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特開2023-20689ベルトコンベア用潤滑剤組成物及びベルトコンベアの潤滑性向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020689
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ベルトコンベア用潤滑剤組成物及びベルトコンベアの潤滑性向上方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/00 20060101AFI20230202BHJP
   C10M 145/26 20060101ALI20230202BHJP
   C10M 129/08 20060101ALI20230202BHJP
   C10M 129/06 20060101ALI20230202BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20230202BHJP
   C10M 133/06 20060101ALI20230202BHJP
   C10M 135/36 20060101ALI20230202BHJP
   C10M 135/10 20060101ALI20230202BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230202BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
C10M173/00
C10M145/26
C10M129/08
C10M129/06
C10M107/02
C10M133/06
C10M135/36
C10M135/10
C10N40:04
C10N30:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126188
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(71)【出願人】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】草野 公雄
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BE03C
4H104BG06C
4H104BG19C
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104LA03
4H104PA02
(57)【要約】
【課題】
少ない使用量でも潤滑性に優れ、水で濡れているコンベアに対しても優れた耐水性を発揮し、潤滑性が低下しないベルトコンベア用潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】
ベルトコンベア用潤滑剤組成物は、(A)成分として炭化水素基の炭素数が12から32の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物よりなるノニオン界面活性剤、(B)成分として油性物質、(C)成分としてグリセリン、ポリアルキレングリコールから選択される1種以上のポリオール、(D)成分としてカチオン界面活性剤、(E)成分として炭素数16から24の脂肪族アルコール、(F)成分として水、を含有する水中油型乳化物よりなり、(A)成分と(E)成分の重量比(E)/(A)が0.02以上、4以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として炭化水素基の炭素数が12から32の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物よりなるノニオン界面活性剤、
(B)成分として油性物質、
(C)成分としてグリセリン、ポリアルキレングリコールから選択される1種以上のポリオール
(D)成分としてカチオン界面活性剤
(E)成分として炭素数16から24の脂肪族アルコール
(F)成分として水、
を含有する水中油型乳化物よりなり、
(A)成分と(E)成分の質量比(E)/(A)が0.02以上、4以下であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項2】
更に、(A)成分と(B)成分の質量比(B)/(A)が2.5以上、70以下、
(A)成分と(C)成分の質量比(C)/(A)が5以上、100以下、
(A)成分と(D)成分の質量比(D)/(A)が0.5以上、20以下である請求項1に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項3】
(A)成分がオクチルドデカノール又はデシルテトラデカノールから選択される1種以上の脂肪族分岐アルコールにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選択される1種以上のポリオキシアルキレン基が付加されたアルキレンオキシド付加物であり、
前記アルキレンオキシド付加物に含有されるポリオキシアルキレン基の重合度が10モル以上、37モル以下である請求項1又は2の何れかに記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項4】
(B)成分がポリアルファオレフィンである請求項1から3の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項5】
(D)成分が4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤であり、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、オクチルデシルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、ジヤシアルキルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C12-16)ジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩から選択される少なくとも1種以上を含有する請求項1から4の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項6】
(D)成分のカチオン界面活性剤が少なくとも1種のジアルキル(炭素数8以上、18以下)ジメチルアンモニウム塩を含有する請求項1から5の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項7】
(E)成分がセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコールから選択される1種以上である請求項1から6の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項8】
更に、(G)成分として、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンから選択される1種以上の防腐剤を含有し、
かつ、(A)成分と(G)成分の質量比(G)/(A)が0.05以上、7以下である請求項1から7の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項9】
更に、(H)成分としてロジンエトキシレート、芳香族スルホン酸又はその塩から選択される少なくとも1種以上を含有し、かつ、(A)成分と(H)成分の重量比(H)/(A)が0.02上、2以下である請求項1から8の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物を(A)成分の濃度を0.005質量%以上0.2質量%以下とした処理液を、被搬送品を搬送するベルトコンベア上及び/又は被搬送品表面上に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【請求項11】
チューブ状のノズルを使用して前記処理液を滴下ないしは連続した流体として供給する請求項10に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【請求項12】
ホローコーン、フルコーン、フラットスプレー、広角スプレー、微細スプレーから選択されるスプレーノズルを使用して前記処理液をベルトコンベア上に噴霧して供給する請求項10に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【請求項13】
搬送物が、ポリエチレンテレフタレート製容器であり、ベルトコンベアのベルトが樹脂製である請求項10から12の何れか一項に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア用潤滑剤組成物及びベルトコンベア用潤滑剤組成物を用いたベルトコンベアの潤滑性向上方法に関し、更に詳細には、飲用水、清涼飲料、牛乳、ジュース、お茶、コーヒー、紅茶、乳飲料、炭酸飲料、ビール、酒類、ドリンク剤などの飲料品及び調味料、加工食品等の食品を容器へ充填し、又は包装する工程において、プラスチック製容器、紙製容器、金属製容器、ガラス製容器及びセラミック製容器等の移動搬送の際に用いられるベルトコンベア用の潤滑剤組成物及びベルトコンベアの潤滑性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述する飲料品及び食品等の容器には、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック製容器、紙製容器、金属製容器、ガラス製容器、セラミック製容器等が使用される。飲料製造工場におけるこれら容器への充填工程や包装工程において、連続的に大量の容器を移動搬送するために一般的にベルトコンベアが使用されている。このような工場においては、ベルトコンベアを連続運転させ、容器等の被搬送物を高速搬送することが一般的であるが、このとき容器同士あるいは容器とベルトコンベアとの接触面に発生する摩擦により、容器の変形や容器の転倒等がおこる場合があり、こうした障害を防ぐためにベルトコンベア用潤滑剤をベルトコンベア上等に塗布あるいは噴霧して、容器等の被搬送物とベルトコンベアとの間の摩擦係数を下げることが一般的である。
【0003】
従来のベルトコンベア用潤滑剤としては、界面活性剤の水溶液を用いることが一般的であった。例えば特許文献1には、(A)炭素数10~20のポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤の中から選択したHLBが16を超える少なくとも一種の界面活性剤と、(B)水と、(C)カチオン系界面活性剤及び/又は両性系界面活性剤とを含み、(A)の非イオン界面活性剤と、(C)のカチオン系界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を、重量比で5:1~1:30の割合で含む樹脂製コンベア用潤滑剤組成物が開示されている。
【0004】
少ない使用量で比較的長時間潤滑性を付与できる潤滑剤組成物として、特許文献2には非イオン型界面活性剤、アニオン系界面活性剤、脂肪族アルキルアミン類、両性界面活性剤等の界面活性剤の少なくとも1種と、高沸点溶媒及び水を含有する潤滑剤組成物が開示されている。
【0005】
潤滑性、耐水性に優れる潤滑剤として、特許文献3にはシリコーン油、ポリアルファオレフィン、流動パラフィンから選ばれる油性物質と、HLBが16以上である非イオン性乳化剤と、ポリオールとを含有する水中油型乳化物であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、(A)成分として炭化水素基の炭素数が12から32の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物よりなるノニオン界面活性剤、(B)成分として油性物質、(C)成分としてグリセリン、ポリアルキレングリコールから選択される1種以上のポリオール、(D)成分としてカチオン界面活性剤、(E)成分として水、を含有する水中油型乳化物よりなり、(A)成分と(B)成分の質量比(B)/(A)が、2以上、7以下、(A)成分と(C)成分の質量比(C)/(A)が1以上、20以下、(A)成分と(D)成分の質量比(D)/(A)が0.05以上、1以下であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4895572号
【特許文献2】特開2008-106253号公報
【特許文献3】特開2014-156521号公報
【特許文献4】特許6762792号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されているベルトコンベア用潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物をベルトコンベアに対して連続供給するか、短時間のインターバルで間欠的に供給する必要があり、長時間のインターバルで間欠的にコンベアに潤滑剤に供給した場合には十分な潤滑性、耐水性が得られなかった。
一方、特許文献2に記載されている潤滑剤組成物は、少ない使用量で比較的長時間潤滑性を付与できるが、耐水性が低く、飲料容器がリンサー、ウォーマー、パストライザー等を通過する際にシャワー上に噴霧された水又は温水が直接コンベアに飛散したり、ボトル外面に付着した後、水分がコンベア上に滴下したりすると、その水分によって潤滑成分が容易に除去されて潤滑性が低下するという問題があった。
また特許文献3に記載されているベルトコンベア用潤滑剤は、少ない使用量でも比較的長時間潤滑性を付与することができ、コンベア上に水が飛散したりボトル等から滴下しても潤滑成分が除去されにくいため、潤滑性が低下しにくく耐水性を有しているが、一方、ベルトコンベア用潤滑剤組成物とベルトコンベアの摩耗により発生した粉塵との混合物がベルトコンンベア表面や継ぎ目に蓄積した汚れとなり、被搬送容器によって当該汚れが擦られて剥離し、容器の底部に付着して容器を汚染する問題があった。
特許文献4に記載されているベルトコンベア用潤滑剤は少ない使用量で比較的長時間優れた潤滑性を付与することができ、更に摩耗による粉塵汚れの発生が少なく、粉塵汚れが生じた場合でも除去性に優れているが、水の持ち込みによって潤滑性が低下してしまう場合があり、十分な耐水性は得られなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は少ない使用量でも潤滑性及び耐水性に優れ、ベルトコンベアに適用した場合に摩耗による粉塵汚れの発生が少なく、更に粉塵汚れが生じた場合においても水洗浄による除去性に優れるベルトコンベア用潤滑剤組成物及びこれを用いたベルトコンベアの潤滑性向上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、(A)炭化水素基の炭素数12~32の脂肪族アルコールに酸化アルキレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤と、(B)油性物質と、(C)グリセリン、ポリアルキレングリコール等のポリオールと(D)カチオン界面活性剤と、(E)炭素数16から24の脂肪族アルコールと、(F)水を含有し、(A)成分と(E)成分の重量比が所定範囲に調整された水中油型乳化物をベルトコンベア用潤滑剤組成物として用いることによって、驚くべきことに、少ない使用量でも潤滑性に優れ、更に多量の水分で常時濡れているコンベアにおいても良好な潤滑性を示し且つ潤滑性が低下しにくくなるといった優れた耐水性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、
(1)(A)成分として炭化水素基の炭素数が12から32の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物よりなるノニオン界面活性剤、
(B)成分として油性物質、
(C)成分としてグリセリン、ポリアルキレングリコールから選択される1種以上のポリオール
(D)成分としてカチオン界面活性剤
(E)成分として炭素数16から24の脂肪族アルコール
(F)成分として水、
を含有する水中油型乳化物よりなり、
(A)成分と(E)成分の重量比(E)/(A)が0.02以上、4以下であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(2)更に、(A)成分と(B)成分の質量比(B)/(A)が2.5以上、70以下、(A)成分と(C)成分の質量比(C)/(A)が5以上、100以下、(A)成分と(D)成分の質量比(D)/(A)が0.5以上、20以下である上記(1)に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(3)(A)成分がオクチルドデカノール又はデシルテトラデカノールから選択される1種以上の脂肪族分岐アルコールにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選択される1種以上のポリオキシアルキレン基が付加されたアルキレンオキシド付加物であり、前記アルキレンオキシド付加物に含有されるポリオキシアルキレン基の重合度が10モル以上、37モル以下であるノニオン界面活性剤である上記(1)又は(2)の何れかに記載のベルトコンベア潤滑剤組成物、
(4)(B)成分がポリアルファオレフィンである上記(1)から(3)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(5)(D)成分が4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤であり、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、オクチルデシルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、ジヤシアルキルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C12-16)ジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩から選択される少なくとも1種以上を含有する上記(1)から(4)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(6)(D)成分のカチオン界面活性剤が少なくとも1種のジアルキル(炭素数8以上、18以下)ジメチルアンモニウム塩を含有する上記(1)から(5)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(7)(E)成分がセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコールから選択される1種以上である上記(1)から(6)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(8)更に、(G)成分として、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンから選択される1種以上の防腐剤を含有し、かつ、(A)成分と(G)成分の質量比(G)/(A)が0.05以上、7以下である上記(1)から(7)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(9)更に、(H)成分としてロジンエトキシレート、芳香族スルホン酸又はその塩から選択される少なくとも1種以上を含有し、かつ、(A)成分と(H)成分の重量比(H)/(A)が0.02上、2以下である上記(1)から(8)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(10)上記(1)~(9)の何れか一項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物を(A)成分の濃度を0.005質量%以上0.2質量%以下とした処理液を、被搬送品を搬送するベルトコンベア上及び/又は被搬送品表面上に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法、
(11)チューブ状のノズルを使用して上記処理液を滴下ないしは連続した流体として供給する上記(10)に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法、
(12)ホローコーン、フルコーン、フラットスプレー、広角スプレー、微細スプレーから選択されるスプレーノズルを使用して上記処理液をベルトコンベア上に噴霧して供給する上記(10)に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法、
(13)搬送物が、ポリエチレンテレフタレート製容器であり、ベルトコンベアのベルトが樹脂製である上記(10)から(12)の何れか一項に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、少ない使用量でも優れた潤滑性を示すとともに、非常に優れた耐水性を示すため、ベルトコンベアの搬送面に対し水が持ち込まれた場合にも潤滑性が低下し難い。また本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物を搬送面に付与することによって、被搬送品との摩耗により搬送面が削れて粉塵が発生するという問題が抑制される。更に本発明によれば、搬送面に粉塵が発生してしまった場合であっても、本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物の存在により当該粉塵の分散性が良く、塊状になり難いため、上記粉塵を水洗浄により除去し易いという効果が発揮される。
本発明のベルトコンベアの潤滑性向上方法は、上述する本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物による優れた効果を享受し、食品や飲料品の容器等の搬送に用いられるベルトコンベアの潤滑性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(A)成分のノニオン界面活性剤は下記一般式(1)で表される化合物である。
[化1]
R1-O-(R2O)m-H (1)
式中、R1は12~32の脂肪族炭化水素基を表し、具体的にはドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、イソオクタデシル基、ヘキシルデシル基、ヘプチルウンデシル基、オクチルドデシル基、デシルテトラデシル基、ドデシルヘキサデシル基、テトラデシルオクタデシル基等が挙げられる。これらのうち、得られる水中油型乳化物の安定性に優れ、かつ、潤滑性、耐水性、ベルトコンベアの摩耗防止性、粉塵汚れ洗浄性に優れることから、へキシルデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、イソオクタデシル基、デシルテトラデシル基が好ましく、デシルテトラデシル基がより好ましい。
R2Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、具体的にはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられるが、経済性の点でエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが好ましい。またエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの重合形態としては単独重合、共重合のどちらでも良く、共重合の形態としてはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム共重合、ブロック共重合、ランダム/ブロック共重合等何れでも良い。
mはアルキレンオキシ基の平均付加モル数であり、重合度は10モル以上、37モル以下が好ましく、20モル以上、37モル以下がより好ましい。重合度が10モル未満であると潤滑剤組成物の安定性が低下する場合があり、重合度が37モルを超えると原料自体の凝固点が高くなる為ハンドリング性が低下し、製造が困難となる場合がある。尚、アルキレンオキシ基としてエチレンオキシド及びプロピレンオキシドを含む場合には、これらの重合度の合計が、10モル以上、37モル以下であることが好ましく、20モル以上、37モル以下であることがより好ましい。
(A)成分のノニオン界面活性剤を構成するポリオキシアルキレン基(-(R2O)m-)は、少なくともエチレンオキシドを含むアルキレンオキシドを付加して形成されたものが好ましく、ポリオキシアルキレン基におけるオキシエチレン基の占める割合が、100モル%以下であることが好ましく、潤滑剤組成物がより優れた耐水性を有するために85モル%以下であることがより好ましく、65モル%以下であることが特に好ましい。ポリオキシアルキレン基がエチレンオキシドと他のアルキレンオキシドとを付加して構成される場合、エチレンオキシドと他のアルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組み合わせであって、エチレンオキシドが上記の割合(モル%)となるように両者の配合比を調整して付加すると良い。
【0014】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物の安定性を維持するという観点からは、(A)成分がオクチルドデカノール又はデシルテトラデカノールから選択される1種以上の脂肪族分岐アルコールに、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選択される1種以上のポリオキシアルキレン基が付加されたアルキレンオキシド付加物であることが好ましく、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドがいずれも付加されていることがより好ましい。
ベルトコンベア用潤滑剤組成物の安定性を維持し、かつ原料自体の凝固点が高くなることによるハンドリング性の低下を回避するという観点からは、上記アルキレンオキシド付加物に含有されるポリオキシアルキレン基の重合度が10モル以上、37モル以下であるノニオン界面活性剤であることがより好ましい。
【0015】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(B)成分の油性物質は、水に難溶解であり、かつ水と混合すると分離する物質を何れも使用することが出来るが、特にエステル油、ポリアルファオレフィン、流動パラフィン、鉱油、パーフルオロポリエーテル、ジメチルシリコーン油等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせても良いが、潤滑性の点からポリアルファオレフィン、ジメチルシリコーン、流動パラフィンが好ましく、ベルトコンベアの摩耗により粉塵汚れが生じた際、水洗浄による除去性に優れることからポリアルファオレフィンがより好ましい。ポリアルファオレフィンとしては、40℃での粘度が5mm/s以上、50mm/s以下のものが好ましく、より好ましくは5mm/s以上、20mm/s以下、更に好ましくは5mm/s以上、8mm/s以下のものである。このようなポリアルファオレフィンとしては、例えばChevron Phillips社製のSynfloid PAO 2cSt、Synfloid PAO 2.5cSt、Synfloid PAO 4cSt、Synfloid PAO 5cSt、(何れも商品名)等が挙げられる。
また、ジメチルシリコーン油としては、25℃での粘度が5mm/s以上、500mm/s以下のものが好ましく、より好ましくは5mm/s以上、200mm/s以下である。このようなジメチルシリコーン油としては、例えば東レダウコーニング社製のSH200 FLUID 5csやSH200 FLUID 350cs(何れも商品名)等が挙げられる。
尚、上記粘度は、ASTM D7042の規格に基づいて測定される。
(B)成分は(A)成分と(B)成分の質量比(B)/(A)が2.5以上、70以下となるように配合することが好ましく、(B)/(A)が5以上、40以下であることがより好ましく、10以上、20以下であることが特に好ましい。(B)/(A)が2.5未満であると耐水性が低下し、水で濡れているベルトコンベアの潤滑性が低下する場合があり、70を超えて配合すると貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0016】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(C)成分はグリセリン、ポリアルキレングリコールから選択される1種以上のポリオールである。これらは単独でも混合して用いても良い。ポリアルキレングリコールとしては例えばポリエチレングリコール又はエチレンオキシドプロピレンオキシドのランダム共重合体を用いることができるが、乳化安定性に優れることからポリエチレングリコールが好ましい。ポリエチレングリコールに対するエチレンオキシド(EO)の重合度(付加モル数)は4モル以上、40モル以下のものが好ましく、4モル以上、32モル以下がより好ましい。ポリエチレングリコールに対するEOの重合度が4モル未満であると乳化安定性が低下する場合があり、40モルを超えると潤滑性及びベルトコンベアの摩耗防止性が低下する場合がある。
(C)成分は(A)成分と(C)成分の質量比(C)/(A)が5以上、100以下となるように配合することが好ましく、(C)/(A)が8以上、60以下であることがより好ましく、(C)/(A)が10以上、40以下であることが特に好ましい。(C)/(A)が5未満であると貯蔵安定性及び磨耗防止性が低下する場合があり、100を超えて配合すると耐水性が低下し、水で濡れているベルトコンベアの潤滑性が低下する場合がある。
【0017】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(D)成分はカチオン界面活性剤であり、(B)成分の油性物質の乳化剤として及び/又は殺菌剤として配合される。カチオン界面活性剤としては、第一アルキルアミン又はその塩、第三アルキルアミン又はその塩、アルキルジアミン又はその塩、アルキルトリアミン又はその塩、4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤アルキルピリジニウム塩から選択される1種以上が挙げられる。
(B)成分の油性物質の乳化性に優れること及び後述の(G)成分である2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び/又は1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンから選択される1種以上の防腐剤と併用した際の安定性に優れるという観点から、(D)成分は4級アルキルアンモニウム塩が好ましく、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、オクチルデシルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、ジヤシアルキルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂アンルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C12-16)ジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩から選択される1種以上であることが好ましい。
【0018】
また特に乳化性及び耐水性の向上に優れるという観点から、(D)成分として用いられるカチオン界面活性剤は、ジアルキル(炭素数8以上、18以下)ジメチルアンモニウム塩であることが好ましく、中でもジステアリルジメチルアンモニウム、ジオレイルジメチルアンモニウム塩から選択される1種以上を含むことがより好ましく、特に殺菌性を向上させる性能に優れるという観点から塩化ベンザルコニウム、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、オクチルデシルジメチルアンモニウム塩から選択される1種以上であることが好ましい。これらは2種以上組み合わせて使用することで多面的な効果が可能であるため更に好ましい。
また(D)成分は、塩の形態としては炭酸PETボトルに対する適合性に優れるという観点から塩化物であることが特に好ましい。
(D)成分は(A)成分と(D)成分の質量比(D)/(A)が0.5以上、20以下となるように配合することが好ましく、(D)/(A)が1以上、10以下であることがより好ましく、(D)/(A)が1以上、4以下であることが特に好ましい。(D)/(A)が0.5未満であると耐水性が低下し、水で濡れているベルトコンベアの潤滑性が低下する場合があり、20を超えて配合すると貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0019】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、(A)成分に対する(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の配合の割合に関し、(A)成分と(B)成分の質量比(B)/(A)が2.5以上、70以下、(A)成分と(C)成分の質量比(C)/(A)が5以上、100以下、かつ(A)成分と(D)成分の質量比(D)/(A)が0.5以上、20以下であることが特に好ましい。このように、(A)成分に対し、他の成分を調整することによって、本発明の所期の課題がより良好に達成される。
【0020】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(E)成分は炭素数16から24の脂肪族アルコールである。これらは単独でも混合して用いても良い。(E)成分を所定の範囲で含むことによって、本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物の耐水性が非常に良好なものとなり得る。炭素数16から24の脂肪族アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等が挙げられるが、潤滑性、耐水性、貯蔵安定性に優れるという観点からセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコールから選択された1種以上であることがより好ましく、ベヘニルアルコール単独又はベヘニルアルコールと他の上述する脂肪族アルコールとの組み合わせが特に好ましい。
(E)成分は(A)成分と(E)成分の質量比(E)/(A)が0.02以上、4以下となるように配合されうるが、より優れた耐水性および貯蔵安定性を発揮させるという観点から(E)/(A)が0.1以上、2以下であることが好ましく、(E)/(A)が0.3以上、1以下であることがより好ましい。(E)/(A)が0.02未満であると耐水性が低下し、水で濡れているベルトコンベアの潤滑性が低下する場合があり、4を超えて配合すると貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0021】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(F)成分の水は特に限定はなく、水道水、井水、イオン交換水、軟水などが挙げられる。水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度2.3°DH(そのうち、カルシウム硬度1.7°DH、マグネシウム硬度0.6°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。
【0022】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は水中油型の乳化物である。本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(E)成分、(F)成分を全て混合した後、ホモジナイザーやコロイドミル等の高圧乳化機械を用いて乳化物を調製して良いが、乳化物の調整が容易であることから(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、を50℃以上、80℃以下に加熱混合して融解した後、パドル型やプロペラ型等の攪拌翼を用いて50~1000RPMの攪拌速度で攪拌しながら(B)成分を添加し分散させ、更に撹拌を継続しながら(F)成分を(C)成分に対する質量比(F)/(C)が0.05から0.05ずつ0.7となるように徐々に追加添加して混合攪拌した後、残りの(F)成分を添加することで乳化物を調製する方法が好ましい。
【0023】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、更に(G)成分として2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1、2-ベンズイソチアゾリン-3-オンから選ばれる1種以上の防腐剤を配合することが好ましい。本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物に(G)成分を配合することで、一般細菌に対する除菌性に加えて、(A)成分のカチオン界面活性剤に対して抵抗性を持つ菌種(以下、カチオン界面活性剤抵抗性菌と省略する場合がある)に対しても優れた除菌性を発揮する。
(G)成分は(A)成分と(G)成分の質量比(G)/(A)が0.05以上、7以下となるように配合されることが好ましく、0.1以上、2以下であることがより好ましく、0.3以上、1以下であることが特に好ましい。(G)/(A)が0.05未満であるとカチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性が不十分である場合があり、7を超えて配合しても効果が飽和してしまうため経済的なメリットが得られ難い。
【0024】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物には更に(H)成分としてロジンエトキシレート、芳香族スルホン酸又はその塩から選択される少なくとも1種を配合することが好ましい。これらは単独でも混合して用いても良い。本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物に(H)成分を配合することで、ベルトコンベアの磨耗防止性が更に向上する。ロジンエトキシレートはロジンにエチレンオキサイドを付加重合してポリオキシエチレン鎖を導入したノニオン界面活性剤である。エチレンオキサイドの重合度としては10モル以上、30モル以下が好ましい。重合度が10モル未満であると水溶性が低下するため組成物の安定性が低下する場合があり、30モルを超えるとベルトコンベアの磨耗防止性が低下する場合がある。さらに本発明の組成物に適量な範囲で(H)成分を含有させることによって、搬送時におけるペットボトル容器の亀裂やひび割れを良好に防止するという効果が発揮可能であり、特に当該効果において炭酸飲料を充填した内圧の印加されたペットボトル容器の搬送時における割れ防止に特に優れる傾向にある。
(H)成分は(A)成分と(H)成分の質量比(H)/(A)が0.02以上、2以下となるように配合することが好ましく、0.1以上、1以下であることがより好ましく、0.2以上、0.5以下であることが特に好ましい。(H)/(A)が0.02未満であると磨耗防止性が低下する場合があり、2を超えて配合するとベルトコンベア用潤滑剤組成物の耐水性が低下する場合がある。
【0025】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成には、更に任意で公知の潤滑用添加剤が添加されていても良く、使用目的に応じて、キレート剤、(A)成分及び(D)成分以外の界面活性剤などを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0026】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物に更に任意で配合できる界面活性剤としては、(A)成分以外のノニオン界面活性剤やアニオン界面活性剤が挙げられる。このような界面活性剤としては例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸及びその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル及びその塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキサルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレンラノリンエーテル、アセチレングリコール酸化エチレン(EO;エチレンオキシド)付加物、アルキルジメチルアミンオキシド、ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサン・コポリマーなどが挙げられる。ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基やエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドの1種又は2種以上の重縮合体が挙げられる。これらの界面活性剤は単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物に配合できるキレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキエチルシイミノ二酢酸(HIDA)等が挙げられる。また別のキレート剤としては、例えばジヒドロキシエチルグルシン(DHEG)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、β-アラニン二酢酸(ADA)、セリン二酢酸(SDA)、グリシン、アラニン、グルタミン酸及びアスパラギン酸等のアミノ酸系のキレート剤が挙げられる。また別のキレート剤としては、例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
またキレート剤として、上述する化合物の、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びモノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。
上述するキレート剤は1種で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、そのままベルトコンベアの潤滑性向上処理の処理液として用いることもできるが、濃縮物として提供し、ベルトコンベアの潤滑性向上の処理を行う際に水で希釈して処理液を調製して用いることもできる。濃縮物として提供する場合、(A)成分の配合量が0.3質量%以上、2質量%以下であることが好ましい。0.3質量%未満であると濃縮度が低いため輸送コストが上昇することから経済的なメリットが得られ難く、2質量%を超えて配合すると潤滑剤組成物の安定性が低下する場合がある。ベルトコンベア用潤滑剤組成物が濃縮物の場合、組成物中の(F)成分の水を除く他の全成分(水以外の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び必要により添加する(G)成分、(H)成分)の合計割合を、好ましくは3質量%以上、85質量%以下、より好ましくは20質量%以上、75質量%以下、特に好ましくは25質量%以上、65質量%以下とし、残りが水となるように調整するとよい。
【0029】
次に本発明のベルトコンベアの潤滑性向上方法(以下、単に本発明の潤滑性向上方法ともいう)について説明する。
本発明の潤滑性向上方法では、ベルトコンベア上及び/又は被搬送品表面上に、本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物を(A)成分の濃度が0.005質量%以上、0.2質量%以下とした処理液を供給する。これによって、本発明の潤滑性向上方法は、上述する本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物の種々の効果を享受し、ベルトコンベアで良好に搬送品を搬送可能とする。
本発明の潤滑性向上方法において、ベルトコンベアに対しベルトコンベア用潤滑剤組成物を供給する方法は特に限定されず、たとえば、塗布、滴下、若しくは連続した流体として供給し、又は噴霧して供給し使用することができる。処理液の(A)成分濃度は、0.01質量%以上、0.1質量%以下が好ましい。
ベルトコンベア潤滑剤組成物中の(A)成分濃度が0.005質量%以上、0.2質量%以下の場合には原液をそのまま処理液として用い、潤滑剤組成物中の(A)成分濃度が0.2質量%を超える濃縮物等の場合には、水等によって希釈したものを処理液として使用するとよい。処理液の(A)成分濃度が0.005質量%未満であると貯蔵安定性が低下する場合があり、0.2質量%を超えると耐水性が低下し、水で濡れているベルトコンベアの潤滑性が低下する場合があることや、PETボトルなどの搬送品における亀裂やひび割れの抑制性が低下する場合がある。
【0030】
本発明のベルトコンベアの潤滑性向上方法としては、(A)成分濃度を0.005質量%以上、0.2質量%以下とした処理液を、刷毛を用いてベルトコンベア上及び/又は被搬送品表面上に塗布する方法、処理液をベルトコンベア上及び/又は被搬送品表面上に滴下又は連続的に供給する方法、スプレー等で噴霧する方法等が挙げられる。
【0031】
処理液を滴下又は連続的に供給する方法は特に限定されないが、チューブ状のノズルを使用することにより、目的とする領域に処理液を供給し易いため好ましい。チューブ状のノズルとしては、たとえば、樹脂製又はSUS製などの金属製のチューブが挙げられる。
チューブ状のノズルで処理液を供給する際の圧力及び速度は特に限定されないが、たとえば処理液を0.1MPa以上、0.3MPa以下の圧力で送液し、チューブ状のノズルを通して10mL/分以上、100mL/ 分以下の流量でベルトコンベア上及び/又は被搬送品表面上に供給することができる。
【0032】
また、処理液を噴霧して供給する方法は特に限定されないが、スプレーノズルを使用することにより、ベルトコンベア上の広範囲に比較的少量のベルトコンベア用潤滑剤組成物の処理液を無駄なく均一に供給できるため好ましい。噴霧の形態はスプレーノズルの種類によって変わるが、用途に応じて使い分ければよく、たとえば公知のものから適宜選択して使用することができる。上記スプレーノズルの例としては、処理液に液圧をかけることによって噴霧する一流体ノズルが挙げられる。
スプレーノズルの液噴霧口のオリフィス径は、好ましくは0.3mm以上、2.4mm以下、より好ましくは0.4mm以上、1.0mm以下である。スプレー圧力としては、好ましくは0.1MPa以上、2.5MPa以下、より好ましくは0.1MPa以上、0.3MPa以下である。スプレーノズルから供給される処理液の液滴サイズとしては、50ミクロン以上、5,500ミクロン以下が好ましいが、均一に処理液を噴霧でき、コンベアの磨耗を防止できることから、100ミクロン以上、2,000ミクロン以下がより好ましい。スプレー角度としては、30°以上、150°以下であることが好ましく、60°以上、140°以下であることがより好ましい。尚、スプレー角度とは噴射された液体が広がった角度のことである。処理液の噴霧量としては、1つのノズルに対して、10mL/分以上、100mL/分以下であることが好ましく、最適な潤滑性の維持の点から10mL/分以上、50mL/分以下がより好ましい。
【0033】
上述するスプレーノズルの好ましい例としては、ホローコーン、フルコーン、フラットスプレー、広角スプレー、微細スプレー、ソリッドスプレー、エアーアトマイジングスプレーが挙げられる。これらのスプレーのゾルを使用して処理液をベルトコンベア上に噴霧して供給することができる。
【0034】
処理液のベルトコンベア上及び/又は被搬送品表面上への供給方法としては連続供給又は間欠供給の何れの方法でもよい。連続噴霧の場合は、5mL/分以上、80mL/分以下の噴霧量でコンベアベルト上及び/又は搬送品上に連続して処理液を噴霧すればよい。また、間欠噴霧の場合は、供給時間に対して40倍以上、720倍以下の停止時間を設ける長時間間欠による供給方法が可能であるが、具体的には10mL/分以上、100mL/分以下の噴霧量で5秒間以上、180秒間以下噴霧し、その後10分間以上、180分間以下噴霧を止める等の工程を連続的に繰り返し行えば良い。間欠噴霧において、噴霧停止時にも潤滑性が保たれる理由は、一度噴霧したベルトコンベア用潤滑剤がコンベアベルト上に残存しているためである。本発明の潤滑性向上方法は、本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物を用いることにより、間欠時においても良好な潤滑性が維持される。噴霧方法としては、ベルトコンベア用潤滑剤及び水の使用量も削減できることから、間欠噴霧による方法が好ましい。
【0035】
本発明のベルトコンベアの潤滑性向上方法における処理液は、塩基成分や酸成分を添加して、pHを4以上、9.5以下の範囲に調整して使用することが好ましく、6.0以上、9.0以下に調整して使用することがより好ましい。処理液のpHが4.0未満であるとベルトコンベアや飲料製造工程中の機器が腐食する問題が生じる場合があり、またpHが9.5を超えるとPETボトルに対する亀裂やひび割れ抑制性が低下し、搬送されたPETボトルに亀裂やひび割れが発生する等の問題が生じる場合がある。pH調整のための塩基成分としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、pH調整のための酸成分としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、ホスホノブタントリカルボン酸、リン酸などが挙げられるが、好ましくは、酢酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸である。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0036】
ベルトコンベア用潤滑剤組成物を希釈するために使用される水としては、硬度成分のない純水を用いることもできるが、一般的には水道水のような硬度成分を含有する水を使用することが想定され、水道水は、pH=5.8以上8.6以下、総アルカリ度が、ドイツ硬度0°DH以上、53.6°DH以下、塩化物イオン0mg/L以上、200mg/L以下、ナトリウム及びその化合物0mg/L以上、200mg/L以下、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素0mg/L以上、10mg/L以下、フッ素及びその化合物0mg/L以上、0.8mg/L以下、ホウ素及びその化合物0mg/L以上、1.0mg/L以下、総トリハロメタン0mg/L以上、0.1mg/L以下、残留塩素0mg/L以上、1mg/L以下、有機物量(全有機炭素量)0mg/L以上、3mg/L以下であれば、本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物の希釈用として使用することができる。また総アルカリ度は特に制限はないが、工業用水道供給標準水質として記載されている0mg/L以上、75mg/L以下(炭酸カルシウム換算として)が好ましい。
【0037】
本発明のベルトコンベアの潤滑性向上方法は、潤滑性に優れ、ベルトコンベアの磨耗を低減させ、ベルトコンベアの磨耗による粉塵が生じた場合でもその除去性に優れることから、ベルトコンベアにおけるベルトは樹脂製品(例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂などを用いた樹脂製品)であることが好ましい。
被搬送品の形状、構造、材質等は特に規定されないが、飲料物用の容器が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリスチレン製、ポリアミド製、ポリカーボネート製等のプラスチック製容器;紙パック等の紙製容器(ワックス仕上げや樹脂コーティングを含む);鉄製、アルミニウム製、錫製、銅製、亜鉛製、あるいはこれらの複合材料等からなる金属製容器;ガラス製容器;セラミックス製容器等が挙げられる。これらの容器の中でも、本発明の効果が顕著に表れることから、ペットボトル等のPET製容器への使用が好ましい。換言すると本発明のベルトコンベアの潤滑性向上方法は、PET製容器の搬送用の潤滑性向上方法として特に優れた効果を発揮する。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。実施例、比較例のベルトコンベア用潤滑剤組成物において配合に用いた各成分を下記表1~6に示す。尚、下記表1~6に示す配合量に関する数値は、ベルトコンベア用潤滑剤組成物に対する各成分の純分の割合(質量%)であり、以下の実施例等において「%」は特に記載が無い限り質量%を示す。
試験に使用した化合物を下記に記す。尚、アルコール名の後の括弧内は脂肪族アルコールの炭素数を、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドの略であり、その後の数字はそれぞれEO、POの平均付加モル数(重合度)を表す。
【0039】
(A)成分:ノニオン界面活性剤
A-1:ドデシルアルコール(C12)のEO10モル付加物
A-2:ヘキサデシルアルコール(C16)のEO13モル付加物
A-3:ヘキシルデシルアルコール(C16)のEO13モル付加物
A-4:オクタデセニルアルコール(C18)のEO15モル付加物
A-5:オクタデシルアルコール(C18)のEO15モル付加物
A-6:イソオクタデシルアルコール(C18)のEO16モル付加物
A-7:オクチルドデシルアルコール(C20)のEO10モル付加物
A-8:オクチルドデシルアルコール(C20)のEO25モル付加物
A-9:デシルテトラデシルアルコール(C24)のEO15モル付加物
A-10:デシルテトラデシルアルコール(C24)のEO25モル付加物
A-11:デシルテトラデシルアルコール(C24)のEO20モル、PO6モル付加物
A-12:デシルテトラデシルアルコール(C24)のEO30モル、PO6モル付加物
A-13:デシルテトラデシルアルコール(C24)のEO24モル、PO13モル付加物
A-14:ドデシルヘキサデシルアルコール(C28)のEO30モル付加物
A-15:テトラデシルオクタデシルアルコール(C32)のEO30モル付加物
【0040】
(A)成分の比較成分
A’-16:デシルアルコール(C10)のEO10モル付加物
A’-17:デシルアルコール(C10)のEO12モル、PO3モル付加物
【0041】
(B)成分:油性物質
B-1:40℃において粘度5.1mm/sのポリアルファオレフィン(商品名がSynfluid PAO 2cSt、Chevron Phillips Chemical Company LP製)
B-2:40℃において粘度8.3mm/sのポリアルファオレフィン(商品名がSynfluid PAO 2.5cSt、Chevron Phillips Chemical Company LP製)
B-3:25℃において粘度5mm/sのジメチルシリコーン(商品名がSH200 FLUID 5cs、東レダウコーニング社製)
B-4:25℃において粘度350mm/sのジメチルシリコーン(商品名がSH200 FLUID 350cs、東レダウコーニング社製)
B-5:37.8℃において粘度5.8~8.9mm/sの流動パラフィン(商品名がハイコールK-160、カネダ株式会社製)
【0042】
(C)成分:ポリオール
C-1:グリセリン
C-2:重量平均分子量200のポリエチレングリコール(EO4モル付加物)
C-3:重量平均分子量1540のポリエチレングリコール(EO32モル付加物)
【0043】
(D)成分:カチオン界面活性剤
D-1:塩化ベンザルコニウム(商品名がHYAMINE 3500-J、ロンザジャパン社製)
D-2:塩化ジオレイルジメチルアンモニウム(商品名がパイオニンB-2811、竹本油脂社製)
D-3:塩化オクチルデシルジメチルアンモニウム(商品名がOctyl Decyl Dimethyl Ammonium Chloride 80%、RUGAO WANLI CHEMICAL INDUSTRY CO.LTD.製)
【0044】
(E)成分:脂肪族アルコール
E-1:セチルアルコール
E-2:ステアリルアルコール
E-3:アラキジルアルコール
E-4:ベヘニルアルコール
E-5:デシルテトラデシルアルコール
【0045】
(E)成分の比較成分
E’-1:ラウリルアルコール
E’-2:ミリスチルアルコール
【0046】
(F)成分:水
F-1:東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度8.1°DH(そのうち、カルシウム硬度6.3°DH、マグネシウム硬度2.1°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物13mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.1mg/L、フッ素及びその化合物0.09mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.014mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.5mg/L)
【0047】
(G)成分:防腐剤
G-1:2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(商品名がアクティサイドM20、ソージャパン社製)
G-2:1、2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(商品名がアクティサイドB20(N)、ソージャパン社製)
【0048】
(H)成分:ロジンエトキシレート、芳香族スルホン酸
H-1:ロジンエトキシレート(EO15モル付加物)
H-2:ロジンエトキシレート(EO30モル付加物)
H-3:キシレンスルホン酸
H-4:トルエンスルホン酸
H-5:キュメンスルホン酸
H-6:4-メトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0049】
(I)成分:キレート剤
I-1:エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩
I-2:エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム塩
【0050】
実施例1~60、比較例1~9
東京都荒川区の水道水を用い、表1から表6に示す配合でベルトコンベア用潤滑剤組成物を調製し、ベルトコンベア用潤滑剤組成物の評価を行った。結果を表1~6に示す。尚、実施例1~55及び比較例1~9については、潤滑剤組成物の原液を用いて後述する※1~※6(または※7)の試験を行った。実施例56~60については、潤滑剤組成物の原液を用いて後述する※5の試験を行うとともに表5に示す希釈倍率で希釈された潤滑剤処理液を用いて後述する※1~※7の試験を行った。
【0051】
※1 潤滑性試験
以下の試験方法によりベルトコンベアとボトルの間の動摩擦係数を測定し、ベルトコンベア用潤滑剤組成物の潤滑性を評価した。
試験方法:
角底、900mL容積のポリエチレンテレフタレート(PET)製容器をベルトコンベア[一片が幅82.6mm、長さ38.1mmのツバキ山久チエイン社製プラトップ(登録商標)チェーン(形番TTP826P-DIY)が長さ方向に90片連結したもの)の上に置き、ベルトコンベアを30m/分で走行させ、コンベア上に、ホローコーンスプレーノズル(商品名がユニジェットTX、流量サイズ1、オリフィス径0.51、スプレーイングシステムス社製)を介して原液又は予め水道水で希釈して調製したベルトコンベア用潤滑剤組成物の処理液を、コンベアベルト1m当たり70mL程度の割合で(50mL/分の供給速度で24秒間)噴霧した後、噴霧終了直後の摩擦係数(付着直後)と、噴霧終了30分後の乾燥時の摩擦係数(乾燥後)を測定した。尚、摩擦係数は、容器と荷重測定器を連結させ、コンベア稼動中の引張り荷重値を測定し、以下の計算式より算出したものである。
摩擦係数(μ)=引張り荷重(g)/容器重量(g)
潤滑性評価基準:
○:摩擦係数(μ)=0.08以上0.10未満(滑りが良好)。
△:摩擦係数(μ)=0.10以上0.13未満(問題なく滑る)。
×:摩擦係数(μ)=0.13以上(滑りが悪い)又は0.08未満(滑りすぎる)。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0052】
※2 耐水性試験
以下の試験方法により、常時水で濡れたベルトコンベアにベルトコンベア用潤滑剤組成物の原液または処理液を供給した後のベルトコンベアとボトルの間の動摩擦係数を測定し、ベルトコンベア用潤滑剤組成物の耐水性を評価した。
試験方法:
ベルトコンベア[一片が幅82.6mm、長さ38.1mmのツバキ山久チエイン社製プラトップ(登録商標)チェーン(形番TTP826P-DIY)が長さ方向に90片連結したもの)を30m/分で走行させ、コンベア上にSUS製チューブ(内径6mm)を介して80mL/分の流量でコンベア上に水を供給し5分間連続運転した。その後水の供給を続けながら、コンベア上に、チューブ状ノズルを介して原液又は予め水道水で希釈して調製した処理液を、コンベアベルト1m当たり70mL程度の割合で(50mL/分の供給速度で24秒間)噴霧し、その後、コンベア上に角底900mL容積のポリエチレンテレフタレート(PET)製容器を置き、摩擦係数(水洗浄後)を測定した。尚、摩擦係数は、容器と荷重測定器を連結させ、コンベア稼動中の引張り荷重値を測定し、以下の計算式より算出したものである。
摩擦係数(μ)=引張り荷重(g)/容器重量(g)
潤滑性評価基準:
○:摩擦係数(μ)=0.10以上0.12未満(滑りが良好)。
△:摩擦係数(μ)=0.12以上0.13未満(問題なく滑る)。
×:摩擦係数(μ)=0.13以上(滑りが悪い)又は0.10未満(滑りすぎる)。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0053】
※3 ベルトコンベアの磨耗防止性試験
ベルトコンベアスピード30m/分のベルトコンベア[一片が幅82.6mm、長さ38.1mmのツバキ山久チエイン社製プラトップ(登録商標)チェーン(形番TTP826P-LFG)が長さ方向に90片連結したもの)上に、ホローコーンスプレーノズル(商品名がユニジェットTX、流量サイズ1、オリフィス径0.51、スプレーイングシステムス社製)を介して原液又は予め水道水で希釈して調製した処理液を、コンベアベルト1m当たり350mL程度の割合で(50mL/分の供給速度で120秒間)噴霧した後、処理液の供給を停止し30分間ベルトコンベアの稼動を続けた。30分後に角底、900mL容積のポリエチレンテレフタレート(PET)製容器をベルトコンベア上に置きボトルをタコ糸でコンベアガイドに固定してボトルを引っ張ったまま30秒間ベルトコンベアを稼動させた。その後ボトルの底部における粉塵状の汚れの付着の有無を確認した。
磨耗防止性評価基準:
○:汚れの付着が見られない。
△:僅かに粉塵状の汚れが付着している。
×:粉塵状の汚れが付着している。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0054】
※4 粉塵汚れ洗浄性試験
ポリアセタール樹脂性コンベア(ツバキ山久チエイン社製プラトップ(登録商標)チェーン(形番TTP826P)を日本工業規格JIS-4703に規定されている平型・呼び寸法150mm・中目の鉄工やすりを用いて削り粉塵状の汚れを調整した。容積100mLのガラス製コニカルビーカーに原液又は予め水道水で希釈して調製した処理液を5g、粉塵汚れを0.1g入れ薬匙で混合した後、105℃のオーブンで10時間乾燥させた。室温に冷却した後、水道水を50mL加えてマグネチックスターラーを用いて100rpmで30秒間攪拌し粉塵汚れの洗浄性を確認した。粉塵の塊が確認されない場合には、水洗浄し易く、また容器に対する付着も目立たないため、洗浄性良好(〇)と評価した。
粉塵汚れ洗浄性評価基準:
○:粉塵汚れが水に分散され塊が見られない。
△:粉塵汚れはほぼ水に分散され塊が見られないが、液面に粉塵が浮いている。
×:粉塵汚れの塊が見られる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0055】
※5 貯蔵安定性試験
ベルトコンベア用潤滑剤組成物について、以下の方法で安定性試験を行い、評価した。
試験方法:
ベルトコンベア用潤滑剤組成物(原液または希釈液)100gを透明ガラス瓶に入れ、50℃で1ヶ月静置した後に外観を観察した。
安定性評価基準:
○:油相と水相の分離が見られず安定である。
△:全体的な分離はないが、底部に若干の水相の分離が見られる。
×:クリーミング(分散した油相の液滴が上昇して不均一になること)及び液面に油滴が見られる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0056】
※6 除菌性試験
ベルトコンベア用潤滑剤組成物の除菌性を以下の方法で試験し、評価した。
試験方法:
緑膿菌(供試菌株:NBRC13736)を、滅菌したSCD培地を用いて37℃で24時間培養し、10の9乗レベルcfu/mLの菌液とした。原液又は予め水道水で希釈して調製した処理液100gに対して菌液100μLを添加して試験液とし25℃で静置した。30分後に試験液1mLを分取して滅菌したSCDLP寒天培地で混釈し、生菌数を確認し、下記の基準で評価した。
評価基準:
◎:供試菌のLog reductionが5以上の菌数減少。
○:供試菌のLog reductionが4以上、5未満の菌数減少。
△:供試菌のLog reductionが2以上、4未満の菌数減少
×:供試菌のLog reductionが2未満の菌数減少
とし、◎、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0057】
※7 カチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性試験
ベルトコンベア用潤滑剤組成物のカチオン界面活性剤抵抗性菌に対する除菌性を以下の方法で試験し、評価した。
試験方法:
SCD寒天培地で培養した供試カチオン界面活性剤抵抗性菌株を滅菌した生理食塩水に懸濁し、10の8乗レベルcfu/mLの菌液とした。原液又は予め水道水で希釈して調製した処理液30mLに対して菌液300μLを添加し25℃にて7日間接触させた後、この1mLをSCD寒天培地で混釈培養し生菌数を確認して下記の基準で評価した。
供試菌株:
食品工場で採取し、分離同定したカチオン界面活性剤抵抗性菌株であるSerratia marcescensを用いた。
○:供試菌のLog reductionが6以上の菌数減少。
△:供試菌のLog reductionが4以上、6未満の菌数減少。
×:供試菌のLog reductionが4未満の菌数減少。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】