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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019676
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】洗浄籠
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/02 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124598
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】横瀬 卓矢
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB01
4G072DD01
4G072GG04
4G072MM23
4G072NN14
4G072UU01
(57)【要約】
【課題】シリコン片が洗浄籠からこぼれ落ちる量を低減し、かつ液の持ち込み量を低減する。
【解決手段】多結晶シリコン塊を洗浄するために用いられる洗浄籠(10X)である。洗浄籠(10X)の下方に位置し、前記多結晶シリコン塊が収容される収容領域(RB)において、孔径が1mm以上10mm以下である孔(H)が複数形成されており、収容領域(RB)よりも上方の上方領域(RT)において、溝幅が1mm以上10mm以下であるスリット(S)が複数形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコン塊を洗浄するために用いられる洗浄籠であって、
前記洗浄籠の下方に位置し、前記多結晶シリコン塊が収容される収容領域において、孔径が1mm以上10mm以下である孔が複数形成されており、
前記収容領域よりも上方の上方領域において、溝幅が1mm以上10mm以下であるスリットが複数形成されている、洗浄籠。
【請求項2】
前記孔は、前記洗浄籠の底部および側壁部の下方において前記収容領域に含まれる領域に形成されている、請求項1に記載の洗浄籠。
【請求項3】
前記スリットは、前記洗浄籠の側壁部の上方において前記上方領域に含まれる領域に形成され、
前記スリットは、前記洗浄籠の底部と、前記スリットが形成される前記側壁部との接線に対して垂直方向に延伸している、請求項1または2に記載の洗浄籠。
【請求項4】
前記洗浄籠の底部と、側壁部との間に、傾斜部を備えており、
前記傾斜部は、前記底部および前記側壁部に接続され、前記底部の表面に対して上方外側に向かって傾斜しており、
前記傾斜部において前記収容領域に含まれる領域には前記孔が複数形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄籠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多結晶シリコンを洗浄する際に使用する洗浄籠に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度多結晶シリコンを製造する方法としてシーメンス法が知られている。シーメンス法は、金属シリコンと塩化水素ガスの反応により三塩化シランを製造し、その三塩化シランを水素還元又は熱分解することにより、シリコン芯線上にシリコンを析出させて円柱状の多結晶シリコンを生成する方法である。このように生成された多結晶シリコンロッドは、短尺に切断されるかまたは破砕され、小さい塊状のシリコン材料とされる。当該塊状のシリコン材料は、洗浄籠の中に収容された状態で、フッ酸と硝酸を混合した酸で満たされた洗浄槽にその洗浄籠ごと浸漬させてエッチング洗浄される。その後、純水で洗浄され、乾燥される。
【0003】
上述した用途に用いられる洗浄籠には、通常、洗浄籠内へ通液のために、側板および底板に複数の貫通孔が設けられている。例えば、特許文献1に記載のバスケット(洗浄籠)には、底板および側板において、複数の丸孔状の貫通孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-106914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄籠は、洗浄液槽間を移動させるとき、および乾燥工程へ持ち込むときの液の持ち込み量が少ないことが好ましい。一方、シリコン片が貫通孔からこぼれ落ちると、洗浄液の寿命が短くなるため、貫通孔からこぼれ落ちるシリコン片の量が少ないことが好ましい。そのため、洗浄中に貫通孔からこぼれ落ちる多結晶シリコン片の量を低減しつつ、液の持ち込み量を低減するために、貫通孔を改良する余地がある。
【0006】
本発明の一態様は、多結晶シリコン片が洗浄籠からこぼれ落ちる量を低減し、かつ液の持ち込み量を低減する洗浄籠を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る洗浄籠は、多結晶シリコン塊を洗浄するために用いられる洗浄籠であって、前記洗浄籠の下方に位置し、前記多結晶シリコン塊が収容される収容領域において、孔径が1mm以上10mm以下である孔が複数形成されており、前記収容領域よりも上方の上方領域において、溝幅が1mm以上10mm以下であるスリットが複数形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、多結晶シリコン片が洗浄籠からこぼれ落ちる量を低減し、かつ液の持ち込み量を低減する洗浄籠を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る洗浄籠の概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る洗浄籠の展開図である。
図3】本発明の実施形態2に係る洗浄籠の概略斜視図である。
図4】本発明の実施形態2に係る洗浄籠の展開図である。
図5】本発明の実施形態2に係る洗浄籠を上方から見たときの平面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る洗浄籠を第1側板11側から見たときの側面図である。
図7】本発明の実施形態2に係る洗浄籠を第2側板側から見たときの側面図である。
図8図5のVII-VII線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明に係る洗浄籠について説明するが、まずは、理解のために本発明の洗浄籠の使用場面について説明する。
【0011】
多結晶シリコンは、シーメンス法によって、シリコン芯線上に多結晶シリコンを析出させて得られ得る。このように得られた多結晶シリコンロッドは、通常、短尺に切断されるかまたは破砕された後、多結晶シリコン塊(以下、シリコン塊と称する)の状態で洗浄籠に収容され、洗浄プロセスに供される。
【0012】
洗浄プロセスは、例えば、洗浄液としてフッ硝酸を用いたエッチング工程と、洗浄液として水を用いた水洗工程と、乾燥工程と、冷却工程とを含む。洗浄プロセスは当該例に限定されず、他の洗浄液を用いた洗浄工程を含んでいてもよい。
【0013】
エッチング工程は、シリコン塊の表面に存在する汚染物質を除去する洗浄工程である。多結晶シリコンには、自然酸化によって汚染物質を含む酸化膜が、通常、数nmの厚みで形成され得る。多結晶シリコンをフッ硝酸と接触させることにより下記に示す反応が起こる。主にフッ酸の作用として、多結晶シリコンの表面がエッチングされ該表面に存在する酸化膜が除去される。一方で、主に硝酸の作用として、多結晶シリコンの表面に新たな酸化膜が形成される。酸化膜の除去と、酸化膜の形成と、が同時に進行することにより、多結晶シリコンがエッチングされ、多結晶シリコンの表面に付着した汚染物質および多結晶シリコンに取り込まれた汚染物質が除去される。エッチング工程は、複数の洗浄槽から構成されていてもよい。
【0014】
水洗工程は、エッチング工程において用いたフッ硝酸洗浄液および汚染物質を除去する洗浄工程である。水洗工程において用いられる水は、水中に含まれる汚染物質が少ない、精製した水を用いることが好ましく、超純水を用いることがより好ましい。水洗工程は、複数の洗浄槽から構成されていてもよい。
【0015】
乾燥工程は、各種洗浄液によって洗浄されたシリコン塊に対し、高温空気などを通気させることにより乾燥させる工程である。
【0016】
冷却工程は、乾燥工程によって加熱されたシリコン塊を冷却する工程である。
【0017】
上述のような洗浄プロセスにおいて、エッチング工程および水洗工程は、各洗浄液を湛えた洗浄槽にシリコン塊を収容した洗浄籠を浸漬させることにより実施され得る。また、洗浄籠を浸漬している間、洗浄液との接触効率を向上させるために、洗浄籠を上下運動またはスイング運動させてもよい。
【0018】
本発明に係る洗浄籠は、上述のような洗浄プロセスにおいて用いられるものである。
【0019】
〔実施形態1〕
<洗浄籠10Xの構成>
以下、本発明の一態様について、図1および図2に基づいて説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、特に明示されない限り、各部材の形状、構造、および位置関係は、各図の例に限定されない。本明細書では、「A~B」という記載は、特に明示されない限り、「A以上かつB以下」を意味する。
【0020】
図1は洗浄籠10Xの概略斜視図である。なお、図1は洗浄籠10Xの外形を概略的に示したものであり、洗浄籠10Xが有する孔HおよびスリットSなどは省略している。図2は、洗浄籠10Xの展開図である。図2の符号2001に示される図は、底板14(底部)と、第1側板11X(側壁部)と、第2側板12X(側壁部)とを含む展開図である。図2の符号2002に示される図は、仕切板15Xの平面図である。図2の展開図は模式的に示した展開図であり、孔HおよびスリットSの大きさ、数、配置などは実際の構成と異なることを理解されたい。
【0021】
図1および図2に示すように、洗浄籠10Xは、底板14(底部)と、第1側板11X(側壁部)と、第2側板12X(側壁部)と、仕切板15Xとを備える。
【0022】
洗浄籠10Xは、複数のシリコン塊を収容可能な籠である。洗浄籠10Xは、例えば、略直方体形状を有しており、水切れのよい樹脂、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、またはポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)などから構成され得る。洗浄籠10Xの容量は、例えば1L~300L、好ましくは150L~290Lである。洗浄籠10Xを上方から平面視したときの長辺の長さは10cm~100cm、好ましくは40cm~90cmである。洗浄籠10Xを上方から平面視したときの短辺の長さは10cm~100cm、好ましくは40cm~90cmである。洗浄籠10Xの高さは10cm~70cm、好ましくは30cm~60cmである。洗浄籠10Xの形状は直方体形状に限定されない。
【0023】
底板14は、洗浄籠10Xの底部に位置する部材である。図1では、底板14は長方形状の平板によって構成されているが、当該形状に限定されず、正方形形状の平板であってもよい。また、底板14は、下に凸となるように湾曲していてもよい。
【0024】
第1側板11X(側壁部)は、洗浄籠10Xが略直方体の矩形を有する場合、底板14の短辺に接続され、底板14から上方に延伸する部材である。第2側板12X(側壁部)は、底板14の長辺に接続され、底板14から上方に延伸する部材である。図1では、第1側板11Xおよび第2側板12Xは、底板14の表面に対して垂直な方向に延伸しているが、当該態様に限定されない。例えば、第1側板11Xおよび第2側板12Xは、底板14の表面に対して、シリコン塊を収容可能な程度に上方外側に向かって傾斜していてもよい。
【0025】
仕切板15Xは、洗浄籠10Xの内部に設けられ、洗浄籠10X内におけるシリコン塊の偏りを低減するための部材である。洗浄籠10Xは、必要に応じて複数の仕切板15Xを備えていてもよい。図1および図2に示す例では仕切板15Xの形状は矩形を有しているが、仕切板Xの形状は、洗浄籠10Xの形状に合わせ、任意に設計され得る。仕切板15Xには、仕切板Xによって仕切られた洗浄籠10X内の2つの領域間の液通りのために、複数の貫通孔が設けられている。仕切板15Xに設けられる貫通孔は、シリコン塊が通過せず、液通りを確保できる大きさであれば、形状および大きさは特に限定されない。例えば、後述するスリットSが複数形成されていてもよい。
【0026】
図1に示すように、洗浄籠10Xにおいて、下方に位置し、シリコン塊が収容される領域を収容領域RB、収容領域RBよりも上方の領域を上方領域RTと定義する。図2に示すように、第1側板11Xは、収容領域RBに含まれる領域である領域11B、上方領域RTに含まれる領域である領域11Tを有している。同様に、第2側板12Xは、収容領域RBに含まれる領域である領域12B、上方領域RTに含まれる領域である領域12Tを有している。底板14は収容領域RBに含まれる領域14Bを有している。収容領域RBと、上方領域RTとの境界位置は、洗浄籠10Xの容量などにより任意に設定され得る。例えば、収容領域RBと、上方領域RTとの境界位置は、洗浄籠10Xの高さ方向において、下から4分の1~3分の2に規定され得る。
【0027】
洗浄籠10Xには、収容領域RBにおいて、孔径が1mm以上10mm以下、好ましくは2mm以上6mm以下である、略円形の貫通孔である孔Hが複数形成されている。より詳細には、洗浄籠10Xは、領域11B、領域12Bおよび領域14Bにおいて孔径が1mm以上10mm以下、好ましくは2mm以上6mm以下である孔Hを複数有している。洗浄籠10Xが有する孔Hは全て同じ孔径であってもよいし、上記範囲内の孔径であればそれぞれ異なる孔径を有していてもよい。孔Hが全て同じ孔径である場合、加工が容易である。
【0028】
洗浄籠を用いてシリコン塊を洗浄する場合、洗浄籠内の通液状態を良くするために洗浄籠を上下または揺動させることが一般的である。この洗浄籠の上下動作または揺動動作に伴い、籠内のシリコン塊同士が接触または衝突し、小さな多結晶シリコン片が発生する場合がある。このようなシリコン片は、微細なものを含むため、洗浄籠から洗浄液中にこぼれ落ちやすい(落下しやすい)。シリコン片が洗浄液中に落下すると、特にエッチング工程などの薬液を用いる洗浄工程においては、シリコン片と洗浄液とが反応し、洗浄液の寿命が短くなってしまう。
【0029】
孔径を1mm以上10mm以下とすることにより、シリコン片が洗浄籠から洗浄液中に落下する量を低減することができる。通液性と、落下量とを考慮した場合、孔径を2mm以上6mm以下とすることがより好ましい。
【0030】
洗浄籠10Xにおいて、孔Hは、洗浄籠10Xの底板14および側壁部(第1側板11Xおよび第2側板12X)の下方において収容領域RBに含まれる領域に形成されている。収容領域RBに含まれる領域に、孔Hが形成されていることにより、シリコン片が洗浄液中にこぼれ落ちる量を効果的に低減することができる。
【0031】
また、洗浄籠10Xの収容領域RBにおける、洗浄籠10Xの表面積に対する、複数の孔Hの開口面積の合計値の割合として示される開口率は、10%以上20%以下、好ましくは12%以上18%以下である。孔Hの孔径および数は、収容領域RBにおける開口率が上記範囲内となるように、適宜決定され得る。
【0032】
孔Hを備える収容領域RBの開口率が10%以上20%以下であることにより、シリコン片の落下量を低減しつつ、洗浄液の持ち込み量を抑制することができる。通液性と、落下量とを考慮した場合、開口率を12%以上18%以下とすることがより好ましい。また、収容領域RBを構成する領域11B、領域12B、および領域14Bの各領域において、開口率が10%以上20%以下、好ましくは12%以上18%以下であることがより好ましい。
【0033】
洗浄籠10Xには、上方領域RTにおいて、長孔状の貫通孔であるスリットSが、複数形成されている。スリットSの溝幅は、1mm以上10mm以下、好ましくは2mm以上4mm以下である。より詳細には、洗浄籠10Xは、第1側板11Xの領域11Tにおいて、底板14と、第1側板11Xとの接線に対して垂直方向に延伸するスリットSを複数有している。同様に、洗浄籠10Xは、第2側板12Xの領域12Tにおいて、底板14と、第2側板12Xとの接線に対して垂直方向に延伸するスリットSを複数有している。換言すると、スリットSは、洗浄籠10Xの側壁部の上方において上方領域RTに含まれる領域に形成される。スリットSは、洗浄籠10Xの底部と、スリットSが形成される側壁部との接線に対して垂直方向に延伸している。スリットSの長さは特に限定されないが、例えば、20mm以上150mm以下、好ましくは50mm以上130mm以下であってよい。洗浄籠10Xが有するスリットの溝幅は、全て同じであってもよいし、上記範囲内であればそれぞれ異なっていてもよい。溝幅が同じである場合、加工が容易である。
【0034】
洗浄籠を用いてシリコン塊を洗浄する場合、洗浄籠を、第1の洗浄液槽から第2の洗浄液槽へ移動させるときの洗浄液の持ち込み量が少ないことが好ましい。孔Hと、スリットSとを比較すると、開口率が同じ場合、孔Hは孔径が小さいほど表面張力の影響を受け、液通りが悪くなりやすい。上方領域RTにスリットSを設けることにより、洗浄籠10Xを第1の洗浄液槽から第2の洗浄液槽へ移動させるときの洗浄液の持ち込み量を低減することができる。これにより洗浄液濃度の制御を容易にし、また洗浄液の劣化を低減することができる。また、洗浄液槽から、乾燥工程に持ち込む場合には、洗浄液の持ち込み量が低減されることにより、乾燥効率を向上させることができる。
【0035】
また、洗浄籠10Xの上方領域RTにおける、洗浄籠10Xの表面積に対する、複数のスリットSの開口面積の合計値の割合として示される開口率は、10%以上40%以下、好ましくは12%以上28%以下である。スリットSの溝幅、長さおよび数は、上方領域RTにおける開口率が上記範囲内となるように、適宜決定され得る。
【0036】
スリットSを備える上方領域RTにおける開口率が10%以上40%以下であることにより、シリコン片の落下量を低減しつつ、洗浄液の持ち込み量を抑制することができる。通液性と、落下量とを考慮した場合、開口率を12%以上28%以下とすることがより好ましい。また、上方領域RTを構成する領域11Tおよび領域12Tの各領域において、開口率が10%以上40%以下、好ましくは12%以上28%以下であることがより好ましい。
さらに洗浄籠10X全体の内面積(仕切板15Xを除く)に対する、洗浄籠10Xが有する孔HおよびスリットSの開口面積の合計値の割合として規定される開口率は、13%以上20%以下、好ましくは15%以上18%以下である。これにより、シリコン片の落下量を低減しつつ、洗浄液の持ち込み量を抑制する本発明の効果を十分に発揮させることができる。
【0037】
洗浄籠10Xは、洗浄籠10Xの下方に位置し、シリコン塊が収容される収容領域RBにおいて、孔径が1mm以上10mm以下である孔Hが複数形成されている。また、洗浄籠10Xは、収容領域RBよりも上方の上方領域RTにおいて、溝幅が1mm以上10mm以下であるスリットが複数形成されている。
【0038】
上記構成により、シリコン片が洗浄籠からこぼれ落ちる量を低減し、かつ液の持ち込み量を低減する洗浄籠を実現することができる。
【0039】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0040】
図3は、実施形態2に係る洗浄籠10の概略斜視図である。なお、図3は洗浄籠10の外形を概略的に示したものであり、洗浄籠10が有する孔HおよびスリットSなどは省略している。図4は、洗浄籠10Xの展開図である。図4の展開図は模式的に示した展開図であり、孔HおよびスリットSの大きさ、数、配置などは実際の構成と異なることを理解されたい。図5は、洗浄籠10を上方から見たときの平面図である。図6は、洗浄籠10を第1側板11側から見たときの側面図である。図7は、洗浄籠10を第2側板12側から見たときの側面図である。図8は、図5のVII-VII線矢視断面図である。
【0041】
図3および図4に示すように、洗浄籠10は、底板14(底部)と、第1側板11(側壁部)と、第2側板12(側壁部)と、傾斜板13(傾斜部)と、仕切板15とを備える。洗浄籠10は、実施形態1の洗浄籠10Xと比較して、底板14と、第1側板11との間に傾斜板13を備えている点が異なっている。また、図3に示すように、第2側板12の上端に接続されるリブ121を有していてもよい。リブ121を有することにより、シリコン塊が洗浄籠10の上部から落下する可能性を低減することができる。
【0042】
図3に示すように、洗浄籠10は、実施形態1の洗浄籠10Xと同様に、収容領域RBおよび上方領域RTを有している。
【0043】
傾斜板13は、底板14および第2側板12に接続され、底板14の表面に対して上方外側に向かって傾斜している部材である。洗浄籠10において、傾斜板13は、収容領域RBに含まれる領域13Bを有している。領域13Bには、孔Hが複数形成されている。なお、収容領域RBと、上方領域RTとの境界位置に応じ、傾斜板13は、上方領域RTに含まれる領域13Tを有していてもよい。その場合、領域13Tは、複数のスリットSを有していてもよい。洗浄籠10は、底板14と第2側板12との間に傾斜板13を有しているが、底板14と、第1側板11との間に傾斜板13を有していてもよい。あるいは、(i)底板14と第2側板12との間および(ii)底板14と第1側板11との間の両方に傾斜板13を有していてもよい。
【0044】
洗浄籠10において、第2側板12は、上方領域RTに含まれる領域12Tのみを有しているが、収容領域RBと、上方領域RTとの境界位置に応じ、第2側板12は、収容領域RBに含まれる領域12Bを有していてもよい。
【0045】
第1側板11は、領域11Bおよび領域11Tを有している。第1側板11は、図4に示されるように、第1側板11の平面視において、底板14、傾斜板13および第2側板12とそれぞれ接続される辺を含む6角形状であってもよい。あるいは、第1側板11は、洗浄籠10を支持台に置いたときの安定性を向上させるために、図6に示すような脚部112を備えていてもよい。
【0046】
仕切板15は、平面視したときの形状が6角形状である点以外は、実施形態1の仕切板15Xと同様の構成を有する。
【0047】
図6に示されるように、孔HおよびスリットSは、規則正しく、ほぼ等間隔に設けられていてもよい。また、図5に示すように、洗浄籠10の強度確保のため、孔Hを有さない領域が交差するように、孔Hを形成してもよい。
【0048】
洗浄籠10は、洗浄籠10の底板14と、側壁部(第1側板11および/または第2側板12)との間に、傾斜板13を備えている。傾斜板13は、底板14および前記側壁部に接続され、底板14の表面に対して上方外側に向かって傾斜している。傾斜板13において収容領域RBに含まれる領域には、孔Hが複数形成されている。
【0049】
底板14と、第2側板12および/または第1側板11との間に傾斜板13を有していることにより、底部における液溜の発生を低減することができ、洗浄液の持ち込み量をさらに低減することができる。
【0050】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
<実証試験>
以下では、液持ち込み量と、シリコンこぼれ量について、本発明の範囲内の実施例と、比較例とを比較した実証試験について記載する。
【0052】
実施例1および2は、上記実施形態2の洗浄籠10を用いて実施した結果である。実施例1の洗浄籠10における孔Hの孔径は4mmであり、スリットSの溝幅は2mm(長さ90mm)とした。実施例2の洗浄籠10における孔Hの孔径は6mmであり、スリットSの溝幅は3mm(長さ90mm)とした。比較例1および比較例2については、外形は図3に示す洗浄籠10と同様の形状を有する洗浄籠を用いた。比較例1の洗浄籠Aは、第1側板11、第2側板12、傾斜板13、底板14および仕切板15における全ての貫通孔が、溝幅2mm、長さ90mmのスリットである。比較例2の洗浄籠Bは、第1側板11、第2側板12、傾斜板13、底板14および仕切板15における全ての貫通孔が、孔径4mmの孔である。
【0053】
各比較例および実施例について、内面積が992685mm(容量約90L)の同じ外形を有する洗浄籠に、それぞれ30kgのシリコン塊を収容し、同じ洗浄操作を実施した。上記シリコン塊は、還元反応炉内でシーメンス法により製造した多結晶シリコンロッドを、金属ハンマーで砕き、破砕塊としたものである。破砕塊の全量のうち、少なくとも90質量%の破砕塊の長径が、10mm~120mmの範囲になるよう砕いたものを、上記シリコン塊として用いた。
【0054】
表1には、各比較例および実施例に用いた洗浄籠について、それぞれ内面積(mm)、上方領域RTおよび収容領域RBの内面積(mm)、上方領域RTおよび収容領域RBにおける開口率(%)、籠全体の開口率(%)を記載している。また、各比較例および実施例について、液持ち込み量(kg)、シリコンこぼれ量(g)を測定した結果を示している。
【0055】
【表1】
【0056】
まず、比較例1と、実施例(実施例1および実施例2)とを比較する。表1に示されるように、貫通孔が全て溝幅2mmのスリットである比較例1に対し、スリットと孔を組み合わせた本願発明の範囲内の実施例は、シリコンこぼれ量が有意に低減されることが実証された。
【0057】
次に、比較例2と実施例とを比較する。表1に示されるように、貫通孔が全て孔径4mmのスリットである比較例3に対し、スリットと孔を組み合わせた本願発明の範囲内の実施例は、液持ち込み量が有意に低減されることが実証された。
【0058】
以上のことから、本願発明の範囲内の洗浄籠は、シリコン片が洗浄籠からこぼれ落ちる量を低減し、かつ液の持ち込み量を低減する洗浄籠を実現することができることが実証された。
【符号の説明】
【0059】
10、10X・・・洗浄籠
11、11X・・・第1側板(側壁部)
12、12X・・・第2側板(側壁部)
13・・・傾斜板(傾斜部)
14、14X・・・底板(底部)
15、15X・・・仕切板
H・・・孔
S・・・スリット
RT・・・上部領域
RB・・・収容領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8