(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020887
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】画像印刷方法、画像印刷装置、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20230202BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 100
B41J2/01 123
B41J2/01 501
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085414
(22)【出願日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2021126255
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山本 誓
(72)【発明者】
【氏名】梅村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘規
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田村 里彩
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC14
2C056EC29
2C056EE18
2C056FC02
2C056HA42
2C056HA46
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB27
2H186AB44
2H186AB54
2H186AB57
2H186AB58
2H186AB64
2H186BA08
2H186DA12
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた光沢値差を実現できる画像印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】被印刷物上の所定の領域に、多価金属塩を含有する第一の処理液を付与する第一の処理液付与工程と、被印刷物上の、前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液を付与する第二の処理液付与工程と、を含む画像印刷方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物上の所定の領域に、多価金属塩を含有する第一の処理液を付与する第一の処理液付与工程と、
被印刷物上の、前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液を付与する第二の処理液付与工程と、
を含むことを特徴とする画像印刷方法。
【請求項2】
前記第一の処理液付与工程の後に、被印刷物上の、前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、色材を含有するインクを付与するインク付与工程を含む、請求項1に記載の画像印刷方法。
【請求項3】
前記第二の処理液の酸価が、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、請求項1から2のいずれかに記載の画像印刷方法。
【請求項4】
前記第二の処理液の酸価が、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、請求項1から3のいずれかに記載の画像印刷方法。
【請求項5】
前記第二の処理液の酸価が、100mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、請求項1から4のいずれかに記載の画像印刷方法。
【請求項6】
前記第一の処理液が付与された所定の領域における前記多価金属塩の付着量が、0.4g/m2以上である、請求項1から5のいずれかに記載の画像印刷方法。
【請求項7】
前記第一の処理液が付与された所定の領域における前記多価金属塩の付着量が、0.8g/m2以上である、請求項1から6のいずれかに記載の画像印刷方法。
【請求項8】
前記多価金属塩が、酢酸カルシウムである、請求項1から7のいずれかに記載の画像印刷方法。
【請求項9】
前記第一の処理液に含まれる前記多価金属塩の付着量(A)と、前記第二の処理液に含まれる前記樹脂エマルジョンの樹脂成分の付着量(B)との量比(A:B)が、1:8~8:1である、請求項1から8のいずれかに記載の画像印刷方法。
【請求項10】
前記第一の処理液からなる層及び前記インクからなる層の少なくともいずれかを乾燥させる乾燥工程をさらに含む、請求項2から9のいずれかに記載の画像印刷方法。
【請求項11】
被印刷物上の所定の領域に、多価金属塩を含有する第一の処理液を付与する第一の処理液付与手段と、
被印刷物上の前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液を付与する第二の処理液付与手段と、
を含むことを特徴とする画像印刷装置。
【請求項12】
被印刷物上に、
多価金属塩を含有する第一の処理液からなる層と、
前記第一の処理液が存在する所定の領域及び前記第一の処理液が存在しない他の領域の上に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液からなる層と、
を有することを特徴とする印刷物。
【請求項13】
前記第一の処理液が存在する所定の領域における60°光沢値と、前記第一の処理液が存在しない他の領域における60°光沢値との差が10以上である、請求項12に記載の印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像印刷方法、画像印刷装置、及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターは、家庭用のみならず、食品、飲料、日用品などの包装用途として用いられる材料にインクジェットで画像を作像する用途にも用いられている。前記包装用途における被印刷物としては、例えば、紙器、シールラベル、段ボール、軟包装などが挙げられる。
【0003】
前記包装用途では、被印刷物の表面保護や光沢向上を目的として、樹脂を含む処理液を付与する加工が広く行われている。
前記処理液は、被印刷物の全面にわたって付与される場合と、部分的に付与される場合がある。前記加工は、処理液を付与した領域と処理液を付与していない領域とで光沢値の差異を表現することができるため、美粧性の高い印刷物を得ることができる。
前記加工としては、被印刷物に対して樹脂を含有する第一の処理液を付与し、第一の処理液を付与した後に、被印刷物に樹脂を含まない第二の樹脂粒子を付与し、加熱加圧ローラーを用いた定着工程によりインクジェットインク皮膜の光沢値を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた光沢値差を実現できる画像印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の画像印刷方法は、被印刷物上の所定の領域に、多価金属塩を含有する第一の処理液を付与する第一の処理液付与工程と、
被印刷物上の、前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液を付与する第二の処理液付与工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、優れた光沢値差を実現できる画像印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の画像印刷方法に用いる本発明の画像印刷装置の一例を示す概略図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の画像印刷方法に用いる本発明の画像印刷装置における第一の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の画像印刷方法に用いる本発明の画像印刷装置における第二の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の画像印刷方法によって得られた印刷物の一例を示す概略図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の画像印刷方法によって得られた印刷物の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(画像印刷方法及び画像印刷装置)
本発明の画像印刷方法は、第一の処理液付与工程と、第二の処理液付与工程と、を含み、乾燥工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0009】
本発明の画像印刷装置は、第一の処理液付与手段と、第二の処理液付与手段と、を含み、乾燥手段を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を含む。
【0010】
本発明の画像印刷方法は、本発明の画像印刷装置により好適に実施することができ、第一の処理液付与工程は、第一の処理液付与手段により行うことができ、第二の処理液付与工程は、第二の処理液付与手段により行うことができ、乾燥工程は、乾燥手段により行うことができ、その他の工程は、その他の手段により行うことができる。
【0011】
従来技術(例えば、特許文献1参照)では、第一の処理液を付与し、定着装置として加熱加圧ローラーを用いて処理液中の樹脂を軟化又は溶融させることにより光沢を向上させ、粒子を配合した第二の処理液をインク上層に付与することにより加熱加圧ローラーの剥離性を得る方法が提案されているが、第二の処理液がアニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有しておらず、第一の処理液を付与した領域と、第一の処理液を付与していない領域の光沢値差がないため、美粧性の高い印刷物を得ることができないという問題があった。
【0012】
本発明は、多価金属塩を含有する第一の処理液を付与した後に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液を付与することで、前記第一の処理液を付与した所定の領域では、前記多価金属塩と前記樹脂エマルジョンが反応して前記樹脂エマルジョンが凝集し、光沢値が低下する。これにより、前記第一の処理液を付与した所定の領域と、前記第一の処理液を付与していない他の領域との光沢値差が生じるため、美粧性の高い印刷物を得ることができる。
本発明は、第一の処理液に含まれる多価金属塩と、第二の処理液に含まれるアニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンが、第一の処理液に含まれる多価金属塩の電解質イオンが第二の処理液に含まれる樹脂エマルジョン粒子の斥力を減らし分散安定状態を破壊するため、前記アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンが凝集し、前記第一の処理液を付与した所定の領域の光沢値が低下する。
【0013】
<第一の処理液付与工程及び第一の処理液付与手段>
前記第一の処理液付与工程は、被印刷物上の所定の領域に、多価金属塩を含有する第一の処理液を付与する工程であり、第一の処理液付与手段により実施される。
前記所定の領域とは、前記被印刷物上における前記第一の処理液を付与する領域である。前記所定の領域の面積率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記被印刷物全体に対して1%以上95%以下が好ましい。
前記第一の処理液を付与しない領域は、他の領域と称することがある。
【0014】
<<第一の処理液>>
前記第一の処理液は、多価金属塩を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有することができる。
前記第一の処理液は、第二の処理液が付与される前に、被印刷物の所定の領域に付与される。
【0015】
-多価金属塩-
前記多価金属塩としては、陰イオン(アニオン)と陽イオン(カチオン)とが、イオン結合した化合物であり、前記第二の処理液中のアニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンと反応し、前記樹脂エマルジョンを凝集させることで、第二の処理液中の樹脂エマルジョンの分散を不安定化させる機能を有する。前記樹脂エマルジョンを凝集させることで、前記第一の処理液が付与された所定の領域上の光沢値が低下する。
【0016】
前記多価金属塩における陽イオン(カチオン)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウムイオン(Al3+)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、銅イオン(Cu2+)、鉄イオン(Fe2+又はFe3+)、亜鉛イオン(Zn2+)、スズイオン(Sn2+又はSn4+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、コバルトイオン(Co2+)、バリウムイオン(Ba2+)、鉛イオン(Pb2+)、ジルコニウムイオン(Zr4+)、チタンイオン(Ti4+)、アンチモンイオン(Sb3+)、ビスマスイオン(Bi3+)、タンタルイオン(Ta5+)、砒素イオン(As3+)、セリウムイオン(Ce3+)、ランタンイオン(La3+)、イットリウムイオン(Y3+)、水銀イオン(Hg2+)、ベリリウムイオン(Be2+)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)が好ましく、第一の処理液を付与した所定の領域の光沢値をより低下させることから、カルシウムイオン(Ca2+)がより好ましい。
【0017】
前記多価金属塩における陰イオン(アニオン)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン元素のイオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、マロン酸イオン、シュウ酸イオン、マレイン酸イオン、安息香酸イオン等の有機カルボン酸のイオン、ベンゼンスルフォン酸イオン、ナフトールスルフォン酸イオン、アルキルベンゼンスルフォン酸イオン等の有機スルフォン酸のイオン、チオシアンイオン(SCN-)、チオ硫酸イオン(S2O3
2-)、リン酸イオン(PO4
3-)、亜硝酸イオン(NO2
-)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記多価金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化アルミニウム、塩化カルシウム6水和物等の塩化カルシウム、塩化ニッケル6水和物等の塩化ニッケル、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム1水和物等の酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム4水和物等の酢酸マグネシウム、硝酸アルミニウム9水和物等の硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム4水和物等の硝酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム無水物等の硫酸マグネシウム、アンモニウムみょうばんなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酢酸カルシウムが好ましい。
【0019】
前記多価金属塩の含有量としては、前記第一の処理液の全量に対して、4質量%以上25質量%以下が好ましく、7質量%以上25質量%以下がより好ましい。前記含有量が4質量%以上であると、第二の処理液中の樹脂エマルジョンと好適に反応させることができる。前記含有量が25質量%以下であると、保存安定性が高く、析出等の品質不良の発生を抑制できる。
【0020】
前記多価金属塩の付着量としては、第一の処理液が付与された領域に対して、0.4g/m2以上であることが好ましく、0.4g/m2以上2.4g/m2以下がより好ましく、0.8g/m2以上1.2g/m2以下が特に好ましい。前記付与量が0.4g/m2以上であると、前記第一の処理液が付与された所定の領域上の光沢値を低下させることができる。
前記多価金属塩の付着量の測定方法としては、精密計りで秤量した第一の処理液の塗布重量(g/m2)及び処理液中の多価金属塩の含有量(重量%)から算出することによって測定することができる。
【0021】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、例えば、樹脂、有機溶剤、水、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0022】
--樹脂--
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カチオン性のポリマーラテックス樹脂、アニオン性のポリマーラテックス樹脂、ノニオン性のポリマーラテックス樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、凝集及びゲル化が発生しにくく保存安定性に優れる点から、ノニオン性のポリマーラテックス樹脂が好ましい。
前記ポリマーラテックス樹脂におけるラテックス樹脂とは、溶液中に分散されたナノオーダーの粒度分布を有する樹脂粒子の安定な分散液(エマルジョン)を示している。
前記第一の処理液が、前記樹脂を含有することで、更なる濃度向上や耐擦過性向上が得られる。
【0023】
前記ノニオン性のポリマーラテックス樹脂とは、電荷を利用せずとも酸性又は塩基性の官能基の中和による立体反発によって分散可能な樹脂粒子であり、具体的には、液体組成物から遠心分離により固形分を単離後、熱分解GC-MS(例えば、島津製作所製GC-17Aなど)により、カルボキシル基、スルホ基等の酸性官能基、アミノ基などの塩基性官能基を含有するモノマーが検出されない樹脂粒子である。
【0024】
前記樹脂の化学構造としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1つ以上であるとき、様々な基材に対する強固な密着性が得られるため好ましい。
【0025】
前記樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、被印刷物への密着性と乾燥性が維持できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、-25℃以上70℃以下が好ましい。前記ガラス転移温度が-25℃以上であると、被印刷物表面のベタツキや積み重ねた際のブロッキングを抑制することができる。前記ガラス転移温度が70℃以下であると、前記処理液と被印刷物上との密着性を維持し、製箱工程での折り曲げ加工で割れや剥がれを防ぐことができる。
【0026】
前記樹脂の含有量としては、前記処理液の全量に対して、30質量%以下が好ましい。前記含有量が30質量%以下であると、処理液を塗工後の樹脂の厚みが厚くなりすぎず、ブロッキングの発生を抑制し、また、多価金属塩の効果が十分に発揮される。
【0027】
--有機溶剤--
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類、多価アルコール類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物などの有機溶剤が挙げられる。前記有機溶剤は、湿潤剤として機能するものが好ましい。
【0028】
前記有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。
前記有機溶剤は、湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0029】
前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、被印刷物への塗工適性、均一分散性、乾燥性等の観点から、前記第一の処理液に対して5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0030】
--水--
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、常温保管において多価金属塩が析出しない十分な量が好ましい。
【0031】
--界面活性剤--
前記界面活性剤は、前記第一の処理液の表面張力を下げ、各種被印刷物への濡れ性を向上させて均一に塗工することができ、前記第一の処理液に含有される多価金属塩を被印刷物上に均一に分布できる効果を有する。
【0032】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、水系界面活性剤として良好な性質を示すことから、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有する界面活性剤が好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
【0033】
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、起泡性が小さいことから、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が好ましい。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
【0034】
前記フッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0035】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、水系界面活性剤として良好な性質を示すことから、変性基としてのポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0036】
前記界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学株式会社などから入手できる。
【0037】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
但し、前記一般式(S-1)中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。
【0038】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(以上、信越化学工業株式会社製)、EMALEX SS-5602、EMALEX SS-1906EX(以上、日本エマルジョン株式会社製)、DOWSIL FZ-2105、DOWSIL FZ-2118、DOWSIL FZ-2154、DOWSIL FZ-2161、DOWSIL FZ-2162、DOWSIL FZ-2163、DOWSIL FZ-2164(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(以上、ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などが挙げられる。
【0039】
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいため好ましく、特に下記一般式(F-1)及び下記一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
但し、前記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するために、「m」は、0~10の整数が好ましく、「n」は、0~40の整数が好ましい。
【化3】
但し、前記一般式(F-2)で表される化合物において、「Y」はH、C
mF
2m+1(但し、「m」は1~6の整数)、CH
2CH(OH)CH
2-C
qF
2q+1(但し、「q」は4~6の整数)、又はC
pH
2p+1(但し、「p」は1~19の整数)であり、「n」は1~6の整数であり、「a」は4~14の整数である。
【0040】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロン(登録商標)S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(以上、AGCセイミケミカル株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(以上、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(以上、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)(登録商標)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(以上、DuPont社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(以上、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(以上、オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、DuPont社製のゾニール(Zonyl)(登録商標)FS-3100、FS-34、FS-300;株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0041】
前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0042】
--消泡剤--
前記消泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0043】
--防腐防黴剤--
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0044】
--防錆剤--
前記防錆剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0045】
--pH調整剤--
前記pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。処理液のpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0046】
前記第一の処理液の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃の温度において、5mPa・s以上1,000mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上1,000mPa・s以下がより好ましい。
前記粘度の測定方法としては、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用し、25℃で標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間の測定条件で測定可能である。
【0047】
前記第一の処理液の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法が好ましい。
【0048】
前記第一の処理液の付与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、被印刷物に対して、2g/m2以上30g/m2以下が好ましく、5g/m2以上20g/m2以下がより好ましい。
【0049】
-被印刷物-
前記被印刷物(以下、記録媒体と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、布、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、OHPシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0050】
<第二の処理液付与工程及び第二の処理液付与手段>
前記第二の処理液付与工程としては、被印刷物上の、前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液を付与する工程であり、第二の処理液付与手段により実施される。
【0051】
<<第二の処理液>>
前記第二の処理液としては、樹脂エマルジョンを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0052】
-樹脂エマルジョン-
前記樹脂エマルジョンとしては、アニオン性官能基を有する樹脂を含む。
前記アニオン性官能基としては、陰性(アニオン性)であり、前記多価金属塩の陽イオンと反応することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、などが挙げられる。
【0053】
前記樹脂エマルジョン中における前記アニオン性官能基の同定方法としては、例えば、赤外線分光分析(IR)、熱分解ガスクロマトグラフィ(PyGC)、核磁気共鳴法(NMR)によって同定することができる。
【0054】
前記アニオン性官能基を有する樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有不飽和単量体、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体、その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
前記カルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステルなどが挙げられる。
前記芳香環を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、それらの誘導体等のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチルなどが挙げられる。
前記その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0055】
前記アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンとしては、適宜合成してもよく、市販品を用いてもよい。
前記市販品としては、例えば、ジョンクリル450(BASF社製、不揮発分42%、酸価100mgKOH/g)、ジョンクリル60(BASF社製、不揮発分34%、酸価215mgKOH/g)、ジョンクリル352(BASF社製、不揮発分45%、酸価53mgKOH/g)などが挙げられる。
【0056】
前記樹脂エマルジョンの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0057】
前記樹脂エマルジョンの付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第一の処理液が付与された領域に対して、第二の処理液中の樹脂成分の付着量が0.3g/m2以上3.0g/m2以下となる範囲であると好ましい。
前記樹脂成分の付着量の測定方法としては、精密計りで秤量した第二の処理液の塗布重量(g/m2)及び処理液に含まれる樹脂成分の含有量(重量%)から算出することによって測定することができる。
【0058】
前記第一の処理液に含まれる前記多価金属塩の付着量(A)と、前記第二の処理液に含まれる前記樹脂成分の付着量(B)との量比(A:B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第一の処理液が付与された所定の領域の光沢値をより低下させることができることから、1:8~8:1が好ましい。
【0059】
前記樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、-10℃以上120℃以下が好ましい。前記ガラス転移温度が-10℃以上であると、第二の処理液の耐ブロッキング性を維持できる。前記ガラス転移温度が120℃以下であると、第二の処理液からなる層の皮膜のクラックを防止できる。
【0060】
前記樹脂エマルジョンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第二の処理液の全量に対して、40質量%以下が好ましい。前記含有量が40質量%以下であると、印刷機上における第二の処理液の水分蒸発に伴う皮張りを防止できる。
【0061】
本発明における前記アニオン性官能基を有する第二の処理液は、前記多価金属塩と混合すると速やかに凝集、ゲル化することから、予め混合した状態では使用することができず、処理液と第二の処理液は各々別の付与手段を用いて付与する必要がある。
【0062】
-その他の成分-
本発明の第二の処理液は、例えば、各種ワックスを用いることができる。前記ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエチレンワックスが好ましい。その他、使用用途に応じて、さらにその他成分を適宜含有してもよい。
前記その他の成分としては、例えば、前記第一の処理液と同様のものを含むことができる。
【0063】
前記第二の処理液の酸価としては、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が好ましく、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が特に好ましい。前記酸価が20mgKOH/g以上であると、前記第一の処理液中の多価金属塩と好適に反応し、前記第一の処理液が付与された所定の領域の光沢値を低下させることができる。前記酸価が150mgKOH/g以上であると、良好な乾燥性や耐水性が得られる。
【0064】
前記第二の処理液の付与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、被印刷物に対して、0.5g/m2以上5.0g/m2以下が好ましく、0.8g/m2以上3.0g/m2以下がより好ましい。前記付与量が、0.5g/m2以上であると、十分な耐擦過性を得ることができる。前記付与量が、5.0g/m2以下であると、第二の処理液の乾燥後に印刷物を積み重ねた際にブロッキングが発生しにくい。
【0065】
前記第二の処理液の粘度は、付与方法等に応じて適宜水や溶剤成分の含有量を変えて調整してよく、例としてフレキソコーターを用いる場合はザーンカップ4番の流出秒数が10秒~23秒程度、グラビアコーターを用いる場合はザーンカップ3番の流出秒数が15秒~20秒程度の範囲になるよう調整することが好ましい。
【0066】
前記第二の処理液の付与方法としては、前記フレキソコーター法、グラビアコーター法のほか、他方式を適宜選択してもよく、例えば、ドクターチャンバー法、ブレードコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
前記第二の処理液は、インラインで付与してもよく、またオフラインで付与してもよい。ここで述べるインラインとは、同一の印刷機上で第一の処理液と第二の処理液の双方を連続して付与することを示し、オフラインとは第一の処理液を塗布した後に被印刷物を排出して棒積みや巻取りをおこない、その後同一もしくは別の印刷機を用いて第二の処理液を付与することを示す。
【0067】
<乾燥工程及び乾燥手段>
前記乾燥工程は、第二の処理液を付与した被印刷物を乾燥する工程であり、乾燥手段により実施される。
【0068】
前記乾燥手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風乾燥装置、赤外線乾燥装置、紫外線乾燥装置などが挙げられる。
【0069】
前記乾燥工程における被印刷物の表面温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第二の処理液からなる層を十分に乾燥させることでできる点から、50℃以上が好ましく、60℃以上100℃以下が好ましい。
【0070】
前記乾燥工程における乾燥時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第二の処理液からなる層を十分に乾燥させることでできる点から、1秒以上300秒未満が好ましい。
【0071】
<その他の工程、及びその他の手段>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インク付与工程などが挙げられる。
【0072】
<<インク付与工程及びインク付与手段>>
前記インク付与工程は、色材を含有するインクを付与してインク層を形成する工程であり、インク付与手段により実施される。
前記インクは、前記被印刷物上の前記第一の処理液が付与された所定の領域又は前記第一の処理液が付与されていない他の領域に付与される。
【0073】
前記インクの付与方法としては、特に制限はなく、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット方式が好適に用いられる。
インクの付与量としては、高画像濃度を実現する点から、1色あたり5g/m2以上15g/m2以下が好ましく、7g/m2以上15g/m2以下がより好ましい。
【0074】
<<インク>>
前記インクとしては、例えば、カラーインク、黒色インク、灰色インク、クリアインク、メタリックインク、白色インクなどが挙げられる。
前記カラーインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、レッドインク、グリーンインク、ブルーインク、オレンジインク、バイオレットインク、ホワイトインクなどが挙げられる。
【0075】
前記インクは、色材を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0076】
―色材―
前記色材としては、色を呈するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、染料、顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、顔料が好ましい。
前記顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。
【0077】
前記無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、酸化チタンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましい。
【0079】
前記顔料としては、黒色用としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、カラー用としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155;C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、C.I.ピグメントホワイト6などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17、23、42、44、79、142;C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289;C.I.アシッドブルー9、45、249;C.I.アシッドブラック1、2、24、94;C.I.フードブラック1、2;C.I.ダイレクトイエロー1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173;C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、227;C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、199、202;C.I.ダイレクドブラック19、38、51、71、154、168、171、195;C.I.リアクティブレッド14、32、55、79、249;C.I.リアクティブブラック3、4、35などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
メタリックインクに用いる色材としては、例えば、金属単体、合金、又は金属化合物を微粉砕してなる微粉末である。具体的には、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、シリコン、銅、及びプラチナからなる一群の金属単体のいずれか1種類若しくは複数よりなるもの、又は合金などが挙げられる。前記金属化合物としては、金属単体若しくは合金の酸化物、窒化物、硫化物、及び炭化物のいずれか1種若しくは複数などが挙げられる。
【0082】
前記インク中の色材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0083】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、例えば、樹脂、有機溶剤、水、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0084】
前記インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
前記インクの25℃での粘度としては、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
前記粘度としては、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、被印刷物上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0085】
(印刷物)
本発明の印刷物は、被印刷物上に、多価金属塩を含有する第一の処理液からなる層と、前記第一の処理液が存在する所定の領域及び前記第一の処理液が存在しない他の領域の上に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液からなる層と、を有する。
被印刷物としては、前記の各種用紙、基材を用いることができる。前記印刷物は、被印刷物上に、本発明に用いられる前記第一の処理液及び前記第二の処理液を用いて形成された画像を有してなる。
【0086】
前記印刷物としては、前記第一の処理液が存在する所定の領域における60°光沢値と、前記第一の処理液が存在しない他の領域における60°光沢値との差が10以上であることが好ましく、20以上がより好ましく、30以上が特に好ましい。前記差が、10以上であると、美粧性の高い印刷物となる。
【0087】
<画像印刷装置>
図1は、本発明の画像印刷方法に用いられる画像印刷装置100の一例を示す概略図である。
図1の画像印刷装置は、第一の処理液を塗布する第一の処理液吐出ヘッド2と、第一の処理液乾燥装置3と、ブラックインク(K)、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)及びイエローインク(Y)を吐出するインク(カラーインク)吐出ヘッド4と、インク乾燥装置5と、第二の処理液を塗布する第二の処理液塗工装置6と、第二の処理液乾燥装置7と、被印刷物1を搬送する搬送ベルト8とを有する。
図1において、第一の処理液乾燥装置3は、第一の処理液吐出ヘッド2とインク吐出ヘッド4の間に必要に応じて設置される。第一の処理液からなる層としては、必ずしも乾燥させる必要はないが、被印刷物がフィルム等の液体吸収性の低い基材である場合、第一の処理液の泳ぎやインクが付与された際のビーディングを防止するために第一の処理液からなる層を乾燥させることが好ましい。
前記第一の処理液乾燥装置3、インク乾燥装置5及び第二の処理液乾燥装置7としては、被印刷物の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段などが挙げられ、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
図1において、インク乾燥装置5は、インク(カラーインク)吐出ヘッド4のうちのイエローインク(Y)吐出ヘッドと第二の処理液塗工装置6の間に必要に応じて設置される。インク層としては、必ずしも乾燥させる必要はないが、第二の処理液の塗工時のバックトラップ(インク成分が第二の処理液塗工装置内に移行し、第二の処理液が着色される現象)を防止するためにインク層を乾燥させることが好ましい。
図1において、第二の処理液乾燥装置7は、第二の処理液塗工装置6の後方に配置され、第二の処理液を好適に乾燥しブロッキングを防止するために必須である。
【0088】
図2A及び
図2Bは、第二の処理液をオフラインで付与する場合における、本発明の画像印刷方法に用いられる画像印刷装置の一例を示す概略図である。
図2Aに示すように、第一の画像印刷装置200において被印刷物1は、第一の処理液吐出ヘッド2により第一の処理液を付与し、インク(カラーインク)吐出ヘッド4によりインクを付与した後に、
図2Bに示すように、第二の画像印刷装置300において第二の処理液塗工装置6によって第二の処理液が付与される。
図2Aの第一の印刷工程において、第一の処理液乾燥装置3は、第一の処理液吐出ヘッド2とインク吐出ヘッド4の間に必要に応じて設置される。前記第一の処理液からなる層としては、必ずしも乾燥させる必要はないが、非印刷物がフィルム等の液体吸収性の低い基材である場合、第一の処理液の泳ぎやインクが付与された際のビーディングを防止するため第一の処理液層を乾燥させることが好ましい。
【0089】
図2Aの第一の印刷工程において、インク乾燥装置5は、インク(カラーインク)吐出ヘッド4のうちのイエローインク(Y)吐出ヘッドの後方に必要に応じて設置される。インクからなる層としては、必ずしも乾燥させる必要はないが、被印刷物を排出して棒積みや巻取りをおこなった際の裏付きやブロッキングを防止するためにインクからなる層を乾燥させることが好ましい。
【0090】
図2Bの第二の印刷工程において、第二の処理液乾燥装置7は、第二の処理液塗工装置6の後方に配置され、第二の処理液を好適に乾燥しブロッキングを防止するために必須である。
【0091】
図3A及び
図3Bは、本発明の画像印刷装置及び画像印刷方法によって得られる、印刷物の一例を示す概略図である。
図3Aは、インクからなる層を含まない印刷物の一例を示す概略図であり、被印刷物1と、第一の処理液が付与された第一の処理液からなる層9と、第二の処理液が付与された第二の処理液からなる層10と、から構成される。
【0092】
図3Bは、インクからなる層を含む印刷物の一例を示す概略図であり、被印刷物1と、第一の処理液が付与された第一の処理液からなる層9と、インクが付与されたインクからなる層11と、第二の処理液が付与された第二の処理液からなる層10と、から構成される。
本発明において、第一の処理液層9は、被印刷物1上の所定の領域に付与され、第二の処理液層10は、第一の処理液層9が存在する領域と存在しない領域の双方にわたって形成される。第一の処理液と第二の処理液を組み合わせて用いることにより、処理液層上が存在する領域における第二の処理液層の光沢値が低下し、第一の処理液層が存在しない領域における第二の処理液層の光沢値との差が発生し、美粧性に優れる印刷物を得ることが可能となる。
第二の処理液層は、第一の処理層を完全に覆っていてもよく、一部分のみを覆っていてもよい。インク層は、第一の処理層を完全に覆っていてもよく、一部分のみを覆っていてもよい。第二の処理液層は、インク層を完全に覆っていてもよく、一部分のみを覆っていてもよい。
【0093】
画像記録装置及び画像記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、画像記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この画像記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの被印刷物への印刷も可能とする広幅の画像記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を被印刷物として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0094】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0095】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に記載が無い場合、実施例及び比較例の調製、評価等は、25℃、相対湿度60%の条件下で行った。
【0096】
(第一の処理液の調製例1)
以下の[第一の処理液1の成分]に示す成分を混合した後、ディゾルバー(DISPERMAT LC30、英弘精機株式会社製)で2,000rpmの条件で10分間撹拌し、第一の処理液1を得た。
[第一の処理液1の成分]
・酢酸マグネシウム4水和物(多価金属塩):8.0質量部
・1,2-プロパンジオール:10.0質量部
・3-メトキシブタノール:10.0質量部
・TEGO(登録商標) WET270(シリコーン系界面活性剤、Evonik社製):0.5質量部
・プロキセルLV(アビシア社製、防腐防黴剤):0.1質量部
・イオン交換水:71.4質量部
【0097】
(第一の処理液の調製例2~9)
前記第一の処理液の調製例1において、成分及び含有量を下記表1に示す成分及び含有量に変更した以外は、第一の処理液の調製例1と同様にして、第一の処理液2~7を調製した。
【0098】
【0099】
(第二の処理液の調製例1)
以下の[第二の処理液1の成分]に示す成分を混合した後、ディゾルバー(DISPERMAT LC30、英弘精機株式会社製)で2,000rpmの条件で10分間撹拌し、第二の処理液1を得た。樹脂エマルジョンの酸価の値から、第二の処理液の酸価を算出したところ、40.5mgKOH/gであった。
[第二の処理液1の成分]
・ジョンクリル450(アニオン性官能基:エチレン性不飽和基、BASF社製、不揮発分42%、酸価100mgKOH/g):40.5質量部
・ケミパール400W(ポリエチレンワックス、三井化学社製):1.0質量部
・BYK-028(消泡剤、ビックケミー社製):0.5質量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:3.0質量部
・イソプロピルアルコール:20.0質量部
・イオン交換水:35.0質量部
【0100】
(第二の処理液の調製例2~4)
前記第二の処理液の調製例1において、成分及び含有量を下記表2に示す成分及び含有量に変更した以外は、第二の処理液の調製例1と同様にして、第二の処理液2~4を調製した。
【0101】
【0102】
前記第二の処理液に含まれる成分の詳細は、以下のとおりである。
・ジョンクリル60(アニオン性官能基:エチレン性不飽和基、BASF社製、不揮発分34%、酸価215mgKOH/g)
・ジョンクリル352(アニオン性官能基:エチレン性不飽和基、BASF社製、不揮発分45%、酸価53mgKOH/g)
・ビニブラン2684(アニオン性官能基:エチレン性不飽和基、日信化化学社製、不揮発分30%、酸価0mgKOH/g)
【0103】
(実施例1)
<第一の処理液付与工程>
前記第一の処理液1をインクジェット吐出ヘッド(株式会社リコー製、MH5421MF)に充填し、被印刷物としてのOKトップコート+(米量157g/m2、コート紙、王子製紙株式会社製)に対して、付与量が10g/m2となるように前記第一の処理液1を吐出し、600dpiで幅4センチ、長さ10センチの前記第一の処理液からなる層を形成した。なお、前記第一の処理液を付与した面積率は、被印刷物全体に対して50%である。
【0104】
<第一の処理液乾燥工程>
前記第一の処理液1を付与し前記第一の処理液1からなる層を形成した被印刷物を乾燥機に入れ、80℃、2分間の条件で乾燥させた。
【0105】
<第二の処理液付与工程>
乾燥後の被印刷物における前記第一の処理液1を付与した領域及び前記第一の処理液1を付与していない領域の上に、バーコーターNo.4を用いて付与量が9.0g/m2となるように前記第二の処理液1を塗布した。
【0106】
<第二の処理液乾燥工程>
前記第二の処理液1を付与し前記第二の処理液1からなる層を形成した被印刷物を乾燥機に入れ、80℃、1分間の条件で乾燥させて、印刷物を得た。
【0107】
(実施例1~11及び比較例1~2)
前記実施例1において、第一の処理液1及び第二の処理液1を、下記表3から5に示す第一の処理液及び第二の処理液の組合せに変更した以外は、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0108】
実施例1~11及び比較例1~2で得られた印刷物について、前記第一の処理液を付与した領域及び前記第一の処理液を付与していない領域の「光沢値差」を評価した。
【0109】
<光沢値差>
実施例1~11及び比較例1~2で得られた印刷物について、光沢計(装置名:No.4446マイクロトリグロス、BYK-Gardner社製)を用いて、前記第一の処理液を付与した領域の60°光沢値L1、及び前記第一の処理液を付与していない領域の60°光沢値L2を測定した。前記第一の処理液を付与した領域及び前記第一の処理液を付与していない領域の光沢値としては、それぞれ5箇所測定した平均値とした。
算出された光沢値L1及び光沢値L2の差を算出し、下記評価基準に基づき、「光沢値差」を評価した。△以上が実使用可能なレベルである。評価結果を下記表3から5に示す。
[評価基準]
◎:光沢値差が30以上
〇:光沢値差が20以上30未満
△:光沢値差が10以上20未満
×:光沢値差が10未満
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 被印刷物上の所定の領域に、多価金属塩を含有する第一の処理液を付与する第一の処理液付与工程と、
被印刷物上の、前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液を付与する第二の処理液付与工程と、
を含むことを特徴とする画像印刷方法である。
<2> 前記第一の処理液付与工程の後に、被印刷物上の、前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、色材を含有するインクを付与するインク付与工程を含む、前記<1>に記載の画像印刷方法である。
<3> 前記第二の処理液の酸価が、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像印刷方法である。
<4> 前記第二の処理液の酸価が、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像印刷方法である。
<5> 前記第二の処理液の酸価が、100mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の画像印刷方法である。
<6> 前記第一の処理液が付与された所定の領域における前記多価金属塩の付着量が、0.4g/m2以上である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像印刷方法である。
<7> 前記第一の処理液が付与された所定の領域における前記多価金属塩の付着量が、0.8g/m2以上である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像印刷方法である。
<8> 前記多価金属塩が、酢酸カルシウムである、前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像印刷方法である。
<9> 前記第一の処理液に含まれる前記多価金属塩の付着量(A)と、前記第二の処理液に含まれる前記樹脂エマルジョンの樹脂成分の付着量(B)との量比(A:B)が、1:8~8:1である、前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像印刷方法である。
<10> 前記第一の処理液からなる層及び前記インクからなる層の少なくともいずれかを乾燥させる乾燥工程をさらに含む、前記<2>から<9>のいずれかに記載の画像印刷方法である。
<11> 被印刷物上の所定の領域に、多価金属塩を含有する処理液を付与する処理液付与手段と、
被印刷物上の前記第一の処理液が付与された所定の領域及び前記第一の処理液が付与されていない他の領域に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液を付与する第二の処理液付与手段と、
を含むことを特徴とする画像印刷装置である。
<12> 色材を含有するインクを付与するインク付与手段を含む、前記<11>に記載の画像印刷装置である。
<13> 前記第一の処理液からなる層及び前記インクからなる層の少なくともいずれかを乾燥させる乾燥工程をさらに含む、前記<11>から<12>のいずれかに記載の画像印刷装置である。
<14> 被印刷物上に、
多価金属塩を含有する第一の処理液からなる層と、
前記第一の処理液が存在する所定の領域及び前記第一の処理液が存在しない他の領域の上に、アニオン性官能基を有する樹脂エマルジョンを含有する第二の処理液からなる層と、
を有することを特徴とする印刷物である。
<15> 前記第一の処理液が存在する所定の領域における60°光沢値と、前記第一の処理液が存在しない他の領域における60°光沢値との差が10以上である、前記<14>に記載の印刷物である。
【0114】
前記<1>から<10>のいずれかに記載の画像印刷方法、前記<11>から<13>のいずれかに記載の画像印刷装置、及び前記<14>から<15>のいずれかに記載の印刷物によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。