(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019548
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】付加硬化型フルオロシリコーン組成物、シリコーンゴム、及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 83/08 20060101AFI20230202BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20230202BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20230202BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20230202BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230202BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230202BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230202BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C08L83/08
C08L83/05
C08K9/06
C08K5/544
C08K3/08
C08K3/36
B32B27/00 101
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124336
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】首藤 重揮
(72)【発明者】
【氏名】原 立栄
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AB01B
4F100AK01B
4F100AK52A
4F100AN02A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA23A
4F100GB32
4F100JA06A
4F100JB13A
4F100JB16B
4F100JK02
4F100JK03
4F100JK08
4F100JK12
4F100JL08A
4F100YY00A
4J002CP042
4J002CP081
4J002CP141
4J002DA116
4J002DD006
4J002DJ017
4J002EX078
4J002FB117
4J002FD010
4J002FD017
4J002FD060
4J002FD110
4J002FD146
4J002FD148
4J002FD160
4J002FD200
4J002FD348
4J002GK00
4J002GQ00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属及び熱可塑性樹脂に良好に接着する硬化物を与える23℃で液状である付加硬化型フルオロシリコーン組成物を提供する。
【解決手段】(A)一般式(1)
(式中、R
1、R
4、及びR
5は互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基、xは1~10の整数、mは0~100の整数、nは1~800の整数、ただし、5≦m+n≦800である)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子結合水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)付加反応触媒、(D)有機ケイ素化合物で表面処理した補強性シリカ充填剤および(E)1分子中にトリアルコキシシリル基を3個有するイソシアヌル酸誘導体を含有する、付加硬化型フルオロシリコーン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1、R
4、及びR
5は互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基であり、xは1~10の整数であり、mは0~100の整数であり、nは1~800の整数であり、ただし、5≦m+n≦800である)
で示される、25℃の粘度100~500,000mPa・sを有するオルガノポリシロキサン
(B)ケイ素原子結合水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のケイ素原子結合ビニル基1個当たり(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の個数比が0.5~10となる量、
(C)付加反応触媒:触媒量、
(D)下記一般式(2)で示される有機ケイ素化合物で表面処理した補強性シリカ充填剤
【化2】
(上記式(2)中、R
3は互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は、上記R
3で示される基、又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、pは1≦p≦20の整数である)
(A)成分100質量部に対して10~60質量部、及び
(E)1分子中にトリアルコキシシリル基を3個有するイソシアヌル酸誘導体
(A)成分100質量部に対して0.1~5質量部
を含有することを特徴とする、付加硬化型フルオロシリコーン組成物。
【請求項2】
(E)成分が下記式(3)で表される、請求項1記載の付加硬化型フルオロシリコーン組成物
【化3】
(R
5は、互いに独立に、炭素数1~3のアルキル基である)。
【請求項3】
上記(D)成分において、R2はメチル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基である、請求項1又は2記載の付加硬化型フルオロシリコーン組成物。
【請求項4】
上記式(1)においてxが1である、請求項1~3のいずれか1項記載の付加硬化型フルオロシリコーン組成物。
【請求項5】
23℃で液状である、請求項1~4のいずれか1項記載の付加硬化型フルオロシリコーン組成物。
【請求項6】
注入成形用、圧縮成形用又は射出成形用である、請求項1~5のいずれか1項記載の付加硬化型フルオロシリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項の付加硬化型フルオロシリコーン組成物の硬化物であるフルオロシリコーンゴム。
【請求項8】
請求項7記載のフルオロシリコーンゴムからなる層と、金属又は熱可塑性樹脂からなる層とを有する成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属及び熱可塑性樹脂に良好に接着できる硬化物を与える付加硬化型フルオロシリコーン組成物、及び該組成物を加熱硬化して得られるフルオロシリコーンゴム、並びに該フルオロシリコーンゴムの層と金属または熱可塑性樹脂の層とから成る一体成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状付加硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は、耐ガソリン性や耐油性に優れるため、航空機や車載用ゴム部品、プリンター部品等に使用されてきた(特許文献1)。また、近年、皮脂耐性の点からモバイル部品にも使用されている。これらの部品に用いる液状付加硬化型フルオロシリコーンゴム組成物は、金属や熱可塑性樹脂に接着可能なことが望まれていた。その方法として、成形した金属や熱可塑性樹脂を金型に設置し、その金型に液状フルオロシリコーンゴムを注入し、加熱硬化し、接着させるインサート成形などが挙げられる(特許文献2)。しかし、その接着機能は明らかになっていない。また、金型を使用する注入成形、圧縮成形及び射出成形加工により、液状付加硬化型フルオロシリコーンゴム接着組成物を成形、硬化、接着してなる成形品についてもこれまでに例がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-047290号公報
【特許文献2】特開2013-194113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属及び熱可塑性樹脂に良好に接着する硬化物を与える23℃で液状である付加硬化型フルオロシリコーン組成物及び該組成物を加熱硬化して得られるフルオロシリコーンゴムを提供することを目的とする。さらに本発明は、該フルオロシリコーンゴムの層と金属または熱可塑性樹脂の層とが接着してなる一体成形体を提供することを目的とする。
【0005】
なお、本発明で目的とするフルオロシリコーン組成物は、硬化後シリコーンゴムのマトリックスを構成する主剤として、フルオロアルキル基を有するジオルガノシロキサン単位の繰り返し構造を主鎖として有する直鎖状ポリシロキサンを含有する。一方、一般的なジメチルシリコーン組成物は、ジメチルシロキサン単位の繰り返しから主鎖が構成される直鎖状ジメチルポリシロキサンを主剤とする。この点において、本発明で目的とするフルオロシリコーン組成物はジメチルシリコーン組成物とは本質的に相違する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、付加硬化型フルオロシリコーン組成物に、1分子中にトリアルコキシシリル基を3個有するイソシアヌル酸誘導体を接着性付与成分として含有する付加硬化型フルオロシリコーン組成物が、金属や熱可塑性樹脂に良好に接着する硬化物を与えることを見出した。さらに、該付加硬化型フルオロシリコーン組成物は、注入成形、圧縮成形及び射出成形用材料として好適であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
即ち、本発明は、(A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1、R
4、及びR
5は互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基であり、xは1~10の整数であり、mは0~100の整数であり、nは1~800の整数であり、ただし、5≦m+n≦800である)
で示される、25℃の粘度100~500,000mPa・sを有するオルガノポリシロキサン
(B)ケイ素原子結合水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のケイ素原子結合ビニル基1個当たり(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の個数比が0.5~10となる量、
(C)付加反応触媒:触媒量、
(D)下記一般式(2)で示される有機ケイ素化合物で表面処理した補強性シリカ充填剤
【化2】
(上記式(2)中、R
3は互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は、上記R
3で示される基、又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、pは1≦p≦20の整数である)
(A)成分100質量部に対して10~60質量部、及び
(E)1分子中にトリアルコキシシリル基を3個有するイソシアヌル酸誘導体
(A)成分100質量部に対して0.1~5質量部
を含有することを特徴とする、付加硬化型フルオロシリコーン組成物を提供する。
本発明は好ましくは、液状である上記付加硬化型フルオロシリコーン組成物を提供する。
さらに本発明は該付加硬化型フルオロシリコーン組成物の硬化物であるフルオロシリコーンゴム、及び該シリコーンゴムの成形体、並びに、該シリコーンゴムの層と金属または熱可塑性樹脂から成る層とを有する成形体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の付加硬化型フルオロシリコーン組成物は、金属及び熱可塑性樹脂に良好に接着する、自己接着性を有するフルオロシリコーンゴムを与える。該組成物を加熱硬化して得られるフルオロシリコーンゴム層と金属層や熱可塑性樹脂層とが接着してなる一体成形体を提供し、接着成形や成形品の生産性向上に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0010】
(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は、下記一般式(1)で示される25℃の粘度が100~500,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンである。
【化3】
(式中、R
1、R
4、及びR
5は互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基であり、xは1~10の整数であり、mは0~100の整数であり、nは1~800の整数であり、ただし、5≦m+n≦800である)
【0011】
上記式(1)中、R1、R4、及びR5は互いに独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、トリル基等の炭素数6~12のアリール基、ベンジル基などの炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基である。R1、R4、及びR5は、各々、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、特にメチル基であることが好ましい。
【0012】
mは、0~100の整数であり、好ましくは0~50、より好ましくは0又は1~30、更に好ましくは0、又は1~20、最も好ましくは0、又は1~10の整数である。nは、1~800の整数であり、好ましくは5~750、より好ましくは10~650、更に好ましくは50~650、最も好ましくは100~650の整数である。ただし、(m+n)は、5≦m+n≦800であり、好ましくは10≦m+n≦680、より好ましくは60≦m+n≦680、更に好ましくは120≦m+n≦680の整数である。xは1~10の整数であり、好ましくは1~3であり、最も好ましくはx=1である。
【0013】
(A)成分の25℃における粘度は、硬化物の物理的特性が良好であり、また組成物の取扱い作業性が良好であることから、100~500,000mPa・sの範囲内であり、300~100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。25℃における粘度が100mPa・s未満であると得られる硬化物の強度が不十分となる。500,000mPa・sを超えると組成物の取扱い性が低下する。なお、本発明において、粘度はJIS K 7117-1:1999記載の方法で回転粘度計により測定した値である。(A)オルガノポリシロキサンの重合度は、25℃における粘度が100~500,000mPa・sとなる範囲である。
【0014】
フルオロアルキル基を有するシロキサン単位の個数(すなわちnの値)は、分子中の全シロキサン単位(特には、主鎖を構成する2官能性シロキサン単位の合計(すなわちn+m)に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30~100モル%であるのがよい。上限値は特に制限されず100モル%以下であればよく、95モル%以下、90モル%以下、又は80モル%以下であってもよい。この範囲であれば、炭化水素溶剤に対する優れた耐久性を有することができるので好ましい。
【0015】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分はケイ素原子結合水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは(A)成分とヒドロシリル化付加反応し、硬化剤(架橋剤)として作用する。(B)成分の分子構造に特に制限はなく、例えば、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等の、従来製造されている各種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
【0016】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上(通常、2~200個)、好ましくは3~100個、特に好ましくは3~50個のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiHで示されるヒドロシリル基)を有する。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状又は分岐状構造を有する場合、これらのSiH基は、分子鎖末端(即ち、ジオルガノハイドロジェンシロキシ基)及び分子鎖途中(即ち、分子鎖非末端に位置する2官能性のオルガノハイドロジェンシロキサン単位又は3官能性のハイドロジェンシルセスキオキサン単位)のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0017】
ケイ素原子に結合した水素原子以外のケイ素原子に結合する1価の有機基は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8の、非置換又は置換の、ビニル基等の脂肪族不飽和結合を含有しない一価炭化水素基が例示できる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子等で置換したもの、例えばトリフルオロプロピル基などのフルオロアルキル基が挙げられる。好ましくはメチル基、トリフルオロプロピル基などのフルオロアルキル基である。(B)成分の1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、好ましくは2~300個、より好ましくは3~200個、更に好ましくは4~150個である。
【0018】
(B)成分は室温(25℃)で液状であるのがよい。該(B)成分の25℃における粘度は0.1~1,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは0.5~500mPa・s、更に好ましくは1~200mPa・sである。(B)成分の粘度は低すぎても高すぎても、組成物の作業性が低下する恐れがある。
【0019】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・トリフルオロプロピルメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・トリフルオロプロピルメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体や、上記例示化合物において、メチル基の一部又は全部を他のアルキル基や、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換したものなどが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
(B)成分は、より好ましくは、下記式(6)で表される。
【化4】
式(6)中、R
1’は互いに独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基であり、上記R
1のために例示した基が挙げられる。但し、R
1’のうち少なくとも2つ、好ましくは3~100個、より好ましくは3~50個は水素原子である。x’は1~10の整数であり、好ましくは1~3であり、最も好ましくはx’=1である。kは2~200の整数、好ましくは3~100の整数、より好ましくは5~50の整数であり、qは0~200の整数であり、好ましくは1~100の整数であり、より好ましくは2~100の整数である。k+qは2~300であり、より好ましくは3~200、更に好ましくは4~150であるのがよい。
【0021】
(B)成分の量は、(A)成分中のケイ素原子結合ビニル基1個に対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の個数比が0.5~10個、好ましくは1~5個の範囲内となる量である。(B)成分の量が上記下限値未満であると、得られる組成物は十分に硬化しない。また、(B)成分の配合量が上記上限値を超えると、得られるシリコーンゴムの耐熱性が極端に劣ったものとなる。尚、後述する(A)成分以外のビニル基含有オルガノシロキサンを含む場合は、組成物中のケイ素原子に結合するビニル基の個数に対する、該(B)成分のケイ素原子結合水素原子の個数比が上記範囲を満たせばよい。
【0022】
(C)付加反応触媒
(C)成分は付加反応触媒である。(C)成分は、(A)成分中のビニル基と(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子との付加反応を促進するものであればいかなる触媒であってもよい。通常は、白金族金属系触媒が好適に使用できる。例えば、白金、パラジウム、ロジウム等や塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の、白金族金属又はそれらの化合物が挙げられるが、特に好ましくは白金系化合物である。(C)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
(C)成分の配合量は、触媒としての有効量でよいが、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して、触媒金属元素(白金族金属元素)に換算して質量基準で、通常、0.5~1,000ppm、好ましくは1~500ppmの範囲であり、10~100ppmの範囲であることがより好ましい。かかる範囲を満たすと、付加反応の反応速度が適切なものとなり、かつ硬化物の耐熱性が良好となる。
【0024】
(D)補強性シリカ充填剤
(D)成分は、下記式(2)で表される分子鎖両末端にシラノール基を有する直鎖状有機ケイ素化合物で表面処理した補強性シリカである。
【化5】
上記式(2)中、R
3は互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる基であり、例えば上記R
1のために記載した例示が挙げられる。好ましくはメチル基である。R
2は、上記R
3で示される基、又は3,3,3-トリフルオロプロピル基である。好ましくは、R
2は、メチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、少なくとも1のR
2は3,3,3-トリフルオロプロピル基であるのがよい。pは、1~20の整数であり、好ましくは3~9の整数である。
本発明において該補強性シリカ充填剤は、得られるシリコーンゴムに十分な強度を与えるために必須である。
【0025】
上記分子鎖両末端がシラノール基で封鎖された直鎖状有機ケイ素化合物で表面処理された補強性シリカ充填剤を含有することで、本組成物の粘度及びゴム成形品のタック感を低くすることができる。
【0026】
上記補強性シリカ充填剤としては、従来からシリコーンゴム組成物に使用されているものを用いることができ、沈澱シリカ(湿式シリカ)、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)、焼成シリカ等が好適である。特にはヒュームドシリカが好適である。
【0027】
(D)成分は、表面未処理のシリカを予め上記式(2)の有機ケイ素化合物で表面処理したものでよい。あるいは、表面未処理のシリカと本発明のポリシロキサン分(すなわち(A)成分)とを混練し、上記式(2)の有機ケイ素化合物を添加して、好ましくは少量の水の存在下に、加熱混合して混合物中で表面処理してもよい。また、本発明において上記式(2)の有機ケイ素化合物で表面処理されるシリカは、ジメチルジクロロシラン等で予め表面処理された乾式シリカ(例えば、アエロジルR-974等)であってもよい。このようにジメチルジクロロシラン等で表面処理された乾式シリカの表面を、上記式(2)有機ケイ素化合物でさらに処理するのが好ましい。
【0028】
上記式(2)の有機ケイ素化合物によりシリカを表面処理する際の処理量は、上記式(2)の有機ケイ素化合物で表面処理する前のシリカ40質量部に対して上記有機ケイ素化合物を1~30質量部、特に2~20質量部程度であることが好ましい。
【0029】
上記式(2)の有機ケイ素化合物で表面処理する前のシリカのBET法による比表面積は、50m2/g以上、好ましくは100~400m2/g、より好ましくは150~350m2/gである。比表面積が50m2/gより小さいと十分な強度が得られないばかりか、ゴム成形品の外観も良くない場合がある。400m2/gより大きいと配合が困難になったりする場合がある。表面処理後のシリカのBET法による比表面積も、上記範囲内にあればよい。
【0030】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、10~60質量部、好ましくは15~55質量部である。配合量が上記下限値未満では、得られるシリコーンゴムが十分なゴム強度を有さず、また上記上限値を超えると組成物中への配合が困難になる。
【0031】
(E)接着性付与剤
(E)成分は、一分子中にトリアルコキシ基を3個有するイソシアヌル酸誘導体である。該(E)成分は接着性付与剤である。該(E)成分を含有することで本発明の付加硬化型フルオロシリコーン組成物から得られる硬化物は自己接着性を有することができる。より詳細には、本発明の(E)成分は、1分子中にトリメトキシシリル基、及びトリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基を3個有するイソシアヌル酸誘導体である。より好ましくは、トリアルコキシシリル置換アルキル基を3個有するイソシアヌル酸誘導体である。上記トリメトキシシリル置換アルキル基等のアルキル基としては、炭素原子数2~10のエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもプロピル基が好ましい。該(E)成分を配合することにより、得られる組成物は金属や熱可塑性樹脂に対して優れた接着性を有することができる。
【0032】
(E)成分として、好ましくは下記式(3)で示され、1分子中にトリアルコキシシリル置換プロピル基を3個有するイソシアヌル酸誘導体である。
【化6】
(R
6は、互いに独立に、炭素数1~3のアルキル基である)
トリアルコキシ基は、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基が挙げられる。
【0033】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部、好ましくは0.2~3.5質量部、より好ましくは0.3~3.0質量部の範囲である。(E)成分の配合量が上記下限値未満では、得られる硬化物は金属や熱可塑性樹脂に対する良好な接着性を有することができない。また上記上限値超では、硬化物の耐熱性が著しく低下してしまう可能性がある。
【0034】
本発明の付加硬化型フルオロシリコーン組成物において、前記(A)~(E)成分以外のその他の成分を、ゴム成形品の外観を損なわない範囲において任意で含んでよい。例えば、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱性付与剤、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール誘導体等の圧縮永久歪向上剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、上記(E)成分以外の接着性付与剤、及びチクソ性付与剤等が挙げられる。
【0035】
また例えば、上記(A)成分以外の、両末端ビニル基を含有し、フルオロアルキル基を有さないジメチルポリシロキサンを含むことができる。より詳細には、平均重合度が1,500以下の、室温で液状の両末端ビニル基含有オルガノポリシロキサンである。平均重合度は好ましくは1,500以下、通常100~1,500、好ましくは150~1,100であるのがよい。また、JIS K 6249:2003記載の回転粘度計による25℃での粘度は1,000~100,000mPa・s、好ましくは5,000~100,000mPa・sであるのがよい。該ジメチルポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対し、1~20質量部、好ましくは1~15質量部である。
【0036】
また、本発明の組成物はビニル基含有MQレジンを含むことができる。より詳細には、ビニル基含有量が0.01~5ミリモル/gであり、好ましくは0.1~1ミリモル/gであるMQレジンである。M単位のQ単位に対するモル比(M単位/Q単位)は0.5~1.5であるのがよく、好ましくは0.7~1.2である。ビニル基含有MQレジンの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量が、2,000~8,000、特に4,000~6,000であることが好適であり、これは室温で通常固体状である。MQレジンの配合量は、(A)成分100質量部に対し、1~20質量部、好ましくは1~15質量部である。
【0037】
本発明の付加硬化型フルオロシリコーン組成物は、上記(A)~(E)成分、及び必要に応じて各任意成分を、ニーダー、プラネタリーミキサーなどの通常の混合撹拌器、混練器等を用いて均一に混合することにより調製することができる。
【0038】
本発明の組成物は好ましくは23℃で液状であり、作業性等の点から、23℃において、せん断速度0.9s-1での粘度が8,000Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100~7,000Pa・s、更に好ましくは500~6,500Pa・s、特に好ましくは1,600~6,000Pa・s、特には2,000~6,000Pa・sである。この粘度が8,000Pa・sを超える場合には、注入、圧縮及び射出成形を行う際に材料供給に時間がかかり、生産性が著しく低下することがある。なお、本発明において、上記せん断速度下での粘度の測定は、精密回転式粘度計(Thermo Fisher Scientific製)を用いて行ったものである。
【0039】
本発明の付加硬化型フルオロシリコーン組成物は2液型とすることもできる。この場合、架橋剤としての(B)成分と付加反応触媒の(C)成分とが同一の組成物(A液又はB液)中に混在しないように各成分を適宜分割すればよく、例えば、(A)成分、(C)成分及び(D)成分を含有するA液と、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分を含有するB液とからなる2液型の組成物とすることができ、等質量又は等容量で混合できるように調製することが好ましい。
【0040】
本発明の付加硬化型フルオロシリコーン組成物は、注入成形、圧縮成形、射出成形等各種の成形方法に適用することができ、金属や特定の熱可塑性樹脂に接着することから、接着成形に好適に使用できる。本発明はさらに、付加硬化型フルオロシリコーン組成物の硬化物であるフルオロシリコーンゴムからなる層と、金属又は熱可塑性樹脂からなる層とを有する成形体、好ましくは一体成形体を提供する。以下、注入成形、圧縮成形、又は射出成形によるフルオロシリコーンゴムの成形方法について詳細に説明する。尚、本発明において、一体成型体とは、例えば樹脂パーツや金属パーツを金型にインサートしてシリコーンゴムを充填することで強固に密着し一体化させたものである。
【0041】
注入成形の場合、付加硬化型フルオロシリコーン組成物は、A液とB液の2液タイプに分割される。2液に分割された材料は各A液及びB液を等量混合し、金属金型内に注入され、恒温槽で加熱されて硬化し、シリコーンゴムが成形される。圧縮成形の場合、プレス機などの圧縮機に金属金型を設置し、注入成形と同様に上記A液及びB液を等量混合し、金型に注入され、加熱されて硬化し、シリコーンゴムが成形される。射出成形の場合、各A液及びB液が材料供給ポンプから定量器に供給される。定量器からA液とB液が等量の割合で材料供給ラインを通じて合流する。材料は成形機本体のスクリュー部とシリンダー部で混合される。その後、金型に射出され、金型内で加熱されて硬化し、シリコーンゴムが成形される。
【0042】
付加硬化型フルオロシリコーン組成物の硬化条件は、公知の液状付加反応硬化型シリコーン組成物と同様でよい。例えば、硬化温度は80~200℃、特に100~180℃であり、3~60分間、特に5~30分間加熱することにより硬化成形することができる。
【0043】
本発明の付加硬化型フルオロシリコーン組成物を加熱硬化して得られたフルオロシリコーンゴム成形品は、耐ガソリン性、耐油性に優れることから、航空機や車載用ゴム部品、プリンター部品等又、近年、皮脂耐性の点からモバイル部品にも好適に用いることができる。
【実施例0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0045】
なお、(A)成分の粘度は、25℃においてBH型回転粘度計(ロータNo.7、回転数10rpm)により測定した。(B)成分の粘度は、25℃においてBL型回転粘度計(ロータNo.2、回転数60rpm)により測定した。
【0046】
組成物の粘度測定は以下の方法にて行った。
精密回転式粘度計(Thermo Fisher Scientific製)のコーン&プレートの測定治具を使用し、23℃におけるせん断速度0.9s-1での組成物の粘度を測定した。
【0047】
硬化物の硬さ、引張強さ、切断時伸び、及び引裂強さ(アングル)の測定は以下の方法にて行った。
組成物を150℃/10分のプレスキュアにて1次加硫した。該硬化物について、JIS K 6249:2003の記載に基づき、硬さ、引張強さ、切断時伸び、及び引裂強さ(アングル)を測定した。
【0048】
硬化物の各種基材に対するせん断接着強さ測定は以下の方法にて行った。
(1)寸法が幅25mm、長さ100mm、及び厚さ0.3mmを有する平板形状のステンレス鋼(SUS)2枚の間に組成物を充填し、120℃の恒温槽で30分間加熱硬化して、ゴム層の接着面積25mm×10mm、ゴム層の厚さ2mmを有する試験片を作製した。
(2)寸法が幅25mm、長さ100mm、厚さ1mmの平板形状アルミニウム(Al)2枚の間に組成物を充填し、120℃の恒温槽で30分間加熱硬化して、ゴム層の接着面積25mm×10mm、ゴム層の厚さ2mmを有する試験片を作製した。
(3)寸法が幅25mm、長さ100mm、厚さ2mmの平板形状ポリアミド6樹脂(PA6樹脂)2枚の間に組成物を充填し、120℃の恒温槽で30分間加熱硬化して、ゴム層の接着面積25mm×10mm、ゴム層の厚さ2mmを有する試験片を作製した。
上記各試験片について、接着面に対して水平方向の引張り応力を印加して、せん断接着強さを測定した。
【0049】
下記実施例及び比較例で使用した各成分は以下の通りである
(A)成分:下記式(1)
【化7】
で示される両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が80.8Pa・sであるトリフルオロプロピルメチルポリシロキサン(ビニル基含有量4.5×10
-5mol/g)
(D)成分:BET法による比表面積が200m
2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR-974)と、
下記式(2)で示されるシラノール化合物
【化8】
(B)架橋剤:下記式(3)で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサン(粘度0.06Pa・s、SiH基量0.0047mol/g)
【化9】
(C)白金触媒(Pt濃度 0.5質量%)
(E)接着付与剤:下記式(5)で表される化合物
【化10】
(F)25℃での粘度が約5Pa・sであり、平均重合度が約448の両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(1分子当たりのビニル基数:2個、ビニル基含有量:0.060ミリモル/g)
(G)(CH
3)
3SiO
1/2(M)単位、(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2(M)単位、及びSiO
4/2(Q)単位からなる共重合体(1分子当たりのビニル基数:4.0個、ビニル基含有量は0.84ミリモル/g、1分子中のM単位のQ単位に対するモル比(M単位/Q単位)は0.85)
反応制御剤:エチニルシクロヘキサノール
圧縮永久歪向上剤:下記式(4)で示されるベンゾトリアゾールシラン
【化11】
耐熱性付与剤:酸化セリウム
【0050】
[実施例1]
(A)上記式(1)で示されるトリフルオロプロピルメチルポリシロキサン(ビニル基含有量4.5×10-5mol/g)55質量部、上記ヒュームドシリカ40質量部、上記式(2)で示されるシラノール化合物6.6質量部、水0.55質量部、及び1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン0.3質量部を室温で30分混合後、160℃に昇温し、3時間攪拌を続けた。さらに上記式(1)で表されるトリフルオロプロピルメチルポリシロキサン65質量部を添加し、30分混合後、シリコーンゴムベースを得た。
上記シリコーンゴムベース320質量部、上記式(1)で表されるトリフルオロプロピルメチルポリシロキサン17質量部(なお、(A)成分100質量部当たりの(D)成分量は31.1質量部である)、上記(F)両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン2.5質量部、上記(G)MQ単位からなる共重合体2.5質量部、及び(B)上記式(3)で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサン 8.3質量部(配合成分中のケイ素原子結合ビニル基の個数に対する該(B)成分中のSiH基の個数比[SiH/SiVi]=2.3、上記(A)成分のSiViに対する(B)成分中のSiH基の個数比[SiH/SiVi]は3.6)、上記反応制御剤0.08質量部、(C)白金触媒(Pt濃度 0.5質量%)0.4質量部、上記圧縮永久歪向上剤0.015質量部、上記耐熱性付与剤0.57質量部、及び(E)上記式(5)で表される化合物1.7質量部((A)成分100質量部に対する(E)成分量は1.4質量部)を適宜混合し、23℃で液状の付加硬化型フルオロシリコーン組成物1を調製した。
得られた付加硬化型フルオロシリコーン組成物1について上述した方法にて粘度を測定した。また、上記の方法にて組成物を硬化し、硬化物の硬さ、引張強さ、切断時伸び、及び引裂強さ(アングル)、並びに各種基材に対するせん断接着強さを測定した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
実施例1において上記(E)接着付与剤の量を3.4質量部(A成分100質量部に対する(E)成分量は2.8質量部)に変更した以外は実施例1を繰り返して23℃で液状の付加硬化型フルオロシリコーン組成物2を調製した。
得られた付加硬化型フルオロシリコーン組成物2について、上記方法にて粘度を測定した。また、上記の方法にて組成物を硬化し、硬化物の硬さ、引張強さ、切断時伸び、及び引裂強さ(アングル)、並びに各種基材に対するせん断接着強さを測定した。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1]
実施例1において上記(E)接着付与剤を添加しなかった他は実施例1を繰り返して23℃で液状の付加硬化型フルオロシリコーン組成物3を調製した。
得られた付加硬化型フルオロシリコーン組成物3について、上記方法にて粘度を測定した。また、上記の方法にて組成物を硬化し、硬化物の硬さ、引張強さ、切断時伸び、及び引裂強さ(アングル)、並びに各種基材に対するせん断接着強さを測定した。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例2]
実施例1において上記(E)接着付与剤を(A)成分100質量部に対して5質量部超となる量で配合したところ得られた組成物は粘度が高くハンドリング性に劣った。
【0054】
【0055】
上記表1に示す通り、本発明のシリコーン組成物は、(E)成分を含むことによりアルミニウム板、ステンレス板、及びポリアミド樹脂のいずれに対しても優れた接着性を有する。
従って、本発明の付加硬化型フルオロシリコーン組成物は、金属及び熱可塑性樹脂に良好に接着する、自己接着性を有するフルオロシリコーンゴムを与える。