(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002156
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】液処理装置及び液処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20221227BHJP
G03F 7/30 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/30 569C
H01L21/30 569F
G03F7/30 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103205
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓也
【テーマコード(参考)】
2H196
5F146
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196GA29
2H196GA31
5F146LA03
5F146LA04
5F146LA13
(57)【要約】
【課題】基板上にパドルを形成して当該基板を液処理するにあたり、基板面内の温度分布を制御する。
【解決手段】基板に対して処理液による液処理を行う液処理装置であって、前記基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板の上方に位置して、前記液処理を促進させない液体を、前記基板の中心を含む前記基板の面内の領域に対して噴霧させる噴霧ノズルを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して処理液による液処理を行う液処理装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板の上方に位置して、前記液処理を促進させない液体を、前記基板の中心を含む前記基板の面内の領域に対して噴霧させる噴霧ノズルを有する、液処理装置。
【請求項2】
前記噴霧ノズルを制御する制御部を有し、
前記液処理は現像処理であり、前記基板表面に現像液のパドルを形成した後、前記現像液による現像処理時間における少なくとも前半に、前記噴霧ノズルから前記液体を噴霧するように前記制御部が構成されている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
基板上に処理液である現像液のパドルを形成して当該基板を現像する液処理装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板の上方に位置して、前記現像液を希釈した液体を、前記基板の中心を含む前記基板の面内の領域に対して噴霧させる噴霧ノズルと、
前記噴霧ノズルを制御する制御部と、
を有する、液処理装置。
【請求項4】
前記噴霧ノズルは、前記現像液による現像処理の間、複数回噴霧するように、前記制御部が構成されている請求項2または3のいずれ一項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記噴霧ノズルを制御する制御部を有し、
前記噴霧ノズルは、前記基板上に前記処理液が供給される前に、前記基板の中心を含む前記基板の面内の領域に対して前記液体を噴霧するように、前記制御部が構成されている請求項1に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記噴霧ノズルは、前記基板の中央部に噴霧する噴霧部と、前記基板の周辺部に噴霧する他の噴霧部とを有し、
前記基板の表面の周縁部よりも中央部に長時間噴霧するように、前記制御部が構成されている請求項2~5のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記噴霧ノズルは、前記基板の中央部に噴霧する噴霧部と、前記基板の周辺部に噴霧する他の噴霧部とを有し、
前記基板の表面のうち中央部に対して噴霧する一方で、前記基板の表面のうち周縁部には噴霧しないように、前記制御部が構成されている請求項2~5のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項8】
前記基板の表面にて液処理が進行中である前記基板の上に形成された前記処理液のパドルに向けて噴霧されるときには、当該噴霧によって前記基板の表面が露出しないような流速で噴霧される、請求項2~7のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項9】
前記基板保持部に保持されている前記基板の周囲の雰囲気を排気するように構成された排気部をさらに備え、
前記制御部は、前記噴霧ノズルから前記液体を噴霧している間の排気量が、前記基板の液処理が終わった後に前記基板を洗浄する間の排気量よりも小さくなるように、前記排気部を制御するように構成されている、請求項2~8のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項10】
前記噴霧ノズルから、前記基板保持部に保持された基板に噴霧する際には、前記基板の中心の鉛直方向から斜めに傾けられて噴霧する、請求項1~9のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項11】
基板に対して液処理を行う液処理方法であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部の上方から、前記基板の中心を含む前記基板の面内の領域に対して液体を噴霧し、
噴霧された液体の気化熱によって、前記基板または前記基板上の処理液の温度を制御する、液処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液処理装置及び液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、チャック装置に保持された被処理物上にノズルからの現像液を供給し、一定時間経過後にチャック装置を構成するスピンナーを回転させて被処理物上の現像液を振り切るようにしたパドル型ホトレジストの現像装置において、現像液とエアとを混合してミスト状の現像液を噴出するノズルを備え、このノズルに至る現像液配管の少なくとも一部が温調水の循環経路内に配置されている現像装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板上に処理液のパドルを形成して当該基板を液処理するにあたり、基板面内の温度分布を制御する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板に対して処理液による液処理を行う液処理装置であって、前記基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板の上方に位置して、前記液処理を促進させない液体を、前記基板の中心を含む前記基板の面内の領域に対して噴霧させる噴霧ノズルを有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に処理液のパドルを形成して当該基板を液処理するにあたり、基板面内の温度分布を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる現像装置の構成の概略を模式的に示した側面断面図である。
【
図2】実施の形態にかかる現像方法のプロセスシーケンスを示す説明図である。
【
図3】現像液のパドルが形成されたウェハの中心部と周縁部の温度の経時変化を示すグラフである。
【
図4】現像液のパドルが形成されたウェハに対して噴霧したときのウェハの中心部と周縁部の温度の経時変化を示すグラフである。
【
図5】パドルが形成される前のウェハに対して1回噴霧したときのウェハの中心部と周縁部の温度の経時変化を示すグラフである。
【
図6】パドルが形成される前のウェハに対して3回噴霧したときのウェハの中心部と周縁部の温度の経時変化を示すグラフである。
【
図7】ウェハの中心から偏心した位置の上方から噴霧している様子を示す説明図である。
【
図8】ウェハの中心から偏心した位置の上方から噴霧しているときの噴霧領域を示すウェハの平面図である。
【
図9】ウェハの斜め上方から噴霧している様子を示す説明図である。
【
図10】2つの噴霧部を有する噴霧ノズルによって噴霧している様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という場合がある。)などの基板の表面にレジスト膜を形成し、パターンを露光した後に現像する液処理が行われている。現像する場合、基板上に現像液のパドル(液だまり)を形成して現像することが行われている。
【0009】
この場合、パドル現像時の基板の面内温度が不均一であると、現像後のパターンの線幅の寸法の均一性が悪化する。すなわち、例えばパドル現像時においては、基板のセンター部からエッジ部にかけての温度変動に差があり、その結果、基板のセンター部からエッジ部にかけてのパターンの線幅にばらつきが発生する。とりわけ現像処理時の温度感度が高いi線レジストなどでは、その傾向が顕著であった。
【0010】
特許文献1に記載の技術では、現像液とエアとを混合してミスト状の現像液を噴出するノズルに至る現像液配管の少なくとも一部を温調水の循環経路内に配置するようにしているが、パドル現像時の面内の温度均一性に改善の余地がある。
【0011】
そこで本開示にかかる技術は、基板上にパドルを形成して当該基板を現像するにあたり、基板面内の温度分布を制御する。これによって、現像等の液処理を領域ごとに制御でき、例えば現像後の基板面内の線幅の均一性を向上させることも可能になる。
【0012】
以下、本実施形態にかかる現像装置の構成について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかる液処理装置としての現像装置1の構成の概略を模式的に示す側面断面の様子を示している。現像装置1は、筐体10内に、基板保持部としてのスピンチャック11を有している。スピンチャック11は、基板としてのウェハWを水平に保持する。スピンチャック11は、昇降自在な回転部12と接続され、回転部12はモータなどによって構成される回転駆動部13と接続されている。したがって回転駆動部13の駆動によって保持したウェハWは回転可能である。
【0014】
スピンチャック11の外側には、カップ21が配置されており、飛散する現像液、洗浄液、並びにこれらのミストが周囲に飛散することが防止される。カップ21の底部22には、排液管23と排気管24が設けられている。排液管23は、排液ポンプなどの排液装置25に通じている。排気管24は、バルブ26を介して、排気ポンプなどの排気装置27に通じている。かかる構成により、スピンチャック11に保持されているウェハWの周囲の雰囲気が、排気管24から排気される。したがって排気管24、排気装置27は排気部を構成している。
【0015】
現像装置1の筐体10内の上方には、要求される温湿度のエアをカップ21内に向けてダウンフローとして供給する送風装置14が設けられている。
【0016】
ウェハW上に現像液のパドルを形成する際には、現像液ノズル31が用いられる。この現像液ノズル31は、例えばアームなどのノズル支持部32に設けられており、ノズル支持部32は駆動機構(図示せず)によって、図中の破線で示した往復矢印A(Z方向)のように昇降自在であり、また破線で示した往復矢印B(X方向)のように水平移動自在である。現像液ノズル31には、供給管33を介して現像液供給源34から現像液が供給される。
【0017】
なおパドルを形成するにあたり、ウェハWの直径以上の長さを有する吐出口を備えたいわゆる長尺ノズルを用いる場合には、ウェハW上を一端部から他端部までスキャンすることで、ウェハW上に現像液のパドルを形成することができる。またウェハWの直径に対して充分小さい幅の液柱を形成するように液を吐出する、いわゆるストレートタイプのノズルの場合には、吐出口をウェハWの中心上方に位置させ、ウェハWを回転させながら現像液を吐出することで、ウェハWの全面に現像液を拡散させて、ウェハW上に現像液のパドルを形成することができる。また現像液のパドル形成は、ストレートタイプのノズルを長尺ノズルと同様にウェハW上をスキャンさせることや、ストレートタイプの様に液を吐出する吐出口を複数ウェハW上にならべて、それぞれの吐出口から現像液を供給するといったことで行われてもよい。
【0018】
噴霧ノズル41は、ノズル本体42を有している。ノズル本体42はアームなどのノズル支持部(図示せず)に設けられており、当該ノズル支持部は駆動機構(図示せず)によって、図中の破線で示した往復矢印C(Z方向)のように、昇降自在であり、また破線で示した往復矢印D(X方向)のように水平移動自在である。
【0019】
実施の形態における噴霧ノズル41は、噴霧部43と洗浄液供給ノズル44を有している。そして現像を促進させない液体、例えば水の供給源45と、噴霧させる際に用いられる気体(例えば清浄空気や窒素ガス等の不活性ガス)の供給源46から、各々供給される液体と気体とが混合部47で混合されて、噴霧部43に供給され、噴霧部43から当該液体のミストが噴霧される。洗浄液供給ノズル44には、洗浄液供給源48から洗浄液が供給される。洗浄液供給ノズル44は、現像後の現像液をウェハW上から洗浄する際に使用される。なお噴霧する際に用いる気体としては、液処理に対して不用意に影響を与えることがないように、不活性ガスの方がより好ましい。
【0020】
現像装置1は、制御部である制御装置100によって制御される。制御装置100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、現像装置1におけるウェハWの現像処理を制御する各種のプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御装置100にインストールされたものであってもよい。記憶媒体Hは一時的記憶媒体か非一時的記憶媒体かを問わない。
【0021】
制御の例としては、現像から洗浄、乾燥に至るまでの一連の処理を挙げられる。例えば現像液ノズル31、噴霧ノズル41の移動並びに噴霧部43からの噴霧の開始、停止、洗浄液供給ノズル44からの洗浄液の供給、停止、スピンチャック11の回転、停止、現像処理の一連シーケンス、さらには送風装置14、排液装置25、バルブ26、排気装置27の動作についても制御される。
【0022】
次に、以上の構成を有する現像装置1による現像方法について、
図2(a)~(e)に基づいて説明する。この現像方法は、現像液ノズル31として、ウェハWの直径以上の長さを有する吐出口を備えたいわゆる長尺ノズルを用いた例である。まず、スピンチャック11上に保持されたウェハWに対して、現像液ノズル31が現像液をウェハW上に供給しながら、ウェハW上を一端から他端まで水平方向にスキャンする(
図2(a))。これによってウェハW上には、現像液のパドルKが形成され、ウェハWは静止現像される(
図2(b))。パドルKが形成されると現像液ノズル31は待機位置に退避する。
【0023】
その後
図2(c)に示したように、噴霧ノズル41がウェハWの中心方向に移動し、所定位置で停止する。この場合の所定位置は、噴霧部43が、ウェハWの中心の上方に位置する場所である。
【0024】
そして
図2(d)に示したように、ウェハW上のパドルKに対して噴霧部43から現像を促進させない液体として水が噴霧される。水が噴霧されると、パドルKに到達する直前に水のミストは気化し、その際の蒸発潜熱によってパドルK表面の温度が低下する(温度制御処理)。この場合、スピンチャック11は回転させてもよいし、回転させなくてもよい。なお噴霧のタイミング、回数等の詳細については後述する。
【0025】
その後噴霧ノズル41の噴霧部43からの噴霧によるパドルKの面内温度制御が終わると、
図2(e)に示したように、噴霧ノズル41が移動して、洗浄液供給ノズル44の中心が、ウェハWの中心上に移動して、停止する。その後は、ウェハWを回転させながら、洗浄液供給ノズル44から洗浄液FをウェハWの中心に向けて供給することで、パドルKを形成していた現像液が振り切られるとともに、ウェハWの表面は洗浄液Fによって洗浄される。
【0026】
なお
図2に示した現像プロセスは、現像液ノズル31にウェハWの直径以上の長さを有する吐出口を備えた長尺ノズルを用いた例であったが、現像液ノズル31に既述したストレートタイプのノズルを用いた場合には、最初にパドルKを形成するプロセスのみが異なっている。すなわち、ウェハWを回転させながら、ウェハWの中心に向けて現像液を供給することで、供給された現像液を遠心力によってウェハWの全面に拡散させてパドルKを形成する。そしてパドル形成後のプロセスは、前記した
図2(b)~(e)と同じである。なおこの場合、現像液ノズル31としてのストレートタイプのノズルを用いて吐出を行う際、吐出口をウェハW上に複数並べて現像液を供給するときには、現像液ノズル31と重なる位置にて、奥行方向に当該複数の吐出口を配置するようにし、かつこれらが現像液ノズル31の様に一体的に移動するようにすればよい。
【0027】
ところで発明者らの知見によれば、これまでパドルKの面内温度分布については、周辺部の方が、中心部よりも温度低下が大きいことが分かっている。これを図に基づいて説明すると、
図3は現像液のパドルK形成後のウェハWの中心部と周縁部の温度変化を示しており、図中、太線は中心部、細線は周縁部の温度変化を示している。このように周縁部の温度低下が中心部より大きいのは、ウェハWの周縁部外側から排気を行なっているからだと考えられる。そしてそのように周縁部の温度低下が中心部より大きいと現像処理の均一性に影響を与え、現像後のパターンの線幅が不均一になる。
【0028】
そこで例えば
図4に示したようにパドル形成後、15秒経過した時点での噴霧ノズル41の噴霧部43からパドルに向けて前記した液体を噴霧すると(図中のS)、ウェハWの中心部の低下速度が
図3の場合よりも促進され、その後パドル形成後60秒経過した時点でのウェハWの中心部と周縁部の温度差Tは、
図3よりも小さくなることが確認できた。実際に測定した結果、
図3における60秒経過後の中心部と周縁部の温度差Tは、約1.2℃であるのに対し、噴霧した
図4の例では、60秒経過後の中心部と周縁部の温度差Tは、約0.5℃となり、半分以下となった。
【0029】
このように、パドルKの形成後にパドルKの表面中心上方から円錐状に液体を噴霧することで、パドルKの中心部の温度を低下させられることが確かめられた。なお前記した例では、総噴霧量は2.5mlであった。より詳述すれば、
図4は、1回あたり0.1ml噴霧する噴霧ノズル41によって、25回噴霧した例を示している。また噴霧高さ(パドルKの表面から噴霧部43の噴霧口までの高さ)は、150mmであった。気化熱によってウェハW表面のパドルKの温度を低下させるという機能から考えると、噴霧された液体のミストは、パドルKの表面の直前で全て気化することが好ましく、したがって、噴霧量、噴霧高さ、さらには噴霧されるミストの粒径はかかる点から定めることが好ましい。
【0030】
このような観点から、噴霧量は、1回あたり0.1ml~0.5ml、噴霧高さは12mm~150mm、ミストの粒径は、例えば0.1μm~5.0μmが好ましいと考えられる。なお噴霧高さが例えば12mmといった比較的基板に近い位置でも、噴霧する液体が充分放射状に拡散されて、その液体がウェハWまたはパドルKに到達する前に気化されるとよい。
また本実施の形態で噴霧ノズル41の噴霧部43から噴霧される液体は、現像を促進させない液体であるから、仮に当該液体のミストがパドルKの表面に多少なりとも付着しても、現像処理に大きく影響することはない。
【0031】
さらに調べた結果、パドルKの形成後、現像処理の間、処理の前半部分に噴霧する方が温度の感度が大きいことが分かった。したがって、噴霧してパドルKの温度を制御するには、処理の前半に行うことがより好適である。
【0032】
また、噴霧ノズル41の噴霧部43から噴霧する液体に、現像液を希釈した液体を噴霧するようにしてもよい。これによって、噴霧した際のミストがパドルKに付着しても、現像液の濃度変化はほとんど見られず、したがって現像処理への影響をさらに抑えることが可能である。
なお特記文献1に記載の技術は、吐出エアの温度を温めて調整するようにしているが、発明者の知見では、18℃~28℃のエアを仮に現像パドル上に吹きかけても、現像パドルが存在する以上、ウェハWには殆ど影響がなく、温度制御ができないことが分かっている。この点、本開示の技術では、パドルが形成された後であっても、気化しやすいミストを噴霧するようにしているので、噴霧領域の温度を速やかに低下させて、現像処理を温度によって制御できる。しかも本開示の技術では、現像液のパドルで現像処理を進めながらそのように温調している。もちろん噴霧する液体のミストの温度調整は不要である。
【0033】
また前記した例では、ウェハWの表面に現像液のパドルKを形成した後に、パドルに対して噴霧するようにしていたが、これに限らずパドルKの形成前に、ウェハWに対して直接前記した液体を噴霧するようにしてもよい。また噴霧する回数は、1回だけではなく、複数回噴霧するようにしてもよい。
【0034】
図5はパドルKを形成していないウェハWに対して、10秒経過時点で1回噴霧した時のウェハWの中心部と周縁部の温度変化を示し、図中太線は中心部、細線は周縁部の温度変化を示している。この場合は周縁部の温度の方が、中心部の温度の温度よりも高くなっている。これはパドルKが形成されていないので、ウェハWの温度は、装置内の雰囲気温度(通常は23℃)付近で一定となる。この状態で例えば噴霧高さが75mmの位置から噴霧するとウェハWの周縁部にはミストが行き渡らない場所があるので、面積的にも大きくなる周縁部温度はデータを平均化すると23℃くらいになるからである。
【0035】
これに対して、
図6は10秒経過した時点で、噴霧を3回行った場合のウェハWの中心部と周縁部の温度変化を示している。図中太線は中心部、細線は周縁部の温度変化である。このように、ウェハWに対して複数回噴霧することで、中心部、周縁部とも、
図5に示した1回噴霧の場合よりも、より温度を低下させることができる。但し、ウェハWの中心上方から噴霧しているので、中心部分はミストが集合して液だまりになりやすく、その分揮発が促進されづらく、噴霧回数の割には温度低下が大きくないという結果が得られた。またウェハW上に現像液等の処理液は存在していないので、液体として純水を用いてこれを噴霧することで、純水のミストがウェハ表面に付着しても、その後の現像等の液処理に影響を与えることはない。
【0036】
前記した例では、噴霧ノズル41の噴霧部43は、ウェハWの中心上方に位置させて噴霧するようにしていたが、これに限らず
図7に示したように、ウェハWの中心から偏心した位置の上方から噴霧するようにしてもよい。既述したように、パドルKの形成後はウェハWの周縁部の温度低下の方が大きいので、かかる場合には、噴霧部43から噴霧される領域は、
図8に示したように、ウェハWの中心Pを含む領域に噴霧することがよい。
【0037】
なおかかる場合であっても、スピンチャック11を駆動させてウェハWを必ず回転させる必要はなく、これによってパドルKの特定の領域の温度を低下させることが可能である。例えばウェハW上のレジストがi線レジストの場合、温度が低い方がより現像処理が進行することが分かっている。したがって、特定の領域の温度を低下させて、現像処理を促進させることができる。これを利用して、次のような温度制御が可能になる。例えば現像液のパドルKを形成する際に、ウェハWの一端部から供給し始めると、当該一端部は供給終点の他端部よりも現像処理が進行する。これを是正するには、当該他端部に噴霧して一端部より温度を低下させることで、一端部の現像処理を促進させて、他端部の現像処理の進行に追い付かせる、といった処理も可能になる。
【0038】
またかかる観点から、
図9に示したように、噴霧ノズル50の噴霧部43を、斜めに傾けて、スピンチャック11に保持されたウェハWに噴霧する際には、ウェハW中心の鉛直方向から斜めに傾けられて噴霧するようにしてもよい。かかる場合、スピンチャック11は回転させてもよいし、回転させなくてもよい。すなわち温度を低下させたい領域に合わせて、適宜選択すればよい。
【0039】
前記した噴霧ノズル41は、噴霧部が1つのものであったが、これに限らず
図10に示した噴霧ノズル50のように、複数の噴霧部、例えば2つの噴霧部43a、43bを有するものであってもよい。
【0040】
すなわち、
図10に示した噴霧ノズル50は、ウェハWの中央部に噴霧する噴霧部43aとウェハWの周辺部に噴霧する噴霧部43bとを有している。かかる構成を有する噴霧ノズルを使用すれば、例えばウェハWの表面の周縁部よりも中央部に長時間噴霧するように、制御装置100によって各噴霧部43a、43bを制御することができる。これによって、ウェハWの中央部により長時間噴霧して、温度の低下を周縁部よりも大きくすることが可能である。
【0041】
さらにまた中央部のみに噴霧して、周縁部に対しては噴霧を停止するか、あるいは噴霧量を中央部よりも少なくして噴霧することが可能になる。これによって、噴霧によるウェハWの領域ごとの温度制御がより細かく行える。
【0042】
前記した例では、噴霧ノズルの噴霧部からの噴霧の流速については、特に説明していないが、パドルKの形成後は、現像処理が進行しているので、噴霧によってウェハWの表面が露出しないような流速で噴霧することがよい。表面が露出すると、当該露出部分の現像処理が停止するからである。
【0043】
なお噴霧ノズル41、50から噴霧している間の排気量は、液処理後のウェハWを洗浄する際の排気量よりも小さい。液処理後は格別ウェハWの面内の温度に留意する必要がなく、一方で洗浄時には多量の洗浄液のミストが発生するため、これを速やかに排気する必要があるからである。また噴霧中は、噴霧流を乱さないことが好適な温度制御が行えるからである。
【0044】
また前記した噴霧ノズル41は、噴霧部43と洗浄液供給ノズル44と一体になった構成であったが、噴霧ノズル50のように、洗浄液供給ノズルとは別な構成としてもよい。
【0045】
なお前記した例は、温度に敏感なi線レジストの現像に特に有効であるが、もちろんこれに限らず、本開示は、例えばg線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーなどのエネルギー線による露光を行うレジストの現像にも効果がある。
【0046】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 現像装置
10 筐体
11 スピンチャック
12 回転部
13 回転駆動部
14 送風装置
21 カップ
22 底部
23 排液管
24 排気管
25 排液装置
26 バルブ
27 排気装置
31 現像液ノズル
32 ノズル支持部
41、50 噴霧ノズル
42 ノズル本体
43、43a、43b 噴霧部
44 洗浄液供給ノズル
100 制御装置
F 洗浄液
K パドル
W ウェハ