(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020510
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】維持機構および液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125907
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】市橋 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 明仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏大
(72)【発明者】
【氏名】都丸 寛
(72)【発明者】
【氏名】横山 健治
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA17
2C056EC22
2C056EC23
2C056EC33
2C056EC35
2C056EC57
2C056FA10
2C056JA04
2C056JA09
2C056JA13
2C056JA24
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドのノズル形成面に当接する部分に残留するインクが、ノズル形成面に付着することを防止する維持機構を提供すること。
【解決手段】液体吐出ヘッドを維持する維持機構であって、一端(吸引用キャップ縁3a)が液体吐出ヘッド2のノズル形成面1aに当接する第一の密閉部材(吸引用キャップ3)と、第一の密閉部材の外側に配置され、一端(保護用キャップ縁4a)がノズル形成面1aに当接する第二の密閉部材(保護用キャップ4)と、第一の密閉部材の他端を配置し、周囲を第二の密閉部材が囲む密閉形成面5aを有し、第一の密閉部材の一端に対する第二の密閉部材の一端の位置を可変可能に第二の密閉部材の他端を支持し、第一の密閉部材と第二の密閉部材との少なくとも一方をノズル形成面1aに当接させてノズル形成面1aを密閉する支持部材5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドを維持する維持機構であって、
一端が前記液体吐出ヘッドのノズル形成面に当接する第一の密閉部材と、
前記第一の密閉部材の外側に配置され、一端が前記ノズル形成面に当接する第二の密閉部材と、
前記第一の密閉部材の他端を配置し、周囲を前記第二の密閉部材が囲む密閉形成面を有し、前記第一の密閉部材の一端に対する前記第二の密閉部材の一端の位置を可変可能に前記第二の密閉部材の他端を支持し、前記第一の密閉部材と前記第二の密閉部材との少なくとも一方を前記ノズル形成面に当接させて前記ノズル形成面を密閉する支持部材と、
を備える維持機構。
【請求項2】
前記支持部材は、前記第一の密閉部材および前記第二の密閉部材の一端を前記ノズル形成面に当接させる第一のモードと、前記第一の密閉部材の一端を前記ノズル形成面から離し、前記第二の密閉部材の一端を前記ノズル形成面に当接させる第二のモードとの少なくとも二つの位置に変位することを特徴とする請求項1に記載の維持機構。
【請求項3】
前記第一の密閉部材と前記第二の密閉部材との間に、一端が前記ノズル形成面に当接する、一以上の第三の密閉部材を、さらに備え、
前記支持部材は、前記一以上の第三の密閉部材の他端を前記密閉形成面に配置し、前記第一のモードでは、前記一以上の第三の密閉部材の一端を前記ノズル形成面に当接させ、前記第二のモードでは、前記一以上の第三の密閉部材の一端を前記ノズル形成面から離すことを特徴とする請求項2に記載の維持機構。
【請求項4】
前記支持部材は、前記第一のモードでは二以上の密閉空間を形成し、前記第二のモードでは一つの密閉空間を形成することを特徴とする請求項2または3に記載の維持機構。
【請求項5】
前記支持部材は、前記第二の密閉部材の一端の位置を、前記第一の密閉部材および前記第二の密閉部材の一端が前記ノズル形成面に当接する第一の位置と、前記第一の密閉部材の一端より前記ノズル形成面に近い第二の位置とに可変させて、前記第二の密閉部材を支持することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の維持機構。
【請求項6】
前記支持部材は、弾性部材を介して前記第二の密閉部材を支持することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の維持機構。
【請求項7】
前記支持部材の位置を変位させる制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の維持機構。
【請求項8】
1から7のいずれか一項に記載の維持機構を備える液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、維持機構および液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッドの乾燥防止保護や付着残留物除去を行うことで吐出機能を良好に維持させる維持機構が設けられている。
特許文献1には、第一および第二のキャップを設けることで、メンテナンス性能を向上させる技術が開示されている。
しかし、液体吐出ヘッドのノズル形成面に当接するキャップ縁に残留インクが付着することを防止できないという問題があった。このため、付着した残留インクによって、ノズル形成面が汚れていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、液体吐出ヘッドのノズル形成面に当接する部分に残留するインクが、ノズル形成面に付着することを防止する維持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、
液体吐出ヘッドを維持する維持機構であって、
一端が前記液体吐出ヘッドのノズル形成面に当接する第一の密閉部材と、
前記第一の密閉部材の外側に配置され、一端が前記ノズル形成面に当接する第二の密閉部材と、
前記第一の密閉部材の他端を配置し、周囲を前記第二の密閉部材が囲む密閉形成面を有し、前記第一の密閉部材の一端に対する前記第二の密閉部材の一端の位置を可変可能に前記第二の密閉部材の他端を支持し、前記第一の密閉部材と前記第二の密閉部材との少なくとも一方を前記ノズル形成面に当接させて前記ノズル形成面を密閉する支持部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、液体吐出ヘッドのノズル形成面に当接する部分に残留するインクが、ノズル形成面に付着することを防止する維持機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係る維持機構の一例を説明する図である。
【
図2】維持機構のインク吸引動作時の状態を表した図である。
【
図3】吸引用キャップまたは保護用キャップがノズル形成面に当接する領域を説明する図であり、(A)は一段階目上昇で当接する領域を示し、(B)は二段階目上昇で当接する領域を示す。
【
図4】維持機構のインク吸引動作後の状態を表した図である。
【
図5】維持機構の液体吐出ヘッドの保護の状態を表した図である。
【
図6】維持機構の動作例を説明するフローチャートである。
【
図7】比較例の維持機構の動作例を説明するフローチャートである。
【
図8】インク吸引動作時に複数の吸引用キャップを関与させる維持機構の一例を説明する図である。
【
図9】本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の一例の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0008】
本発明に係る維持機構は、液体吐出ヘッドの乾燥防止保護や付着残留物除去を行うことで吐出機能を良好に維持させるものであり、液体吐出ヘッドに対する二重構造のキャップにおいて、液体吐出ヘッドの乾燥防止のための保護用キャップと、ノズル形成面およびノズル内の残留インク除去のための吸引用キャップとに役割を分け、制御するものとする。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る維持機構の一例を説明する図であり、維持機構におけるインク吸引動作前の状態を表している。
図2は、維持機構のインク吸引動作時の状態を表した図である。
図3は、吸引用キャップまたは保護用キャップがノズル形成面に当接する領域を説明する図であり、(A)は一段階目上昇で当接する領域を示し、(B)は二段階目上昇で当接する領域を示す。
図4は、維持機構のインク吸引動作後の状態を表した図である。
図5は、維持機構の液体吐出ヘッドの保護の状態を表した図である。
図6は、維持機構の動作例を説明するフローチャートである。
【0010】
維持機構は、第一の密閉部材としての吸引用キャップ3と、第二の密閉部材としての保護用キャップ4と、支持部材としてのキャップホルダー5とを少なくとも有する。
液体を吐出する装置は、維持機構により液体吐出ヘッド2を維持、回復するときには、複数のノズル1を形成したノズル形成面(「ノズル面」とも称する)1aと対向する位置に、吸引用キャップ3と、保護用キャップ4と、これらを支持するキャップホルダー5とを配置するように構成される。
図1、2、4および5は、ノズル形成面1aが維持機構と対向する位置に配置された状態であり、ノズル列と交差する方向に沿った断面例を示す。
【0011】
吸引用キャップ3は、一端となる吸引用キャップ縁3aが液体吐出ヘッド2のノズル形成面1aに当接する。
保護用キャップ4は、吸引用キャップ3の外側に配置され、一端となる保護用キャップ縁4aがノズル形成面1aに当接する。
【0012】
キャップホルダー5は、吸引用キャップ3の他端を配置し、周囲を保護用キャップ4が囲む密閉形成面5aを有する。また、キャップホルダー5は、吸引用キャップ縁3aに対する保護用キャップ縁4aの位置を可変可能に、保護用キャップ4の他端を支持し、吸引用キャップ3と保護用キャップ4との少なくとも一方をノズル形成面1aに当接させて、ノズル形成面1aを密閉する。
【0013】
キャップホルダー5は、吸引の際にインクが通過する吸引口6と、バネ7とを有する。
キャップホルダー5は、バネ7によって保護用キャップ4をキャップホルダー5内に押し込む(縮める)ことが可能となっている。このようにして、キャップホルダー5は、吸引用キャップ縁3aに対する保護用キャップ縁4aの位置を、吸引用キャップ縁3aと同じ位置と、同じ位置よりノズル形成面1aに近い位置とに可変可能に支持する。
バネ7は、弾性部材の一例である。弾性部材は、加圧により収縮し、加圧しないときに加圧前の元の大きさに戻るものであれば他のものを用いてもよい。例えば、ゴムを用いてもよい。
【0014】
キャップホルダー5は、用途に応じて上昇・下降でき、上昇した際にはまず先に保護用キャップ縁4aがノズル形成面1aと密着する。保護用キャップ縁4aのみをノズル形成面1aと密着させるためにキャップホルダー5を上昇させることを、ここでは「一段階目上昇」と呼ぶことにする。
更に上昇すると、続いて吸引用キャップ縁3aがノズル形成面1aと密着する。吸引用キャップ縁3aと保護用キャップ縁4aとをノズル形成面1aと密着させるためにキャップホルダー5を上昇させることを、ここでは「二段階目上昇」と呼ぶことにする。
【0015】
一段階目上昇または二段階目上昇により、維持機構は、密閉形成面5aとともに、吸引用キャップ3が、液体吸引の際にノズル形成面1aを外部と遮断した状態に密閉する密閉空間を形成し、保護用キャップ4が、乾燥防止などの保護の際に液体吐出ヘッド面を外部と遮断した状態に密閉する密閉空間を形成する。
【0016】
このようにすると、吸引用キャップ縁3aに残留インクが堆積していても、保護用キャップ4で保護する際に吸引用キャップ縁3aはノズル形成面1aに当接しないため、次の印字動作はノズル形成面1aが綺麗な状態で行うことが可能になり、記録媒体に汚れが付着することを防止することができる。
【0017】
図2、6を参照して、維持機構のインク吸引動作時の状態を説明する
インク吸引動作は二段階目上昇にて行う。二段階目上昇は、先にノズル形成面1aと当接する保護用キャップ4がバネ7を縮めながらキャップホルダー5内に押し込められ、続いて吸引用キャップ縁3aがノズル形成面1aと密着するまでキャップホルダー5を上昇・停止させる(
図6のS1)。この状態でインク吸引(
図6のS2)が行われるが、このとき、インク8と接するキャップは吸引用キャップ3のみである。
【0018】
ここで、
図3を参照して保護用キャップ4と吸引用キャップ3とがノズル形成面1aに当接する状態例を説明する。
図3(A)に示すように、キャップホルダー5が一段階目上昇すると、維持機構は、保護用キャップ縁4aがノズル形成面1aの領域1a4に当接し、吸引用キャップ縁3aがノズル形成面1aから離れている保護状態(第二のモード)となる。このとき、保護用キャップ4は密閉形成面5aとともに、一つの密閉空間を形成する。
【0019】
図3(B)に示すように、キャップホルダー5が二段階目上昇すると、維持機構は、保護用キャップ縁4aの領域1a4への当接に加え、吸引用キャップ縁3aが領域1a3に当接する吸引状態(第一のモード)となる。このとき、吸引用キャップ3が密閉形成面5aとともに、吸引用密閉空間を形成し、保護用キャップ4が密閉形成面5aとともに、吸引用キャップ3が形成した吸引用密閉空間を囲む他の密閉空間を形成するため、二つの密閉空間が形成される。また、吸引用キャップ3の外側に形成される密閉空間には、吸引用密閉空間からインク8が漏れ出さない。このため、保護用キャップ4は、インク8と接することがない。
【0020】
なお、
図3では、ノズル形成面1aを保護用キャップ4より大きいサイズで示しているが、保護用キャップ4とノズル形成面1aとの外縁が同じ大きさであってもよい。また、本実施形態ではノズル列が一列の場合を示しているがこれに限られるものではない。
【0021】
図4、6を参照して、維持機構のインク吸引動作後の状態を説明する。
インク吸引動作後は、吸引用キャップ3と保護用キャップ4とのどちらもノズル形成面1aから離間する位置までキャップホルダー5を下降させる(
図6のS3)。保護用キャップ4は、バネ7が伸びることで元の位置に戻っていく。このとき、ノズル形成面1aに残留インク8bが付着するが、ノズル形成面1aと吸引用キャップ縁3aとの離間の際に両者間でインク伸びが生じ、それが弾けることで吸引用キャップ縁3aにも残留インク8aが堆積する。
【0022】
また、ノズル形成面1aと吸引用キャップ縁3aとの離間の際には、一段階目上昇の状態とするとよい。このようにすると、保護用キャップ縁4aは、ノズル形成面1aに当接していることになり、保護用キャップ縁4aへのインクの付着をより確実に防止することができる。
残留インク8bはこの後、一般的にワイピングなどのクリーニングによって自動的に除去される(
図6のS4)。
【0023】
図5、6を参照して、維持機構の液体吐出ヘッドの保護の状態を説明する。
液体吐出ヘッド2の保護は一段階目上昇にて行う。一段階目上昇は、保護用キャップ縁4aのみがノズル形成面1aと密着するまでキャップホルダー5を上昇・停止させる(
図6のS5)。保護用キャップ縁4aには元々汚れは付着しておらず、吸引用キャップ縁3aとノズル形成面1aとが離間した状態であるため、ノズル形成面1aにはいかなる汚れも付着することはない(
図6のS6)。
このようにすると、吸引用キャップ縁3aに残留インクが堆積していても、保護用キャップ4で保護する際に吸引用キャップ縁3aはノズル形成面1aに当接しないようにできる。これにより、ノズル形成面1aが綺麗なまま次の印字動作に移ることができ、記録媒体を汚すこともない。
【0024】
ここで、比較例として、キャップを、吸引用キャップと保護用キャップとに分けて用いない維持機構の動作例を説明する。
図7は、比較例の維持機構の動作例を説明するフローチャートである。
比較例の維持機構では、吸引用キャップをノズル面に当接させ(S91)、インクを吸引し(S92)、吸引後、吸引用キャップをノズル面から離間させる(S93)。このときノズル面とキャップ縁に残留インクが付着する。ワイピングでノズル面の残留インクを除去する(S94)。
その後、液体吐出ヘッドを保護するときに、吸引用キャップをノズル面威当接させ(s95)、液体吐出ヘッドを保護する(S96)。このとき、キャップ縁の残留インクがノズル面に付着する。
【0025】
このように、比較例の維持機構では、液体吐出ヘッドからインク吸引動作を繰り返すうちにキャップ縁に残留インクが堆積し、クリーニング後の液体吐出ヘッド保護の際に、残留インクがノズル形成面に付着してしまう。これは、複数のキャップを用いる維持機構であっても、保護用として用いるキャップにインクが付着する場合には、キャップ縁に残留インクが堆積する。そして、液体吐出ヘッドを保護するために、キャップがノズル形成面へ当接した際に、キャップ縁の残留インクがノズル形成面に付着してしまい、次の印字動作時に記録媒体にその汚れが付着してしまう。
【0026】
さらに、一般的な液体吐出ヘッドの維持回復動作であれば、例えば、
図4、5に示す吸引用キャップ縁3aに付着した残留インク8aは、定期的にユーザが手作業で除去するか、専用の自動メンテナンスを余分に挟むかが主な対処となる。
本発明を用いれば吸引用キャップ縁3aがノズル形成面1aに当接する回数が少ないため、クリーニング作業は不要となるか、もしくはこれまでのクリーニング作業頻度よりは格段に低くなる。
【0027】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
インク吸引動作を行う際に、吸引効率を高めるためなどに複数構造のキャップを関与させて行うものにおいては、それらを包含する形で保護用キャップを設置し、上述した維持機構と同様に、キャップホルダーの複数段階の上昇制御を用いて、吸引用キャップと保護用キャップを使い分けることもできる。
図8は、インク吸引動作時に複数の吸引用キャップを関与させる維持機構の一例を説明する図であり、維持機構におけるインク吸引動作前の状態を表している。
維持機構は、吸引用キャップ3と保護用キャップ4との間に、第三の密閉部材としての吸引用キャップ9をさらに備える。
吸引用キャップ9は、一端としての吸引用キャップ縁9aがノズル形成面1aに当接する。
【0028】
キャップホルダー5は、吸引用キャップ9の他端を密閉形成面5aの吸引用キャップ3と保護用キャップ4との間に配置する。
キャップホルダー5は、吸引用キャップ9を、吸引用キャップ3と同様のタイミングで、ノズル形成面1aに当接させ、ノズル形成面1aから離すことができる。
このようにすると、維持機構は、二段階目上昇において、吸引用キャップ3が形成した吸引用密閉空間を囲む他の密閉空間を二つ形成することになり、三つの密閉空間が形成される。
【0029】
インク吸引動作後、
図4に示すように、吸引用キャップ縁3aと吸引用キャップ縁9aとに残留インクが付着した場合、ノズル形成面1aをクリーニングした後、液体吐出ヘッド2を保護する際には、
図5と同様に、保護用キャップ縁4aのみがノズル形成面1aと密着するようキャップホルダー5を一段回目上昇させれば、吸引用キャップ縁3aおよび吸引用キャップ縁9aの残留インクがノズル形成面1aに、付着することはない。
【0030】
なお、
図8では、吸引用キャップを一つ追加した構成例を説明したが、複数の吸引用キャップを追加してもよい。
上述したように、液体吸引に関わる吸引用キャップ3、8が二重ないし複数構造であった場合でも、保護用キャップ4で保護する際に吸引用キャップ縁3a、9aはノズル形成面1aに当接しないようにできるため、次の印字動作はノズル形成面1aが綺麗な状態で行うことができ、記録媒体に汚れが付着することがなくなる。
このようにして、液体吸引などの処理以外のノズル形成面1aを保護するときに、ノズル形成面1aを汚れないようにすることができる。
【0031】
上述した通り、本実施形態の維持機構では、キャップホルダー5は、弾性部材を介して保護用キャップ4を支持することで、吸引用キャップ縁3a(または吸引用キャップ縁9a)に対する保護用キャップ縁4aの位置を変位させている。詳細には、維持機構は、保護用キャップ縁4aの位置を、
図2のように、吸引用キャップ縁3aと同じ位置(第一の位置)と、
図1、4および5のように、吸引用キャップ縁3aよりノズル形成面1aに近い位置(第二の位置)とに可変させる。
【0032】
維持機構は、例えば、上述した液体吐出ヘッドの維持、回復処理を制御する制御部を備える。キャップホルダー5は、例えば、制御部によって変位する位置や、一段階目上昇、二段階目上昇などの動作が制御される。
また、本実施形態の維持機構を設置する液体を吐出する装置は、例えば、装置全体を制御する主制御部を備える。主制御部は、例えば、維持機構の制御部へ、吸引状態や保護状態などの動作モードを指示し、制御部は、指示に基づいて、キャップホルダー5の変位を制御することができる。
【0033】
制御部または主制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備え、CPUがROMに格納されているプログラムに基づいてRAMをワークメモリとして利用しつつ維持機構または液体を吐出する装置の各部を制御して各処理を実行するように構成するとよい。
【0034】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の一例について
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は同装置の要部平面説明図、
図10は同装置の要部側面説明図である。
【0035】
この印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0036】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0037】
液体吐出ヘッド100は、前述した液体循環装置600と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0038】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0039】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0040】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0041】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0042】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル形成面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル形成面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0043】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0044】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0045】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0046】
本願において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。
吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0047】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0048】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0049】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0050】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0051】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0052】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0053】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0054】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0055】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0056】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0057】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0058】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0059】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0060】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0061】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0062】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0063】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0064】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0065】
1 ノズル
1a ノズル形成面
2 液体吐出ヘッド
3、9 吸引用キャップ
3a、9a 吸引用キャップ縁
4 保護用キャップ
4a 保護用キャップ縁
5 キャップホルダー
8 インク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】