(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020573
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】センサモジュール
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/02 20060101AFI20230202BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20230202BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H01Q19/02
H01Q13/10
G08C17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126001
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】依田 惇人
(72)【発明者】
【氏名】池田 巧
【テーマコード(参考)】
2F073
5J020
5J045
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA40
2F073AB02
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC12
2F073CD11
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE11
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG05
2F073GG09
5J020BC13
5J020BD04
5J020CA02
5J020DA02
5J020DA03
5J020DA04
5J045AA22
5J045DA03
5J045HA03
5J045LA01
5J045NA01
(57)【要約】
【課題】金属部材を放射素子として利用可能なセンサモジュールを提供する。
【解決手段】センサモジュールは、環状に延在する側面と、前記側面から凹み前記側面にわたって環状に設けられる凹部とを有する金属部材と、前記凹部の内部に埋め込まれる樹脂部と、前記樹脂部の内部に設けられ、電波を放射する放射部と、前記樹脂部の内部に設けられ、前記放射部に接続される無線通信部と、前記無線通信部に接続されるセンサとを含み、前記金属部材は、前記放射部とは前記樹脂部によって絶縁されており、無給電素子として機能する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に延在する側面と、前記側面から凹み前記側面にわたって環状に設けられる凹部とを有する金属部材と、
前記凹部の内部に埋め込まれる樹脂部と、
前記樹脂部の内部に設けられ、電波を放射する放射部と、
前記樹脂部の内部に設けられ、前記放射部に接続される無線通信部と、
前記無線通信部に接続されるセンサと
を含み、
前記金属部材は、前記放射部とは前記樹脂部によって絶縁されており、無給電素子として機能する、センサモジュール。
【請求項2】
前記凹部は、環状のスリットを構築する、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記金属部材の外形は、平面視において、円形、多角形、又は、円形あるいは多角形の一部を切り欠いた形状である、請求項1又は2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記金属部材は、平面視における中央を貫通する貫通孔を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記金属部材は、前記環状の凹部を貫通する方向における第1側に設けられる第1金属部材と、前記環状の凹部を貫通する方向における第2側に設けられ前記第1金属部材に固定される第2金属部材とを有し、
前記環状の凹部は、前記第1金属部材と前記第2金属部材との合わせ目に設けられる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記放射部は、前記環状の凹部の延在方向に沿って延在する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記放射部は、前記凹部の内壁の近傍に設けられる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
前記樹脂部の内部に設けられる基板をさらに含み、
前記放射部、前記無線通信部、及び前記センサは、前記基板に実装される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に相対回転自在に配置された複数の転動体と、を有する転がり軸受装置であって、円環形状に形成され、その基端部が前記内輪又は前記外輪に装着され、その先端部が前記外輪又は前記内輪に形成されたシール溝内に配置される密封装置を有し、前記密封装置の少なくとも外側面に無線タグを配置したことを特徴とする転がり軸受装置がある。
【0003】
また、温度センサや振動センサ等を無線タグに内蔵することにより、温度情報や振動情報を監視するようにしてもよいことや、速度センサが発生した回転信号はリード線等を通じて制御回路に与えられることが記載されているが、具体的にどのようにして軸受装置の外部に検出データを取り出すかについては、具体的な記載がない。
【0004】
また、無線タグは、通信状態を良好にするために、金属部材から離れた位置に配置されており、速度センサを設ける場合には、無線タグと速度センサは樹脂製のエンドキャップに取り付けている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の軸受装置は、通信状態を良好にするために、無線タグを金属部材から離れた位置に配置しており、金属部材を通信に用いていない。
【0007】
そこで、金属部材を放射素子として利用可能なセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態のセンサモジュールは、環状に延在する側面と、前記側面から凹み前記側面にわたって環状に設けられる凹部とを有する金属部材と、前記凹部の内部に埋め込まれる樹脂部と、前記樹脂部の内部に設けられ、電波を放射する放射部と、前記樹脂部の内部に設けられ、前記放射部に接続される無線通信部と、前記無線通信部に接続されるセンサとを含み、前記金属部材は、前記放射部とは前記樹脂部によって絶縁されており、無給電素子として機能する。
【発明の効果】
【0009】
金属部材を放射素子として利用可能なセンサモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態のセンサモジュール100を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態のセンサモジュール100を示す側面図である。
【
図4】金属部材110と、マルチモジュール130及び電源ケーブル140とを示す図である。
【
図5】センサモジュール100を示す上面図である。
【
図6】センサモジュール100の構成を示すブロック図である。
【
図7】センサモジュール100のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
【
図8】センサモジュール100の指向性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】実施の形態の第1変形例の金属部材110M1を示す図である。
【
図10】実施の形態の第2変形例のセンサモジュール100M2を示す図である。
【
図11】実施の形態の第3変形例のセンサモジュール100M3の構成を示すブロック図である。
【
図12】第4変形例のセンサモジュール100M4を示す図である。
【
図13】第5変形例のセンサモジュール100M5を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のセンサモジュールを適用した実施の形態について説明する。
【0012】
<実施の形態>
図1は、実施の形態のセンサモジュール100を示す斜視図である。
図2は、実施の形態のセンサモジュール100を示す側面図である。
図3は、
図1のA-A矢視断面を示す図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明し、XY面視を平面視と称する。また、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0013】
<センサモジュール100の構成>
センサモジュール100は、金属部材110と、樹脂部120と、マルチモジュール130と、電源ケーブル140とを含む。センサモジュール100は、円盤状の部材である。以下では、
図1乃至
図3に加えて
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、金属部材110と、マルチモジュール130及び電源ケーブル140とを示す図である。
図5は、センサモジュール100を示す上面図である。
図5には、センサモジュール100におけるマルチモジュール130の配置を示す。
【0014】
金属部材110は、一例として、金属製の円盤状の部材であり、上面111A、下面111B、側面111C、スリット111D、凹部112、及び貫通孔113を有する。上面111A、下面111B、及び側面111Cは、金属製の円盤状の部材の上面、下面、及び側面である。側面111Cは、金属部材110の外周に沿って一周しており、環状に延在している。
【0015】
上面111A及び下面111Bの中央部には、貫通孔113の開口部が位置する。このため、上面111A及び下面111Bは、平面視で円環状であり、金属部材110も平面視で円環状である。このような金属部材110は、一例として、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、タングステン等の金属製である。
【0016】
スリット111Dは、側面111Cにおいては、側面111Cの上端と下端との間で、側面111Cに沿って一周にわたって円環状に延在する。側面111Cの上端は、側面111Cと上面111Aの境界であり、側面111Cの下端は、側面111Cと下面111Bの境界である。
【0017】
スリット111Dは、側面111Cと凹部112との境界に加えて、凹部112の内壁112A及び112Bを含む。凹部112の内壁112A及び112Bは、凹部112のうちのXY平面に平行な円環状の内壁部である。内壁112A及び112Bは、凹部112の内部空間を隔てて対向している。
【0018】
スリット111Dには、マルチモジュール130のアンテナエレメント132から放射される電波が伝搬し、伝搬された電波の共振が発生する。スリット111Dで共振する電波は、金属部材110の外部に放射される。このようにして、金属部材110は、無給電素子として機能する。無給電素子は、寄生素子と同義である。
【0019】
凹部112は、側面111Cの上端と下端との間から、金属部材110の径方向の内側に向かって凹み側面111Cにわたって環状に設けられている。凹部112は、内壁112A及び112Bと、底部112Cとを有する。内壁112A及び112Bは、XY平面に平行な円環状の内壁部であり、底部112Cに連通している。底部112Cは、凹部112の最も内側に位置し、内壁112A及び112Bを接続する円筒状の壁部である。
【0020】
底部112Cは、貫通孔113よりも外側に位置し、貫通孔113の径方向外側を囲む円筒状の壁部である。凹部112の側面111Cから底部112Cの表面までの径方向の深さは、一周にわたって一定である。凹部112の内部には、樹脂部120とマルチモジュール130が収容される。
【0021】
貫通孔113は、平面視において金属部材110の中央部に設けられ、上面111Aと下面111Bとを接続するように金属部材110を貫通している。貫通孔113は、平面視で凹部112の内側に位置する。
【0022】
樹脂部120は、金属部材110の凹部112の内部に設けられ、マルチモジュール130を覆うように埋め込まれている。樹脂部120は、マルチモジュール130の上面側を覆っており、マルチモジュール130の上面側に加えて下面側を覆っていてもよい。樹脂部120は、凹部112内に充填可能な樹脂であればよく、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等を用いることができる。樹脂部120は、封止樹脂として用いられる。
【0023】
マルチモジュール130は、複数の機能を持つモジュールであり、一例として、配線基板131、アンテナエレメント132、整合回路132A、グランド層133、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136を有する。このようなマルチモジュールは、配線基板131に、整合回路132A、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136のような電子部品を実装した電子装置の一例である。マルチモジュール130には、外部から電力供給を受けるための電源ケーブル140が接続されている。
【0024】
マルチモジュール130の上面は、樹脂部120によって覆われている。アンテナエレメント132と内壁112Aとを離間させて絶縁するためであり、整合回路132A、グランド層133、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136を保護するためである。また、マルチモジュール130の下面と内壁112Bとの間にも樹脂部120が設けられることによって、マルチモジュール130の下面も樹脂部120によって覆われていてもよい。
【0025】
配線基板131は、一例として、FR-4(Flame Retardant type 4)規格の配線基板である。配線基板131は、貫通孔113を避けるために平面視で円環状であり、平面視における中央部に開口部131Aを有する。開口部131Aの開口径は、金属部材110の凹部112の最も内側に位置する底部112Cの直径よりも少し大きい程度であり、開口部131Aによって配線基板131の底部112Cに対する位置決めが行われている。また、配線基板131は、ポリイミド製のフィルム等で実現されるフレキシブル基板であってもよい。配線基板131は、XY平面に平行に配置される。
【0026】
配線基板131の上面には、アンテナエレメント132、整合回路132A、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136が実装され、下面の一部には、グランド層133が設けられている。グランド層133は、平面視において、アンテナエレメント132、整合回路132A、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136と重なる部分に設けられている。
【0027】
アンテナエレメント132は、放射部の一例であり、配線基板131の上面に設けられる金属層で実現される。アンテナエレメント132は、スリット111Dの内壁112A及び112Bの近傍に設けられている。近傍とは、アンテナエレメント132とスリット111Dとに電磁界結合が生じるほど、アンテナエレメント132とスリット111Dとが近いことをいう。アンテナエレメント132は、樹脂部120によって覆われているため、金属部材110から離間され、金属部材110とは絶縁されている。
【0028】
アンテナエレメント132は、直線状のパターンを有し、環状の凹部112の延在する方向に沿って延在している。環状の凹部112の延在する方向に沿うとは、凹部112の周方向に沿うことであり、直線状のアンテナエレメント132の長手方向が、周方向に沿って延在することをいう。なお、アンテナエレメント132の平面視での形状は、直線状に限らず、逆F型、逆L型、円形等の様々な形状であってもよい。
【0029】
アンテナエレメント132は、一例として銅箔をパターニングしたものである。アンテナエレメント132は、グランド層133とマイクロストリップラインを構築する。アンテナエレメント132は、マイクロストリップ線路型の放射素子である。アンテナエレメント132は、配線基板131の配線を介して無線通信部134に接続されており、配線基板131の配線が接続される部分は給電部132FPである。
【0030】
アンテナエレメント132は、無線通信部134から給電され、凹部112内に電波を放射する。アンテナエレメント132と無線通信部134とを接続する配線もグランド層133とマイクロストリップラインを構築する。アンテナエレメント132の給電部132FPの近傍には、インピーダンス整合を取るための整合回路132Aが接続されている。整合回路132Aは、一例として、インダクタ又はキャパシタである。整合回路132Aを用いることにより、波長の短縮効果が得られる。
【0031】
グランド層133は、上述したように、平面視において、アンテナエレメント132、整合回路132A、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136と重なるように、配線基板131の下面又は内層に設けられている。グランド層133は、配線基板131の下面又は内層に設けられる金属層で実現され、金属層は一例として銅箔である。グランド層133は、金属部材110に接続される。
【0032】
グランド層133が配線基板131の下面にある場合には、グランド層133と凹部112の内壁112Bとが直接的に接触していてもよい。この場合には、マルチモジュール130と内壁112Bとの間には樹脂部120が存在しなくてよい。また、グランド層133が配線基板131の下面にある場合において、グランド層133と凹部112の内壁112Bとは、導電性接着剤や配線等で接続してもよい。この場合には、マルチモジュール130と内壁112Bとの間には樹脂部120が存在しなくても、存在していても、どちらでもよい。また、グランド層133は配線基板131の内層に設けられていてもよい。この場合には、グランド層133と金属部材110とを配線やパッド等で接続すればよい。また、この場合には、マルチモジュール130と内壁112Bとの間に樹脂部120が存在しなくても、存在していても、どちらでもよい。
【0033】
無線通信部134は、センサモジュール100が外部の装置と通信するための通信機能を有する無線通信用のIC(Integrated Circuit)である。無線通信部134は、配線基板131の配線を介してアンテナエレメント132、グランド層133、及び制御部135に接続されている。無線通信部134とアンテナエレメント132及び制御部135との間は、一例として配線基板131の上面に設けられる配線で接続すればよい。無線通信部134とグランド層133とは、配線基板131を厚さ方向(Z方向)に貫通するビア等によって接続すればよい。また、無線通信部134は、配線基板131の配線を介して電源ケーブル140に接続されており、電源ケーブル140を介して、センサモジュール100の外部から電力供給を受ける。
【0034】
無線通信部134は、一例として、BLE(Bleutooth Low Energy(登録商標))の通信プロトコルに従って通信可能であるが、LTE(Long Term Evolution)等の通信プロトコルに従って通信する構成であってもよい。無線通信部134は、制御部135から入力されるセンサ136の検出データを含む送信信号をアンテナエレメント132に出力する。無線通信部134から出力される送信信号は、アンテナエレメント132からスリット111Dに放射され、スリット111Dからセンサモジュール100の外部に放射される。
【0035】
制御部135は、センサモジュール100の全体の制御を行う。制御部135は、一例としてマイクロコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び内部バス等を含む。
【0036】
制御部135は、配線基板131の配線を介して無線通信部134及びセンサ136に接続されており、センサ136から検出データを取得し、無線通信部134に検出データを含む送信信号をアンテナエレメント132に放射させる。また、制御部135は、配線基板131の配線を介して電源ケーブル140に接続されており、電源ケーブル140を介して、センサモジュール100の外部から電力供給を受ける。
【0037】
センサ136は、一例として、歪みセンサ(歪みゲージ)、加速度計、温度計等であり、金属部材110の歪み、加速度、温度等を検出する。センサ136は、配線基板131の配線を介して制御部135に接続されており、検出データを制御部135に出力する。また、センサ136は、配線基板131の配線を介して電源ケーブル140に接続されており、電源ケーブル140を介して、センサモジュール100の外部から電力供給を受ける。
【0038】
以上のようなセンサモジュール100において、アンテナエレメント132は、スリット111Dの内壁112A及び112Bの近傍に設けられており、アンテナエレメント132とスリット111Dとの電磁界結合が得られることによって、スリット111Dを有する金属部材110は、無給電素子として機能する。
【0039】
マルチモジュール130のアンテナエレメント132が無線通信部134によって給電されると、アンテナエレメント132が放射する電波がスリット111Dに伝搬し、スリット111Dで共振が生じることによって、電波がセンサモジュール100の外に放射される。このようにして金属部材110は、無給電素子として機能する。無線通信部134が出力する送信信号は、金属部材110のスリット111Dからセンサモジュール100の外部に放射される。送信信号は、センサ136の検出データを含むため、センサモジュール100から放射される電波をセンサモジュール100の外部の装置が受信すれば、センサ136で検出された歪み、加速度、温度等の情報を表す検出データ入手することができる。
【0040】
なお、スリット111Dの1周の長さは、一例として、側面111Cと凹部112との境界の部分において、マルチモジュール130の無線通信部134から放射される電波の周波数(通信周波数)における1波長の電気長に設定してもよい。すなわち、スリット111Dのうちの径方向における最も外側に位置する部分において、1周の長さが、マルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長に設定してもよい。
【0041】
また、スリット111Dの1周の長さについては、一例として、径方向における最も内側に位置する底部112Cの表面における1周の長さが、マルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長になるように設定されていてもよい。また、スリット111Dの1周の長さについては、一例として、スリット111Dのうちの径方向における最も外側(側面111Cと凹部112との境界)と、最も内側の底部112Cの表面との間のいずれかの径方向の位置において、マルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長になるように設定されていてもよい。
【0042】
また、上述したようなスリット111Dの1周の長さは、厳密にマルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長ではなくてもよい。金属部材110の凹部112内には樹脂部120とマルチモジュール130が配置される。樹脂部120及びマルチモジュール130が凹部112内に配置されることによって金属部材110のインピーダンス特性が変動する場合には、スリット111Dのインピーダンスが整合するように、スリット111Dの1周の長さをマルチモジュール130の通信周波数における1波長の電気長よりも短く、又は、長く調整すればよい。また、スリット111Dの1周の長さを調整するとともに、整合回路132Aのコンデンサの静電容量、又は、整合回路132Aのコイルのインダクタンスを調整することで、スリット111Dのインピーダンスを整合させればよい。スリット111Dの1周の長さをマルチモジュール130の放射部から放射される電波の周波数(通信周波数)における1波長の電気長に設定することは、このようにスリット111Dの長さを調整することも含む趣旨である。
【0043】
<ブロック構成>
図6は、センサモジュール100の構成を示すブロック図である。
図6には、センサモジュール100のマルチモジュール130のうちのアンテナエレメント132、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136と、電源ケーブル140とを示す。
【0044】
センサ136は、アナログセンサ136A、アナログ回路136B、及びA/D(Analog to Digital)コンバータ136Cを有する。アナログセンサ136Aで検出されたアナログデータは、アナログ回路136Bでノイズの除去等の信号処理が行われて、A/Dコンバータ136Cでデジタルデータに変換され、検出データとして制御部135に出力される。なお、センサ136は、デジタルセンサであってもよく、電源ケーブル140の代わりにバッテリを含んでいてもよい。これらについては、
図11を用いて後述する。
【0045】
<S11パラメータ>
図7は、センサモジュール100のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図7において、横軸は周波数(GHz)、縦軸はS11パラメータ(dB)を示す。S11パラメータは、アンテナエレメント132からスリット111Dに入力される電力に対する、スリット111Dからアンテナエレメント132に反射される電力の反射係数を表す。
【0046】
図7には、マルチモジュール130の通信周波数を一例として2.44(GHz)に設定した場合に、センサモジュール100の2つのシミュレーションモデルについて電磁界シミュレーションで得られた結果を示す。
【0047】
破線で示す特性は、金属部材110の直径が62mm、樹脂部120の比誘電率が1.7、スリット111Dの内壁112A及び112Bのギャップが3mmのシミュレーションモデル1で得られたS11パラメータを示す。実線で示す特性は、金属部材110の直径が62mm、樹脂部120の比誘電率が3.1、スリット111Dの内壁112A及び112Bのギャップが2mmのシミュレーションモデル2で得られたS11パラメータを示す。なお、スリット111Dの共振周波数は2.44GHzに設定した。
【0048】
シミュレーションモデル1(破線)及び2(実線)のS11パラメータの最小値は、ともに2.44GHzで得られ、それぞれ-40.70dB及び-42.41dBであった。シミュレーションモデル1(破線)及び2(実線)ともに、2.44(GHz)で共振が生じており、また、2.44GHzの前後で-10dB以下の極めて反射が少ない広帯域が得られることが分かった。シミュレーションモデル1(破線)の方が、シミュレーションモデル2(実線)よりも広い帯域が得られた。
【0049】
<指向性のシミュレーション結果>
図8は、センサモジュール100の指向性のシミュレーション結果を示す図である。マルチモジュール130の通信周波数を一例として2.44(GHz)に設定した場合におけるXY平面、XZ平面、及びYZ平面での指向性を示す。XY平面では、0度の方向が+X方向、-90度の方向が+Y方向である。XZ平面では、0度の方向が+Z方向、90度の方向が+X方向である。YZ平面では0度の方向が+Z方向、90度の方向が+Y方向である。
【0050】
XY平面では略均等な指向性が得られた。XZ平面ではアンテナエレメント132が位置する+X方向側が-X方向側よりも放射が少し強い特性が得られた。YZ平面では、上下よりも横方向への放射がより強い特性が得られた。
【0051】
以上のように、センサモジュール100は、金属部材110の凹部112内の樹脂部120の内部にマルチモジュール130を配置し、スリット111Dを有する金属部材110を無給電素子として機能させる。
【0052】
したがって、金属部材110を放射素子として利用可能なセンサモジュール100を提供することができる。また、
図7に示すように反射が少なく、
図8に示すように均等な指向性が得られる。このため、放射特性の良好なセンサモジュール100を提供することができる。
【0053】
また、凹部112は、環状のスリット111Dを構築するため、平面視において均等な指向性が得られる。また、金属部材110の側面111Cに凹部112を設けることで、容易にスリット111Dを構築することができる。
【0054】
また、金属部材110は、平面視における中央を貫通する貫通孔113を有する。このような貫通孔113を中央に有する金属部材110は、一例として、ベアリングホルダとして利用可能である。ベアリングホルダは、ベアリングを保持する固定具である。金属部材110をベアリングホルダとして利用すれば、ベアリングの歪み、加速度、温度等を表す検出データをセンサモジュール100で外部の装置に送信することができる。
【0055】
また、アンテナエレメント132は、環状の凹部112の延在方向に沿って延在するので、凹部112が構築するスリット111Dに効率的に電波が伝搬し、金属部材110を放射素子として利用可能で、放射特性がより良好なセンサモジュール100を提供することができる。
【0056】
また、アンテナエレメント132がスリット111Dの内壁112A及び112Bの近傍に配置されるので、アンテナエレメント132とスリット111Dとの電磁界結合が得られ、スリット111Dで共振が生じやすくなり、金属部材110を放射素子として利用可能で放射特性がより良好なセンサモジュール100を提供することができる。
【0057】
また、アンテナエレメント132、整合回路132A、グランド層133、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136が配線基板131に実装されるため、製造が容易である。
【0058】
また、配線基板131、アンテナエレメント132、整合回路132A、グランド層133、無線通信部134、制御部135、及びセンサ136を有するマルチモジュール130を樹脂部120の内部に配置する構成であるため、製造が容易である。
【0059】
<第1変形例>
図9は、実施の形態の第1変形例の金属部材110M1を示す図である。金属部材110M1は、上側の金属部材110Aと下側の金属部材110Bとに分割されている。金属部材110Aは
図1乃至
図5に示す金属部材110の内壁112Aよりも上側の部分であり、金属部材110Bは
図1乃至
図5に示す金属部材110の内壁112Aよりも下側の部分である。このため、金属部材110Bの上面の中央部には底部112Cが設けられている。
【0060】
金属部材110Aは、上側(第1側)に設けられる第1金属部材の一例であり、金属部材110Bは、下側(第2側)に設けられ金属部材110Aに固定される第2金属部材の一例である。凹部112は、金属部材110Aと金属部材110Bとの合わせ目に設けられる。このような金属部材110A及び110Bを接合すれば、
図1乃至
図5に示す金属部材110と同一の構成のものが得られる。
【0061】
<第2変形例>
図10は、実施の形態の第2変形例のセンサモジュール100M2を示す図である。センサモジュール100M2は、
図1乃至
図5に示すセンサモジュール100のマルチモジュール130をマルチモジュール130M2に置き換えた構成を有する。
【0062】
マルチモジュール130M2は、平面視でU字型である。マルチモジュール130M2の基板131M2はU字型であり、端部131MA2、131MB2のY方向の間隔は、金属部材110の底部112Cの外径よりも広い。このため、U字型の基板131M2の端部131MA2、131MB2の間に金属部材110の底部112Cを挿通させることができ、マルチモジュール130M2を金属部材110に対して容易に取り付けることができる。
【0063】
<第3変形例>
図11は、実施の形態の第3変形例のセンサモジュール100M3の構成を示すブロック図である。センサモジュール100M3は、デジタルセンサ136M3及びバッテリ140M3を含む点がアナログセンサ136A及び電源ケーブル140を含むセンサモジュール100(
図6参照)と異なる。デジタルセンサ136M3は、デジタルデータとしての検出データを制御部135に出力する。バッテリ140M3は、例えば、配線基板131の上面に実装して、金属部材110の凹部112の内部に収容すればよい。
【0064】
センサモジュール100M3は、デジタルセンサ136M3を含むことによって、部品点数を減らすことができる。また、センサモジュール100M3は、バッテリ140M3を内蔵するため、電源ケーブル140のように金属部材110の外側に飛び出した部分が存在せず、外観を簡素化することができる。また、センサモジュール100M3は、バッテリ140M3から供給される電力で動作可能であるため、電源ケーブル140を介してセンサモジュール100に電力を供給する電力供給源が存在しないところでも利用可能である。
【0065】
<第4変形例、第5変形例>
図12及び
図13は、第4変形例及び第5変形例のセンサモジュール100M4及び100M5を示す図である。センサモジュール100M4は、
図5に示すセンサモジュール100の金属部材110を金属部材110M4に置き換えたものである。金属部材110M4は、平面視で矩形(四角形)である。矩形は、多角形の一例である。金属部材110M4の平面視での形状は、四角形に限らず、三角形や5つ以上の辺及び頂点を有する多角形であってもよい。
【0066】
センサモジュール100M5の金属部材110M5の外形は、平面視において、
図5に示す円形の金属部材110のY方向側の両端をX方向に沿って切り欠いた形状である。センサモジュール100M5は、
図5に示すマルチモジュール130の代わりに、Y方向側の両端をX方向に沿って切り欠いた形状を有するマルチモジュール130M5を有する。マルチモジュール130M5は、Y方向側の両端をX方向に沿って切り欠いた形状の基板131M5を有する。なお、
図12に示すセンサモジュール100M4の金属部材110M4の一部を平面視において切り欠いてもよい。
【0067】
第4変形例、第5変形例によれば、様々な形状のセンサモジュール100M4及び100M5を実現することができる。
【0068】
以上、本発明の例示的な実施の形態のセンサモジュールについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
100、100M2、100M3、100M4、100M5 センサモジュール
110、110M1、110A、110B、110M4、110M5 金属部材
120 樹脂部
130、130M2、130M5 マルチモジュール
131、131M5 配線基板
132 アンテナエレメント
133 グランド層
134 無線通信部
135 制御部
136 センサ
136A アナログセンサ
136M3 デジタルセンサ
140 電源ケーブル
140M3 バッテリ