(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020623
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B41J2/01 213
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126093
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】羽田 篤史
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA08
2C056EB58
2C056EC14
2C056EC36
2C056EC71
2C056EC72
2C056EC74
2C056ED05
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA07
2C056HA12
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】インクの吐出不良によるノズル抜けが発生した際に、記録媒体に形成される画像に発生する白スジ、別のノズルによる補間により生じる画像の色ムラ等の視認性を低減することが可能な液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】本発明は、記録部および記録媒体を副走査方向と交差する主走査方向に相対移動させながら記録素子から記録媒体に液体を吐出させる主走査制御と、記録部および記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査制御とを交互に実行して、記録媒体の副走査方向における各位置での少なくとも2回の主走査制御に応じて少なくとも2つの記録素子から液体を吐出可能に記録部を制御して記録媒体に画像を記録させる記録制御部と、を備え、記録制御部は、主走査方向における複数の領域で互いに異なるマスクパターンに基づいて、複数の副記録素子群のそれぞれから液体を吐出させる主走査制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数の記録素子を有する記録ヘッドが副走査方向に延びて配置され、前記複数の記録素子のうち少なくとも一部により副記録素子群が構成され、前記記録ヘッドの前記副記録素子群の前記記録素子により、前記記録ヘッドの配置に応じた前記副走査方向における幅内で記録媒体に対して液体を吐出する記録部と、
前記記録部および前記記録媒体を前記副走査方向と交差する主走査方向に相対移動させながら前記記録素子から前記記録媒体に液体を吐出させる主走査制御と、前記記録部および前記記録媒体を前記副走査方向に相対移動させる副走査制御とを交互に実行して、前記記録媒体の前記副走査方向における各位置での少なくとも2回の前記主走査制御に応じて少なくとも2つの前記記録素子から液体を吐出可能に前記記録部を制御して前記記録媒体に画像を記録させる記録制御部と、を備え、
前記記録制御部は、前記主走査方向における複数の領域で互いに異なるマスクパターンに基づいて、複数の前記副記録素子群のそれぞれから液体を吐出させる前記主走査制御を行う、液体吐出装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドにおける前記マスクパターンは、前記副走査方向における複数の前記領域のそれぞれに設定されており、前記主走査方向における一方の前記領域と他方の前記領域とを比べた場合、前記副走査方向における複数の前記領域のうちの一部で入れ替わる、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドにおける前記マスクパターンは、前記副走査方向において複数の前記領域のうちで平均的な打ち込み量が相対的に大きい前記領域で入れ替える、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記主走査方向における前記領域の列のうち第1列に設定される前記マスクパターンとは別の前記マスクパターンが、前記列のうち前記第1列に隣接する第2列に設定されている、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記マスクパターンは、前記主走査方向における前記領域の列のうち隣接する列間において、互いに異なる前記領域で入れ替わる、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、前記副走査方向において分割された複数の副記録ヘッドを有する、請求項1から5のいずれか一に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を吐出する複数の記録素子を有する記録ヘッドが副走査方向に延びて配置され、前記複数の記録素子のうち少なくとも一部により副記録素子群が構成され、前記記録ヘッドの前記副記録素子群の前記記録素子により、前記記録ヘッドの配置に応じた前記副走査方向における幅内で記録媒体に対して液体を吐出する記録部を備える液体吐出装置で実行される液体吐出方法であって、
記録制御部が、
前記記録部および前記記録媒体を前記副走査方向と交差する主走査方向に相対移動させながら前記記録素子から前記記録媒体に液体を吐出させる主走査制御と、前記記録部および前記記録媒体を前記副走査方向に相対移動させる副走査制御とを交互に実行して、前記記録媒体の前記副走査方向における各位置での少なくとも2回の前記主走査制御に応じて少なくとも2つの前記記録素子から液体を吐出可能に前記記録部を制御して前記記録媒体に画像を記録させる工程と、
前記主走査方向における複数の領域で互いに異なるマスクパターンに基づいて、複数の前記副記録素子群のそれぞれから液体を吐出させる前記主走査制御を行う工程と、
を含む、液体吐出方法。
【請求項8】
液体を吐出する複数の記録素子を有する記録ヘッドが副走査方向に延びて配置され、前記複数の記録素子のうち少なくとも一部により副記録素子群が構成され、前記記録ヘッドの前記副記録素子群の前記記録素子により、前記記録ヘッドの配置に応じた前記副走査方向における幅内で記録媒体に対して液体を吐出する記録部を備える液体吐出装置を制御するコンピュータを、
前記記録部および前記記録媒体を前記副走査方向と交差する主走査方向に相対移動させながら前記記録素子から前記記録媒体に液体を吐出させる主走査制御と、前記記録部および前記記録媒体を前記副走査方向に相対移動させる副走査制御とを交互に実行して、前記記録媒体の前記副走査方向における各位置での少なくとも2回の前記主走査制御に応じて少なくとも2つの前記記録素子から液体を吐出可能に前記記録部を制御して前記記録媒体に画像を記録させる記録制御部、として機能させ、
前記記録制御部は、前記主走査方向における複数の領域で互いに異なるマスクパターンに基づいて、複数の前記副記録素子群のそれぞれから液体を吐出させる前記主走査制御を行う、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドと、記録媒体と、を相対移動させながら記録媒体上にインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置(液体吐出装置の一例)が知られている。このようなインクジェット記録装置において、記録ヘッドを主走査方向に移動させながらノズルから記録媒体上にインクを吐出する主走査動作と、記録ヘッドまたは記録媒体を副走査方向に移動させる副走査動作と、を交互に繰り返し行い画像を形成する技術が知られている。
【0003】
ところで、インクジェット記録装置には、記録ヘッドへのダメージ等により発生するノズルからのインクの吐出不良を別のノズルで補間することで、記録媒体に形成される画像に発生する白スジを低減させる技術が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、ノズルからのインクの吐出不良を検知するシステムが複雑であること、インクの吐出不良を別のノズルで補間する方式では、記録媒体に形成される画像の色ムラおよび粒状感を悪化させる場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、インクの吐出不良によるノズル抜けが発生した際に、記録媒体に形成される画像に発生する白スジ、別のノズルによる補間により生じる画像の色ムラ等の視認性を低減することが可能な液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、液体を吐出する複数の記録素子を有する記録ヘッドが副走査方向に延びて配置され、複数の記録素子のうち少なくとも一部により副記録素子群が構成され、記録ヘッドの副記録素子群の記録素子により、記録ヘッドの配置に応じた副走査方向における幅内で記録媒体に対して液体を吐出する記録部と、記録部および記録媒体を副走査方向と交差する主走査方向に相対移動させながら記録素子から記録媒体に液体を吐出させる主走査制御と、記録部および記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査制御とを交互に実行して、記録媒体の前記副走査方向における各位置での少なくとも2回の主走査制御に応じて少なくとも2つの記録素子から液体を吐出可能に記録部を制御して記録媒体に画像を記録させる記録制御部と、を備え、記録制御部は、主走査方向における複数の領域で互いに異なるマスクパターンに基づいて、複数の副記録素子群のそれぞれから液体を吐出させる主走査制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インクの吐出不良によるノズル抜けが発生した際に、記録媒体に形成される画像に発生する白スジ、別のノズルによる補間により生じる色ムラ等の視認性を低減することを可能とする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成システムが有する液体吐出装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置が有するヘッドユニットの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置がコントローラユニットの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、一般的な作像システムにおける画像の形成処理の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置における画像の記録処理の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置における画像の記録処理の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態にかかる液体吐出装置における画像の記録処理の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態にかかる液体吐出装置における画像の記録処理の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラムを適用した画像形成システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成システムが有する液体吐出装置の斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる液体吐出装置10は、用紙等の印刷対象(記録媒体の一例)101を載置するプラテン15と、左右の側板18a,18bと、ガイドロッド19と、ガイドレール29と、キャリッジ200と、照射ユニット400(
図3参照)と、を備えている。
【0011】
これらのうち、キャリッジ200は、内部にヘッドユニット300K、300C、300M、300Y(
図2参照)を備えている。ヘッドユニット300Kは、ブラック(K)のインクを吐出し、ヘッドユニット300Cはシアン(C)のインクを吐出する。また、ヘッドユニット300Mは、マゼンタ(M)のインクを吐出し、ヘッドユニット300Yは、イエロー(Y)のインクを吐出する。なお、以下では、区別しない場合はヘッドユニット300K、300C、300M、300Yをヘッドユニット300(
図3参照)と総称して表記する。
【0012】
キャリッジ200は、左右の側板18a,18bに架け渡されたガイドロッド19に支持されてX方向(主走査方向)に移動可能であり、また、昇降機構によってZ方向(上下方向)にも移動可能になっている。
【0013】
さらに、キャリッジ200、ガイドロッド19、および側板18a,18bは、一体となってプラテン15の下部に設けられたガイドレール29に沿ってY方向(副走査方向)にも移動できる。
【0014】
照射ユニット400(
図3参照)は、キャリッジ200の印刷対象101に対向する側に設けられ、ヘッドユニット300(
図3参照)から吐出されて印刷対象101上に着弾したインクに紫外線を照射する。紫外線の照射で印刷対象101上のインクは硬化する。このような照射ユニット400(
図3参照)は、UV光を照射するUV照射ランプにより構成することができる。
【0015】
図1では、主走査方向および副走査方向にキャリッジ200が移動可能な構成例を示したが、ヘッドユニット300(
図3参照)と印刷対象101を主走査方向および副走査方向に相対移動させることができれば、これに限定されるものではない。例えば、キャリッジ200を主走査方向に移動させ、印刷対象101を副走査方向に移動させる構成であってもよいし、また、印刷対象101を主走査方向および副走査方向に移動させる構成であってもよい。
【0016】
次に、ヘッドユニット300の構成を、
図2を参照して説明する。
図2は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置が有するヘッドユニットの構成の一例を示す図であり、
図1におけるキャリッジ200を印刷対象101側(下側)からみた図である。
【0017】
図2に示すように、キャリッジ200内には、ヘッドユニット300Kと、ヘッドユニット300Cと、ヘッドユニット300Mと、ヘッドユニット300Yが、主走査方向に配列して設けられている。
【0018】
ヘッドユニット300Kは、Kインクを吐出する記録ヘッドとして、副走査方向において3つに分割された副記録ヘッド301K、302K、303Kを副走査方向の異なる位置に配置している。また、記録ヘッドに含まれる副記録ヘッド301K、302K、303Kのそれぞれは、副走査方向に配列された複数のノズル(記録素子の一例)を備えている。すなわち、ヘッドユニット300Kは、副走査方向において分割された複数の副記録ヘッド301K,302K,303Kを有する。
【0019】
図2に示すように、副記録ヘッド302Kは、副記録ヘッド301K、303Kに対して主走査方向にわずかにずらして配置され、副記録ヘッド301K、302K、303Kは、副走査方向にオーバーラップするように配置されている。換言すると、副記録ヘッド301K、302K、および303Kは、千鳥状に配置されている。このように配置することで副走査方向における記録ヘッド間でのノズルの欠落を防いでいる。
【0020】
ヘッドユニット300C、300M、300Yの構成も、吐出するインクの色のみが異なり、他はヘッドユニット300Kと同様であるため、これらの重複した説明を省略する。本実施の形態では、ヘッドユニット300(記録部の一例)は、記録ヘッドが副走査方向に延びて配置され、複数のノズルのうち少なくとも一部により副記録素子群を構成する。そして、ヘッドユニット300は、記録ヘッドの副記録素子群のノズルにより、記録ヘッドの配置に応じた副走査方向における幅内で印刷対象101に対してインクを吐出する。
【0021】
本実施の形態では、ヘッドユニット300は、それぞれ3つの記録ヘッドを副走査方向に配置する例を示すが、記録ヘッドの個数は3つに限定されるものではない。ヘッドユニット300は、2つまたは4つ以上の記録ヘッドを副走査方向に配置することもできる。また、記録ヘッドとして、副走査方向に分割されない単一の記録ヘッドを用いることも可能である。
【0022】
ヘッドユニット300における各記録ヘッドは、圧力発生部としての圧電素子を備え、駆動信号に応じて収縮し、収縮に伴う圧力変化によってインク(液体の一例)を吐出する。
【0023】
本実施の形態におけるインクは、UV硬化性のものであり、メタクリレート系モノマーを含むインク等が挙げられる。メタクリレート系モノマーは皮膚感さ性が比較的弱く、また硬化収縮の度合いが大きいという特性がある。
【0024】
次に、液体吐出装置10のハードウェア構成を説明する。
図3は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
図3に示すように、液体吐出装置10は、コントローラユニット3と、検知群4と、搬送ユニット100と、キャリッジ200と、ヘッドユニット300と、照射ユニット400と、メンテナンスユニット500とを備えている。
【0026】
これらのうち、コントローラユニット3は、ユニット制御回路31と、メモリ32と、CPU(Central Processing Unit)33と、I/F(Interface)34と、を備えている。ここで、
図3に破線で囲って示したように、コントローラユニット3と照射ユニット400とを含み、印刷対象101上のインクを硬化させるための硬化装置を構成できる。
【0027】
I/F34は、液体吐出装置10と外部装置であるPC(Personal Computer)2とを接続するためのインタフェースである。液体吐出装置10とPC2との接続形態はどのようなものであってもよく、ネットワークを介した接続や通信ケーブルで両者を直接接続する形態等で接続できる。
【0028】
CPU33は、メモリ32を作業領域に用いて、液体吐出装置10の各ユニットを、ユニット制御回路31を介して制御する。具体的には、CPU33は、PC2から受信する画像データおよび検知群4により検知されたデータに基づいて、各ユニットを制御し、印刷対象101上に画像を記録する。
【0029】
検知群4は、キャリッジ200の主走査方向の位置を検知するエンコーダセンサ等の液体吐出装置10に備えられている各種センサである。
【0030】
PC2には、プリンタドライバがインストールされており、このプリンタドライバにより画像データから液体吐出装置10に送信される画像データが生成される。画像データは、液体吐出装置10のキャリッジ200等を動作させるコマンドデータと、記録対象とする画像に関する画素データとを含んで構成されている。
【0031】
搬送ユニット100は、印刷対象101を搬送させるための搬送機構を備えるユニットである。
【0032】
メンテナンスユニット500は、ヘッドユニット300における各記録ヘッドの吐出機能の維持回復機構を備えている。維持回復機構は、液体吐出装置10が記録を行わない期間に記録ヘッドのノズルを乾燥から保護するためにノズル面を覆うためのキャップを含んでいる。
【0033】
このキャップは、純粋にノズル面を覆い、乾燥から保護するためだけの機能を備えた保湿キャップと、保湿キャップの機能に加え、吸引ポンプに接続されて、記録ヘッドから増粘したインクを吸引する吸引キャップの2種類を含んでいる。
【0034】
次に、液体吐出装置10による記録媒体への画像記録動作について説明する。
【0035】
まず、キャリッジ200は、CPU33からの駆動信号に基づいて、Y軸方向(副走査方向)に移動し、画像を記録するための初期位置に停止する。
【0036】
続いて、キャリッジ200は、CPU33からの駆動信号に基づく昇降機構の駆動により、ヘッドユニット300によるインクの吐出に適した高さに移動する。この高さは、例えば、印刷対象101と記録ヘッドのノズルとの間のギャップが1mmになる高さ等である。ヘッドユニット300の高さを検出する高さセンサの検出信号に基づき、昇降機構を駆動制御すると好適である。
【0037】
続いて、キャリッジ200は、CPU33からの駆動信号に基づいて、主走査方向に往復移動し、この往復移動の際に、ヘッドユニット300は、CPU33からの駆動信号に基づきインクを吐出する。これにより、印刷対象101上には主走査方向への1走査分の画像が記録される。
【0038】
続いて、キャリッジ200は、CPU33からの駆動信号に基づいて、副走査方向に1走査分移動する。
【0039】
以下、記録媒体への画像の記録が完了するまで、1走査分の画像を記録する主走査制御と、キャリッジ200を副走査方向に1走査分移動させる副走査制御とが交互に行われる。
【0040】
そして、印刷対象101への画像の記録が完了すると、インクが平滑化される時間が経過するまで待機し、経過後に照射ユニット400からUV光が照射され、印刷対象101上のインクが硬化することで、印刷対象101に画像が定着する。
【0041】
次に、液体吐出装置10の備えるコントローラユニット3の機能構成について説明する。
図4は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置がコントローラユニットの機能構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、コントローラユニット3は、画像処理部410と、制御部30とを備えている。
【0042】
これらのうち、画像処理部410は、データ受理部411と、データ生成部412と、データ出力部413とを備えている。
【0043】
データ受理部411は、PC2から画像データを受理する。画像データは、形成する画像の形状、色等の情報である。
【0044】
データ生成部412は、データ受理部411で受理した画像データについて、CMYK変換処理や減階調処理、画像変換処理等の所定のデータ処理を行い、画像データに基づき、印刷対象101に記録するための記録データを生成する。データ出力部413は、生成された記録データを制御部30に出力する。
【0045】
また、制御部30は、記録部421と、印刷モード受理部422と、照射部423と、第1駆動部424と、第2駆動部425と、記録制御部426とを備えている。
【0046】
記録部421は、記録制御部426によって制御され、ヘッドユニット300にインクを吐出させるヘッド駆動部である。
【0047】
印刷モード受理部422は、印刷モードに関する情報を受理する。照射部423は、照射ユニット400による印刷対象101に対するUV光の照射を制御する。
【0048】
第1駆動部424は、キャリッジ200を主走査方向へ移動させる。また、第2駆動部425は、キャリッジ200を副走査方向へ移動させる。
【0049】
記録制御部426は、画像処理部410から記録データを受け付ける。記録制御部426は、受け付けた記録データに応じて、ヘッドユニット300における各記録ヘッドから印刷データの各画素に対応するインクを吐出するように、記録部421、第1駆動部424、第2駆動部425、および照射ユニット400を制御する。
【0050】
本実施の形態では、記録制御部426は、マスク設定部426aと、マスク記憶部426bと、を備えている。
【0051】
これらのうち、マスク設定部426aは、マスクの間引きパターン(以下、打ち順マスクパターンという)を所定の状態に設定し、メモリ32等により実現されるマスク記憶部426bに記憶させる。具体的には、マスク設定部426aは、一例として液体吐出装置10の管理者またはユーザがPC2のマウスやキーボード等の入力インタフェースを介して所定の状態に生成または編集した打ち順マスクパターンを、I/F34を介して入力し、マスク記憶部426bに記憶させる。
【0052】
本実施の形態では、記録制御部426は、マスク記憶部282から打ち順マスクパターンを取得し、マスク処理を実行する。ここで、マスク処理とは、印刷対象101への記録を許容する有効画素を指定するための打ち順マスクパターンを用いて、記録対象の画像データと打ち順マスクパターンとの論理積により、記録対象の画像データから有効画素のみを抽出した間引き画像データを生成する処理をいう。
【0053】
画像データに含まれる画素のうち、有効画素に該当する画素は、印刷対象101に記録される画素であり、有効画素に該当しない無効画素は、印刷対象101に記録されない画素である。従って、マスク処理により、元の画像データのうちの所定の画素が無効化されて間引かれた間引き画像データが得られる。
【0054】
記録制御部426は、間引き画像データに基づいて記録ヘッドにインクを吐出させることで、元の画像のうちの無効画素に対応する部分が間引かれた画像である間引き画像が印刷対象101に記録される。
【0055】
具体的には、記録制御部426は、主走査制御と、副走査制御と、を交互に実行して、印刷対象101の副走査方向における各位置での少なくとも2回の主走査制御に応じて少なくとも2つのノズルからインクを吐出可能にヘッドユニット300を制御する。これにより、記録制御部426は、印刷対象101に対して画像を記録する。
【0056】
ここで、主走査制御は、記録ヘッドおよび印刷対象101を主走査方向に相対移動させながらノズルから印刷対象101にインクを吐出させる制御である。また、副走査制御は、ヘッドユニット300および印刷対象101を副走査方向に相対移動させる制御である。すなわち、記録制御部426は、主走査制御と副走査制御をそれぞれ複数回実行させながら無効画素を相互に補間するように印刷対象101に間引き画像を記録し、記録された複数の間引き画像が合成されることで、印刷対象101に画像が記録される。
【0057】
また、記録制御部426は、主走査方向における複数の領域で互いに異なる打ち順マスクパターンに基づいて、複数の副記録素子群のそれぞれからインクを吐出させる主走査制御を実行する。これにより、吐出不良が発生したノズルに対して、該当ノズルの使用率の低い打ち順マスクパターンを適用させることで、印刷対象101に発生する白スジの視認性を低減することができる。
【0058】
本実施の形態では、打ち順マスクパターンは、記録ヘッド毎に設定されている。さらに、各記録ヘッドの打ち順マスクパターンは、副走査方向における複数の領域のそれぞれに設定されており、主走査方向における一方の領域と他方の領域とを比べた場合、副走査方向における複数の領域のうちの一部で入れ替わるものとする。これにより、印刷対象101の主走査方向の複数の領域に対して異なる打ち順マスクパターンが設定されるので、主走査方向に対する白スジの視認性を低減することができる。
【0059】
例えば、記録ヘッド毎に設定される打ち順マスクパターンは、副走査方向において複数の領域のうちで平均的な打ち込み量が相対的に大きい領域で入れ替わるものとする。これにより、打ち込み量が多く吐出不良が発生し易いノズルに対して、該当ノズルの使用率の低い打ち順マスクパターンを適用させることができるので、印刷対象101に発生する白スジの視認性を低減することができる。
【0060】
図5は、一般的な作像システムにおける画像の形成処理の一例を説明するための図である。
図6および
図7は、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置における画像の記録処理の一例を説明するための図である。次に、
図5~7を用いて、本実施の形態にかかる液体吐出装置10における画像の記録処理の一例について説明する。
【0061】
一般的な作像システムでは、打ち順マスクパターンというものを用いて画像を形成させている。打ち順マスクパターンとは、記録ヘッドが有する各ノズルの印字率(インク滴の打ち込み量)を制御するものである。例えば、打ち順マスクパターンは、印字率を段階的に変化させたり、インクを吐出するノズルをランダムに間引いたりすることで、形成される画像(印刷イメージ)にあらわれる特徴的なパターンやムラを軽減させることが可能である。
【0062】
一般的な作像システムでは、
図5の左図のように、記録ヘッドのノズル列に対して、副走査方向において両端に傾斜をもつ打ち順マスクパターンを適用させ、画像を形成させることがある。この場合、副走査方向の端部側のノズルの印字率(吐出回数)が減り、副走査方向の中央のノズルの印字率が上がる。しかしながら、この打ち順マスクパターンでは、
図5の右図のように、ノズル抜け(ノズルの吐出不良)が発生すると、主走査方向に対して白スジが顕著に現れ画質を悪化させてしまう。
【0063】
具体的には、一般的な作像システムにおいては、
図6に示すように、記録ヘッドのノズル列に対して、打ち順マスクパターンA1~A4のように複数のグループが形成されている。そして、一般的な作像システムでは、それぞれのグループが重なることで(互いに補完することで)、1つの画像が形成される。
【0064】
また、一般的な作像システムでは、それぞれのノズルのグループにおける打ち込み量を変えることで、画質品質が劣化し易い端部のノズルの使用率を低減することができる。例えば、一般的な作像システムでは、例えば、
図5に示すように、記録ヘッドのノズル列に対して、副走査方向において両端に傾斜を持たせることで、画像品質が劣化し易い端部のノズルの使用率を低減させることができる。
【0065】
その一方で、一般的な作像システムでは、打ち込み量が多いグループに対応するノズル列が抜けてしまうと、白スジが目立ちやすくなる。例えば、
図6の左図に示すように、一般的な作像システムでは、主走査方向に同じ打ち込み量分布をもつ打ち順マスクパターンが連続すると、副走査方向の中央のノズル列が抜けると、主走査方向に対して白スジが顕著に現れてしまう。
【0066】
一方、本実施の形態にかかる液体吐出装置10では、記録制御部426は、
図6の右図に示すように、印刷対象101の副走査方向における各位置での2回の主走査制御において使用する打ち順マスクパターンを変える。例えば、記録制御部426は、
図6の右図に示すように、印刷対象101の副走査方向における中央での2回の主走査制御において使用する打ち順マスクパターンA2と打ち順マスクパターンA3とを入れ替える。
【0067】
これにより、
図7に示すように、記録ヘッドのノズルのうち吐出不良が発生したノズルに対応する打ち順マスクパターンA2は、吐出不良が発生したノズルの使用率(打ち込み量)が高い。そのため、主走査方向に対して、打ち順マスクパターンA2を使用し続けると白スジの視認性が高くなる。しかしながら、本実施の形態にかかる液体吐出装置10によれば、吐出不良が発生したノズルに対して、該当ノズルの使用率の低い打ち順マスクパターンA3を適用させることで、印刷対象101に発生する白スジの視認性を低減することができる。
【0068】
すなわち、本実施の形態では、記録制御部426は、
図6の右図に示すように、記録ヘッドのノズルのうち副走査方向の中央のノズル列に対応する打ち順マスクパターンを、主走査方向における複数の領域で入れ替える。これにより、
図7に示すように、ノズル抜け(記録ヘッドのノズルのインクの吐出不良)が発生しても、印刷対象101に発生する白スジの連続性をなくすことができる。その結果、印刷対象101に記録される画像において白スジが異常として認知され難くなり、当該白スジの視認性を低減できる。
【0069】
例えば、記録制御部426は、記録ヘッドのノズルのうち、打ち順マスクパターンを入れ替えるノズルのグループを、当該グループの打ち込み量に応じて決定しても良い。例えば、
図5に示す例においては、記録ヘッドのノズルのうち、副走査方向の中央のノズルの打ち込み量が、多くなる。そして、印刷対象101に発生する白スジの視認性は、ノズルの打ち込み量に比例しており、ノズルの打ち込み量が多くなるに従って、白スジの視認性が高くなる。
【0070】
そのため、記録制御部426は、記録ヘッドのノズルのうち、打ち込み量が多いノズルのグループ(副記録素子群)に対して用いる打ち順マスクパターン(例えば、打ち順マスクパターンA2,A3)を入れ替える。一方、記録制御部426は、記録ヘッドのノズルのうち、打ち込み量が少ないノズルのグループ(副記録素子群)に対して用いる打ち順マスクパターン(例えば、打ち順マスクパターンA1,A4)は入れ替えない。
【0071】
このように、第1の実施の形態にかかる液体吐出装置10によれば、主走査方向における複数の領域で互いに異なる打ち順マスクパターンに基づいて、複数の副記録素子群のそれぞれからインクを吐出させる主走査制御を実行する。これにより、吐出不良が発生したノズルに対して、該当ノズルの使用率の低い打ち順マスクパターンを適用させることで、印刷対象101に発生する白スジの視認性を低減することができる。
【0072】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、主走査方向における領域の列のうち隣接する列において、互いに異なる打ち順マスクパターンが設定されている例である。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0073】
図8は、第2の実施の形態にかかる液体吐出装置における画像の記録処理の一例を説明するための図である。本実施の形態では、記録制御部426は、
図8に示すように、印刷対象101の主走査方向における領域の列のうち第1列に設定される打ち順マスクパターンとは別の打ち順マスクパターンを、当該列のうち第1列に隣接する第2列に設定する。これにより、印刷対象101の主走査方向の複数の領域に対して異なる打ち順マスクパターンが設定されるので、主走査方向に対する白スジの視認性を低減することができる。
【0074】
例えば、記録制御部426は、
図8に示すように、印刷対象101の主走査方向における領域の第1列に対して、打ち順マスクパターンA1~A4を設定する。一方、記録制御部426は、
図8に示すように、印刷対象101の主走査方向における領域の列のうち第1列に隣接する第2列に対して、打ち順マスクパターンA1~A4とは異なる打ち順マスクパターンB1~B4を設定する。
【0075】
図9は、第2の実施の形態にかかる液体吐出装置における画像の記録処理の他の例を説明するための図である。本実施の形態では、記録制御部426は、
図9に示すように、印刷対象101の主走査方向における領域の列のうち隣接する列間において、互いに異なる領域で打ち順マスクパターンを入れ替えることも可能である。
【0076】
例えば、記録制御部426は、印刷対象101の主走査方向における領域の列のうち、図面に向かって左側から2列目においては、1列目と比較して、打ち順マスクパターンA2と打ち順マスクパターンA5とを入れ替える。また、例えば、記録制御部426は、印刷対象101の主走査方向における領域の列のうち、図面に向かって左側から3列においては、2列目と比較して、打ち順マスクパターンA3と打ち順マスクパターンA4とを入れ替える。
【0077】
また、記録制御部426は、
図9に示すように、記録ヘッドのノズルからのインクの吐出の制御に用いる打ち順マスクパターンを6つの打ち順マスクパターンA1~A6に増やしても良い。そして、記録制御部426は、
図9に示すように、印刷対象101の主走査方向に隣接する列間において、互いに異なる領域で打ち順マスクパターンを入れ替える組合せを増やすことも可能である。
【0078】
このように、第2の実施の形態にかかる液体吐出装置10によれば、印刷対象101の主走査方向における領域の列のうち第1列に設定される打ち順マスクパターンとは別の打ち順マスクパターンを、当該列のうち第1列に隣接する第2列に設定する。これにより、印刷対象101の主走査方向の複数の領域に対して異なる打ち順マスクパターンが設定されるので、主走査方向に対する白スジの視認性を低減することができる。
【0079】
なお、本実施の形態の液体吐出装置10で実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込まれて提供される。本実施の形態の液体吐出装置10で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0080】
さらに、本実施の形態の液体吐出装置10で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の液体吐出装置10で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0081】
本実施の形態の液体吐出装置10で実行されるプログラムは、上述した各部(画像処理部410、制御部30)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU33(プロセッサの一例)が上記ROM等のメモリ32からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、画像処理部310および制御部30が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0082】
3 コントローラユニット
4 検知群
10 液体吐出装置
30 制御部
31 ユニット制御回路
32 メモリ
33 CPU
34 I/F
100 搬送ユニット
200 キャリッジ
300K,300C,300M,300Y ヘッドユニット
410 画像処理部
411 データ受理部
412 データ生成部
413 データ出力部
421 記録部
422 印刷モード受理部
423 照射部
424 第1駆動部
425 第2駆動部
426 記録制御部
426a マスク設定部
426b マスク記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】