(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020874
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072936
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2021123780
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】酒井 慶太郎
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF99
2C057AG04
2C057AG60
2C057AN07
2C057BF04
2C057DB07
(57)【要約】
【課題】アクチュエータに掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】
ノズルを備えるノズル部材と、前記ノズルを開閉する弁体と、アクチュエータと、前記アクチュエータを保持するとともに、前記アクチュエータの駆動により弾性変形して前記アクチュエータの駆動力を前記弁体に伝える弾性部材と、前記弾性部材と前記アクチュエータとの間に設けた減衰部材とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを備えるノズル部材と、
前記ノズルを開閉する弁体と、
アクチュエータと、
前記アクチュエータを保持するとともに、前記アクチュエータの駆動により弾性変形して前記アクチュエータの駆動力を前記弁体に伝える弾性部材と、
前記弾性部材と前記アクチュエータとの間に設けた減衰部材と
を備える液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記弾性部材は前記弁体を保持する弁体保持部を備え、前記減衰部材を、前記弁体保持部を備えた側と反対側の前記弾性部材と、前記アクチュエータとの間に設ける液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1において、前記弾性部材は前記弁体を保持する弁体保持部を備え、前記減衰部材を、前記弁体保持部を備えた側の前記弾性部材と、前記アクチュエータとの間に設ける液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1において、前記弾性部材は前記アクチュエータを保持する空間を備え、該空間に前記減衰部材を設けるとともに、前記減衰部材は前記空間に嵌合する形状を有する液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1において、前記ノズル部材は、前記ノズルと前記弁体とが対向する位置に、前記弁体が嵌合可能な凹部を備える液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1において、前記弁体と前記アクチュエータとの間に、前記アクチュエータおよび前記弾性部材の伸びる力を、前記弁体を前記伸びる力と相反する引き込む力に変換した上で、前記弁体へ伝達する伝達機構を備える液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドと対象物とを相対的に動かす移動手段と
を備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノズルに連通するキャビティに吐出液体を加圧供給すると共に、ピンでノズルを閉塞可能とし、このピンをアクチュエータでノズルに対して離接可能とし、このアクチュエータを制御装置で制御する構成とすることで、ピンがノズルから離間している間だけ、加圧供給されている吐出液体がノズルから液滴として吐出される液滴吐出ヘッドを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、アクチュエータに掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の液体吐出ヘッドは、ノズルを備えるノズル部材と、前記ノズルを開閉する弁体と、アクチュエータと、前記アクチュエータを保持するとともに、前記アクチュエータの駆動により弾性変形して前記アクチュエータの駆動力を前記弁体に伝える弾性部材と、前記弾性部材と前記アクチュエータとの間に設けた減衰部材とを備える。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、アクチュエータに掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す全体斜視図。
【
図6】ニードル弁の先端部の変形例を示す概略拡大図。
【
図7】本発明に係る液体吐出ヘッドの第2実施形態を示す説明図。
【
図8】本発明に係る液体吐出装置の一例を示す全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0008】
図1は、本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す全体斜視図である。
【0009】
液体吐出ヘッド300は、ハウジング310、コネクタ350、供給ポート311および回収ポート313を主に備える。ハウジング310は、金属材料または樹脂材料からなる。コネクタ350は、電気信号を伝送するための端子であり、本実施形態ではハウジング310の上部にコネクタ350を設けている。
【0010】
供給ポート311と回収ポート313は、ハウジング310の左右に位置し、供給ポート311は液体をヘッド内に供給する。また、回収ポート313は液体をヘッドから排出する。
【0011】
図2は、本発明に係る液体吐出ヘッドの全体断面図(
図1のA-A線矢視断面図)である。
【0012】
ハウジング310は、その上部に電気信号を伝送するためのコネクタ350を備えており、下部には液体を吐出するノズル302を備えたノズル板301を保持している。
【0013】
また、ハウジング310は、供給ポート311側からの液体を、ノズル板301上を経て回収ポート313側へ送る流路312を備えている。ここで、ノズル板301は「ノズル部材」の一例である。
【0014】
供給ポート311と回収ポート313との間には、流路312内の液体をノズル302から吐出するための液体吐出モジュール330(詳細は後述する)を配置している。液体吐出モジュール330は、ノズル302の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル302に対応する8個の液体吐出モジュール330を備えた構成を示している。
【0015】
なお、ノズル302および液体吐出モジュール330の数および配列は上記に限るものではない。例えば、ノズル302および液体吐出モジュール330の数は、9個以上でもよいし、または複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル302および液体吐出モジュール330の配列は、1列ではなく複数列で配置してもよい。
【0016】
上記の構成により、供給ポート311は加圧した状態の液体を外部から取り込み、液体を矢印a1方向へ送り、液体を流路312に供給する。流路312は、供給ポート311からの液体を矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート313は、流路312に沿って配置したノズル302から吐出しなかった液体を矢印a3方向へ排出する。
【0017】
液体吐出モジュール330は、ノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332を備える。ハウジング310は、圧電素子332の上端部と対向する位置に規制部材314を備えている。この規制部材314は、圧電素子332の上端部に当接しており、圧電素子332の固定点をなしている。ここで、ニードル弁331は「弁体」の一例であり、圧電素子332は「アクチュエータ」の一例である。
【0018】
上記構成において圧電素子332を作動し、ニードル弁331が図において上方向へ変位すると、ニードル弁331によって閉じていたノズル302が開いた状態になり、ノズル302から液体が吐出する。また、圧電素子332を作動し、ニードル弁331が下方向へ変位すると、ニードル弁331の先端部がノズル302に当接してノズル302が閉じた状態になり、ノズル302から液体が吐出しなくなる。
【0019】
なお、ノズル302から液体を吐出している期間は、ノズル302からの吐出効率を下げないようにするために、回収ポート313からの液体の排出は一時的に行わないようにしてもよい。次に、液体吐出モジュール330の構成を詳細に説明する。
【0020】
図3は、液体吐出ヘッドに設けた液体吐出モジュール単体の説明図である。
【0021】
液体吐出モジュール330は、ノズル302を開閉するニードル弁331と、圧電素子332とを備える。ノズル板301はハウジング310に接合している。また、流路312はハウジング310に設けた複数の液体吐出モジュール330に共通の流路である。
【0022】
ニードル弁331は、
図4に示すように、その先端がノズル板301に設けたノズル302に対向しており、ニードル弁331の先端がノズル板301に当接することでノズル302を閉塞する。なお、ニードル弁331の先端に弾性体331aを設け、ノズル302をより確実に閉塞するようにしてもよい。また、ニードル弁331とハウジング310との間には、軸受部321を設け、さらに、軸受部321とニードル弁331との間にはOリングなどのシール部材315を設けている。
【0023】
ハウジング310は、その内部に空間322を形成し、空間322は、板バネ枠体333を保持している。板バネ枠体333は、ニードル弁保持部333a、枠部333b、規制部材当接部333c、伸縮部333dおよび空間333eを備える。これらのうち、ニードル弁保持部333aは、ニードル弁331の後端部を保持する。また、規制部材当接部333cは、その一部が規制部材314に当接しており、板バネ枠体333が上方へ動かないように固定点をなしている。そして、板バネ枠体333の空間333eによって圧電素子332を保持している。
【0024】
上記の構成より、ニードル弁331および圧電素子332は、板バネ枠体333を介して同軸上、すなわち、液体の吐出方向に直列に配置している。ここで、板バネ枠体333は、「弾性部材」の一例であり、ニードル弁保持部333aは「弁体保持部」の一例である。
【0025】
圧電素子332は、図示しない電圧印加手段によって電圧を印加するとノズル302が開く方向にニードル弁331を移動させる。したがって、圧電素子332に電圧を印加していないときは、ニードル弁331がノズル302を閉塞しているので、流路312に液体が加圧供給されていても、ノズル302から液体が吐出することはない。
【0026】
板バネ枠体333は、圧電素子332を保持する。圧電素子332に電圧を印加すると、圧電素子332が収縮する。圧電素子332が収縮すると、伸縮部333dが弾性変形して当該収縮を吸収し、圧電素子332の先端部に固定したニードル弁保持部333aを後端側(図において上側)へ引っ張る。このように、板バネ枠体333が圧電素子332の駆動により弾性変形して、圧電素子332の駆動力をニードル弁331に伝える。これにより、ニードル弁331がノズル302から離間してノズル302を開放し、流路312に加圧供給した液体をノズル302から吐出する。
【0027】
なお、圧電素子332として、電圧を印加するとノズル302を閉じる方向にニードル弁331を移動させる伸縮特性を有するものを用いてもよい。この場合、圧電素子332に電圧を印加することにより圧電素子332が伸びてニードル弁331がノズル302を閉塞し、電圧の印加を停止することにより圧電素子332が収縮してニードル弁331がノズル302を開放し、流路312に加圧供給した液体をノズル302から吐出する。
【0028】
また、圧電素子332への電圧の印加を停止すると圧電素子332が伸び、ニードル弁331がノズル302を閉塞してノズル302からの液体の吐出が停止する。液体吐出ヘッド300は、圧電素子332へ印加する電圧やその印加のタイミングを制御することにより、ノズル302からの液体の吐出を制御する。なお、本実施形態において、板バネ枠体333は、圧電素子332の駆動力の約50%を与圧として圧電素子332に付与し、圧電素子332の長手方向(すなわち
図3において上下方向であって、圧電素子332の伸縮方向である)の両端を挟み込むように構成している。
【0029】
また、本実施形態において、弾性部材としての板バネ枠体333は、ニードル弁保持部333a、枠部333b、規制部材当接部333cおよび伸縮部333dを一体の部材で構成しているが、このうち一部の部位を別部材で構成してもよい。例えば、伸縮部333dをバネなどで構成し、バネを枠部333bに取り付けてもよい。
【0030】
さらに、液体吐出モジュール330は、板バネ枠体333のニードル弁保持部333aを備えた側と反対側(本実施形態では規制部材当接部333cを設けた側)と圧電素子332との間に、減衰部材334を備える。減衰部材334は、例えばシリコンシートや高減衰特性を持つゴム材からなり、電圧印加によって生じる圧電素子332の伸長する力、すなわち駆動力を減衰させた上で、弾性部材(板バネ枠体333)およびそれに連結するニードル弁331に駆動力を伝達させる。これにより、圧電素子332のオーバーシュートを抑制する。
【0031】
圧電素子332のオーバーシュートとは、圧電素子332に電圧を印加したときに狙った伸び量よりも大きな伸び量が瞬間的に発生する現象である。ニードル弁331を大きく移動させるために数μm以上の大きな伸び量を狙う場合、圧電素子332が大きく伸びすぎてその積層構造が破壊され、圧電素子332が破損する可能性がある。本実施形態では板バネ枠体333によって圧電素子332の長手方向両端を挟み込むように構成しているが、当該与圧だけでは圧電素子332のオーバーシュートが十分に抑制できない場合がある。
【0032】
そこで、本実施形態ではさらに、板バネ枠体333のニードル弁保持部333aを備えた側と反対側と圧電素子332との間に、減衰部材334を備える。減衰部材334は、圧電素子332の変位を抑制する。より具体的には、減衰部材334は、圧電素子332にオーバーシュートのような急激な変位が発生することを抑制するダンパーとして機能する。減衰部材334を備えることにより、例えば数KHz以上の高い周波数でかつ数μm以上の大きな伸び量を狙って圧電素子332を駆動する場合においても、圧電素子332のオーバーシュートを抑制することができる。
【0033】
なお、減衰部材334は、
図5に示すようにニードル弁保持部333aを備えた側の板バネ枠体333と圧電素子332との間に設けてもよい。
図5において減衰部材334は、板バネ枠体333の空間333eに嵌合する外形状を有し、また、圧電素子332と嵌合可能な内形状を有する。なお、減衰部材334は、上述のように空間333eおよび圧電素子332の両方に嵌合可能な形状とせず、いずれか一方に対して嵌合可能な形状であってもよい。これにより、ニードル弁331の動作時に減衰部材334および圧電素子332のスラスト方向以外の不要な動きを抑制し、リンギングをより効果的に抑制することができるようになる。また、減衰部材334は、板バネ枠体333の規制部材当接部333c側およびニードル弁保持部333a側の両方に設けてもよい。
【0034】
以上の構成により、圧電素子332を高ストロークかつ高周波で駆動した場合でも、減衰部材334が圧電素子332のオーバーシュートを抑制するので、リンギング等による圧電素子332の破損が起こりにくくなる。その結果、圧電素子332の寿命を伸ばすことが可能になる。
【0035】
上述のように、本実施形態は、ノズル302を備えるノズル板301と、ノズル302を開閉するニードル弁331と、圧電素子332と、圧電素子332を保持するとともに、圧電素子332の駆動により弾性変形して圧電素子332の駆動力をニードル弁331に伝える板バネ枠体333と、板バネ枠体333と、板バネ枠体333と圧電素子332との間に設けた減衰部材334とを備える。
【0036】
また、上述のように、板バネ枠体333はニードル弁331を保持するニードル弁保持部333aを備え、減衰部材334を、ニードル弁保持部333aを備えた側と反対側(本実施形態では規制部材当接部333cを設けた側)の板バネ枠体333と、圧電素子332との間に設ける。
【0037】
さらに、上述のように、板バネ枠体333はニードル弁331を保持するニードル弁保持部333aを備え、減衰部材334を、ニードル弁保持部333aを備えた側の板バネ枠体333と、圧電素子332との間に設ける。
【0038】
これにより、圧電素子332に掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッド300を提供することができる。
【0039】
また、上述のように、板バネ枠体333は圧電素子332を保持する空間333eを備え、この空間333eに減衰部材334を設けるとともに、減衰部材334は空間333eに嵌合する形状を有する。
【0040】
これにより、ニードル弁331の動作時に減衰部材334のスラスト方向以外の不要な動きを抑制し、リンギングの抑制効果をより高めることができる。
【0041】
図6は、ニードル弁の先端部の変形例を示す概略拡大図である。
【0042】
本変形例は、ノズル板301に凹部301aを備えた点が
図4の構成と異なっている。すなわちノズル板301は、ノズル302とニードル弁331とが対向する位置にニードル弁331の先端部が嵌合可能な凹部301aを備えた構成となっている。
【0043】
上記のような構成とすることで、ノズル302を閉じる動作において、ニードル弁331がノズル302に当接した際の衝撃によって発生する横方向のリンギングの抑制が可能になる。
【0044】
上述のように、本実施形態ではノズル板301は、ノズル302とニードル弁331とが対向する位置に、ニードル弁331が嵌合可能な凹部301aを備える。
【0045】
これにより、ノズル302を閉じる際に、ニードル弁331とノズル302との当接による衝撃で発生していた横方向のリンギングの発生を抑制することができる。
【0046】
次に、
図7を用いて第2実施形態を説明する。
図7は、本発明に係る液体吐出ヘッドの第2実施形態を示す説明図である。
図7(a)はノズルを閉じた状態を示す断面図、
図7(b)はノズルを開いた状態を示す断面図である。
【0047】
第2実施形態は、ニードル弁331と板バネ枠体333との間に、伝達機構の一例としての逆バネ機構335を備える点が上述の実施形態と異なる。なお、第2実施形態では、圧電素子332として、電圧を印加すると伸縮する特性を有するものを用いる。
【0048】
逆バネ機構335は、適宜に変形可能なゴムや軟質樹脂等または薄い金属板等を成形加工することによって形成された弾性部材である。逆バネ機構335は、変形部335a、固定部335b、ガイド部335cおよび屈曲辺335dを備える。
【0049】
変形部335aは、ニードル弁331の基端側の面(
図7(a)ではニードル弁331の上側端面)に当接するようにして形成された断面略台形状を有する。
【0050】
固定部335bは、変形部335aと、ハウジング310の内壁面に固定される。
【0051】
ガイド部335cは、板バネ枠体333の保持部333aに保持され、固定部335bと、板バネ枠体333とを連結する。
【0052】
屈曲辺335dは、台形状の変形部335aの長辺(台形の下底に相当)と固定部335bとを連結する。
【0053】
上記のような構造を備えた逆バネ機構335は、圧電素子332に所定の電圧が印加されると圧電素子332が伸張する。圧電素子332の伸張により板バネ枠体333の保持部333aがノズル302側へ向かったとき、ガイド部335cがノズル302側(
図7(b)の矢印a方向)に押される。
【0054】
この押される力に伴い、変形部335aをノズル302から遠ざかる方向(
図7(b)の矢印b方向)に引き込む。すなわち、逆バネ機構335は、圧電素子332および板バネ枠体333の伸びる力を、ニードル弁331を引き込む力に変換した上で、ニードル弁331へ伝達する。
【0055】
第2実施形態にかかる液体吐出ヘッド300は、圧電素子332へ電圧印加することにより、圧電素子332が伸び、それに伴いニードル弁331がノズル302を開放し、ノズル302から液滴D2を吐出する。
【0056】
上述のように、第2実施形態は、ニードル弁331と圧電素子332との間に、圧電素子332および板バネ枠体333の伸びる力を、ニードル弁331を引き込む力、すなわち圧電素子332および板バネ枠体333の伸びる力と相反する力に変換した上で、ニードル弁331へ伝達する逆バネ機構335を備える。
【0057】
そして第2実施形態においても、圧電素子332に掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッド300を提供することができる。
【0058】
図8は、本発明に係る液体吐出装置の一例として示した印刷装置の全体斜視図である。
【0059】
印刷装置1000は、対象物の一例である被描画物100に対向して設置している。印刷装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0060】
Y軸レール102は、X軸レール101がY方向(正側および負側)に移動可能なように、X軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX方向(正側および負側)に移動可能なように、Z軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向(正側および負側)に移動可能なように、キャリッジ1を保持する。
【0061】
印刷装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、印刷装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、印刷装置1000は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0062】
上記構成の印刷装置1000は、キャリッジ1をX方向、Y方向およびZ方向に動かしながら、ヘッド保持体70に設けた液体吐出ヘッドから液体の一例であるインクを吐出し、被描画物100に描画を行う。なお、キャリッジ1およびヘッド保持体70のZ方向の移動は、必ずしもZ方向に平行であることを意味するものではなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。ここで、各レール101、102、103および各駆動部72、82、92、93は「移動手段」の一例である。
【0063】
なお、
図8において被描画物100の表面形状は平面としているが、被描画物100の表面形状は、車やトラックの車体、航空機の機体などのように鉛直に近い面、曲率半径の大きい面、もしくは多少の凹凸を有する面でもよい。
【0064】
次に、キャリッジ1の構成を説明する。
【0065】
図9は、
図8に示した印刷装置のキャリッジの全体斜視図であり、キャリッジ1を被描画物100側から見たものである。
【0066】
キャリッジ1はヘッド保持体70を備える。また、キャリッジ1は、
図8に示した第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向(正側および負側)へ移動可能である。
【0067】
ヘッド保持体70は、
図8に示した第2のZ方向駆動部93からの動力によりキャリッジ1に対してZ方向(正側および負側)へ移動可能である。また、ヘッド保持体70は液体吐出ヘッド300を取り付けるためのヘッド固定板70aを備えている。ここでは、
図1乃至
図6で説明した液体吐出ヘッド300を、ヘッド固定板70aに6個取り付けた構成を例示しており、6個の液体吐出ヘッド300a~300fを積層状に並べて設けている。なお、以下の説明において、これらの液体吐出ヘッドを総称する場合は、液体吐出ヘッド300と記す。
【0068】
液体吐出ヘッド300a~300fは、それぞれ複数のノズル302を備えている。なお、ヘッド300a~300fで用いるインクの色の種類や数は、ヘッド毎に異なる色としてもよいし、すべて同じ色としてもよい。例えば、印刷装置1000として例示した液体吐出装置が、単色を用いる塗装装置である場合は、ヘッド300a~300fで用いるインクは同色でよい。また、ヘッド300を構成するヘッドの数は6つに限るものではない。ヘッド300の数は7つ以上であってもよく、また、6つより少なくてもよい。
【0069】
液体吐出ヘッド300は、図示のように各ヘッドのノズル列が水平面(X-Z面)と交差し、かつ複数のノズル302の配列方向をX軸に対して傾けた状態でヘッド固定板70aに固定する。この状態でノズル302は、重力方向と交差する方向(Z方向正側)にインクを吐出し、被描画物100に所望の描画を行う。
【0070】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。
【0071】
これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0072】
また、本発明に係る液体吐出装置は、上述の印刷装置の形態に限るものではない。例えば、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能とした多関節ロボットのロボットアームの先端に、本発明の液体吐出ヘッドを取り付けた形態でもよい。また、液体吐出装置は、対象物に対して液体吐出ヘッドを動かす構成のものに限らない。液体吐出ヘッドと対象物とは相対的に移動が可能であればよく、対象物を液体吐出ヘッドに対して動かす構成のものであってもよい。
【0073】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0074】
[第1態様]
第1態様は、ノズル(例えばノズル302)を備えるノズル部材(例えばノズル板301)と、前記ノズルを開閉する弁体(例えばニードル弁331)と、アクチュエータ(例えば圧電素子332)と、前記アクチュエータを保持するとともに、前記アクチュエータの駆動により弾性変形して前記アクチュエータの駆動力を前記弁体に伝える弾性部材(例えば板バネ枠体333)と、前記弾性部材と前記アクチュエータとの間に設けた減衰部材(例えば減衰部材334)とを備えることを特徴とするものである。
【0075】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記弾性部材(例えば板バネ枠体333)は前記弁体(例えばニードル弁331)を保持する弁体保持部(例えばニードル弁保持部333a)を備え、前記減衰部材(例えば減衰部材334)を、前記弁体保持部を備えた側と反対側の前記弾性部材と、前記アクチュエータ(例えば圧電素子332)との間に設けることを特徴とするものである。
【0076】
[第3態様]
第3態様は、第1態様または第2態様において、前記弾性部材は(例えば板バネ枠体333)は前記弁体(例えばニードル弁331)を保持する弁体保持部(例えばニードル弁保持部333a)を備え、前記減衰部材(例えば減衰部材334)を、前記弁体保持部を備えた側の前記弾性部材と、前記アクチュエータ(例えば圧電素子332)との間に設けることを特徴とするものである。
【0077】
第1態様乃至第3態様によれば、アクチュエータに掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0078】
[第4態様]
第4態様は、第1態様乃至第3態様のいずれかにおいて、前記弾性部材(例えば板バネ枠体333)は前記アクチュエータ(例えば圧電素子332)を保持する空間(例えば空間333e)を備え、該空間に前記減衰部材(例えば減衰部材334)を設けるとともに、前記減衰部材は前記空間に嵌合する形状を有することを特徴とするものである。
【0079】
第4形態によれば、弁体の動作時に減衰部材のスラスト方向以外の不要な動きを抑制し、リンギングの抑制効果をより高めることができる。
【0080】
[第5態様]
第5態様は、第1態様乃至第4態様のいずれかにおいて、前記ノズル部材(例えばノズル板301)は、前記ノズル(例えばノズル302)と前記弁体(例えばニードル弁331)とが対向する位置に、前記弁体が嵌合可能な凹部(例えば凹部301a)を備えることを特徴とするものである。
【0081】
第5態様によれば、ノズルを閉じる際に、弁体とノズルとの当接による衝撃で発生していた横方向のリンギングの発生を抑制することができる。
【0082】
[第6態様]
第6態様は、第1態様乃至第5態様のいずれかにおいて、前記弁体(例えばニードル弁331)と前記アクチュエータ(例えば圧電素子332)との間に、前記アクチュエータおよび前記弾性部材(例えば板バネ枠体333)の伸びる力を、前記弁体を前記伸びる力と相反する引き込む力に変換した上で、前記弁体へ伝達する伝達機構(例えば逆バネ機構335)を備える。
【0083】
第6態様によれば、アクチュエータに掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
300 液体吐出ヘッド
301 ノズル板(ノズル部材の一例)
302 ノズル
330 液体吐出モジュール
331 ニードル弁(弁体の一例)
332 圧電素子(アクチュエータの一例)
333 板バネ枠体(弾性部材の一例)
334 減衰部材
335 逆バネ機構(伝達機構の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】