(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020715
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】金属張積層体及びその製造方法並びに回路基板
(51)【国際特許分類】
B32B 15/088 20060101AFI20230202BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230202BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B32B15/088
B32B27/34
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126244
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】王 宏遠
(72)【発明者】
【氏名】森本 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】平石 克文
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC12
4F071AE19
4F071AF19Y
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AF45Y
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4F071AG28
4F071AG34
4F071AH13
4F071BA02
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4F071BC16
4F100AB01B
4F100AB01C
4F100AB13
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4F100AB16
4F100AB16B
4F100AB17
4F100AB31
4F100AK49
4F100AK49A
4F100BA03
4F100BA07
4F100DC11
4F100DC11B
4F100DC11C
4F100EH66
4F100EH71
4F100EJ15
4F100GB41
4F100JA02
4F100JA02A
4F100JA06
4F100JA07
4F100JK06
4F100JK14
4F100JK14A
4F100JL11
4F100JN01A
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】 耐熱性、熱膨張係数に代表される寸法安定性、柔軟性、接着性と共に、高透明性を併せ持ち、透明FPC用途に適した金属張積層体を提供する。
【解決手段】 ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に金属層を有する金属張積層板であって、
前記ポリイミドフィルムが、下記の条件a~c;
a)HAZEが1.0%以下であること;
b)全光線透過率が85%以上であること;
c)厚みが10μmであるときのYIが10以下であること;
を満たし、前記金属層が、下記の条件d及びe;
d)厚みが1nm以上100nm以下の範囲内にあるクロム及びニッケルを含有する第1の金属層を含み、前記第1の金属層が前記ポリイミドフィルムに直接積層すること;
e)厚みが0.1μm以上2μm以下の範囲内にある銅を含有する第2の金属層を含み、前記第2の金属層が前記第1の金属層の上に積層すること;
を満たすことを特徴とする金属張積層板。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に金属層を有する金属張積層板であって、
前記ポリイミドフィルムが、下記の条件a~c;
a)HAZEが1.0%以下であること;
b)全光線透過率が85%以上であること;
c)厚みが10μmであるときのYIが10以下であること;
を満たし、前記金属層が、下記の条件d及びe;
d)厚みが1nm以上100nm以下の範囲内にあるクロム及びニッケルを含有する第1の金属層を含み、前記第1の金属層が前記ポリイミドフィルムに直接積層すること;
e)厚みが0.1μm以上2μm以下の範囲内にある銅を含有する第2の金属層を含み、前記第2の金属層が前記第1の金属層の上に積層すること;
を満たすことを特徴とする金属張積層板。
【請求項2】
前記ポリイミドフィルムの前記金属層に接する面の平均粗さRzが1nm以上50nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の金属張積層板。
【請求項3】
前記条件a~cに加え、更に、下記の条件f;
f)熱膨張係数が30ppm/K以下であること;
を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属張積層板。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムの1%熱重量減少温度が400℃以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の金属張積層板における前記金属層がパターニングされた回路基板。
【請求項6】
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に金属層を有する金属張積層板の製造方法であって、下記の工程I~VII;
I)平均粗さRzが1nm以上100nm以下の範囲内である表面粗さを有する支持基材を準備する工程;
II)フッ素原子若しくはエーテル基を含むテトラカルボン酸無水物から誘導される酸無水物残基及び/又はフッ素原子若しくはエーテル基を含むジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有するポリアミド酸の樹脂溶液を準備する工程;
III)前記支持基材の前記表面粗さの面に、前記ポリアミド酸の樹脂溶液を塗布し乾燥して、ポリアミド酸の樹脂層を形成する工程、
IV)前記ポリアミド酸を前記支持基材ごと熱処理してイミド化し、ポリイミドフィルム層を積層形成する工程;
V)前記ポリイミドフィルム層を前記支持基材から剥離して、少なくとも一方の面の平均粗さRzが1nm以上50nm以下の範囲内であるポリイミドフィルムを形成する工程、
VI)前記ポリイミドフィルムにおける平均粗さRzが1nm以上50nm以下の範囲内である面側に、乾式めっきによって、厚みが1nm以上100nm以下の範囲内にあるクロム及びニッケルを含有する第1の金属層を形成する工程;
VII)前記工程VIの後に、厚みが0.1μm以上2μm以下の範囲内にある銅を含有する第2の金属層を形成する工程;
を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、接着性、柔軟性に優れ、かつ高透明性の樹脂フィルム(絶縁樹脂層)を積層してなる金属張積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、テトラカルボン酸無水物とジアミンを原料とし、これらの縮合反応により合成されるポリアミド酸を閉環反応して得られる耐熱性の樹脂で、分子鎖の剛直性、共鳴安定化、強い化学結合により熱分解に優れた抵抗を有し、酸化又は加水分解のような化学変化に対して高い耐久性を持ち、柔軟性、機械的特性及び電気的特性に優れている。
【0003】
電子機器に使用されるフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit Board;FPC)の絶縁樹脂層には、ポリイミドが広く用いられている。
【0004】
FPCに使用される金属張積層体は、薄い金属箔とポリイミド層を含む絶縁樹脂層から構成され、金属箔と絶縁樹脂層との熱膨張係数(CTE)の差が大きく異なると、基板に反りやカールが発生し、電子部品を実装する際に寸法が変化して正確な実装ができなくなるといった問題が起こる。一方、透明性に優れた絶縁樹脂層を有する金属張積層体は、配線基板に半導体素子を実装する際、絶縁樹脂層側からの視認性に優れることから、配線基板に光硬化性樹脂を介して半導体素子を接合する場合において、絶縁樹脂層側からの光照射に有利であり、透明FPC用途への使用や透明ディスプレイ用途への展開が期待できる。
【0005】
一般に、FPCに用いられている市販の銅張積層板における絶縁樹脂層は、全芳香族ポリイミド樹脂からなり、分子内及び分子間での電荷移動錯体の形成により黄褐色を示し、これを無色透明性が要求される透明FPC用途に適用することは困難である。
【0006】
例えば、特許文献1は、透明性を有し、平滑な金属層との接着力の向上を目的としているが、金属層と接着するポリイミドは依然として着色があり、ポリイミド層全体の透明度が劣る。特許文献2は、透明発光素子ディスプレイ用電極基板を開示するが、耐熱性が劣る。特許文献3は、薄膜ポリイミドフィルムを開示するが、熱膨張係数が大きい。特許文献4は、絶縁樹脂層に特定ポリイミドを用いることを開示するが、ポリイミド層の表面粗度が大きい。
【0007】
よって、透明FPC用途に適した金属張積層体としての特性を十分満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-155360号公報
【特許文献2】特開2020-523623号公報
【特許文献3】特開2020-105447号公報
【特許文献4】WO2020/262450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐熱性、熱膨張係数に代表される寸法安定性、柔軟性、接着性と共に、高透明性を併せ持ち、透明FPC用途に適した金属張積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記課題を解決するために検討を重ねた結果、特定のポリイミドフィルムと金属層とを積層することにより、課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に金属層を有する金属張積層板であって、
前記ポリイミドフィルムが、下記の条件a~c;
a)HAZEが1.0%以下であること;
b)全光線透過率が85%以上であること;
c)厚みが10μmであるときのYIが10以下であること;
を満たし、前記金属層が、下記の条件d及びe;
d)厚みが1nm以上100nm以下の範囲内にあるクロム及びニッケルを含有する第1の金属層を含み、前記第1の金属層が前記ポリイミドフィルムに直接積層すること;
e)厚みが0.1μm以上2μm以下の範囲内にある銅を含有する第2の金属層を含み、前記第2の金属層が前記第1の金属層の上に積層すること;
を満たすことを特徴とする金属張積層板である。
【0012】
本発明の金属張積層板は、前記ポリイミドフィルムの前記金属層に接する面の平均粗さRzが1nm以上50nm以下の範囲内であることが好適である。
【0013】
本発明の金属張積層板は、前記条件a~cに加え、更に、下記の条件f;
f)熱膨張係数が30ppm/K以下であること;
を満たすことが好ましい。
【0014】
本発明の金属張積層板は、前記ポリイミドフィルムの1%熱重量減少温度が400℃以上であることが好ましい。
【0015】
本発明は、上記記載の金属張積層板における前記金属層がパターニングされた回路基板である。
【0016】
本発明は、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に金属層を有する金属張積層板の製造方法であって、下記の工程I~VII;
I)平均粗さRzが1nm以上100nm以下の範囲内である表面粗さを有する支持基材を準備する工程;
II)フッ素原子若しくはエーテル基を含むテトラカルボン酸無水物から誘導される酸無水物残基及び/又はフッ素原子若しくはエーテル基を含むジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有するポリアミド酸の樹脂溶液を準備する工程;
III)前記支持基材の前記表面粗さの面に、前記ポリアミド酸の樹脂溶液を塗布し乾燥して、ポリアミド酸の樹脂層を形成する工程、
IV)前記ポリアミド酸を前記支持基材ごと熱処理してイミド化し、ポリイミドフィルム層を積層形成する工程;
V)前記ポリイミドフィルム層を前記支持基材から剥離して、少なくとも一方の面の平均粗さRzが1nm以上50nm以下の範囲内であるポリイミドフィルムを形成する工程、
VI)前記ポリイミドフィルムにおける平均粗さRzが1nm以上50nm以下の範囲内である面側に、乾式めっきによって、厚みが1nm以上100nm以下の範囲内にあるクロム及びニッケルを含有する第1の金属層を形成する工程;
VII)前記工程VIの後に、厚みが0.1μm以上2μm以下の範囲内にある銅を含有する第2の金属層を形成する工程;
を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属張積層体は、優れた耐熱性、寸法安定性、接着性、柔軟性及び高透明性を有するため、特にFPC等の電子部品を製造するための絶縁材料として、とりわけ半導体素子の実装を伴う無色透明性が要求される透明FPCに好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の金属張積層板について、より詳しく説明する。
【0019】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムは、厚みが好ましくは1μm以上200μm以下の範囲内である。より好ましくは5μm~100μmの範囲である。
【0020】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムは、以下の物性を有する。ただし、ポリイミドフィルムは、通常、金属層を積層する前後において、光学物性等が変化する。
【0021】
よって、本発明で規定するポリイミドフィルムの物性は、金属層を積層した後の値である。すなわち、本発明の金属張積層板におけるポリイミドフィルムの物性は、ポリイミドフィルムに金属層を積層した後、その金属層をエッチング等により除去したポリイミドフィルムについて、測定した値である。
【0022】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムは、可視領域の全光線透過率が85%以上である。波長が450nmにおける光透過率は好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上がよい。例えば、ポリイミドフィルムの厚み10μmにおいて、それを満足することが好ましい。このような範囲に制御することで、金属張積層板における光の反射、散乱による白濁が抑制され、優れた透明性を有するものとなる。
【0023】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムは、HAZE(濁度)が1.0%以下である。好ましくは0.80%以下である。HAZEが1.0%を超えると、金属張積層板に光散乱が生じやすくなる。
【0024】
HAZEは、ポリイミドフィルムの表面プロファイルに依存し、金属層に接する面の平均粗さRzが好ましくは1nm以上50nm以下の範囲内である。より好ましくはRzが1~40nmである。
【0025】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムは、フィルム厚みが10μmであるとき、YI(黄色度)は10以下である。フィルム厚みが50μmであるとき、YIは35以下であることが好ましい。このような範囲に制御することで、ポリイミドフィルムをほぼ無色に近づけることができる。一方、YIが上記のような範囲を外れると、黄色乃至黄褐色の着色が強くなって、金属張積層板の視認性が低下する。
【0026】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムのCTEは、好ましくは5ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内である。このような範囲に制御することで、カール等の変形を抑制でき、高い寸法安定性を担保できる。ここで、CTEは、樹脂フィルムの長さ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)の熱膨張係数の平均値である。
【0027】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムは、好ましくは1%熱重量減少温度が400℃以上である。金属層を例えばスパッタリング形成する場合でも、十分に適用可能である。
【0028】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムは、単層であってもよいし、複数のポリイミド層を有してもよい。複数のポリイミド層は、二層や三層構造でもよい。熱可塑性ポリイミド層と非熱可塑性ポリイミド層とからなる構造でもよい。
【0029】
ポリイミドは、通常、原料である酸無水物とジアミンを重合して得られ、下記一般式(1)で表される。
【0030】
【0031】
式中、Ar1は4価の有機基を表し、Ar2は2価の有機基であるが、耐熱性の観点から、Ar1、Ar2の少なくとも一方は、芳香族残基であることが好ましい。
【0032】
ポリイミド原料となる酸無水物として、代表的なものを例示すると、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}、トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2-ビス{(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、又は1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0033】
これらは単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0034】
ポリイミド原料となるジアミンとして、代表的なものを例示すると、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2, 6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノビフェニル、3,3' -ジアミノビフェニル、3,3' -ジメチル- 4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、又は5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールなどが挙げられる。
【0035】
これらは単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0036】
ポリイミド原料として、酸無水物及びジアミンの種類や組合せ、各モル比を選定することにより、得られるポリイミドフィルムの熱膨張性、接着性、ガラス転移温度(Tg)等の諸物性を調整できる。
【0037】
ポリイミドは、酸無水物及びジアミンを溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、加熱重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。ポリアミド酸を、熱処理又は化学イミド化することによって、ポリイミドを得ることができる。
【0038】
ポリアミド酸又はポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、例えば80,000~700,000以下の範囲内が好ましい。
【0039】
本発明の金属張積層板において、ポリイミドフィルムは、ポリイミド原料として、酸無水物及びジアミンの種類やモル比等を選定することにより、所望のポリイミドフィルムを得てもよいし、或いは、市販のポリイミドフィルムを適宜処理することにより、所望のポリイミドフィルムを得てもよい。
【0040】
ポリイミドフィルムは、例えば、支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化して得ることができる。そのイミド化前又はイミド化後において、ポリイミドフィルムを、支持基材から剥離する。支持基材としては、例えば、ガラス板、別のポリイミドフィルムが挙げられる。
【0041】
本実施の形態で製造されるポリイミドフィルムは、支持基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させることが好ましい。ポリアミド酸の樹脂層が支持基材に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド層の伸縮変化を抑制して、ポリイミドフィルムの厚みや寸法精度を維持することができる。
【0042】
ポリイミドフィルムは、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要に応じて、無機フィラー、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化チタン、ジルコニアなどを含有してもよい。その場合は、透明性を維持するために、ナノサイズのフィラーが好ましい。
【0043】
本発明の金属張積層体は、ポリイミドフィルムの片面又は両面に、クロム及びニッケルを含有する第1の金属層(シード層)、及び銅を含有する第2の金属層を積層してなる。透明FPC用途に適用するため、銅を含有する第2の金属層が必須であり、第1の金属層(シード層)は、その下地となり、ポリイミドフィルムと金属層との密着性や耐熱性等の信頼性を維持する。
【0044】
第1の金属層(シード層)の材質は、ニッケル、クロム、ニッケル合金、クロム合金、ニッケル・クロム合金などが挙げられ、ニッケル・クロム合金が好適である。
【0045】
透明FPC用途に適用するため、第1の金属層(シード層)の厚みは、好ましくは1nm以上100nm以下の範囲である。より好ましくは3nm~50nmの範囲である。
【0046】
第2の金属層の材質としては、透明FPC用途に適用するため、銅を含有することが必須であり、銅を含有する限り、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン等の合金であってもよい。
【0047】
透明FPC用途に適用するため、第2の金属層(銅含有層)の厚みは、好ましくは0.1μm以上2.0μm以下の範囲である。より好ましくは0.1μm~1.0μmの範囲である。
【0048】
本発明の金属張積層体は、好ましくは、所望のポリイミドフィルムを用意し、これに所定の金属をスパッタリングすることにより、シード層、次いで金属層を形成することが望ましい。金属層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、等の物理的蒸着法や化学的蒸着法等の乾式成膜法により形成されるものであり、その方法は金属層を構成する物質に応じて適宜好適なものを選択すればよいが、本発明はスパッタリング法を用いることが望ましい。
【0049】
金属層をポリイミドフィルムの片面又は両面に形成するいずれの場合も、スパッタリングによって形成することが好ましい。スパッタリングの条件としては、ポリイミドフィルムに、アルゴンなど不活性ガスの雰囲気下で、高圧バルスを電極に印可することにより、シード層(ニッケル合金層)、金属層を形成するとよい。
【0050】
本発明の金属張積層体は、ポリイミドフィルムと金属層の接着性を高めるために、ポリイミドフィルムの表面を例えばプラズマ処理などの改質処理を施しても良い。
【0051】
本発明の金属張積層体において、金属層の表面の平均粗さRzは、好ましくは0.5μm以下である。より好ましくは0.01μm~0.3μm、更に好ましくは0.01μm~0.2μmの範囲内がよい。金属層の表面の平均粗さRzを上記範囲にすることによって、ポリイミドフィルムのHAZEを低くすることができる。
【0052】
本発明の金属張積層体において、ポリイミドフィルムと金属層との180°ピール強度は好ましくは0.5kN/m以上である。
【0053】
本発明の金属張積層体は、FPCなどの回路基板材料や電子部品を製造する過程で使用するマスクなどの部材として有用である。金属張積層体の金属層を常法によってパターン状に加工することによって、パターン化金属張積層体とすることができる。
【0054】
本発明の金属張積層体は、特に透明FPCに代表される回路基板や、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路などの他に、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、薄膜トランジスタ、透明ディスプレイ、アンテナなどとして利用可能である。
【実施例0055】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、諸物性の測定、評価は下記のとおり。
[光透過率(T450、T500)、黄色度(YI)]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)を、島津製作所社製のUV-3600分光光度計にて450nm及び500nmにおける光透過率(T450、T500)及び黄色度(YI)を測定した。ここで、YIはJIS Z 8722に準拠して、下記式(1)で表される計算式に基づいて算出した。
YI=100×(1.2879X-1.0592Z)/Y ・・・(1)
X、Y及びZ:試験片の三刺激値
厚みが10μmにおけるポリイミドフィルムのYI(10)は、上記式(1)で算出されたYIの値を下記式(2)に代入して算出した。
YI(10)=YI/L×10 ・・・(2)
L:ポリイミドフィルムの厚み(μm)
[熱膨張係数(CTE)]
ポリイミドフィルム(3mm×15mm)を、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら10℃/minの昇温速度で30℃から280℃まで昇温し、次いで、250℃から100℃までの降温し、降温時におけるポリイミドフィルムの伸び量(線膨張)から熱膨張係数を測定した。
[熱分解温度(Td1)]
窒素雰囲気下で10~20mgの重さのポリイミドフィルムを、SEIKO社製の熱重量分析(TG)装置TG/DTA6200にて一定の速度で30℃から550℃まで昇温させたときの重量変化を測定し、200℃での重量をゼロとし、重量減少率が1%の時の温度を熱分解温度(Td1)とした。
[HAZE(濁度)、全光線透過率(T.T.)]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)を、日本電色工業社製のHAZE METER NDH500にて、HAZE(濁度)及び全光線透過率(T.T.)をJIS K 7136に準拠して測定した。
[ポリアミド酸の粘度]
恒温水槽付のコーンプレート式粘度計(トキメック社製)にて、合成例で得られたポリアミド酸溶液について25℃で測定した。
[重量平均分子量(Mw)]
ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、商品名;HLC-8220GPC)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にはN,N-ジメチルアセトアミドを用いた。
[ピール強度]
ピール強度を測定するために、得られた金属張積層板について金属層を25μmにメッキアップして積層体を調製後、1mmのパターンに回路加工した。テンションテスターを用い、積層体から得られた幅1mmの回路を有するサンプルのポリイミドフィルム側を両面テープによりアルミ板に固定し、銅箔を180°方向に50mm/minの速度で剥離して、ピール強度を求めた。
[ポリイミドフィルムの表面粗度]
AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:Dimension Icon型SPM)、プローブ(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:RTESP-300)を用いて、タッピングモードで、ポリイミドフィルム表面の1μm×1μmの範囲について任意3箇所を測定し、平均粗さ(Rz)を求めた。
[回路基板の配線の外観及び接着性]
金属張積層板の金属層を所定のパターンでマスキングし、塩化第二鉄水溶液を用いて、スペース;1cm、配線幅;10μmのパターンを形成して回路基板を調製し、配線の外観を確認した。配線から50cmの距離での目視により、配線が確認できない場合を配線の外観が「良」と評価した。また、配線加工時における金属層の剥がれがなく、セロテープ(登録商標)による剥離試験で配線の剥がれがない場合を配線の接着性が「良」と評価した。
【0056】
実施例等に用いた略号は、以下の化合物を示す。
6FDA: 4,4’-(2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンカルボン酸二無水物
TFMB: 2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
BAPS:ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン
AI:5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール
DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン
APB:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
APAB:4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート
BOFAF:9,9-ジ(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
合成例1~10
ポリアミド酸溶液A~Jを合成するため、窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコの中に、表1で示した固形分濃度となるように溶剤のDMAcを加え、表1に示したジアミン成分及び酸無水物成分(モル部)を添加し、室温で72時間攪拌し、重合反応を行い、ポリアミド酸の粘稠な溶液A~Jを調製した。
【0057】
【0058】
[実施例1]
支持基材1(宇部興産社製、商品名;ユーピレックスS、厚み;75μm、塗布面の表面粗度Rz;57.8nm)の上に、ポリアミド酸溶液Aを均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。続いて、窒素雰囲気下、130℃から360℃まで段階的な熱処理を60分かけて行い、イミド化を完結し、厚みが11.6μmのポリイミド層Aを形成した。ポリイミド層Aを支持基材1から剥離し、ポリイミドフィルム1’(剥離面の表面粗度Rz;21nm)を得た。
【0059】
続いて、ポリイミドフィルム1’の剥離面に、乾式めっきとしてスパッタリング装置を用いてNi-Cr合金からなる厚み10nmのシード層となる第1金属層を形成し、更にその上に銅をスパッタリングして厚み100nmの第2金属層を形成し、金属張積層板1を調製した。金属張積層板1の金属層を所定のパターンで回路加工し回路基板1を調製した。金属張積層板1及び回路基板1の評価結果を表2に示す。
【0060】
また、金属張積層板1の金属層をエッチング除去して、ポリイミドフィルム1を調製した。ポリイミドフィルム1の評価結果を表3に示す。
[実施例2~4]
実施例1と同様に、金属張積層板2~4を調製するため、表2で示したように、ポリアミド酸溶液の種類及び硬化後の厚みを変えて、ポリイミド層B~Dを形成し、ポリイミドフィルム2’~4’を得、金属張積層板2~4を調製した後、回路基板2~4を調製した。金属張積層板2~4及び回路基板2~4の評価結果を表2に示す。
【0061】
また、実施例1と同様に、金属張積層板2~4の金属層を除去して調製したポリイミドフィルム2~4の評価結果を表3に示す。
[実施例5]
支持基材1の上に、ポリアミド酸溶液Eの希釈溶液(粘度;3000cP)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上にポリアミド酸溶液Fの希釈溶液(粘度;20000cP)を硬化後の厚みが13μmとなるように均一に塗布した後、80℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液Gの希釈溶液(粘度;3000cP)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、100℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層E/ポリイミド層F/ポリイミド層Gからなる厚みが16μmのポリイミド層5を形成し、ポリイミド積層体5を調製した。ポリイミド積層体5を支持基材1から剥離し、ポリイミドフィルム5’(剥離面の表面粗度Rz;21nm)を得た。
【0062】
実施例1と同様に、金属張積層板5を調製した後、回路基板5を調製した。金属張積層板5及び回路基板5の評価結果を表2に示す。
【0063】
また、実施例1と同様に、金属張積層板5の金属層を除去して調製したポリイミドフィルム5の評価結果を表3に示す。
[実施例6~8]
実施例1と同様に、金属張積層板6~8を調製するため、表2で示したように、ポリアミド酸溶液の種類及び硬化後の厚みを変えて、ポリイミド層H~Jを形成し、ポリイミドフィルム6’~8’を得、第2金属層の厚みを変えた金属張積層板6~8を調製した後、回路基板6~8を調製した。金属張積層板6~8及び回路基板6~8の評価結果を表2に示す。
【0064】
また、実施例1と同様に、金属張積層板6~8の金属層を除去して調製したポリイミドフィルム6~8の評価結果を表3に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
比較例1
銅箔1(電解銅箔、福田金属箔粉工業社製、商品名;CF-T9DA-SV-12、厚み;12μm、塗布面の表面粗度Rz;0.9μm)の上に、ポリアミド酸溶液Eの希釈溶液(粘度;3000cP)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上にポリアミド酸溶液Fの希釈溶液(粘度;20000cP)を硬化後の厚みが7μmとなるように均一に塗布した後、90℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液Gの希釈溶液(粘度;3000cP)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層E/ポリイミド層F/ポリイミド層Gからなる厚みが10μmのポリイミド層9を形成し、ポリイミド積層体9を調製した。
【0068】
ポリイミド積層体9の銅箔層をエッチング除去して、ポリイミドフィルム9を調製した。ポリイミドフィルム9の評価結果を表4に示す。
比較例2
銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液Eの希釈溶液(粘度;3000cP)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上にポリアミド酸溶液Fの希釈溶液(粘度;20000cP)を硬化後の厚みが22μmとなるように均一に塗布した後、90℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液Gの希釈溶液(粘度;3000cP)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、ポリイミド層E/ポリイミド層F/ポリイミド層Gからなる厚みが25μmのポリイミド層10を形成し、ポリイミド積層体10を調製した。
【0069】
ポリイミド積層体10の銅箔層をエッチング除去して、ポリイミドフィルム10を調製した。ポリイミドフィルム10の評価結果を表4に示す。
【0070】
本発明の金属張積層体は、FPC等の各種電子部品を製造するための絶縁材料としてウ有用であり、とりわけ半導体素子の実装を伴う無色透明性が要求される透明FPCに好適に用いられる。