(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002078
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置のチャンバ内の部品、プラズマ処理装置、及び、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品を再生する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103090
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏正
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA15
5F004BA04
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004BB30
5F004CA02
5F004CA03
5F004DA01
5F004DA17
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた部品の保護膜のプラズマ耐性を、チャンバを大気開放することなく維持するための技術を提供する。
【解決手段】一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品が提供される。この部品は、基材と、基材上に設けられた保護膜と、を備え得る。保護膜は、複数の第1の層及び複数の第2の層を有し得る。第1の層及び第2の層は、基材上において交互に積層され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置のチャンバ内の部品であって、
基材と、
前記基材上に設けられた保護膜と、
を備え、
前記保護膜は、複数の第1の層及び複数の第2の層を有し、
前記第1の層及び前記第2の層は、前記基材上において交互に積層される、
部品。
【請求項2】
前記第1の層の材料は、前記第2の層の材料よりも、前記プラズマ処理装置で用いられるプラズマに対する耐性が高い、
請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記保護膜において、前記第1の層及び前記第2の層のうち前記チャンバ内で露出されている層は、該第1の層である、
請求項1又は請求項2に記載の部品。
【請求項4】
前記第1の層の材料は、金属酸化物、金属炭化物、金属フッ化物、金属酸フッ化物、及びシリコンのうちの何れかである、
請求項1~3の何れか一項に記載の部品。
【請求項5】
前記第1の層の材料の前記金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムの何れかであり、前記金属炭化物は、タングステンカーバイドであり、前記金属フッ化物は、フッ化イットリウムであり、前記金属酸フッ化物は、酸フッ化イットリウムである、
請求項4に記載の部品。
【請求項6】
前記第1の層は、溶射により形成される、
請求項1~5の何れか一項に記載の部品。
【請求項7】
前記第2の層の材料は、シリコン、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びカーボンのうちの何れかである、
請求項1~6の何れか一項に記載の部品。
【請求項8】
前記第2の層の膜密度は、前記第1の層の膜密度よりも高い、
請求項1~7の何れか一項に記載の部品。
【請求項9】
前記保護膜は、複数の前記第1の層のうち前記基材に接している該第1の層を含む、
請求項1~8の何れか一項に記載の部品。
【請求項10】
中間層を更に備え、
前記中間層は、前記基材と前記保護膜の間に設けられ、該保護膜及び該基材に接しており、
前記保護膜は、複数の前記第1の層のうち前記中間層に接している該第1の層を含む、
請求項1~9の何れか一項に記載の部品。
【請求項11】
前記中間層の材料は、前記基材の材料の熱膨張率と前記第1の層の材料の熱膨張率の間にある熱膨張率を有する、
請求項10に記載の部品。
【請求項12】
前記基材の材料はアルミニウムであり、前記中間層の材料は酸化イットリムであり、前記第1の層の材料はフッ化イットリウムである、
請求項10又は請求項11に記載の部品。
【請求項13】
前記基材の材料は、セラミックスである、
請求項1~10の何れか一項に記載の部品。
【請求項14】
前記第1の層の厚みは、30μm以上60μm以下の範囲内にある、
請求項1~13のうち何れか一項に記載の部品。
【請求項15】
前記第2の層の厚みは、10μm以上30μm以下の範囲内にある、
請求項1~14のうち何れか一項に記載の部品。
【請求項16】
基板を収容するチャンバと請求項1~13の何れか一項に記載の部品とを有するプラズマ処理装置であって、
前記部品は、前記チャンバ内に設けられている、
プラズマ処理装置。
【請求項17】
プラズマ処理装置のチャンバ内の部品を再生する方法であって、該部品は基材と該基材上に設けられた保護膜とを備え、該保護膜は複数の第1の層及び複数の第2の層を有し、該第1の層及び該第2の層は該基材上において交互に積層され、該第2の層の膜密度は該第1の層の膜密度よりも高く、該保護膜において該第1の層及び該第2の層のうち該チャンバ内で露出されている層は該第1の層であり、該方法は、
(a)前記チャンバ内で露出されており該チャンバ内で行われたプラズマ処理によって変質した前記第1の層を前記保護膜から剥離して、前記第2の層を露出する工程と、
(b)前記(a)において露出された前記第2の層を前記保護膜から剥離して、新たな前記第1の層を露出する工程と、
を備える、方法。
【請求項18】
前記第1の層の材料がシリコンの場合、
前記(a)では、前記第1の層を、フッ素含有ガスを用いて生成したプラズマによるエッチングによって、前記保護膜から剥離する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の層の材料が酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、タングステンカーバイド、酸化ジルコニウム、フッ化イットリウム、酸フッ化イットリウムの場合、
前記(a)では、前記第1の層を、希ガス含有ガスを用いて生成したプラズマによるスパッタリングによって、前記保護膜から剥離する、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記(b)では、前記(a)において行われる前記第1の層の剥離によって露出された前記第2の層を、フッ素含有ガスを用いて生成したプラズマによるエッチングによって、前記保護膜から剥離する、
請求項18又は請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品、プラズマ処理装置、及び、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品を再生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスといった電子デバイスの製造においてはプラズマ処理装置が用いられる場合がある。プラズマ処理装置のチャンバ内の表面からは、プロセス処理で用いられるプラズマに晒されることによって微小パーティクルが発生する場合がある。特許文献1には、チャンバ内の表面にプラズマ耐性を有する溶射被膜を設けることによって微小パーティクルの発生を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャンバ内の部品表面に設けられる保護膜は、プラズマに晒されることにより、フッ化、酸化、もしくは、フッ化と酸化を繰り返すことで、変質し脆弱化する。脆弱化した保護膜はプラズマ耐性が劣化しており、脆弱化した保護膜からパーティクルが発生する。この場合、保護膜のプラズマ耐性を元の耐性に戻すために、一旦チャンバを大気開放して、部品を取り出し、保護膜を洗浄後、保護膜の再生やリコートをして、再度、チャンバに取付ける必要があり、別途多大な工数、コスト等が必要になり得る。また、チャンバを大気開放するため、チャンバのコンディションが変化してしまう。
【0005】
本開示は、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた部品の保護膜のプラズマ耐性を、チャンバを大気開放することなく維持するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品が提供される。この部品は、基材と、基材上に設けられた保護膜と、を備え得る。保護膜は、複数の第1の層及び複数の第2の層を有し得る。第1の層及び第2の層は、基材上において交互に積層され得る。
【発明の効果】
【0007】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた部品の保護膜のプラズマ耐性を、チャンバを大気開放することなく維持するための技術が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一つの例示的実施形態に係る部品であってプラズマ処理装置のチャンバ内の部品を再生する方法を、部品の部分拡大断面図を用いて示す図である。
【
図2】一つの例示的実施形態に係る方法であってプラズマ処理装置のチャンバ内の部品を再生する方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す部品を有するプラズマ処理装置の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0010】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品が提供される。この部品は、基材と、基材上に設けられた保護膜とを備え得る。保護膜は、複数の第1の層及び複数の第2の層を有し得る。第1の層及び第2の層は、基材上において交互に積層され得る。
【0011】
第1の層は、より高い膜密度を有する第2の層上に設けられ得るので、プラズマ処理によって第1の層のプラズマ耐性が劣化した場合でも、第2の層下の他の第1の層の劣化が抑制され得る。従って、チャンバを大気開放してチャンバ内のコンディションを変化させることなく、プロセス処理の工程として、保護膜のプラズマ耐性の劣化が、工数、コスト等をかけずに、解消され得る。プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた部品の保護膜のプラズマ耐性を、チャンバを大気開放することなく維持するための技術が提供され得る。
【0012】
一つの例示的実施形態において、第1の層の材料は、例えば、第2の層の材料よりも、プラズマ処理装置で用いられるプラズマに対する耐性が高い場合があり得る。
【0013】
一つの例示的実施形態において第1の層の材料は例えば、金属酸化物、金属炭化物、金属フッ化物、金属酸フッ化物、及びシリコンのうちの何れかであり得る。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第1の層の材料の金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、の何れかであり得る。第1の層の材料の金属炭化物は、タングステンカーバイドであり、金属フッ化物は、フッ化イットリウムであり、金属酸フッ化物は、酸フッ化イットリウムであり得る。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第2の層の材料は、例えば、シリコン、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びカーボンのうちの何れかであり得る。
【0016】
一つの例示的実施形態において、第1の層は、溶射により形成され得る。
【0017】
一つの例示的実施形態において、保護膜は、複数の第1の層のうち基材に接している第1の層を含み得る。
【0018】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品は、中間層を更に備え得る。中間層は、基材と保護膜の間に設けられ、保護膜及び該基材に接し得る。保護膜は、複数の第1の層のうち中間層に接している第1の層を含み得る。
【0019】
一つの例示的実施形態において、中間層の材料は、基材の材料の熱膨張率と第1の層の材料の熱膨張率の間にある熱膨張率を有し得る。
【0020】
一つの例示的実施形態において、基材の材料はアルミニウムであり、中間層の材料は酸化イットリムであり、第1の層の材料はフッ化イットリムであり得る。
【0021】
一つに例示的実施形態において、基材の材料は、セラミックスであり得る。
【0022】
一つの例示的実施形態では、保護膜において、第1の層及び第2の層のうちチャンバ内で露出されている層は、第1の層であり得る。
【0023】
一つの例示的実施形態において、第1の層厚みは、30μm以上60μm以下の範囲内にあり得る。
【0024】
一つの例示的実施形態において、第2の層の厚みは、10μm以上30μm以下の範囲内にあり得る。
【0025】
一つの例示的実施形態において、当該部品は、デポシールド、シャッター、排気リング、天板の少なくとも何れかに含まれ得る。
【0026】
別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。このプラズマ処理装置は、基板を収容するチャンバと上記した何れか一つの部品とを有し得る。部品は、チャンバ内に設けられ得る。
【0027】
更に別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品を再生する方法が提供される。部品は基材と基材上に設けられた保護膜とを備え得る。保護膜は複数の第1の層及び複数の第2の層を有し得る。第1の層及び第2の層は基材上において交互に積層され得る。第2の層の膜密度は第1の層の膜密度よりも高い。保護膜において第1の層及び第2の層のうちチャンバ内で露出されている層は第1の層であり得る。この方法は、(a)チャンバ内で露出されておりチャンバ内で行われたプラズマ処理によって変質した第1の層を保護膜から剥離して第2の層を露出する工程を備え得る。この方法は、(b)上記の(a)において露出された第2の層を保護膜から剥離して、新たな第1の層を露出する工程を更に備え得る。
【0028】
第1の層は、より高い膜密度を有する第2の層上に設けられ得るので、プラズマ処理によって第1の層のプラズマ耐性が劣化した場合でも、第2の層下の他の第1の層の劣化が抑制され得る。従って、チャンバを開けてチャンバ内のコンディションを変化させることなく、プロセス処理の工程として、保護膜のプラズマ耐性の劣化が、工数、コスト等をかけずに、解消され得る。プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた部品の保護膜のプラズマ耐性を、チャンバを大気開放することなく維持するための技術が提供され得る。
【0029】
上記の方法において、第1の層の材料がシリコンの場合、上記(a)の工程では、第1の層を、フッ素含有ガスを用いて生成したプラズマによるエッチングによって、保護膜から剥離し得る。
【0030】
上記の方法において、第1の層の材料が酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、タングステンカーバイド、酸化ジルコニウム、フッ化イットリウム、酸フッ化イットリウムの場合があり得る。この場合、上記(a)の工程では、第1の層を、希ガス含有ガスを用いて生成したプラズマによるスパッタリングによって、保護膜から剥離し得る。
【0031】
上記の方法において、上記(b)の工程では、上記(a)の工程において行われる第1の層の剥離によって露出された第2の層を、フッ素含有ガスを用いて生成したプラズマによるエッチングによって、保護膜から剥離し得る。
【0032】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0033】
図1は、一つの例示的実施形態に係る部品であってプラズマ処理装置のチャンバ内の部品を再生する方法を、部品の部分拡大断面図を用いて示す図である。この方法の一例(方法MT)は
図2に示されており、この部品(部品PT)が設けられているプラズマ処理装置の一例(容量結合プラズマ処理装置1)は
図3に示されている。
【0034】
図1に示す部品PTは、例えば
図3に示す容量結合プラズマ処理装置1のプラズマ処理チャンバ10内の部品である。部品PTは、基材PAと、基材PA上に設けられた保護膜CTとを備える。
【0035】
まず
図3を参照する。以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。プラズマ処理システムは、容量結合プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、容量結合プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0036】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0037】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0038】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0039】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0040】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0041】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0042】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0043】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程を容量結合プラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するように容量結合プラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てが容量結合プラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して容量結合プラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0044】
容量結合プラズマ処理装置1では、処理容器の内壁に沿ってデポシールドが着脱自在に設けられている。容量結合プラズマ処理装置1では、プラズマ処理チャンバ10内でプラズマエッチングといった基板処理が行われる。基板処理では反応生成物(デポ)が発生する。デポシールド14eは、プラズマ処理チャンバ10の側壁10aの表面に反応生成物(デポ)が付着することを防止する。
【0045】
容量結合プラズマ処理装置1は、シャッター(不図示)を更に備える。基板Wは、プラズマ処理チャンバ10の外部と内部の間で搬送されるときに、プラズマ処理チャンバ10の側壁10aに設けられた搬入出口10b及びデポシールド14eに設けられた開口を通過する。この搬入出口10bはゲートバルブGVにより開閉可能であり、デポシールド14eに設けられた開口は、シャッターによって開閉可能である。
【0046】
容量結合プラズマ処理装置1は、天板34を更に備える。天板34の下面は、プラズマ処理チャンバ10の内部の空間を画成している。天板34には、複数のガス導入口13cが設けられている。複数のガス導入口13cの各々は、天板34を板厚方向(鉛直方向)に貫通している。天板34は、限定されるものではないが、例えばシリコンから形成されている。或いは、天板34は、母材の表面に耐腐食性を有する膜を設けた構造を有し得る。
【0047】
容量結合プラズマ処理装置1は、排気リング10dを更に備える。排気リング10dは、プラズマ処理チャンバ10内の空間とガス排出口10eとの間に設けられている。プラズマ処理チャンバ10の内部のガスは、排気リング10dを介して、ガス排出口10eに排気され得る。
【0048】
部品PTは、例えば、デポシールド14e、シャッター、排気リング10d、天板34の少なくとも何れかであり得る。
【0049】
図1に戻って説明する。保護膜CTは、複数の第1の層CTA及び複数の第2の層CTBを有する。第1の層CTA及び第2の層CTBは、基材PA上において交互に積層されている。保護膜CTにおいて、第1の層CTA及び第2の層CTBのうちプラズマ処理チャンバ10内で露出されている層は、第1の層CTAである。
【0050】
第2の層CTBの膜密度は、第1の層CTAの膜密度よりも高い場合があり得る。第1の層CTAの材料は、第2の層CTBの材料よりも、容量結合プラズマ処理装置1で用いられるプラズマに対する耐性が高い場合があり得る。つまり、第1の層CTAの材料は、第2の層CTBの材料よりも、プラズマに対する消耗度が低い場合があり得る。第1の層CTAの厚みは例えば30μm以上60μm以下の範囲内にあり、第2の層CTBの厚みは例えば10μm以上30μm以下の範囲内にある。
【0051】
第1の層CTAの厚みは、積層時の表面のうねり、粗度Rz、カバレッジ性(角部、終端部のコーティング)を考慮すると、30μm以上が好ましい。第2の層CTBの厚みは、この第2の層CTBを挟む二つの第1の層CTA同士が干渉しあわないようにするために、10μm以上が好ましい。また、第2の層CTBの厚みは、エッチングによって第2の層CTBを除去することが困難とならないようにするために、30μm以下が好ましい。
【0052】
第1の層CTA及び第2の層CTBは、何れも、溶射膜であり得る。
【0053】
容量結合プラズマ処理装置1によって行われるプロセス処理の実行前において、
図1に例示する保護膜CTは、四つの第1の層CTA、及び、三つの第2の層CTBを有する。プロセス処理において、RF印加積算時間が長くなるにつれて、プラズマ処理チャンバ10内で露出されている第1の層CTAは、次第に、フッ化、酸化等によって変質し、変質層CTA1が形成され得る。
【0054】
第1の層CTAの材料は、金属酸化物、金属炭化物、金属フッ化物、金属酸フッ化物、及びシリコンのうち何れかであり得る。金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムの何れかであり得る。金属炭化物は、タングステンカーバイドであり得る。金属フッ化物は、フッ化イットリウムであり得る。金属酸フッ化物は、酸フッ化イットリウムであり得る。第2の層CTBの材料は、シリコン、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びカーボンのうちの何れかであり得る。基材PAの材料は、例えばアルミニウム及びセラミックスの少なくとも何れかであり得る。
【0055】
基材PAの材料がアルミニウムであって、保護膜CTの形成環境及び使用環境において熱の影響が比較的に大きい高温環境の場合、部品PTには中間層MLが設けられる。
図1に例示する部品PTは、中間層MLを更に備える。中間層MLは、基材PAと保護膜CTの間に設けられ、保護膜CT及び基材PAに接している。保護膜CTは、複数の第1の層CTA(
図1に示す保護膜CTの場合には四つ以下の第1の層CTA)のうち中間層MLに接している第1の層CTAを含む。中間層MLの材料は、基材PAの材料の熱膨張率と第1の層CTAの材料の熱膨張率の間にある熱膨張率を有する。例えば、中間層MLの材料は酸化イットリムであり、第1の層CTAの材料はフッ化イットリウムであり得る。
【0056】
基材PAの材料がアルミニウムであっても、保護膜CTの形成環境及び使用環境において熱の影響が比較的に小さい(高温環境ではない)場合には、保護膜CTは、中間層MLを介さずに基材PAに直接的に接することができる。このように、部品PTは中間層MLを有さず、保護膜CTは、複数の第1の層CTA(
図1に示す保護膜CTの場合には四つ以下の第1の層CTA)のうち基材PAに直接接している第1の層CTAを含んでいてもよい。
【0057】
基材PAの材料がセラミックスの場合には、保護膜CTは基材PAに直接的に接することができる。なお、保護膜CTの材料と基材PAの材料の相性が良好ではない、保護膜CTの材料と基材PAの材料の親和性が比較的に低い、基材PAの硬度が比較的に高い、等の場合には、基材PAと保護膜CTの間に中間層MLが設けられ得る。
【0058】
図1に例示するように、プロセス処理において、RF印加積算時間が長くなり、変質層CTA1が形成されると、
図2に示す方法MTの工程ST1及び工程ST2が制御部2によって実行される。方法MTは、プラズマ処理チャンバ10を大気開放することなく、制御部2によって実行され得る。
【0059】
工程ST1では、プラズマ処理チャンバ10内で露出されておりプラズマ処理チャンバ10内で行われたプラズマ処理によって変質した第1の層CTAの変質層CTA1を剥離して、第2の層CTBを露出する。工程ST1の後に、方法MTの工程ST2が実行される。工程ST2では、工程ST1において露出された第2の層CTBを保護膜CTから剥離して、新たな第1の層CTAを露出する。
【0060】
第1の層CTAの材料がシリコンの場合における工程ST1及び工程ST2について、より具体的に説明する。工程ST1では、第1の層CTAの変質層CTA1を、フッ素含有ガスを用いて生成したプラズマによるエッチングによって、保護膜CTから剥離する。工程ST2では、工程ST1において行われる第1の層CTAの剥離によって露出された第2の層CTBを、フッ素含有ガスを用いて生成したプラズマによるエッチングによって、保護膜CTから剥離する。工程ST1及び工程ST2において用いられるフッ素含有ガスは、CF4ガス、NF3ガス等であり得る。
【0061】
第1の層CTAの材料が酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、タングステンカーバイド、酸化ジルコニウム、フッ化イットリウム、酸フッ化イットリウムの場合における工程ST1及び工程ST2について、より具体的に説明する。工程ST1では、第1の層CTAを、例えばArガス等の希ガス含有ガスを用いて生成したプラズマによるスパッタリングによって、保護膜CTから剥離する。工程ST2では、工程ST1において行われる第1の層CTAの剥離によって露出された第2の層CTBを、フッ素含有ガスを用いて生成したプラズマによるエッチングによって、保護膜CTから剥離する。工程ST1では、例えば、1000[V]程度のDCバイアス電力が印加され、プラズマ処理チャンバ10内の圧力が20[mT]程度の低圧に設定され得る。部品の設置場所により第1の層CTAのエッチングレートが異なる場合には、例えば、圧力を調整することでエッチングレートが同等になるように制御してもよい。工程ST2において用いられるフッ素含有ガスは、CF4ガス、NF3ガス等であり得る。
【0062】
工程ST1及び工程ST2のそれぞれで行われるプラズマエッチングの終了タイミングは、予め設定された波長のプラズマ発光強度やVpp等の信号強度の変化をモニターすることにより検出され得る。工程ST1では変質層CTA1が保護膜CTから剥離され、工程ST2では第2の層CTBが保護膜CTから剥離される。
【0063】
以上説明したプラズマ処理チャンバ10の部品PTの構成、方法MTによれば、プラズマ処理チャンバ10内に設けられた部品PTの保護膜CTのプラズマ耐性が、プラズマ処理チャンバ10を大気開放することなく維持できる。
【0064】
従来、チャンバ内の部品表面に設けられる保護膜は、プラズマに晒されることにより、フッ化、酸化、もしくは、フッ化と酸化を繰り返すことで、変質し脆弱化する。脆弱化した保護膜はプラズマ耐性が劣化しており、脆弱化した保護膜からパーティクルが発生する。この場合、保護膜のプラズマ耐性を維持するために、一旦チャンバを大気開放して、部品を取り出し、保護膜を洗浄後、保護膜の再生やリコートをして、再度、チャンバに取付ける必要があり、別途多大な工数が必要になり得る。これに対し、上記したように、プラズマ処理チャンバ10を大気開放してプラズマ処理チャンバ10内のコンディションを変化させることなく、プロセス処理の工程として、保護膜CTのプラズマ耐性の劣化が、工数、コスト等をかけずに、解消され得る。
【0065】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0066】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0067】
1…容量結合プラズマ処理装置、10…プラズマ処理チャンバ、10b…搬入出口、10d…排気リング、14e…デポシールド、34…天板、CT…保護膜、CTA…第1の層、CTB…第2の層、GV…ゲートバルブ、ML…中間層、PA…基材、PT…部品。