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特開2023-21487Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、血管及び/又はリンパ管の成熟化剤、並びに飲食品
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  • 特開-Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、血管及び/又はリンパ管の成熟化剤、並びに飲食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021487
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、血管及び/又はリンパ管の成熟化剤、並びに飲食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20230207BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230207BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230207BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P9/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A23L33/10
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126375
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】大戸 信明
【テーマコード(参考)】
4B018
4B027
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD01
4B018MD07
4B018MD20
4B018MD25
4B018MD30
4B018MD32
4B018MD34
4B018ME14
4B018MF08
4B018MF10
4B018MF14
4B027FB24
4B027FC06
4B027FK04
4B027FK10
4B027FQ19
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA22
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZB21
4C206ZC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れたTie2活性化作用を有し、安全性の高いTie2活性化剤、優れた血管及び/又はリンパ管の安定化作用を有し、安全性の高い血管及び/又はリンパ管の安定化剤、ならびに血管及び/又はリンパ管の成熟化作用を有し、安全性の高い血管及び/又はリンパ管の成熟化剤を提供する。
【解決手段】構造式(1)などで表される化合物を含むTie2活性化剤である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含むことを特徴とするTie2活性化剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項2】
下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含み、Tie2活性化作用に基づく血管及び/又はリンパ管の安定化作用を有することを特徴とする血管及び/又はリンパ管の安定化剤。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項3】
下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含み、Tie2活性化作用に基づく血管及び/又はリンパ管の成熟化作用を有することを特徴とする血管及び/又はリンパ管の成熟化剤。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【請求項4】
Tie2の活性化、血管及び/又はリンパ管の安定化、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化の少なくともいずれかのために用いられる飲食品であって、
請求項1に記載のTie2活性化剤、請求項2に記載の血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに請求項3に記載の血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の少なくともいずれかを含むことを特徴とする飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、血管及び/又はリンパ管の成熟化剤、並びに飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
血管は、血管内皮細胞と血管壁細胞(血管平滑筋細胞やペリサイト)とが、細胞外マトリックスを介して間接的に、又は直接的に接着する構造を有しており、酸素及び栄養素を生体組織に供給し、生体組織から老廃物を消去する機能を有している。
【0003】
一般に、血管の形成は、新たに血管が形成される血管発生(Vasculogenesis)と、形成された既存の血管が伸長し、分岐することにより、新たな血管のネットワークが形成される血管新生(Angiogenesis)との2段階に分けられる。前者は、血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor:VEGF)が作用し、脈管形成とよばれる血管の初期発生からその後の血管新生に至るまで非常に広い範囲の血管形成に関与するものである。後者は、アンジオポエチン(Angiopoietin:Ang)が作用し、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着の制御、血管の構造的安定化に関与するものである。
【0004】
血管は通常の酸素状況においては、血管内皮細胞とその周囲を裏打ちする血管壁細胞とが強固に接着しており、血管構造が安定に保たれているが、組織で低酸素が生じると血管壁細胞が血管内皮細胞から脱離し、無秩序な血管が増生することがある。このような現象(血管新生)は、腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、高脂血症、高血圧などの血管病変を主体とした疾患において、しばしば観察されている。
【0005】
血管新生は、血管内皮細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼであるTie2(Tyrosine kinase with Ig and EGF homology domain2)を活性化させることにより、抑制されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、血管狭小化又は血管拡大化の抑制が原因となって生じる虚血性疾患においては、Tie2の活性化により、血管腔が拡大化されることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、Tie2の活性化により、血管内皮細胞の細胞死を抑制することも報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
このようにTie2の活性化により、血管新生が抑制されることが知られているだけでなく、血管を成熟化及び安定化させることも知られている。
例えば、血管再生医療においては、Tie2の活性化により、血管における血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管を成熟化させることが知られている。また、例えば、種々の細胞内外の血管構造を破綻させる環境因子に対しては、Tie2の活性化により、血管の不安定化を抑制し、血管を安定化させることが知られている。なお、本発明における前記血管の安定化には、例えば、腫瘍や糖尿病性網膜症などで観察される血管壁細胞が血管内皮細胞に接着しないことによる無秩序な血管が増生するような疾患において知られている、Tie2の活性化によって血管壁細胞を内皮細胞に接着させ、血管を正常化させることも含まれる。
【0007】
リンパ管は、免疫細胞の輸送や、過剰な水分や不要物を排出する役割を担っている。Tie2は血管と同様に、リンパ管機能や成熟化にも寄与しており、Tie2の活性化が血管やリンパ球の安定化に重要であることも報告されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
したがって、より優れたTie2活性化作用、血管及び/又はリンパ管の安定化作用、又は血管及び/又はリンパ管の成熟化作用を有する安全性の高い新たな素材に対する要望は依然として強く、その速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Thurston G. et al.,Science.,1999 Dec 24;286(5449):2511-4.
【非特許文献2】Cho C.H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2004 Apr 13;101(15):5553-8.
【非特許文献3】J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn、2012年、46(3)、pp. 188-196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたTie2活性化作用を有し、安全性の高いTie2活性化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた血管及び/又はリンパ管の安定化作用を有し、安全性の高い血管及び/又はリンパ管の安定化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた血管及び/又はリンパ管の成熟化作用を有し、安全性の高い血管及び/又はリンパ管の成熟化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたTie2の活性化作用、血管及び/又はリンパ管の安定化作用、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明者が鋭意検討を重ねた結果、下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物が、優れたTie2活性化作用、血管及び/又はリンパ管の安定化作用、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化作用の少なくともいずれかを有することを知見し、本発明を完成したものである。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0012】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含むことを特徴とするTie2活性化剤である。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
<2> 下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含み、Tie2活性化作用に基づく血管及び/又はリンパ管の安定化作用を有することを特徴とする血管及び/又はリンパ管の安定化剤である。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
<3> 下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含み、Tie2活性化作用に基づく血管及び/又はリンパ管の成熟化作用を有することを特徴とする血管及び/又はリンパ管の成熟化剤である。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
<4> Tie2の活性化、血管及び/又はリンパ管の安定化、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化の少なくともいずれかのために用いられる飲食品であって、
前記<1>に記載のTie2活性化剤、前記<2>に記載の血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに前記<3>に記載の血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のTie2活性化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたTie2活性化作用を有し、安全性の高いTie2活性化剤を提供することができる。
本発明の血管及び/又はリンパ管の安定化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた血管及び/又はリンパ管の安定化作用を有し、安全性の高い血管及び/又はリンパ管の安定化剤を提供することができる。
本発明の血管及び/又はリンパ管の成熟化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた血管及び/又はリンパ管の成熟化作用を有し、安全性の高い血管及び/又はリンパ管の成熟化剤を提供することができる。
本発明の飲食品によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたTie2の活性化作用、血管及び/又はリンパ管の安定化作用、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い飲食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、試験例1のウエスタンブロットにより検出した各試料におけるリン酸化されたTie2タンパク質のバンドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤)
本発明のTie2活性化剤は、有効成分として、下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
本発明の血管及び/又はリンパ管の安定化剤は、Tie2活性化作用に基づく血管及び/又はリンパ管の安定化作用を有し、有効成分として、下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
本発明の血管及び/又はリンパ管の成熟化剤は、Tie2活性化作用に基づく血管及び/又はリンパ管の成熟化作用を有し、有効成分として、下記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0016】
前記Tie2活性化剤は、Tie2をリン酸化することで、その活性体(リン酸化Tie2)に変換するTie2活性化作用を有する。前記Tie2が活性化されると、細胞内チロシンキナーゼドメインの自己リン酸化を惹起し、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着が誘導される。血管狭小化あるいは血管拡大化の抑制が原因となって生じる虚血性疾患においては、Tie2の活性化により、血管腔が拡大化される。また、Tie2の活性化により、血管内皮細胞の細胞死が抑制される。また、加齢により血管及びリンパ管の構造が不安定化し、機能が低下するが、このメカニズムはTie2の活性化の低下に起因することが知られている。そのため、Tie2の活性化により、血管及びリンパ管の構造を安定化し、加齢による機能の低下を抑制することができる。
【0017】
前記血管及び/又はリンパ管の安定化剤は、既存の血管に対する障害、血管内皮細胞同士の解離、及び血管内皮細胞と血管壁細胞の解離を抑制する作用、及び血管内皮細胞の細胞死を抑制する安定化作用を有する。また、種々の細胞内外の血管構造を破綻させる環境因子に対しては、Tie2の活性化により、血管の不安定化を抑制し、血管を安定化させることが可能である。
また、前記血管及び/又はリンパ管の安定化剤が奏する作用には、血管内皮細胞同士の接着を高め、血管壁細胞の血管内皮細胞への裏打ちを促進することにより、血管透過性の破綻した血管や血管の無秩序な増生を招くような異常な血管を、正常な状態にする正常化作用も含まれる。また、腫瘍や糖尿病性網膜症などで観察される血管壁細胞が血管内皮細胞に接着しないことによる無秩序な血管が増生するような疾患においては、Tie2の活性化により、血管壁細胞を内皮細胞に接着させ、血管を正常化させることが可能である。
また、リンパ管は、一層の内皮細胞から形成されており、自身の構造を内皮細胞同士の接着により維持している。前記血管及び/又はリンパ管の安定化剤は、リンパ管内皮細胞同士の解離を抑制する作用、リンパ管の構造を維持する作用、リンパ管機能を維持する作用などの安定化作用を有する。
【0018】
前記血管及び/又はリンパ管の成熟化剤は、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管内環境因子(細胞及び液性因子)が容易には血管外に漏出しないような血管内皮細胞間の接着斑を形成する成熟化作用を有する。また、血管再生医療においては、Tie2の活性化により、血管における血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管を成熟化させることが可能である。
また、前記血管及び/又はリンパ管の成熟化剤は、リンパ管内皮細胞の遊走や管腔形成を促進し、リンパ管を形成する成熟化作用を有する。
【0019】
前記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物が、Tie2活性化作用、血管及び/又はリンパ管の安定化作用、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化作用の少なくともいずれかの優れた作用を有し、Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤として有用であることは、従来は全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0020】
<構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物>
下記構造式(1)で表される化合物の名称は、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸(英名:3-(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)propionic acid)である。
【化21】
【0021】
下記構造式(2)で表される化合物の名称は、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸(英名:3,4-Dihydroxyhydrocinnamic acid)である。
【化22】
【0022】
下記構造式(3)で表される化合物の名称は、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(英名:3-(4-Hydroxyphenyl)propionic acid)である。
【化23】
【0023】
下記構造式(4)で表される化合物の名称は、3-フェニルプロピオン酸(英名:3-Phenylpropionic acid)である。
【化24】
【0024】
前記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物は、いずれも公知の化合物であり、市販品を用いてもよいし、植物等から抽出したものを用いることもできる。
【0025】
前記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のTie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤における前記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の合計含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤は、前記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかのみからなるものであってもよい。
【0027】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、前記Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の利用形態に応じて適宜選択することができる。例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のTie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
<用途>
本発明のTie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤は、消化管で消化されるようなものではないことが確認されているので、Tie2の活性化、血管及び/又はリンパ管の安定化、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化の少なくともいずれかのために用いられるための飲食品として好適に用いることができ、その配合量、用法、及び剤型としては、その使用目的に応じて適宜選択することができる。
前記飲食品における前記Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の少なくともいずれかの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の合計量に換算した場合、0.0001質量%~20質量%が好ましく、0.0001質量%~15質量%がより好ましい。
【0029】
前記用法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口、非経口、外用などの投与形態が挙げられる。
【0030】
前記剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、坐剤等の非経口投与剤;化粧水、乳液、クリーム、軟膏、美容液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、ファンデーション、入浴剤、石鹸、ボディーソープ、アストリンゼント、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアリキッド、ポマード、シャンプー、リンス、コンディショナー等の外用剤などが挙げられる。
前記各剤型のTie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0031】
前記Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の使用量、使用期間、使用間隔等の使用方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
また、前記Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤は、Tie2活性化作用、血管及び/又はリンパ管の安定化作用、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化作用の少なくともいずれかの作用機構に関する研究のための試薬としても用いることもできる。
【0033】
(飲食品)
前記飲食品は、Tie2の活性化、血管及び/又はリンパ管の安定化、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化の少なくともいずれかのために用いられる飲食品であって、本発明のTie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の少なくともいずれかを含有し、必要に応じて更にその他の成分を含有する。
【0034】
本発明の飲食品における前記Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の少なくともいずれかの合計含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記飲食品は、前記Tie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化剤の少なくともいずれかのみからなるものであってもよい。
【0035】
本発明の飲食品におけるその他の成分としては、特に制限はなく、飲食品に用いられる成分を適宜選択することができる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記飲食品におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品サラダ、漬物等の惣菜;種々の形態の健康・美容・栄養補助食品;錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。なお、前記飲食品は上記例示に限定されるものではない。
【0037】
前記飲食品の用途としては、Tie2の活性化、血管及び/又はリンパ管の安定化、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化の少なくともいずれかのために用いられる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の飲食品は、日常的に摂取することが可能であり、有効成分である構造式(1)~(4)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかの働きによって、Tie2の活性化作用、血管及び/又はリンパ管の安定化作用、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化作用の少なくともいずれかの作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができる。
【0038】
本発明のTie2活性化剤、血管及び/又はリンパ管の安定化剤、血管及び/又はリンパ管の成熟化剤、及び飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【実施例0039】
以下、本発明の試験例、配合例を説明するが、本発明は、これらの試験例、配合例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(試験例1:Tie2活性化作用試験)
下記の被験試料のTie2活性化作用について、下記の試験方法により、リン酸化されたTie2のタンパク質量を検出することにより、評価を行った。
【0041】
<被験試料>
・ 前記構造式(1)で表される化合物(東京化成工業製)
・ 前記構造式(2)で表される化合物(Sigma-Aldrich製)
・ 前記構造式(3)で表される化合物(Sigma-Aldrich製)
・ 前記構造式(4)で表される化合物(東京化成工業製)
【0042】
<試験方法>
リン酸化されたTie2のタンパク質量については、SDS-PAGE及びウエスタンブロットを用いた免疫化学的手法により検出した。以下に手順を示す。
Tie2リン酸化解析には、マウスpro-B細胞(Ba/F3)にヒトTie2を強制発現させた細胞(Ba/F3-human Tie2)を用いた。
アンジオポエチン1(Ang1)(ポジティブコントロール)及び被験試料による細胞の刺激は、次のようにして行った。まず細胞をRPMI-1640培養液で3時間培養した。その後、被験試料を表1に記載の濃度(濃度単位:μmol/L)となるように添加した。15分間経過後、細胞を冷PBSで洗浄し、PhosphoSafeTM Extraction Reagent(Novagen社製)により細胞抽出液を回収した。また、被験試料無添加(コントロール)についても同様の作業を行った。
回収した細胞抽出液を7.5% SDSゲルにて電気泳動し、PVDF膜に転写した。ブロッキング後、抗リン酸化Tie2抗体(R&D Systems社製)、及びHRP標識2次抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を用いてウエスタンブロッティングを行った。
バンドの検出及び解析は、画像撮影装置ChemiDoc XRS Plus及びImage Lab Software version 2.0(Bio-Rad Laboratories社製)にて行い、計測したバンドの強度から、下記式により、Tie2活性化率を計算し、リン酸化作用を評価した。結果を図1及び表1に示す。
Tie2活性化率(%)=A/B×100
上記式中、A及びBは下記を表す。
A : ポジティブコントロール又は被験試料被験試料添加時のバンドの強度
B : 被験試料無添加(コントロール)時のバンドの強度
【0043】
図1は、ウエスタンブロットにより検出した各試料におけるリン酸化されたTie2タンパク質のバンドを示す図である。検出されたバンドの強度は、リン酸化されたTie2のタンパク質量に比例している。バンドの強度が高い程、リン酸化されたTie2のタンパク質量が多いことを示している。
【0044】
【表1】
【0045】
以上より、上記した各被験試料が、Tie2のリン酸化、即ち、Tie2の活性化作用を有することが認められた。そのため、上記した各被験試料によりTie2がリン酸化して活性化され、血管及び/又はリンパ管の安定化、並びに血管及び/又はリンパ管の成熟化がもたらされることが示唆された。
【0046】
(配合例1)
常法により、以下の組成を有する錠剤を製造した。
・ 前記構造式(1)で表される化合物 5.0mg
・ ドロマイト 83.4mg
(カルシウム20%、マグネシウム10%含有)
・ カゼインホスホペプチド 16.7mg
・ ビタミンC 33.4mg
・ マルチトール 136.8mg
・ コラーゲン 12.7mg
・ ショ糖脂肪酸エステル 12.0mg
【0047】
(配合例2)
常法により、以下の組成を有する経口液状製剤を製造した。
<1アンプル(1本100mL)中の組成>
・ 前記構造式(2)で表される化合物 0.3質量%
・ ソルビット 12.0質量%
・ 安息香酸ナトリウム 0.1質量%
・ 香料 1.0質量%
・ 硫酸カルシウム 0.5質量%
・ 精製水 残部
【0048】
(配合例3)
常法により、以下の組成を有するコーヒー飲料を製造した。
・ 前記構造式(3)で表される化合物 0.1質量%
・ コーヒー抽出液(L(明度)=20、Brix=3) 40質量%
・ マルチトール 2質量%
・ 香料 適量
・ 水 残部
【0049】
(配合例4)
常法により、以下の組成を有するカプセル剤を製造した。なお、カプセルとしては、1号ハードゼラチンカプセルを使用した。
<1カプセル(1錠200mg)中の組成>
・ 前記構造式(4)で表される化合物 30.0mg
・ コーンスターチ 70.0mg
・ 乳糖 80.0mg
・ 乳酸カルシウム 10.0mg
・ ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L) 10.0mg
図1