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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020964
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】画像形成方法及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20230202BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20230202BHJP
   C09D 11/324 20140101ALI20230202BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20230202BHJP
   C09D 11/104 20140101ALI20230202BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B41M5/00 100
C09D11/00
C09D11/324
C09D11/10
C09D11/104
B41M5/00 112
B41M5/00 120
B41J2/01 125
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115750
(22)【出願日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2021126287
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022083182
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】八田 周子
(72)【発明者】
【氏名】宮越 亮
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓哉
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA10
2C056FB02
2C056FC01
2C056HA46
2H186AB05
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA10
2H186FA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB58
4J039AD03
4J039AD09
4J039AE06
4J039BA04
4J039BC09
4J039BC18
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA33
4J039EA42
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】高い画像濃度が得られ、光沢に優れる画像を得ることができる画像形成方法の提供。
【解決手段】顔料、及び前記顔料を包含した樹脂を含む顔料内包樹脂粒子を含有するインクを、記録媒体に付与するインク付与工程と、前記インクが付与された前記記録媒体を、60℃以上で加熱する加熱工程と、を有する画像形成方法であって、前記顔料内包樹脂粒子の含有量が、前記インクに含まれる固形分に対して、10質量%以下であり、前記顔料内包樹脂粒子における前記顔料と前記樹脂の質量比(顔料/樹脂)が0.25以上1.0以下であり、前記インク5μLを73℃の記録媒体に滴下したときの前記インクの接触角θm(°)が、25°以下である画像形成方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を内包した樹脂である顔料内包樹脂粒子を含有するインクを、記録媒体に付与するインク付与工程と、
前記インクが付与された前記記録媒体を、60℃以上で加熱する加熱工程と、を有する画像形成方法であって、
前記樹脂に内包されずに露出した前記顔料単体の含有量が、前記インクに含まれる固形分に対して、10質量%以下であり、
前記顔料内包樹脂粒子における前記顔料と前記樹脂の質量比(顔料/樹脂)が0.25以上1.0以下であり、
前記インク5μLを73℃の記録媒体に滴下したときの前記インクの接触角θm(°)が、25°以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記記録媒体が、非浸透メディアである、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記インクが、さらに界面活性剤を含む、請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記界面活性剤の含有量が、前記インクに対して3質量%以上10質量%未満である、請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記界面活性剤のHLB値が、10以上13以下である、請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記加熱工程における加熱温度が、60℃以上80℃以下である、請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.7以下である、請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記顔料内包樹脂粒子の球形度が、0.7以上1.0以下である、請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記顔料内包樹脂粒子に含まれる前記樹脂が、ポリエステル樹脂である、請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記ポリエステル樹脂がカルボキシル基を有し、自己乳化性樹脂である、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記顔料が無機顔料である、請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記無機顔料がカーボンブラックである、請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記顔料内包樹脂粒子が前記無機顔料の一次粒子を二個以上包含する、請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記インクのレーザー回折法により得られる体積基準の累積50%径が、30nm以上300nm以下である、請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項15】
請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法によって形成されることを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有しており、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。
近年、家庭用のみならず商業用途や産業用途にもインクジェット技術が利用されてきている。そして、商業用途や産業用途では、インク低吸収性の印刷用塗工紙(コート紙)やインク非吸収性のプラスチックメディアが記録媒体として用いられる。このため、このような記録媒体に対しても、インクジェット記録方法により、従来のオフセット印刷と同程度の画質を実現することが求められている。
【0003】
インクジェット記録方法によって得られる画像の画質を向上させるために、例えば、顔料と特定の樹脂とを所定の範囲で混合した顔料混合物を用いて顔料分散液を製造する方法(例えば、特許文献1参照)、顔料を含有するポリマー粒子とポリマーエマルジョンを有するインク(例えば、特許文献2参照)、特定の樹脂中に顔料を分散させた樹脂を粒子状に分散させた分散体(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
また、種々の記録媒体に対応するために、インクの接触角を制御する方法(例えば、特許文献4および5参照)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高い画像濃度が得られ、光沢に優れる画像を得ることができる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の画像形成方法は、
顔料を内包した樹脂である顔料内包樹脂粒子を含有するインクを、記録媒体に付与するインク付与工程と、
前記インクが付与された前記記録媒体を、60℃以上で加熱する加熱工程と、を有する画像形成方法であって、
前記樹脂に内包されずに露出した前記顔料単体の含有量が、前記インクに含まれる固形分に対して、10質量%以下であり、
前記顔料内包樹脂粒子における前記顔料と前記樹脂の質量比(顔料/樹脂)が0.25以上1.0以下であり、
前記インク5μLを73℃の記録媒体に滴下したときの前記インクの接触角θm(°)が、25°以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い画像濃度が得られ、光沢に優れる画像を得ることができる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の画像形成方法に用いる本発明の画像形成装置の一例を示す斜視概略図である。
図2図2は、本発明の画像印刷方法に用いる本発明の画像印刷装置におけるメインタンクの一例を示す斜視概略図である。
図3図3は、本発明における顔料内包樹脂粒子の3次元画像の一例を示す3次元画像である。
図4A図4Aは、本発明における顔料内包樹脂粒子を含有するインクを用いて形成した塗膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの一例を示す写真である。
図4B図4Bは、顔料を樹脂で被覆した樹脂被覆顔料と樹脂エマルジョンを含有するインクを用いて形成した塗膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、インク付与工程と、加熱工程と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を有する。
【0009】
本発明者らは、高い画像濃度が得られ、耐擦過性に優れる画像を得るために従来技術について検討したところ、従来技術では、顔料を樹脂粒子で完全に取り込んだ、即ち、顔料を樹脂で内包化した顔料内包樹脂粒子を形成することが難しいという問題があった。
また、従来技術では、顔料の露出表面が樹脂で覆われている顔料被覆樹脂粒子を調製しており、この場合、前記顔料の露出表面の一部が樹脂で覆われずに外部に露出している部分を有していることが多い。前記顔料被覆樹脂粒子を含有する水系インクは、記録媒体に印刷した後に加熱乾燥などの急速な乾燥を行った場合、印刷したインク塗膜中の顔料が凝集することで塗膜の表面粗さが増加し、光を乱反射することによって加熱乾燥しない場合と比較して画像濃度および光沢が低下してしまうという問題があった。
さらに、非浸透基材においては、基材がインクを弾くことにより基材が露出し、画像濃度および光沢が低下する場合があるという問題があった。
【0010】
本発明者らは、顔料を内包した顔料内包樹脂粒子を含有するインクの加熱した非浸透基材への接触角を制御し、印字時に基材を加熱する工程を有する画像形成方法によって、高い画像濃度および光沢を有する画像を得ることができる画像形成方法を見出した。即ち、本発明者らは、加熱乾燥を行った非浸透基材への印字においても、顔料の凝集を抑制しつつ、基材の露出を抑え、画像濃度および光沢を向上させることができることを見出した。
【0011】
<インク付与工程>
前記インク付与工程は、顔料、及び前記顔料を包含した樹脂を含む顔料内包樹脂粒子を含有するインクを、記録媒体に付与する工程であり、インク付与手段によって実施される。
前記インク付与手段としては、特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット方式などが挙げられる。
【0012】
前記インクジェット方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吐出ヘッドの駆動方式としては、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータなどを利用したオンディマンド型のヘッドを用いることもできるし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドなどが挙げられる。
【0013】
<<インク>>
前記インクは、顔料を包含した樹脂である顔料内包樹脂粒子を含有し、水、有機溶剤、界面活性剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記インクは、前記インク5μLを73℃の記録媒体に滴下したときの前記インクの接触角θm(°)が25°以下であり、5°以上25°以下が好ましい。前記接触角が、25°以下であると、インク滴が十分に濡れ広がり、画像濃度を向上させることができる。
前記接触角を測定するための接触角測定用メディアとしては、Rzが10μm未満のポリ塩化ビニルフィルムを用いれば良く、このようなポリ塩化ビニルフィルムの製品としては、例えば、MPI1000(AVERY DINNISON製)、CPPVWP1300(桜井株式会社製)などが挙げられるが、これらに限らず他のポリ塩化ビニルフィルムを用いることもできる。
前記接触角の測定方法としては、ホットプレート(NINOS ND-1、アズワン社製)上で、印字中の加熱温度と同じ温度となるように加熱したPVCフィルム(AVERY DINNISON製、MPI1000)に対してインク5μLを滴下した後に、自動接触角計(協和界面科学株式会社製)を用いて、滴下から5秒後のインクの接触角θm(°)を測定することができる。前記接触角θm(°)は、5回繰り返して行った平均値を測定値とする。
【0014】
-顔料内包樹脂粒子-
前記顔料内包樹脂粒子は、顔料を樹脂で内包した樹脂粒子であり、形状としては、前記顔料を前記樹脂で内包していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球形、楕円体、不定形などが挙げられる。これらの中でも、球形であることがより好ましく、真球であることが更に好ましい。
前記顔料内包樹脂粒子とは、前記顔料内包樹脂粒子の1粒子における顔料の露出率(%)が10%以下である樹脂粒子であり、前記露出率は、5%以下が好ましい。前記露出率が5%以下であると、顔料の凝集を抑制することができ、加熱工程を行った場合に形成された画像の画像濃度を向上させることができる。
【0015】
前記顔料内包樹脂粒子の1粒子における顔料の露出率は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。以下、前記露出率の測定方法の具体的な手順の一例を説明する。
まず、顔料内包樹脂粒子を含むインクを、固形分濃度が0.1%となるようにイオン交換水で希釈し試料液を作製する。
次に、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、マイクロピペットを用いて試料液を1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。
次に、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙でEMステイナーを吸い取る。
減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40,000倍で観察する。
体積粒径100nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各視野における顔料内包樹脂粒子を3つ以上計測し、顔料内包樹脂粒子の一粒子における顔料の露出面積/顔料内包樹脂粒子の面積の平均値を試料における「顔料内包樹脂粒子における顔料の露出率(%)」とする。
【0016】
なお、顔料内包樹脂粒子における「顔料」の領域と「樹脂」の領域の判別は、それぞれ「顔料」単独及び「樹脂のみからなる粒子」単独で観察した画像との比較により判別し、領域を測定する。
【0017】
また、単一の顔料内包樹脂粒子の3次元画像を構築して顔料内包樹脂粒子における顔料の露出率(%)を、算出することもできる。単一の顔料内包樹脂粒子の3次元画像を構築するためには、まず、一の粒子に対して連続傾斜投影像を取得する。取得した画像を画像処理ソフトウェア(Image J)の「Fiji」アプリケーションを用いて立体構築処理を行い、単一粒子の3次元画像を構築する。構築した3次元画像における「顔料内包樹脂粒子の表面積S1」と「顔料内包樹脂粒子の表面に露出している顔料の表面積S2」とを測定し、下記式1で表される「顔料内包樹脂粒子における顔料の露出率(%)」を算出する。
(S2/S1)×100・・・式1
【0018】
図3は、本発明における顔料内包樹脂粒子の3次元画像の一例を示す図である。図3に示すように、単一の顔料内包樹脂粒子において構築した3次元画像を用いて、単一の顔料内包樹脂粒子10が顔料11を内包していることを観察することができる。
【0019】
本発明において、「顔料を内包する」とは、顔料が顔料内包樹脂粒子の表面に露出していない状態を意味する。
「顔料が顔料内包樹脂粒子の表面に露出していない状態」とは、走査型電子顕微鏡を用いて下記の手順で観察して算出される「顔料内包樹脂粒子を含むインクにおける顔料の露出率(%)」が10%以下であり、且つ、透過型電子顕微鏡を用いて顔料内包樹脂粒子を20粒子以上観察し、各粒子の表面(辺縁)から顔料の表面までの距離(厚み)を20か所以上測定したものを樹脂の厚みとしたときの、樹脂の平均厚みが10nm以上であることを意味する。例えば、特開2016-196621号公報、特開2002-322396号公報、特開2019-099819号公報、特開2005-120136号公報では、被覆顔料やマイクロカプセル化顔料が提案されているが、樹脂エマルション中の樹脂粒子内に顔料が内包されている形体ではなく、顔料内包樹脂粒子とは異なるものである。
【0020】
[顔料内包樹脂粒子を含むインクにおける顔料の露出率(%)]
前記顔料内包樹脂粒子における顔料の内包化の程度は、前記顔料内包樹脂粒子を含有する分散液(例えば、インク)を用いて塗膜を形成し、形成された塗膜の表面面積に対する、内包化されずに露出している顔料の面積(塗膜における露出顔料の面積率)を定量することによって、評価することができる。
なお、塗膜は、前記記録媒体に塗った前記インク及び前記水分散体が乾燥して固まって膜状になったものを意味する。
前記塗膜における前記顔料露出率の算出方法は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、以下のようにして算出することができる。
前記顔料内包樹脂粒子を含むインクを、固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水を用いて調製する。
次いで、塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に0.15mmバーコーターにて塗工し、25℃で一晩乾燥し、平均厚み2μmの塗膜を形成する。この塗膜を切り出し、SEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定する。これを、導電性処理することなく走査型電子顕微鏡(ZEISS社製、Merlin)を用いて、加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率2,000倍~20,000倍にて観察する。この観察手法により、カーボンブラックと、樹脂の反射電子放出量の違いから、SEM像のコントラストの違いにより露出顔料を見分けることが可能である。
別途、単独の顔料分散体と、単独の樹脂エマルションとを任意の割合で混合したサンプルを用いて、上記方法と同様に塗膜における露出顔料の面積率を定量し、検量線とすることで、前記顔料内包樹脂粒子に含まれる露出顔料を定量することができる。
なお、露出顔料の面積率は、SEM観察像の二値化によって求められ、任意に場所を変更して観察した3視野以上の平均を取ることが好ましい。この観察条件において、チャージアップにより観察不能なものは、顔料露出率が低い傾向にあり、顔料露出率が3%以下の場合に観測されやすい。なお、SEM観察画像の二値化は、画像処理ソフト(Image-J)のDefaultのアルゴリズムを選択した場合における自動二値化処理を行う。
例えば、図4Aは、本発明における顔料内包樹脂粒子を含有するインクを用いて形成した塗膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの一例を示す図である。図4Bは顔料を樹脂で被覆した樹脂被覆顔料と樹脂エマルジョンを含有するインクを用いて形成した塗膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの一例を示す図である。走査型顕微鏡における画像において、白色部分は顔料の領域を示す。図4Aに示すように、本発明における顔料内包樹脂粒子を含有するインクの場合、形成した塗膜の表面において面内のコントラストはほぼ一様であるように観察される。即ち、顔料の領域がほぼ観察されない。一方、図4Bに示すように、顔料を樹脂で被覆した場合には、形成した塗膜の表面において面内のコントラストが一様でなく、顔料の領域が観察される、これは、顔料を樹脂で被覆しただけの場合では、塗膜の表面において顔料が露出している状態を意味している。
【0021】
前記顔料内包樹脂粒子の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エマルションの形態などが挙げられる。前記顔料がエマルションの形態である顔料内包樹脂粒子に内包されることで媒体中への顔料脱離の抑制が可能となる。
前記エマルションとは粒子が水や有機溶媒などの溶媒中に分散している状態を指す。前記粒子としては、使用する溶媒中において粒子の形状を維持することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固体、液体などが挙げられる。
【0022】
前記顔料内包樹脂粒子における外縁(粒子表面)から前記顔料までの距離(前記樹脂の厚み)としては、10nm以上が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましい。
前記顔料内包樹脂粒子の外縁(粒子表面)から顔料までの距離(前記樹脂の厚み)は、「顔料内包樹脂粒子における顔料の露出率(%)」における観察方法と同様の方法を用いて、顔料内包樹脂粒子を20粒子以上観察し、各粒子の外殻の樹脂表層から顔料までの厚みを20か所以上測定し、平均値を算出することにより求める。
【0023】
前記顔料内包樹脂粒子としては、前記顔料の一次粒子を2個以上含有することが好ましい。これにより、顔料内包樹脂粒子中の顔料密度が増加し、画像濃度が向上する。
前記顔料内包樹脂粒子が顔料の一次粒子を2個以上含有することを確認する方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて観察する方法などが挙げられる。前記透過型電子顕微鏡を用いた場合、前記顔料内包樹脂粒子における顔料と、樹脂とは画像中のコントラストの違いで識別することができる。
【0024】
前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比としては、1.0以上1.7以下であることが好ましく、1.0以上1.2以下であることがより好ましい。前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比は、上記透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて顔料内包樹脂粒子を観察し、算出する。
具体的には、他の粒子との重なりのない、顔料内包樹脂粒子を含む視野の画像を、観察位置を任意に変えて複数枚取得し、任意に選択した顔料内包樹脂粒子を画像処理ソフトウェア(ImageJ)の「Fiji」アプリケーションを用いて二値化により抽出し、粒子解析を行う。20粒子に対して解析を行い、顔料内包樹脂粒子20個の長径の短径に対する比の値(長径/短径)を算出し、それらの平均値(平均アスペクト比)を求める。長径/短径の算出は、粒子の端から端までの長さが最長となる軸(長軸)の長さを長径とし、長軸の中心において長軸と直交する方向の粒子の長さを短径とする。前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.7以下であると、塗膜表面の平滑性が向上し、画像濃度が向上するという利点がある。
【0025】
前記顔料内包樹脂粒子の球形度としては、0.7以上1.0以下であることが好ましく、0.8以上1.0以下であることがより好ましい。前記球形度が1.0に近いほど真球に近い形状であること意味する。前記顔料内包樹脂粒子の球形度が0.7以上1.0以下であると、塗膜表面の平滑性が向上し、画像濃度が向上する。
【0026】
前記球形度は、[(抽出した粒子の面積×4π)/抽出した粒子の周囲長]の二乗で定義される値である。前記顔料内包樹脂粒子の球形度は、前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比の算出方法と同様に、上記透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた顔料内包樹脂粒子の観察手法に従って、前記顔料内包樹脂粒子を観察し、前記顔料内包樹脂粒子の観察時の平面における面積、及びそのときの粒子の周囲長を測定し、算出する。
【0027】
前記顔料内包樹脂粒子の体積基準の累積50%径としては、30nm以上300nm以下が好ましく、60nm以上200nm以下がより好ましく、70nm以上150nm以下がさらに好ましい。前記顔料内包樹脂粒子の体積平均粒径(D50)が40nm以上であると、粘度が向上することを抑制し、顔料内包樹脂粒子の分散安定性を向上させることができる。また、前記顔料内包樹脂粒子の体積平均粒径(D50)が300nm以下であると、前記顔料内包樹脂粒子の沈降を抑制し、粒子としての保存安定性が良好となる。
【0028】
前記顔料内包樹脂粒子の体積基準の累積50%径を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、堀場製作所社製)を用いたレーザー回折法によって測定することができる。
前記顔料内包樹脂粒子の体積基準の累積50%径を測定する具体的な方法としては、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、堀場製作所社製)で測定時の透過率(R)及び透過率(B)が30%~70%となるようにサンプルをイオン交換水により希釈し、得られたサンプル溶液の一部をバッチ式セル(スペーサー:50μm)に入れ、サンプルホルダーにセットして測定する。
【0029】
前記インク中における顔料内包樹脂粒子の存在割合は、特に制限はなく、顔料内包樹脂粒子と顔料を含まない樹脂粒子との比率を適宜選定することができる。前記顔料内包樹脂粒子の存在量は、前記透過型電子顕微鏡による観察によって取得した体積粒径100nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像に対して体積粒径100nm以上の粒子の全体に対する前記顔料内包樹脂粒子が占める割合であり、その平均値は30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。顔料内包樹脂粒子の存在割合が30%以上であると、顔料内包樹脂粒子の存在割合が多くなることによって画像濃度を高くすることができる。
【0030】
-顔料-
前記顔料としては、有機顔料、無機顔料が挙げられる。これらの中でも、無機顔料が好ましい。
【0031】
前記顔料内包樹脂粒子に内包されずに露出した顔料単体(以下、露出顔料と称することがある)の含有量としては、インクにおける総固形分の10質量%以下であり、5質量%以下がより好ましい。前記含有量が、10質量%以下であると、顔料の凝集が抑制され、画像濃度の低下が起こりにくくなる。
なお、前記顔料内包樹脂粒子に内包されていない顔料とは、1粒子あたりの顔料の露出率が10%超である顔料である。前記露出率としては、前記顔料内包樹脂粒子の露出率と同じ方法で測定することができる。
【0032】
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー;ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7);銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)等の金属などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0033】
前記カーボンブラックとしては、一次粒径は15nm以上100nm以下が好ましい。一次粒径を上記の範囲とすることで発色性が向上する。
【0034】
前記カーボンブラックのDBP吸収量は30mL/100g以上150mL/100g以下が好ましい。前記カーボンブラックのDBP吸収量は30mL/100g以上150mL/100g以下であると、後述する顔料プレ分散体における顔料分散性を向上させることができる。
また、自己分散顔料を用いてもよく、前記自己分散顔料とは、顔料表面に直接又は他の原子団を介して官能基を導入することにより分散安定化させた顔料をいう。分散安定化させる前の顔料としては、例えば、国際公開第2009/014242号パンフレットに列挙されているような、従来公知の様々な顔料を用いることができる。
【0035】
前記顔料内包樹脂粒子における前記顔料と前記樹脂との質量比(顔料/樹脂)は、0.25以上1.0以下であり、0.3以上0.75以下が好ましい。前記顔料内包樹脂粒子における前記顔料と前記樹脂との質量比(顔料/樹脂)が0.25以上であると画像濃度を向上させることができ、1.0以下であると、画像耐久性を向上させることができる。
【0036】
-樹脂-
前記顔料内包樹脂粒子における樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自己乳化型樹脂が挙げられる。
前記自己乳化型樹脂とは、樹脂溶液と水との撹拌混合により乳化状態を形成可能な樹脂を意味する。
前記自己乳化型樹脂としては、例えば、ノニオン性、アニオン性、及びカチオン性の親水性基を有する樹脂が好ましい。これらの中でも、アニオン性の親水性基を有する樹脂であることがより好ましい。
前記ノニオン性の親水性基としては、例えば、エステル基、エーテル基(結合)などが挙げられる。
前記アニオン性の親水性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。さらに、前記アニオン性の親水性基としては、少なくとも一部が塩基性化合物(中和剤)などにより中和されたカルボキシレート基やスルホネート基が好ましい。
前記アニオン性の親水性基の中和に使用することができる前記中和剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等の塩基性化合物、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基性化合物などが挙げられる。
前記カチオン性の親水性基としては、例えば、アミン塩、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0037】
前記樹脂の酸価としては、5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下がより好ましい。前記樹脂の酸価が5mgKOH/g以上であると、顔料内包樹脂粒子の分散安定性が優れ、またその影響で粒子径が均一化され、分散及び吐出性が良好となる。また、前記樹脂の酸価が50mgKOH/g以下であると、親水性が適正であり、耐水性が向上し、粒子としての安定性が良好となる。
【0038】
前記樹脂の酸価の測定方法としては、例えば、前記樹脂をテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れ、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することで、酸価を測定する方法などが挙げられる。
【0039】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0040】
-ポリエステル樹脂-
前記ポリエステル樹脂としては、自己乳化性樹脂であることが好ましく、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを重縮合させて得られ、組成の一部あるいは全てに芳香族ユニットを有する。即ち、前記芳香族含有ポリエステルは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを、構成成分として有する。
【0041】
--多価アルコール成分--
前記多価アルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)、具体的には、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等);炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等);炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);前記脂環式ジオールの炭素数2~4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下、「EO」と略記する)、プロピレンオキシド(以下「PO」と略記する)、ブチレンオキシド(以下、「BO」と略記する)など〕付加物(付加モル数1~30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。
また、前記の2価のジオールに加えて3価以上(3~8価又はそれ以上)のアルコール成分を含有してもよく、具体的には、炭素数3~36の3~8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内若しくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば、庶糖及びメチルグルコシドなど);前記脂肪族多価アルコールの炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数1~30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど:平均重合度3~60)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
--多価カルボン酸成分--
前記多価カルボン酸成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)、具体的には、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アピジン酸、セバシン酸など)、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4~36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸など);炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの誘導体、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、炭素数4~20のアルカンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。なお、前記多価カルボン酸成分としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)も挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このほか、ポリ乳酸やポリカーボネートジオールの如き開環重合系も好適に使用しうる。
前記ポリエステル樹脂を単離する方法としては、例えば、顔料内包樹脂粒子からなる分散体を加熱乾燥により乾固し、得られた乾固物をテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れてポリエステル樹脂を溶解させる。次いで、遠心分離、ろ過などにより含有する顔料を除去し、次いで、THFを除去することでポリエステル樹脂を単離可能である。また、必要に応じてリサイクルGPCを活用することもできる。
前記ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、夫々、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布である。なお、カラムは排除限界6万のもの、2万のもの、1万のものを直列に繋いだものを使用した。
前記ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)が2,000以上15,000以下であることが好ましく、4,000以上12,000以下がより好ましい。
前記重量平均分子量(Mw)は、例えばGPCを用いて、以下の条件で測定する。
装置:GPC(東ソー(株)製)、検出器:RI、測定温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/min
【0043】
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
【0044】
前記ポリエステル樹脂の軟化温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上180℃以下が好ましく、80℃以上150℃以下がより好ましい。
【0045】
前記ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
前記ポリエステル樹脂の合成方法については、従来一般的に用いられている方法を用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤存在下で、前記多価アルコールと前記多価カルボン酸の重縮合により合成することができる。
【0046】
次に、本発明のインクにおける顔料内包樹脂粒子の製造方法について、詳細に説明する。
【0047】
[顔料内包樹脂粒子の製造方法]
本発明のインクにおける顔料内包樹脂粒子の製造方法は、有機溶剤、及び顔料を混合して、顔料プレ分散体を調製する工程(以下、「顔料プレ分散体調製工程」又は「工程1」と称する)と、得られた顔料プレ分散体と樹脂を混合して、顔料分散樹脂溶液を調製する工程(以下、「顔料分散樹脂溶液調製工程」又は「工程2」と称する)と、得られた顔料分散樹脂溶液と水とを混合して、顔料内包樹脂粒子分散液を調製する工程(以下、「顔料内包樹脂粒子分散液調製工程」又は「工程3」と称する)と、得られた顔料内包樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去する工程(以下、「有機溶剤除去工程」又は「工程4」と称する)と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0048】
<顔料プレ分散体調製工程(工程1)>
前記顔料プレ分散体調製工程は、有機溶剤及び顔料を混合して、顔料プレ分散体を調製する工程である。
前記顔料としては、上述した顔料である。
【0049】
前記有機溶剤としては、次の顔料分散樹脂溶液調製工程における樹脂を溶解できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。これらの中でも、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン系の有機溶剤が好ましい。
【0050】
顔料プレ分散体調製工程で用いられる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散機などが挙げられる。
【0051】
前記顔料プレ分散体における顔料の体積平均粒径(D50)については、顔料内包樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる点から、は10nm以上150nm以下が好ましく、20nm以上120nm以下がより好ましい。
【0052】
前記顔料の体積平均粒径(D50)は、例えば、ゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
具体的には、測定サンプルの固形分濃度が0.01wt%となるように、サンプルをイオン交換水または必要に応じて有機溶剤により希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットし、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定を行う。
【0053】
前記顔料プレ分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
顔料プレ分散体調製工程においては、顔料分散剤を用いることが好ましい。
前記顔料分散剤の親疎水性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料が樹脂中に内包化されやすくなり、画像濃度が向上する点から、疎水性の顔料分散剤を用いることが好ましい。なお、前記顔料分散剤の親疎水性は、前記顔料分散剤が水に不溶性であれば疎水性であり、水に可溶性であれば親水性である。水に不溶性とは、25℃、100gの水に1gの顔料分散剤を加え、振とうした際に、目視で不溶物が確認されるものであり、水に可溶性とは、前記条件において、目視で不要物が確認されないものである。
【0054】
前記顔料分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記顔料分散剤としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、ポリアミノアマイドと酸エステルの塩、ポリカルボン酸の塩、ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、不飽和酸エステル、共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記顔料分散剤としては市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、ジョンクリル(ジョンソンポリマー社製)、Anti-Terra-U(BYK Chemie社製)、Disperbyk(BYK Chemie社製)、Efka(Efka CHEMICALS社製)、フローレン(共栄社化学株式会社製)、ディスパロン(楠本化成株式会社製)、アジスパー(味の素ファインテクノ株式会社製)、デモール(花王株式会社製)、ホモゲノール、エマルゲン(以上、花王株式会社製)、ソルスパース(ルーブリゾール社製)、ニッコール(日光ケミカル株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記顔料プレ分散体における顔料と顔料分散剤の比率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料プレ分散体の分散性を高める点から、顔料と顔料分散剤の比率が4:0.2~4:4が好ましく、4:0.5~4:3がより好ましい。
【0057】
前記顔料プレ分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過することが好ましい。
【0058】
前記顔料プレ分散体の製造方法としては、必要に応じて顔料分散剤を有機溶剤中に溶解あるいは懸濁させ、樹脂及び顔料を投入し撹拌した後、一般に用いられる公知の分散機を用いて製造することができる。
【0059】
前記分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンカー翼、ディスパー翼、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、パールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、アジテーターミル、ペイントシェーカー、グレンミル、コボルミル、ジェットミルなどが挙げられる。これらの中でも、分散効率の点から、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカーが好ましい。
【0060】
<顔料分散樹脂溶液調製工程(工程2)>
前記顔料分散樹脂溶液調製工程は、得られた前記顔料プレ分散体と樹脂を混合して、顔料分散樹脂溶液を調製する工程である。
【0061】
前記顔料分散樹脂溶液は、上記顔料プレ分散体調製工程で得られた前記顔料プレ分散体と、樹脂、及び必要に応じて塩基性化合物、有機溶剤、添加剤とを混合し、撹拌することで得られる。
前記樹脂としては、上述した樹脂である。
【0062】
顔料分散樹脂溶液調製工程において使用される混合撹拌装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記顔料プレ分散体調製工程にて記載した装置が挙げられる。これらの中でも、アンカー翼又はディスパー翼を備えた高速撹拌装置が高粘度溶液の均一撹拌及び樹脂粉体を効率よく溶解させる点から好ましく用いられる。
前記顔料分散樹脂溶液の調製手順については、特に制限はなく、顔料プレ分散体調製工程で得られた顔料プレ分散体に樹脂の固形物を加えてもよいし、樹脂の固形物を有機溶剤に可溶化した後に加えてもよい。
【0063】
前記顔料分散樹脂溶液における顔料の体積平均粒径(D50)は、上述した顔料プレ分散体調製工程で得られる顔料プレ分散体中の顔料と同様の体積平均粒径(D50)であることが好ましく、顔料プレ分散体調製工程と顔料分散樹脂溶液調製工程で変化が生じないことがより好ましい。
【0064】
前記樹脂は、顔料内包樹脂粒子分散液調製工程にて顔料を内包化するのに用いられ、ノニオン性やアニオン性、カチオン性の親水性基を有することが好ましく、アニオン性の親水基を有することがより好ましい。
前記樹脂がアニオン性の樹脂である場合、前記樹脂が水性媒体中でエマルションを形成し、水性媒体中での分散安定性を保つためにアニオン性基の一部ないしは全部を塩基性化合物で中和することが好ましい。
【0065】
前記樹脂に対する前記顔料の比率は、0.2以上0.75以下が好ましく、0.3以上0.6以下がより好ましい。前記樹脂に対する顔料の比率が0.2以上であると、顔料濃度が適切であり、印刷物の画像濃度が高くなる。また、前記樹脂に対する顔料の比率が0.75以下であると、顔料の大部分を樹脂で内包化することができ、加熱乾燥後の塗膜粗さを抑制することで画像濃度が良好となる。前記樹脂に対する顔料比率は、仕込み比率又は最終的に得られる顔料内包樹脂粒子の分散体(水分散体、インクなど)から算出できる。
【0066】
前記樹脂に対する顔料比率を前記顔料内包樹脂粒子の分散体から算出する方法としては、例えば、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて前記顔料内包樹脂粒子の分散体の乾固膜の熱分析により算出することができる。具体的には、前記顔料内包樹脂粒子の分散体の乾固膜を熱重量示差熱分析装置により、窒素ガス雰囲気化で樹脂の熱分解温度まで昇温、保持し、分解した重量を樹脂、残差の重量を顔料として算出することができる。また、窒素ガス雰囲気化での熱分解では完全に樹脂を分解できないような高耐熱性の樹脂は、加熱減量と樹脂に対する顔料比率の検量線を用いて算出することができる。具体的には、任意の比率で混合した顔料と樹脂の混合物を複数作成し、それぞれの混合物を一定の温度まで昇温、保持することで、上記検量線を作成し、未知サンプル測定結果より得られる減量率を基に樹脂に対する顔料の比率を算出することができる。
【0067】
前記顔料分散樹脂溶液における有機溶剤に対する樹脂の比率は、1.0以上3.0以下が好ましく、1.2以上2.5以下がより好ましく、1.4以上2.0以下がさらに好ましい。前記有機溶剤に対する樹脂の比率が1.1以上であると、工程3における樹脂の乳化速度が速くなり、顔料内包樹脂粒子の小粒径化を可能とする。また、前記有機溶剤に対する樹脂の比率が3.0以下であると、反応系内の高粘度化を抑制し、攪拌効率が良好になることで粗大粒子の生成を抑制できる。
【0068】
<顔料内包樹脂粒子分散液調製工程(工程3)>
前記顔料内包樹脂粒子分散液調製工程は、得られた顔料分散樹脂溶液と水とを混合して、顔料内包樹脂粒子分散液(水分散液)を調製する工程である。
前記顔料内包樹脂粒子分散液調製工程において使用される混合撹拌装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上記顔料プレ分散体調製工程にて記述した装置などが挙げられる。これらの中でも、アンカー翼又はディスパー翼を備えた高速撹拌装置が高粘度溶液における均一撹拌の点で好ましく、分散にかかるエネルギーが高いほど、生成した顔料内包樹脂粒子の粒子径を小さくすることが可能であるが、高すぎる場合には生成した顔料内包樹脂粒子が破砕されることで内包化状態を維持できないことがある。
【0069】
前記顔料分散樹脂溶液と水との混合手順に特に制限はなく、顔料分散樹脂溶液中に水を加えても、水に顔料分散樹脂溶液を加えてもよいが、顔料分散樹脂溶液中に水を加えることが好ましい。
【0070】
また、水の添加速度としては、樹脂100質量部に対して10質量部/min以上1000質量部/min以下が好ましく、30質量部/min以上500質量部/min以下がより好ましい。前記水の添加速度が10質量部/min以上1000質量部/min以下であると、系内の顔料凝集を抑制することで顔料内包樹脂粒子の粗大化を抑制できる。
前記水の添加量は、顔料内包樹脂粒子の分散安定性の観点から、上記顔料分散樹脂溶液調製工程で用いた樹脂100質量部に対して70質量部以上700質量部以下が好ましく、100質量部以上500質量部以下がより好ましい。
【0071】
また、前記顔料内包樹脂粒子分散液調製工程における反応温度は20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
【0072】
<有機溶剤除去工程(工程4)>
前記有機溶剤除去工程は、得られた顔料内包樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去する工程である。顔料内包樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去することによって、後述する本発明の水系分散体が得られる。
【0073】
前記顔料内包樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去する方法としては、特に制限はなく、公知の除去装置を使用することができるが、減圧環境下にて有機溶剤の沸点以上の温度にて加熱することが好ましく、例えば、ロータリーエバポレーターなどが挙げられる。
【0074】
前記減圧環境における圧力としては、200mmHg以下が好ましく、100mmHg以下がより好ましい。
【0075】
また、加熱温度としては20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
得られた水系分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過することができる。
【0076】
-樹脂-
本発明のインクは、前記顔料内包樹脂粒子に含まれる樹脂のほかに、目的に応じてさらに他の樹脂を含んでもよい。
【0077】
-界面活性剤-
本発明のインクは、界面活性剤を含有することが望ましい。
【0078】
前記界面活性剤の含有量は、インクの全量に対して、3質量%以上10質量%未満が好ましい。
界面活性剤の含有量が3質量%以上であることで、非浸透基材に対しても濡れ広がり、均一な塗膜を形成することができる。界面活性剤の含有量が10質量%未満であることで、非浸透基材への密着性の低下を抑制することができる。
前記水系分散体中の界面活性剤の含有量の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速液体クロマトグラフ(LC-20、株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0079】
前記界面活性剤のHLB値は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10以上13以下であることが好ましい。この範囲にあることで、非浸透基材への濡れ性が適切となり、弾きを抑制することができる。
ここで、HLB値とは界面活性剤の親水基と親油基とのバランスを意味し、前記HLB値は0~20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。 前記HLB値は、以下の式(グリフィン法)により定義されるものである。
HLB値=20×(親水部の式量の総和/分子量)
なお、界面活性剤の混合物させた場合のHLB値は各成分のHLB値の加重平均となる。
【0080】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材(以下、「非浸透メディア」とも称する)とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
前記塩化ビニル樹脂フィルムとしては、例えば、CPPVWP1300(桜井株式会社)、MPI1000(AVERY DINNISON)などが挙げられる。
前記ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとしては、例えば、ビューフルTP-188(株式会社きもと)が挙げられる。
前記ポリプロピレンフィルム、又は前記ポリエチレンフィルムとしては、特に制限はなく、例えば、AR1025、AR1056、AR1082、EC1082、1082D、1073D、1056D、1025D、FR1073(旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ株式会社)、P2002、P2102、P2108、P2161、P2171、P2111、P4266、P5767、P3162、P6181、P8121、P1162、P1111、P1128、P1181、P1153、P1157、P1146、P1147、P1171(東洋紡株式会社)、YPI、アクアユポ、スーパーユポ、ウルトラユポ、ニューユポ、ユポ電飾用紙、ユポ建材用紙、ユポハイグロス、ユポジェット、メタリックユポ(株式会社ユポ・コーポレーション)などが挙げられる。
これらの中でも、塩化ビニル樹脂フィルムであるMPI1000(AVERY DINNISON)が好ましい。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
【0081】
<加熱工程>
前記加熱工程は、インクが付与された記録媒体を、加熱機構により加熱する工程であり、記録媒体に接する前記加熱機構の温度が60℃以上である。
【0082】
加熱機構としては、インクを付与した記録媒体の印字面や裏面を加熱する手段が含まれ、例えば、赤外線ヒーター、温風ヒーター、加熱ローラ、ホットプレート、高周波加熱装置、マイクロ波加熱装置などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもホットプレートが好ましい。
記録媒体を加熱させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクが付与された記録媒体に加熱機構として温風等の加熱された流体を接触させる方法、インクが付与された記録媒体と加熱部材とを接触させ伝熱により加熱する方法、赤外線や遠赤外線等のエネルギー線を照射することによりインクが付与された記録媒体を加熱する方法などが挙げられる。
【0083】
前記加熱工程における加熱温度としては、60℃以上であり、60℃以上80℃以下が好ましく、73℃以上80℃以下がより好ましい。前記加熱温度が、60℃以上であると、この範囲にあることで、インク滴の合一が起こりにくくなり、インク弾きが抑制され、高い画像濃度と光沢を有する画像を得ることができる。また、印字中の加熱の加えて、印字前、印字後などにも加熱、乾燥工程を有しても良い。
【0084】
<記録装置>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
【0085】
本発明において、記録装置とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
【0086】
前記記録装置は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
【0087】
前記記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0088】
本発明の画像形成方法に用いられる記録装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、同装置の斜視説明図である。
図2は、メインタンクの斜視説明図である。
【0089】
記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
【0090】
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【実施例0091】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以降の説明において「部」は、特に明示しない限り「質量部」を表し、「%」は、特に明示しない限り「質量%」を表す。
【0092】
まず、顔料内包樹脂粒子の調製に用いる樹脂として、自己乳化樹脂:ポリエステル樹脂α、を以下のようにして合成した。
【0093】
<自己乳化樹脂:ポリエステル樹脂αの合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した500mLの四つ口フラスコに、下記の材料を入れ混合した。
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール)、富士フィルムワコーケミカル株式会社製、ジオール):275質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(BA-P2グリコール、日本乳化剤株式会社製、ジオール):79質量部
・イソフタル酸ジメチル(東京化成工業株式会社製、ジカルボン酸):140質量部
・アジピン酸(東京化成工業株式会社製、ジカルボン酸):26質量部
【0094】
フラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、モノマー(ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、イソフタル酸ジメチル、及びアジピン酸の合計)に対して300ppmのチタンテトライソプロポキシド(富士フィルム和光純薬株式会社製)を添加し、窒素ガス気流下において4時間程度で200℃まで昇温した。次に、2時間かけて230℃に昇温し、流出物がなくなるまで反応を行った。その後、5mmHg~30mmHgへ減圧し、1時間反応させてポリエステル樹脂を得た。
【0095】
得られたポリエステル樹脂は、酸価AV:0.5mgKOH/g、ガラス転移温度Tg:47℃、重量平均分子量Mw:5,000であった。
得られたポリエステル樹脂160質量部を窒素ガス気流下において、180℃で溶融した。次に、無水トリメリット酸6質量部を加え、40分間撹拌し、ポリエステル樹脂の酸価を調整し、酸価AV:20mgKOH/g、ガラス転移温度Tg:51℃、重量平均分子量Mw:5,100であるポリエステル樹脂αを得た。
なお、樹脂の「酸価AV」、「ガラス転移温度Tg」、及び「重量平均分子量Mw」は、以下のようにして測定した。
【0096】
-酸価AVの測定方法-
前記樹脂の酸価の測定方法は、前記樹脂をテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れ、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定する。
【0097】
-ガラス転移温度Tgの測定方法-
示差走査熱量測定(DSC)を用いて、下記測定方法で測定した。
【0098】
〔測定方法〕
前記樹脂粒子をシャーレに入れ、70℃で1時間、次いで、130℃で3時間乾燥することで固形物を得た。得られた固形物を示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製Q2000)を用いて、以下の測定条件及び測定フローにて測定した。
【0099】
(測定条件)
・サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(蓋有り)
・サンプル量:5mg
・リファレンスアルミニウム製サンプルパン(空の容器)
・雰囲気:窒素(流量50mL/min)
【0100】
(測定フロー)
・開始温度:-80℃
・昇温速度:10℃/min(第一昇温過程)
・終了温度:130℃
・保持時間:1min
・降温速度:10℃/min
・終了温度:-80℃
・保持時間:5min
・昇温速度:10℃/min(第二昇温過程)
・終了温度:130℃
この条件で測定を行い、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを作成した。
第一昇温過程にて観測される特徴的な変曲を、ガラス転移温度(Tg)とした。なお、Tgは、DSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。
【0101】
-重量平均分子量Mwの測定方法-
・装置:GPC(東ソー株式会社製)
・検出器:RI
・測定温度:40℃
・移動相:テトラヒドロフラン
・流量:0.45mL/min.
【0102】
重量平均分子量(Mw)は、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定した。なお、カラムは排除限界6万のもの、2万のもの、1万のものを直列に繋いだものを使用した。
【0103】
(調製例1)
<顔料内包樹脂粒子1の調製>
次に、下記の工程1~工程4により、顔料内包樹脂粒子1を調製した。
【0104】
-工程1:顔料プレ分散体Aの調製-
以下の処方の材料を混合し、110mLのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1,000rpmで24時間分散させた。
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン株式会社製、一次粒径:22nm、DBP吸収量:55mL/100g) :15.0質量部
・メチルエチルケトン :41.2質量部
・顔料分散剤(アジスパー PB821、味の素ファインテクノ社製、疎水性) :3.8質量部
その後、分散液を平均孔径5.0μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することで顔料プレ分散体A(顔料固形分濃度:25質量%)を調製した。この顔料プレ分散体Aのゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)における体積平均粒径D50は110nmであった。
【0105】
体積平均粒径D50は、以下のようにして測定した。
体積平均粒径D50は、ゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定した。
具体的には、測定サンプルの固形分濃度が0.01質量%となるように、サンプルをイオン交換水又は必要に応じて有機溶剤により希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットした。そして、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定を行った。
【0106】
-工程2:顔料分散樹脂溶液Aの調製-
撹拌機(スリーワンモーター、新東科学株式会社製)、アンカー翼、熱電対を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、顔料(P:Pigment、カーボンブラック)とポリエステル樹脂(R:Resin)の質量比(P/R)が0.35となるように、顔料プレ分散体A42gとポリエステル樹脂α30gとを加えて、40℃で混合撹拌し、顔料分散樹脂溶液Aを得た。
【0107】
-工程3:顔料の樹脂への内包化-
ポリエステル樹脂αとメチルエチルケトン(S:Solvent)との質量比(R/S)が1.4となるように、減圧してメチルエチルケトンを除去した。
次に、ポリエステル樹脂αの有する酸価を中和するために、カルボキシル基に対して等量のトリエチルアミン1.1gを加えて0.5時間混合撹拌した。350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水64gを15ml/minの速度で滴下し、20分間撹拌することで顔料を樹脂へ内包化した顔料内包樹脂粒子を調製した。
【0108】
-工程4:水分散体の調製-
次に、メチルエチルケトンをエバポレーターで減圧留去することにより除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。
イオン交換水を固形分濃度が30%になるように加え、顔料内包樹脂粒子1の水分散体を得た。
得られた顔料内包樹脂粒子1を透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40,000倍で観察を行ったところ、顔料内包樹脂粒子1は顔料の一次粒子を二個以上含有していることが確認できた。
【0109】
「顔料内包樹脂粒子における顔料露出率(%)」、「顔料内包樹脂粒子のアスペクト比」、及び「顔料内包樹脂粒子の球形度」は以下のようにして測定した。
【0110】
[顔料内包樹脂粒子における顔料露出率(%)]
まず、顔料内包樹脂粒子を含むインクを、固形分濃度が0.1%となるようにイオン交換水で希釈し試料液を作製した。
次に、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、マイクロピペットを用いて試料液を1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。
次に、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙でEMステイナーを吸い取った。
減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40,000倍で観察した。
体積粒径100nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各視野における顔料内包樹脂粒子を3つ以上計測し、平均値を試料における「顔料内包樹脂粒子における顔料の露出率(%)」とした。
なお、顔料内包樹脂粒子における「顔料」の領域と「樹脂」の領域の判別は、それぞれ「顔料」単独及び「樹脂のみからなる粒子」単独で観察した画像との比較により判別し、領域を測定した。
【0111】
[顔料内包樹脂粒子のアスペクト比]
上記透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて顔料内包樹脂粒子を観察し、算出する。
具体的には、他の粒子との重なりのない、顔料内包樹脂粒子を含む視野の画像を、観察位置を任意に変えて複数枚取得し、任意に選択した顔料内包樹脂粒子を画像処理ソフトウェア(ImageJ)の「Fiji」アプリケーションを用いて二値化により抽出し、粒子解析を行った。20粒子に対して解析を行い、顔料内包樹脂粒子20個の長径の短径に対する比の値(長径/短径)を算出し、それらの平均値(平均アスペクト比)を求める。長径/短径の算出は、粒子の端から端までの長さが最長となる軸(長軸)の長さを長径とし、長軸の中心において長軸と直交する方向の粒子の長さを短径とした。
【0112】
[顔料内包樹脂粒子の球形度]
前記顔料内包樹脂粒子の球形度は、[(抽出した粒子の面積×4π)/抽出した粒子の周囲長]の二乗で定義される値である。前記顔料内包樹脂粒子の球形度は、前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比の算出方法と同様に、上記透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた顔料内包樹脂粒子の観察手法に従って、前記顔料内包樹脂粒子を観察し、前記顔料内包樹脂粒子の観察時の平面における面積、及びそのときの粒子の周囲長を測定し、算出した。
【0113】
(調製例2)
<顔料内包樹脂粒子2の調製>
調製例1において、顔料(P:Pigment、カーボンブラック)とポリエステル樹脂α(R:Resin)の質量比(P/R)が0.5となるように、顔料プレ分散体A60gとポリエステル樹脂α30gとを加えて、40℃で混合撹拌し、顔料分散樹脂溶液Bを調製した以外は、調製例1と同様にして、顔料内包樹脂粒子2を得た。
得られた顔料内包樹脂粒子2を透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40,000倍で観察を行ったところ、顔料内包樹脂粒子2は顔料の一次粒子を二個以上含有していることが確認できた。
【0114】
(調製例3)
<顔料内包樹脂粒子3の調製>
調製例1において、顔料(P:Pigment、カーボンブラック)とポリエステル樹脂α(R:Resin)の質量比(P/R)が0.2となるように、顔料プレ分散体A24gとポリエステル樹脂α30gとを加えて、40℃で混合撹拌し、顔料分散樹脂溶液Cを調製した以外は、調製例1と同様にして、顔料内包樹脂粒子3を得た。
得られた顔料内包樹脂粒子3を透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40,000倍で観察を行ったところ、顔料内包樹脂粒子3は顔料の一次粒子を二個以上含有していることが確認できた。
【0115】
<画像形成>
インクジェットプリンター(装置名:IPSiO GXe5500改造機、株式会社リコー製)の印字ヘッドを含めたインク供給経路に純水を通液することで洗浄し、洗浄液が着色しなくなるまで十分に通液して洗浄液を装置から抜ききって評価用印字装置とした。
また、調製したインクを、インクカートリッジに充填し評価用インクカートリッジとした。
充填動作を行わせ、全ノズルに評価インクが充填され異常画像が出ないことを確認し、プリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択後、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印字モードとした。
このモードでベタ画像(縦:4cm×横:18cm)の記録媒体上へのインク付着量が20g/mとなるようにヘッドの駆動電圧を変更することで吐出量を調整した。
この画像形成条件を用いて、記録媒体としてポリ塩化ビニルフィルム(MPI1000、AVERY DINNISON製、以下、「PVCフィルム」とも称することがある)に対し、ベタ画像を記録した。
なお、前記IPSiO GXe5500改造機は、IPSiO GXe5500機を、150cmの印字幅で30m/hrの記録速度相当の記録をA4サイズで再現できるように改造し、また、印字中に記録媒体の裏面から加熱できるよう、記録媒体の搬送経路にホットプレート(NINOS ND-1、アズワン株式会社製)を設置し、印字中の加熱温度を変えることができるように改造した。さらに、ベタ画像を記録した後、前記ベタ画像を80℃に設定したホットプレート(NINOS ND-1、アズワン社製)上で10分間乾燥させた。
【0116】
(実施例1)
<インク1の調製>
下記の材料を混合し、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクにおける顔料と、樹脂との質量比(顔料/樹脂=P/R)が0.35のインク1を調製した。得られたインクの25℃における粘度は7.5mPa・sであった。
・顔料内包樹脂粒子1:10.75質量%(インク全量に対する固形分濃度)
・プロピレングリコール:約40質量%(粘度7.5mPa・sに調整)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG503A、HLB値11):3.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノールAD01):0.10質量%
・水:残量(合計:100質量%)
【0117】
前記画像形成方法にて、印字中の加熱温度を73℃に設定し、得られたインク1を用いて画像を形成した。
【0118】
(実施例2)
実施例1において、シリコーン系界面活性剤の添加量を5.0質量%に変更して調製したインク2を用いた以外は、実施例1と同様にして画像を形成した。
【0119】
(実施例3)
実施例1において、顔料内包樹脂粒子1を顔料内包樹脂粒子2に変更して調製したインク3を用いた以外は、実施例1と同様にして画像を形成した。
【0120】
(実施例4)
実施例1において、印字中の加熱温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様にして画像を形成した。
【0121】
(実施例5)
下記処方のインクを用いた以外は、実施例1と同様にして、画像を形成した。
・顔料内包樹脂粒子1:10.75質量%(インク全量に対する固形分濃度)
・プロピレングリコール:40質量%(粘度7.5mPa・sに調整)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG503A):1.5質量%
・シリコーン系界面活性剤(EVONIK INDUSTRIES製、TEGO Wet270、HLB値9.8):1.5質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノールAD01):0.10質量%
・水:残量(合計:100質量%)
【0122】
(実施例6)
下記処方のインク8を用いた以外は、実施例1と同様にして、画像を形成した。
・顔料内包樹脂粒子1:10.75質量%(インク全量に対する固形分濃度)
・プロピレングリコール:40質量%(粘度7.5mPa・sに調整)
・シリコーン系界面活性剤(EVONIK INDUSTRIES製、TEGO Wet270、HLB値8.6):3.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノールAD01):0.10質量%
・水:残量(合計:100質量%)
【0123】
(比較例1)
実施例1において、シリコーン系界面活性剤の添加量を1.0質量%に変更して調製したインク4を用いた以外は、実施例1と同様にして画像を形成した。
【0124】
(比較例2)
比較例1において、印字中の加熱温度を50℃に変更した以外は、比較例1と同様にして画像を形成した。
【0125】
(比較例3)
実施例1において、印字中の加熱温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同様にして画像を形成した。
【0126】
(比較例4)
実施例1において、顔料内包樹脂粒子1を用いず、以下のように樹脂粒子aと、水系顔料分散体IをP/R=0.35になるように混合して調製したインク5を用いた以外は、実施例1と同様にして画像を形成した。
-インク4の調製-
・樹脂粒子a:7.96質量%(インク全量に対する固形分濃度)
・水系顔料分散体I:2.79質量%(インク全量に対する固形分濃度)
・プロピレングリコール:約40質量%(粘度7.5mPa・sに調整)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG503A):3.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノールAD01):0.10質量%
・水:残量(合計:100質量%)
【0127】
-樹脂粒子aの調製-
撹拌機(スリーワンモーター)、アンカー翼、熱電対、および還流管を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、下記の材料を加え、40℃で混合攪拌すること樹脂溶液を得た。
・ポリエステル樹脂α:25g
・メチルエチルケトン:14g
次いで、ポリエステルの有する酸価を中和すべく、カルボキシル基に対して等量のトリエチルアミン0.84gを加えて20分間攪拌した。350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水53gを15ml/minの速度で滴下し、20分間攪拌することで樹脂粒子を調製した。
最後にエバポレーターで減圧留去することによりメチルエチルケトンを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。
イオン交換水により固形分濃度が30%になるように加え、体積平均粒径D50:78nmの樹脂粒子aを得た。
【0128】
-水系顔料分散体I-
下記に示すように調製した顔料分散剤α3.8質量部を、pHが8.0となるように30.0質量部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。
さらに、イオン交換水を加え、水溶液の全量を45.0質量部とした。
次に、以下の処方の材料を混合し、110mlのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1000rpmで24時間分散させた。
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン社製):15.0質量部
・顔料分散剤α:45.0質量部
その後、分散液を平均孔径5.0μmの酢酸セルロースメンブレンフィルターでろ過することで水系顔料分散体Iを調製した。この水系顔料分散体Iのゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)における体積平均粒径D50は120nmであった。
【0129】
--顔料分散剤αの調製--
1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業社製)62.0質量部を700mlのジクロロメタンに溶解し、ピリジン(東京化成工業社製)20.7質量部を加え攪拌した。この溶液に、100mlのジクロロメタンに2-ナフタレンカルボニルクロリド(東京化成工業社製)を溶解させた溶液を2時間かけて滴下した後、室温で6時間攪拌した。
得られた溶液を水洗した後、有機層を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。
残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で98/2)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物を得た。
次に、得られた化合物42.1質量部を80mlの乾燥メチルエチルケトンに溶解し、攪拌しながら60℃の加熱を行った。
この溶液に、20mlの乾燥メチルエチルケトンにカレンズMOI(昭和電工社製)24.0質量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下した後、70℃で12時間攪拌した。
室温まで冷却した後、溶媒を留去した。
残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で99/1)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、モノマーを得た。
次に、アクリル酸(東京化成工業社製)2.30質量部、前記モノマー8.54g及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(東京化成工業社製)0.31質量部を100mlのメチルエチルケトンに溶解し、窒素ガス気流下、75℃の温度条件で5時間攪拌を行った。
その後、室温まで冷却した反応溶液を、ヘキサンを用いて再沈殿を5回繰り返し、共重合体の精製を行った。精製処理後は共重合体をろ別し、減圧乾燥することで顔料分散αを得た。
【0130】
(比較例5)
実施例1において、顔料内包樹脂粒子1を用いず、以下のように樹脂粒子aと、スチレン-アクリル系樹脂被覆ブラック顔料分散体をP/R=0.35になるように混合し、調製したインク6を用いた以外は、実施例1と同様にして画像を形成した。
【0131】
-インク6の調製-
・樹脂粒子a:7.96質量%(インク全量に対する固形分濃度)
・スチレン-アクリル系樹脂被覆ブラック顔料分散体:2.79質量%(インク全量に対する固形分濃度)
・プロピレングリコール:約40質量%(粘度7.5mPa・sに調整)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG503A)
:3.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノールAD01):0.10質量%
・水:残量(合計:100質量%)
【0132】
-スチレン-アクリル系樹脂被覆ブラック顔料分散体の調製-
スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12g、ポリエチレングリコールメタクリレート4g、スチレンマクロマー4g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108g、ポリエチレングリコールメタクリレート36g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60g、スチレンマクロマー36g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を、2.5hかけてフラスコ内に滴下した。
滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、さらに1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、固形分濃度50%のポリマー溶液Aを800g得た。
次いで、ポリマー溶液Aを28g、カーボンブラック(Cabot Corporation社製、Black Pearls 1000)42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及び水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルで混練した。
得られたペーストを純水200gに入れて充分に攪拌した後、エバポレーターでメチルエチルケトンを除去し、平均孔径5μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過した後、固形分濃度が20%になるように水分量を調整し、固形分濃度20%のスチレン-アクリル系樹脂被覆ブラック顔料分散体を得た。
【0133】
(比較例6)
実施例1において、顔料内包樹脂粒子1を顔料内包樹脂粒子3に変更して調製したインク7を用いた以外は、実施例1と同様にして画像を形成した。
【0134】
次に、調製した各インクについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1示す。
【0135】
<インク中における顔料内包樹脂粒子の存在割合>
まず、得られた各インクを、固形分濃度が0.1質量%となるようにイオン交換水で希釈して、試料液を作製した。
次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM株式会社製、コロジオン膜貼付メッシュ、Cu150メッシュ)上に、前記試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。
次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙でEMステイナーを吸い取った。
減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40,000倍で観察を行った。体積粒径100nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像に対して体積粒径100nm以上の全粒子数に対する顔料内包樹脂粒子の個数が占める割合を算出し、それらの平均値を求めた。得られた割合を顔料内包樹脂粒子の存在割合と定義し、以下の評価基準に基づき評価した。
なお、体積粒径は、一の粒子の最長径を測定し、前記粒子を真球と仮定して粒子の体積を算出し、前記粒子の粒子径と前記体積との積とした。
【0136】
<顔料露出率>
塗膜表面の顔料露出率を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察することにより算出した。
具体的には、まず、インクを固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水を用いて調製する。次いで、塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に0.15mmバーコーターにて塗工し、25℃で一晩乾燥し、平均厚み2μmの塗膜を形成した。
この塗膜を切り出し、SEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定した。これを、導電性処理することなく走査型電子顕微鏡(ZEISS社製、Merlin)を用いて、加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率20,000倍にて観察した。顔料(カーボンブラック)と、樹脂の反射電子放出量の違いから、塗膜表面において露出している顔料を見分けることが可能である。
倍率20,000倍における塗膜全体に対する顔料が占める面積を顔料露出率と定義した。
塗膜表面において露出している顔料が占める面積の割合は、SEM観察画像を二値化し、任意に場所を変更して観察した3視野の平均値とした。なお、SEM観察画像の二値化は、画像処理ソフト(Image-J)のDefaultのアルゴリズムを選択した場合における自動二値化処理を行った。
【0137】
<インクの接触角>
PVCフィルム(AVERY DINNISON製、MPI1000)を、ホットプレート(NINOS ND-1、アズワン社製)上で加熱する。加熱温度は、各実施例に記載した印字中の加熱温度と同一とする。10分経過後、インク5μLを滴下した際のインク滴の状態を、水平方向から観察し、自動接触角計(協和界面科学株式会社製)を用いて、PVCフィルムに対するインク滴の接触角θmを測定した。接触角は、インク滴滴下後の時間で測定値が変化するため、滴下5秒後に測定を行い、5回繰り返し測定時の平均値を測定値とした。
【0138】
<画像濃度>
得られた印字画像の下に、白色の普通紙を置いた状態で、分光測色濃度計(X-Rite939、X-Rite社製)を用いて全濃度(OD)を測色し、ブラック(K)の値を画像濃度とし、以下の評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
◎:ODが2.0以上
○:ODが1.8以上2.0未満
△:ODが1.6以上1.8未満
×:ODが1.6未満
【0139】
<光沢度>
得られた印字画像の下に、白色の普通紙を置いた状態で、BYKガードナー社製マイクロトリグロスを用いて、20度光沢度を測定し、以下の評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
◎:10以上
○:5以上10未満
△:3以上5未満
×:3未満
【0140】
<表面粗さ>
得られた画像を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて以下の条件で観察を行い、ISO 25178に準拠して表面粗さ(Sa算術平均高さ)を算出した。
観察は任意に場所を変更し、3視野における測定値の平均をとり、表面粗さの平均値を求め、以下の評価基準に基づき評価した。
[測定条件]
・装置:走査プローブ型顕微鏡(Bruker社製、DimensionIcon)
・カンチレバー:オリンパス株式会社製OMCL-AC240TS
・測定モード:タッピングモード
・観察範囲:2μm四方
[評価基準]
◎:10未満
○:10以上30未満
△:30以上40未満
×:40以上
【0141】
<埋まり率>
得られたベタ画像を、ハンディ型画像評価システムPIAS-II(トレックジャパン社製)のHigh Resolution Moduleを用いて、撮影した。インク付着面積の割合(印刷部分全体の面積に対してインク付着部分が占める面積の割合)を、撮影画像の二値化によって求め、以下の基準により評価した。なお、撮影画像の二値化は、画像処理ソフト(Image-J)のDefaultのアルゴリズムを選択した場合における自動二値化処理を行った。
[評価基準]
◎:インク付着面積が97%以上
○:インク付着面積が92%以上97%未満
×:インク付着面積が92%未満
【0142】
【表1】
【0143】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 顔料を内包した樹脂である顔料内包樹脂粒子を含有するインクを、記録媒体に付与するインク付与工程と、
前記インクが付与された前記記録媒体を、60℃以上で加熱する加熱工程と、を有する画像形成方法であって、
前記樹脂に内包されずに露出した前記顔料単体の含有量が、前記インクに含まれる固形分に対して、10質量%以下であり、
前記顔料内包樹脂粒子における前記顔料と前記樹脂の質量比(顔料/樹脂)が0.25以上1.0以下であり、
前記インク5μLを73℃の記録媒体に滴下したときの前記インクの接触角θm(°)が、25°以下であることを特徴とする画像形成方法である。
<2> 前記記録媒体が、非浸透メディアである、前記<1>に記載の画像形成方法である。
<3> 前記インクが、さらに界面活性剤を含む、前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<4> 前記界面活性剤の含有量が、前記インクに対して3質量%以上10質量%未満である、前記<3>に記載の画像形成方法である。
<5> 前記界面活性剤のHLB値が、10以上13以下である、前記<3>から<4>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<6> 前記加熱工程における加熱温度が、60℃以上80℃以下である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<7> 前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.7以下である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<8> 前記顔料内包樹脂粒子の球形度が、0.7以上1.0以下である、前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<9> 前記顔料内包樹脂粒子に含まれる樹脂が、ポリエステル樹脂である、前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<10> 前記ポリエステル樹脂がカルボキシル基を有し、自己乳化性樹脂である、前記<9>に記載の画像形成方法である。
<11> 前記顔料が無機顔料である、前記<1>から<10>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<12> 前記無機顔料がカーボンブラックである、前記<11>に記載の画像形成方法である。
<13> 前記顔料内包樹脂粒子が前記無機顔料の一次粒子を二個以上包含する、前記<11>から<12>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<14> 前記インクの、レーザー回折法により得られる体積基準の累積50%径が30nm以上300nm以下である、前記<1>から<13>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の画像形成方法によって形成されることを特徴とする印刷物である。
【0144】
前記<1>から<14>のいずれかに記載の画像形成方法、及び前記<15>に記載の印刷物は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0145】
【特許文献1】特開2019-099819号公報
【特許文献2】特開2019-014883号公報
【特許文献3】特開2002-256181号公報
【特許文献4】特開昭63-087279号公報
【特許文献5】特開2020-055996号公報
図1
図2
図3
図4A
図4B