(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019603
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】箔押しシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B41M5/00 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124473
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 雄也
(72)【発明者】
【氏名】本田 聡志
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】関 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】岡 裕二
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 友美
(72)【発明者】
【氏名】新保 洋介
【テーマコード(参考)】
2H286
【Fターム(参考)】
2H286CA01
2H286CA15
(57)【要約】
【課題】金属箔の剥がれを抑制しつつ繊維シート上に金属箔を転写できる箔押しシートの製造方法を提供する。
【解決手段】
箔押しシートの製造方法は、繊維を有する繊維シート(10)と、金属箔を含む転写体(20)と、を搬送方向(MD)に沿って搬送する搬送工程(S10)と、転写体を繊維シートに対して間欠的に押圧し、繊維シート上に金属箔を転写する転写工程(S30)と、を有する。転写工程の後に、繊維シートと転写体の間に分離部材(110)を移動させ、転写体と繊維シートを分離する分離工程(S40)と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を有する繊維シートと、金属箔を含む転写体と、を搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、
前記転写体を前記繊維シートに対して間欠的に押圧し、前記繊維シート上に前記金属箔を転写する転写工程と、を有する箔押しシートの製造方法であって、
前記転写工程の後に、前記繊維シートと前記転写体の間に分離部材を移動させ、前記転写体と前記繊維シートを分離する分離工程を有する、箔押しシートの製造方法。
【請求項2】
前記分離工程において、前記分離部材は、前記繊維シートの表面又は前記転写体の表面に沿って移動し、前記転写体の押圧部分を横断する、請求項1に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項3】
前記転写工程または前記分離工程において前記繊維シート及び前記転写体の搬送を停止する、請求項1又は請求項2に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項4】
前記転写工程の後に、前記転写体を巻き取る巻き取り工程を有し、
前記分離工程は、前記転写工程と前記巻き取り工程の間に実行される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項5】
前記転写工程は、前記繊維シート側に位置する受け部材と、前記転写体側に位置する押圧部材と、によって前記繊維シートに対して前記転写体を押圧しており、
前記押圧部材の温度は、前記受け部材の温度よりも高い、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項6】
前記転写工程は、前記転写体を前記繊維シートに押圧する押圧位置に対して前記搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ位置するニップ機構によって前記転写体と前記繊維シートが挟まれている状態において、前記転写体を前記繊維シートに対して押圧する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項7】
前記分離工程は、前記搬送方向の上流側の前記ニップ機構と前記搬送方向の下流側の前記ニップ機構の間において、前記分離部材を移動させる、請求項6に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項8】
前記繊維シートは、前記繊維の集合体である不織布層と、前記不織布層に積層された補強層と、を有し、
前記転写工程は、前記不織布層上に前記転写体を転写する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項9】
前記繊維シートの5%伸長時の前記搬送方向の引張強度は、10N以上20N以下である、請求項8に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項10】
前記補強層の厚みは、前記繊維シート全体の厚みに対する1%以上5%以下である、請求項8又は請求項9に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項11】
前記転写工程において前記転写体を前記繊維シートに対して押圧した押圧部分は、平面視にて、前記分離部材の移動方向の上流側に位置する上流部分と、前記移動方向の下流側に位置する下流部分と、を有し、
前記上流部分の前記移動方向と交差する交差方向の長さは、前記押圧部分の前記交差方向の最大長さよりも短い、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項12】
前記上流部分の前記交差方向の長さは、前記下流部分の前記交差方向の長さよりも短い、請求項11に記載の箔押しシートの製造方法。
【請求項13】
前記分離工程は、前記搬送工程における前記搬送方向の下流側から上流側に向かって前記分離部材を移動する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の箔押しシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維シート上に、金属箔を転写した箔押しシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(例えば、段落0001から0008、
図1)には、金属箔を、帯片(紙片又は皮片)に金属箔を転写する箔押しシートの製造方法が開示されている。特許文献1の製造方法は、金属箔を含む転写フィルムを用い、版押し鉄で転写フィルムを押圧する。転写フィルムは、箔押し鉄によって押圧されると、帯片に接触する。転写フィルムにおいて版押し鉄で押圧された押圧部分は、帯片に転写され、転写フィルムにおいて版押し鉄で押圧されなかった部分は、帯片に転写されずに転写フィルムとして残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
上述の箔押しシートの製造方法は、転写フィルムの一部(押圧部分)が帯片に転写された後に、残り転写フィルムと帯片を搬送しつつ離間させる。このとき、押圧部分と帯片の接合強度が十分でない場合には、押圧部分が帯片から剥がれてしまい、押圧部分全体を安定して帯片に転写できないことがあった。特に、帯片が繊維を有する繊維シートの場合には、繊維シートの表面に細かい凹凸が形成されているため、押圧部分と繊維シートの接合面積を確保できず、押圧部分全体を安定して帯片に転写できず、押圧部分の剥がれが発生することがあった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みて為されたものであり、金属箔の剥がれを抑制しつつ繊維シート上に金属箔を転写できる箔押しシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る箔押しシートの製造方法は、繊維を有する繊維シートと、金属箔を含む転写体と、を搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、前記転写体を前記繊維シートに対して間欠的に押圧し、前記繊維シート上に前記金属箔を転写する転写工程と、を有する。前記転写工程の後に、前記繊維シートと前記転写体の間に分離部材を移動させ、前記転写体と前記繊維シートを分離する分離工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、箔押しシートの製造方法を説明するための図である。
【
図2】
図2は、転写工程及び分離工程を説明するための図である。
【
図3】
図3は、金属箔が転写された繊維シートの平面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る箔押しシートの製造方法は、繊維を有する繊維シートと、金属箔を含む転写体と、を搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、前記転写体を前記繊維シートに対して間欠的に押圧し、前記繊維シート上に前記金属箔を転写する転写工程と、を有する。前記転写工程の後に、前記繊維シートと前記転写体の間に分離部材を移動させ、前記転写体と前記繊維シートを分離する分離工程と、を有する。繊維シートと転写体を分離部材によって分離することにより、繊維シートと転写体の押圧部分に対して後述する転写層を徐々に剥離させることが可能となる。加えて、分離部材を有しない形態にあっては、押圧部分の周囲(非押圧部分)を繊維シートから引き剥がす力によって剥離させるため、押圧部分と非押圧部分の境界全体を綺麗に剥離させ難いことがある。しかし、分離部材によって、押圧部分と非押圧部分の境界に対して直線的に力が加わるとともに、押圧部分の内側にも同様の力がかかる。よって、押圧部分と非押圧部分を分離する力をかけるとともに、押圧部分を繊維シート側に力をかけて転写を安定させることができる。よって、転写体の押圧部分が繊維シートから剥がれる不具合を抑制し、金属箔を安定して繊維シート上に転写できる。
【0009】
好ましい態様によれば、前記分離工程において、前記分離部材は、前記繊維シートの表面又は前記転写体の表面に沿って移動し、前記転写体の押圧部分を横断する。本態様によれば、分離部材が繊維シートの表面又は転写体の表面に沿って移動するため、分離部材が転写体等に接触する際の接触角度が鋭角となり、剥離時の抵抗を抑え、転写体の押圧部分が繊維シートから剥がれる不具合をより抑制できる。加えて、分離部材が転写体の押圧部分を横断するため、押圧部分の全体を分離部材で分離することができる。
【0010】
好ましい態様によれば、前記転写工程または分離工程において、前記繊維シート及び前記転写体の搬送を停止する。本態様によれば、繊維シート及び転写体の搬送を停止した状態で、転写工程を実行することにより、転写時の位置ずれを抑制できる。また、停止状態で分離工程を実行することにより押圧部分と非押圧部分の境界に対して直線的に力をかけて転写体の押圧部分が繊維シートから剥がれる不具合をより抑制し、金属箔を安定して繊維シート上に転写できる。
【0011】
好ましい態様によれば、前記転写工程の後に、前記転写体を巻き取る巻き取り工程を有する。前記分離工程は、前記転写工程と前記巻き取り工程の間に位置する。本態様によれば、転写体の転写される部分(押圧部分)と転写されない部分(非押圧部分)を分離部材によって分離した後に、巻き取り工程において転写体を巻き取ることができる。転写体を分離した後に巻き取ることにより、綺麗に転写が行なわれなかった繊維シートの搬送を抑制できる。
【0012】
好ましい態様によれば、前記転写工程は、前記繊維シート側に位置する受け部材と、前記転写体側に位置する押圧部材と、によって前記繊維シートに対して前記転写体を押圧している。前記押圧部材の温度は、前記受け部材の温度よりも高い。本態様によれば、押圧部材の温度が高いため、転写体を押圧する際に熱量を付与し転写体を繊維シートに定着させることができる。一方、受け部材の温度が低いので、繊維シートに対する温度によるダメージを抑制でき、繊維シートの柔らかな触感を保持できる。
【0013】
好ましい態様によれば、前記転写工程は、前記転写体を前記繊維シートに押圧する押圧位置に対して前記搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ位置するニップ機構によって前記転写体と前記繊維シートが挟まれている状態において、前記転写体を前記繊維シートに対して押圧する。本態様によれば、転写工程の押圧時に、繊維シートと転写体の位置ずれを抑制でき、金属箔を安定して繊維シート上に転写できる。
【0014】
好ましい態様によれば、前記分離工程は、前記搬送方向の上流側の前記ニップ機構と前記搬送方向の下流側の前記ニップ機構の間において、前記分離部材を移動させる。本態様によれば、分離部材は、ニップ機構によって転写体と繊維シートが挟まれた部分の間において、繊維シートと転写体を分離する。分離部材によって繊維シートと転写体を分離する際に、繊維シートと転写体の移動を抑制でき、押圧部分に対して分離部材を意図した位置で当てて、押圧部分と非押圧部分を分断できる。
【0015】
好ましい態様によれば、前記繊維シートは、前記繊維の集合体である不織布層と、前記不織布層に積層された補強層と、を有する。転写工程は、前記不織布層上に前記転写体を転写する。本態様によれば、繊維シートが補強層を有することにより、転写工程による加圧等によるダメージを抑制できる。また、繊維シートが補強層を有することにより、搬送時等における繊維シートの伸びを抑制でき、転写時の位置ずれを抑制できる。
【0016】
好ましい態様によれば、前記繊維シートの5%伸長時の前記搬送方向の引張強度は、10N以上20N以下である。本態様によれば、5%伸長時の搬送方向の引張強度が10N以上であることにより、繊維シートの搬送時における繊維シートの延伸を抑制でき、転写時に位置合わせし易い。また、5%伸長時の搬送方向の引張強度が20N以下であるため、繊維シートの柔軟性を確保でき、金属箔の押圧時に転写体に追従し易く、転写体から繊維シートへの金属箔の転写を円滑に行うことができる。また、繊維シートの柔軟性を確保し、肌触りを良好に保つことができる。
【0017】
好ましい態様によれば、前記補強層の厚みは、前記繊維シート全体の厚みに対する1%以上5%以下である。本態様によれば、補強層の厚みが5%以下であり、繊維シートにおける繊維層の厚みの比率が高いため、繊維シートの柔軟性を確保でき、金属箔の押圧時に転写体に追従し易く、転写体から繊維シートへの金属箔の転写を円滑に行うことができる。また、繊維シートの柔軟性を確保し、肌触りを良好に保つことができる。また、補強層の厚みが1%以上であるため、補強層の補強効果を確保し、転写工程による加圧等によるダメージによって補強層が破断することを抑制できる。また、補強層によって搬送時等における繊維シートの伸びを抑制でき、転写時の位置ずれを抑制できる。
【0018】
好ましい態様によれば、前記転写工程において前記転写体を前記繊維シートに対して押圧した押圧部分は、平面視にて、前記分離部材の移動方向の上流側に位置する上流部分と、前記移動方向の下流側に位置する下流部分と、を有する。前記上流部分の前記移動方向と交差する交差方向の長さは、前記押圧部分の前記交差方向の最大長さよりも短い。本態様によれば、分離部材は、押圧部分の上流部分に最初に当たる。当該上流部分の交差方向の長さが比較的短いため、分離部材が押圧部分に当たった際の抵抗を低減し、押圧部分と非押圧部分を円滑に分離できる。
【0019】
好ましい態様によれば、前記上流部分の前記交差方向の長さは、前記下流部分の前記交差方向の長さよりも短い。分離部材は、押圧部分の上流部分に当たり、そこから下流部分に向かって移動する。このとき、上流部分の面積が比較的小さいため、押圧部分と分離部材が接触面積を抑え、剥離時の抵抗を抑え、転写体の押圧部分が繊維シートから剥がれる不具合をより抑制できる。
【0020】
好ましい態様によれば、前記分離工程は、前記搬送工程における前記搬送方向の下流側から上流側に向かって前記分離部材を移動する。本態様によれば、繊維シート等の搬送方向と、分離部材の移動方向と、が一致する形態と比較して、分離部材の分離する作業が完了した時点(搬送方向の上流側に分離部材が移動した時点)で、繊維シートの搬送を行うことができ、生産効率を向上できる。
【0021】
(2)箔押しシートの製造方法の構成
以下、図面を参照して、実施形態に係る箔押しシートの製造方法について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0022】
図1は、実施形態に係る箔押しシートの製造方法を説明するための図である。当該製造方法によって製造される箔押しシートは、繊維を有する繊維シート10に金属箔を転写したシートである。当該箔押しシートの用途は、特に限定されず、例えば、吸収性物品の外面を構成する外面シートや、吸収性物品のファスニングテープを止着するターゲットシートに用いることができる。繊維シート10は、繊維を有していればよく、不織布及び織布によって構成されてもよいし、不織布等とフィルムの積層シートであってよい。積層シートの場合には、不織布等の繊維が配置された面に、金属箔を接着する。繊維シート10は、繊維間に隙間が形成されており、その表面に細かい凹凸が設けられている。転写体20は、金属箔を構成する蒸着層を少なくとも有する。金属箔は、金属を薄紙状に打ち延ばしたものであり、金属としては、金、白金、銀、アルミニウム、スズを例示できる。転写体20は、繊維シート10側から離れる側に向かって、接着層、蒸着層、着色層、離形層、ベース層が順に積層されている。転写前において、各層は、一体化しており、転写時に、離形層とベース層が離間し、転写層(接着層、蒸着層、着色層及び離形層)25が繊維シート10上に転写され、ベース層21は、転写されずに搬送方向MDの下流側に搬送される。
【0023】
箔押しシートの製造方法は、搬送工程S10と、ニップ工程S20と、転写工程S30と、分離工程S40と、ニップ解除工程S50と、巻き取り工程S60と、を有してよい。ニップ工程S20とニップ解除工程S50は、任意の工程であってよく、実行されてなくてもよい。箔押しシートの製造方法S100の一部について説明するが、下記にて説明していない他の工程は、従来の箔押しシートの製造方法を適用できる。以下、搬送方向MDは、資材である繊維シート10及び転写体20の搬送方向である。資材は、
図1における左側の搬送方向MDの上流側から、
図1における右側の搬送方向MDの下流側に向かって連続的に搬送される。
【0024】
搬送工程S10は、繊維を有する繊維シート10と、金属箔を含む転写体20と、を搬送方向MDに沿って搬送する。より詳細には、搬送工程S10は、搬送方向MDに連続した繊維シート10が巻かれた繊維ロール101から繊維シート10を順次繰り出すとともに(S11)、搬送方向MDに連続した転写体20が巻かれた転写ロール102から転写体20を順次繰り出す(S12)。
【0025】
ニップ工程S20は、ニップ機構105によって繊維シート10と転写体20を挟む。ニップ機構105は、転写工程S30を実行する転写機構106、107に対する搬送方向MDの上流側と下流側にそれぞれ設けられてよい。上流側のニップ機構105と下流側のニップ機構は、それぞれ一対のロールによって構成され、一対のロールによって繊維シート10と転写体20を挟む。ニップ機構105によって繊維シート10と転写体20を挟むことにより、繊維シート10と転写体20のずれを抑制でき、位置を安定させた状態で、転写工程S30を実行できる。搬送方向MDの上流側のニップ機構105は、繊維シート10と転写体20が合流した合流位置P11よりも下流側、かつ転写機構106、107よりも上流側に位置する。搬送方向MDの下流側のニップ機構105は、転写機構106、107よりも下流側、かつ繊維シート10と転写体20が離間する離間位置P12よりも上流側に位置する。
【0026】
転写工程S30は、転写体20を繊維シート10に対して間欠的に押圧し、繊維シート10上に金属箔を含む転写層25を転写する。
図2は、転写工程S30及び分離工程S40を説明するための図である。
図2(a)は、転写工程S30を実行する前の状態を示しており、繊維シート10と転写体20が対向して配置されている。転写工程S30は、
図1に示す押圧部材106と受け部材107を有する押圧機構によって、転写体20及び繊維シート10を挟み込み、転写体20を構成する金属箔を含む転写層25を繊維シート10上に接着する。押圧部材106は、転写体20側に配置され、受け部材107は、繊維シート10側に配置されてよい。押圧部材106は、上下方向に繰り返し移動可能に構成され、間欠的に転写体20を繊維シート10に向けて押圧する。より詳細には、押圧部材106は、
図2(a)に示す転写体20から離れた位置から、転写体20に近づく方向に移動し、
図2(b)に示すように、転写体20を繊維シート10に押圧し、さらに繊維シート10が受け部材107に当接するまで押圧する。次いで、押圧部材106は、押圧を解除し
図2(c)に示すように転写体20から離れた位置に向かって移動する。すなわち、押圧部材106は、転写体20から離れた離間位置(
図2(a)及び(c)に示す位置)と、転写体20に当接し、転写体20を繊維シート10に押圧しさらに繊維シート10が受け部材107に当接する位置まで押圧される位置と、の間を繰り返し移動する。押圧部材106の往復動作が行なわれ
図2(c)の状態になると押圧部分の転写層25のみが繊維シート10に接着され転写工程S30が完了する。
【0027】
分離工程S40は、転写工程S30の後に、繊維シート10と転写体20の間に分離部材110を移動させ、転写体20と繊維シート10を分離する。分離部材110は、転写層25が接着された繊維シート10と、転写体20との間を移動する。
図2(d)は、押圧部分を横断するように分離部材110を移動させた状態である。本実施の形態の分離部材110の移動方向LDは、搬送方向MDの下流側から上流側に向かっており、
図2(d)は、押圧部分よりも搬送方向MDの下流側に位置していた分離部材110が、押圧部分よりも搬送方向MDの上流側に移動した状態である。上述の転写工程S30において、転写体20の転写層25のみが繊維シート10に接着されているため、分離部材110が押圧部分を横断することにより、繊維シート10に転写層25が接着した状態で、転写体20のベース層21が繊維シート10から分離する。分離部材110は、シート同士を剥離させるために、その厚みが薄いことが好ましく、好適には、3mm以下であってよい。また、シートの表面を滑らかに滑ることが好ましく、金属製の片刃であってよく、刃の角度は、10度以下であってよい。転写体20を繊維シート10に対して間欠的に押圧して転写する形態では、当該押圧を解除して繊維シート10と転写体20を分離させる際に、繊維シート10と転写体20が互いに対向する面同士の剥離になり、押圧部分(転写される部分)と非押圧部分(転写されない部分)の境界全体が一気に破断することがある。そのため、当該破断時の抵抗が強くなり易く、一旦繊維シート10に転写された押圧部分(転写層)が繊維シート10から意図せずに剥がれてしまうことがある。しかし、繊維シート10と転写体20を分離部材110によって分離することにより、繊維シート10と転写体20の押圧部分において転写層25とベース層21を徐々に剥離させることが可能となる。加えて、分離部材110を有しない形態にあっては、押圧部分の周囲(非押圧部分)を繊維シート10から引き剥がす力によって剥離させるため、押圧部分と非押圧部分の境界全体を綺麗に剥離させ難いことがある。しかし、分離部材110によって、押圧部分と非押圧部分の境界に対して直線的に力が加わるとともに、押圧部分の内側にも同様の力がかかる。よって、押圧部分と非押圧部分を分離する力をかけるとともに、押圧部分を繊維シート10側に力をかけて転写を安定させることができる。よって、転写体20の押圧部分が繊維シート10から剥がれる不具合を抑制し、金属箔を安定して繊維シート10上に転写できる。
【0028】
ニップ解除工程S50は、ニップ工程S20においてニップ機構105によって繊維シート10と転写体20を挟んだ状態から、ニップ機構105による押圧を解除する。これにより、転写体20及び繊維シート10を再び搬送できる。巻き取り工程S60は、繊維シート10と、転写後の転写体20と、を搬送方向MDに沿って搬送しつつ巻き取る。より詳細には、巻き取り工程S60は、第1巻き取りロール108によって繊維シート10を巻き取るとともに(S61)、第2巻き取りロール109によって転写体20巻き取る(S62)。上記製造方法によれば、金属箔の剥がれを抑制しつつ繊維シート10上に金属箔を転写できる。
【0029】
次いで、より好適な形態について説明する。分離工程S40において、分離部材110は、繊維シート10の表面又は転写体20の表面に沿って移動し、転写体20の押圧部分を横断してよい。分離部材110が繊維シート10の表面又は転写体20の表面に沿って移動するため、分離部材110が転写体20等に接触する際の接触角度が鋭角となり、剥離時の抵抗を抑え、転写体20の押圧部分が繊維シート10から剥がれる不具合をより抑制できる。接触角度は、
図2(d)に示すように、分離部材110において繊維シート10と対向する面110Aと、繊維シート10において分離部材と対向する面10Aと、がなす角度である。また、転写体20の押圧部分を分離部材110によって横断する形態は、押圧部分の重なる領域の全体に亘って分離部材110を移動する形態である。すなわち、押圧部分の搬送方向MDの上流端から下流端までの領域全体に分離部材110を移動させる。当該形態によれば、押圧部分の全体を分離部材110で分離でき、金属箔の剥がれをより抑制できる。なお、他の形態において、転写体20の押圧部分を分離部材110によって横断せずに、押圧部分の重なる領域の一部に分離部材110を移動してもよい。
【0030】
転写工程S30または分離工程S40において、繊維シート10及び転写体20の搬送を停止してよい。繊維シート10及び転写体20の搬送を停止した状態で、転写工程S30を実行することにより、転写時の位置ずれを抑制できる。また、停止状態で分離工程S40を実行することにより押圧部分と非押圧部分の境界に対して直線的に力をかけて転写体20の押圧部分が繊維シート10から剥がれる不具合をより抑制し、金属箔を安定して繊維シート10上に転写できる。
【0031】
分離工程S40は、転写工程S30と巻き取り工程S60の間に実行されてよい。転写体20の転写される部分(押圧部分)と転写されない部分(非押圧部分)を分離部材110によって分離した後に、巻き取り工程S60において転写体20を巻き取ることができる。転写体20を分離した後に巻き取ることにより、綺麗に転写が行なわれなかった繊維シートの搬送を抑制できる。
【0032】
押圧部材106の温度は、受け部材107の温度よりも高くてよい。押圧部材106の温度を高くすることで、転写体20を押圧する際に熱量を付与し、転写体20を繊維シート10に定着させることができる。一方、受け部材107の温度が低いので、繊維シート10に対する温度によるダメージを抑制でき、繊維シート10の柔らかな触感を保持できる。好適には、押圧部材106のみを加熱装置によって加熱し、受け部材を加熱部材によって加熱しなくてもよい。押圧部材106の温度は、転写体の転写を促すために140度以上が好ましく、繊維シート等の傷みを抑制するために150度以下が好ましい。
【0033】
転写工程S30は、ニップ機構105によって転写体20と繊維シート10が挟まれている状態において、転写体20を繊維シート10に対して押圧してよい。すなわち、転写工程S30は、ニップ工程S20の後であって、ニップ解除工程S50の前に実行される。当該構成によれば、転写工程S30の押圧時に、繊維シート10と転写体20の位置ずれを抑制でき、金属箔を安定して繊維シート10上に転写できる。
【0034】
分離工程S40は、搬送方向MDの上流側のニップ機構105の下流側のニップ機構の間において、分離部材110を移動させてよい。すなわち、分離部材110の移動範囲は、上流側のニップ機構105のニップ位置と下流側のニップ機構105のニップ位置の間である。当該構成によれば、分離部材110は、ニップ機構によって転写体20と繊維シート10が挟まれた部分の間において、繊維シート10と転写体20を分離する。分離部材110によって繊維シート10と転写体20を分離する際に、繊維シート10と転写体20の移動を抑制でき、押圧部分に対して分離部材110を意図した位置で当てて、押圧部分と非押圧部分を分断できる。
【0035】
繊維シート10は、繊維の集合体である不織布層と、不織布層に積層された補強層と、を有してよい。転写工程S30は、不織布層上に転写体20を転写する。繊維シート10が補強層を有することにより、転写工程S30による加圧等によるダメージを抑制できる。また、繊維シート10が補強層を有することにより、搬送時等における繊維シート10の伸びを抑制でき、転写時の位置ずれを抑制できる。補強層は、不織布層よりも引張強度が高い構成が好ましく、例えば、プラスチックフィルムであってよい。より好適には、繊維層を構成する不織布層をプラスチックフィルムによってラミネート加工したシートであってよい。ラミネート加工は、柔軟性と耐熱性を考慮すると、ポリプロピレン樹脂によって形成されてよい。
【0036】
繊維シート10の5%伸長時の搬送方向の引張強度は、10N以上20N以下であってよい。5%伸長時の搬送方向の引張強度が10N以上であることにより、繊維シート10の搬送時における繊維シート10の延伸を抑制でき、転写時に位置合わせし易い。また、5%伸長時の搬送方向の引張強度が20N以下であるため、繊維シート10の柔軟性を確保でき、金属箔の押圧時に転写体20に追従し易く、転写体20から繊維シート10への金属箔の転写を円滑に行うことができる。また、繊維シート10の柔軟性を確保し、肌触りを良好に保つことができる。より好適には、繊維シート10の5%伸長時の搬送方向の引張強度は、10.8N以上13.8以下であってよい。実施例1から実施例4及び比較例1から比較例5の繊維シートを用いて、金属箔の転写態様と繊維シートの柔軟性について評価を行った。評価結果を表1に示す。当該評価は、実施例1から実施例4及び比較例1から比較例5の繊維シートに対して上述の製造方法によって金属箔を転写し、転写した金属箔同士のピッチのずれ量と、繊維シート10の柔軟性(手で触れた際の違和感が生じるか否か)と、を評価した。評価は、ピッチのずれがない(3mm以下)場合を「〇」、ピッチのずれがある(3mmよりも長い)場合を「×」と評価した。柔軟性は、肌に対する違和感がない場合を「〇」とし、肌に対する違和感がある場合を「×」と評価した。当該評価結果から、繊維シート10の5%伸長時の搬送方向の引張強度は、10.8N以上13.8以下であることが好適であることがわかった。
【表1】
引張強度は、引張試験機(例えば、インストロン5965等)を用いて測定できる。具体的には、繊維シート10を100mm×15mmで切断し、試験片を3枚準備する。引張試験機のクリップ間の距離が100mmになるよう、1枚の試験片をセットし、300mm/minで引張り、チャック間の距離が5%伸長した際の値を測定する。3枚の試験片を用いて測定し、その平均値を5%伸長時の搬送方向の引張強度とする。
【0037】
補強層の厚みは、繊維シート10全体の厚みに対する1%以上5%以下であってよい。補強層の厚みが5%以下であるため、繊維シート10における補強層の厚みが薄く、繊維シート10における繊維層の厚みの比率が高いため、繊維シート10の柔軟性を確保でき、金属箔の押圧時に転写体20に追従し易く、転写体20から繊維シート10への金属箔の転写を円滑に行うことができる。また、繊維シート10の柔軟性を確保し、肌触りを良好に保つことができる。また、補強層の厚みが1%以上であるため、補強層の補強効果を確保し、転写工程S30による加圧等によるダメージによって補強層が破断することを抑制できる。また、補強層によって搬送時等における繊維シート10の伸びを抑制でき、転写時の位置ずれを抑制できる。より好適には、繊維シート10全体の厚みに対する補強層の厚みは、2.60%以上3.54%以下であってよい。実施例5、実施例6及び比較例6の繊維シートを用いて、金属箔の転写態様と繊維シートの柔軟性について評価を行った。評価結果を表2に示す。当該評価は、実施例5、実施例6及び比較例6の繊維シートを用いて上述の製造方法によって金属箔を転写し、転写した金属箔の転写態様と、繊維シート10の柔軟性(手で触れた際の違和感が生じるか否か)と、を評価した。評価は、ピッチのずれがない(3mm以下)及び転写による繊維シートの破れが生じない場合を「〇」、ピッチのずれがある(3mmよりも長い)又は繊維シートの破れが生じた場合を「×」と評価した。柔軟性は、肌に対する違和感がない場合を「〇」とし、肌に対する違和感がある場合を「×」と評価した。当該評価結果から、繊維シート10全体の厚みに対する補強層の厚みは、2.60%以上3.54%以下であることが好適であることがわかった。
【表2】
【0038】
図3は、金属箔が転写された繊維シート10の平面を模式的に示している。
図3において、押圧部分(転写層25)を示す。押圧部分は、平面視にて、分離部材110の移動方向LDの上流側に位置する上流部分26と、移動方向LDの下流側に位置する下流部分27と、を有する。上流部分26の移動方向LDと交差する交差方向CDの長さL26は、押圧部分の交差方向CDの最大長さM25よりも短くてよい。分離部材110は、上流部分26に最初に当たる。当該上流部分26の交差方向CDの長さが比較的短いため、分離部材110が押圧部分に当たった際の抵抗を低減し、押圧部分と非押圧部分を円滑に分離できる。より好適には、上流部分26の交差方向CDの長さL26は、下流部分27の交差方向CDの長さL27よりも短くてよい。分離部材110は、押圧部分の上流部分に当たり、そこから下流部分に向かって移動する。このとき、上流部分の面積が比較的小さいため、押圧部分と分離部材110が接触面積を抑え、剥離時の抵抗を抑え、転写体20の押圧部分が繊維シート10から剥がれる不具合をより抑制できる。ここで、上流部分26は、押圧部分において移動方向LDの上流側に位置する部分であり、具体的には、押圧部分の移動方向LDの上流端26Eから5mmであってよい。ここで、下流部分27は、押圧部分において移動方向LDの下流側に位置する部分であり、具体的には、押圧部分の移動方向LDの下流端27Eから5mmであってよい。
【0039】
分離工程S40は、搬送工程S10における搬送方向MDの下流側から上流側に向かって分離部材110を移動してよい。すなわち、
図3に示すように、分離部材110の移動方向LDは、資材の搬送方向MDに対する反対方向であってよい。繊維シート10等の搬送方向MDと、分離部材110の移動方向LDと、が一致する形態と比較して、分離部材110の分離する作業が完了した時点(搬送方向の上流側に分離部材110が移動した時点)で、繊維シート10の搬送を行うことができ、生産効率を向上できる。
【0040】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、金属箔の剥がれを抑制しつつ繊維シート上に金属箔を転写できる箔押しシートの製造方法を提供できる。
【符号の説明】
【0042】
10 :繊維シート
20 :転写体
21 :ベース層
25 :転写層
26 :上流部分
27 :下流部分
105 :ニップ機構
106 :押圧部材(転写機構)
107 :受け部材(転写機構)
110 :分離部材
LD :移動方向
MD :搬送方向
S10 :搬送工程
S20 :ニップ工程
S30 :転写工程
S40 :分離工程
S50 :ニップ解除工程
S60 :巻き取り工程