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特開2023-20336溶接検査装置、溶接システム、及び溶接検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020336
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】溶接検査装置、溶接システム、及び溶接検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20230202BHJP
   G01N 29/48 20060101ALI20230202BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/48
B23K31/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125644
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 知
(72)【発明者】
【氏名】野村 和史
(72)【発明者】
【氏名】門田 圭二
(72)【発明者】
【氏名】恵良 哲生
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB07
2G047BC09
2G047CA04
2G047DA02
2G047DB03
2G047DB10
2G047GD01
2G047GG28
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】薄板の溶接に用いられる重ね隅肉溶接の溶接部の内部欠陥を溶接中にインプロセスで検出可能とする溶接検査装置、溶接システム、及び溶接検査方法を提供する。
【解決手段】送信用レーザ光照射装置12は、送信用レーザ光14を溶接後の溶接部6上に照射する。受信用レーザ光プローブ18は、溶接部6を通過し、かつ、母材4の下面5で反射した超音波を検出可能な超音波受信点36に受信用レーザ光20を照射する。制御装置22は、レーザ干渉計の計測結果により溶接部6の内部欠陥の有無を判定する。送信用レーザ光照射装置12は、溶接方向と交差する方向に送信用レーザ光14の照射位置を走査するように構成された走査機構を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね隅肉溶接の溶接部を検査する溶接検査装置であって、
検査対象の内部に超音波を励起するための送信用レーザ光を溶接後の前記検査対象の溶接部上に照射する第1のレーザ光照射装置と、
前記溶接部を通過し、かつ、前記検査対象の母材下面で反射した前記超音波を検出可能な前記検査対象上の所定位置に、前記超音波を検出するための受信用レーザ光を照射する第2のレーザ光照射装置と、
前記受信用レーザ光の反射光を干渉計測するレーザ干渉計と、
前記レーザ干渉計の計測結果により前記溶接部の内部欠陥の有無を判定する判定装置とを備え、
前記第1のレーザ光照射装置は、溶接方向と交差する方向に前記送信用レーザ光の照射位置を走査するように構成された走査機構を含む、溶接検査装置。
【請求項2】
前記判定装置は、前記受信用レーザ光及び前記レーザ干渉計を用いて検出される超音波の強度の減衰度がしきい値を超える場合に、前記溶接部に内部欠陥が生じているものと判定する、請求項1に記載の溶接検査装置。
【請求項3】
溶接トーチを含むアーク溶接装置と、
前記アーク溶接装置により形成された重ね隅肉溶接の溶接部を検査する、請求項1又は請求項2に記載の溶接検査装置と、
溶接ロボットとを備え、
前記溶接トーチ、並びに前記溶接検査装置の前記第1及び第2のレーザ光照射装置は、前記溶接ロボットのアームに搭載され、
前記第1及び第2のレーザ光照射装置は、前記溶接トーチの溶接進行方向後方に配置される、溶接システム。
【請求項4】
前記溶接ロボットは、前記アームを制御するコントローラを含み、
前記コントローラは、前記アーク溶接装置による溶接中に、前記第1及び第2のレーザ光照射装置が前記溶接トーチの溶接進行方向後方に位置するように、前記アームを制御する、請求項3に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記溶接ロボットは、前記アーク溶接装置及び前記アームを制御するコントローラを含み、
前記コントローラは、前記溶接検査装置により前記溶接部の内部欠陥が検出されると、前記アーク溶接装置による溶接及び前記アームの動作を停止する、請求項3に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記溶接ロボットは、前記アーク溶接装置及び前記アームを制御するコントローラを含み、
前記コントローラは、前記溶接検査装置により前記溶接部の内部欠陥が検出されると、第1の処理及び第2の処理の少なくとも一方を実行するように構成され、
前記第1の処理は、前記アーク溶接装置の溶接条件を変更する処理を含み、
前記第2の処理は、前記内部欠陥が検出されていない場合に比べて溶接速度を低下するように前記アームを制御する処理を含む、請求項3に記載の溶接システム。
【請求項7】
前記アーム上における前記第2のレーザ光照射装置の位置及び角度の少なくとも一方を調整するように構成された調整機構と、
前記アームに搭載され、溶接に伴なう前記検査対象の前記所定位置における変形を測定する変形測定装置とをさらに備え、
前記調整機構は、前記所定位置と前記第2のレーザ光照射装置との相対的な位置関係が所定の関係となるように、前記変形測定装置の測定結果に基づいて前記位置及び角度の少なくとも一方を調整する、請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項8】
前記所定位置の溶接進行方向前方において、前記アーク溶接装置による溶接により前記検査対象の表面に生じた酸化皮膜を除去するように構成された表面処理装置をさらに備える、請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項9】
第1のレーザ光照射装置は、各々が送信用のパルスレーザ光を前記溶接部上に照射する複数のパルスレーザ光照射装置を含んで構成され、
前記複数のパルスレーザ光照射装置は、レーザ光照射タイミングが互いにずれるように前記パルスレーザ光を照射する、請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項10】
重ね隅肉溶接の溶接部を検査する溶接検査方法であって、
検査対象の内部に超音波を励起するための送信用レーザ光を溶接後の前記検査対象の溶接部上に照射するステップと、
前記溶接部を通過し、かつ、前記検査対象の母材下面で反射した前記超音波を検出可能な前記検査対象上の所定位置に、前記超音波を検出するための受信用レーザ光を照射するステップと、
前記受信用レーザ光の反射光をレーザ干渉計により干渉計測するステップと、
前記レーザ干渉計の計測結果により前記溶接部の内部欠陥の有無を判定するステップとを含み、
前記送信用レーザ光を照射するステップは、溶接方向と交差する方向に前記送信用レーザ光の照射位置を走査するステップを含む、溶接検査方法。
【請求項11】
前記判定するステップは、前記受信用レーザ光及び前記レーザ干渉計を用いて検出される超音波の強度の減衰度がしきい値を超える場合に、前記溶接部に内部欠陥が生じているものと判定するステップを含む、請求項10に記載の溶接検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接検査装置、溶接システム、及び溶接検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接部に発生したブローホール等の内部欠陥を非破壊で検出する手法として、超音波探傷試験(UT(Ultrasonic Testing))が知られている。しかしながら、溶接中は対象が高温となるため、検査対象表面に探触子を直接アクセスさせる本手法を溶接中にインプロセスで適用することは難しい。
【0003】
そこで、検査対象表面にレーザ光(送信用レーザ光)を照射して検査対象の内部に超音波を発生させ、別途検査対象に照射したレーザ光(受信用レーザ光)を用いて超音波を検出することにより、検査対象の内部欠陥を非破壊で検出する、所謂「レーザ超音波法」による内部欠陥検出手法が知られている。
【0004】
例えば、特許第5651533号公報(特許文献1)には、厚板の開先溶接において、レーザ超音波法を用いて溶接部の内部欠陥をインプロセスで検出する溶接検査方法が開示されている。この溶接検査方法では、溶接ビードの上方からビード表面に送信用レーザ光を照射し、欠陥で反射する超音波(散乱波)を、受信用レーザ光を用いて検出することにより、溶接部の内部欠陥を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5651533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車用鋼板等の薄板の溶接(重ね隅肉溶接)では、板厚が薄いため(例えば1~2mm程度)、ブローホール等の内部欠陥で反射する超音波(散乱波)を検出することが難しく、上記の特許第5651533号公報に記載の溶接検査方法も、厚板の開先溶接を対象としている。なお、UTについても、JIS Z 3060「鋼溶接部の超音波探傷試験方法」、日本建築学会「鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準」等において、適用板厚は6mm以上と定められており、自動車用鋼板等の薄板の溶接(重ね隅肉溶接)は適用外とされている。
【0007】
それゆえに、本開示の目的は、薄板の溶接に用いられる重ね隅肉溶接の溶接部の内部欠陥を溶接中にインプロセスで検出可能とする溶接検査装置、溶接システム、及び溶接検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の溶接検査装置は、重ね隅肉溶接の溶接部を検査する溶接検査装置であって、第1及び第2のレーザ光照射装置と、レーザ干渉計と、判定装置とを備える。第1のレーザ光照射装置は、検査対象の内部に超音波を励起するための送信用レーザ光を溶接後の検査対象の溶接部上に照射する。第2のレーザ光照射装置は、溶接部を通過し、かつ、検査対象の母材下面で反射した超音波を検出可能な検査対象上の所定位置に、超音波を検出するための受信用レーザ光を照射する。レーザ干渉計は、受信用レーザ光の反射光を干渉計測する。判定装置は、レーザ干渉計の計測結果により溶接部の内部欠陥の有無を判定する。第1のレーザ光照射装置は、溶接方向と交差する方向に送信用レーザ光の照射位置を走査するように構成された走査機構を含む。
【0009】
この溶接検査装置では、走査機構により、溶接方向と交差する方向に送信用レーザ光の照射位置が走査される。そして、溶接部に生じた内部欠陥で反射する超音波(散乱波)ではなく、溶接部を通過し、かつ、検査対象の母材下面で反射した超音波を用いて、内部欠陥の検出が行なわれる。これにより、薄板の溶接に用いられる重ね隅肉溶接の溶接部の内部欠陥をインプロセスで検出することが可能となる。
【0010】
判定装置は、受信用レーザ光及びレーザ干渉計を用いて検出される超音波の強度の減衰度がしきい値を超える場合に、溶接部に内部欠陥が生じているものと判定してもよい。
【0011】
また、本開示の溶接システムは、溶接トーチを含むアーク溶接装置と、アーク溶接装置により形成された重ね隅肉溶接の溶接部を検査する上記の溶接検査装置と、溶接ロボットとを備える。溶接トーチ、並びに溶接検査装置の第1及び第2のレーザ光照射装置は、溶接ロボットのアームに搭載される。第1及び第2のレーザ光照射装置は、溶接トーチの溶接進行方向後方に配置される。
【0012】
上記の溶接システムによれば、アーク溶接装置とともにロボットのアームに搭載される上記の溶接検査装置を用いて、アーク溶接装置による重ね隅肉溶接の溶接部の内部欠陥を溶接中にインプロセスで検出することができる。
【0013】
溶接ロボットは、アームを制御するコントローラを含み、コントローラは、アーク溶接装置による溶接中に、第1及び第2のレーザ光照射装置が溶接トーチの溶接進行方向後方に位置するように、アームを制御してもよい。
【0014】
コントローラは、溶接検査装置により溶接部の内部欠陥が検出されると、アーク溶接装置による溶接及びアームの動作を停止してもよい。
【0015】
コントローラは、溶接検査装置により溶接部の内部欠陥が検出されると、以下の第1の処理及び第2の処理の少なくとも一方を実行するように構成されてもよい。第1の処理は、アーク溶接装置の溶接条件を変更する処理を含む。第2の処理は、内部欠陥が検出されていない場合に比べて溶接速度を低下するようにアームを制御する処理を含む。
【0016】
溶接システムは、調整機構と、変形測定装置とをさらに備えてもよい。調整機構は、アーム上における第2のレーザ光照射装置の位置及び角度の少なくとも一方を調整するように構成される。変形測定装置は、アームに搭載され、溶接に伴なう検査対象の所定位置における変形を測定する。そして、調整機構は、所定位置と第2のレーザ光照射装置との相対的な位置関係が所定の関係となるように、変形測定装置の測定結果に基づいて位置及び角度の少なくとも一方を調整してもよい。
【0017】
溶接システムは、表面処理装置をさらに備えてもよい。表面処理装置は、所定位置の溶接進行方向前方において、アーク溶接装置による溶接により検査対象の表面に生じた酸化皮膜を除去するように構成される。
【0018】
第1のレーザ光照射装置は、各々が送信用のパルスレーザ光を溶接部上に照射する複数のパルスレーザ光照射装置を含んで構成されてもよい。複数のパルスレーザ光照射装置は、レーザ光照射タイミングが互いにずれるようにパルスレーザ光を照射してもよい。
【0019】
また、本開示の溶接検査方法は、重ね隅肉溶接の溶接部を検査する溶接検査方法であって、検査対象の内部に超音波を励起するための送信用レーザ光を溶接後の検査対象の溶接部上に照射するステップと、溶接部を通過し、かつ、検査対象の母材下面で反射した超音波を検出可能な検査対象上の所定位置に、超音波を検出するための受信用レーザ光を照射するステップと、受信用レーザ光の反射光をレーザ干渉計により干渉計測するステップと、レーザ干渉計の計測結果により溶接部の内部欠陥の有無を判定するステップとを含み、送信用レーザ光を照射するステップは、溶接方向と交差する方向に送信用レーザ光の照射位置を走査するステップを含む。
【0020】
この溶接検査方法では、溶接方向と交差する方向に送信用レーザ光の照射位置が走査される。そして、溶接部に生じた内部欠陥で反射した超音波(散乱波)ではなく、溶接部を通過し、かつ、検査対象の母材下面で反射した超音波を用いて、内部欠陥の検出が行なわれる。これにより、薄板の溶接に用いられる重ね隅肉溶接の溶接部の内部欠陥をインプロセスで検出することが可能となる。
【0021】
判定するステップは、受信用レーザ光及びレーザ干渉計を用いて検出される超音波の強度の減衰度がしきい値を超える場合に、溶接部に内部欠陥が生じているものと判定するステップを含んでもよい。
【発明の効果】
【0022】
上記の溶接検査装置、溶接システム、及び溶接検査方法によれば、薄板の溶接に用いられる重ね隅肉溶接の溶接部の内部欠陥を溶接中にインプロセスで検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態1に従う溶接検査装置の構成を示す図である。
図2】溶接検査装置による溶接部の欠陥検出の原理を説明する図である。
図3】溶接検査装置による溶接部の欠陥検出の原理を説明する図である。
図4】送信用レーザ光の照射位置と、受信用レーザ光の照射位置における超音波の到達時間との関係を示す図である。
図5】送信用レーザ光の照射位置と、受信用レーザ光の照射位置における超音波の信号強度との関係を示す図である。
図6】溶接部における欠陥の有無の判定方法を説明する図である。
図7】実施の形態1に従う溶接検査装置における一連の処理の手順を説明するフローチャートである。
図8】実施の形態2に従う溶接システムの全体構成図である。
図9図8に示す溶接システムにおけるインプロセスでの溶接欠陥検出のイメージを示す図である。
図10】実施の形態2に従う溶接システムにおける一連の処理の手順を説明するフローチャートである。
図11】コントローラが制御装置から欠陥検出信号を受信したときのコントローラの処理例を示すフローチャートである。
図12】変形例において、コントローラが制御装置から欠陥検出信号を受信したときのコントローラの処理例を示すフローチャートである。
図13】焦点位置からの高さ方向のずれ量と、受信用レーザ光プローブの受信感度との関係を示す図である。
図14】検査対象に対する受信用レーザ光の角度ずれと、受信用レーザ光プローブの受信感度との関係を示す図である。
図15】溶接に伴ない母材が変形した様子を示す図である。
図16】検査対象の表面状態と、受信用レーザ光プローブによる受信用レーザ光の受信感度との関係を例示した図である。
図17】実施の形態3に従う溶接システムの全体構成図である。
図18】溶接進行中の送信用レーザ光の照射位置を示した平面図である。
図19】送信用レーザ光の照射周波数と、溶接進行方向における空間分解能との関係を示す図である。
図20】実施の形態4における送信用レーザ光照射装置の構成例を示す図である。
図21】送信用レーザ光照射装置の各々から出力されるパルスレーザ光の発振タイミングを示す図である。
図22】実施の形態4の変形例における送信用レーザ光照射装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
[実施の形態1]
図1は、本開示の実施の形態1に従う溶接検査装置の構成を示す図である。図1を参照して、溶接検査装置1は、送信用レーザ源10と、送信用レーザ光照射装置12と、受信用レーザ源16と、受信用レーザ光プローブ18と、制御装置22と、表示装置24とを備える。
【0026】
この溶接検査装置1は、自動車用鋼板等の薄板(母材2,4)の重ね隅肉溶接における溶接部6の検査に用いられる。母材2,4は、例えば、板厚が1~2mm程度の亜鉛メッキ鋼板である。なお、図中、Y方向は、溶接進行方向を示し、X方向は、母材と平行であって溶接方向(Y方向)に直交する方向を示し、Z方向は、母材の法線方向を示す。
【0027】
送信用レーザ源10は、送信用レーザ光照射装置12において送信用レーザ光14を生成するための励起光を生成し、送信用レーザ光照射装置12へ出力する。送信用レーザ源10は、例えばLD電源によって構成される。
【0028】
送信用レーザ光照射装置12は、送信用レーザ源10から励起光を受けてパルスレーザ光である送信用レーザ光14を発生し、検査対象の溶接部6に照射する。送信用レーザ光照射装置12は、例えばYAGパルスレーザ光を発生するマイクロチップレーザと、送信用レーザ光14の照射位置をX方向に走査可能な走査機構とを含んで構成される。走査機構は、例えば、角度を調整可能なガルバノミラーと、ガルバノミラーを駆動する駆動機構とを含んで構成される。
【0029】
受信用レーザ源16は、レーザ干渉計を含んで構成される。受信用レーザ源16は、下板の母材4へ照射する受信用レーザ光20(参照光)を発生し、受信用レーザ光プローブ18へ出力する。また、受信用レーザ源16は、母材4へ照射された受信用レーザ光20の母材4からの反射光を受信用レーザ光プローブ18から受け、参照光と反射光とを含む干渉光を検出して制御装置22へ出力する。
【0030】
受信用レーザ光プローブ18は、下板の母材4の所定位置(超音波受信点)へ受信用レーザ光20を照射する。また、受信用レーザ光プローブ18は、母材4に照射した受信用レーザ光20の母材4からの反射光を受光し、受信用レーザ源16(レーザ干渉計)へ出力する。
【0031】
この溶接検査装置1では、レーザ超音波法を用いて溶接部6の内部欠陥の検出を行なう。すなわち、検査対象の溶接部6にレーザ光(送信用レーザ光14)を照射して検査対象の内部に超音波を発生させ、受信用レーザ光20が照射される母材4上の位置(超音波受信点)における超音波の強度に応じた表面振動を、受信用レーザ光20の参照光と反射光との干渉光により検出する。そして、溶接部6に内部欠陥が存在しない場合と存在する場合との検出差に基づいて、溶接部6の内部欠陥の有無が判定される。溶接検査装置1による溶接部の内部欠陥の検出原理については、後ほど図2図3で詳しく説明する。
【0032】
制御装置22は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリ(RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory))と、各種信号を入出力するための入出力ポートとを含んで構成される(いずれも図示せず)。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、制御装置22により実行される各種処理が記述されている。
【0033】
制御装置22は、送信用レーザ光照射装置12において送信用レーザ光14を生成するための励起光を発生するように送信用レーザ源10を制御する。また、制御装置22は、送信用レーザ光14の照射位置をX方向に走査するように送信用レーザ光照射装置12を制御する。また、制御装置22は、送信用レーザ光照射装置12における送信用レーザ光14の発振タイミング(パルス照射のタイミング)を送信用レーザ光照射装置12から受ける。
【0034】
そして、制御装置22は、受信用レーザ源16のレーザ干渉計による受信用レーザ光20の干渉計測結果を受信用レーザ源16から受け、受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)における超音波の強度(表面振動の強度)に基づいて、溶接部6の内部欠陥の有無を判定する。この内部欠陥の有無の判定方法については、後ほど詳しく説明する。
【0035】
表示装置24は、制御装置22の各種処理結果を表示するためのディスプレイである。表示装置24には、例えば、溶接検査装置1による検査対象内の超音波の計測結果を示す、B-scopeと称される計測画面が表示される。B-scopeは、X方向に走査される送信用レーザ光14の照射位置(超音波送信点)に応じた、受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)における超音波の到達時間及び強度を表示したものである。制御装置22及び表示装置24は、例えばPC(Personal Computer)によって構成される。以下、溶接検査装置1による溶接部の内部欠陥の検出方法について詳しく説明する。
【0036】
図2及び図3は、溶接検査装置1による溶接部の内部欠陥の検出原理を説明する図である。図2は、溶接部6に欠陥が無いときの状態を示し、図3は、溶接部6に内部欠陥(ブローホール等)が生じているときの状態を示す。
【0037】
図2を参照して、この溶接検査装置1では、溶接部6を含む領域に上方(Z方向)から送信用レーザ光14(パルスレーザ光)が照射され、レーザ光の照射位置に超音波を励起させる。発生した超音波は、溶接部6を通過し、下側の母材4の下面5で反射した後、母材4の上面に到達する。この到達した超音波により母材4の表面に生じた微細振動を、受信用レーザ光20を用いて計測することにより(レーザ干渉計を用いた干渉計測)、受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)における超音波の強度を測定する。
【0038】
送信用レーザ光14の照射位置は、送信用レーザ光照射装置12(図1)の走査機構を用いてX方向に走査される。×印で示される点32は、パルスレーザ光である送信用レーザ光14の照射位置(超音波送信点)を示す。ある照射位置における測定が終了した後、次の位置へ送信用レーザ光14の照射位置が走査され、その照射位置における測定が行なわれる。
【0039】
受信用レーザ光20の照射位置は、母材4のX方向において固定される。○印で示される点36は、受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)を示す。受信点36と送信点32とのX方向の距離が大きいほど、送信点32から受信点36までの超音波の伝播時間が長くなり、拡散減衰によって受信点36での超音波の強度(表面の微細振動)も減少する。
【0040】
図3を参照して、溶接部6にブローホール等の欠陥40が存在する場合、拡散減衰に加えて欠陥40での散乱減衰も生じるため、受信点36に到達する超音波44の強度は、欠陥40が存在しない場合に比べて小さくなる(減衰が大きくなる)。したがって、受信点36に到達する超音波の減衰度を捉えることにより、溶接部6の欠陥40の有無を判定することができる。
【0041】
図4は、送信用レーザ光14の照射位置と、受信用レーザ光20の照射位置における超音波の到達時間との関係を示した図である。図4において、横軸は、送信用レーザ光14のX方向の照射位置(超音波の送信位置)を示し、値が大きいほど受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)から離れていることを示す。縦軸は、送信用レーザ光14が照射されてから(送信位置において超音波が発生してから)受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)に超音波が到達するまでの時間を示す。
【0042】
図4を参照して、線L1は、溶接部6及び母材4の表面を伝わった超音波(表面波)の到達時間を示す。線L2は、超音波の送信位置から溶接部6を通過して母材4の下面5で反射した超音波(反射波)の到達時間を示す。
【0043】
上記反射波の到達時間は、欠陥40の有無の影響を受けないため、超音波の送信位置と到達時間との関係から、受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)で検出された超音波が、表面波であるのか、それとも母材4の下面5で反射した超音波(反射波)であるのかを区別することができる。
【0044】
図5は、送信用レーザ光14の照射位置と、受信用レーザ光20の照射位置における超音波の強度との関係を示した図である。図5において、横軸は、図4と同様に、送信用レーザ光14のX方向の照射位置(超音波の送信位置)を示す。縦軸は、受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)における、図4の反射波(線L2)の強度を示す。
【0045】
図5を参照して、線L3は、溶接部6に内部欠陥が無い場合の、超音波受信点における図4の反射波(線L2)の強度を示す。超音波の送信位置の値が大きいほど(超音波受信点から離れるほど)、拡散減衰によって信号強度が減衰する。
【0046】
線L4は、溶接部6に内部欠陥(ブローホール等)が存在する場合の、超音波受信点における図4の反射波(線L2)の強度を示す。超音波の送信位置がX1よりも大きい位置では、超音波受信点に到達する超音波(反射波)は、溶接部6に生じた内部欠陥を通過する。その際、拡散減衰に加えて内部欠陥での散乱減衰も生じるため、超音波受信点における超音波の強度は、内部欠陥が無い場合(線L3)に比べて小さくなる。すなわち、超音波受信点において、内部欠陥が生じているときの超音波の減衰度は、内部欠陥が無い場合に比べて大きくなる。
【0047】
なお、B-scopeは、図4のグラフにおいて、線L1,L2について、超音波の送信位置毎に、超音波受信点における超音波の強度に応じて濃度を変化させて表示したものである。B-scopeでは、超音波の送信位置毎に、超音波受信点における超音波の到達時間と強度とが1つの画面上に表示される。
【0048】
図6は、溶接部6における内部欠陥の有無の判定方法を説明する図である。図6を参照して、受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)における超音波の強度(母材4の下面5で反射した超音波の強度)について、超音波の送信位置に応じた減衰度の大きさによって、溶接部6における内部欠陥の有無が判定される。すなわち、超音波の送信位置に応じた上記減衰度が所定のしきい値よりも小さければ、欠陥は無いものと判定され、減衰度がしきい値を超えると、検査対象の溶接部6に内部欠陥が生じているものと判定される。なお、しきい値は、事前の評価試験等により、内部欠陥の有無を区別可能な値に適宜設定される。
【0049】
図7は、本実施の形態1に従う溶接検査装置1における一連の処理の手順を説明するフローチャートである。図7を参照して、まず、制御装置22は、送信用レーザ光14を検査対象の所定位置に照射するように、送信用レーザ光照射装置12の走査機構を制御する(ステップS10)。1回の走査における送信用レーザ光14の各照射位置は、X方向において予め定められており(例えば、溶接部6を含む領域において20点)、例えば、まず受信用レーザ光20の照射位置に最も近い所定位置に送信用レーザ光14を照射するように、走査機構が制御される。
【0050】
また、制御装置22は、検査対象の所定の受信点に受信用レーザ光20が照射されるように、受信用レーザ源16を制御する(ステップS20)。なお、受信用レーザ光20の照射位置(超音波受信点)は、X方向の所定位置に定められている。受信用レーザ光20の照射は、送信用レーザ光14の照射前から照射されていてもよいし、送信用レーザ光14の照射開始と同時に開始されてもよい。
【0051】
そして、受信用レーザ源16は、母材4へ照射された受信用レーザ光20の反射光を受信用レーザ光プローブ18から受け、その反射光と、母材4へ照射された受信用レーザ光20(参照光)との干渉をレーザ干渉計により計測する(ステップS20)。
【0052】
次いで、制御装置22は、送信用レーザ光14の走査が完了したか否かを判定する(ステップS25)。具体的には、X方向において予め定められた照射位置の全てにおいて計測が完了したか否かが判定される。走査が完了していない場合には(ステップS25においてNO)、制御装置22は、送信用レーザ光14の照射位置を次の位置に更新する(ステップS30)。そして、ステップS10へ処理が戻される。
【0053】
ステップS25において1ライン分の走査が完了したと判定されると(ステップS25においてYES)、制御装置22は、B-scopeの作成及び波形処理を実行する(ステップS35)。具体的には、制御装置22は、ステップS10~S30の処理で得られた1走査分の計測信号について、送信用レーザ光14のX方向の各照射位置(送信位置)と、受信用レーザ光20の照射位置(受信点)における超音波(送信位置から溶接部6を通過して母材4の下面5で反射した超音波)の到達時間及び強度との関係を示すB-scopeを作成する。
【0054】
なお、B-scopeの作成に際し、ステップS20において得られる計測信号に対して、ノイズを除去するために、適当なバンドバスフィルタ等を用いた周波数処理を行なってもよい。
【0055】
次いで、作成されたB-scopeから、下板(母材4)の下面5で反射し超音波受信点に到達した超音波の信号が抽出される(ステップS40)。図4で説明したように、B-scopeにおいて、母材4の下面5で反射した超音波(反射波)を表面波等と区別して容易に抽出可能である。この抽出作業は、人手で行なってもよいし、制御装置22において自動で抽出してもよい。
【0056】
ステップS40において、下板(母材4)の下面5で反射し超音波受信点に到達した超音波の信号が抽出されると、制御装置22は、その抽出された信号について、送信用レーザ光14の照射位置(送信位置)に応じた超音波の減衰度を算出する(ステップS45)。具体的には、制御装置22は、送信位置に応じた超音波の強度の低下度合いを算出する。なお、制御装置22は、各送信位置において得られる計測信号に対して、信号強度のRMS(Root Mean Square)値を算出し、送信位置に応じた上記RMS値の低下度合いを算出しても良い。
【0057】
そして、制御装置22は、ステップS45において算出された減衰度がしきい値よりも大きいか否かを判定する(ステップS50)。このしきい値は、上述のように、事前の評価試験により、内部欠陥の有無を区別可能な値に適宜設定される。そして、減衰度がしきい値よりも大きいと判定されると(ステップS50においてYES)、制御装置22は、溶接部6に内部欠陥が検出されたことを示す信号を表示装置24へ出力する(ステップS55)。
【0058】
以上のように、この実施の形態1においては、溶接部6に生じた内部欠陥で反射する超音波(散乱波)ではなく、溶接部6を通過し、かつ、検査対象の母材4の下面5で反射した超音波を用いて、内部欠陥の検出が行なわれる。具体的には、送信用レーザ光14の照射位置がX方向に走査され、照射位置の走査に応じた超音波受信点での超音波の減衰度がしきい値を超える場合に、溶接部に内部欠陥が生じているものと判定される。この実施の形態1によれば、このような構成とすることにより、薄板の溶接に用いられる重ね隅肉溶接の溶接部6の内部欠陥をインプロセスで検出することができる。
【0059】
[実施の形態2]
実施の形態2では、溶接装置及び上記の溶接検査装置を自動溶接ロボットに搭載した溶接システムについて示される。
【0060】
図8は、実施の形態2に従う溶接システムの全体構成図である。図8を参照して、溶接システム100は、ロボットアーム110と、溶接トーチ112と、ワイヤ118と、溶接電源120と、コントローラ122とを備える。
【0061】
ロボットアーム110は、多関節のアームであり、例えば6軸多関節アームである。ロボットアーム110は、設定された溶接速度で溶接トーチ112により母材102,104の重ね隅肉溶接を行なうように、コントローラ122により制御される。
【0062】
溶接トーチ112は、母材102,104の接合部に向けて、溶接ワイヤ及び図示しないシールドガス(アルゴンガスや炭酸ガス等)を供給する。溶接トーチ112は、溶接電源120からワイヤ118を通じて溶接電流の供給を受け、溶接ワイヤの先端と母材102,104の接合部との間にアーク114を発生させる。
【0063】
なお、溶接ワイヤに代えて、溶接金属を形成するためのフィラー(溶加材)を添加しつつ非消耗材の電極(タングステン等)を用いてもよい。すなわち、溶接トーチ112によるアーク溶接は、溶接ワイヤを用いる溶極式(マグ溶接やミグ溶接等)であってもよいし、フィラーの添加を伴なう非溶極式(ティグ溶接等)であってもよい。
【0064】
溶接電源120は、アーク溶接を行なうための溶接電圧及び溶接電流を生成し、生成された溶接電圧及び溶接電流を溶接トーチ112へ出力する。
【0065】
コントローラ122は、設定された溶接速度で溶接トーチ112により母材102,104の重ね隅肉溶接を行なうように、ロボットアーム110の動作及び溶接電源120の出力を制御する。その際、コントローラ122は、溶接検査装置を構成する溶接検査ヘッド130(後述)の位置が溶接トーチ112の溶接進行方向後方となるように、ロボットアーム110を制御する。
【0066】
また、コントローラ122は、溶接検査装置を制御する制御装置164と連係し、制御装置164と各種信号をやり取りする。例えば、コントローラ122は、溶接トーチ112による溶接の開始、停止、継続を制御装置164へ通知する。また、コントローラ122は、溶接部の内部欠陥が検出されたことを示す欠陥検出信号を制御装置164から受けると、溶接トーチ112による溶接を停止したり、溶接条件を変更したりする。
【0067】
なお、コントローラ122も、CPUと、メモリ(RAM及びROM)と、各種信号を入出力するための入出力ポートとを含んで構成される(いずれも図示せず)。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、コントローラ122により実行される各種処理が記述されている。
【0068】
溶接システム100は、溶接検査ヘッド130と、光ファイバ142,148と、リンク150と、送信用レーザ源160と、受信用レーザ源162と、制御装置164とをさらに備える。
【0069】
溶接検査ヘッド130は、送信用レーザ光照射装置134と、受信用レーザ光プローブ144とを備える。送信用レーザ光照射装置134及び受信用レーザ光プローブ144は、取付部材132に取り付けられ、取付部材132は、リンク150によってロボットアーム110に連結されている。
【0070】
送信用レーザ光照射装置134は、マイクロチップレーザ136と、走査機構138と、フォトディテクタ140とを含んで構成される。マイクロチップレーザ136は、例えばYAG結晶を用いた小型の固体レーザであり、送信用レーザ源160から光ファイバ142を通じて励起光を受け、高出力のパルスレーザ光を発生する。
【0071】
走査機構138は、マイクロチップレーザ136が発生したパルスレーザ光の照射位置をX方向(溶接方向(Y方向)に直交する溶接幅方向)に走査するための機構を含む。走査機構138は、例えば、角度を調整可能なガルバノミラーと、ガルバノミラーを駆動する駆動機構とを含んで構成される。送信用レーザ光152(パルスレーザ光)が照射される超音波送信点群154が溶接ビード106のX方向全域を含むように、走査機構138の駆動機構が制御装置164によって制御される。
【0072】
フォトディテクタ140は、送信用レーザ光152(パルスレーザ光)の発振を検出し、パルスレーザ光が発振される毎にトリガ信号Trを制御装置164へ出力する。
【0073】
受信用レーザ光プローブ144は、受信用レーザ源162から光ファイバ148を通じて受ける受信用レーザ光156(参照光)を、母材104上においてX方向の所定位置である超音波受信点158に照射する。また、受信用レーザ光プローブ144は、母材104に照射した受信用レーザ光156の、母材104からの反射光を受光し、光ファイバ148を通じて受信用レーザ源162へ出力する。
【0074】
受信用レーザ源162は、レーザ干渉計を含んで構成され、母材104へ照射される受信用レーザ光156(参照光)を、光ファイバ148を通じて受信用レーザ光プローブ144へ出力する。そして、受信用レーザ源162は、受信用レーザ光プローブ144により受光された母材104からの受信用レーザ光156の反射光を受信用レーザ光プローブ144から受け、受信用レーザ光156の参照光と反射光とを含む干渉光の検出信号ISを制御装置164へ出力する。
【0075】
なお、送信用レーザ光152及び受信用レーザ光156の照射位置は、溶接中のインプロセスでの欠陥検出を考慮すると、溶接位置(溶融池116)に近いことが望ましく、例えば、溶融池116の溶接進行方向後方20~30mmとすることができる。
【0076】
制御装置164は、送信用レーザ光152(パルスレーザ光)が発振されるタイミングを示す、フォトディテクタ140からのトリガ信号Trを基準に、受信用レーザ光156の参照光と反射光との干渉光の検出信号ISを所定時間計測する(例えば10μs)。そして、制御装置164は、計測された干渉光の検出信号ISから、トリガ信号Trに対応する超音波受信点158での超音波の強度を計測する。
【0077】
制御装置164は、上記のような超音波受信点158での超音波の強度測定を、送信用レーザ光152の照射位置(超音波送信点)を走査しながら実施する。そして、制御装置164は、1走査分の測定が終了すると、実施の形態1と同様の手法により、下板(母材104)の下面で反射し受信点158に到達した超音波(反射波)の減衰度に基づいて、溶接部(溶接ビード106)に内部欠陥が生じているか否かを判定する。
【0078】
そして、この実施の形態2に従う溶接システム100では、制御装置164により溶接部に内部欠陥が生じているものと判定されると、溶接部の内部欠陥が検出されたことを示す欠陥検出信号が制御装置164からロボットアーム側のコントローラ122へ通知され、溶接トーチ112による溶接の中止、或いは溶接条件の変更(溶接速度や溶接電流の変更等)が行なわれる。
【0079】
図9は、図8に示した溶接システム100におけるインプロセスでの溶接欠陥検出のイメージを示す図である。図9を参照して、上側の図は、溶接部を含む検査対象の平面図である。溶融池116の後方に溶接ビード106が形成されており、点線で示される欠陥40は、溶接部(溶接ビード106)の内部に発生したブローホール等である。
【0080】
溶接部において欠陥が生じていないY方向(溶接進行方向)位置では、送信用レーザ光152(パルスレーザ光)の照射位置の走査に応じた超音波受信点158での超音波の減衰度は、しきい値よりも小さい。他方、溶接部において欠陥が生じているY方向位置では、送信用レーザ光152の照射位置の走査に応じた超音波受信点158での超音波の減衰度は、しきい値よりも大きい。このように、溶接進行方向(Y方向)のどの位置において溶接部(溶接ビード106)に欠陥40が生じているかを、溶接中にインプロセスで判定することができる。
【0081】
図10は、実施の形態2に従う溶接システムにおける一連の処理の手順を説明するフローチャートである。図10とともに図8を参照して、制御装置164は、送信用レーザ光152を溶接対象のX方向所定位置に照射するように、走査機構138を制御する(ステップS110)。1回の走査における送信用レーザ光152の各照射位置は、X方向において予め定められており、この例では、溶接ビード106を含む領域において20点の照射位置が定められている。
【0082】
次いで、フォトディテクタ140により送信用レーザ光152(パルスレーザ光)の発振(照射)が検出され、このパルス照射に対応する超音波の検出の開始を示すトリガ信号Trがフォトディテクタ140から制御装置164へ送信される(ステップS115)。
【0083】
制御装置164は、トリガ信号Trを基準に、レーザ干渉計により取得される受信用レーザ光156の干渉光に基づく超音波受信点158での超音波の強度を所定時間(例えば10μs)計測する(ステップS120)。
【0084】
次いで、制御装置164は、送信用レーザ光152の1走査分の計測が完了したか否かを判定する(ステップS125)。具体的には、X方向において予め定められた照射位置(この例では20点)の全てにおいて計測が完了したか否かが判定される。1走査分の計測が完了していない場合には(ステップS125においてNO)、制御装置164は、送信用レーザ光152の照射位置を次の位置に更新する(ステップS130)。そして、ステップS110へ処理が戻される。
【0085】
ステップS125において送信用レーザ光152の1走査分の計測が完了したと判定されると(ステップS125においてYES)、制御装置164は、B-scopeの作成及び波形処理を実行する(ステップS135)。さらに、作成されたB-scopeから、下板(母材104)の下面で反射し受信点158に到達した超音波(反射波)の信号が抽出される(ステップS140)。さらに、制御装置164は、その抽出された信号について、送信用レーザ光152の照射位置(送信位置)に応じた超音波の減衰度を算出する(ステップS145)。なお、上記のステップS135~S145の処理は、実施の形態1において説明した図7のステップS35~S45の処理と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0086】
次いで、制御装置164は、ステップS145において算出された減衰度がしきい値よりも大きいか否かを判定する(ステップS150)。このしきい値は、事前の評価試験により、内部欠陥の有無を区別可能な値に適宜設定される。そして、減衰度がしきい値よりも大きいと判定されると(ステップS150においてYES)、制御装置164は、溶接部(溶接ビード106)において欠陥が検出されたことを示す欠陥検出信号をロボットアーム側のコントローラ122へ出力する(ステップS155)。なお、減衰度がしきい値以下のときは(ステップS150においてNO)、制御装置164は、ステップS155の処理を実行することなくステップS160へ処理を移行する。
【0087】
次いで、制御装置164は、溶接の継続要否を示すコントローラ122からの信号に基づいて、溶接が継続されるか否かを判定する(ステップS160)。そして、溶接が継続される場合には(ステップS160においてYES)、制御装置164は、次の計測ラインでの計測に移行し(ステップS165)、ステップS110へ処理を戻す。
【0088】
他方、ステップS160において、コントローラ122からの信号に基づいて溶接の停止が判定された場合には(ステップS160においてNO)、制御装置164は、エンドへ処理を移行し、一連の処理を終了する。
【0089】
図11は、コントローラ122が制御装置164から欠陥検出信号を受信したときのコントローラ122の処理例を示すフローチャートである。図11を参照して、コントローラ122は、制御装置164から欠陥検出信号を受信したか否かを判定する(ステップS210)。コントローラ122は、欠陥検出信号を受信していなければ(ステップS210においてNO)、以下の一連の処理を実行することなくリターンへ処理を移行する。
【0090】
ステップS210において制御装置164から欠陥検出信号を受信したと判定されると(ステップS210においてYES)、コントローラ122は、溶接トーチ112による溶接を停止する(ステップS220)。さらに、コントローラ122は、ロボットアーム110の動作を停止する(ステップS230)。
【0091】
そして、コントローラ122は、溶接が停止されたことを制御装置164(溶接検査装置)へ通知する(ステップS240)。すなわち、この例では、溶接中にインプロセスで溶接部(溶接ビード106)の検査が行なわれ、溶接部の欠陥が検出されると、制御装置164からロボットアームのコントローラ122へ出力される欠陥検出信号に従って溶接が停止される。そして、溶接が停止されたことがコントローラ122から溶接検査装置側の制御装置164へ通知される。
【0092】
以上のように、この実施の形態2によれば、溶接トーチ112とともにロボットアーム110に搭載される溶接検査装置(溶接検査ヘッド130)を用いて、溶接トーチ112による溶接部(溶接ビード106)の内部欠陥を溶接中にインプロセスで検出することができる。そして、この実施の形態2によれば、溶接検査装置と溶接ロボット(ロボットアーム110及び溶接トーチ112)とが連係し、溶接検査装置により溶接部に内部欠陥が検出された場合に、溶接ロボットによる溶接を停止させることができる。
【0093】
[変形例]
上記の実施の形態2では、溶接の欠陥が検出されると、溶接が停止されるものとしたが、溶接条件を変更して溶接を継続してもよい。
【0094】
図12は、この変形例において、コントローラ122が制御装置164から欠陥検出信号を受信したときのコントローラ122の処理例を示すフローチャートである。このフローチャートは、上記の図11に対応するものである。
【0095】
図12を参照して、コントローラ122は、制御装置164から欠陥検出信号を受信したか否かを判定する(ステップS310)。コントローラ122は、欠陥検出信号を受信していなければ(ステップS310においてNO)、以下の一連の処理を実行することなくリターンへ処理を移行する。
【0096】
ステップS310において制御装置164から欠陥検出信号を受信したと判定されると(ステップS310においてYES)、コントローラ122は、溶接トーチ112による溶接の条件を変更する(ステップS320)。溶接条件の変更は予め定められており、例えば溶接電流が変更される。
【0097】
また、コントローラ122は、溶接速度を低下させる(ステップS330)。溶接速度の低下度合いも予め定められており、低下後の溶接速度が規定されていてもよいし、溶接速度の低下率が規定されていてもよい。なお、ステップS320及びS330のいずれかの処理のみを実行するものとしてもよい。
【0098】
そして、ステップS320及び/又はステップS330の処理が実行されると、コントローラ122は、溶接は継続されることを制御装置164(溶接検査装置)へ通知する(ステップS340)。すなわち、この例でも、溶接中にインプロセスで溶接部(溶接ビード106)の検査が行なわれ、溶接部の欠陥が検出されると、制御装置164からロボットアームのコントローラ122へ出力される欠陥検出信号に従って溶接条件や溶接速度が変更され、溶接は継続される。そして、溶接は継続されることがコントローラ122から溶接検査装置側の制御装置164へ通知される。
【0099】
以上のように、この変形例によれば、溶接検査装置により溶接部に内部欠陥が検出された場合に、以降の溶接において欠陥が抑制されるように、溶接条件を変更したり、溶接速度を低下させたりすることできる。
【0100】
[実施の形態3]
レーザ超音波法を用いた欠陥検出においては、受信用レーザ光156の照射面からの反射光を用いて非接触の振動計測が行なわれる。検査対象からの反射光を十分に捕捉して計測感度を高めるため、受信用レーザ光プローブ144は、受信用レーザ光156の照射面に正対させ、かつ、焦点位置に配置される必要がある。
【0101】
図13は、焦点位置からの高さ方向のずれ量と、受信用レーザ光プローブ144の受信感度との関係を示す図である。この図13では、受信用レーザ光プローブ144をステンレス鏡面に対して正対させ、かつ、ステンレス鏡面に対する受信用レーザ光プローブ144の高さを焦点位置から変化させたときの受信感度が示されている。
【0102】
図示のように、焦点位置からの高さ方向のずれが生じると、受信用レーザ光プローブ144の受信感度が低下する。すなわち、受信用レーザ光プローブ144と受信用レーザ光156の照射面(母材104の表面)との距離が変化すると、受信用レーザ光プローブ144による受信用レーザ光156の受信感度が低下する。
【0103】
図14は、受信用レーザ光156の照射面に対する角度ずれと、受信用レーザ光プローブ144の受信感度との関係を示す図である。この図14では、受信用レーザ光プローブ144をステンレス鏡面に対して正対させ、かつ、ステンレス鏡面に対する受信用レーザ光プローブ144の角度を変化させたときの受信感度が示されている。
【0104】
図示のように、受信用レーザ光156の角度ずれが生じると、受信用レーザ光プローブ144の受信感度が低下する。すなわち、受信用レーザ光156の照射方向と、受信用レーザ光156の照射面(母材104の表面)の法線方向とにずれが生じると、受信用レーザ光プローブ144による受信用レーザ光156の受信感度が低下する。
【0105】
溶接においては、溶接に伴なう熱ひずみにより、溶接対象が変形する場合がある。特に、薄板の溶接においては、図15に示されるように、溶接による母材の変形が想定される。図示のように、下側の母材104が変形した場合、受信用レーザ光プローブ144の配置が初期状態のままでは、受信用レーザ光プローブ144による受信用レーザ光156の受信感度が低下する可能性がある。
【0106】
そこで、この実施の形態3では、溶接中に受信用レーザ光156の照射面の変形を計測し、その情報を用いて、受信用レーザ光プローブ144の位置及び角度を調整する。これにより、受信用レーザ光プローブ144の受信感度の低下を抑制する。
【0107】
また、受信用レーザ光プローブ144の受信感度は、受信用レーザ光156の照射面の状態によっても変化する。
【0108】
図16は、検査対象の表面状態と、受信用レーザ光プローブ144の受信感度との関係を例示した図である。図16を参照して、受信用レーザ光156の照射面に溶接後のスマット(酸化皮膜)が付着している場合、受信用レーザ光プローブ144の受信感度が低下する。他方、受信用レーザ光156の照射面を研磨することで、受信用レーザ光プローブ144の受信感度は向上する。
【0109】
そこで、この実施の形態3では、受信用レーザ光156が照射される超音波受信点158を研磨するツールがさらに設けられる。ツールには、例えば、ブラシやレーザ光照射等を用いることができる。これにより、受信用レーザ光プローブ144の受信感度の低下をさらに抑制している。
【0110】
図17は、実施の形態3に従う溶接システムの全体構成図である。図17を参照して、この溶接システム100Aは、図8に示した溶接システム100において、レーザラインスキャナ170と、駆動機構146と、表面処理装置174とをさらに備える。
【0111】
レーザラインスキャナ170は、取付部材132に取り付けられ、溶接後の溶接部材の表面プロフィールを測定する。より具体的には、レーザラインスキャナ170は、少なくともXZ平面における溶接後の母材104の表面プロフィールを測定する。レーザラインスキャナ170の測定結果を示す信号Pfは、制御装置164へ出力される。
【0112】
駆動機構146は、制御装置164によって制御され、取付部材132に対する受信用レーザ光プローブ144の位置(Z方向)及び角度(XZ平面での回転角)を変更可能に構成される。
【0113】
制御装置164は、レーザラインスキャナ170からの信号Pfに基づいて、受信用レーザ光プローブ144が母材104に正対し、かつ、母材104に対する受信用レーザ光プローブ144の位置が焦点位置となるように、駆動機構146を制御する。
【0114】
表面処理装置174は、受信用レーザ光156が照射される超音波受信点158の溶接進行方向前方における母材104の表面を研磨するためのツールである。表面処理装置174には、例えばブラシを採用することができる。或いは、母材104の表面においてめっき層は残しつつ溶接後のスマットを除去するように出力が調整されたレーザ光照射装置によって表面処理装置174を構成してもよい。
【0115】
なお、上記では、駆動機構146は、受信用レーザ光プローブ144の位置及び角度を変更可能としたが、受信用レーザ光プローブ144の位置及び角度の一方のみを変更するものであってもよい。位置及び角度の一方のみの変更でも、受信用レーザ光プローブ144の受信感度の低下を抑制することは可能である。
【0116】
なお、上記において、駆動機構146は、受信用レーザ光プローブ144の位置及び角度の少なくとも一方を調整する「調整機構」に相当する。また、レーザラインスキャナ170は、ロボットアーム110に搭載され、受信用レーザ光156が照射される超音波受信点158における検査対象の変形を測定する「変形測定装置」に相当する。
【0117】
なお、上記においては、溶接システム100Aは、駆動機構146と、レーザラインスキャナ170とを備えるものとしたが、駆動機構146及びレーザラインスキャナ170の一方のみを備えるものであってもよい。
【0118】
以上のように、この実施の形態3によれば、駆動機構146及び/又はレーザラインスキャナ170が設けられることにより、溶接後の溶接対象の変形やスマットの形成による受信用レーザ光プローブ144の受信感度の低下を抑制することができる。その結果、溶接部の内部欠陥の検出精度が低下するのを抑制することができる。
【0119】
[実施の形態4]
溶接検査ヘッド130は、溶接トーチ112とともにロボットアーム110に搭載されるため、溶接中は溶接トーチ112とともに溶接検査ヘッド130も溶接進行方向に移動する。そのため、送信用レーザ光152の照射位置の走査方向は、溶接進行方向(Y方向)に直交する方向(X方向)から傾いている。
【0120】
図18は、溶接進行中の送信用レーザ光152の照射位置を示した平面図である。図18を参照して、送信用レーザ光152が照射された超音波送信点群154は、走査の始点と終点とで溶接進行方向(Y方向)に幅Δyを有する。このΔyは、溶接進行方向における溶接検査の空間分解能を示すものといえる。
【0121】
この空間分解能を高める(Δyを小さくする)には、(i)溶接検査ヘッド130の移動速度を低くする、(ii)1回の走査における送信用レーザ光152(パルスレーザ光)の照射点数を少なくする、(iii)送信用レーザ光152の照射周波数を高くする、ことにより実現可能である。
【0122】
しかしながら、溶接検査ヘッド130の移動速度は溶接速度であり、溶接速度は溶接条件によって定まるため、溶接検査ヘッド130の移動速度を低くすることは、溶接条件の変更であり、容易ではない。また、1回の走査における送信用レーザ光152の照射点数を少なくすることは、取得される情報量が減少し、検出精度の低下を招く可能性がある。そこで、送信用レーザ光152(パルスレーザ光)の照射周波数を高くすることが望ましい。
【0123】
図19は、送信用レーザ光152の照射周波数と、溶接進行方向における空間分解能との関係を示す図である。図19を参照して、1回の走査における送信用レーザ光152の照射点数を20点とし、溶接速度が1.0m/minである場合に、送信用レーザ光152の照射周波数を変化させたときの空間分解能(図18のΔy)が示されている。
【0124】
送信用レーザ光152の照射周波数(パルス周波数)が50Hzである場合、空間分解能はΔy=6.7mmであり、照射周波数が100Hzである場合は、空間分解能はその半分となる。このように、送信用レーザ光152の照射周波数を高めることにより、空間分解能を高める(Δyを小さくする)ことができる。
【0125】
送信用レーザ光152の照射周波数を高めるためにマイクロチップレーザ136の発振周波数を高めることは、容易ではない。そこで、本実施の形態4では、マイクロチップレーザが小型であることを活かして、複数のマイクロチップレーザを用いることにより送信用レーザ光152の照射周波数が高められる。
【0126】
図20は、実施の形態4における送信用レーザ光照射装置の構成例を示す図である。図20を参照して、図示の例では、送信用レーザ光152の発生装置として、送信用レーザ源160-1,160-2と、送信用レーザ光照射装置134-1,134-2とが設けられる。送信用レーザ源160-1,160-2の各々の構成は、図8で説明した送信用レーザ源160と同じであり、送信用レーザ光照射装置134-1,134-2の各々の構成は、図8で説明した送信用レーザ光照射装置134と同じである。
【0127】
送信用レーザ光照射装置134-1,134-2は、それぞれ送信用レーザ源160-1,160-2から光ファイバを通じて励起光を受ける。そして、送信用レーザ光照射装置134-1,134-2の各々は、高出力のパルスレーザ光を発生する。送信用レーザ光照射装置134-1から出力されるパルスレーザ光と、送信用レーザ光照射装置134-2から出力されるパルスレーザ光とは、照射位置が同じになるようにガルバノミラーが制御される一方で、発振タイミングが互いにずらされる。
【0128】
図21は、送信用レーザ光照射装置134-1,134-2の各々から出力されるパルスレーザ光の発振タイミングを示す図である。図21を参照して、送信用レーザ光照射装置134-1,134-2の各々から出力されるパルスレーザ光の発振タイミングが互いに半周期分ずれるように、送信用レーザ光照射装置134-1,134-2の各々においてパルスレーザ光の発振タイミングが調整される。これにより、送信用レーザ光152の照射位置に発生させる超音波の回数を実質2倍にすることができる。例えば、送信用レーザ光照射装置134-1,134-2の各々から出力されるパルスレーザ光の周波数が100Hzの場合、ターゲットに照射される送信用レーザ光152の周波数を200Hzにすることができる。
【0129】
なお、実施の形態4における溶接システムのその他の構成は、図8に示した溶接システム100又は図17に示した溶接システム100Aと同じである。
【0130】
以上のように、この実施の形態4によれば、溶接進行方向における溶接検査の空間分解能を高めることにより、溶接部の内部欠陥の検出精度を高めることができる。
【0131】
[実施の形態4の変形例]
実施の形態4では、複数台の送信用レーザ光照射装置134-1,134-2によって、送信用レーザ光152の照射位置に発生させる超音波の回数を倍化させるものとしたが、走査機構(ガルバノミラー)の制御、及びフォトディテクタによるトリガの管理が複数台分必要であり、装置全体の構成が複雑になり得る。そこで、複数台のマイクロチップレーザについて光学系(走査機構)を共用する構成とすることにより、走査機構の制御、及びフォトディテクタによるトリガの管理を1つに纏めることができる。
【0132】
図22は、実施の形態4の変形例における送信用レーザ光照射装置の構成例を示す図である。図22を参照して、この変形例では、図20に示した送信用レーザ光照射装置134-1,134-2に代えて、送信用レーザ光照射装置180が設けられる。送信用レーザ光照射装置180は、マイクロチップレーザ136-1,136-2と、集光機構182と、走査機構138と、フォトディテクタ140とを含む。マイクロチップレーザ136-1,136-2の各々の構成は、図8で説明したマイクロチップレーザ136と同じである。
【0133】
マイクロチップレーザ136-1,136-2は、それぞれ送信用レーザ源160-1,160-2から光ファイバを通じて励起光を受ける。そして、マイクロチップレーザ136-1,136-2の各々は、高出力のパルスレーザ光を発生して集光機構182へ出力する。マイクロチップレーザ136-1から出力されるパルスレーザ光と、マイクロチップレーザ136-2から出力されるパルスレーザ光とは、発振タイミングが互いにずらされる。より詳しくは、図21に示したように、マイクロチップレーザ136-1,136-2の各々から出力されるパルスレーザ光の発振タイミングが互いに半周期分ずれるように、マイクロチップレーザ136-1,136-2の各々においてパルスレーザ光の発振タイミングが調整される。
【0134】
集光機構182は、マイクロチップレーザ136-1から出力されるパルスレーザ光と、マイクロチップレーザ136-2から出力されるパルスレーザ光とを集光して、走査機構138へ出力する。集光機構182は、マイクロチップレーザ136-1,136-2の各々から出力されるパルスレーザ光を集光して走査機構138へ出力するように角度調整されたガルバノミラーによって構成される。
【0135】
フォトディテクタ140は、走査機構138から出力される送信用レーザ光152(パルスレーザ光)の発振を検出し、パルスレーザ光が発振される毎にトリガ信号Trを制御装置164へ出力する。走査機構138及びフォトディテクタ140は、図8で説明したので、説明を繰り返さない。
【0136】
この変形例では、集光機構182を設けることにより、複数台のマイクロチップレーザ136-1,136-2について走査機構138及びフォトディテクタ140を共用する構成としたので、実施の形態4に対して装置全体の構成を簡易にすることができる。
【0137】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0138】
1 溶接検査装置、2,4,102,104 母材、6 溶接部、10,160 送信用レーザ源、12,134,134-1,134-2,180 送信用レーザ光照射装置、16,162 受信用レーザ源、18,144 受信用レーザ光プローブ、22,164 制御装置、24 表示装置、100,100A 溶接システム、106 溶接ビード、110 ロボットアーム、112 溶接トーチ、118 ワイヤ、120 溶接電源、122 コントローラ、130 溶接検査ヘッド、132 取付部材、136,136-1,136-2 マイクロチップレーザ、138 走査機構、140 フォトディテクタ、142,148 光ファイバ、146 駆動機構、150 リンク、170 レーザラインスキャナ、174 表面処理装置、182 集光機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図22