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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020600
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230202BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230202BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H05H1/46 B
H05H1/46 M
H01L21/302 101C
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126055
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 聡
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA04
2G084AA05
2G084BB06
2G084BB14
2G084BB29
2G084CC05
2G084CC06
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD05
2G084DD23
2G084DD24
2G084DD42
2G084DD55
2G084DD62
2G084FF11
2G084FF14
2G084FF15
2G084FF39
5F004AA01
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB23
5F004BC03
5F004DA04
5F004DA17
5F004DA23
5F004DA25
5F045AA08
5F045AC01
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045BB02
5F045DP03
5F045EC07
5F045EE01
5F045EF05
5F045EH03
5F045EH11
5F045EH20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プラズマプロセスの均一性の向上を図る。
【解決手段】内部に基板支持部18を有する処理容器10と、処理容器内に第1ガスの活性種を供給するシャワーヘッド20と、第1ガスの活性種をシャワーヘッドに供給するように構成された第1解離空間30bと、第1解離空間へVHF帯以上の電磁波を供給するように構成された共振器と、を有し、共振器は、共振器の筐体を構成する筒状体40と、筒状体の内部を通り、筒状体の中心軸方向に沿って設けられ、端部に複数のガス孔を有し、複数のガス孔を介して第1解離空間へ第1ガスをシャワー状に供給するように構成されたガス配管22と、中央部にてガス配管の端部が貫通し、ガス配管と筒状体との間を封止し、電磁波を第1解離空間へ透過させるように構成された誘電体窓21と、を有する、プラズマ処理装置1が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に基板支持部を有する処理容器と、
前記処理容器内に第1ガスの活性種を供給するシャワーヘッドと、
前記第1ガスの活性種を前記シャワーヘッドに供給するように構成された第1解離空間と、
前記第1解離空間へVHF帯以上の電磁波を供給するように構成された共振器と、を有し、
前記共振器は、
前記共振器の筐体を構成する筒状体と、
前記筒状体の内部を通り、前記筒状体の中心軸方向に沿って設けられ、端部に複数のガス孔を有し、前記複数のガス孔を介して前記第1解離空間へ前記第1ガスをシャワー状に供給するように構成されたガス配管と、
中央部にて前記ガス配管の端部が貫通し、前記ガス配管と前記筒状体との間を封止し、前記電磁波を前記第1解離空間へ透過させるように構成された誘電体窓と、を有する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記電磁波は、UHF帯以上である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記シャワーヘッド及び前記基板支持部の少なくともいずれかに高周波を印加し、前記処理容器内に供給した前記第1ガスの活性種を含むガスのプラズマを生成する、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記誘電体窓の前記第1解離空間に露出する面は環状の凹部を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1解離空間は円筒状であり、前記第1解離空間の直径は前記電磁波の表面波の波長λgの1/6よりも小さい、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記複数のガス孔の直径は、前記電磁波の表面波の波長λgの1/16以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記ガス配管は、前記共振器内を貫通する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記筒状体に設けられ、その側壁から前記第1解離空間に第2ガスを供給するサイドガス配管を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記共振器の内部は、大気圧であり、前記第1解離空間は、真空圧である、
請求項1~8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第1解離空間は、前記共振器と前記シャワーヘッドとの間に設けられ、プラズマを生成するための空間である、
請求項1~9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記共振器の少なくとも一部には、誘電体が埋め込まれている、
請求項1~10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記共振器の上端面は、前記電磁波の電界が最小になるように構成され、前記第1ガスを供給する前記ガス配管が貫通する、
請求項1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記誘電体窓の上面は、前記電磁波の電界が最大になるように構成される、
請求項1~12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、互いに平行な高周波印加電極とプラズマ分離用の中間メッシュプレート電極とで挟まれたプラズマ発生室と、プラズマ発生室外に位置し、中間メッシュプレート電極と平行に基板を設置する対向電極と、を有するプラズマCVD装置を提案する。特許文献1では、中間メッシュプレート電極が対向電極側および高周波印加電極側の双方向に移動可能であり、かつ対向電極に高周波が印加可能である。
【0003】
特許文献2は、VHF波を導入し、VHF波によりガスからプラズマを生成するプラズマ処理装置を提案する。特許文献2では、上部電極及び下部電極は、それぞれ互いに対向する面に凹部を備え、上部電極及び下部電極それぞれの凹部内には、上部誘電体及び下部誘電体がそれぞれ設けられ、上部誘電体と下部誘電体との間の空間の横方向端部には、VHF波の導入部が設けられている。
【0004】
特許文献3は、マイクロ波を導入し、マイクロ波によりガスからプラズマを生成するプラズマ処理装置を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-162957号公報
【特許文献2】特開2020-92033号公報
【特許文献3】特開平11-204295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、プラズマプロセスの均一性の向上を図ることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、内部に基板支持部を有する処理容器と、前記処理容器内に第1ガスの活性種を供給するシャワーヘッドと、前記第1ガスの活性種を前記シャワーヘッドに供給するように構成された第1解離空間と、前記第1解離空間へVHF帯以上の電磁波を供給するように構成された共振器と、を有し、前記共振器は、前記共振器の筐体を構成する筒状体と、前記筒状体の内部を通り、前記筒状体の中心軸方向に沿って設けられ、端部に複数のガス孔を有し、前記複数のガス孔を介して前記第1解離空間へ前記第1ガスをシャワー状に供給するように構成されたガス配管と、中央部にて前記ガス配管の端部が貫通し、前記ガス配管と前記筒状体との間を封止し、前記電磁波を前記第1解離空間へ透過させるように構成された誘電体窓と、を有する、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、プラズマプロセスの均一性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図。
図2】実施形態に係る共振部の一例を示す断面模式図。
図3図1のA-A線に沿って切断した断面図。
図4】プラズマ密度の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
[プラズマ処理装置]
以下、図面を参照して実施形態に係るプラズマ処理装置について詳細に説明する。プラズマ処理装置の性能を高めるための一手段として周波数を高くすることが考えられ、この場合、一般的な高周波の周波数(例えば13.56MHz)よりも高い周波数のVHF帯以上の電磁波の使用が考えられる。例えばVHF帯の電磁波の周波数は、30MHz~300MHzであり、UHF帯の電磁波の周波数は、300MHz~3GHzである。VHF帯及びUHF帯の電磁波は一般的な高周波と比べて周波数が高いため、通常の高周波では解離し難いガスの解離を高解離にするように制御でき、プラズマ処理装置1の性能を高めることができる。しかし、VHF帯及びUHF帯の電磁波をチャンバ内に印加すると、これらの電磁波の波長は通常の高周波よりも短くなるためにプラズマの均一性が悪くなり、成膜、エッチング等のプロセスが不均一になる場合がある。
【0012】
以下に説明するプラズマ処理装置では、図1に示すように、チャンバ10内のプロセス空間である第2解離空間30eとは別にガス活性化部2に第1解離空間30bを設ける。第1解離空間30b及び第2解離空間30eは、いずれもプラズマ生成空間である。これにより、第1解離空間30bに供給された第1ガスをVHF帯以上の電磁波を用いて解離し、第1ガスの活性種をチャンバ10内に供給し、第1ガスの活性種を第2解離空間30eで更にプラズマ化する。これにより、VHF帯及びUHF帯の電磁波を使用する場合においても、ガス活性化部2を使用することでプラズマの均一性を図ることができる。チャンバ10は処理容器の一例である。
【0013】
実施形態に係るプラズマ処理装置1について、図1図3を参照して説明する。図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図である。図2は、実施形態に係る共振部の一例を示す断面模式図である。図3は、図1のA-A線に沿って切断した断面図である。
【0014】
図1に示すプラズマ処理装置1は、チャンバ10及びガス活性化部2を備えている。プラズマ処理装置1は、ガス活性化部2内においてVHF帯以上の電磁波によりガスからプラズマを生成するように構成されている。また、チャンバ10内においてVHF帯以上の電磁波の周波数よりも低い周波数の高周波によりガスからプラズマを生成するように構成されている。電磁波は、VHF帯以上であればよいが、UHF帯以上であることが好ましく、電磁波の上限がUHF帯の上限と同じであってもよい。チャンバ10は、その中心軸線として軸線AXを有している。軸線AXは、鉛直方向に延びる軸線である。基板Wはチャンバ10内で処理される。
【0015】
一実施形態においては、チャンバ10は、チャンバ本体12を含んでいてもよい。チャンバ本体12は、筒状体を有しており、チャンバ10の側壁及び底壁を提供し、上部が開口する。チャンバ本体12は、アルミニウムのような金属から形成されている。チャンバ本体12は、接地されている。
【0016】
チャンバ本体12の側壁は、通路12pを提供している。基板Wは、チャンバ10の内部と外部との間で搬送されるときに、通路12pを通過する。通路12pは、ゲートバルブ12vによって開閉可能である。ゲートバルブ12vは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
【0017】
チャンバ10は、上壁14を更に含んでもよい。上壁14は、アルミニウムのような金属から形成されている。上壁14は円盤状であり、チャンバ本体12の上部の開口を閉じている。上壁14は、チャンバ本体12と共に接地されている。
【0018】
チャンバ10の底壁は、排気口16aを提供している。排気口16aは、排気装置16に接続されている。排気装置16は、自動圧力制御弁のような圧力制御器及びターボ分子ポンプのような真空ポンプを含んでいる。
【0019】
プラズマ処理装置1は、基板支持部18を更に備える。基板支持部18は、チャンバ10内に設けられている。基板支持部18は、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板Wは、略水平な状態で基板支持部18上に載置される。基板支持部18は、支持部材19によって支持されていてもよい。支持部材19は、チャンバ10の底部から上方に延びている。基板支持部18及び支持部材19は、窒化アルミニウム等の誘電体から形成され得る。
【0020】
プラズマ処理装置1は、シャワーヘッド20を更に備える。シャワーヘッド20は、アルミニウムのような金属から形成されている。シャワーヘッド20は、略円盤形状を有しており、中空構造を有する。シャワーヘッド20は、その中心軸線として軸線AXを共有している。シャワーヘッド20は、基板支持部18の上方、且つ、上壁14の下部に設けられている。シャワーヘッド20は、チャンバ10の内部空間を画成する天部を構成し、その上部の上に上壁14が設けられている。
【0021】
シャワーヘッド20は、その中に拡散室30dを提供している。シャワーヘッド20には、拡散室30dから垂直方向に貫通する複数のガス孔20iが形成されている。複数のガス孔20iは、シャワーヘッド20の下面に開口し、チャンバ10内のシャワーヘッド20と基板支持部18との間の第2解離空間30eに向けてガスを導入する。
【0022】
これにより、シャワーヘッド20は、後述する第1ガスの活性種を拡散室30dから複数のガス孔20iに通して第2解離空間30eに導入する。また、シャワーヘッド20は、後述する第2ガスを拡散室30dから複数のガス孔20iに通して第2解離空間30eに導入する。
【0023】
なお、シャワーヘッド20の各ガス孔20iの直径は1mm程度にすることが好ましい。1mm以下の直径では、ガス孔20i内での第1ガスの活性種同士の衝突頻度が高くなる。一方、各ガス孔20iの直径は1mm程度にすることにより第1ガスの活性種が、第2解離空間30eに到達する前に第1ガスに戻る確率を低減させることができる。
【0024】
シャワーヘッド20の外周は、セラミックスのような誘電体の部材33で覆われている。基板支持部18の外周は、セラミックスのような誘電体の部材34で覆われている。シャワーヘッド20に高周波を印可しない場合、誘電体の部材33はなくてもよい。ただし、基板支持部18の対向電極として機能させるシャワーヘッド20の領域を確定するために誘電体の部材33は配置した方がよい。また、電極のアノードとカソードとの比をなるべく均等にするためにも誘電体の部材33は配置した方がよい。
【0025】
基板支持部18には、整合器61を介して高周波電源60が接続されている。整合器61は、インピーダンス整合回路を有する。インピーダンス整合回路は、高周波電源60の負荷のインピーダンスを、高周波電源60の出力インピーダンスに整合させるように構成される。高周波電源60から供給される高周波の周波数は、電源50から供給されるVHF波の周波数よりも低く、60MHz以下の周波数である。高周波の周波数の一例としては、13.56MHzが挙げられる。なお、高周波電源60は、シャワーヘッド20に高周波を印加してもよい。
【0026】
制御部(制御装置)90は、プロセッサ91、メモリ92を有するコンピュータであり得る。制御部90は、演算部、記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備える。制御部90は、ガス活性化部2を含むプラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部90では、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部90では、表示装置により、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御部90のメモリ92には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、プラズマ処理装置1で各種処理を実行するために、制御部90のプロセッサ91によって実行される。プロセッサ91が、制御プログラムを実行し、レシピデータに従ってプラズマ処理装置1の各部を制御することにより、種々のプロセス、例えばプラズマ処理方法がプラズマ処理装置1で実行される。
【0027】
ガス活性化部2は、共振器100及び第1解離空間30bを有する。
【0028】
(共振器:筒状体)
共振器100は共振器100の筐体を構成する筒状体40を有する。筒状体40は、アルミニウムのような金属から形成され、中空構造になっている。筒状体40は、その中心軸線として軸線AXを共有している。ガス活性化部2の下端は、チャンバ10の上壁14の上の絶縁部材35に固定されている。絶縁部材35は窒化アルミニウム等のセラミックスで形成され、中空構造を有し、上壁14の中央部に形成された穴部に挿入され、シャワーヘッド20の上部中央を貫通する貫通口周辺の上面に当接し、拡散室30dに連通する。これにより、ガス活性化部2とチャンバ10とを絶縁する。
【0029】
筒状体40の上端は、筒状体40の外径と同一の直径を有する円盤状のカバー導体44により閉塞されている。カバー導体44は、アルミニウムのような金属から形成されている。
【0030】
(共振器:ガス配管)
共振器100は、ガス配管22を更に備える。ガス配管22は、筒状体の管である。ガス配管22は、筒状体40の内部を通り、筒状体40の中心軸方向に沿って設けられ、端部に複数のガス孔23aを有する。ガス配管22は、鉛直部22a及び鍔部22fを有する。鉛直部22a及び鍔部22fは、アルミニウムのような金属から形成されている。鉛直部22aは、カバー導体44を貫通し、共振器100の中央に配置されている。つまり、鉛直部22aと筒状体40とは、両方の中心軸線として軸線AXを共有し、鉛直部22aが筒状体40により包まれるように配置されている。図2および図1のA-A線に沿って切断した断面図である図3を参照すると、鍔部22fは、電磁波の供給路36の内導体36aと同じ高さで鉛直部22aの側面の周りに鉛直部22aに垂直に設けられた鍔状の環状部材である。供給路36は、内導体36aと外導体36bとを有する。供給路36の外導体36bは、筒状体40の側壁に連結する。内導体36aは鍔部22fに連結する。
【0031】
図1図3を参照すると、ガス配管22(鉛直部22a)の端部は複数のガス孔23aを有する小型シャワーヘッド23を構成する。小型シャワーヘッド23は、複数のガス孔23aを介して第1解離空間30bへ第1ガスをシャワー状に供給するように構成される。図3では、ガス孔23aは中央に一つ、周辺に6つ、等間隔に配置されているが、ガス孔23aの数、配置についてはこれに限らない。
【0032】
プラズマ中のUHF波の表面波の波長は4mm~10mm程度であるため、複数のガス孔23aの直径は実効波長λgの1/16以下であり、例えば、0.6mm以下である。これにより、第1解離空間30bにおいて形成されたプラズマがガス孔23aからガス配管22内に戻り、不要なエネルギーを消費することを回避できる。
【0033】
図1のガス配管22の下端の小型シャワーヘッド23は、シャワーヘッド20の上部中央のガス導入口33aに対向して設けられている。ガス導入口33aは、拡散室30dに接続している。
【0034】
(ガス源)
実施形態において、プラズマ処理装置1は、Nガス源24a、NFガス源24b、SiHガス源25を有する。Nガス源24aは、ガス配管22の上部に接続されている。Nガス源24aは、還元ガスのガス源である。Nガスは、第1ガスの一例である。NFガス源24bは、ガス配管22の上部に接続されている。NFガス源24bは、クリーニングガスのガス源である。クリーニングガスは、第1ガスの一例である。クリーニングガスは、ハロゲン含有ガスを含んでいてもよい。ハロゲン含有ガスは、例えばNF及び/又はClを含む。本実施形態では、クリーニングガスはNFガスであるが、他のガスを更に含んでもよい。クリーニングガスは、Arのような希ガスを更に含んでもよい。Nガス源24aは、バルブ29aを介してガス配管22に接続されている。NFガス源24bは、バルブ29bを介してガス配管22に接続されている。
【0035】
SiHガス源25は、第1解離空間30bに第2ガスを直接供給する成膜ガス等の処理ガスのガス源である。サイドガス配管28は筒状体40の側壁を貫通する。SiHガス源25は、サイドガス配管28を介して筒状体40の側壁に設けられたガス孔28aから第1解離空間30bに第2ガスを供給する。SiHガスは、第2ガスの一例である。第2ガスが成膜ガスである場合、シリコン含有ガスを含んでいてもよい。シリコン含有ガスは、例えばシランガス(SiH)に他のガスを更に含んでいてもよい。例えば、成膜ガスは、NHガス、Nガス、Arのような希ガス等を更に含んでいてもよい。SiHガス等の成膜ガスは、過度に解離させたくないガスである。よって、第2ガスはシャワーヘッド20へ直接供給してもよい。一方、還元ガス(Nガス)、NFガス等の第1ガスは、第1解離空間30bにおいて充分に解離させて第1ガスの活性種をチャンバ10内に供給させたいガスである。よって、第1ガスはガス配管22の上部からガス流路29及び小型シャワーヘッド23を介して第1解離空間30bに供給する。これにより、第1ガスを高解離させることができる。その理由については後述する。
【0036】
(第1解離空間)
通常、真空空間では、筒状体40の径方向に電磁波の節ができないためには、筒状体40の内壁の直径Rを真空中の電磁波の表面波の実効波長λgの1/2以下にする必要がある。これに対して、電磁波(VHF波、UHF波)はプラズマ中では実効波長λgの1/3程度に短縮される。第1解離空間30bはプラズマ生成空間であるため、第1解離空間30bにおいて径方向に電磁波の節ができないためには、筒状体40の内壁の直径Rを(λg/2)の1/3、つまり、λg/6よりも小さくする。これにより、腹又は節の影響を無くした上で電磁波のエネルギーを効率的に伝達できる。
【0037】
第1解離空間30bにおいて電磁波の電界により第1ガスのプラズマが生成される。成膜時には、NガスとSiHガスが第1解離空間30bに供給される。Nガスは小型シャワーヘッド23の直下にて高い電磁波の電界エネルギーにて分解され、第1ガスのプラズマが生成される。SiHガスは直接第1解離空間30bの電磁波の電界エネルギーが低い領域に供給される。これにより、Nガスと比較してガスの解離を抑制することができる。なお、成膜時には、バルブ29bは閉じ、バルブ29aを開くことで、還元ガスであるNガスをガス配管22に供給し、第2ガスを直接第1解離空間30bに供給する。クリーニング時には、バルブ29aは閉じ、バルブ29bを開くことで、クリーニングガスであるNFガスをガス配管22に供給する。クリーニング時には、第2ガスは供給しない。
【0038】
(共振器:誘電体窓)
共振器100は、更にセラミックス等から形成される誘電体窓21を有する。誘電体窓21は、中央部に穴部がある環状であり、その穴部にガス配管22の端部が貫通する。誘電体窓21の内周はガス配管22の端部側壁に隣接し、外周は筒状体40の内壁に隣接する。これにより、誘電体窓21は、ガス配管22と筒状体40との間を封止し、共振器100と第1解離空間30bとを仕切るとともに、電磁波を第1解離空間30bへ透過させるように構成される。
【0039】
誘電体窓21の上面内側であってガス配管22の側壁にはOリング等のシール部材38が設けられ、誘電体窓21の下面外側であって筒状体40の側壁にはOリング等のシール部材39が設けられる。これにより、真空空間である第1解離空間30bを大気空間である共振器100内の空間26から封止し、真空空間の第1解離空間30bの気密を保持する。
【0040】
(共振器:内部構造及び電源との接続構造)
共振器100の供給路36の基端は、整合器41を介して電源50に接続されている。電源50は、電磁波の発生器であり、VHF帯以上の電磁波を供給するように構成されている。整合器41は、インピーダンス整合回路を有する。インピーダンス整合回路は、電源50の負荷のインピーダンスを、電源50の出力インピーダンスに整合させるように構成される。インピーダンス整合回路は、可変インピーダンスを有する。インピーダンス整合回路は、例えばπ型の回路である。電磁波の供給路36からガス活性化部2に導入された電磁波は、共振器100にて共振し、共振器100の下方の第1解離空間30bに高いエネルギー効率で供給される。
【0041】
共振器100の内部の少なくとも一部には、誘電体31が埋め込まれている。本実施形態では、共振器100の内部は、共振器100内の空間26を除き誘電体31で充填されている。具体的には、誘電体31は、共振器100の上部のカバー導体44の直下から鍔部22fまでと、電磁波の供給路36の内導体36a及び外導体36bの間に充填されている。誘電体31は、電磁波の波長を短縮するために設けられている。共振器100は、第1解離空間へVHF帯以上の電磁波を供給するように構成される。誘電体31は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Poly Tetra Fluoro Ethylene)である。
【0042】
誘電体31の下端は、鍔部22fの下面の鉛直方向における位置と同一であってもよい。加えて、空間26も誘電体31で充填してもよい。
【0043】
[ガス活性化部の詳細]
図1に加え、図2図3を参照してガス活性化部2の構成について更に説明する。鍔部22fの下方には、共振器100と第1解離空間30bとの間を仕切る誘電体窓21が設けられている。誘電体窓21の下は第1解離空間30bである。誘電体窓21よりも上の空間は大気圧であり、誘電体窓21よりも下の空間は真空圧である。つまり、共振器100内は大気圧であり、第1解離空間30b内は真空圧である。
【0044】
第1解離空間30bの横断面視形状は筒状体であり、第1解離空間30bは、共振器100の内径とほぼ同一の直径を有する。
【0045】
図2の矢印に示すように、電磁波(例えば、500MHzのUHF波)は、供給路36から共振器100内を伝搬する。伝搬中の電磁波は共振器100内で共振し、誘電体窓21を透過して第1解離空間30bまで伝搬し、誘電体窓21の直下でガスを解離するエネルギーとして機能し、第1解離空間30bに供給されたガスのプラズマを生成させる。
【0046】
図2中に電界Eを示す。筒状体40は、共振器100内のカバー導体44の下面において電磁波の電界Eは最小(0[V])になり、誘電体窓21の上面において最大(Max[V])になるように構成される。つまり、カバー導体44の下面において電磁波は節となり、誘電体窓21の上面において電磁波は腹となる。このようにして誘電体窓21の上面において電界を最大にすることで第1解離空間30bの内部でのプラズマ着火性を向上させ、また、エネルギー効率が高くなる状態を作り出している。
【0047】
つまり、誘電体窓21の上面において電界Eが最大になるため、共振器100内で共振した電磁波は、高いエネルギー効率で第1解離空間30bに供給される。小型シャワーヘッド23は、ガス配管22の中心部の先端にシャワー状に形成され、小型シャワーヘッド23のガス孔23aの出口で電子密度の高いプラズマPを生成できるように構成されている。第1ガスを小型シャワーヘッド23下の第1解離空間30bの中央部領域でプラズマ化させ、プラズマを生成する。これにより、第1解離空間30bにおいて高解離状態の第1ガスのプラズマPが生成される。
【0048】
波長の短い電磁波をシャワーヘッド20に直接供給し、シャワーヘッド20内でガスを解離させるとプラズマが不均一になり易い。これに対して、本実施形態では、第1解離空間30bをプラズマ生成空間にして第1解離空間30bで表面波プラズマを生成し、電磁波の電界により第1ガスを高解離させる。
【0049】
これによれば、第1解離空間30bをプラズマ生成空間として機能させ、シャワーヘッド20に供給される前の段階で第1ガスを効率よく十分に解離させた後、第1ガスの活性種をシャワーヘッド20に導入する。
【0050】
第2解離空間30eは、第1解離空間30bにて高解離させた第1ガスと、低解離した(または、解離していない)第2ガスとを合流させ、これらのガスのプラズマを生成するプロセス空間である。第2解離空間30eでは、高周波電源60から供給される高周波により第1ガス及び第2ガスを解離させる。
【0051】
図4はプラズマ電子密度の一例を示す図である。図4の横軸は誘電体窓の中心を0として中心からの半径(距離)を示し、縦軸は第1解離空間30bにて生成されたプラズマ電子密度を示す。第1解離空間30bへ供給する電磁波のパワーを100W、200W、400Wとする。
【0052】
図4(a)は本実施形態に係る誘電体窓21の形状、すなわち環状であって中央からガスを供給する場合に誘電体窓21の下方で生成されるプラズマ電子密度(Ne)を示す。図4(b)は参考例に係る誘電体窓の形状、すなわち円盤状の場合に誘電体窓の下方で生成されるプラズマ電子密度(Ne)を示す。
【0053】
環状の誘電体窓21の場合、中心部に配置された小型シャワーヘッド23の下面(ガス孔23aが開口する面)の金属部分にもプラズマシースが形成される。これにより、金属部分のプラズマシース内を電磁波の表面波が伝搬することができるようになる。係る状態では周囲に配置された誘電体窓21から中心部の小型シャワーヘッド23の下面に電磁波が集まってくる。このため、環状の誘電体窓21の中央にてエネルギーが集中し電界は高くなる。
【0054】
この結果、環状の誘電体窓21の下方でプラズマを生成すると、図4(a)に示すように誘電体窓21の中心部のプラズマ電子密度(Ne)が最も高くなる。一方、円盤状の誘電体窓の下方でプラズマを生成すると、誘電体窓の全面にエネルギーが分散する。このため、図4(b)に示すように誘電体窓の中心部におけるプラズマ電子密度は図4(a)の本実施形態の場合よりも低くなり、プラズマ電子密度の頂部がフラットになる。
【0055】
よって、本実施形態に係る誘電体窓21の形状によれば、小型シャワーヘッド23から第1解離空間30bの中心部に第1ガスを流し、エネルギーの高い中心部でガスをプラズマ化することで、効率的に第1ガスを高解離させることができる。
【0056】
図2に戻り、誘電体窓21の第1解離空間30bに露出する面(下面)は環状の凹部21aを有する。誘電体窓21の厚みを薄くすることで電磁波が凹部21aを通り難くすることができる。これにより、小型シャワーヘッド23の金属部分のシース内を電磁波の表面波が通るときの電界をより強くすることができ、更にプラズマ密度の高いプラズマを生成できる。ただし、誘電体窓21の下面に凹部21aを設けず、下面の形状をフラットにしてもよい。
【0057】
小型シャワーヘッド23の側面の金属部分に電界が伝わらないようにするため、凹部21aの側面21bは小型シャワーヘッド23の側壁を保護するように小型シャワーヘッド23に沿って小型シャワーヘッド23の端部まで設けられる。凹部21aの側面21cは筒状体40の凸部40aを保護するように筒状体40の凸部40aに沿って凸部40aの端部まで設けられる。
【0058】
以上説明したプラズマ処理装置1では、シャワーヘッド20の上流側にプラズマ生成空間としての第1解離空間30bを設ける。そして、第1解離空間30bにおいて第1ガスを解離させ、生成されたラジカル等のガスの活性種を、シャワーヘッド20を通って第2解離空間30eに供給する。第2解離空間30eに到達した第1ガスは再結合励起状態であったりするため、VHF帯以上の電磁波よりも周波数の低い高周波のエネルギーにより容易に再解離させることができる。これによりVHF帯以上の電磁波の波長の短さに起因したプラズマプロセスの不均一を回避しつつ、VHF帯以上の電磁波の特徴である高効率なラジカル生成能力を利用して、プラズマプロセスの均一性の向上を図ることができる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態のプラズマ処理装置によれば、プラズマプロセスの均一性の向上を図ることができる。
【0060】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…プラズマ処理装置
2…ガス活性化部
10…チャンバ
18…基板支持部
20…シャワーヘッド
21…誘電体窓
22…ガス配管
23…小型シャワーヘッド
30b…第1解離空間
30d…拡散室
30e…第2解離空間
40…筒状体
100…共振器
図1
図2
図3
図4