GP00
4J002HA03
4J100AB02P
4J100BA03P
4J100CA01
4J100DA01
4J100DA04
4J100JA39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆動液晶および重合性液晶に対する配向能力と耐熱性、透明性及び下地に対する密着性を有する液晶配向膜用樹脂組成物を提供すること。本発明の液晶配向膜用樹脂組成物からなる薄膜を提供すること。該薄膜を有する液晶表示素子や固体撮像素子などの電子部品を提供すること。
【解決手段】ポリマー(A)および溶剤(B)を含む液晶配向膜用樹脂組成物であり、ポリマー(A)中の繰り返し単位は、式(1)で表される構造である、液晶配向膜用樹脂組成物。

式(1)中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立にH、CH、OCH、またはOHであり、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つはOHである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A)および溶剤(B)を含む液晶配向膜用樹脂組成物であり、ポリマー(A)中の繰り返し単位は、式(1)で表される構造である、液晶配向膜用樹脂組成物。


式(1)中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立にH、CH、OCH、またはOHであり、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つはOHである。
【請求項2】
式(1)において、RがOHである、請求項1に記載の液晶配向膜用樹脂組成物。
【請求項3】
式(1)において、R、R、RおよびRがHである、請求項2に記載の液晶配向膜用樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、架橋剤、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤および酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向膜用樹脂組成物。
【請求項5】
架橋剤を含み、さらに重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤および酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を含む、請求項4に記載の液晶配向膜用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶配向膜用樹脂組成物から得られる薄膜。
【請求項7】
請求項6に記載の薄膜を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向膜用樹脂組成物、および該組成物からなる配向能力と耐熱性、透明性及び下地との密着性を具備した薄膜と、その薄膜を有する液晶表示素子や固体撮像素子などの電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、視野角の拡大、画像色調の調整などのために、位相差膜が配置されている。このような位相差膜として、延伸ポリマーフィルムまたは重合性液晶組成物からなる塗布型の薄膜が用いられている。重合性液晶組成物からなる塗布型の薄膜は従来のポリマーフィルムと比べ、位相差膜の薄膜化、耐久性の向上により、液晶表示装置の薄型化や表示品位向上が可能となる。
【0003】
重合性液晶を用いた位相差膜は、配向処理を施した配向膜を有する基板上に重合性液晶組成物溶液を塗布し、重合性液晶組成物を配向させた後、該重合性液晶組成物を重合させることで形成される(特許文献1)。配向処理の方法として、ラビング法および光配向法等が知られている。重合性液晶用の配向膜としては駆動液晶用の配向膜を用いることが可能である。本明細書における液晶配向膜には、駆動液晶用の配向膜および重合性液晶用の配向膜どちらも含む。
【0004】
液晶表示素子のカラー化方法の1つとして、カラーフィルターが使用されている。表示色域拡大のために、カラーフィルターには微細化した顔料や染料が使用されているが、これらの顔料や染料は、液晶配向膜用樹脂組成物中によく使用されている溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(以下「NMP」と称する)に容易に溶出する。溶剤の浸食を受けたカラーフィルターは、色変化や色抜きといった劣化が発生し、結果として液晶表示素子の表示品位が低下してしまう。これを抑制するため、カラーフィルター上に保護膜を形成し、その上に液晶配向膜を形成する方法がとられている。
【0005】
液晶表示装置の普及に伴い、製造工程の短縮など製造コストの削減が求められ、1つの塗膜層に複数の機能を持たせる材料開発が必要とされている。カラーフィルター上に形成される保護膜と液晶配向膜の二層を単層膜にする場合、その単層膜は配向能力に加えて耐熱性や下地との密着性、高い透過率を有し、またその組成物にはカラーフィルターを浸食する溶剤を使用しないことが要求されている。
【0006】
配向能力を持つポリマーとしては、ポリイミドやポリアミド酸、ポリメチルメタクリレートなどが知られている。これらの中でも、ポリマーの構造によって、液晶分子を基板面に対して垂直に配向(ホメオトロピック配向)させることができるものと、基板面に対して水平に配向(ホモジーニアス配向)させることができるものがあり、これらは素子の設計に応じて選択される。垂直配向させることができるポリマーとしては、側鎖構造を持つポリアミド酸がよく知られている。しかし、ポリマーの析出の問題よりその組成物は溶剤としてNMPを含む必要があり、保護膜として使用するには適さない。溶剤にNMPを含まずに垂直配向能力を示す液晶配向膜用樹脂組成物の報告例は少なく、ポリアクリレートを用いた例が報告されているが、耐熱性や下地との密着性において改善の余地がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-148098号公報
【特許文献2】特開2018-194709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、駆動液晶および重合性液晶に対する配向能力と耐熱性、透明性及び下地に対する密着性を有する液晶配向膜用樹脂組成物を提供すること。本発明の液晶配向膜用樹脂組成物からなる薄膜を提供すること。該薄膜を有する液晶表示素子や固体撮像素子などの電子部品を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ヒドロキシビニルモノマーを含む原料からなるヒドロキシビニルポリマーを含有する液晶配向膜用樹脂組成物を用いることで、配向能力と耐熱性及び下地との密着性を具備した高透明な薄膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は以下の構成を含む。
[1] ポリマー(A)および溶剤(B)を含む液晶配向膜用樹脂組成物であり、ポリマー(A)中の繰り返し単位は、式(1)で表される構造である、液晶配向膜用樹脂組成物。


式(1)中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立にH、CH、OCH、またはOHであり、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つはOHである。
[2] 式(1)において、RがOHである、[1]に記載の液晶配向膜用樹脂組成物。
[3] 式(1)において、R、R、RおよびRがHである、[2]に記載の液晶配向膜用樹脂組成物。
[4] さらに、架橋剤、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤および酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の液晶配向膜用樹脂組成物。
[5] 架橋剤を含み、さらに重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤および酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を含む、[4]に記載の液晶配向膜用樹脂組成物。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の液晶配向膜用樹脂組成物から得られる薄膜。
[7] [6]に記載の薄膜を有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物は特定の構造を有し、得られる薄膜は液晶分子を垂直配向させる能力を有することや、耐熱性及び透明性を有することや下地との密着性に優れることから、液晶配向膜および保護膜として兼用することができる。
また本発明の液晶配向膜用樹脂組成物は、溶剤にNMPを含まずとも製造可能であるため製膜時に下地に対する浸食性を抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の配向能力評価における入射角と位相差の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.ポリマー(A)
本発明のポリマー(A)は、ポリマー中の繰り返し単位が式(1)で表される構造であるポリマーである。


式(1)中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立にH、CH、OCH、またはOHであり、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つはOHである。
【0014】
良好な配向能力を与えるという観点から、式(1)で表される構造においてRがOHである形態が好ましく、RがOHであり、R、R、RおよびRがHである形態がより好ましい。
【0015】
1-1.ポリマー(A)の合成に用いるモノマー
本発明のポリマー(A)は、式(2)で表される化合物を重合反応させて得ることができる。


式(2)中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立にH、CH、OCH、またはOHであり、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つはOHである。
【0016】
式(2)で表される化合物の好ましい例として、2-ビニルフェノール、3-ビニルフェノール、4-ビニルフェノールが挙げられる。これらの化合物のいずれか1つを用いてもよいし、2つ以上を用いてもよい。
【0017】
良好な配向能力を与えるという観点から、ポリマー(A)は4-ビニルフェノールを含むコポリマーとすることが好ましく、4-ビニルフェノールのホモポリマーとすることがより好ましい。
【0018】
1-2.ポリマー(A)の重合反応に用いる溶剤
ポリマー(A)の合成には、溶剤を用いることが好ましい。ポリマー(A)を得るための重合反応に用いる溶剤(以降、「重合溶剤」と称することがある。)は、ポリマー(A)の合成に用いるモノマーおよび得られるポリマー(A)を溶解できる溶剤であることが好ましい。重合溶剤の具体例として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレングリコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、2-ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、および酢酸を挙げることができる。重合溶剤は、これらの1つであってもよいし、これらの2つ以上の混合物であってもよい。
【0019】
ポリマー溶液として得られたポリマー(A)は、溶剤をそのまま残してポリマー溶液のまま液晶配向膜用樹脂組成物の調製に用いてもよいし、運搬性等を考慮してこの溶剤を除去してポリマー固形物として液晶配向膜用樹脂組成物の調製に用いてもよい。ポリマー溶液のまま液晶配向膜用樹脂組成物の調製に用いる場合は、ポリマー溶液に含まれる重合溶剤も、溶剤(B)に含める。
【0020】
1-3.ポリマー(A)の合成方法
本発明で用いられるポリマー(A)の合成方法は、溶液中でのラジカル重合であることが好ましい。通常のラジカル重合では、重合開始剤が使用されている。ポリマー(A)を製造する際に用いる重合開始剤としては、熱によりラジカルを発生する化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤を使用することができる。
【0021】
重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)(商品名;富士フイルム和光純薬工業(株))、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65)(商品名;富士フイルム和光純薬工業(株))、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(V-60)(商品名;富士フイルム和光純薬工業(株))、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(V-59)(商品名;富士フイルム和光純薬工業(株))、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド](VF-096)(商品名;富士フイルム和光純薬工業(株))、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(VAm-110)(商品名;富士フイルム和光純薬工業(株))、ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチラート)(V-601)(商品名;富士フイルム和光純薬工業(株))、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-1001(以上いずれも商品名;富士フイルム和光純薬工業(株))等を挙げることができる。
【0022】
ポリマー(A)の重量平均分子量は1,000~200,000であることが好ましく、2,000~50,000がより好ましい。これらの範囲にあれば、溶解性、配向能力および耐熱性が良好である。
【0023】
前記ポリマー(A)の重量平均分子量は、GPC法(カラム温度:35℃、流速:1ml/分間)により求めたポリスチレン換算での値である。標準のポリスチレンには、アジレント・テクノロジー株式会社のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010-0102の、重量平均分子量が645、2590、10290、37600、および285300であるポリスチレンを使用した。カラムにはPLgel MIXED-D(アジレント・テクノロジー株式会社)を用い、移動相としてTHFを使用した。また、本明細書に記載した市販のポリマーの重量平均分子量はカタログ掲載値である。
【0024】
ポリマー(A)には市販品を用いてもよい。具体例としては、マルカリンカーM(ポリパラヒドロキシスチレン、グレード:S-2P、重量平均分子量4,000~6,000)、マルカリンカーM(ポリパラヒドロキシスチレン、グレード:S-1P、重量平均分子量1,000~3,000)(いずれも商品名;丸善石油化学株式会社)を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。また、市販品と合成品を混合してもよい。
【0025】
2.本発明の液晶配向膜用樹脂組成物
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物は、ポリマー(A)と、溶剤(B)を含む液晶配向膜用樹脂組成物である。
【0026】
ポリマー(A)(重合体固形物)の含有量は、液晶配向膜用樹脂組成物全量に対して、2~35重量%であることが好ましい。より好ましくは5~25重量%である。
【0027】
2-1.溶剤(B)
液晶配向膜用樹脂組成物に用いる溶剤(B)は、ポリマー(A)等が溶解できる溶剤が好ましい。当該溶剤(B)の具体例として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、アセトン、2-ブタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-オキシプロピオン酸メチル、3-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、および重量平均分子量1,000以下のポリプロピレングリコールを挙げることができる。溶剤は、これらの1つであってもよいし、これらの2つ以上の混合物であってもよい。
【0028】
これらの中でも、ポリマーの溶解性、塗布性およびカラーフィルターへの浸食性が低いという観点から、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、およびシクロペンタノンから1つ以上を選択して用いることがより好ましい。
【0029】
溶剤(B)の含有量は、液晶配向膜用樹脂組成物全量に対して、65~95重量%であることが好ましい。より好ましくは70~90重量%である。
【0030】
なお、ポリマー(A)の合成で得られたポリマー溶液からポリマー固形物を取り出さずに、ポリマー溶液の状態で液晶配向膜用樹脂組成物に用いる場合には、ポリマー溶液に含まれる重合溶剤も溶剤(B)に含める。
【0031】
2-2.添加剤
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物には、平坦性、耐傷性、塗布均一性、接着性などの膜物性を向上させるために各種の添加剤を添加することができる。添加剤には、架橋剤、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、酸化防止剤が主に挙げられる。
【0032】
2-2-1.架橋剤
架橋剤を添加することにより、液晶配向膜用樹脂組成物の塗膜を焼成する過程で、架橋反応が起こり、ラビングに対する耐性がより高い薄膜を得ることができ、ラビング工程において発生する膜の削れが抑制できる。また、架橋により、より高い耐熱性が期待できる。
【0033】
架橋剤は、ポリマー(A)の側鎖にある架橋性官能基であるヒドロキシル基と反応する官能基を1分子中に2個以上有する化合物であれば特に限定されない。
【0034】
ヒドロキシル基と反応する化合物として、酸無水物を有する化合物、カルボン酸含有ポリマー、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等があるが、配向不良を避けることの観点から、オキサゾリン化合物が好ましい。
【0035】
酸無水物を有する化合物やカルボン酸含有ポリマーの具体例として、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物等の脂肪族ジカルボン酸無水物;無水フタル酸、トリメリット酸無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物、スチレン-無水マレイン酸共重合体;カルボン酸含有ポリマーであるARUFON UC-3000、AR UFON UC-3090(いずれも商品名;東亞合成株式会社)、マープルーフ MA-0215Z、マープルーフ MA-0217Z、およびマープルーフ MA-0221Z(いずれも商品名;日油株式会社)を挙げることができる。これら化合物は、単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0036】
エポキシ化合物の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ化合物であるjER 828、jER 1004、jER 1009(いずれも商品名;三菱ケミカル(株))、ビスフェノールF型エポキシ化合物であるjER 806、jER 4005P(いずれも商品名;三菱ケミカル(株))、グリシジルエーテル型エポキシ化合物であるTECHMORE VG3101L(商品名;(株)プリンテック)、EHPE3150(商品名;(株)ダイセル)、EPPN-501H、EPPN-502H(いずれも商品名;日本化薬(株))、jER 1032H60(商品名;三菱ケミカル(株))、グリシジルエステル型エポキシ化合物であるデナコール EX-721(商品名;ナガセケムテックス(株))、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル(商品名;東京化成工業(株))、ビフェニル型エポキシ化合物であるjER YX4000、jER YX4000H、jER YL6121H(いずれも商品名;三菱ケミカル(株))、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3100(いずれも商品名;日本化薬(株))、フェノールノボラック型エポキシ化合物であるEPPN-201(商品名;日本化薬(株))、jER 152、jER 154(いずれも商品名;三菱ケミカル(株))、クレゾールノボラック型エポキシ化合物であるEOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020(いずれも商品名;日本化薬(株))、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物であるjER 157S65、jER 157S70(いずれも商品名;三菱ケミカル(株))、環式脂肪族エポキシ化合物であるセロキサイド2021P、セロキサイド3000、エポリードGT401(いずれも商品名;(株)ダイセル)、シロキサン結合部位を有するエポキシ化合物である1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン(商品名;ジェレストインコ-ポレイテッド)、TSL9906(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マーテリアルズ・ジャパン合同会社)、COATOSIL MP200(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マーテリアルズ・ジャパン合同会社)、コンポセラン SQ506(商品名;荒川化学(株))、ES-1023(商品名;信越化学工業(株))、グリシジルアミン型エポキシ化合物であるN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、スミエポキシELM-434(商品名;住友化学(株))、スミエポキシELM-100(商品名;住友化学(株))、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを挙げることができる。これら化合物は、単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0037】
オキサゾリン化合物の具体例として、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス-(2-オキサゾリン)を挙げることができる。
【0038】
架橋剤の添加量は、ポリマー(A)100重量部に対して0.05~60重量部が好ましく、0.05~30重量部がより好ましい。
【0039】
2-2-2.重合性二重結合を有する化合物
重合性二重結合を有する化合物を添加することにより、平坦化能力をより高めることが期待できる。重合性二重結合を有する化合物は、重合性二重結合を1分子当り2個以上有すれば、特に限定されない。
【0040】
上記重合性二重結合を有する化合物において、重合性二重結合を1分子当り2個有する化合物の具体例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシネオペンチルグリコール]アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン・エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、およびイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートを挙げることができる。
【0041】
上記重合性二重結合を有する化合物において、重合性二重結合を1分子あたり3個以上有する化合物の具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン・エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびアルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート、およびカルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0042】
上記重合性二重結合を有する化合物は上記の化合物を単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0043】
上記重合性二重結合を有する化合物としては、平坦化能力および耐傷性の観点から、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびカルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートから選択することが好ましい。
【0044】
上記重合性二重結合を有する化合物の含有量は、平坦化能力、耐熱性、液晶および重合性液晶に対する配向能力のバランスがよいとの観点から、本発明の液晶配向膜用樹脂組成物におけるポリマー(A)100重量部に対し、0.5~50重量部である。より配向能力を重視する場合には0.5~10重量部であることが好ましい。
【0045】
2-2-3.界面活性剤
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物には、塗布均一性を向上させるためにアニオン系、カチオン系、ノニオン系、フッ素系またはシリコン系のレベリング剤・界面活性剤を添加してもよい。
【0046】
界面活性剤の具体例として、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(いずれも商品名;共栄社化学(株))、Disperbyk-161、Disperbyk-162、Disperbyk-163、Disperbyk-164、Disperbyk-166、Disperbyk-170、Disperbyk-180、Disperbyk-181、Disperbyk-182、BYK-300、BYK-306、BYK-310、BYK-320、BYK-330、BYK-342、BYK-346、BYK-361N、BYK-3560、BYK-UV3500、BYK-UV3570(いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン(株))、KP-341、KP-368、KP-96-50CS、KP-50-100CS(いずれも商品名;信越化学工業(株))、サーフロンS611(商品名;AGCセイミケミカル(株))、フタージェント222F、フタージェント208G、フタージェント251、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント601AD、フタージェント650A、FTX-218(いずれも商品名;(株)ネオス)、メガファックF-410、メガファックF-430、メガファックF-444、メガファックF-472SF、メガファックF-475、メガファックF-477、メガファックF-552、メガファックF-553、メガファックF-554、メガファックF-555、メガファックF-556、メガファックF-558、メガファックF-559、メガファックR-94、メガファックRS-75、メガファックRS-72-K、メガファックRS-76-NS、メガファックDS-21(いずれも商品名;DIC(株))、TEGO Twin 4000、TEGO Twin 4100、TEGO Flow 370、TEGO Flow 375、TEGO Glide 440、TEGO Glide 450、TEGO Rad 2200N(いずれも商品名;エボニックジャパン(株))、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩を挙げることができる。これらの内1つ以上を用いることができる。これら化合物は、単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0047】
これらの中、高い塗布均一性の観点から、BYK-306、BYK-342、BYK-346、BYK-361N、BYK-3560、KP-341、サーフロンS611、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント650A、メガファックF-477、メガファックF-556、メガファックRS-72-K、メガファックDS-21、TEGO Twin 4000、TEGO Flow 375、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、およびフルオロアルキルアミノスルホン酸塩が好ましい。
【0048】
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物における界面活性剤の含有量は、組成物全量中0.005~1重量%であることが好ましい。
【0049】
2-2-4.密着性向上剤
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物は、形成される薄膜と下地との密着性をさらに向上させる観点から、シラン系、アルミニウム系またはチタネート系のカップリング剤などの密着性向上剤をさらに含有してもよい。
【0050】
密着性向上剤の具体例として、3-グリシジルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤、およびテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤を挙げることができる。これら化合物は、単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0051】
これらの中、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0052】
密着性向上剤の含有量は、液晶配向膜用樹脂組成物全量中、0.01~10重量%であることが好ましい。
【0053】
2-2-5.酸化防止剤
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物は、透明性の向上、薄膜が高温にさらされた場合の黄変を防止する観点から、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などの酸化防止剤をさらに含有してよい。この中でも安定性の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0054】
フェノール系酸化防止剤の具体例として、tert‐ブチルヒドロキノン、ブチルヒドロキシトルエン、ANTAGE SP(商品名;川口化学工業(株))、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ肉桂酸、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート]を挙げることができる。これら化合物は、単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0055】
この中でも熱安定性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]がより好ましい。溶解性の観点から、ブチルヒドロキシトルエン、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシーヒドロ肉桂酸がより好ましい。
【0056】
酸化防止剤の含有量は、ポリマー(A)100重量部に対して0.01~5.0重量部であることが好ましく、0.05~2.0重量部であることがより好ましい。
【0057】
2-3.液晶配向膜用樹脂組成物の調製
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物は、ポリマー(A)、溶剤(B)、さらに、必要に応じて架橋剤、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤、酸化防止剤、およびその他の添加剤等の添加剤を選択して添加し、それらを均一に混合溶解することにより得ることができる。
【0058】
2-4.液晶配向膜用樹脂組成物の保存
本発明の液晶配向膜用樹脂組成物は、組成物の経時安定性の観点から、-30℃~25℃の範囲で保存することが好ましく、-20℃~10℃がより好ましい。
【0059】
3.液晶配向膜用樹脂組成物から得られる薄膜
上記のようにして調製された液晶配向膜用樹脂組成物を、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、およびスリットコート法等従来から公知の塗布方法により基板表面に塗布し、塗膜を形成することができる。次いでこの塗膜はホットプレート、またはオーブン等で焼成を行うことにより薄膜を得ることができる。焼成は、仮焼成と、仮焼成後により高温で焼成する本焼成の2段階で行うことが好ましい。仮焼成の前に、減圧により溶剤を一部除する工程を入れることも好ましい。次いで、ラビング法を用いて配向処理を行うことで、配向能力が付与される。ラビングは公知の方法で行うことができる。
【0060】
仮焼成条件は各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常60~100℃のホットプレート上あるいはオーブン中、1~15分間である。本焼成条件は、各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常120~250℃のホットプレート上あるいはオーブン中、5~90分間である。
【0061】
本発明の薄膜は、配向処理により、駆動液晶および重合性液晶に対する配向能力を有し、かつ透明性、耐熱性、下地との密着性が優れている。したがって、液晶配向膜および保護膜の機能を兼備し、両者の塗膜層として兼用することができる。この塗膜層を用いて、液晶表示素子や固体撮像素子を製造することができる。
【0062】
また、本発明の薄膜は、リワーク性にも優れている。リワーク性とは素子の製造において、塗布後の塗膜や仮焼成が終わった段階の薄膜にピンホール等の不備が見つかった際に、これをアルカリ溶液等で溶解や剥離できる特性を示す。基板を回収し再利用できるため、リワーク性に優れる材料が求められる。
【実施例0063】
次に本発明を合成例、実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0064】
実施例中に記載している略号について、対応する化合物名、商品名等を以下に記載する。
<ポリマー(A)用または比較ポリマー用モノマー>
4-VP:4-ビニルフェノール
MS:メチルスチレン
AS:4-アミノスチレン
VB:4-ビニルビフェニル
VN:ビニルナフタレン
VKOH:1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノン
HQMA:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート
PEMA:2-フェノキシエチルメタクリレート
<ポリマー(A)>
S-2P:マルカリンカーM(ポリパラヒドロキシスチレン、グレード:S-2P)( 商品名;丸善石油化学株式会社)
S-1P:マルカリンカーM(ポリパラヒドロキシスチレン、グレード:S-1P)( 商品名;丸善石油化学株式会社)
<重合開始剤>
V-601:ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチラート)
<溶剤>
CP:シクロペンタノン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
3MP:3-メトキシプロピオン酸メチル
EDM:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
<添加剤>
<架橋剤>
1,3-PBO:2,2’-(1,3-フェニレン)ビス-(2-オキサゾリン)
CEL2021P:3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
<重合性二重結合を有する化合物>
M208:アロニックスM-208(エチレンオキシド変性ビスフェノールFジアクリレート)(商品名;東亞合成(株))
<酸化防止剤>
BHT:ブチルヒドロキシトルエン
A-SP:ANTAGE SP(商品名;川口化学工業(株))
<界面活性剤>
F-477:メガファックF-477(商品名;DIC(株))
BYK-3560:BYK-3560(商品名;ビックケミー・ジャパン(株))
BYK-361N:BYK-361N(商品名;ビックケミー・ジャパン(株))
DS-21:メガファックDS-21(商品名;DIC(株))
TEGO Flow375:TEGO Flow 375(商品名;エボニックジャパン(株))
【0065】
実施例における測定項目の略称を以下に示す。
Mw:重量平均分子量
Mn:数平均分子量
【0066】
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。得られたポリマー溶液をリン酸-DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)で、ポリマー固形分濃度が約1重量%になるように希釈し、測定に用いた。使用した装置および分析条件は次段落に記載した。標準ポリスチレンは東ソー(株)製TSK標準ポリスチレンを用いた。
【0067】
次に、実施例で使用した装置および分析条件を示す。
<GPC>
装置:Waters社製 2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計
溶剤:リン酸-DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100重量比)
流速:0.40mL/min
カラム温度:50℃
使用カラム:Waters社製 HSPgel RT MB-M
校正曲線用標準試料:東ソー(株)製 TSK標準ポリスチレン
<スピンナー>
装置:ミカサ(株)製 MS-A150
<膜厚測定>
装置:KLA-Tencor Japan(株)製 触針式膜厚計P-16(商品名)
測定方法:3箇所を測定し、その平均値を膜厚とした。
<透過率測定>
装置:日本分光(株)製 紫外可視分光光度計V-670(商品名)
【0068】
[ポリマー(A)の合成]
[合成例1(A1)]
攪拌器付四つ口フラスコに、脱水精製したCP、4-VPを下記の重量で仕込み、さらに重合開始剤V-601を下記の重量で仕込み、乾燥窒素気流下90℃で2時間攪拌した。
CP 27.80g
4-VP 10.00g
V-601 1.90g
【0069】
反応後の溶液を25℃まで冷却し、ポリマー(A-1)の30重量%溶液を得た。溶液の一部をサンプリングし、GPC分析により重量平均分子量を測定した。その結果、得られたポリマー(A-1)の重量平均分子量は5,400であった。この溶液のままで、液晶配向膜用樹脂組成物の調製に用いた。
【0070】
[合成例2および3、比較合成例1~7]
合成例1の方法に準じて、表1に記載の重量の各原料を仕込み、各ポリマーを含有する30重量%溶液を合成した。得られたポリマーの重量平均分子量を表1に示す。尚、比較合成例2(A’-2)では溶液がゲル化し、透明で均一なポリマー溶液を得ることができなかった。得られたポリマーは、ポリマー溶液のままで液晶配向膜用樹脂組成物の調製に用いた。
【0071】
表1
【0072】
<液晶配向膜用樹脂組成物の調製>
市販品や合成例及び比較合成例で得られたポリマーを用い、以下に示すように液晶配向膜用樹脂組成物を調製した。
【0073】
[実施例1]
S-2P(2.00g)、PGMEA(11.30g)、F-477(0.002g)を混合溶解した後、フッ素樹脂製のメンブレンフィルター(孔径:0.2μm)でろ過することにより組成物1を得た。
【0074】
調製した組成物1について、以下のようにして配向能力、透明性、耐熱性、リワーク性、密着性を評価した。評価結果は、表2-1に記載した。
【0075】
<<配向能力評価>>
<配向能力評価用液晶組成物溶液の調製>
予め、評価に使用する重合性液晶組成物溶液を以下のように調製した。
パリオカラーLC242(商品名;BASFジャパン(株))を20.00g、IRGACURE907(商品名;BASFジャパン(株))を1.00g、BYK-361Nを0.020g、さらに溶剤としてトルエンを加えて溶剤が全体の85重量%になるように調製し、均一に混合溶解する。この組成物を重合性液晶組成物溶液(PLC-1)とする。
【0076】
<配向能力評価用薄膜の作成>
液晶配向膜用樹脂組成物を、スピンコーターで、膜厚が約1.5μmになるように回転数を調整して、下地としてのコーニング社製ガラス基板「EAGLE XG」(商品名、厚さ0.7mm)上に塗布した。次いで、組成物が塗布された基板を、ホットプレート上で、60℃で3分間乾燥後、230℃のオーブン内で30分間焼成した。こうして得られた薄膜に対して、レーヨン製のラビング布YA-18-R(商品名;吉川化工(株))を装着したラビング装置を用いてラビング処理を施した。ラビング速度は60mm/sec、ローラー回転数は1,000rpmである。次に、重合性液晶組成物溶液(PLC-1)を該基板上にスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で80℃にて1分間乾燥後、超高圧水銀灯を用いて300mJ/cm照射を行った。露光量はカットフィルターと偏光板は用いず、365nmの照度計を用いて測定した値である。さらに、230℃のオーブン内で30分間ポストベークすることで、配向能力評価用薄膜を有する試験基板を作成し、配向能力の評価を行った。
【0077】
<配向能力評価、測定>
得られた配向能力評価用薄膜を有する試験基板を、直交(クロスニコル)状態の2枚の直線偏光板の間に偏光板に平行な向きで挟み、偏光板に平行な向きを保ちながら当該試験基板を回転させ、バックライトを下から照射して観察した。試験基板を一回転させる間ずっと暗状態が見られることを確認した後、位相差測定装置(OPTIPRO;製品名;シンテック(株))に試験基板をセットし、位相差測定を行った。基板面に対して垂直方向(正面方向)を入射角0°とし、-45°から+45°まで、5°間隔で角度を変えて位相差を測定した。入射角を横軸に、位相差を縦軸にとってプロットした結果、下に凸の曲線が得られており、垂直配向していることが確認できた。表2-1の配向能力(垂直)欄に〇と記載した。プロットした結果を図1に示す。
【0078】
以降の実施例および比較例においても、最初の観察において暗状態が見られ、かつ位相差測定を行った結果、図1と同様の下に凸の曲線が得られた場合を垂直配向能力有(〇)と判断した。また、最初の観察において一回転させる間ずっと明状態が見られる場合は、液晶分子が配向していない状態であり、配向能力(垂直)欄に×と記載した。
【0079】
<透明性評価、透過率測定>
液晶配向膜用樹脂組成物を、スピンコーターで、膜厚が約1.5μmになるように回転数を調整して、コーニング社製ガラス基板EAGLE XG上に塗布した。次いで、組成物が塗布された基板を、ホットプレート上で、60℃で3分間乾燥後、230℃のオーブン内で30分間焼成することで、透過率測定用薄膜を有する試験基板を作成し、透過率測定を行った。透過率は透過波長400nmでの値について評価した。透過波長400nmにおいて、透過率90%以上を透明性〇、90%未満を透明性×とした。
【0080】
<耐熱性測定>
前述した透過率測定用薄膜の作製方法に従い、薄膜を作成した。得られた薄膜付きガラス基板からカッターで薄膜のフィルム片や粉体を切り出し、示差走査熱量測定装置((株)日立ハイテクサイエンス)を用いてガラス転移点の測定を行った。ガラス転移点が100℃以上の場合を○とし、100℃未満の場合を×とした。
【0081】
<リワーク性評価>
液晶配向膜用樹脂組成物を、スピンコーターで、膜厚が約1.5μmになるように回転数を調整して、コーニング社製ガラス基板EAGLE XG上に塗布した。次いで、組成物が塗布された基板を、ホットプレート上で、60℃で15分間乾燥後、25℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸漬した。浸漬した後の基板を目視で観察し、基板上に薄膜が残っていなかった場合を〇(薄膜が溶解しきった)、薄膜が残っていた場合を×(薄膜が溶解しきらなかった)とした。
【0082】
<密着性評価>
前述した透過率測定用薄膜の作製方法に従い、薄膜を作成した。得られた薄膜付きガラス基板を碁盤目剥離試験(クロスカット試験)により評価した。評価は1mm角の碁盤目100個中におけるテープ剥離後の残存碁盤目数を数えた。テープは、3M社製の型番610を使用した。残存数/100が、100~90/100である場合を○、89~50/100である場合を△、49/100以下である場合を×とした。
【0083】
[実施例2~19、比較例1~7]
用いたポリマー、溶剤、添加剤およびその仕込み量を表2-1~表2-4の記載のように変更した以外は実施例1の方法に準じて、組成物2~19、比較組成物1~7を得た。実施例17~19においてポリマー(A)の欄に記載した仕込み量は、ポリマー溶液の仕込み量である。組成物の固形分濃度の計算においては、このうちの30重量%(2.10g)をポリマー固形分、70重量%(4.90g)を溶剤(B)として計算する。比較例1~7においても同様である。
【0084】
得られた組成物それぞれについて、実施例1に準じて各評価を行った。評価結果は表2-1~表2-4に示す。
【0085】
表2-1
【0086】
表2-2
【0087】
表2-3
【0088】
表2-4
【0089】
表2-1~表2-3に示したとおり、実施例1~19は、いずれも得られた薄膜が重合性液晶に対する配向能力および優れた透明性、耐熱性、リワーク性および下地に対する密着性を示した。これと比較し、表2-4中の比較例1、比較例3~6の薄膜は配向能力を示さず、比較例7では配向能力を示したが、保護膜に要求される耐熱性や下地に対する密着性等の特性を満たすことができなかった。このように、比較例の組成物から得られる薄膜は、全ての項目を同時に満たすことはできなかった。ここで比較例2は、使用したポリマー溶液(A’-2)が白色ゲル状であり、均一な液晶配向膜用樹脂組成物が得られなかったため、各評価を行うことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、配向能力と耐熱性及び下地に対する密着性を具備した高透明な薄膜を提供することができる。液晶配向膜および保護膜の機能を有する薄膜として利用することができる。
図1