(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020862
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】光電変換素子、及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230202BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 135
H01L31/04 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058731
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021124609
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山本 智史
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA20
5F151BA18
5F151CB13
5F151CB14
5F151DA20
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持できる光電変換素子の提供。
【解決手段】第1の電極2と、光電変換層と、ホール輸送層6と、第2の電極7とを有し、前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を有し、前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、式(2)の化合物を含有する膜21を有する光電変換素子である。A-X・・・式(2)
Aは、下記式のいずれか、Xはハロゲンイオンを表す。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、光電変換層と、ホール輸送層と、第2の電極とを有し、
前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を有し、
前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、下記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有する、ことを特徴とする光電変換素子。
A-X・・・一般式(2)
ただし、前記一般式(2)中、Aは、下記一般式(6)及び下記一般式(7)のいずれかで表されるアミノカチオン化合物、ピリジニウムカチオン化合物、イミダゾリニウムカチオン化合物、及びピロリジニウムカチオン化合物の少なくともいずれかであり、前記Xはハロゲンイオンを表す。
【化1】
・・・一般式(6)
ただし、前記一般式(6)中、R
1は、-H、-F、-CF
3、及び-OCH
3のいずれかを表し、nは1又は2を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【化2】
・・・一般式(7)
ただし、前記一般式(7)中、nは5以上12以下の整数を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【請求項2】
前記光電変換層が、下記一般式(3)で表される化合物を含有する、請求項1に記載の光電変換素子。
XαYβZγ ・・・一般式(3)
ただし、前記一般式(3)中、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表し、Xはハロゲン原子、Yはアミノ基を有する有機化合物、Zは金属イオンを表す。
【請求項3】
前記光電変換層が、Sb原子、Cs原子、Rb原子、及びK原子の少なくともいずれかを含有する、請求項1から2のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項4】
電子輸送層をさらに有し、
前記電子輸送層が、少なくとも酸化スズを含有する、請求項1から3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記ホール輸送層が、下記一般式(1)で表される化合物を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の光電変換素子。
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、Ar
1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい単環式、非縮合多環式又は縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表し、
Ar
4は置換基を有していてもよいベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセン、又はナフタレンの2価基を表し、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、
nは2以上の整数を表す。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物である、請求項1から5のいずれかに記載の光電変換素子。
【化4】
・・・一般式(4)
ただし、前記一般式(4)中、R
5は、メチル基又はメトキシ基を表し、R
6及びR
7は、アルコキシ基を表し、nは2以上の整数を表す。
【請求項7】
前記ホール輸送層が下記一般式(5)で表される化合物を含有する、請求項1から6のいずれかに記載の光電変換素子。
【化5】
ただし、前記一般式(5)中、R
5~R
9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表し、これらは同一であっても異なっていてもよく、Xはカチオンを表す。)
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の光電変換素子が直列又は並列に接続されたことを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換素子を利用する太陽電池は、化石燃料の代替や地球温暖化対策という観点のみならず、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても、幅広い応用が期待されている。また、自立型電源としての太陽電池は、IoT(Internet of Things)デバイスや人工衛星などで必要される環境発電(エナジーハーベスト)技術の一つとしても、大きな注目を集めている。
【0003】
太陽電池としては、従来から広く用いられているシリコンなどを用いた無機系太陽電池の他に、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などの有機系太陽電池がある。ペロブスカイト太陽電池は有機溶媒などを含む電解液を用いることなく、従来の印刷手段を用いて製造できるため、安全性の向上及び製造コストの抑制などの点で有利である。
【0004】
また、有機薄膜太陽電池及びペロブスカイト太陽電池に関して、空間的に分割された複数の光電変換素子を、直列の回路となるように電気的に接続して、出力電圧を大きくすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の光電変換素子は、
第1の電極と、光電変換層と、ホール輸送層と、第2の電極とを有し、
前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を有し、
前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、下記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有する。
A-X・・・一般式(2)
ただし、前記一般式(2)中、Aは、下記一般式(6)及び下記一般式(7)のいずれかで表されるアミノカチオン化合物、ピリジニウムカチオン化合物、イミダゾリニウムカチオン化合物、及びピロリジニウムカチオン化合物の少なくともいずれかであり、前記Xはハロゲンイオンを表す。
【化1】
・・・一般式(6)
ただし、前記一般式(6)中、R
1は、-H、-F、-CF
3、及び-OCH
3のいずれかを表し、nは1又は2を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【化2】
・・・一般式(7)
ただし、前記一般式(7)中、nは5以上12以下の整数を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、光電変換素子の一実施形態としての太陽電池セルの一例の概略図である。
【
図1B】
図1Bは、太陽電池モジュールの一実施形態を示す概略図である。
【
図1C】
図1Cは、太陽電池モジュールの他の一実施形態を示す概略図である。
【
図1D】
図1Dは、太陽電池モジュールの他の一実施形態を示す概略図である。
【
図1E】
図1Eは、太陽電池モジュールの他の一実施形態を示す概略図である。
【
図1F】
図1Fは、太陽電池モジュールの他の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用マウスのブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示したマウスの一例を示す概略外観図である。
【
図4】
図4は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用キーボードのブロック図である。
【
図5】
図5は、
図4に示したキーボードの一例を示す概略外観図である。
【
図6】
図6は、
図4に示したキーボードの他の一例を示す概略外観図である。
【
図7】
図7は、本発明の電子機器の一例としてのセンサのブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の電子機器の一例としてのターンテーブルのブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明の電子機器の一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、
図9に示した電子機器に電源ICを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、
図10に示した電子機器に蓄電デバイスを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、本発明の電源モジュールの一例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、
図12に示した電源モジュールに蓄電デバイスを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子は、第1の電極と、光電変換層と、ホール輸送層と、第2の電極とを有し、
前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を有し、
前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、下記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有する、ことを特徴とする光電変換素子。
A-X・・・一般式(2)
ただし、前記一般式(2)中、Aは、下記一般式(6)及び下記一般式(7)のいずれかで表されるアミノカチオン化合物、ピリジニウムカチオン化合物、イミダゾリニウムカチオン化合物、及びピロリジニウムカチオン化合物の少なくともいずれかであり、前記Xはハロゲンイオンを表す。
【化3】
・・・一般式(6)
ただし、前記一般式(6)中、R
1は、-H、-F、-CF
3、及び-OCH
3のいずれかを表し、nは1又は2を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【化4】
・・・一般式(7)
ただし、前記一般式(7)中、nは5以上12以下の整数を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【0010】
本発明者らは、前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、前記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有することにより、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である光電変換素子とすることができることを見出した。
【0011】
前記光電変換素子とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換すること又は電気エネルギーを光エネルギーに変換することができる素子を意味し、太陽電池やフォトダイオードなどに応用されている。
本発明における光電変換素子は、第1の電極、光電変換層、ホール輸送層、及び第2の電極を少なくとも有し、更に必要に応じて、第1の基板、電子輸送層、第2の基板、及びその他の部材を有する。
【0012】
<第1の基板>
前記第1の基板としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第1の基板の材質としては、透光性及び絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック等の基板が挙げられる。これらの中でも、後述するように電子輸送層を形成する際に焼成する工程を含む場合は、焼成温度に対して耐熱性を有する基板が好ましい。また、第1の基板としては、可とう性を有するものがより好ましい。
【0013】
前記基板は、前記光電変換素子の第1の電極側の最外部、及び第2の電極側の最外部のどちらか一方、又は両方に設けてもよい。
以下、第1の電極側の最外部に設けられる基板を第1の基板、第2の電極側の最外部に設けられる基板を第2の基板と称する。
前記基板の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50μm以上5mm以下などが挙げられる。
【0014】
<第1の電極>
第1の電極としては、その形状、大きさについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
第1の電極の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一層構造であってもよいし、複数の材料を積層する構造であってもよい。
【0016】
第1の電極の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明導電性金属酸化物、カーボン、金属などが挙げられる。
【0017】
透明導電性金属酸化物としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、「ITO」と称する)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、ニオブドープ酸化スズ(以下、「NTO」と称する)、アルミドープ酸化亜鉛(以下、「AZO」と称する)、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物などが挙げられる。
カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。
金属としては、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル、インジウム、タンタル、チタンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性が高い透明導電性金属酸化物が好ましく、ITO、FTO、ATO、NTO、AZOがより好ましい。
【0018】
第1の電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上100μm以下が好ましく、50nm以上10μm以下がより好ましい。なお、第1の電極の材質がカーボンや金属の場合には、第1の電極の平均厚みとしては、透光性を得られる程度の平均厚みにすることが好ましい。
【0019】
第1の電極は、スパッタ法、蒸着法、スプレー法等の公知の方法などにより形成することができる。
【0020】
また、第1の電極は、基板上に形成されることが好ましく、予め基板上に第1の電極が形成されている一体化された市販品を用いることができる。
一体化された市販品としては、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチックフィルム、ITOコート透明プラスチックフィルムなどが挙げられる。他の一体化された市販品としては、例えば、酸化スズ若しくは酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、又はメッシュ状やストライプ状等の光が透過できる構造にした金属電極を設けたガラス基板などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して混合又は積層したものでもよい。また、電気的抵抗値を下げる目的で、金属リード線などを併用してもよい。
また、一体化された市販品における電極を適宜加工して、後述する光電変換モジュールを作製するために、複数の第1の電極が形成された基板を作製してもよい。
【0021】
金属リード線の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。
【0022】
金属リード線は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、圧着法などで基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設ける、あるいはITOやFTOの上に設けることにより併用することができる。
【0023】
<電子輸送層>
電子輸送層とは、後述する光電変換層で生成された電子を第1の電極まで輸送する層を意味する。このため、電子輸送層は、第1の電極に隣接して配置されることが好ましい。
【0024】
電子輸送層としては、その形状、大きさについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
また、電子輸送層の構造としては、単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよい。
【0026】
電子輸送層は、電子輸送材料を含有する。
電子輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。
【0027】
半導体材料としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体を有する化合物などが挙げられる。
単体半導体としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
化合物半導体としては、例えば、金属のカルコゲニドが挙げられる。
金属のカルコゲニドとしては、例えば、金属の酸化物(酸化物半導体)、金属の硫化物、金属のセレン化物、金属のテルル化物などが挙げられる。
金属酸化物(酸化物半導体)としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物が挙げられる。
金属の硫化物としては、例えば、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物が挙げられる。
金属のセレン化物としては、例えば、カドミウム、鉛等のセレン化物が挙げられる。
金属のテルル化物としては、例えば、カドミウム等のテルル化物が挙げられる。
他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。
これらの中でも、金属酸化物(酸化物半導体)が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、及び酸化ニオブの少なくともいずれかを含有することがより好ましく、酸化スズを含有することが特に好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、半導体材料の結晶型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でもよい。
【0028】
前記電子輸送層は、前記光電変換層側の表面の前記電子輸送材料上に、ホスホン酸化合物、ボロン酸化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化シリル化合物、及びアルコキシシリル化合物の少なくともいずれかの化合物を含有することが好ましい。前記電子輸送層は、前記光電変換層側の表面の前記電子輸送材料上に、これらの化合物を含有することで、電子輸送層と光電変換層の界面の物性を制御することが期待できる。言い換えれば、前記電子輸送層の前記光電変換層側の表面において前記電子輸送材料をこれら化合物で被覆することで、電子輸送層と光電変換層の界面抵抗を減少し、電子移動をスムースにする効果が期待できる。
これらの化合物は、前記電子輸送材料と結合していてもよい。結合としては、例えば、共有結合、イオン結合などが挙げられる。
【0029】
前記化合物は、ホスホン酸化合物、ボロン酸化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化シリル化合物、及びアルコキシシリル化合物の少なくともいずれかである。
前記化合物は、後述する光電変換層(ペロブスカイト層)との相溶性の点から、窒素原子を有することが好ましい。
【0030】
ホスホン酸化合物としては、ホスホン酸基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0031】
ボロン酸化合物としては、ボロン酸基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0032】
スルホン酸化合物としては、スルホン酸基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0033】
ハロゲン化シリル化合物としては、ハロゲン化シリル基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0034】
アルコキシシリル化合物としては、アルコキシシリル基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0035】
前記化合物の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100以上500以下が挙げられる。
【0036】
前記化合物は、例えば、下記一般式(X)で表される。
【化5】
前記一般式(X)において、R
1、及びR
2は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環を表し、同一であっても異なっていてもよい。R
3は、2価のアルキレン基、2価のアリール基、又は2価のヘテロ環を表し、R
4は、ホスホン酸基、ボロン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化シリル基、又はアルコキシシリル基を表す。R
1又はR
2と、R
3と、Nとは、一緒になって環構造を形成していてもよい。
【0037】
前記化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化6】
【0038】
【0039】
電子輸送層上に、ホスホン酸やスルホン酸あるいはハロゲン化シリル基など、金属酸化物と反応する置換基を有する化合物を用いて金属酸化物表面を被覆することが好ましい。その表面を被覆する化合物の具体例としては、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェネチルホスホン酸、(1-アミノエチル)ホスホン酸、(2-アミノエチル)ホスホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-チエニルボロン酸、メチルトリクロロシラン、n-ヘキシルトリエトキシシランなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
電子輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上1μm以下が好ましく、10nm以上700nm以下がより好ましい。
【0041】
電子輸送層の光電変換層側の表面は、なるべく平滑であることが好ましい。平滑性を表す一つの指標としてラフネスファクターは小さいほど好ましいが、電子輸送層の平均厚みとの関係から、電子輸送層の光電変換層側のラフネスファクターは、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。前記ラフネスファクターの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1以上が挙げられる。
ラフネスファクターとは、見かけの表面積に対する実際の表面積の割合のことで、Wenzelのラフネスファクターとも呼ばれている。実際の表面積は、例えばBET比表面積などを測定することで測定することができ、その値を見かけの表面積で割ればラフネスファクターを求めることができる。
【0042】
電子輸送層における電子輸送材料の薄膜を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空中で電子輸送材料の薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。
真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
湿式製膜法としては、例えば、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0043】
電子輸送材料上に前記化合物を付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送材料の薄膜上に、前記化合物を含有する溶液を塗布した後に乾燥させる方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
溶液を塗布した後の乾燥処理の際の温度としては、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。
【0044】
<光電変換層>
前記光電変換層としては、光電変換を行う層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペロブスカイト層、バルクヘテロ接合層などが挙げられる。
【0045】
<<ペロブスカイト層>>
前記ペロブスカイト層とは、ペロブスカイト化合物を含み、光を吸収して電子輸送層を増感する層を意味する。そのため、ペロブスカイト層は、電子輸送層に隣接して配置されることが好ましい。
【0046】
前記ペロブスカイト層としては、その形状、大きさについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
前記ペロブスカイト化合物は、有機化合物と無機化合物の複合物質であり、以下の一般式(3)で表わされる。
XαYβZγ ・・・一般式(3)
ただし、前記一般式(3)中、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表し、Xはハロゲン原子、Yはアミノ基を有する有機化合物、Zは金属イオンを表す。
【0048】
上記の一般式(3)におけるXとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記の一般式(3)におけるYとしては、有機カチオンであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオンや、無機のアルカリ金属カチオンとしてSb原子、Cs原子、Rb原子、K原子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、無機アルカリ金属カチオンと有機カチオンとをそれぞれ併用してもよい。これらの中でも、アミノ基を有する有機化合物が好ましい。
また、ハロゲン化鉛-メチルアンモニウムのペロブスカイト化合物の場合、ハロゲンイオンがClのときは、光吸収スペクトルのピークλmaxは約350nm、Brのときは約410nm、Iのときは約540nmと、順に長波長側にシフトするため、利用できるスペクトル幅(バンド域)は異なる。
【0050】
上記の一般式(3)におけるZとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属のイオンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、前記ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。
【0052】
また、前記ペロブスカイト層の膜厚は50nm以上2μm以下が好ましく、100nm以上600nm以下がより好ましい。
【0053】
前記ペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンやハロゲン化セシウムなどを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
また、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
更に、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。 加えて、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、メチルアミンなどが充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法などが挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が好ましい。
【0054】
溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラー法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。
【0055】
また、前記ペロブスカイト層は、増感色素を含んでもよい。
前記増感色素を含んだペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペロブスカイト化合物と増感色素を混合する方法、ペロブスカイト層を形成した後で、増感色素を吸着させる方法などが挙げられる。
【0056】
前記増感色素としては、使用される励起光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記増感色素としては、例えば、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物、シアニン色素、メロシアニン色素、9-アリールキサンテン化合物、トリアリールメタン化合物、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。
前記金属錯体化合物としては、例えば、特表平7-500630号公報、特開平10-233238号公報、特開2000-26487号公報、特開2000-323191号公報、特開2001-59062号公報等に記載の金属錯体化合物などが挙げられる。
前記クマリン化合物としては、例えば、特開平10-93118号公報、特開2002-164089号公報、特開2004-95450号公報、J.Phys.Chem.C,7224,Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物などが挙げられる。
前記ポリエン化合物としては、例えば、特開2004-95450号公報、Chem.Commun.,4887(2007)等に記載のポリエン化合物などが挙げられる。
前記インドリン化合物としては、例えば、特開2003-264010号公報、特開2004-63274号公報、特開2004-115636号公報、特開2004-200068号公報、特開2004-235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)、Angew.Chem.Int.Ed.,1923,Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物などが挙げられる。
前記チオフェン化合物としては、例えば、J.Am.Chem.Soc.,16701,Vol.128(2006)、J.Am.Chem.Soc.,14256,Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物などが挙げられる。
前記シアニン色素としては、例えば、特開平11-86916号公報、特開平11-214730号公報、特開2000-106224号公報、特開2001-76773号公報、特開2003-7359号公報等に記載のシアニン色素などが挙げられる。
前記メロシアニン色素としては、例えば、特開平11-214731号公報、特開平11-238905号公報、特開2001-52766号公報、特開2001-76775号公報、特開2003-7360号公報等に記載のメロシアニン色素などが挙げられる。
前記9-アリールキサンテン化合物としては、例えば、特開平10-92477号公報、特開平11-273754号公報、特開平11-273755号公報、特開2003-31273号公報等に記載の9-アリールキサンテン化合物などが挙げられる。
前記トリアリールメタン化合物としては、例えば、特開平10-93118号公報、特開2003-31273号公報等に記載のトリアリールメタン化合物などが挙げられる。
前記フタロシアニン化合物、前記ポルフィリン化合物としては、例えば、特開平9-199744号公報、特開平10-233238号公報、特開平11-204821号公報、特開平11-265738号公報、J.Phys.Chem.,2342,Vol.91(1987)、J.Phys.Chem.B,6272,Vol.97(1993)、Electroanal.Chem.,31,Vol.537(2002)、特開2006-032260号公報、J.Porphyrins Phthalocyanines,230,Vol.3(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.,373,Vol.46(2007)、Langmuir,5436,Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。
これらの中でも、金属錯体化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物、ポルフィリン化合物が好ましい。
【0057】
<<バルクヘテロ接合層>>
バルクヘテロ接合層は、電子供与性有機材料及び電子求引性有機材料を含有する。
バルクヘテロ接合層においては、電子供与性有機材料(P型有機半導体)及び電子求引性有機材料(N型有機半導体)が混合されていることで、ナノサイズのPN接合であるバルクヘテロ接合が生じる。そうすることにより、接合面で生じる光電荷分離を利用して電流を得ることができる。
【0058】
<<<電子供与性有機材料(P型有機半導体)>>>
前記P型有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン又はその誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、オリゴチオフェン又はその誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン又はその誘導体、ポリフェニレンビニレン又はその誘導体、ポリチエニレンビニレン又はその誘導体、ベンゾジチオフェン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体等の共役ポリマーや低分子化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
これらの中でも、π共役を有する導電性ポリマーであるポリチオフェン又はその誘導体が好ましい。前記ポリチオフェン及びその誘導体は、優れた立体規則性を確保することができ、溶媒への溶解性が比較的高い点で有利である。
【0060】
前記ポリチオフェン及びその誘導体としては、チオフェン骨格を有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェンに代表されるポリアルキルチオフェン、ポリ-3-ヘキシルイソチオナフテン、ポリ-3-オクチルイソチオナフテン、ポリ-3-デシルイソチオナフテン等のポリアルキルイソチオナフテン;ポリエチレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。
【0061】
また、近年では、ベンゾジチオフェン、カルバゾール、ベンゾチアジアゾール及びチオフェンからなる共重合体であるPTB7(ポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェネジル}))、PCDTBT(ポリ[N-9’’-ヘプタデカニル-2,7-カルバゾール-アルト-5,5-(4’,7’-ジ-2-チエニル-2’,1’,3’-ベンゾチアジアゾール)])などの誘導体が、優れた光電変換効率を得られる化合物として挙げられる。
【0062】
更に、共役ポリマーだけでなく、電子供与性ユニットと電子吸引性ユニットとを結合させた低分子化合物でも優れた光電変換効率を得られる化合物が知られており、本発明にも用いることができる(例えば、ACSAppl.Mater.Interfaces2014,6,803-810参照)。
前記電子供与性有機材料としての低分子化合物の中でも、下記一般式(A)で示される化合物が好ましい。
【0063】
【0064】
ただし、前記一般式(A)中、nは、1~3の整数を表す。
R1は、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、及びn-ドデシル基のいずれかを表す。
R2は、炭素数6~22のアルキル基を有する酸素原子、炭素数6~22のアルキル基を有する硫黄原子、炭素数6~22のアルキル基を有する炭素原子、又は下記一般式(B)で表される基を表す。中でも、炭素数6~20のアルキル基を有する酸素原子、炭素数6~20のアルキル基を有する硫黄原子、炭素数6~20のアルキル基を有する炭素原子、又は下記一般式(B)で表される基が好ましい。
【0065】
【0066】
ただし、前記一般式(B)中、R3及びR4は、水素原子若しくは炭素数6~12のアルキル基を表す。
R5は、炭素数6~22の分岐鎖を有していてもよいアルキル基を表す。中でも、炭素数6~12の分岐鎖を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0067】
前記電子供与性有機材料としての低分子化合物としては、より具体的には、下記一般式(C)で表される化合物が好ましい。
【0068】
【0069】
ただし、前記一般式(C)中、R3及びR4は、水素原子若しくは炭素数6~12のアルキル基を表し、水素原子若しくは炭素数6~10のアルキル基であることが好ましい。
R5は、炭素数6~22の分岐鎖を有していてもよいアルキル基を表し、炭素数6~12の分岐鎖を有していてもよいアルキル基であることが好ましい。
【0070】
ここで、前記一般式(C)で表される化合物について、具体例を下記に示すがこれに限定されるものではない。
【0071】
【0072】
<<<電子求引性有機材料(N型有機半導体)>>>
前記電子求引性有機材料としては、例えば、イミド誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、電荷分離及び電荷輸送の点から、フラーレン誘導体が好ましい。
【0073】
前記フラーレン誘導体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよく、例えば、PC71BM(フェニルC71酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、PC61BM(フェニルC61酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、PC85BM(フェニルC85酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、ICBA(フラーレンインデン2付加体、フロンティアカーボン社製)等が挙げられる。また、この他にも、下記一般式(D)に示すフラロピロリジン系フラーレン誘導体などが挙げられる。
【0074】
【0075】
ただし、前記一般式(D)中、Y1及びY2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基のいずれかを表す。
なお、Y1とY2が同時に水素原子であることはない。
【0076】
Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0077】
Arで表される置換基を有するアリール基の置換基としては、酸素原子を除くことが好ましい。置換基としては、例えば、アリール基、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。
これらの置換基のうちで、アリール基としては、フェニル基等が挙げられる。
アルキル基、及びアルコキシ基のアルキル基部分としては、後述するY1及びY2で表されるアルキル基と同様に例えば炭素数1~22のアルキル基等が挙げられる。
これらの置換基の数、及び置換位置については、特に限定されないが、例えば、1~3個の置換基がArで表されるアリール基の任意の位置に存在することができる。
【0078】
Y1及びY2で表される基のうちで、アルキル基としては、炭素数1~22のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数6~12のアルキル基が特に好ましい。これらのアルキル基は、直鎖状及び分枝鎖状のいずれでもよいが、特に、直鎖状であることが好ましい。
なお、アルキル基には、炭素鎖中に更にS、Oなどの異種元素が1個又は2個以上含まれていてもよい。
【0079】
Y1及びY2で表される基のうちで、アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、特に好ましい具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基等の炭素数2~4の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基を挙げることができる。
【0080】
Y1及びY2で表される基のうちで、アルキニル基としては、炭素数1~10のアルキニル基が好ましく、特に好ましい具体例として、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等の炭素数2~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基などが挙げられる。
【0081】
Y1及びY2で表される基のうちで、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラリル基、フェナントリル基などが挙げられる。
【0082】
Y1及びY2で表される基のうちで、アラルキル基としては、2-フェニルエチル、ベンジル、1-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル等の炭素数7~20のアラルキル基などが挙げられる。
【0083】
上述のように、Y1及びY2で表される基の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びアラルキル基は置換基を有する場合と、置換基を有しない場合を含む。
Y1及びY2で表される基が有することができる置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシカルボニル基、ポリエーテル基、アルカノイル基、アミノ基、アミノカルボニ
ル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、基:-CONHCOR’(ただし、式中、R’はアルキル基である)、基:-C(=NR’)-R”(ただし、式中、R’及びR”はアルキル基である)、基:-NR’=CR”R’”(ただし、式中、R’、R”及びR’”はアルキル基である)などが挙げられる。
【0084】
これらの置換基のうちで、前記ポリエーテル基としては、例えば、式:Y3-(OY4)n-O-で表される基が挙げられる。ここで、Y3はアルキル基等の1価の炭化水素基を表し、Y4は2価の脂肪族炭化水素基を表す。
上記式で表されるポリエーテル基において、-(OY4)n-で表される繰り返し単位の具体例としては、-(OCH2)n-、-(OC2H4)n-、-(OC3H6)n-等のアルコキシ鎖等が挙げられる。これらの繰り返し単位の繰り返し数nは、1~20が好ましく、1~5がより好ましい。-(OY4)n-で表される繰り返し単位には、同一の繰り返し単位だけではなく、2種以上の異なる繰り返し単位が含まれていてもよい。上記した繰り返し単位のうちで、-OC2H4-及び-OC3H6-については、直鎖状及び分枝鎖状のいずれであってもよい。
【0085】
また、前記置換基のうちで、アルキル基と、アルコキシカルボニル基、アルカノイル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ポリエーテル基、基:-CONHCOR’、基:-C(=NR’)-R”、及び基:-NR’=CR”R’”におけるアルキル基部分(R’、R”)は、前述したアルキル基と同様に、炭素数1~22のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数6~12のアルキル基が特に好ましい。
【0086】
前記アミノ基、及びアミノカルボニル基におけるアミノ基部分としては、特に、炭素数1~20のアルキル基が1個又は2個以上結合したアミノ基が好ましい。
【0087】
前記一般式(D)で表されるフラーレン誘導体のうちで、好適な性能を有する化合物の例としては、Arが、置換基を有するか、若しくは置換基を有しないフェニル基であって、Y1及びY2のいずれか一方が水素原子であり、他方が、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するアルキル基、置換基としてアルコキシ基を有するアルキル基、置換基としてポリエーテル基を有するアルキル基、置換基としてアミノ基を有するアルキル基、又は置換基を有するか若しくは置換基を有しないフェニル基である化合物が挙げられる。
【0088】
このような化合物のうちで、特に優れた性能を有する化合物の一例としては、Arが置換基としてフェニル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコシキカルボニル基、又はアルキル基を有するか若しくは置換基を有しないフェニル基であって、Y1及びY2のいずれか一方が水素原子であり、他方が、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するアルキル基、置換基としてアルコキシ基を有するアルキル基、置換基としてポリエーテル基を有するアルキル基、フェニル基、置換基としてアルキル基を有するフェニル基、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するフェニル基、又は置換基としてアルコキシ基を有するフェニル基である化合物が挙げられる。
【0089】
これらの化合物は、ピロリジン骨格上に適度な極性を有する基を含むものであり、自己組織化性が良好であるために、バルクヘテロジャンクション構造の光電変換層を形成する際に、適切な層分離構造を有するバルクヘテロジャンクション構造の光電変換部を形成できる。これにより、電子移動度などが向上して高い変換効率が発現されるものと考えられる。
【0090】
最も好ましい化合物としては、Arがフェニル基であり、Y1又はY2のいずれか一方が水素原子であり、他方が無置換のアルキル基(炭素数4~6のアルキル基)、無置換のフェニル基、1-ナフチル基、又は2-ナフチル基である化合物である。
【0091】
前記バルクヘテロ接合層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法などが挙げられる。これらの中から、厚み制御や配向制御など、作製しようとする有機材料薄膜の特性に応じて適宜選択することができる。
【0092】
例えば、前記スピンコート塗布を行う場合には、P型有機半導体及びN型有機半導体の濃度が5mg/mL以上40mg/mL以下であることが好ましい。この濃度にすることにより均質な有機材料薄膜を容易に作製することができる。
【0093】
作製した有機材料薄膜から有機溶媒を除去するため、減圧下又は不活性雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。前記アニーリング処理の温度は、40℃以上300℃以下が好ましく、50℃以上200℃以下がより好ましい。また、前記アニーリング処理を行うことにより、積層した層が界面で互いに浸透して接触する実効面積が増加し、短絡電流を増大させることができる。なお、前記アニーリング処理は、電極の形成後に行ってもよい。
【0094】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、o-クロロフェノール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クロロベンゼン、クロロホルム、オルトジクロロベンゼンが好ましい。
【0095】
また、前記P型有機半導体と前記N型有機半導体の相分離構造制御のために、前記有機溶媒に0.1質量%以上10質量%以下の添加剤を加えてもよい。前記添加剤としては、例えば、ジヨードアルカン(1,8-ジヨードオクタン、1,6-ジヨードヘキサン、1,10-ジヨードデカンなど)、アルカンジチオール(1,8-オクタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオールなど)、1-クロロナフタレン、ポリジメチルシロキサン誘導体などが挙げられる。
【0096】
前記光電変換層の平均厚みは、50nm以上400nm以下が好ましく、60nm以上250nm以下がより好ましい。前記平均厚みが、50nm以上であれば、光電変換層による光吸収が少なくてキャリア発生が不充分となることはなく、400nm以下であれば、光吸収により発生したキャリアの輸送効率が一段と低下するようなことはない。
【0097】
<一般式(2)で表される化合物を含有する膜>
本発明の光電変換素子は、前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、下記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有する。
A-X・・・一般式(2)
ただし、前記一般式(2)中、Aは、下記一般式(6)及び下記一般式(7)のいずれかで表されるアミノカチオン化合物、ピリジニウムカチオン化合物、イミダゾリニウムカチオン化合物、及びピロリジニウムカチオン化合物の少なくともいずれかであり、前記Xはハロゲンイオンを表す。
【化12】
・・・一般式(6)
ただし、前記一般式(6)中、R
1は、-H、-F、-CF
3、及び-OCH
3のいずれかを表し、nは1又は2を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【化13】
・・・一般式(7)
ただし、前記一般式(7)中、nは5以上12以下の整数を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【0098】
前記一般式(6)の具体例としては、例えば、以下に示す(E-1)~(E-12)などが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
前記一般式(7)の具体例としては、例えば、5-アミノペンタン酸ヨウ化水素酸塩、5-アミノペンタン酸臭化水素酸塩、6-アミノヘキサン酸ヨウ化水素酸塩、6-アミノヘキサン酸臭化水素酸塩、7-アミノヘプタン酸ヨウ化水素酸塩、7-アミノヘプタン酸臭化水素酸塩、8-アミノヘプタン酸ヨウ化水素酸塩、8-アミノヘプタン酸臭化水素酸塩、9-アミノノナン酸ヨウ化水素酸塩、9-アミノノナン酸臭化水素酸塩、10-アミノデカン酸ヨウ化水素酸塩、10-アミノデカン酸臭化水素酸塩、11-アミノウンデカン酸ヨウ化水素酸塩、12-アミノウンデカン酸臭化水素酸塩、12-アミノドデカン酸ヨウ化水素酸塩、12-アミノドデカン酸臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0112】
本発明の光電変換素子が、前記光電変換層と前記ホール輸送層の間に前記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有することで、界面の物性を制御することが期待できる。
なお、前記光電変換層が、ペロブスカイト層である場合、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)は、前記ペロブスカイト層を構成する塩と異なる塩であることが好ましい。
【0113】
前記塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、特にペロブスカイト化合物を前記光電変換層に用いた場合には、相溶性の点で、ハロゲン原子を有することが好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、塩素、ヨウ素、臭素などが挙げられる。
【0114】
前記有機塩としては、特にペロブスカイト化合物を光電変換層に用いた場合には、相溶性の点から、アミンのハロゲン化水素酸塩であることが好ましい。
前記無機塩としては、特にペロブスカイト化合物を光電変換層に用いた場合には、相溶性の点から、アルカリ金属のハロゲン化物であることが好ましい。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが挙げられる。
【0115】
前記Aとしては、下記一般式(6)及び下記一般式(7)のいずれかで表されるアミノカチオン化合物、ピリジニウムカチオン化合物、イミダゾリニウムカチオン化合物、及びピロリジニウムカチオン化合物の少なくともいずれかである。
【化26】
・・・一般式(6)
ただし、前記一般式(6)中、R
1は、-H、-F、-CF
3、及び-OCH
3のいずれかを表し、nは1又は2を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【化27】
・・・一般式(7)
ただし、前記一般式(7)中、nは5以上12以下の整数を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【0116】
前記一般式(2)における前記Xとしては、臭素(Br)アニオン、及びヨウ素(I)アニオンなどのハロゲンアニオンなどが挙げられる。
【0117】
前記光電変換層と前記ホール輸送層の間に、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)を含有する膜を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記光電変換層上に、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)を含有する溶液を塗布した後に、乾燥し、更にその後、その上に、ホール輸送層する形成する方法が挙げられる。前記溶液としては、例えば、水溶液、アルコール溶液などが挙げられる。
塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。また、この層に膜厚の制限はなく、単分子で吸着されていても、連続性を有していないアイランド状であっても構わない。
溶液を塗布した後の乾燥処理の際の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)の膜厚は、0.5nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上50nm以下がさらに好ましい。
また、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)は、前記光電変換層と前記ホール輸送層の界面において、均一に分布させる必要はなく、例えば、局所的に複数の領域に存在するようにしてもよい(アイランド状など)。また、前記光電変換層がペロブスカイト層である場合には、ペロブスカイト化合物と、ホール輸送層のホール輸送性材料と反応させることでペロブスカイト層内やホール輸送層内に分布させるようにしてもよい。つまり、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)が存在しないペロブスカイト層と、有機塩及び無機塩が存在しないホール輸送層と、の間に前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)が存在する領域があればよい。
【0118】
<ホール輸送層>
前記ホール輸送層とは、前記光電変換層で生成されたホール(正孔)を後述する前記第2の電極まで輸送する層を意味する。このため、前記ホール輸送層は、前記塩を介して又は直接に光電変換層に隣接して配置されることが好ましい。
【0119】
前記ホール輸送層には、ホールを輸送する機能を得るために、例えば、ホール輸送材としての、ホール輸送材料又はp型半導体材料を含有していることが好ましい。
前記ホール輸送材料又は前記p型半導体材料としては、公知の有機ホール輸送性化合物を用いることができる。
【0120】
前記有機ホール輸送性化合物の具体例としては、例えば、オキサジアゾール化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、オキサジアゾール化合物、テトラアリールベンジジン化合物、スチルベン化合物、スピロ型化合物などが挙げられる。これらの中でもスピロ型化合物がより好ましい。
前記スピロ型化合物としては、下記一般式(10)を含む化合物が好ましい。
【0121】
【化28】
ただし、前記一般式(8)中、R
31~R
34は、それぞれ独立して、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチル-4-トリルアミノ基等の置換アミノ基を表す。
スピロ型化合物の具体例としては、以下に示す(D-1)~(D-20)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
前記スピロ型化合物は、高いホール移動度を有している他に、2つのベンジジン骨格分子が捻れて結合しているため、球状に近い電子雲を形成しており、分子間におけるホッピング伝導性が良好であることにより優れた光電変換特性を示す。また、溶解性も高いため各種有機溶媒に溶解し、アモルファス(結晶構造をもたない無定形物質)であるため、多孔質状の電子輸送層に密に充填されやすい。
【0130】
ホール輸送層は、固体のホール輸送性材料を含み、必要に応じてその他の材料を含む。
固体のホール輸送性材料(以下では、単に「ホール輸送性材料」と称することがある)としては、ホールを輸送できる性質を持つ材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機化合物を含有することが好ましい。
【0131】
前記ホール輸送層は、一般式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。そうすることで、ホール輸送層の抵抗が減少する効果を得ることができる。
【0132】
【化36】
ただし、前記一般式(1)中、Ar
1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい単環式、非縮合多環式又は縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表し、
Ar
4は置換基を有していてもよいベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセン、又はナフタレンの2価基を表し、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、
nは2以上の整数を表す。
上記一般式(1)で表されるポリマーの重量平均分子量としては、2,000以上になる整数を示す。
【0133】
上記一般式(1)におけるAr1は芳香族炭化水素基であり、例えばアリール基を表す。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、9-アントラセニル基等が挙げられる。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に単環式、非縮合多環式、又は縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表し、例えば、アリーレン基、2価のヘテロ環基などを表す。アリーレン基としては、例えば、1,4-フェニレン、1,1’-ビフェニレン、9,9’-ジ-n-ヘキシルフルオレン等が挙げられる。2価のヘテロ環基としては、例えば、2,5-チオフェン等が挙げられる。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
Ar4は、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセン、又はナフタレンの2価基を表し、これらは置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、2-ナフチル基等が挙げられる。前記アルキル基、及び前記アリール基は置換基を有していてもよい。
【0134】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0135】
【化37】
・・・一般式(4)
ただし、前記一般式(4)中、R
5は、メチル基又はメトキシ基を表し、R
6及びR
7は、アルコキシ基を表し、nは2以上の整数を表す。
【0136】
上記一般式(1)で表される化合物(ポリマー)の重量平均分子量としては、2,000以上150,000以下であることが好ましい。
前記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0137】
上記一般式(1)で表される化合物(ポリマー)の具体例としては、下記(A-01)~(A-20)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ただし、式中のnは2以上の整数であり、かつ上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。
なお、各ポリマーの両末端の置換基としては、例えば、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルール基などが挙げられる。
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
前記一般式(1)で表される化合物のほかに、更に下記一般式(5)で示される化合物を加えることが好ましい。
【0142】
【0143】
上記一般式(5)において、R5~R9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Xはカチオンを表す。R5及びR6、又はR6及びR7は、一緒になって環構造を形成していてもよい。
【0144】
前記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基などが挙げられる。前記アルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
前記アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基などが挙げられる。
【0145】
カチオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属カチオン、ホスホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、含窒素カチオン、スルホニウムカチオンなどが挙げられる。なお、ここでの含窒素カチオンとは、窒素原子上に陽電荷があるイオンを意味し、例えば、アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。
【0146】
前記一般式(5)で示される化合物の具体例としては、下記(B-01)~(B-28)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
前記ホール輸送層における、前記一般式(1)で表される化合物(ポリマー)Aと、前記一般式(5)で表される化合物Bとの質量比(A:B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ホール移動の点から、20:1~1:1が好ましく、10:1~1:1がより好ましい。
前記ホール輸送層の膜厚は、10nm以上1,000nm以下が好ましく、20nm以上100nm以下がより好ましい。
【0153】
ホール輸送層は、例えば、他の固体のホール輸送性材料を更に含み、必要に応じてその他の材料を含む。
他の固体のホール輸送性材料(以下では、単に「ホール輸送性材料」と称することがある)としては、ホールを輸送できる性質を持つ材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機化合物を含有することが好ましい。
【0154】
ホール輸送性材料として有機化合物を用いる場合、ホール輸送層は、例えば、複数の種類の有機化合物を含有する。
【0155】
有機化合物としては、例えば、高分子材料が挙げられる。
ホール輸送層に用いる高分子材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリチオフェン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリフェニレン化合物、ポリアリールアミン化合物、ポリチアジアゾール化合物などが挙げられる。
ポリチオフェン化合物としては、例えば、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-n-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9’-ジオクチル-フルオレン-コ-ビチオフェン)、ポリ(3,3’’’-ジドデシル-クォーターチオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(2,5-ビス(3-デシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チオフェン)若しくはポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-ビチオフェン)等が挙げられる。
ポリフェニレンビニレン化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3,7-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]若しくはポリ[(2-メトキシ-5-(2-エチルフェキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)-コ-(4,4’-ビフェニレン-ビニレン)]等が挙げられる。
ポリフルオレン化合物としては、例えば、ポリ(9,9’-ジドデシルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(4,4’-ビフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン)]若しくはポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジイル)-コ-(1,4-(2,5-ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]等が挙げられる。
ポリフェニレン化合物としては、例えば、ポリ[2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレン]、ポリ[2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ-1,4-フェニレン]等が挙げられる。
ポリアリールアミン化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ジフェニル)-N,N’-ジ(p-ヘキシルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[p-トリルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ-1,4-ビフェニレン]等が挙げられる。
ポリチアジアゾール化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール]、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール)等が挙げられる。
これらの中でも、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルを考慮すると、ポリチオフェン化合物、ポリアリールアミン化合物が好ましい。
【0156】
ホール輸送層は、上記ポリマーだけでなく低分子化合物単独あるいは低分子と高分子の混合物を含有してもよい。
低分子ホール輸送性材料としては特に化学構造に制限はなく、例えば、オキサジアゾール化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、テトラアリールベンジジン化合物、スチルベン化合物、スピロビフルオレン化合物、チオフェンオリゴマーなどが挙げられる。
オキサジアゾール化合物としては、例えば、特公昭34-5466号公報、特開昭56-123544号公報等に示されているオキサジアゾール化合物などが挙げられる。
トリフェニルメタン化合物としては、例えば、特公昭45-555号公報等に示されているトリフェニルメタン化合物などが挙げられる。
ピラゾリン化合物としては、例えば、特公昭52-4188号公報等に示されているピラゾリン化合物などが挙げられる。
ヒドラゾン化合物としては、例えば、特公昭55-42380号公報等に示されているヒドラゾン化合物などが挙げられる。
テトラアリールベンジジン化合物としては、例えば、特開昭54-58445号公報等に示されているテトラアリールベンジジン化合物などが挙げられる。
スチルベン化合物としては、例えば、特開昭58-65440号公報、特開昭60-98437号公報等に示されているスチルベン化合物などが挙げられる。
スピロビフルオレン化合物としては、例えば、特開2007-115665号公報、特開2014-72327号公報、特開2001-257012号公報、WO2004/063283号公報、WO2011/030450号公報、WO2011/45321号公報、WO2013/042699号公報、WO2013/121835号公報に示されているスピロビフルオレン化合物などが挙げられる。
チオフェンオリゴマーとしては、例えば、特開平2-250881号公報、特開2013-033868号公報に示されているチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。
【0157】
ポリマーと低分子化合物を混合する場合、それぞれのイオン化ポテンシャルの差が、0.2eV以下であることが好ましい。イオン化ポテンシャルとは分子から1個の電子を取り出すのに必要なエネルギーであり、電子ボルト(eV)の単位で表されるものである。イオン化ポテンシャルの測定方法に特に制限はないが、光電子分光法による測定が好ましい。
【0158】
ホール輸送層に含まれるその他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、添加剤、酸化剤などが挙げられる。
【0159】
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉄若しくはヨウ化銀等の金属ヨウ化物、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム若しくはヨウ化ピリジニウム等の4級アンモニウム塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム若しくは臭化カルシウム等の金属臭化物、臭化テトラアルキルアンモニウム若しくは臭化ピリジニウム等の4級アンモニウム化合物の臭素塩、塩化銅若しくは塩化銀等の金属塩化物、酢酸銅、酢酸銀若しくは酢酸パラジウム等の酢酸金属塩、硫酸銅若しくは硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、フェロシアン酸塩-フェリシアン酸塩若しくはフェロセン-フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム若しくはアルキルチオール-アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン等、ピリジン、4-t-ブチルピリジン若しくはベンズイミダゾール等の塩基性化合物を挙げることができる。
【0160】
更に、酸化剤を加えることができる。酸化剤の種類としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4-ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀、コバルト錯体、4-イソプロピル-4‘-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。なお、酸化剤により、ホール輸送性材料の全体が酸化される必要はなく、一部が酸化されていれば有効である。また、酸化剤は、反応後に系外に取り出しても、取り出さなくてもよい。
ホール輸送層が酸化剤を含むことにより、ホール輸送性材料の一部又は全部をラジカルカチオンにすることができるため、導電性が向上し、出力特性の耐久性や安定性を高めることが可能になる。
【0161】
ホール輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光電変換層上においては、0.01μm以上20μm以下が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましく、0.2μm以上2μm以下が更に好ましい。
【0162】
ホール輸送層は、光電変換層の上に直接形成することができる。ホール輸送層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストなどの点で、特に湿式製膜法が好ましく、光電変換層上に塗布する方法がより好ましい。
湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの方法を用いてもよい。
【0163】
また、ホール輸送層は、例えば、超臨界流体又は臨界点より低い温度及び圧力の亜臨界流体中で製膜することにより作製してもよい。
超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度及び圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態である流体を意味する。超臨界流体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する流体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体として挙げられる流体は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
【0164】
超臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、アルコール溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン溶媒、エーテル溶媒などが挙げられる。
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノールなどが挙げられる。
炭化水素溶媒としては、例えば、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。ハロゲン溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどが挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジメチルエーテルなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、二酸化炭素が、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるとともに、不燃性で取扱いが容易である点で好ましい。
【0165】
超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体の臨界温度としては、-273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下がより好ましい。
【0166】
更に、超臨界流体及び亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。有機溶媒及びエントレーナーを添加することにより、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0167】
また、光電変換層上に、ホール輸送性材料を積層した後、プレス処理工程を施してもよい。プレス処理を施すことによって、ホール輸送性材料が光電変換層とより密着するため、発電効率が改善できる場合がある。
プレス処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、IR(infrared spectroscopy)錠剤成形器に代表されるような平板を用いたプレス成形法、ローラー等を用いたロールプレス法などを挙げることができる。
プレス処理する際の圧力としては、10kgf/cm2以上が好ましく、30kgf/cm2以上がより好ましい。
プレス処理する時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。また、プレス処理時に熱を加えてもよい。
【0168】
プレス処理の際、プレス機と電極との間に離型剤を挟んでもよい。
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0169】
--金属酸化物を含む膜--
プレス処理工程を行った後、第2の電極を設ける前に、ホール輸送層と第2の電極との間に金属酸化物を含む膜を設けてもよい。
金属酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化モリブデンが好ましい。
金属酸化物を含む膜をホール輸送層上に設ける方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法などが挙げられる。
【0170】
金属酸化物を含む膜を形成する際の湿式製膜法としては、金属酸化物の粉末又はゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層上に塗布する方法が好ましい。
湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの方法を用いてもよい。
【0171】
金属酸化物を含む膜の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましい。
【0172】
<第2の基板>
前記第2の基板としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック等の基板が挙げられる。第2の基板と封止部材との接合部は密着性を上げるため、凹凸部を形成してもよい。
前記凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、研磨紙、化学エッチング法、レーザー加工法などが挙げられる。
【0173】
前記第2の基板と封止部材との密着性を上げる手段としては、例えば、表面の有機物を除去してもよく、親水性を向上させてもよい。前記第2の基板の表面の有機物を除去する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UVオゾン洗浄、酸素プラズマ処理などが挙げられる。
【0174】
<<封止部材>>
本発明の光電変換素子は、少なくとも前記電子輸送層及びホール輸送層を、光電変換素子の外部環境から遮蔽することが可能な封止部材を用いることが可能であり、有効である。言い換えると、本発明においては、光電変換層を光電変換素子の外部環境から遮蔽する封止部材を更に有することが好ましい。
前記封止部材としては、外部環境から封止内部への過剰な水分や酸素などの侵入を低減できるものであれば、従来公知の部材を使用可能である。また、前記封止部材は、外部から押圧されることによる機械的な破壊を防止する効果もあり、これを実現可能なものであれば、従来公知の部材を使用可能である。
【0175】
封止の方式は、光電変換素子の光電変換層で構成される発電領域の周縁部に封止部材を設け、第2の基板と接着する「枠封止」と、前記発電領域全面に封止部材を設け、第2の基板と接着する「面封止」に大別できる。前者の「枠封止」は、封止内部に中空部を形成することができるため、封止内部の水分量や酸素量を適正に調整することが可能であり、また第2の電極が封止部材と接触していないために、電極剥がれの影響を低減できる効果がある。一方、後者の「面封止」は、外部からの過剰な水や酸素の侵入を防止する効果に優れており、また封止部材との接着面積が大きいため、封止強度が高く、特に第1の基板にフレキシブル基板を用いた場合に適している。
【0176】
前記封止部材の種類については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であり、例えば、硬化樹脂や低融点ガラス樹脂などが挙げられる。硬化樹脂としては、光や熱によって硬化する樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であるが、中でもアクリル樹脂やエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0177】
前記アクリル樹脂の硬化物は、分子内にアクリル基を有するモノマー又はオリゴマーが硬化されたものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
前記エポキシ樹脂の硬化物は、分子内にエポキシ基を有するモノマー又はオリゴマーが硬化されたものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられる。これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0178】
前記エポキシ樹脂は、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。
前記硬化剤としては、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系及びその他の硬化剤に分類され、目的に応じて適宜選択される。
前記アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
前記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
前記その他の硬化剤としては、例えば、イミダゾール類、ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0179】
前記添加剤としては、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。
【0180】
前記充填材は、水分や酸素の浸入を抑制する上で有効であるほか、硬化時の体積収縮の低減、硬化時又は加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御等の効果を得ることができ、様々な環境でも安定した出力を維持する上で非常に有効である。特に、光電変換素子の出力特性やその耐久性は、単に侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時又は加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。
この場合、封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。これは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境に保存した際にも有効である。
【0181】
前記充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性又は不定形のシリカ、タルク、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材が好ましく用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。充填材の平均一次粒径は、0.1μm以上10μmが好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。添加量が好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性の向上、又は封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
【0182】
前記充填材の含有量としては、封止部材全体が100質量部に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。充填材の含有量が上記範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0183】
前記ギャップ剤とは、ギャップ制御剤又はスペーサー剤とも称され、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1の基板もしくは第1の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第2の基板を載せて封止を行う場合、エポキシ樹脂にギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
前記ギャップ剤としては、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものであれば、公知の材料を使用できる。エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ギャップ剤の平均粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0184】
前記重合開始剤は、例えば、熱を用いて重合を開始させる熱重合開始剤、光を用いて重合を開始させる光重合開始剤などが挙げられる。
前記熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物で、具体的には2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物等が用いられる。熱カチオン重合開始剤としてはベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。
一方、前記光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合、光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、強酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
前記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。
【0185】
また、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、例えば、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合開始剤の添加量としては、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体が100質量部に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止でき、有効である。
【0186】
前記乾燥剤は、吸湿剤とも称され、水分を物理的又は化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高めたり、アウトガスの影響を低減できたりする場合もあることから有効である。
前記乾燥剤としては、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトや酸化カルシウムが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0187】
前記硬化促進剤は、硬化触媒とも称され、硬化速度を速めることを目的として用いられ、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。
前記硬化促進剤としては、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミン又は三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィン又はホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0188】
前記カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有し、シランカップリング剤が挙げられ、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0189】
更に、前記封止部材は、封止材、シール材又は接着剤として市販されているエポキシ樹脂組成物が知られており、本発明においても有効に使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物もあり、本発明において特に有効に使用できる。例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(スリーボンド社製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学株式会社製)、WB90US(P)(モレスコ社製)等が挙げられる。
アクリル樹脂の前記市販品としては、例えば、商品名:TB3035B、TB3035C(以上、スリーボンド社製)、NICHIBAN UM(以上、ニチバン株式会社製)などが挙げられる。
これらの封止部材は、紫外線の照射等で硬化させた後に、熱処理を行うことが可能であり、本発明においては有効である。熱処理を行うことによって、未硬化成分の量を低減させることが可能な場合があり、出力特性に影響するアウトガス量の低減や、封止性能が高まり、出力特性及びその持続性を高める上で有効である。
【0190】
一方、低融点ガラス樹脂は、樹脂塗布後に焼成を行うことにより、樹脂成分を分解させた後、赤外線レーザ等により溶融させながら、ガラス基板と密着させて封止を行う。この時、低融点ガラス成分は金属酸化物層の内部に拡散し、物理的に接合されることで、高い封止性能を得ることができる。また、樹脂成分が消失していることで、紫外線硬化樹脂のようにアウトガスが発生しないため、光電変換素子の高耐久化に対し有効である。一般に、ガラスフリット、あるいはガラスペーストとして市販されており、これらを有効に使用することができる。本発明においては、より低融点のものが好ましい。
【0191】
熱処理温度は、特に制限されるものではなく、用いる封止部材に合わせて自由に設定できるが、50℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上150℃以下がより好ましく、70℃以上100℃以下がさらに好ましい。熱処理時間については、特に制限されるものではなく、用いる封止部材に合わせて自由に設定できるが、10分以上10時間以下が好ましく、20分以上5時間以下がより好ましく、30分以上3時間以下がさらに好ましい。
【0192】
また、本発明においては、シート状封止材も有効に使用できる。
シート状封止材とは、シート上に予め樹脂層を形成したもので、シートはガラスやガスバリア性の高いフィルム等が用いられ、本発明における第2の基板に該当する。シート状封止材を、光電変換素子の第2の電極の上に貼り付け、その後硬化させることにより、封止部材及び基板を一度に形成することができる。シート上に形成する樹脂層が全面に形成されていれば、「面封止」になるが、樹脂層の形成パターンにより、光電変換素子の内部に中空部を設けた「枠封止」にすることもできる。
封止内部の中空部に酸素を含有させることによって、ホール輸送層のホール輸送機能を長期にわたって安定に維持することが可能になり、光電変換素子の耐久性向上に対して有効な場合がある。本発明において、封止することによって設けられた封止内部の中空部の酸素濃度は、酸素が含有していれば効果が得られるが、5.0体積%以上21.0体積%以下がより好ましく、10.0体積%以上21.0体積%以下がさらに好ましい。
【0193】
前記中空部の酸素濃度は、酸素濃度を調整したグローブボックス内で封止を行うことにより制御することができる。
酸素濃度の調整は、特定の酸素濃度を有するガスボンベを使用する方法や、窒素ガス発生装置を用いる方法によって行うことができる。
グローブボックス内の酸素濃度は、市販されている酸素濃度計又は酸素モニターを用いて測定できる。
封止によって形成された前記中空部内の酸素濃度の測定は、例えば、封止パッケージ内水分・残留ガス分析(IVA)や大気圧イオン化質量分析計(API-MS)などによって行うことができる。具体的には、光電変換素子を高真空下、あるいは不活性ガスで満たしたチャンバー内に設置し、チャンバー内で封止を開封し、チャンバー内のガスや水分を質量分析することにより、中空部内に含まれる気体中のすべての成分を定量し、その総和に対する酸素の割合を算出することにより、酸素濃度を求めることができる。
【0194】
封止内部に含有する酸素以外のガスとしては、不活性ガスが好ましく、窒素やアルゴンなどが好ましい。
封止を行う際、グローブボックス内は酸素濃度とともに、露点を制御することが好ましく、出力やその耐久性向上に有効である。露点とは、水蒸気を含む気体を冷却したとき、凝結が開始される温度として定義される。
前記露点としては、特に制限されるものではないが、0℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましい。下限としては、-50℃以上が好ましい。
【0195】
封止部の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、ディスペンス法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、凸版、オフセット、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
【0196】
更に、封止部材と第2の電極との間にパッシベーション層を設けてもよい。パッシベーション層としては、封止部材が第2の電極に接しないように配置されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化シリコンなどが好ましく用いられる。
【0197】
<その他の部材>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0198】
以下、図面を参照しながら、本発明の光電変換素子の一例について説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、下記構成部材の数、位置、形状等について、本実施の形態に記載されていないものについても、本発明の範疇に含まれる。
【0199】
<第1の実施形態>
図1Aは、光電変換素子の一実施形態としての太陽電池セルの一例の概略図である。
図1Aの太陽電池セル50は、第1の電極2と、緻密な電子輸送層3と、光電変換層であるペロブスカイト層5と、ホール輸送層6と、第2の電極7とを有する。
第1の電極2は、緻密な電子輸送層3と接している。
緻密な電子輸送層3は、ペロブスカイト層5と接している。
ペロブスカイト層5は、ホール輸送層6と接している。ペロブスカイト層5とホール輸送層6との間に一般式(2)で表される化合物を含有する膜(層)21を有する。
ホール輸送層6は、第2の電極7と接している。
【0200】
(光電変換モジュール)
本発明の光電変換モジュールは、複数の本発明の光電変換素子が、直列又は並列に電気的に接続されてなる。
光電変換モジュールは、例えば、基板上に複数の本発明の光電変換素子を有し、前述の基板とは異なる第2の基板、封止部材を更に有することが好ましく、必要に応じてその他の部材を有する。
前記光電変換モジュールとしては、例えば、光電変換モジュールが挙げられる。
【0201】
前記光電変換モジュールは、複数の本発明の光電変換素子が、基板上に複数設けられている光電変換モジュールであって、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、ホール輸送層が、互いに連続しており、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における第1の電極、電子輸送層、及び光電変換層が、ホール輸送層により隔てられていることが好ましい。そのような光電変換モジュールにおいては、電子輸送層、及び光電変換層が切断されていることにより、拡散による電子の再結合が少なくなっているため、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。
【0202】
本発明の光電変換モジュールは、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置に応用できる。電源装置を利用している機器類として、例えば、電子卓上計算機や腕時計が挙げられる。また、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等に本発明の光電変換モジュールを有する電源装置を適用することもできる。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源、2次電池などと組み合わせることにより夜間等でも利用できる電源などとしても、本発明の光電変換モジュールを有する電源装置を用いることができる。更に、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源として、IoTデバイスや人工衛星などに用いることもできる。
【0203】
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュールは、複数の本発明の光電変換素子が、直列又は並列に電気的に接続されてなる。
本発明の太陽電池モジュールは、前記光電変換モジュールと同様である。
【0204】
以下、図面を参照しながら、本発明の光電変換素子の一例について説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、下記構成部材の数、位置、形状等について、本実施の形態に記載されていないものについても、本発明の範疇に含まれる。
【0205】
<第2の実施形態>
[太陽電池モジュールの構成]
図1Bは、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図1Bに示すように、太陽電池モジュール100は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極7を有する光電変換素子を、第1の基板1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極7は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール100には、第2の基板10が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
太陽電池モジュール100においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3、多孔質層4、ペロブスカイト層5が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層であるホール輸送層7で隔てられている。
【0206】
<第3の実施形態>
[太陽電池モジュールの構成]
図1Cは、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図1Cに示すように、太陽電池モジュール101は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8を有する光電変換素子を、第1の基板1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極7は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール101には、第2の基板11が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
太陽電池モジュール101においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3、ペロブスカイト層5が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層であるホール輸送層7で隔てられている。
【0207】
<第4の実施形態>
[太陽電池モジュールの構成]
図1Dは、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図1Dに示すように、太陽電池モジュール102は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8を有する光電変換素子を、第1の基板1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極8は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール102には、第2の基板11が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
太陽電池モジュール102においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層である多孔質層4、ペロブスカイト層5、ホール輸送層7で隔てられている。
【0208】
<第5の実施形態>
[太陽電池モジュールの構成]
図1Eは、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図1Eに示すように、太陽電池モジュール103は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8を有する光電変換素子を、第1の基板1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極8は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール103には、第2の基板11が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
太陽電池モジュール103においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3、多孔質層4が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層であるペロブスカイト層5、ホール輸送層7で隔てられている。
【0209】
<第6の実施形態>
[太陽電池モジュールの構成]
図1Fは、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図1Fに示すように、太陽電池モジュール104は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の膜(層)6、ホール輸送層7、第2の電極8を有する光電変換素子を、第1の基板1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極8は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール104には、第2の基板11が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
【0210】
太陽電池モジュール104においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層であるペロブスカイト層5、ホール輸送層7で隔てられている。
【0211】
太陽電池モジュール100~104は、第1の基板1と封止部材10と第2の基板11により封止されている。そのため、第2の電極8と第2の基板11との間に存在する中空部における水分量や酸素濃度を制御することが可能である。太陽電池モジュール100~104の中空部の水分量や酸素濃度を制御することにより、発電性能や耐久性を向上できる。すなわち、太陽電池モジュールが、光電変換素子を挟むように第1の基板と対向して配置される第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間に配置され、光電変換素子を封止する封止部材とを更に有することにより、中空部の水分量や酸素濃度を制御ことができるため、発電性能や耐久性を向上できる。
なお、中空部内の酸素濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0%以上21%以下が好ましく、0.05%以上10%以下がより好ましく、0.1%以上5%以下が更に好ましい。
【0212】
また、太陽電池モジュール100~104においては、第2の電極8と第2の基板11が接触していないため、第2の電極8の剥離や破壊を防止することができる。
【0213】
さらに、太陽電池モジュール100~104は、光電変換素子aと光電変換素子bとを、電気的に接続する貫通部9を有する。太陽電池モジュール100~104においては、光電変換素子aの第2の電極8aと光電変換素子bの第1の電極2bとが、ホール輸送層7を貫通する貫通部8によって電気的に接続されることにより、光電変換素子aと光電変換素子bとが、直列に接続されている。このように、複数の光電変換素子が直列に接続されることにより、太陽電池モジュールの開放電圧を大きくすることができる。
【0214】
なお、貫通部9については、第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで達していてもよいし、第1の電極2の内部で加工をやめ、第1の基板1にまで達していなくてもよい。貫通部9の形状を第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで到達する微細孔とする場合、貫通部9の面積に対して微細孔の開口面積合計が大きくなりすぎると、第1の電極2の膜断面積が減少することで抵抗値が増大してしまい、光電変換効率の低下を引き起こす場合がある。そのため、貫通部9の面積に対する微細孔の開口面積合計の比率は、5/100以上60/100以下であることが好ましい。
【0215】
また、貫通部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、化学エッチング法、レーザー加工法、研磨紙を用いた方法などが挙げられる。これらの中でも、微細な孔をサンドやエッチング、レジスト等を使うことなく形成でき、これにより清浄に再現性よく加工することができるため、レーザー加工法が好ましい。また、レーザー加工法が好ましい理由としては、貫通部8を形成するとき、緻密層3、多孔質層4、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8のうち少なくとも一つを、レーザー加工法による衝撃剥離によって除去することが可能になることも挙げられる。これにより、積層時にマスクを設ける必要がなく、また、光電変換素子を形成する材料の除去と貫通部の形成とを、まとめて簡易に行うことができる。
【0216】
ここで、光電変換素子aにおけるペロブスカイト層と、光電変換素子bにおけるペロブスカイト層との間は、延設されていても区切られていても良く、区切られた場合の距離としては、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。光電変換素子aにおけるペロブスカイト層と、光電変換素子bにおけるペロブスカイト層との間の距離が、1μm以上100μm以下であると、多孔質酸化チタン層やペロブスカイト層が切断されており、拡散による電子の再結合が少なくなっているため、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。すなわち、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、一の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層と、他の光電変換素子における 電子輸送層及びペロブスカイト層との間の距離が、1μm以上100μm以下であることにより、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。
なお、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における、一の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層と、他の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層との間の距離とは、それぞれの光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層の外周部(端部)どうしの距離の中で、最も短い部分の距離を意味する。
【0217】
本発明の太陽電池モジュールは、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置に応用できる。電源装置を利用している機器類として、例えば、電子卓上計算機や腕時計が挙げられる。また、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等に本発明の光電変換素子を有する電源装置を適用することもできる。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源、2次電池などと組み合わせることにより夜間等でも利用できる電源などとしても、本発明の光電変換素子を有する電源装置を用いることができる。さらに、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源として、IoTデバイスや人工衛星などに用いることもできる。
【0218】
(電子機器)
本発明の電子機器は、本発明の光電変換モジュール、前記光電変換モジュール、及び本発明の太陽電池モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
【0219】
(電源モジュール)
本発明の電源モジュールは、本発明の光電変換モジュール、前記光電変換モジュール、及び本発明の太陽電池モジュールの少なくともいずれかと、電源IC(Integrated Circuit)と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
【0220】
次に、本発明の光電変換モジュール、前記光電変換モジュール、及び本発明の太陽電池モジュールの少なくともいずれかと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の具体的な実施形態について説明する。
【0221】
図2は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用マウスのブロック図である。
図2に示すように、光電変換モジュールと電源IC、更に蓄電デバイスとを組み合わせ、供給される電力をマウスの制御回路の電源に接続する。これにより、マウスを使用していない時に蓄電デバイスに充電し、その電力でマウスを動作させることができ、配線や電池交換が不要なマウスを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
【0222】
図3は、
図2に示したマウスの一例を示す概略外観図である。
図3に示すように、光電変換モジュール及び電源IC、蓄電デバイスはマウス内部に実装されるが、光電変換モジュールの光電変換素子に光が当たるように光電変換素子の上部は透明の筐体で覆われている。また、マウスの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子の配置はこれに限られるものではなく、例えばマウスを手で覆っていても光が照射される位置に配置することも可能であり、好ましい場合がある。
【0223】
次に、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
【0224】
図4は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用キーボードのブロック図である。
図4に示すように、光電変換モジュールの光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をキーボードの制御回路の電源に接続する。これにより、キーボードを使用していない時に蓄電デバイスに充電し、その電力でキーボードを動作させることができ、配線や電池交換が不要なキーボードを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
【0225】
図5は、
図4に示したキーボードの一例を示す概略外観図である。
図5に示すように、光電変換モジュールの光電変換素子及び電源IC、蓄電デバイスはキーボード内部に実装されるが、光電変換素子に光が当たるように光電変換素子の上部は透明の筐体で覆われている。キーボードの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子の配置はこれに限られるものではない。光電変換素子を組み込むスペースが小さい小型のキーボードの場合には、
図6に示すように、キーの一部に小型の光電変換素子を埋め込むことも可能であり、有効である。
【0226】
次に、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
【0227】
図7は、本発明の電子機器の一例としてのセンサのブロック図である。
図7に示すように、光電変換モジュールの光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をセンサ回路の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、センサモジュールを構成することが可能となる。センシング対象としては、温湿度、照度、人感、CO
2、加速度、UV、騒音、地磁気、気圧など、様々なセンサに応用でき、有効である。センサモジュールは、
図7に示すように、定期的に測定対象をセンシングし、読み取ったデータをPCやスマートフォンなどに無線通信で送信する構成になっている。
IoT(Internet of Things)社会の到来により、センサは急増することが予想されている。この無数のセンサの電池を一つ一つ交換するには大きな手間がかかり、現実的ではない。またセンサは、天井や壁など、電池交換しにくい場所にあることも作業性を悪くしている。光電変換素子により電力供給できることもメリットは非常に大きい。また、本発明の光電変換モジュールは、低照度でも高い出力を得ることができ、かつ出力の光入射角依存性が小さいことから、設置自由度が高いといったメリットも得られる。
【0228】
次に、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
【0229】
図8は、本発明の電子機器の一例としてのターンテーブルのブロック図である。
図8に示すように、光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をターンテーブル回路の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、ターンテーブルを構成することが可能となる。
ターンテーブルは、例えば商品を陳列するショーケースなどに用いられるが、電源の配線は見栄えが悪く、また電池交換の際には陳列物を撤去しなければならず、大きな手間がかかっていた。本発明の光電変換モジュールを用いることで、そのような不具合を解消でき、有効である。
【0230】
以上、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器、及び電源モジュールについて説明したが、これらはごく一部であり、本発明の光電変換モジュールが、これらの用途に限定されるものではない。
【0231】
<用途>
本発明の光電変換モジュールは、自立型電源として機能させることができ、光電変換によって発生した電力を用いて、装置を動作させることが可能である。本発明の光電変換モジュールは、光が照射されることにより発電することが可能であるため、電子機器を電源に接続したり、あるいは電池交換したりする必要がない。そのため、電源設備がない場所でも電子機器を動作させたり、身に着けて持ち歩いたり、電池交換が困難な場所でも電池を交換することなく、電子機器を動作させたりすることが可能である。また、乾電池を用いる場合は、その分、電子機器が重くなったり、サイズが大きくなったりするため、壁や天井への設置、あるいは持ち運びに支障をきたすことがあるが、本発明の光電変換モジュールは、軽量で薄いため、設置自由度が高く、身に着けたり、持ち歩く上でもメリットが大きい。
【0232】
このように、本発明の光電変換モジュールは、自立型電源として使用でき、様々な電子機器に組み合わせることができる。例えば、電子卓上計算機、腕時計、携帯電話、電子手帳、電子ペーパーなどの表示機器、マウスやキーボードなどのパソコンの付属機器、温湿度センサや人感センサなどの各種センサ機器、ビーコンやGPSなどの発信機、補助灯、リモコン等数多くの電子機器と組み合わせて使用することができる。
また、光電変換素子または光電変換モジュールにフレキシブル性を持たせることで、フレキシブルデバイスにも適用することができる。
【0233】
本発明の光電変換モジュールは、特に低照度の光でも発電できるため、室内でも、更に薄暗い影のところでも発電することが可能であるため、適用範囲が広い。また、乾電池のように液漏れがなく、ボタン電池のように誤飲することもなく安全性が高い。更に、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることができる。このように、本発明の光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせることで、軽量で使い勝手がよく、設置自由度が高く、交換が不要で、安全性に優れ、かつ環境負荷低減にも有効な電子機器に生まれ変わることができる。
【0234】
本発明の光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせた電子機器の基本構成図を
図9に示す。これは、光電変換素子に光が照射されると発電し、電力を取り出すことができる。機器の回路は、その電力によって動作することが可能になる。
【0235】
しかし、光電変換モジュールの光電変換素子は周囲の照度によって出力が変化するため、
図9に示す電子機器は安定に動作することができない場合がある。この場合、
図10に示すように、回路側に安定した電圧を供給するために、光電変換素子と機器の回路の間に光電変換素子用の電源ICを組み込むことが可能であり、有効である。
しかし、光電変換モジュールの光電変換素子は十分な照度の光が照射されていれば発電できるが、発電するだけの照度が足りなくなると、所望の電力が得られなくなり、これが光電変換素子の欠点でもある。この場合には、
図11に示すように、キャパシタ等の蓄電デバイスを電源ICと機器回路の間に搭載することによって、光電変換素子からの余剰電力を蓄電デバイスに充電することが可能となり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子に光が当たらない場合でも、蓄電デバイスに蓄えられた電力を機器回路に供給することが可能になり、安定に動作させることが可能となる。
【0236】
このように、本発明の光電変換モジュールと、機器回路とを組み合わせた電子機器において、電源ICや蓄電デバイスを組み合わせることで、電源のない環境でも動作可能であり、また電池交換が不要で、安定に駆動させることが可能になり、光電変換素子のメリットを最大限に活かすことができる。
【0237】
一方、本発明の光電変換モジュールは、電源モジュールとしても使用することが可能であり、有用である。例えば、
図12に示すように、本発明の光電変換モジュールと、光電変換素子用の電源ICを接続すると、光電変換モジュールの光電変換素子が光電変換することによって発生した電力を電源ICにて一定の電圧レベルで供給することが可能な直流電源モジュールを構成することができる。
更に、
図13に示すように、電源ICに蓄電デバイスを追加することにより、光電変換モジュールの光電変換素子が発生させた電力を蓄電デバイスに充電することが可能になり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子に光が当たらない状態になっても、電力を供給することが可能な電源モジュールを構成することができる。
図12及び
図13に示した本発明の電源モジュールは、従来の一次電池のように電池交換をすることなく、電源モジュールとして使用することが可能である。
【実施例0238】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。
【0239】
(製造例1)
<高分子化合物(A-05)の合成>
下記反応により高分子化合物(A-05)を合成した。
【0240】
【0241】
100ml四つ口フラスコに、上記のジアルデヒド化合物0.66g(2.0mmol)及びジホスホネート1.02g(2.0mmol)を入れ、窒素置換してテトラヒドロフラン75mlを加えた。 この溶液にカリウムt-ブトキシドの1.0mol・dm-3テトラヒドロフラン溶液6.75ml(6.75mmol)を滴下し室温で2時間撹拌した後、ベンジルホスホン酸ジエチル及びベンズアルデヒドを順次加え、更に2時間撹拌した。 酢酸およそ1mlを加えて反応を終了し、溶液を水洗した。溶媒を減圧留去した後テトラヒドロフラン及びメタノールを用いて再沈澱による精製を行ない、高分子化合物(A-05)を0.95g得た。ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は8500、重量平均分子量は20,000であった。理研計器製光電子分光装置AC-2を用いて測定したイオン化ポテンシャルは5.20eVであった。以下、記載されているイオン化ポテンシャルは全てAC-2にて測定した値である。
【0242】
(製造例2)
<高分子化合物(A-01)の合成>
高分子化合物(A-01)は、対応するジアルデヒド化合物とジホスホネート化合物を用いた以外は、高分子化合物(A-05)の合成と同様の方法で合成を行った。
【0243】
(製造例3)
<高分子化合物(A-03)の合成>
高分子化合物(A-03)は、対応するジアルデヒド化合物とジホスホネート化合物を用いた以外は、高分子化合物(A-05)の合成と同様の方法で合成を行った。
【0244】
(製造例4)
<高分子化合物(A-04)の合成>
高分子化合物(A-04)は、対応するジアルデヒド化合物とジホスホネート化合物を用いた以外は、高分子化合物(A-05)の合成と同様の方法で合成を行った。
【0245】
(製造例5)
<高分子化合物(A-07)の合成>
高分子化合物(A-07)は、対応するジアルデヒド化合物とジホスホネート化合物を用いた以外は、高分子化合物(A-05)の合成と同様の方法で合成を行った。
【0246】
(製造例6)
<高分子化合物(A-08)の合成>
高分子化合物(A-08)は、対応するジアルデヒド化合物とジホスホネート化合物を用いた以外は、高分子化合物(A-05)の合成と同様の方法で合成を行った。
【0247】
(製造例7)
<高分子化合物(A-09)の合成>
高分子化合物(A-09)は、対応するジアルデヒド化合物とジホスホネート化合物を用いた以外は、高分子化合物(A-05)の合成と同様の方法で合成を行った。
【0248】
(製造例8)
<高分子化合物(A-11)の合成>
高分子化合物(A-11)は、対応するジアルデヒド化合物とジホスホネート化合物を用いた以外は、高分子化合物(A-05)の合成と同様の方法で合成を行った。
【0249】
(実施例1)
<太陽電池モジュール1の作製>
まず、チタニウムジイソプロポキシドビス(アセチルアセトン)イソプロピルアルコール溶液(75%)0.36gを、イソプロピルアルコール10mlに溶解して得た液を、スピンコート法を用いてFTOガラス基板上に塗布し、120℃で3分間乾燥した。その後、450℃で30分間焼成することにより、第1の基板上に第1の電極及び酸化チタンからなる緻密な電子輸送層(緻密層)を作製した。なお、緻密層の平均厚みは、10~40μmとなるようにした。
次に、酸化チタンペースト(グレートセルソーラー社製、商品名:MPT-20)を、αテルピネオールで薄めた分散液を、スピンコート法を用いて緻密層上に塗布し、120℃で3分間乾燥した後、550℃で30分焼成した。
続いて、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学株式会社製、製品番号:38103)を溶解したアセトニトリル0.1M(なお、Mは、mol/dm3を意味する)の溶液を、スピンコート法を用いて上述の膜上に塗布し、450℃で30分間焼成し、多孔質な電子輸送層(多孔質層)を作製した。なお、多孔質層の平均厚みは、150nmとなるようにした。
次いで、ヨウ化鉛(II)(0.5306g)、臭化鉛(II)(0.0736g)、臭化メチルアミン(0.0224g)、ヨウ化ホルムアミジン(0.1876g)を、N,N-ジメチルホルムアミド(0.8ml)、ジメチルスルホキシド(0.2ml)に加え、60℃で加熱攪拌して得た溶液を、上記の多孔質層上にスピンコート法を用いて塗布しながらクロロベンゼン(0.3ml)を加えて、ペロブスカイト膜を形成した。その後、150℃で30分間乾燥させることにより、ペロブスカイト層を作製した。なお、ペロブスカイト層の平均厚みは、200~350nmとなるようにした。更に、形成したペロブスカイト層上に、一般式(2)で表される化合物として2-フェニルエチルアンモニウムブロミドを溶解したイソプロピルアルコール1mMの溶液を、スピンコートを用いて塗布し、一般式(2)で表される化合物を含有する膜を形成した。
次いで、(D-07)で表されるホール輸送性化合物(メルク社製)を73.6mg、リチウムトリフルオロメタンスルホニル(Li-TFSI:東京化成社製)を2.4mg、ターシャルブチルピリジン(tBP、アルドリッチ社製)を6.8mgを計量し、クロロベンゼン3.0mlに溶解した。得た溶液を上記の工程により得られた積層物上にスピンコート法を用いて塗布して、ホール輸送層を作製した。なお、ホール輸送層の平均厚み(ペロブスカイト層上の部分)は、50~120nmとなるようにした。さらに、前述の積層物上に、金を100nm真空蒸着し、第2の電極を形成した。このようにして太陽電池モジュール1を得た。
【0250】
<太陽電池特性の評価>
得られた太陽電池モジュール1について、ソーラーシミュレーター(AM1.5、100mW/cm2)で光を照射しつつ、太陽電池評価システム(株式会社エヌエフ回路設計ブロック製、商品名:As-510-PV03)を用いて、太陽電池特性(初期特性)を評価した。結果を表1に示した。
【0251】
<変換効率の維持率>
得られた太陽電池モジュール1について、初期特性における変換効率をη(%)とする。500時間連続照射(AM1.5、100mW/cm2)後の特性における変換効率の維持率ηx(%)として求めた。結果を表1に示した。
なお、変換効率の維持率ηx(%)が80%以上であれば良好な結果である。より好ましくは90%以上である。
【0252】
(実施例2~8)
実施例1において、一般式(1)で表される化合物を、表1に示される化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表1に示す。
【0253】
(実施例9~12)
実施例1において、2-フェニルエチルアンモニウムブロミド(1mM-イソプロピルアルコール溶液)を表1に示される化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表1に示す。
【0254】
(実施例13~16)
実施例1において、ペロブスカイト前駆体溶液にヨウ化セシウム(1.5Mジメチルスルホキシド溶液)を40μL加えた以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表1に示す。
【0255】
(実施例17)
実施例1において、緻密な電子輸送層(緻密層)を、酸化スズに変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池セルを作製し評価を行った。評価の結果を表1に示す。なお、製膜方法は、まず酸化スズコロイド溶液(アルファエーサー製)をITOガラス基板上に塗布し、100℃で1時間加熱乾燥した。次いで、(1-アミノエチル)ホスホン酸(Aldrich製)を溶解したエタノール0.1mM(なお、Mは、mol/dm3を意味する)の溶液を、スピンコート法を用いて上述の膜上に塗布し、70℃で10分間乾燥した。
【0256】
(実施例18~21)
実施例1において、一般式(1)で表される化合物を、表1に示した化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表1に示す。
【0257】
(実施例22~33)
実施例18において、ホール輸送材料と添加剤とペロブスカイト/ホール輸送層間に配する膜の材料を、表1及び表2に示した化合物に変更した以外は、実施例18と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表1に示す。
【0258】
(比較例1)
実施例1において、2-フェニルエチルアンモニウムブロミドを除いた以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表2に示す。
【0259】
(比較例2)
実施例1において、2-フェニルエチルアンモニウムブロミドを下記化合物Aに変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表2に示す。
【化48】
・・・化合物A
【0260】
(比較例3)
実施例24において、2-フェニルエチルアンモニウムブロミドを除いた以外は、実施例24と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表2に示す。
【0261】
(比較例4)
実施例25において、2-フェニルエチルアンモニウムブロミドを除いた以外は、実施例25と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表2に示す。
【0262】
(比較例5)
実施例27において、2-フェニルエチルアンモニウムブロミドを下記化合物Aに変更した以外は、実施例27と同様にして、太陽電池モジュールを作製し評価を行った。評価の結果を表2に示す。
【化49】
・・・化合物A
【0263】
【0264】
【0265】
表1及び表2において、各符号の意味は以下の通りである。
「η」は、光電変換効率を意味する。
実施例4、実施例24、及び比較例3の「PTAA」は、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](メルク製)である。
【0266】
実施例1~33と比較例1~5から明らかなように、前記ホール輸送層が、前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、前記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有する、ことにより、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である光電変換素子とすることができることがわかった。
【0267】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 第1の電極と、光電変換層と、ホール輸送層と、第2の電極とを有し、
前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を有し、
前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、下記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有する、ことを特徴とする光電変換素子である。
A-X・・・一般式(2)
ただし、前記一般式(2)中、Aは、下記一般式(6)及び下記一般式(7)のいずれかで表されるアミノカチオン化合物、ピリジニウムカチオン化合物、イミダゾリニウムカチオン化合物、及びピロリジニウムカチオン化合物の少なくともいずれかであり、前記Xはハロゲンイオンを表す。
【化50】
・・・一般式(6)
ただし、前記一般式(6)中、R
1は、-H、-F、-CF
3、及び-OCH
3のいずれかを表し、nは1又は2を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
【化51】
・・・一般式(7)
ただし、前記一般式(7)中、nは5以上12以下の整数を表し、XはBr及びIのいずれかを表す。
<2> 前記光電変換層が、下記一般式(3)で表される化合物を含有する、前記<1>に記載の光電変換素子である。
X
αY
βZ
γ ・・・一般式(3)
ただし、前記一般式(3)中、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表し、Xはハロゲン原子、Yはアミノ基を有する有機化合物、Zは金属イオンを表す。
<3> 前記光電変換層が、Sb原子、Cs原子、Rb原子、及びK原子の少なくともいずれかを含有する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<4> 電子輸送層をさらに有し、
前記電子輸送層が、少なくとも酸化スズを含有する、前記<1>から<3>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<5> 前記ホール輸送層が、下記一般式(1)で表される化合物を含有する、前記<1>から<4>のいずれかに記載の光電変換素子である。
【化52】
ただし、前記一般式(3)中、Ar
1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい単環式、非縮合多環式又は縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表し、
Ar
4は置換基を有していてもよいベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセン、又はナフタレンの2価基を表し、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、
nは2以上の整数を表す。
<6>前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の光電変換素子である。
【化53】
・・・一般式(4)
ただし、前記一般式(4)中、R
5は、メチル基又はメトキシ基を表し、R
6及びR
7は、アルコキシ基を表し、nは2以上の整数を表す。
<7> 前記ホール輸送層が下記一般式(5)で表される化合物を含有する、前記<1>から<6>のいずれかに記載の光電変換素子である。
【化54】
ただし、前記一般式(5)中、R
5~R
9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表し、これらは同一であっても異なっていてもよく、Xはカチオンを表す。)
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子が直列又は並列に接続されたことを特徴とする太陽電池モジュールである。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子が直列又は並列に接続されたことを特徴とする光電変換モジュールである。
<10> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<8>に記載の太陽電池モジュール、及び前記<9>に記載の光電変換モジュールの少なくともいずれかと、
前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<8>に記載の太陽電池モジュール、及び前記<9>に記載の光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、
を有することを特徴とする電子機器である。
<11> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<8>に記載の太陽電池モジュール、及び前記<9>に記載の光電変換モジュールの少なくともいずれかと、
前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<8>に記載の太陽電池モジュール、及び前記<9>に記載の光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力を蓄電する蓄電池と、前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力及び前記蓄電池に蓄電された電力の少なくともいずれかによって動作する装置を有することを特徴とする電子機器である。
<12> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<8>に記載の太陽電池モジュール、及び前記<9>に記載の光電変換モジュールの少なくともいずれかと、
電源ICと、
を有することを特徴とする電源モジュールである。
【0268】
前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<8>に記載の光電変換モジュール、前記<9>に記載の光電変換モジュール、前記<10>から<11>のいずれかに記載の電子機器、及び前記<12>に記載の電源モジュールは、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。