(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019621
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】電極材料、液体組成物、電極、電気化学素子、電極の製造方法、及び電気化学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20230202BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230202BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230202BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230202BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230202BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230202BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/58
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124504
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 俊也
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博道
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA11
5H050DA18
5H050EA23
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】電気化学特性への悪影響を抑制しつつ、優れた分散性及び安定性を有する液体組成物を得ることができる電極材料の提供
【解決手段】単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかと、アルコキシ基と、がカルボニル基を介して結合されている部分構造を側鎖に有する重合体である電極材料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかと、
アルコキシ基と、がカルボニル基を介して結合されている部分構造を側鎖に有する重合体であることを特徴とする電極材料。
【請求項2】
下記一般式(I)で表される構造単位を有する、請求項1に記載の電極材料。
【化1】
一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、Ar
1は、単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかを表し、前記アリール基及び前記ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素原子、酸素原子、窒素原子から選択されるいずれかを表し、X
1及びX
2が炭素原子又は窒素原子の場合、これらはさらに水素又は置換あるいは無置換のアルキル基を有し、R
1は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のシクロアルキル基を表し、Yは二価の連結基を表す。
【請求項3】
前記一般式(I)における二価の連結基Yが、-R2-CO-R3-、-R2-COO-R3-、-R2-CONH-R3-、及び-R2-NHCONH-R3-の少なくともいずれかである、請求項2に記載の電極材料。
ただし、R2及びR3は、それぞれアルキレン基を表す。
【請求項4】
分散剤及びバインダーの少なくともいずれかである、請求項1から3のいずれかに記載の電極材料。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電極材料、活物質、及び溶剤を含有することを特徴とする液体組成物。
【請求項6】
前記活物質の含有量が10質量%以上である、請求項5に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記活物質が、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物、及び炭素材料から選択される少なくとも1種である、請求項5から6のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項8】
前記活物質がリチウムを含みかつ非含水性である、請求項5から7のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項9】
25℃における粘度が200mPa・s以下である、請求項5から8のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項10】
電極基体と、該電極基体上に請求項1から4のいずれかに記載の電極材料及び活物質を含有する層と、を有することを特徴とする電極。
【請求項11】
請求項10に記載の電極を有することを特徴とする電気化学素子。
【請求項12】
電極基体上に請求項5から9のいずれかに記載の液体組成物を吐出する工程を含むことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項13】
前記液体組成物が吐出された電極基体を加圧する工程を更に含む、請求項12に記載の電極の製造方法。
【請求項14】
請求項12から13のいずれかに記載の電極の製造方法からなる工程を含むことを特徴とする電気化学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料、液体組成物、電極、電気化学素子、電極の製造方法、及び電気化学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池をはじめとする電気化学素子は、携帯機器、ハイブリット自動車、電気自動車等へ搭載され、需要が拡大している。また、各種ウェアラブル機器や医療用パッチに搭載する薄型電池に対するニーズが高まってきており、電気化学素子に対する要求が多様化している。
【0003】
従来より、電気化学素子を構成する電極の製造方法としては、例えば、ダイコーター、コンマコーター、リバースロールコーター等を用いて、液体組成物を塗布することにより、電極基体上に電極合材層を形成する方法が知られている。例えば、電極基体上に、電極合材層用液体組成物をスクリーン印刷することにより、電極合材層を形成することが行われている。
【0004】
しかしながら、ニーズに合わせた形状にスクリーン印刷するためには、ニーズ毎に版を作製する必要がある。そこで、液体吐出装置を用いて、電極基体上に、電極合材層用液体組成物を吐出することにより、電極合材層を形成する方法が検討されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
液体吐出法とは、液体吐出ヘッドの吐出孔から、液体組成物の微細な液滴を吐出する方法である。液体吐出ヘッドの液滴を吐出する方式としては、ピエゾ方式、サーマル方式、バルブ方式等が知られている。このうち、ピエゾ方式は、電圧を制御することで、液体組成物の吐出量を精度よく制御することができることに加え、加熱しないため、使用環境の影響が少なく、耐久性が高い。
液体吐出法により吐出することが可能な液体組成物は、貯蔵安定性及び吐出安定性の観点から、一般に、25℃における粘度が数mPa・s~数百mPa・sであるため、従来の液体組成物の25℃における粘度よりも小さくする必要がある。特に、ピエゾ方式の液体吐出ヘッドを使用する場合に、吐出安定性を向上させるためには、液体組成物の粘度及び表面張力を適切な値に調整する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気化学特性への悪影響を抑制しつつ、優れた分散性及び安定性を有する液体組成物を得ることができる電極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明の電極材料は、単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかと、アルコキシ基と、がカルボニル基を介して結合されている部分構造を側鎖に有する重合体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、電気化学特性への悪影響を抑制しつつ、優れた分散性及び安定性を有する液体組成物を得ることができる電極材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明で用いられる負極の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明で用いられる負極の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明で用いられる負極の製造方法の他の例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図2及び3の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明で用いられる正極の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の電気化学素子を構成する電極素子の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の電気化学素子の一例を示す断面図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例及び比較例における電気化学的安定性を評価した結果の一例を示すグラフである。
【
図8B】
図8Bは、実施例及び比較例における電気化学的安定性を評価した結果の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例及び比較例における電気化学的安定性を評価した結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(電極材料)
本発明の電極材料は、単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかと、アルコキシ基と、がカルボニル基を介して結合されている部分構造を側鎖に有する重合体であり、さらに必要に応じてその他の材料を含有する。
【0011】
従来技術において、液体吐出法により吐出するための液体組成物は、例えば、活物質、導電助剤、バインダーに加え、吐出するための液体組成物を安定に保持するために必要な分散剤、溶剤などから形成される。
しかし、液体組成物を安定に保持するために必要な分散剤、溶剤等の材料は、液体組成物が基材に塗工された後は不要な材料であり、想定外の電気化学的反応及び劣化生成物により電気化学素子内で素子の特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
また、液体吐出法により吐出可能な液体組成物を得るうえで、環境負荷の低減及びプロセスの最適化等の観点から、分散媒等の材料の選択の自由度の向上も重要である。
特に、近年では、一般的にリチウムイオン二次電池の製造に使用されているNMP溶剤の使用を削減し、その代替材料が望まれている。
さらに、近年、リチウムイオン二次電池の安全性向上の目的から、可燃性の電解液の代わりに固体電解質を用いた全固体型の電池の登場が望まれている。しかし、固体電解質の中でも、特に、イオン伝導度が高く、良好な特性を有する硫化物系の固体電解質は、プロトン性の溶媒では、硫化水素を発生してしまうという問題がある。また、NMPなどの高極性の溶媒中では、硫化物系の固体電解質の分解が生じることが知られている。そのため硫化物系の固体電解質のスラリーを作る場合には、電解質にダメージを与えない低極性の非プロトン性溶媒を用いる必要がある。
【0012】
本発明者らは、単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかと、アルコキシ基と、がカルボニル基を介して結合されている部分構造を側鎖に有する重合体を用いることによって、電気化学特性への悪影響を抑制しつつ、優れた分散性及び安定性を有する液体組成物を得ることができることを見出した。
【0013】
前記電極材料としては、上記構造を有し電極の作製に用いられる材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分散剤及びバインダーの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0014】
-分散剤-
分散剤は、吐出するための液体組成物中の各種材料を分散させ、安定に保持することができる化合物であり、活物質、絶縁材料、電解質材料などを含有する液体組成物における分散剤として、好適に用いられる。
【0015】
-バインダー-
バインダーは、負極材料同士、正極材料同士、負極材料と負極用電極基体、正極材料と正極用電極基体を結着できる化合物であれば特に制限はないが、インクジェットヘッドノズルからの吐出性においてノズル詰まりを抑制する観点から、液体組成物の粘度を上昇させにくい化合物であることが好ましい。
【0016】
前記電極材料における単環式又は多環式のアリール基としては、縮合多環基及び非縮合多環基のいずでもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。
また、前記単環式又は多環式のヘテロアリール基としては、例えば、ピリジニル基、ピリミジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、カルバゾリル基などが挙げられる。
【0017】
前記アルキル基としては、炭素数1以上30以下のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0018】
前記アルキレングリコールエーテル基としては、下記一般式(a)で表される。
[一般式(a)]
-(RO)n-
(ただし、前記一般式(a)中、Rはアルキレン基であり、nは3以上の整数である。)
【0019】
前記アルキレン基としては、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、シクロアルキレン基などが挙げられる。
【0020】
前記直鎖アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基などが挙げられる。
【0021】
前記分岐アルキレン基は、前記直鎖アルキレン基の少なくとも1つの水素原子がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキレン基は、メチルメチレン基、エチルメチレン基、プロピルメチレン基、ブチルメチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、プロピルエチレン基、メチルプロピレン基、2-エチルプロピレン基、ジメチルプロピレン基、メチルブチレン基などが挙げられる。
【0022】
前記シクロアルキレン基としては、例えば、単環シクロアルキレン基、架橋環シクロアルキレン基、縮合環シクロアルキレン基などが挙げられる。
前記単環シクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基などが挙げられる。
【0023】
前記電極材料としては、下記一般式(I)で表される構造単位を有する重合体であることが好ましい。
【0024】
【化1】
一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、Ar
1は、単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかを表し、前記アリール基及び前記ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素原子、酸素原子、窒素原子から選択されるいずれかを表し、X
1及びX
2が炭素原子又は窒素原子の場合、これらはさらに水素又は置換あるいは無置換のアルキル基を有し、R
1は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のシクロアルキル基を表し、Yは二価の連結基を表す。
【0025】
前記一般式(I)におけるAr1である、単環式又は多環式のアリール基としては、縮合多環基及び非縮合多環基のいずでもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。
また、単環式又は多環式のヘテロアリール基としては、例えば、ピリジニル基、ピリミジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、カルバゾリル基などが挙げられる。
【0026】
前記単環式又は多環式のアリール基、前記単環式又は多環式のヘテロアリール基における置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1以上12以下のアルキル基、フェニル基、炭素数3以上12以下のシクロアルキル基や炭素数1以上12以下のアルコキシ基により置換されているフェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などが挙げられる。これらの置換基は、同一の基が複数導入されていてもよいし、異なる基が複数導入されていてもよい。
【0027】
前記一般式(I)中のR1における置換若しくは無置換のアルキル基としては、原料の入手性の点から、炭素数1以上30以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上18以下のアルキル基がより好ましい。なお、アルキル基は直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよい。
【0028】
前記炭素数1以上30以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0029】
前記R1における置換若しくは無置換のシクロアルキル基としては、原料の入手性の点から、炭素数3以上30以下のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3以上18以下のシクロアルキル基がより好ましい。
【0030】
なお、前記シクロアルキル基は、単環式及び多環式のいずれであってもよい。
【0031】
前記炭素数3以上30以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0032】
前記R1における置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基や炭素数1~12のアルコキシ基により置換されているフェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などが挙げられる。これらの置換基は、同一の基が複数導入されていてもよいし、異なる基が複数導入されていてもよい。
【0033】
前記Yは二価の連結基である。前記二価の連結基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキレン基が挙げられる。
【0034】
前記アルキレン基としては、例えば、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、シクロアルキレン基などが挙げられる。
【0035】
前記直鎖アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基などが挙げられる。
【0036】
前記分岐アルキレン基は、前記直鎖アルキレン基の少なくとも1つの水素原子がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキレン基は、メチルメチレン基、エチルメチレン基、プロピルメチレン基、ブチルメチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、プロピルエチレン基、メチルプロピレン基、2-エチルプロピレン基、ジメチルプロピレン基、メチルブチレン基などが挙げられる。
【0037】
前記シクロアルキレン基としては、例えば、単環シクロアルキレン基、架橋環シクロアルキレン基、縮合環シクロアルキレン基などが挙げられる。
【0038】
前記単環シクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基などが挙げられる。
【0039】
前記二価の連結基としては、例えば、-R2-CO-R3-、-R2-COO-R3-、-R2-CONH-R3-、-R2-NHCONH-R3-で表される基などが挙げられる。前記R2及びR3は、それぞれ独立に、前記直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、シクロアルキレン基から選択される二価基を有する。
【0040】
上記一般式(I)で表される構造単位を有する重合体の合成方法としては、芳香族カルボン酸誘導体とアルコール化合物とのエステル化、芳香族化合物と酸ハロゲン化物とのフリーデルクラフツ反応を用いて合成した(メタ)アクリルモノマーをポリマーの一成分として重合することによって得られる。
【0041】
本発明の電極材料における重合体の重量平均分子量としては、1,000以上1,000,000以下が好ましく、1,000以上100,000以下がより好ましい。
【0042】
上記一般式(I)で表される構造単位を有する重合体としては、以下に示すものが挙げられる。前記一般式(I)で表される構造単位を有する重合体としては、これらに限定されるものではない。ただし、nは、1以上の整数である。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、本発明の電極材料、溶剤、及び活物質を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0048】
<溶剤>
溶剤としては、活物質を分散させることが可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサノン、酢酸エステル、メシチレン、トルエン、キシレン、アニソール、2-n-ブトキシメタノール、2-ジメチルエタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、乳酸エステル、テトラメチルウレアなどが挙げられる。特に、硫化物系の固体電解質を用いる場合には極性が低く、かつ非プロトン性の溶媒が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
<活物質>
活物質としては、電気化学素子に適用することが可能な正極活物質、又は負極活物質を用いることができる。
【0050】
前記正極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はないが、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
【0051】
前記アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される1種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物が挙げられる。
【0052】
前記リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。
【0053】
前記アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、結晶構造中にXO4四面体(X=P,S,As,Mo,W,Si等)を有するポリアニオン系化合物も用いることができる。これらの中でも、サイクル特性の点で、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数、電気化学素子の入出力特性の点で、リン酸バナジウムリチウムが特に好ましい。
【0054】
なお、ポリアニオン系化合物は、電子伝導性の点で、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0055】
前記負極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はないが、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
【0056】
前記炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などが挙げられる。
【0057】
前記炭素材料以外の前記負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタンなどが挙げられる。
【0058】
また、電気化学素子のエネルギー密度の点から、前記負極活物質として、例えば、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0059】
なお、活物質がリチウムを含む場合、溶媒は、非水溶媒であることが好ましい。この場合、前記液体組成物中の水の含有量は、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。前記液体組成物中の水の含有量が5質量%以下であると、活物質に含まれるリチウムが水と反応して、炭酸リチウム等の化合物を形成し、電気化学素子の放電容量が減少するのを抑制することができる。また、電気化学素子の充放電中に、炭酸リチウム等の化合物が分解して、ガスが発生するのを抑制することができる。
【0060】
活物質のモード径は、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。活物質のモード径が3μm以下であると、液体組成物の吐出安定性及び貯蔵安定性が向上する。
【0061】
活物質の累積10%体積粒子径(D10)は、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましい。活物質のD10が0.1μm以上であると、液体組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0062】
液体組成物中の活物質の含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。液体組成物中の活物質の含有量が10質量%以上であると、所定の目付量の電極合材層を形成するために必要な印刷回数が少なくなる。
【0063】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、例えば、上記電極材料以外のバインダー、導電助剤、絶縁材料、電解質材料などが挙げられる。
【0064】
-上記電極材料以外のバインダー-
上記電極材料以外のバインダーとしては溶剤に溶解するポリマー化合物、溶剤に分散させたポリマー化合物、モノマー化合物等を用いることができる。モノマー化合物を含む液体組成物をインクジェット法で塗布した後、モノマー化合物を高分子化する。モノマー化合物は、例えば、重合可能部位を有する分子を1種以上含み、25℃における重合の進行により、電極材料同士及び電極材料と電極基体を結着できることが好ましい。
【0065】
溶剤に溶解するポリマー化合物は溶解後インクジェット印刷可能な粘度以下であればよい。
ポリマー化合物としては、上記粘度以下で結着性が担保されるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリアミドイミド化合物、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ポリエチレングリコール(PEO)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記液体組成物の粘度を上昇させないために、バインダーとして高分子粒子を用いてもよい。この場合、高分子粒子は、平均粒子径がインクジェットヘッドノズル径よりも小さければよく、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
高分子粒子を構成する材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテフタレート、ポリブチレンテフタレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
-導電助剤-
前記導電助剤としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粒子等の炭素材料を用いることができる。
ここで、導電助剤は、前述したように、活物質と複合化されていてもよい。
【0068】
導電性カーボンブラックは、例えば、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法などにより製造することができる。
【0069】
炭素材料以外の導電助剤としては、例えば、アルミニウム等の金属粒子、金属繊維を用いることができる。
【0070】
活物質に対する導電助剤の質量比は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。活物質に対する導電助剤の質量比が10質量%以下であると、本実施形態の液体組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0071】
前記液体組成物の25℃における粘度は、200mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましい。液体組成物の25℃における粘度が200mPa・s以下であると、液体組成物の吐出安定性が向上する。
なお、前記液体組成物の25℃における粘度の下限は、特に限定されず、溶剤単独の粘度である。
前記液体組成物の粘度は、例えば、TV25形粘度計(東機産業株式会社製)、回転数100rpm、温度25℃の条件で測定することができる。
【0072】
前記液体組成物は、本発明の電極材料、及び活物質を含む組成物を溶剤中に溶解又は分散させることにより製造することができる。
【0073】
ここで、前記液体組成物は、電気化学素子の電極の製造に用いることができる。
電気化学素子としては、蓄電することが可能であれば、特に限定されないが、電池、キャパシタなどが挙げられる。
【0074】
(電極の製造方法)
本発明の電極の製造方法は、電極基体上に本発明の液体組成物を吐出する工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
電極の製造方法は、液体組成物が吐出された電極基体を加圧する工程を更に含むことが好ましい。これにより、電極合材層を構成する成分がはがれにくくなり、電気化学素子の信頼性が向上する。
【0075】
電極基体(集電体)を構成する材料としては、導電性を有し、印加される電位に対して安定であれば、特に制限はない。
【0076】
<負極>
図1に、本発明で用いられる負極の一例を示す。
負極10は、負極基体11の片面に、負極活物質及び本発明の電極材料を含む負極合材層12が形成されている。
なお、負極合材層12は、負極基体11の両面に形成されていてもよい。
【0077】
負極10の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状などが挙げられる。
【0078】
負極基体11を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅などが挙げられる。
【0079】
<負極の製造方法>
図2に、本発明で用いられる負極の製造方法の一例を示す。
【0080】
負極10の製造方法は、液体吐出装置300を用いて、負極基体11上に、液体組成物12Aを吐出する工程を含む。
ここで、液体組成物12Aは、本発明の電極材料、負極活物質、及び溶剤を含む。
【0081】
液体組成物12Aは、タンク307に貯蔵されており、タンク307からチューブ308を経由して液体吐出ヘッド306に供給される。
【0082】
また、液体吐出装置300は、液体組成物12Aが液体吐出ヘッド306から吐出されていない際に、乾燥を防ぐため、ノズルをキャップする機構が設けられていてもよい。
【0083】
負極10を製造する際には、加熱することが可能なステージ400上に、負極基体11を設置した後、負極基体11に液体組成物12Aの液滴を吐出した後に、加熱する。このとき、ステージ400が移動してもよく、液体吐出ヘッド306が移動してもよい。
【0084】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際には、ステージ400により加熱してもよいし、ステージ400以外の加熱機構により加熱してもよい。
【0085】
加熱機構としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータなどが挙げられる。なお、加熱機構は、複数個設置されていてもよい。
【0086】
加熱温度は、溶媒を揮発させることが可能な温度であれば、特に制限はなく、消費電力の点から、70℃~150℃の範囲であることが好ましい。
【0087】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際に、紫外光を照射してもよい。
【0088】
図3に、本発明における負極の製造方法の他の一例を示す。
負極10の製造方法は、液体吐出装置300を用いて、負極基体11上に、液体組成物12Aを吐出する工程を含む。
【0089】
まず、細長状の負極基体11を準備する。そして、負極基体11を筒状の芯に巻き付け、負極合材層12を形成する側が、
図3中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、負極基体11は、
図3中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の負極基体11の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、搬送される負極基体11上に、液体組成物12Aの液滴を吐出する。液体組成物12Aの液滴は、負極基体11の少なくとも一部を覆うように吐出される。
【0090】
なお、液体吐出ヘッド306は、負極基体11の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されてもよい。
【0091】
次に、液体組成物12Aが吐出された負極基体11は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱機構309に搬送される。その結果、負極基体11上の液体組成物12Aに含まれる溶媒が揮発して負極合材層12が形成され、負極10が得られる。その後、負極10は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
【0092】
加熱機構309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータなどが挙げられる。
【0093】
なお、加熱機構309は、負極基体11の上下のいずれか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0094】
加熱温度は、溶媒を揮発させることが可能な温度であれば、特に制限はなく、消費電力の点から、70℃~150℃の範囲であることが好ましい。
【0095】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際に、紫外光を照射してもよい。
【0096】
図4に、液体吐出装置300の変形例を示す。
液体吐出装置300’は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物12Aが液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
【0097】
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物12Aが減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物12Aを供給することも可能である。
【0098】
液体吐出装置300、300’を用いると、負極基体11の狙ったところに液体組成物12Aを吐出することができる。また、液体吐出装置300、300’を用いると、負極基体11と負極合材層12の上下に接する面同士を結着することができる。更に、液体吐出装置300、300’を用いると、負極合材層12の厚さを均一にすることができる。
【0099】
<正極>
図5に、本発明に用いられる正極の一例を示す。
正極20は、正極基体21の片面に、正極活物質及び本発明の電極材料を含む正極合材層22が形成されている。なお、正極合材層22は、正極基体21の両面に形成されていてもよい。
【0100】
正極20の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状などが挙げられる。
【0101】
正極基体21を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、チタン、タンタルなどが挙げられる。
【0102】
<正極の製造方法>
正極20の製造方法は、正極基体21上に、液体組成物を吐出する以外は、負極10の製造方法と同様である。
ここで、液体組成物は、正極活物質、本発明の電極材料、及び溶剤を含む。
【0103】
(電気化学素子の製造方法)
本発明の電気化学素子の製造方法は、本発明の電極の製造方法からなる工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0104】
<電極素子>
図6に、本発明の電気化学素子を構成する電極素子の一例を示す。
電極素子40は、負極15と正極25が、セパレータ30を介して、積層されている。ここで、正極25は、負極15の両側に積層されている。また、負極基体11には、引き出し線41が接続されており、正極基体21には、引き出し線42が接続されている。
【0105】
負極15は、負極基体11の両面に、負極合材層12が形成されていること以外は、負極10と同様である。
【0106】
正極25は、正極基体21の両面に、正極合材層22が形成されていること以外は、正極20と同様である。
なお、電極素子40の負極15と正極25の積層数は、特に制限は無い。
【0107】
また、電極素子40の負極15の個数と正極25の個数は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0108】
<セパレータ>
セパレータ30は、負極15と正極25の短絡を防ぐために、負極15と正極25の間に設けられている。
【0109】
セパレータ30としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、マイクロポア膜などが挙げられる。
【0110】
セパレータ30の大きさは、電気化学素子に使用することが可能であれば、特に制限はない。
セパレータ30は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
なお、固体電解質を使用する場合は、セパレータ30を省略することができる。
【0111】
<電気化学素子>
図7に、本発明の電気化学素子の一例として、二次電池を示す。
【0112】
二次電池1は、電極素子40に、電解質水溶液又は非水電解質を注入することにより、電解質層51が形成されており、外装52により封止されている。二次電池1において、引き出し線41及び42は、外装52の外部に引き出されている。
【0113】
二次電池1は、必要に応じて、その他の部材を有してもよい。
二次電池1としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオン二次電池などが挙げられる。
【0114】
二次電池1の形状としては、特に制限はなく、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。
【0115】
<電解質水溶液>
電解質水溶液を構成する電解質塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酒石酸亜鉛、過塩化亜鉛などが挙げられる。
【0116】
<非水電解質>
非水電解質としては、固体電解質又は非水電解液を使用することができる。
ここで、非水電解液とは、電解質塩が非水溶媒に溶解している電解液である。
【0117】
-固体電解質-
前記非水電解質としては、固体電解質層を形成するための材料を用いることができる。前記固体電解質層を構成する材料としては、電子絶縁性を有し、かつ、イオン伝導性を示す固体物質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質が、高いイオン導電性を有する観点で好ましい。
前記硫化物系固体電解質としては、例えば、Li10GeP2S12、アルジロダイト型結晶構造を有するLi6PS5X(Xは、F、Cl、Br、またはIである)などが挙げられる。
前記酸化物系固体電解質としては、例えば、ガーネット型結晶構造を有するLLZ(Li7La3Zr2O12)、NASICON型結晶構造を有するLATP(Li1+xAlxTi20x(PO4)3)(0.1≦x≦0.4)、ペロブスカイト型結晶構造を有するLLT(Li0.33La0.55TiO3)、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.4)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの固体電解質層を構成するために液体に溶解又は分散させる電解質材料としては、例えば、固体電解質の前駆体となるLi2S、P2S5、LiClなど、固体電解質の材料であるLi2S-PS5系ガラス、Li7P3S11ガラスセラミックスなどが挙げられる。
【0118】
また、電解質としてゲル電解質層を形成するための材料を用いることもできる。
前記ゲル電解質としては、イオン伝導性を示すものであれば、特に制限はなく、例えばゲル電解質の網目構造を構成するポリマーとしてはポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンのコポリマー、ポリエチレンカーボネートなどが挙げられる。
また、前記ゲル電解質に保持される溶媒分子としてはイオン液体が挙げられる。
前記イオン液体としては、例えば、メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニルイミド)、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドがある。
また、前記イオン液体としては、テトラグライム、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの液体とリチウム塩を混合したものでもよい。
前記リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(C2F5SO2)2)などが挙げられる。
なお、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのゲル電解質層を構成するために、液体に溶解又は分散させる電解質材料としては、上記のポリマー化合物とイオン液体またはリチウム塩が溶解された溶液を用いてもよい。また、液体に溶解又は分散させる電解質材料として、ゲル電解質の前駆体となる材料(例えば、両末端がアクリレート基であるポリエチレンオキサイド又はポリプロピレンオキサイド等とイオン液体またはリチウム塩が溶解された溶液とを組合せたもの)を用いてもよい。
これら固体電解質やゲル電解質を用いる場合には、活物質と共に液体組成物として用いることができる。
【0119】
-非水溶媒-
前記非水溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。
【0120】
前記非プロトン性有機溶媒としては、例えば、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、電解質塩の溶解力が高い点から、鎖状カーボネートが好ましい。
また、非プロトン性有機溶媒は、粘度が低いことが好ましい。
【0121】
前記鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)などが挙げられる。
【0122】
前記非水溶媒中の前記鎖状カーボネートの含有量は、50質量%以上が好ましい。非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量が50質量%以上であると、鎖状カーボネート以外の非水溶媒は誘電率が高い環状物質(例えば、環状カーボネート、環状エステル)であっても、環状物質の含有量が少なくなる。このため、2mol/L(M)以上の高濃度の非水電解液を作製しても、非水電解液の粘度が低くなり、非水電解液の電極へのしみ込み及びイオン拡散が良好となる。
【0123】
前記環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
【0124】
なお、前記カーボネート系有機溶媒以外の前記非水溶媒としては、例えば、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒などが挙げられる。
【0125】
前記環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(γBL)、2-メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。
【0126】
前記鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(例えば、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル)、ギ酸アルキルエステル(例えば、ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル)などが挙げられる。
【0127】
前記環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソランなどが挙げられる。
【0128】
前記鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテエーテルなどが挙げられる。
【0129】
<電解質塩>
前記電解質塩としては、イオン伝導度が高く、非水溶媒に溶解することが可能であれば、特に制限はない。
前記電解質塩は、ハロゲン原子を含むことが好ましい。
【0130】
前記電解質塩を構成するカチオンとしては、例えば、リチウムイオンなどが挙げられる。
【0131】
前記電解質塩を構成するアニオンとしては、例えば、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-などが挙げられる。
【0132】
前記リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(C2F5SO2)2)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、イオン伝導度の点から、LiPF6が好ましく、安定性の点から、LiBF4が好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0133】
前記非水電解液中の前記電解質塩の濃度は、目的に応じて適宜選択することができるが、非水系電気化学素子がスイング型である場合、1mol/L以上2mol/L以下が好ましく、非水系電気化学素子がリザーブ型である場合、2mol/L以上4mol/L以下が好ましい。
【0134】
<電気化学素子の用途>
電気化学素子の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラなどが挙げられる。
【実施例0135】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0136】
以下の実施例では、活物質の粒度分布、液体組成物の粘度、及び粒度分布を、以下の方法により、測定した。
【0137】
<活物質の粒度分布>
活物質を水に分散させた後、レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)を用いて、温度25℃の条件で、活物質の粒度分布を計測した。
【0138】
<液体組成物の粘度>
TV25形粘度計(東機産業株式会社製)、回転数100rpm、温度25℃の条件で、液体組成物の粘度を測定した。
【0139】
<液体組成物の粒度分布>
レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)を用いて、温度25℃の条件で、液体組成物の粒度分布を計測した。
【0140】
(正極活物質の製造例1)
-正極活物質1の製造-
五酸化バナジウム、水酸化リチウム、リン酸、スクロース、及び水を混合して沈殿を生成させ、スプレードライヤーで噴霧乾燥させた後、ジェットミルで粉砕して、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)粒子の前駆体を得た。次に、窒素雰囲気下、900℃で、リン酸バナジウムリチウム粒子の前駆体を焼成し、炭素含有量3質量%のリン酸バナジウムリチウム粒子を得た。次に、累積90%体積粒子径D90が3μm未満になるように、リン酸バナジウムリチウム粒子をジェットミルで解砕して、正極活物質1を得た。得られた正極活物質1は、モード径が0.7μmであった。
【0141】
(正極活物質の製造例2)
-正極活物質2の製造-
正極活物質の製造例1において、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)粒子の代わりに、累積90%体積粒子径D90が3μm未満になるように、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)粒子(シグマアルドリッチ社製)をジェットミルで解砕したものを用いた以外は、正極活物質の製造例1と同様にして、正極活物質2を得た。得られた正極活物質2は、モード径が0.6μmであった。
【0142】
(正極活物質の製造例3)
-正極活物質3の製造-
正極活物質の製造例1において、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)粒子の代わりに、累積90%体積粒子径D90が3μm未満になるように、コバルト酸リチウム(LiCoO2)粒子(シグマアルドリッチ社製)をジェットミルで解砕したものを用いた以外は、正極活物質の製造例1と同様にして、正極活物質3を得た。得られた正極活物質3は、モード径が0.9μmであった。
【0143】
(正極活物質の製造例4)
-正極活物質4の製造-
正極活物質の製造例1において、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)粒子の代わりに、累積90%体積粒子径D90が3μm未満になるように、ニッケル酸リチウム(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)粒子(シグマアルドリッチ社製)をジェットミルで解砕したものを用いた以外は、正極活物質の製造例1と同様にして、正極活物質4を得た。得られた正極活物質4は、モード径が1.2μmであった。
【0144】
(正極活物質の製造例5)
-正極活物質5の製造-
正極活物質の製造例1において、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)粒子の代わりに、累積90%体積粒子径D90が3μm未満になるように、Ni-Mn-Co系(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)粒子(シグマアルドリッチ社製)をジェットミルで解砕したものを用いた以外は、正極活物質の製造例1と同様にして、正極活物質5を得た。得られた正極活物質5は、モード径が0.9μmであった。
【0145】
(正極活物質の製造例6)
-正極活物質6の製造-
正極活物質の製造例1において、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)粒子の代わりに、累積90%体積粒子径D90が3μm未満になるように、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)粒子(シグマアルドリッチ社製)をジェットミルで解砕したものを用いた以外は、正極活物質の製造例1と同様にして、正極活物質6を得た。得られた正極活物質6は、モード径が1.2μmであった。
【0146】
(負極活物質の製造例1)
-負極活物質1の製造-
正極活物質の製造例1において、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)粒子の代わりに、累積90%体積粒子径D90が3μm未満になるように、人造黒鉛(エムティーカーボン社製)をジェットミルで粉砕したものを用いた以外は、正極活物質の製造例1と同様にして、負極活物質1を得た。得られた負極活物質1は、モード径が1.8μmであった。
【0147】
(負極活物質の製造例2)
-負極活物質2の製造-
正極活物質の製造例1において、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)粒子の代わりに、累積90%体積粒子径D90が3μm未満になるように、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)粒子(シグマアルドリッチ社製)をジェットミルで粉砕したものを用いた以外は、正極活物質の製造例1と同様にして、負極活物質2を得た。得られた負極活物質2は、モード径が0.7μmであった。
【0148】
(実施例1)
<モノマー1(M-1)の合成>
特開2016-196621号公報に記載の方法に準じて、以下のようにして、モノマー1(M-1)を合成した。
具体的には、まず、東京化成工業製の1,6-ヘキサンジオールと2-ナフタレンカルボニルクロリドから、2-ナフタレンカルボン酸6-ヒドロキシヘキシルエステルを得た。
次に2-ナフタレンカルボン酸6-ヒドロキシヘキシルエステルと2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとの反応により、モノマー(M-1)を得た。
【化6】
<重合体1(実-1)の合成>
次に、特開2016-196621号公報に記載の方法に準じて、以下のようにして、重合体1(実-1)を合成した。
具体的には、まず、モノマー(M-1)及びアクリル酸を、メチルエチルケトンを溶媒、AIBNを重合開始剤として用いることにより、重合体1(実-1)を得た。GPCから求めたポリスチレン換算の重量平均分子量は22,000であった。
【化7】
【0149】
合成した重合体1(実-1)について、0.05V~4.2V(vs Li/Li+)の範囲でサイクリックボルタンメトリー(CV)測定の後、3Vから4.6Vまで電位スイープするリニアスイープボルタンメトリー(LSV)測定により電気化学特性を評価した。
電気化学的安定性の評価には、作用極Pt(直径φ1.6mm)、対極Pt(直径φ3mm)、参照極Li箔を用いた三極セル(イーシーフロンティア社製、マイクロ分析セルVB7)を用い、電解液(EC/DMC=1/1に1.5MのLiBF
4)に5質量%の重合体を加えて測定した。重合体1(実-1)、は測定範囲内で電気化学的に安定であることが分かった。重合体1(実-1)のCV測定の結果を
図8A及び
図8Bに示す。
【0150】
(実施例2)
<重合体2(実-2)の合成>
実施例1の<重合体1(実-1)の合成>において、アクリル酸をアクリル酸メチルに変更した以外は実施例1と同様にして、重合体2(実-2)を合成した。
【化8】
【0151】
実施例1と同様に、重合体2(実-2)の電気化学特性を評価した。その結果、重合体1(実-1)と同様に、測定範囲内で電気化学的に安定であることが分かった。
【0152】
(実施例3)
実施例1の<重合体1(実-1)の合成>において、アクリル酸をなくした以外は実施例1と同様にして、重合体3(実-3)を合成した。nは繰り返しを表す。
【化9】
【0153】
実施例1と同様に、重合体3(実-3)の電気化学特性を評価した。その結果、重合体1(実-1)と同様に、測定範囲内で電気化学的に安定であることが分かった。
【0154】
(実施例4)
実施例1の<重合体1(実-1)の合成>において、モノマー(M-1)を以下のモノマー(M-2)に変更した以外は実施例1と同様にして、重合体4(実-4)を合成した。nは繰り返しを表す。
【化10】
【0155】
実施例1と同様に、重合体4(実-4)の電気化学特性を評価した。その結果、重合体1(実-1)と同様に、測定範囲内で電気化学的に安定であることが分かった。
【0156】
(比較例1~6)
実施例1~4と同様にして、ナフトール又はフェノール誘導体とオリゴエチレングリコールを原料に、エーテル化によって合成した下記式で表される比較化合物1(比-1)~比較化合物4(比-4)、および、実施例1と同様にして合成した比較化合物5(比-5)、比較化合物6(比-6)の電気化学的安定性を評価した。同様にLSV測定において、4.2Vで観測された電流値を
図9に示す。
なお、下記式で表される比較化合物1、比較化合物2、比較化合物3、及び比較化合物4中のnは約10であった。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
図9の結果から、実施例1~4の化合物1~4は4.2Vではほとんど電流が観測されなかったのに対し、比較例1~6の比較化合物1~6はいずれも4.2Vで不可逆な電気化学的酸化反応が起こり、電気化学素子用途としては好ましくない結果であった。
したがって、実施例1~4の化合物1~4は、活物質、絶縁材料、電解質材料などを含有する液体組成物における分散剤として、好適に用いられることがわかった。
【0164】
(実施例5)
<正極形成用液体組成物の調製>
正極活物質1を93.1質量%、上記重合体1(実―1)を0.9質量%、カーボンブラック3質量%、及びポリアミドイミド3質量%からなる固形分に対して、固形分の濃度が35.8質量%になるようにN-メチルピロリドンを加え、正極形成用液体組成物を作製した。
得られた正極形成用液体組成物は、25℃での粘度が16mPa・sであり、モード径が0.8μmであり、累積90%体積粒子径D90が3.5μmであった。
【0165】
次に、正極形成用液体組成物を作製してから24時間後に、正極形成用液体組成物の粒度分布を再計測したところ、粒度分布に変化は見られず、実施例5の正極形成用液体組成物は、貯蔵安定性が良好であった。
【0166】
次に、液体吐出装置(EV2500、株式会社リコー製)を用いて、実施例5の正極形成用液体組成物を、正極基体としてのアルミニウム箔に吐出し、正極を形成した。このとき、実施例5の正極形成用液体組成物を連続的に吐出することが可能であり、実施例5の正極形成用液体組成物は、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。即ち、実施例5の正極形成用液体組成物は、印刷効率が良好であった。
【0167】
(実施例6)
実施例5において、上記重合体1(実―1)の代わりに、上記重合体2(実―2)を用いた以外は、実施例5と同様にして、実施例6の正極形成用液体組成物を作製した。
得られた正極形成用液体組成物は、25℃での粘度が14mPa・sであり、モード径が0.7μmであり、累積90%体積粒子径D90が3.1μmであった。
【0168】
次に、正極形成用液体組成物を作製してから24時間後に、実施例6の正極形成用液体組成物の粒度分布を再計測したところ、粒度分布に変化は見られず、実施例6の正極形成用液体組成物は、貯蔵安定性が良好であった。
【0169】
液体吐出装置(EV2500、株式会社リコー製)を用いて、実施例6の正極形成用液体組成物を、正極基体としての、アルミニウム箔に吐出した。このとき、実施例6の正極形成用液体組成物を連続的に吐出することが可能であり、実施例6の正極形成用液体組成物は、吐出安定性が良好であり、吐出不良が発生しなかった。即ち、実施例6の正極形成用液体組成物は、印刷効率が良好であった。
【0170】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかと、
アルコキシ基と、がカルボニル基を介して結合されている部分構造を側鎖に有する重合体であることを特徴とする電極材料である。
<2> 下記一般式(I)で表される構造単位を有する、前記<1>に記載の電極材料である。
【化17】
一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、Ar
1は、単環式又は多環式のアリール基、及び単環式又は多環式のヘテロアリール基のいずれかを表し、前記アリール基及び前記ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素原子、酸素原子、窒素原子から選択されるいずれかを表し、X
1及びX
2が炭素原子又は窒素原子の場合、これらはさらに水素又は置換あるいは無置換のアルキル基を有し、R
1は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のシクロアルキル基を表し、Yは二価の連結基を表す。
<3> 前記一般式(I)における二価の連結基Yが、-R
2-CO-R
3-、-R
2-COO-R
3-、-R
2-CONH-R
3-、及び-R
2-NHCONH-R
3-の少なくともいずれかである、前記<2>に記載の電極材料である。
ただし、R
2及びR
3は、それぞれアルキレン基を表す。
<4> 分散剤及びバインダーの少なくともいずれかである、前記<1>から<3>のいずれかに記載の電極材料である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の電極材料、活物質、及び溶剤を含有することを特徴とする液体組成物である。
<6> 前記活物質の含有量が10質量%以上である、前記<5>に記載の液体組成物である。
<7> 前記活物質が、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物、及び炭素材料から選択される少なくとも1種である、前記<5>から<6>のいずれかに記載の液体組成物である。
<8> 前記活物質がリチウムを含みかつ非含水性である、前記<5>から<7>のいずれかに記載の液体組成物である。
<9> 25℃における粘度が200mPa・s以下である、前記<5>から<8>のいずれかに記載の液体組成物である。
<10> 電極基体と、該電極基体上に前記<1>から<4>のいずれかに記載の電極材料及び活物質を含有する層と、を有することを特徴とする電極である。
<11> 前記<10>に記載の電極を有することを特徴とする電気化学素子である。
<12> 電極基体上に前記<5>から<9>のいずれかに記載の液体組成物を吐出する工程を含むことを特徴とする電極の製造方法である。
<13> 前記液体組成物が吐出された電極基体を加圧する工程を更に含む、前記<12>に記載の電極の製造方法である。
<14> 前記<12>から<13>のいずれかに記載の電極の製造方法からなる工程を含むことを特徴とする電気化学素子の製造方法である。
【0171】
前記<1>から<4>のいずれかに記載の電極材料、前記<5>から<9>のいずれかに記載の液体組成物、前記<10>に記載の電極、前記<11>に記載の電気化学素子、前記<12>から<13>のいずれかに記載の電極の製造方法、及び前記<14>に記載の電気化学素子の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。