(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019660
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】液体吐出システム及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 209
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124574
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 章郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EB08
2C056EB27
2C056EB40
2C056EC08
2C056EC72
2C056FA13
2C056FA14
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】吐出不良ノズルにより生じた画像異常を目立たなくする処理の効率を高く確保すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液体吐出システムは、画像データに基づいて液体を吐出する液体吐出装置と、処理装置と、を含む液体吐出システムであって、前記処理装置は、前記画像データを量子化する量子化手段と、前記量子化手段により量子化された前記画像データを前記液体吐出装置に送信する送信手段と、を備え、前記液体吐出装置は、複数のノズルを含み、前記複数のノズルから前記液体を吐出する液体吐出手段と、前記複数のノズルのうちの吐出不良ノズルを特定する特定手段と、前記量子化された前記画像データと、前記特定手段による特定結果と、に基づいて、前記液体吐出手段から吐出された前記液体により形成される液滴の大きさを変更する変更手段と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて液体を吐出する液体吐出装置と、処理装置と、を含む液体吐出システムであって、
前記処理装置は、
前記画像データを量子化する量子化手段と、
前記量子化手段により量子化された前記画像データを前記液体吐出装置に送信する送信手段と、を備え、
前記液体吐出装置は、
複数のノズルを含み、前記複数のノズルから前記液体を吐出する液体吐出手段と、
前記複数のノズルのうちの吐出不良ノズルを特定する特定手段と、
前記量子化された前記画像データと、前記特定手段による特定結果と、に基づいて、前記液体吐出手段から吐出された前記液体により形成される液滴の大きさを変更する変更手段と、を備える液体吐出システム。
【請求項2】
前記液体吐出手段は、搬送方向に沿って搬送される記録媒体に前記液体を吐出し、
前記複数のノズルは、前記搬送方向と交差する方向に沿って並んで配置されている請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項3】
前記液体吐出システムは、第1の処理装置と、前記第1の処理装置とは異なる第2の処理装置と、を含み、
前記第1の処理装置は、前記量子化手段を備え、
前記第2の処理装置は、前記変更手段を備える請求項1又は2に記載の液体吐出システム。
【請求項4】
前記液体吐出装置は、前記液体を吐出することにより記録媒体に画像を形成し、
前記特定手段は、前記液体吐出装置が前記記録媒体に画像形成している間に前記吐出不良ノズルを特定する請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出システム。
【請求項5】
前記画像データにおいて、前記複数のノズルそれぞれに対応する画素には前記液滴の大きさに対応する割当値が予め割り当てられており、
前記変更手段は、前記吐出不良ノズルに対応する前記画素に割り当てられている前記割当値と所定の配分係数との積算値を、前記吐出不良ノズルに隣接するノズルに対応する前記画素に割り当てられている前記割当値に加算した加算値が、前記割当値よりも大きい場合に前記液滴の大きさを変更する請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出システム。
【請求項6】
前記液体吐出手段は、搬送方向に沿って搬送される記録媒体に前記液体を吐出し、
前記変更手段は、前記液滴の大きさを変更する処理を、前記画像データにおける前記搬送方向に沿った下流側に位置する前記画素に対して順次実行する請求項5に記載の液体吐出システム。
【請求項7】
画像データに基づいて液体を吐出する液体吐出装置と、処理装置と、を含む液体吐出システムによる液体吐出方法であって、
前記処理装置が、
量子化手段により前記画像データを量子化し、
送信手段により、前記量子化手段により量子化された前記画像データを前記液体吐出装置に送信し、
前記液体吐出装置が、
複数のノズルを含む液体吐出手段により、前記複数のノズルから前記液体を吐出し、
特定手段により、前記複数のノズルのうちの吐出不良ノズルを特定し、
変更手段により、前記量子化された前記画像データと、前記特定手段による特定結果と、に基づいて、前記液体吐出手段により吐出される前記液体により形成される液滴の大きさを変更する液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出システム及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データに基づいて複数のノズルから記録媒体に液体を吐出する液体吐出装置では、吐出不良が生じたノズル周囲のノズルからの吐出を制御することより、吐出不良ノズルにより生じた画像異常を目立たなくする技術が知られている。
【0003】
上記の技術として、量子化処理を行った後に、吐出不良ノズルによる画像異常を補完するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の技術では、量子化処理と画像異常の補完処理を同じ処理装置により行うため、複数のノズルのうちにおいて吐出不良ノズルが変化した場合に量子化処理をやり直す必要があり、処理効率が低下する。
【0005】
本発明は、吐出不良ノズルにより生じた画像異常を目立たなくする処理の効率を高く確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出システムは、画像データに基づいて液体を吐出する液体吐出装置と、処理装置と、を含む液体吐出システムであって、前記処理装置は、前記画像データを量子化する量子化手段と、前記量子化手段により量子化された前記画像データを前記液体吐出装置に送信する送信手段と、を備え、前記液体吐出装置は、複数のノズルを含み、前記複数のノズルから前記液体を吐出する液体吐出手段と、前記複数のノズルのうちの吐出不良ノズルを特定する特定手段と、前記量子化された前記画像データと、前記特定手段による特定結果と、に基づいて、前記液体吐出手段から吐出された前記液体により形成される液滴の大きさを変更する変更手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出不良ノズルにより生じた画像異常を目立たなくする処理の効率を高く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成システムの全体構成例の図である。
【
図2】実施形態に係る画像形成装置の全体構成例の図である。
【
図3】実施形態に係る画像形成装置の画像形成部の構成例の図である。
【
図4】液体吐出ヘッドにおけるノズル列を例示する図である。
【
図5】実施形態に係る画像形成装置のインラインセンサの配置例の図である。
【
図6】実施形態に係る画像形成装置の制御部のハードウェア構成の図である。
【
図7】実施形態に係るDFEのハードウェア構成例の図である。
【
図8】第1実施形態に係る画像形成システムの機能構成例の図である。
【
図10】実施形態に係る検査画像の一例を示す図である。
【
図11】検査画像と読取画像の色の対応関係の一例を示す図である。
【
図12】画像形成システムによる画像形成処理例のフロー図である。
【
図13】画像形成中の画像形成システムによる変更処理例のフロー図である。
【
図14】画像形成システムによる変更処理例の詳細フロー図である。
【
図15】第2実施形態に係る画像形成システムの機能構成例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。なお、実施形態の用語における画像形成、記録、印字、印写、印刷は何れも同義語とする。
【0010】
<画像形成システム1の全体構成例>
図1は、画像形成システム1の構成の一例を示す図である。画像形成システム1は、DFE(Digital Front End)102と、画像形成装置103と、を備える。これらはインターネット等を介して相互に通信可能に接続している。画像形成システム1は、液体吐出システムの一例である。また画像形成システム1には、クライアントPC(Personal Computer)101と、管理サーバ104と、が通信可能にさらに接続している。
【0011】
クライアントPC101は、ユーザが画像形成したい印刷ジョブを作成し、DFE102又は管理サーバ104へ印刷ジョブを送信する。クライアントPC101は、液晶ディスプレイである表示部や、マウスやキーボードなどの入力装置を備えている。
【0012】
DFE102は、クライアントPC101又は管理サーバ104から印刷ジョブを受け取り、受け取った印刷ジョブに基づいて生成した画像データを画像形成装置103へ送信する処理装置の一例である。
【0013】
画像形成装置103は、DFE102から受け取った画像データに基づいて、液体の一例であるインクを記録媒体に吐出することにより、シート材としての記録媒体である用紙Pに画像を形成する液体吐出装置の一例である。
【0014】
管理サーバ104は、クライアントPC101から受け取った印刷ジョブを管理する。また、管理サーバ104は、DFE102からの要求により、印刷ジョブをDFE102へ送信する。
【0015】
なお、画像形成システム1には、複数の画像形成装置や複数のクライアントPCが通信可能に接続されていてもよい。
【0016】
<画像形成装置103の構成例>
図2及び
図3を参照して、実施形態に係る画像形成装置103の構成を説明する。
図2は、画像形成装置103の全体構成を例示する図である。
図3は、画像形成装置103が備える画像形成部200の構成を例示する図である。
【0017】
図2に示すように、画像形成装置103は、給紙部100と、画像形成部200と、乾燥部300と、排紙部400と、制御部30と、操作部40と、を備えている。
【0018】
画像形成装置103は、給紙部100から給紙される用紙Pに対し、画像形成部200により画像形成用のインクを吐出して付着させることにより、用紙Pに画像を形成する。そして、用紙P上に付着したインクを乾燥部300より乾燥させた後、排紙部400により用紙Pを排紙する。
【0019】
(給紙部)
給紙部100は、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ110と、給紙トレイ110から用紙Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、用紙Pを画像形成部200へ送り込むレジストローラ対130と、を備えている。給送装置120には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置等の如何なる給送装置を用いることもできる。給送装置120により給紙トレイ110から送り出された用紙Pは、搬送方向20に沿って搬送され、用紙Pの先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動することにより、画像形成部200へ給紙される。なお、本実施形態において、給紙部100は、画像形成部200へ用紙Pを送り出すものであれば、その構成に制限はない。
【0020】
(画像形成部)
図2及び
図3に示すように、画像形成部200は、給紙部100から給紙されてきた用紙Pを受け取る受け取り胴201と、受け取り胴201によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する用紙担持ドラム210と、を備えている。また画像形成部200は、用紙担持ドラム210に担持された用紙Pに向けてインクを吐出する液体吐出部220と、用紙担持ドラム210によって搬送された用紙Pを乾燥部300へ受け渡す受け渡し胴202と、インラインセンサ230と、を備えている。
【0021】
給紙部100から画像形成部200へ搬送されてきた用紙Pは、受け取り胴201の表面に設けられた用紙グリッパによって先端が把持され、受け取り胴201の表面移動に伴って搬送される。受け取り胴201により搬送された用紙Pは、用紙担持ドラム210に向き合う位置で用紙担持ドラム210へ受け渡される。
【0022】
用紙担持ドラム210の表面には用紙グリッパが設けられており、用紙Pの先端が用紙グリッパによって把持される。また、用紙担持ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置215によって用紙担持ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。受け取り胴201から用紙担持ドラム210へ受け渡された用紙Pは、用紙グリッパによって先端が把持されると共に、吸い込み気流によって用紙担持ドラム210の表面に吸着して、用紙担持ドラム210の表面移動に伴って搬送される。
【0023】
液体吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを吐出して画像を形成するものである。なお、以下では、シアンをC、マゼンタをM、イエローをY、ブラックをKとして表記する場合がある。液体吐出部220は、インクの色ごとに個別の液体吐出ヘッド220C、220M、220Y及び220Kを備えている。
【0024】
液体吐出ヘッド220C、220M、220Y及び220Kの各々には、搬送方向20に略直交する用紙Pの幅方向10における用紙Pの全幅にわたって画像を形成可能に、インクを吐出する複数のノズルが用紙Pの全幅にわたって設けられている。これにより、画像形成装置103は、液体吐出部220を移動させない所謂ライン型装置を構成している。なお、用紙Pの全幅にわたって画像を形成できるように、液体吐出ヘッド220C、220M、220Y及び220Kの各々が幅方向10に沿って複数設けられていてもよい。
【0025】
液体吐出ヘッド220C、220M、220Y及び220Kは、インクを吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用できる。必要に応じて、白色、金色、銀色等の特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しないインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0026】
液体吐出ヘッド220C、220M、220Y及び220Kは、画像データに応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙担持ドラム210に担持された用紙Pが液体吐出部220に向き合う領域を通過する際に、液体吐出ヘッド220C、220M、220Y及び220Kから各色のインクが吐出され、画像データに応じた画像が用紙Pに形成される。本実施形態において、画像形成部200は、用紙P上にインクを付着させることにより画像を形成するものであれば、その構成に制限はない。
【0027】
搬送方向20における液体吐出部220の下流側には、インラインセンサ230が設けられている。インラインセンサ230は、液体吐出部220により吐出されたインクによって用紙Pに形成された画像を読み取る。なお、搬送方向20は、画像形成部200においては、用紙担持ドラム210の回転方向に対応する。
【0028】
インラインセンサ230は、幅方向10における用紙Pの全幅にわたって設けられた複数の読取画素を含む。例えば、インラインセンサ230は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含み、読取画素は、受光した光強度に応じた電気信号を出力する撮像素子の画素である。
【0029】
本実施形態では、インラインセンサ230は、受光したR(赤)、G(緑)及びB(青)の各色の光強度に応じた電気信号を出力する読取画素を備え、複数のパッチ画像を読み取ったカラーの読取画像を出力する。
【0030】
(乾燥部)
図2に示すように、乾燥部300は、画像形成部200で用紙P上に付着したインクを乾燥させるための加熱機構301と、画像形成部200から搬送されてくる用紙Pを搬送する搬送機構302と、を備えている。画像形成部200から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構302に受け取られた後、加熱機構301を通過するように搬送され、排紙部400へ受け渡される。加熱機構301を通過する際、用紙P上のインクには加熱処理が施され、これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着するとともに、用紙Pのカールが抑制される。
【0031】
(排紙部)
排紙部400は、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ410を備えている。乾燥部300から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。なお、本実施形態において、排紙部400は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0032】
(制御部)
制御部30は、画像形成装置103全体の動作を制御する。制御部30の機能は別途詳述する。
図2では、制御部30は画像形成部200に設けられているが、制御部30は、画像形成装置103の内部又は外部におけるどの位置に設置されてもよい。
【0033】
(操作部)
操作部40は、タッチパネルやキーボード等を含んでおり、画像形成装置103を操作するユーザによる画像形成装置103への操作入力を受け付ける。
図2では、操作部40は給紙部100に設けられているが、操作部40は、画像形成装置103の内部又は外部におけるどの位置に設置されてもよい。
【0034】
(その他の機能部)
画像形成装置103は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300及び排紙部400等を備えているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部100と画像形成部200との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部300と排紙部400との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
【0035】
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うもの等が挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。
【0036】
後処理部としては、例えば、用紙反転搬送処理部、綴じ処理部、矯正機構及び冷却機構等が挙げられる。用紙反転搬送処理部は、画像形成部200で画像が形成された用紙Pを反転させて再び画像形成部200へ送って用紙Pの両面に画像を形成するものである。綴じ処理部は、画像が形成された複数枚の用紙Pを綴じる処理を行うものである。また強制機構は用紙Pの変形を矯正させ、冷却機構は用紙Pを冷却させるものである。但し、後処理の内容についても特に制限はない。
【0037】
(液体吐出ヘッドにおけるノズル列の構成例)
図4は、画像形成装置103が備える液体吐出ヘッド220Kにおけるノズル列を例示する図である。液体吐出ヘッド220Kは、4つのノズル列L1、L2、L3及びL4を備える。4つのノズル列L1、L2、L3及びL4の各々は、幅方向10に沿って配列している複数のノズルNを備える。換言すると、液体吐出部220は、搬送方向20に沿って搬送される用紙Pにインクを吐出し、複数のノズルNは、搬送方向20と略直交する幅方向10に沿って並んで配置されている。
【0038】
液体吐出ヘッド220Kにおいて、複数のノズルNは千鳥状に配置されている。ここで千鳥状とは、例えばノズル列L1において幅方向10に沿って隣接する2つのノズルN同士の間に、搬送方向20に沿ってノズル列L1に隣接するノズル列L3に含まれているノズルNが配置されている状態を意味する。
【0039】
インクは、複数のノズルNの各々から吐出される。吐出されたインクが用紙Pに着弾することにより、用紙Pにドットが形成される。本実施形態では、ノズル列L2及びL4のノズルNから吐出されたインクにより用紙Pに形成されるドットは、ノズル列L1のノズルNから吐出されたインクにより用紙Pに形成されるドットに対し、用紙P上において幅方向10に隣接する位置に形成される。
【0040】
ノズル列における隣接する2つのノズル同士の間隔を間隔dとすると、2つの液体吐出ヘッド220Kをd/2分、搬送方向20に沿ってずらして設けることにより、1つの液体吐出ヘッド220Kを設けた場合と比較して、画像形成装置103による画像形成解像度を2倍にすることもできる。なお、
図4では、液体吐出ヘッド220Kのノズル列を例示したが、液体吐出ヘッド220C、220M及び220Yのノズル列も、液体吐出ヘッド220Kと同様に構成されている。
【0041】
(インラインセンサ230の配置例)
図5は、画像形成装置103が備えるインラインセンサ230の配置を例示する図である。インラインセンサ230は、第1インラインセンサ231と、第2インラインセンサ232と、を備える。第1インラインセンサ231は、搬送方向20における第2インラインセンサ232の上流側に設けられている。また、第1インラインセンサ231と第2インラインセンサ232は、幅方向10における用紙Pの全幅を読取可能にするために、幅方向10に沿って相互にずれた位置に設けられている。重複領域233は、幅方向10において、第1インラインセンサ231と第2インラインセンサ232の各々の読取範囲が重複する領域を表している。
【0042】
幅方向10における用紙Pの全幅を読取可能であれば、インラインセンサ230に含まれるインラインセンサの個数は2個に限られず、任意の個数であってもよい。また本実施形態では、第1インラインセンサ231と第2インラインセンサ232は同じ構成及び機能を備えるが、用紙Pを同等の品質により読取可能であれば、第1インラインセンサ231と第2インラインセンサ232の構成及び機能は必ずしも同じでなくてもよい。
【0043】
<制御部30の構成例>
(ハードウェア構成)
図6は、画像形成装置103が備える制御部30のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部30は、CPU(Central Processing Unit)301と、ROM(Read Only Memory)302と、RAM(Random Access Memory)303と、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)304と、I/F(Interface)305と、を備える。これらは、システムバス306を介して相互に電気的に接続しており、また液体吐出部220、インラインセンサ230及び操作部40の各々に対し、システムバス306を介してデータ及び信号を送受可能に接続している。
【0044】
CPU301は、RAM303を作業領域として使用し、ROM302に格納されているプログラムを実行する。HDD/SSD304は、記憶部として使用され、予め設定された設定値を格納している。HDD/SSD204に格納されている情報は、CPU201が読み出しプログラム実行時に使用することもある。I/F305は、画像形成装置103とクライアントPC(Personal Computer)101等を、インターネット等を介して通信可能にするインターフェースである。
【0045】
<DFE102の構成例>
図7は、DFE102のハードウェア構成の一例を説明するブロック図である。DFE102は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、HDD(Hard Disk)/SSD(Solid State Drive)204と、I/F(Interface)205と、を備える。
【0046】
これらのうち、CPU201は、RAM203を作業領域として使用し、ROM202に格納されているプログラムを実行することで、DFE102全体の動作を制御する。
【0047】
HDD/SSD204は、記憶部として使用され、予め設定された設定値を格納している。HDD/SSD204に格納されている情報は、CPU201が読み出しプログラム実行時に使用することもある。
【0048】
I/F205は、DFE102と、クライアントPC101、画像形成装置103及び管理サーバ104とを、インターネット等を介して通信可能にするインターフェースである。
【0049】
[第1実施形態]
(画像形成システム1の機能構成例)
図8は、第1実施形態に係る画像形成システム1の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0050】
DFE102は、RIP(Raster Image Processor)処理部211と、量子化処理部212と、送信部213と、を備える。DFE102は、ROM202からRAM203に展開されたプログラムをCPU201が実行すること等により、RIP処理部211及び量子化処理部212の各機能を実現する。またDFE102は、ROM202からRAM203に展開されたプログラムをCPU201が実行し、I/F205を制御すること等により送信部213の機能を実現する。
【0051】
画像形成装置103が備える制御部30は、特定部311と、読取制御部312と、格納部313と、受信部314と、変更部315と、吐出制御部316と、を備える。
【0052】
制御部30は、ROM302からRAM303に展開されたプログラムをCPU301が実行すること等により、特定部311、読取制御部312、変更部315及び吐出制御部316の各機能を実現する。また制御部30は、ROM302からRAM303に展開されたプログラムをCPU301が実行し、I/F305を制御することにより受信部314の機能を実現し、HDD/SSD304を制御することにより格納部313の機能を実現する。
【0053】
図8は、DFE102及び制御部30それぞれの主な機能構成を例示しているが、DFE102及び制御部30それぞれは、
図8に示した機能構成以外の機能構成を備えてもよい。
【0054】
RIP処理部211は、クライアントPC101又は管理サーバ104から受け取った印刷ジョブに基づいて生成したC、M、Y及びK各色8ビット(256値)の画素を含む画像データを量子化処理部212に出力する。
【0055】
量子化処理部212は、RIP処理部211から受け取った画像データを量子化処理する量子化手段の一例である。量子化処理部212は、該画像データに対して量子化処理を行うことにより1ビット(2値)データを生成する。量子化処理部212による量子化処理方法には、ディザ法又は誤差拡散法等の疑似中間調処理や、スクリーン処理等の処理方法が挙げられる。スクリーン処理は、色点又は色線の数や密度により色の階調を生成する処理である。
【0056】
送信部213は、量子化処理部212により量子化された画像データを画像形成装置103に送信する送信手段の一例である。
【0057】
制御部30において、特定部311は、読取制御部312を介して入力したインラインセンサ230による読取画像に基づいて、液体吐出部220に含まれている複数のノズルのうち、吐出不良ノイズを特定する特定手段の一例である。吐出不良ノズルとは吐出不良が生じているノズルをいう。吐出不良には、ノズルからインクが吐出されない不吐出や、ノズルから所望方向とは異なる方向にインクが吐出される吐出曲がり等が含まれる。特定部311は、吐出不良ノイズを示す識別情報を格納部313に出力して格納させる。
【0058】
変更部315は、受信部314を介して受信した量子化された画像データと、特定部311による特定結果と、に基づいて、液体吐出部220から吐出されたインクにより形成される液滴の大きさを変更する変更手段の一例である。液滴の大きさの種類には、例えば、小さい液滴である小滴、小滴と比較して大きい液滴である大滴、小滴と大滴との間の大きさの液滴である中滴、及び吐出が行われない滴無等がある。
【0059】
吐出不良があると、用紙Pに形成される画像に画像異常が生じる。画像異常は、用紙Pに形成された画像において、インクが付与されていないスジ状又は点状の領域等である。
【0060】
変更部315は、液体吐出部220における吐出不良ノズル周囲に位置してインクを正常に吐出可能な正常ノズルから吐出されたインクにより形成される液滴の大きさを増やすように、量子化された画像データを変更する。液滴の大きさが増えることにより、正常ノズルから吐出されたインクの一部が、用紙Pに形成された画像におけるインクが付与されていない領域等の画像異常領域を覆う。その結果、画像異常領域の面積が小さくなり、画像異常が目立たなくなる。
【0061】
特定部311は、画像形成装置103が用紙Pへの画像形成している間にインラインセンサ230により読み取られた読取画像に基づいて吐出不良ノズルを特定し、格納部313により格納されている吐出不良ノイズの識別情報を書き換えて更新することができる。変更部315は、更新後の吐出不良ノイズの識別情報と、量子化処理部212から受け取ったが画像データと、に基づいて液滴の大きさを変更することができる。
【0062】
<吐出不良ノズルの検査画像例>
図9及び
図10は、特定部311により吐出不良ノズルを特定するために、用紙Pに形成され、インラインセンサ230により読み取られる検査画像の一例を示す図である。
図9は、比較例に係る検査画像70Xを示し、
図10は、本実施形態に係る検査画像70を示している。
【0063】
図9に示すように、検査画像70Xは、ブラックの線状画像70XK(実線のパターン)と、シアンの線状画像70XC(破線のパターン)と、マゼンタの線状画像70XM(一点鎖線のパターン)と、イエローの線状画像70XY(二点鎖線のパターン)と、を含んでいる。
【0064】
線状画像は、途切れることなく一直線に延伸する直線の画像に限るものではなく、全体的に線状であれば、一部が曲がっていたり、途切れていたりしても線状の画像に含まれる。
【0065】
線状画像70XK、70XC、70XM及び70XYは、それぞれ搬送方向20に沿って延伸して、幅方向10に沿って配列する。これらは何れも同じパターンの画像であり、画像の色のみが異なっている。線状画像70XK、70XC、70XM及び70XYは、それぞれ搬送方向20における異なる位置に配置されている。搬送方向20における異なる位置とは、線状画像70XK、70XC、70XM及び70XYの搬送方向20における位置が何れも重複していないことを意味する。
【0066】
一方、
図10に示すように、本実施形態に係る検査画像70は、ブラックの線状画像70K(実線のパターン)と、シアン、マゼンタ及びイエローの3色の線状画像から構成された線状画像70CMYを含んでいる。線状画像70K,70CMYは、それぞれ搬送方向20に沿って延伸して、幅方向10に沿って配列する。
【0067】
線状画像70CMYは、シアン、マゼンタ及びイエローの3色の線状画像により構成されている。シアン、マゼンタ及びイエローの3色の線状画像は何れも同じパターンの画像であり、画像の色のみが異なっている。
【0068】
シアン、マゼンタ及びイエローの3色の線状画像は、それぞれ搬送方向20におけるほぼ同じ位置に配置されている。搬送方向20におけるほぼ同じ位置とは、線状画像70CMYにおけるシアン、マゼンタ及びイエローの3色の線状画像が、搬送方向20におけるほぼ同じ位置を始点として搬送方向20に延伸し、搬送方向20におけるほぼ同じ位置を終点として延伸を終了することを意味する。
【0069】
線状画像70CMYにおける3色の線状画像が、搬送方向20におけるほぼ同じ位置に配置されることで、検査画像70は、検査画像70Xと比較して、搬送方向20における長さが短縮され、小さくなっている。
【0070】
なお、
図10の例では、線状画像70CMYにおけるシアン、マゼンタ及びイエローの3色の線状画像が搬送方向20におけるほぼ同じ位置に配置された例を示したが、必ずしもほぼ同じ位置でなくてもよく、搬送方向20における位置が重複していればよい。また複数の色のインクのうち、少なくとも2色のインクによる線状画像の搬送方向20における位置が重複していればよい。
【0071】
搬送方向20における位置が重複して線状画像70CMYにおける3色の線状画像が配置されることで、検査画像70は、検査画像70Xと比較して重複分、搬送方向20における長さが短縮されて小さくなる。
【0072】
線状画像70CMYにおけるシアン、マゼンタ及びイエローの3色の線状画像が何れも同じパターンの画像である例を示したが、必ずしも同じパターンの画像でなくてもよい。例えば、線状画像における線の長さ又は太さ等が異なっていてもよい。この場合においても、少なくとも2色のインクによる線状画像の搬送方向20における位置が重複することで、重複しない場合と比較して重複分、搬送方向20における長さが短縮されて小さくなる。
【0073】
<特定部311による吐出不良ノズルの特定処理例>
図11を参照して、特定部311による吐出不良ノズルの特定処理について説明する。
図11は、用紙P上の検査画像70と、インラインセンサ230による読取データにおける色と、の対応関係の一例を示す図である。線状画像70CMYは、C、M及びYの色により用紙上に形成された検査画像の一部である。
【0074】
読取データ80は、線状画像70CMYのインラインセンサ230による読取画像の一部に対応する読取データである。読取データ80は、線状画像70CMYの幅方向10に沿った断面の輝度分布を示している。グラフの横軸は幅方向10における位置を、縦軸は輝度をそれぞれ表している。輝度は、画素輝度であり、単位は階調である。
【0075】
インラインセンサ230は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の読取データを取得する。読取データ80における実線のグラフはRの読取データ、破線のグラフはGの読取データ、一点鎖線のグラフはBの読取データをそれぞれ示している。
【0076】
各色の線状画像の搬送方向20における位置が重複すると、重複部分で色ごとの線状画像を抽出できず、線状画像の画像処理に基づく吐出不良ノズルの特定が困難になる場合がある。
【0077】
本実施形態では、GはMの補色であることを利用して、読取データ80におけるG成分の画像のみを抽出することでMの線状画像を抽出する。同様に、RはCの補色であり、BはYの補色であることを利用して、Gの読取データからMの線状画像を抽出し、Bの読取データからYの線状画像を抽出する。特定部311は、抽出したC、M及びYの線状画像におけるパターンの欠落、又は曲がりを画像処理で検出することにより、吐出不良ノズルを特定する。
【0078】
特定部311は、各色の線状画像の搬送方向20における位置が重複する部分において、C、M及びYのそれぞれの補色に対応するR、G及びBの色成分データに対して画像処理を実行する。これにより、液体吐出ヘッド220C、220M及び220Yそれぞれにおける吐出不良ノズルを特定できる。
【0079】
図9及び
図10におけるKの線状画像や、C、M及びYの線状画像のうちの搬送方向20における位置が重複しない部分においては、線状画像を容易に抽出できるため、特定部311は、画像処理により吐出不良ノズルを容易に特定できる。
【0080】
<画像形成システム1による処理例>
図12から
図14を参照して、画像形成システム1による処理について説明する。
図12は、画像形成システム1による画像形成処理の一例を示すフローチャートである。画像形成システム1は、画像形成装置103によるクライアントPC101からの印刷ジョブ受信、又は操作部40を用いたユーザによる画像形成開始の操作入力、の何れか一方に応答して画像形成をスタートする。
【0081】
まず、ステップS121において、画像形成システム1は、RIP処理部211により生成された画像データを、量子化処理部212により量子化する。
【0082】
続いて、ステップS122において、画像形成システム1は、変更部315により、格納部313を参照して、液体吐出部220における吐出不良ノズルの識別情報を取得する。
【0083】
続いて、ステップS123において、画像形成システム1は、変更部315により、吐出不良ノズル周囲に位置する正常ノズルからの液滴の大きさを増やすように、量子化された画像データを変更する。
【0084】
続いて、ステップS124において、画像形成システム1は、変更部315による変更後の画像データに基づいて、画像形成装置103により画像形成を行う。
【0085】
このようにして、画像形成システム1は、吐出不良ノズルを目立たなくするための変更処理を行いつつ、用紙Pに画像を形成することができる。
【0086】
図13は、画像形成装置103が画像形成を行っている間に変更部315が行う変更処理の一例を示すフローチャートである。画像形成システム1は、画像形成装置103によるクライアントPC101からの印刷ジョブ受信、又は操作部40を用いたユーザによる画像形成開始の操作入力、の何れか一方に応答して画像形成をスタートする。
【0087】
なお、
図13におけるステップS131の処理は、
図12におけるステップS121の処理と同じであり、
図13におけるステップS133からステップS135の処理は、
図12におけるステップS122からステップS124の処理と同じであるため、ここでは重複する説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0088】
ステップS132において、画像形成システム1は、特定部311により、画像形成装置103が用紙Pに画像形成している間にインラインセンサ230により読み取られた読取画像に基づいて、吐出不良ノズルを特定する。特定部311は、格納部313により格納されている吐出不良ノイズの識別情報を、特定した吐出不良ノズルの識別情報に書き換えて更新する。
【0089】
ステップS136において、画像形成システム1は、画像形成を終了するか否かを判定する。例えば、ユーザにより指定された枚数の用紙Pに対して画像形成を終了した場合に、画像形成システム1は、画像形成を終了すると判定する。
【0090】
ステップS136において、終了すると判定された場合には(ステップS136、Yes)、画像形成システム1は、処理を終了する。一方、終了しないと判定された場合には(ステップS136、No)、画像形成システム1は、ステップS132以降の処理を再度行う。
【0091】
このようにして、画像形成システム1は、画像形成装置103が画像形成を行っている間に、吐出不良ノズルを目立たなくするための変更処理を行うことができる。
【0092】
図14は、変更部315による変更処理の一例をより詳細に示すフローチャートである。
図14の処理では、画像データにおいて、吐出不良ノズルに対応する搬送方向上流側から下流側までの画素にスジ状の画像異常が生じるものとする。また、画像データにおいて、複数のノズルそれぞれに対応する画素には、ノズルから吐出される液滴の大きさに対応する割当値が予め割り当てられている。変更部315は、吐出不良ノズルに対応する画素に割り当てられている割当値と所定の配分係数との積算値を、幅方向10に沿って吐出不良ノズルに隣接するノズルに対応する画素に割り当てられている割当値に加算し、加算結果が割当値よりも大きい場合に液滴の大きさを変更する。
【0093】
画像形成システム1は、
図12におけるステップS123のタイミング、又は
図13におけるステップS134のタイミング等において、
図14の処理をスタートする。
【0094】
まず、ステップS141において、変更部315は、画像データにおける吐出不良ノズルに対応する画素に対し、幅方向10に沿って隣接する両隣の画素に割り当てられた割当値に所定の滴係数を掛け算した割当値aを取得する。滴係数とは、滴構成の違いに応じた変更部315による変更処理の効果を適正化するための係数をいう。滴係数は、滴の大きさごと及び色ごとに設定可能である。例えば滴係数は、滴無し、小滴及び大滴の場合には1.0に設定され、中滴の場合には2.0に設定される。
【0095】
続いて、ステップS142において、変更部315は、画像データにおける吐出不良ノズルに対応する画素の割当値に所定の配分係数を掛け算した積算値bを取得する。配分係数とは、吐出不良ノズルにより吐出予定だった液滴を、配分のために誤差値に換算する係数をいう。例えば配分係数は0.7である。配分係数は、色ごとに設定可能である。
【0096】
続いて、ステップS143において、変更部315は、割当値aと積算値bを加算して加算値cを取得する。
【0097】
続いて、ステップ144において、変更部315は、加算値cは所定の大滴閾値以上であるか否かを判定する。大滴閾値は、例えば3.0である。
【0098】
ステップS144において、加算値cは大滴閾値以上であると判定された場合には(ステップS144、Yes)、ステップS145において、変更部315は、画像データにおける吐出不良ノズルに対応する画素に対し、幅方向10に沿って隣接する両隣の画素に大滴に対応する割当値を割り当てる。その後、変更部315は、ステップS150に処理を移行する。
【0099】
一方、ステップS144において、加算値cは大滴閾値以上でないと判定された場合には(ステップS144、No)、ステップS146において、変更部315は、加算値cは所定の中滴閾値以上であるか否かを判定する。中滴閾値は、例えば2.0である。
【0100】
ステップS146において、加算値cは中滴閾値以上であると判定された場合には(ステップS146、Yes)、ステップS147において、変更部315は、画像データにおける吐出不良ノズルに対応する画素に対し、幅方向10に沿って隣接する両隣の画素に中滴に対応する割当値を割り当てる。その後、変更部315は、ステップS150に処理を移行する。
【0101】
一方、ステップS146において、加算値cは中滴閾値以上でないと判定された場合には(ステップS146、No)、ステップS148において、変更部315は、加算値cは所定の小滴閾値以上であるか否かを判定する。小滴閾値は、例えば1.0である。
【0102】
ステップS148において、加算値cは小滴閾値以上であると判定された場合には(ステップS148、Yes)、ステップS149において、変更部315は、画像データにおける吐出不良ノズルに対応する画素に対し、幅方向10に沿って隣接する両隣の画素に小滴に対応する割当値を割り当てる。その後、変更部315は、ステップS150に処理を移行する。
【0103】
一方、ステップS148において、加算値cは小滴閾値以上でないと判定された場合には(ステップS148、No)、変更部315は、ステップS150に処理を移行する。
【0104】
続いて、ステップS150において、変更部315は、加算値cから所定の持越値を差し引く。
【0105】
続いて、ステップS151において、変更部315は、加算値cと持越値との差分値を、画像データにおける搬送方向20に沿った下流側において、幅方向10に沿った吐出不良ノズルの両隣の画素の割当値に加算する。
【0106】
続いて、ステップS152において、変更部315は、搬送方向20に沿った吐出不良ノズルに対応する全画素に対して変更処理が終了したか否かを判定する。
【0107】
ステップS152において、終了したと判定された場合には(ステップS152、Yes)、変更部315は処理を終了する。一方、終了していないと判定された場合には(ステップS152、No)、変更部315は、吐出不良ノズルの両隣の画素の位置を、搬送方向20に沿って下流側に1画素ずらしたうえで、ステップS141以降の処理を再度行う。つまり変更部315は、液滴の大きさを変更する処理を、画像データにおける搬送方向20に沿った下流側に位置する画素に対して順次実行する。
【0108】
このようにして、変更部315は、変更処理を行うことができる。変更部315は、吐出不良ノズルから吐出予定であった液滴を、幅方向10に沿った両隣、又は搬送方向20に沿った下流側における幅方向10に沿った両隣の画素に、それぞれ配分して分散させる。この配分に応じて、吐出不良ノズル周囲のノズルから吐出される液滴が大きくなる。その結果、吐出不良ノズルに起因して用紙P上でインクが付与されていない領域を吐出不良ノズル周囲のノズルから吐出された液滴が覆うことにより、インクが付与されていない領域が目立たなくなる。
【0109】
<画像形成システム1の作用効果>
次に、画像形成システム1の作用効果について説明する。
【0110】
従来から、吐出不良ノズルを特定し、該吐出不良ノズルに起因して生じるスジ等の画像異常を、吐出不良ノズル周囲の正常ノズルから吐出される液滴の大きさを増やすことにより目立たなくする技術が知られている。
【0111】
しかしながら、従来の技術では、画像形成装置による画像形成中に、吐出不良ノズルが変わったり、増えたりした場合等には、再度、量子化処理を行う必要があり、処理時間が長くなる。その結果、処理効率が低下する懸念があった。また、画像データにおける吐出不良ノズルに対応する画素の周囲の画素に、異なるハーフトーンマスクを適用する方法もあるが、この方法では、異なるハーフトーン同士の境界において、局所的な粒状性の差等のアーティファクトが視認される懸念があった。
【0112】
本実施形態に係る画像形成システム1(液体吐出システム)は、画像データに基づいてインク(液体)を吐出する画像形成装置103(液体吐出装置)と、DFE2(処理装置)と、を含む。DFE2は、画像データを量子化する量子化処理部212(量子化手段)と、量子化処理部212により量子化された画像データを画像形成装置103に送信する送信部213(送信手段)と、を備える。画像形成装置103は、複数のノズルNを含み、該複数のノズルNからインクを吐出する液体吐出部220(液体吐出手段)と、該複数のノズルのうちの吐出不良ノズルを特定する特定部311(特定手段)と、量子化された画像データと特定部311による特定結果とに基づいて、液体吐出部220から吐出されたインクにより形成される液滴の大きさを変更する変更部315(変更手段)と、を備える。
【0113】
液体吐出部220における吐出不良ノズル周囲に位置する正常ノズルから吐出された液滴の大きさが変更処理により増えることによって、正常ノズルから吐出されたインクの一部が用紙Pに形成された画像における画像異常領域を覆う。その結果、画像異常領域の面積が小さくなり、画像形成システム1は、画像異常を目立たなくすることができる。
【0114】
また、画像形成システム1は、量子化処理部212をDFE102に備え、変更部315を画像形成装置103における制御部30に備えている。例えば、画像形成装置103による画像形成中に吐出不良ノズルが変わったり、増えたりした場合に、画像形成システム1は、処理時間が長い量子化処理を再度行わなくてもよい。これにより、画像形成システム1は、吐出不良ノズルにより生じた画像異常を目立たなくする処理の効率低下を抑え、処理効率を高く確保することができる。さらに、変更部315は、異なるハーフトーンマスクを用いずに処理を実行するため、アーティファクトの発生を回避し、用紙P(記録媒体)に形成される画像の品質を高く確保することができる。
【0115】
また本実施形態では、液体吐出部220は、搬送方向20に沿って搬送される用紙Pにインクを吐出し、複数のノズルNは、搬送方向20と交差する幅方向10に沿って並んで配置されている。この構成により、液体吐出部220が移動しない、いわゆるライン方式の画像形成装置103を備える構成において、画像形成システム1は、吐出不良ノズルにより生じた画像異常を目立たなくする処理の効率低下を抑え、処理効率を高く確保することができる。
【0116】
また本実施形態では、画像形成装置103は、インクを吐出することにより用紙Pに画像を形成し、特定部311は、画像形成装置103が用紙Pに画像形成している間に吐出不良ノズルを特定する。これにより、画像形成システム1は、変更部315による処理を、画像形成中に画像形成を停止することなく実行できるため、画像形成の効率を高く確保することができる。
【0117】
また本実施形態では、画像データにおいて、複数のノズルNそれぞれに対応する画素には液滴の大きさに対応する割当値が予め割り当てられている。変更部315は、吐出不良ノズルに対応する画素に割り当てられている割当値と所定の配分係数との積算値を、吐出不良ノズルに隣接するノズルに対応する画素に割り当てられている割当値に加算した加算値が割当値よりも大きい場合に、液滴の大きさを変更する。この処理により、画像形成システム1は、吐出不良ノズルの影響を吐出異常ノズル周囲のノズルに拡散し、用紙Pに形成する画像の品質低下を抑えることができる。
【0118】
また本実施形態では、画像形成システム1は、搬送方向に沿って搬送される用紙Pにインクを吐出し、変更部315は、液滴の大きさを変更する処理を、画像データにおける搬送方向に沿った下流側に位置する画素に対して順次実行する。この処理により、画像形成システム1は、吐出不良ノズルの影響を、画像データにおける搬送方向20に沿った下流側の画素へ拡散し、用紙Pに形成する画像の品質低下をより抑えることができる。
【0119】
なお、画像形成装置103は、量子化処理を実行しないのであれば、量子化処理機能を備えていてもよい。
【0120】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る画像形成システム1aについて説明する。第1実施形態と同一の構成部には同一符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0121】
図15は、画像形成システム1aの機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態では、画像形成システム1aは、画像処理装置105と、画像形成装置103aと、を備える。画像処理装置105、画像形成装置103a及びDFE102は、インターネット等を介して相互に通信可能に接続されている。
【0122】
画像処理装置105は、送受信部510と、変更部315aと、を備える。画像形成装置103が備える制御部30aは、送受信部317を備える。DFE2は、量子化手段を備える第1の処理装置の一例である。画像処理装置105は、変更手段を備える第2の処理装置の一例である。
【0123】
送受信部317は、特定部311により特定された吐出不良ノズルの識別情報を画像処理装置105に送信する。変更部315aは、送受信部501を介して取得した、吐出不良ノズルの識別情報と、量子化された画像データと、に基づいて、液滴の大きさを変更する処理を行う。変更部315aは、変更後の画像データを、送受信部501を介して画像形成装置103aに送信する。吐出制御部316は、送受信部317を介して取得した変更部315aによる変更処理後の画像データに基づき、液体吐出部220にインクを吐出させる。
【0124】
このように、画像形成システム1aは、画像処理装置105が変更部315aを備える構成においても、画像形成装置103aが画像形成している間に吐出不良ノズルが変わったり、増えたりした場合等に処理時間が長い量子化処理を再度行わなくてもよい。その結果、画像形成システム1aは、吐出不良ノズルにより生じた画像異常を目立たなくする処理の効率低下を抑え、処理効率を高く確保することができる。これ以外の効果は、第1実施形態と同様である。
【0125】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0126】
実施形態に係る液体吐出装置は、記録媒体の被乾燥面に向けてインクを吐出する液体吐出部を備え、吐出されたインクによって文字、図形等の有意な画像を可視化する画像形成装置等に限定されるものではない。例えば、実施形態に係る液体吐出装置には、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。
【0127】
記録媒体は、材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、液体が一時的でも付着可能なものであればよく、例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品等に使用されるものであってもよい。
【0128】
「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を備えるものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
【0129】
「画像形成装置」には、液体吐出部を移動させるシリアル型装置や、液体吐出部を移動させないライン型装置等が含まれる。
【0130】
また、液体吐出部とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
【0131】
また、実施形態は、液体吐出方法も含む。例えば液体吐出方法は、画像データに基づいて液体を吐出する液体吐出装置と、処理装置と、を含む液体吐出システムによる液体吐出方法であって、前記処理装置が、量子化手段により前記画像データを量子化し、送信手段により、前記量子化手段により量子化された前記画像データを前記液体吐出装置に送信し、前記液体吐出装置が、複数のノズルを含む液体吐出手段により、前記複数のノズルから前記液体を吐出し、特定手段により、前記複数のノズルのうちの吐出不良ノズルを特定し、変更手段により、前記量子化された前記画像データと、前記特定手段による特定結果と、に基づいて、前記液体吐出手段により吐出される前記液体により形成される液滴の大きさを変更する。このような液体吐出方法により、上述した画像形成システムと同様の効果を得ることができる。
【0132】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0133】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0134】
1 画像形成システム(液体吐出システムの一例)
10 幅方向
20 搬送方向
30 制御部
40 操作部
101 クライアントPC
102 DFE(処理装置の一例、第1の処理装置の一例)
103 画像形成装置(液体吐出装置の一例)
104 管理サーバ
105 画像処理装置(第2の処理装置の一例)
211 RIP処理部
212 量子化処理部
213 送信部(送信手段の一例)
220 液体吐出部
230 インラインセンサ
311 特定部(特定手段の一例)
312 読取制御部
313 格納部
314 受信部
315 変更部(変更手段の一例)
316 吐出制御部
317、501 送受信部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】