(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021948
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】フルオロポリエーテル化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/333 20060101AFI20230207BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C08G65/333
C08G81/00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122551
(22)【出願日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2021126704
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】本多 智
(72)【発明者】
【氏名】生田 直也
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】半田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【テーマコード(参考)】
4J005
4J031
【Fターム(参考)】
4J005AA00
4J005AA09
4J005AB00
4J005BA00
4J005BD05
4J031AA53
4J031AB04
4J031AC01
4J031AC09
4J031AF12
(57)【要約】
【課題】フルオロポリエーテル基を含有する環状化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)[式中:Aは、二価の有機基であり、R
Fは、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基である。]で表される含フッ素環状化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式中:
Aは、二価の有機基であり、
R
Fは、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基である。]
で表される含フッ素環状化合物。
【請求項2】
RFは、-Rf1
p-RFa-Oq-であり、
Rf1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
RFaは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である、
請求項1に記載の含フッ素環状化合物。
【請求項3】
RFaは、下記式:
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3Rh
6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-
[式中:
Rhは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項2に記載の含フッ素環状化合物。
【請求項4】
RFaは、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)又は(f5):
-(OC3F6)d-(OC2F4)e- (f1)
[式中、dは1~200の整数であり、eは0又は1である。]、
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり、
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり、
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(Ra-Rb)g- (f3)
[式中、Raは、OCF2又はOC2F4であり、
Rbは、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]、
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項2又は3に記載の含フッ素環状化合物。
【請求項5】
Aは、-R2-R1-R2-であり、
R1は、二価の有機基であり、
R2は、それぞれ独立して、アルキレン基、酸素原子、-COO-、-OCO-、-CONR11-、又は-NR11CO-であり、
R11は、水素原子又はC1-6アルキル基である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物。
【請求項6】
Aは、-R
2-R
4-R
6-R
4-R
2-であり、
R
2は、それぞれ独立して、アルキレン基、酸素原子、-COO-、-OCO-、-CONR
11-、又は-NR
11CO-であり、
R
11は、水素原子又はC
1-6アルキル基であり、
R
4は、それぞれ独立して、単結合、又は二価の有機基であり、
R
6は、-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-、-C≡C-C≡C-、又は
【化2】
[式中、
Ph
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、
Ar
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
*は結合部位を表す。]
である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物。
【請求項7】
結晶性を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物。
【請求項8】
前記含フッ素環状化合物の分子量分布は1.0~4.0である、請求項1~7のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物。
【請求項9】
両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、並びに
下記式(1’):
【化3】
[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、二価の有機基であり、
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり、
nは、2~100の整数である。]
で表される含フッ素環状化合物、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び下記式(3):
Rf
2-Rf
1
p-R
Fa-O
q-Rf
3
[式中:
Rf
1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり、
Rf
2は、水素原子又はフッ素原子であり、
Rf
3は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり、
R
Faは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である。]
で表される含フッ素オイル
から選択される少なくとも1種
を含む組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、及び式(1’)で表される含フッ素環状化合物を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、及び両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、及び下記式(3):
Rf2-Rf1
p-RFa-Oq-Rf3
[式中:
Rf1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
Rf2は、水素原子又はフッ素原子であり、
Rf3は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
RFaは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である。]
で表される含フッ素オイル
をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び式(3)で表される含フッ素オイルを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、及び
含フッ素オイル、フルオロポリエーテル基含有アルキルエステル、ロフィン及びFeからなる群から選択される少なくともいずれか1つ
を含む混合物。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物を含む成形体。
【請求項17】
請求項10~14のいずれか1項に記載の組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規なフルオロポリエーテル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリエーテル基を有する化合物は、フッ素ゴム、表面処理剤、潤滑剤などとして、幅広い用途に用いられることから、種々の構造を有するフルオロポリエーテル基含有化合物が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-149839号公報
【特許文献2】特開2017-082194号公報
【特許文献3】特表2018-521183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、公知のフルオロポリエーテル基含有化合物は、鎖状化合物であり、フルオロポリエーテル基を含有する環状化合物は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 下記式(1):
【化1】
[式中:
Aは、二価の有機基であり、
R
Fは、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基である。]
で表される含フッ素環状化合物。
[2] R
Fは、-Rf
1
p-R
Fa-O
q-であり、
Rf
1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり、
R
Faは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である、
上記[1]に記載の含フッ素環状化合物。
[3] R
Faは、下記式:
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3R
h
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中:
R
hは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[2]に記載の含フッ素環状化合物。
[4] R
Faは、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)又は(f5):
-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e- (f1)
[式中、dは1~200の整数であり、eは0又は1である。]、
-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり、
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり、
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R
a-R
b)
g- (f3)
[式中、R
aは、OCF
2又はOC
2F
4であり、
R
bは、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10及びOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]、
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[2]又は[3]に記載の含フッ素環状化合物。
[5] Aは、-R
2-R
1-R
2-であり、
R
1は、二価の有機基であり、
R
2は、それぞれ独立して、アルキレン基、酸素原子、-COO-、-OCO-、-CONR
11-、又は-NR
11CO-であり、
R
11は、水素原子又はC
1-6アルキル基である、
上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物。
[6] Aは、-R
2-R
4-R
6-R
4-R
2-であり、
R
2は、それぞれ独立して、アルキレン基、酸素原子、-COO-、-OCO-、-CONR
11-、又は-NR
11CO-であり、
R
11は、水素原子又はC
1-6アルキル基であり、
R
4は、それぞれ独立して、単結合、又は二価の有機基であり、
R
6は、-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-、-C≡C-C≡C-、又は
【化2】
[式中、
Ph
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、
Ar
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
*は結合部位を表す。]
である、
上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物。
[7] 前記含フッ素環状化合物の分子量分布は1.0~4.0である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物。
[8] 両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物。
[9] 上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、並びに
下記式(1’):
【化3】
[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、二価の有機基であり、
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり、
nは、2~100の整数である。]
で表される含フッ素環状化合物、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び下記式(3):
Rf
2-Rf
1
p-R
Fa-O
q-Rf
3
[式中:
Rf
1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり、
Rf
2は、水素原子またはフッ素原子であり、
Rf
3は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり、
R
Faは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である。]
で表される含フッ素オイル
から選択される少なくとも1種
を含む組成物。
[10] 上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、及び式(1’)で表される含フッ素環状化合物を含む、上記[9]に記載の組成物。
[11] 上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、及び両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む、上記[9]又は[10]に記載の組成物。
[12] 上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、及び下記式(3):
Rf
2-Rf
1
p-R
Fa-O
q-Rf
3
[式中:
Rf
1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり、
Rf
2は、水素原子又はフッ素原子であり、
Rf
3は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり、
R
Faは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である。]
で表される含フッ素オイル
をさらに含む、上記[9]に記載の組成物。
[13] 請求項1~7のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び式(3)で表される含フッ素オイルを含む、上記[9]に記載の組成物。
[14] 請求項1~7のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物、及び
含フッ素オイル、フルオロポリエーテル基含有アルキルエステル、ロフィン及びFeからなる群から選択される少なくともいずれか1つ
を含む混合物。
[15] 上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の含フッ素環状化合物を含む成形体。
[16] 上記[9]~[13]のいずれか1項に記載の組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、フルオロポリエーテル基を含有する環状化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例におけるGPCデータを示すグラフである。
【
図2】
図2は、温度変調における放射光測定(昇温時)のデータを示すグラフである。
【
図3】
図3は、温度変調における放射光測定(降温時)のデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられる場合、「一価の有機基」とは、炭素を含有する一価の基を意味する。一価の有機基としては、特記されない限り、炭化水素基またはその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、一価の有機基を意味する。また、「二価の有機基」とは、炭素を含有する二価の基を意味する。かかる二価の有機基としては、特に限定されないが、一価の有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた二価の基が挙げられる。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロサイクリル基、5~10員の不飽和ヘテロサイクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0011】
(含フッ素環状化合物)
本開示は、下記式(1):
【化4】
[式中:
Aは、二価の有機基であり、
R
Fは、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基である。]
で表される含フッ素環状化合物を提供する。A及びR
Fは互いの両端と結合し、環状化合物を形成している。
【0012】
上記Aは、二価の有機基である。
【0013】
一の態様において、上記Aは、下記式:
-R2-R1-R2-
[式中:
R1は、二価の有機基であり、
R2は、それぞれ独立して、アルキレン基、酸素原子、-COO-、-OCO-、-CONR11-、又は-NR11CO-であり、
R11は、水素原子又はC1-6アルキル基である。]
で表される基である。
【0014】
好ましい態様において、R
1は、-R
4-R
6-R
4-である。即ち、上記Aは、下記式:
-R
2-R
4-R
6-R
4-R
2-
[式中:
R
2は、それぞれ独立して、アルキレン基、酸素原子、-COO-、-OCO-、-CONR
11-、又は-NR
11CO-であり、
R
11は、水素原子又はC
1-6アルキル基であり、
R
4は、単結合、又は二価の有機基であり、
R
6は、-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-、-C≡C-C≡C-、又は
【化5】
(式中、
Ph
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、
Ar
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
*は結合部位を表す。)
である。]
で表される基である。なお、式中、2つのイミダゾール環は、炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、又は窒素-窒素結合のいずれで結合していてもよい。
【0015】
R2は、それぞれ独立して、アルキレン基、酸素原子、-COO-、-OCO-、-CONR11-、又は-NR11CO-である。
【0016】
好ましい態様において、R2は、R2a及びR2bである。即ち、Aは、-R2a-R1-R2b-である。
【0017】
R2aは、アルキレン基、酸素原子、-COO-、又は-CONR11-であり、R2bは、アルキレン基、酸素原子、-OCO-、又は-NR11CO-である。なお、R2aは、右側がR1に結合し、R2bは、左側がR1に結合する。
【0018】
R2a及びR2bは、好ましくは互いに対応する基である。即ち、上記R2a及びR2bの組み合わせは、好ましくは、アルキレン基とアルキレン基、酸素原子と酸素原子、-COO-と-OCO-、又は-CONR11-と-NR11CO-である。
【0019】
好ましい態様において、R2aは、-CONR11-であり、R2bは、-NR11CO-である。
【0020】
R2におけるアルキレン基は、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC1-3アルキレン基である。当該アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0021】
R11は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子である。
【0022】
R11におけるC1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。当該C1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0023】
R11は、好ましくはメチル基又は水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0024】
R4は、それぞれ独立して、単結合、又は二価の有機基である。
【0025】
一の態様において、R4は、それぞれ独立して、単結合、又は-(R15)n1-である。
【0026】
上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6アルキレン基、3~8員のシクロアルキレン基、3~8員のシクロアルケニレン基、3~8員のヘテロシクロアルキレン基、3~8員のヘテロシクロアルケニレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基であり、n1は、1~6の整数である。
【0027】
好ましい態様において、R4は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基、又は-R17-R18-R19-である。なお、R4において、R17がR6に結合する。
【0028】
上記式中、
R17は、単結合、又はC1-6アルキレン基であり、
R18は、アリーレン基であり、
R19は、単結合、又はC1-6アルキレン基である。
【0029】
一の態様において、R17は、単結合であり、R18は、アリーレン基であり、R19は、C1-6アルキレン基である。
【0030】
R4におけるC1-6アルキレン基は、好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC1-2アルキレン基である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0031】
R4におけるC1-6アルキレン基及びアリーレン基は、置換されていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロサイクリル基、5~10員の不飽和ヘテロサイクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0032】
R
6は、-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-、-C≡C-C≡C-、又は
【化6】
[式中、
Ph
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、
Ar
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
*は結合部位を表す。]
である。
【0033】
好ましい態様において、
【化7】
は、
【化8】
である。
【0034】
一の態様において、Ph1及びAr1は非置換である。
【0035】
別の態様において、Ph1及びAr1は置換されている。
【0036】
Ph1及びAr1における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロサイクリル基、5~10員の不飽和ヘテロサイクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0037】
上記RFは、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基である。
【0038】
上記フルオロポリエーテル基は、下記式:
-(CαFβRh
γO)δ-
[式中:
Rhは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
α、β、γ、及びδは、各出現においてそれぞれ独立して、任意の整数であり、
ただし、少なくとも1つのβは1以上であり、
2α=β+γを満たす。]
で表される基である。
【0039】
上記フルオロポリエーテル基は、好ましくはパーフルオロポリエーテル基である。かかるパーフルオロポリエーテル基は、下記式:
-(CαF2αO)δ-
[式中:
α、及びδは、各出現においてそれぞれ独立して、任意の整数である。]
で表される基である。
【0040】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、下記式:
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3Rh
6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-
[式中:
Rhは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である。
【0041】
Rhは、好ましくは、水素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRhが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。
【0042】
a、b、c、d、e及びfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0043】
a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下又は30以下であってもよい。
【0044】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。例えば、-(OC6F12)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよい。-(OC5F10)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよい。-(OC4F8)-は、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-及び-(OCF2CF(C2F5))-のいずれであってもよい。-(OC3F6)-(即ち、上記式中、Rhはフッ素原子である)は、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-及び-(OCF2CF(CF3))-のいずれであってもよい。-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-及び-(OCF(CF3))-のいずれであってもよい。
【0045】
好ましい態様において、上記フルオロポリエーテル基は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f5)のいずれかで表される基である。
-(OC3F6)d-(OC2F4)e- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。]、
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R6-R7)g- (f3)
[式中、R6は、OCF2又はOC2F4であり、
R7は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]、
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0046】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。上記式(f1)は、好ましくは、-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-又は-(OCF(CF3)CF2)d-(OCF(CF)3)e-で表される基であり、より好ましくは、-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-で表される基である。
【0047】
上記式(f2)において、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCF2CF2CF2CF2)c-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-(OCF2)f-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基であってもよい。
【0048】
上記式(f3)において、R6は、好ましくは、OC2F4である。上記(f3)において、R7は、好ましくは、OC2F4、OC3F6及びOC4F8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC3F6及びOC4F8から選択される基である。OC2F4、OC3F6及びOC4F8から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC4F8-、-OC3F6OC2F4-、-OC3F6OC3F6-、-OC3F6OC4F8-、-OC4F8OC4F8-、-OC4F8OC3F6-、-OC4F8OC2F4-、-OC2F4OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC2F4OC4F8-、-OC2F4OC3F6OC2F4-、-OC2F4OC3F6OC3F6-、-OC2F4OC4F8OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC3F6-、-OC3F6OC3F6OC2F4-、及び-OC4F8OC2F4OC2F4-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC2F4-OC3F6)g-又は-(OC2F4-OC4F8)g-である。
【0049】
上記式(f4)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0050】
上記式(f5)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0051】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、上記式(f1)で表される基である。
【0052】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、上記式(f2)で表される基である。
【0053】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、上記式(f3)で表される基である。
【0054】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、上記式(f4)で表される基である。
【0055】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、上記式(f5)で表される基である。
【0056】
好ましい態様において、RFは、
-Rf1
p-RFa-Oq-
[式中:
Rf1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
RFaは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1であり、
mは、0~10の整数である。]
で表される基である。
【0057】
上記式において、Rf1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0058】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0059】
上記Rf1は、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0060】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF2-、-CF2CF2-、又は-CF2CF2CF2-である。
【0061】
上記式において、pは、0又は1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0062】
上記式において、qは、それぞれ独立して、0又は1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0063】
上記式において、RFaは、二価のフルオロポリエーテル基である。当該二価のフルオロポリエーテル基は、上記で説明したフルオロポリエーテル基である。
【0064】
本開示の式(1)で表される含フッ素環状化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは2,000以上であり得る。また、本開示の式(1)で表される含フッ素環状化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100,000以下、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは10,000以下であり得る。本開示の式(1)で表される含フッ素環状化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば300~100,000、好ましくは500~30,000、より好ましくは1,000~20,000、さらに好ましくは2,000~10,000であり得る。上記数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0065】
上記式(1)で表される含フッ素環状化合物の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは1.0以上であるが、1.1以上又は1.2以上であってもよい。上記式(1)で表される含フッ素環状化合物の分子量分布は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物の分子量分布は、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.0~3.0、さらに好ましくは1.0~2.0である。ここに、上記分子量分布は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0066】
一の態様において、本開示の式(1)で表される含フッ素環状化合物は、結晶性であり得る。即ち、本開示は、本開示の式(1)で表される含フッ素環状化合物の結晶を提供する。式(1)で表される含フッ素環状化合物の結晶は、偏光顕微鏡で観察することにより確認することができる。
【0067】
式(1)で表される含フッ素環状化合物の結晶は、当該化合物の融点以上に加熱し溶融させ、その後冷却することにより得ることができる。例えば、200℃又は化合物の融点+20℃まで加熱し、室温までゆっくりと冷却することにより得ることができる。降温の速度は、好ましくは20℃/分以下、より好ましくは10℃/分以下であり得る。
【0068】
また、本開示は、下記式(1’):
【化9】
[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、二価の有機基であり、
R
F’は、各出現においてそれぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり、
nは、2~100の整数である。]
で表される含フッ素環状化合物を提供する。
【0069】
上記式(I’)中、Aは、上記式(I)に関するAと同意義である。
【0070】
RF’は、各出現においてそれぞれ独立して、
-RFA-(ZA-RFA)m-
[式中:
RFAは、それぞれ独立して、-Rf1
p-RFa-Oq-であり、
Rf1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
RFaは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1であり、
mは、0~10の整数であり、
ZAは、二価の有機基である。]
で表される基である。
【0071】
上記式において、RFA、Rf1、RFa、p及びqは、上記式(I)に関するRFA、Rf1、RFa、p及びqと同意義である。
【0072】
上記式において、ZAは、二価の有機基である。
【0073】
一の態様において、上記ZAは、上記したAと同様の構造を有し得る。
【0074】
即ち、ZAは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式:
-R2-R1-R2-
[式中、R1、及びR2は、上記と同意義である。]
で表される基である。
【0075】
好ましい態様において、上記ZAは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式:
-R2-R4-R6-R4-R2-であり、
[式中、R2、R4、及びR6は、上記と同意義である。]
で表される基である。
【0076】
一の態様において、ZAは、Aと同じ基である。
【0077】
別の態様において、ZAは、Aと異なる基である。
【0078】
mは、0~10の整数、好ましくは0~8の整数、0~5の整数である。
【0079】
一の態様において、mは0である。
【0080】
一の態様において、mは1である。
【0081】
別の態様において、mは2以上である。
【0082】
上記式(I’)中、nは、2~100の整数、好ましくは2~50の整数、より好ましくは2~30の整数、さらに好ましくは2~20の整数である。
【0083】
本開示の含フッ素環状化合物は、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を、カップリング反応に付し、フルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を環状に連結することにより得ることができる。
【0084】
従って、本開示は、下記式(1):
【化10】
[式中:
Aは、二価の有機基であり、
R
Fは、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基である。]
で表される含フッ素環状化合物、又は下記式(1’):
【化11】
[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、二価の有機基であり、
R
F’は、各出現においてそれぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり、
nは、2~100の整数である。]
で表される含フッ素環状化合物の製造方法であって、
両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物をカップリング反応に付し、フルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を環状に連結させることを含む、製造方法を提供する。
【0085】
一の態様において、上記製造方法は、式(1)で表される化合物の製造方法である。
【0086】
別の態様において、上記製造方法は、式(1’)で表される化合物の製造方法である。
【0087】
また、本開示は、本開示の含フッ素環状化合物の原料となり得る、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を提供する。
【0088】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基含有鎖状化合物は、下記式(2):
B-RFA’-(ZA’-RFA’)m’-B
[式中:
RFA’は、各出現においてそれぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり、
ZA’は、各出現においてそれぞれ独立して、二価の有機基であり、
m’は、0~10の整数であり、
Bは、それぞれ独立して、カップリング官能基を含む基である。]
で表される。
【0089】
RFA’は、各出現においてそれぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり、好ましくはそれぞれ独立して、-Rf1
p-RFa-Oq-である。RFA’は、上記式(1)のRFAに対応する。即ち、RFA’は、RFAとして挙げられた基、及び態様を含む。
【0090】
ZA’は、各出現においてそれぞれ独立して、二価の有機基である。当該ZA’は、上記式(1)のZAに対応する。即ち、ZA’は、ZAとして挙げられた基、及び態様を含む。
【0091】
ZA’は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式:
-R2-R1-R2-
[式中、R1、及びR2は、上記と同意義である。]
で表される基である。
【0092】
好ましい態様において、上記ZA’は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式:
-R2-R4-R6-R4-R2-であり、
[式中、R2、R4、及びR6は、上記と同意義である。]
で表される基である。
【0093】
Bは、下記式:
-R7-R8-R9
[式中:
R7は、アルキレン基、酸素原子、-COO-、又は-CONR11-であり、
R11は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
R8は、単結合、又は二価の有機基であり、
R9は、カップリング官能基である。]
で表される基である。
【0094】
R7は、上記式(1)のR2に対応する。即ち、R7は、R2として挙げられた基、及び態様を含む。
【0095】
好ましい態様において、R7は、-CONR11-である。
【0096】
R11は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子である。
【0097】
R11におけるC1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。当該C1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0098】
R11は、好ましくはメチル基又は水素原子であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0099】
R8は、上記式(1)のR4及びR5に対応する。即ち、R8は、R4及びR5として挙げられた基、及び態様を含む。
【0100】
一の態様において、R8は、それぞれ独立して、単結合、又は-(R15)n1-である。
【0101】
上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6アルキレン基、3~8員のシクロアルキレン基、3~8員のシクロアルケニレン基、3~8員のヘテロシクロアルキレン基、3~8員のヘテロシクロアルケニレン基、アリーレン基、又はヘテロアリーレン基であり、n1は、1~6の整数である。
【0102】
好ましい態様において、R8は、C1-6アルキレン基、又は-R17-R18-R19-である。なお、R8において、R17がR9に結合する。
【0103】
上記式中、
R17は、単結合、又はC1-6アルキレン基であり、
R18は、アリーレン基であり、
R19は、単結合、又はC1-6アルキレン基である。
【0104】
一の態様において、R17は、単結合であり、R18は、アリーレン基であり、R19は、C1-6アルキレン基である。
【0105】
R8におけるC1-6アルキレン基は、好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC1-2アルキレン基である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0106】
R8におけるC1-6アルキレン基及びアリーレン基は、置換されていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロサイクリル基、5~10員の不飽和ヘテロサイクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0107】
一の態様において、R
9は、-C≡CH、-CH=CHR
20(式中、R
20は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子、または-OSO
2R
21、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子、より好ましくは水素原子であり、R
21は1個以上のフッ素を含んでいてもよいC
1-6アルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基である。)、-COH、
又は下記式:
【化12】
(式中、
Ph
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、
Ar
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
*は結合部位を表す。)
で表される基である。
【0108】
好ましい態様において、R
9は、下記式:
【化13】
(式中、
Ph
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、
Ar
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
*は結合部位を表す。)
で表される基である。
【0109】
好ましい態様において、
Z
A’は、各出現においてそれぞれ独立して、-R
2-R
4-R
6-R
5-R
3-であり、
R
2は、アルキレン基、酸素原子、-COO-、又は-CONR
11-であり、
R
3は、アルキレン基、酸素原子、-OCO-、又は-NR
11CO-である、
R
11は、水素原子又はC
1-6アルキル基であり、
R
4は、単結合、又は二価の有機基であり、
R
5は、単結合、又は二価の有機基であり、
R
6は、下記式:
【化14】
[式中、
Ph
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、
Ar
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
*は結合部位を表す。]
で表される基であり、
Bは、-R
7-R
8-R
9であり、
R
7は、アルキレン基、酸素原子、-COO-、又は-CONR
11-であり、
R
11は、水素原子又はC
1-6アルキル基であり、
R
8は、二価の有機基であり、
R
9は、下記式:
【化15】
[式中、
Ph
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、
Ar
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
*は結合部位を表す。]
で表される基である。
【0110】
m’は、0~10の整数、好ましくは0~5の整数、0~3の整数である。
【0111】
一の態様において、m’は0である。
【0112】
一の態様において、m’は1である。
【0113】
別の態様において、m’は2以上である。
【0114】
本開示の両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは2,000以上であり得る。本開示の両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100,000以下、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは10,000以下であり得る。本開示の両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば300~100,000、好ましくは500~30,000、より好ましくは1,000~20,000、さらに好ましくは2,000~10,000であり得る。上記数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0115】
上記したように、本開示の式(1)及び式(1’)で表される化合物は、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物をカップリング反応に付し、フルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を環状に連結させることを含む方法により得ることができる。該反応において、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物は、分子内反応、即ち1つの分子の両末端のカップリング官能基が結合して環を形成してもよく、分子間反応、即ち2以上の分子が互いに結合して、2以上の分子単位を含む環を形成してもよい。
【0116】
一の態様において、上記両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物は、上記式(2)で表される化合物である。
【0117】
一の態様において、本開示の式(1)及び式(1’)で表される化合物は、下記式:
HC≡C-R8-R7-RFA’-R7-R8-C≡CH
[式中、RFA’、R7、及びR8は、上記と同意義である。]
で表される化合物を反応させて、環内に-C≡C-C≡C-を含む環状化合物を得ることを含む方法により得ることができる。
【0118】
本態様において、R7は、好ましくは、-CONR11-である。なお、R7は、左側がRFA’に結合する。
【0119】
本態様において、R8は、好ましくは、C1-6アルキレン基である。
【0120】
上記の方法により得られる式(1)で表される化合物は、R6が-C≡C-C≡C-である化合物である。
【0121】
上記の反応は、臭化銅、ヨウ化銅、塩化銅、又は酢酸銅の存在下、あるいは、酸素雰囲気下の銅(I)塩の存在下で行うことができる。
【0122】
別の態様において、本開示の式(1)及び式(1’)で表される化合物は、下記式:
CH2=CH-R8-R7-RFA’-R7-R8-CH=CH2
[式中、RFA’、R7、及びR8は、上記と同意義である。]
で表される化合物を反応させて、環内に-HC=CH-を含む環状化合物を得ることを含む方法により得ることができる。
【0123】
本態様において、R7は、好ましくは、-CONR11-である。なお、R7は、左側がRFA’に結合する。
【0124】
本態様において、R8は、好ましくは、C1-6アルキレン基である。
【0125】
上記の方法により得られる式(1)及び式(1’)で表される化合物は、R6が-HC=CH-である化合物である。
【0126】
上記の反応は、各種グラブス触媒(グラブス第一世代、グラブス第二世代、ホベイダグラブス試薬)、又はシュロック触媒を用いて行うことができる。
【0127】
別の態様において、本開示の式(1)で表される化合物は、下記式:
HOC-R8-R7-RFA’-R7-R8-COH
[式中、RFA’、R7、及びR8は、上記と同意義である。]
で表される化合物を反応させて、環内に-HC=CH-を含む環状化合物を得ることを含む方法により得ることができる。
【0128】
本態様において、R7は、好ましくは、-CONR11-である。なお、R7は、左側がRFA’に結合する。
【0129】
本態様において、R8は、好ましくは、-R17-R18-R19-である。なお、R8において、R17がCOHに結合する。
【0130】
上記式中、
R17は、単結合、又はC1-6アルキレン基であり、
R18は、アリーレン基であり、
R19は、単結合、又はC1-6アルキレン基である。
【0131】
一の態様において、R17は、単結合であり、R18は、アリーレン基であり、R19は、C1-6アルキレン基である。
【0132】
R8におけるC1-6アルキレン基は、好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC1-2アルキレン基である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0133】
R8におけるC1-6アルキレン基及びアリーレン基は、置換されていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロサイクリル基、5~10員の不飽和ヘテロサイクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0134】
上記の方法により得られる式(1)で表される化合物は、R6が-HC=CH-である化合物である。
【0135】
上記の反応は、塩化チタン-亜鉛(銅)合金を用いて行うことができる。
【0136】
別の態様において、本開示の式(1)で表される化合物は、下記式:
R
13-R
8-R
7-R
FA’-R
7-R
8-R
13
[式中:
R
FA’、R
7、及びR
8は、上記と同意義であり、
R
13は、
【化16】
(式中、
Ph
1、及びAr
1は、上記と同意義であり、
*は結合部位を表す。)
で表される基である。]
で表される化合物を反応させて、環内に
【化17】
[式中、
Ph
1、及びAr
1は、上記と同意義であり、
*は結合部位を表す。]
で表される基を含む環状化合物を得ることを含む方法により得ることができる。
【0137】
本態様において、R7は、好ましくは、-CONR11-である。なお、R7は、左側がRFA’に結合する。
【0138】
本態様において、R8は、好ましくは、C1-6アルキレン基である。
【0139】
Ph1は、好ましくは、非置換のフェニル基である。
【0140】
Ar1は、好ましくは、非置換のフェニレン基である。
【0141】
上記の方法により得られる式(1)で表される化合物は、R
6が、
【化18】
であり、好ましくは、
【化19】
である化合物である。
【0142】
上記の反応は、フェリシアン酸カリウムなどの一電子酸化剤を用いて行うことができる。
【0143】
上記反応における鎖状化合物の濃度の下限は、好ましくは0.1mg/mL、例えば0.6mg/mL又は1.0mg/mLであり得る。また、鎖状化合物の濃度の上限は、好ましくは500mg/mL、より好ましくは200mg/mL、さらに好ましくは100mg/mL、例えば10mg/mL又は2mg/mLであり得る。上記反応における鎖状化合物の濃度は、好ましくは0.1~500mg/mL、より好ましくは0.1~200mg/mL、さらに好ましくは0.1~100mg/mL、例えば0.6~100mg/mL又は0.6~2mg/mLであり得る。
【0144】
本開示は、本開示の式(1)で表される含フッ素環状化合物を含む組成物を提供する。
【0145】
一の態様において、本開示の組成物は、さらに、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、上記両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び含フッ素オイルから選択される少なくとも1種を含む。
【0146】
一の態様において、本開示の組成物は、式(1)で表される含フッ素環状化合物、及び式(1’)で表される含フッ素環状化合物を含む。
【0147】
一の態様において、本開示の組成物は、式(1)で表される含フッ素環状化合物、及び両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む。
【0148】
一の態様において、本開示の組成物は、式(1)で表される含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、及び両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む。
【0149】
一の態様において、本開示の組成物は、式(1)で表される含フッ素環状化合物、及び含フッ素オイルを含む。
【0150】
一の態様において、本開示の組成物は、式(1)で表される含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、及び含フッ素オイルを含む。
【0151】
一の態様において、本開示の組成物は、式(1)で表される含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び含フッ素オイルを含む。
【0152】
本開示は、上記両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む組成物を提供する。
【0153】
上記両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物は、本開示の上記式(2):
B-RFA’-(ZA’-RFA’)m’-B
で表される化合物である。
【0154】
一の態様において、本開示の組成物は、m’が0である式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む。
【0155】
一の態様において、本開示の組成物は、m’が1~10の整数である式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む。
【0156】
一の態様において、本開示の組成物は、m’が0である式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及びm’が1~10の整数である式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む。
【0157】
上記含フッ素オイルは、下記式(3):
Rf2-Rf1
p-RFa-Oq-Rf3
[式中:
Rf1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
Rf2は、水素原子またはフッ素原子であり、
Rf3は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
RFaは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1である。]
で表される化合物である。
【0158】
本開示は、さらに、式(1)で表される含フッ素環状化合物、及び、上記フルオロポリエーテル基含有鎖状化合物の前駆体及び/または誘導体を含む組成物を提供する。
【0159】
一の態様において、上記組成物は、さらに式(1’)で表される含フッ素環状化合物、上記両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び含フッ素オイルから選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0160】
上記フルオロポリエーテル基含有鎖状化合物の誘導体としては、例えば、
R
13-R
8-R
7-R
FA’-R
7-R
8-R
13
[式中:
R
FA’、R
7、及びR
8は、上記と同意義であり、
R
13は、
【化20】
(式中、
Ph
1、及びAr
1は、上記と同意義であり、
R
21は、C
1-6アルキル、OH、又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子)であり、
R
22は、カルボン酸含有基、エステル含有基、アミド含有基であり、
*は結合部位を表す。)
で表される基である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0161】
上記フルオロポリエーテル基含有鎖状化合物の前駆体としては、例えば、
Rf-Rf1
p-RFa-Oq-R23-R24
[式中:
Rf1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基であり、
Rf1は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
RFaは、二価のフルオロポリエーテル基であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1であり、
R23は、単結合、又は二価の有機基であり、
R24は、-COOH、-COOR25、又は-CONR26
2であり、
R25は、C1-6アルキル基であり、
R26は、水素原子またはC1-6アルキル基である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0162】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基含有鎖状化合物の前駆体は、
Rf-Rf1
p-RFa-Oq-CH2-CH(OH)-CH2-OH
Rf-Rf1
p-RFa-Oq-CH2-R24
で表される化合物であり得る。
【0163】
本開示の上記組成物は、特に限定されないが、例えば、封止剤、接着剤、相溶化剤、撥水材料、コーティング剤、ポッティングゲル、Oリング、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、バルブ、シールなどのゴム材料において用いることができる。
【0164】
本開示は、本開示の式(1)で表される含フッ素環状化合物、及び、上記含フッ素オイル、フルオロポリエーテル基含有アルキルエステル、ロフィン及びFeからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含む混合物を提供する。
【0165】
本開示は、本開示の式(1)で表される含フッ素環状化合物、又は、本開示の組成物を含む成形体を提供する。
【0166】
本開示の化合物及び組成物の成形方法は、特に限定されず、一般的な成形方法、例えば押出成形、射出成形、プレス成形、真空成形、トランスファ成形等を用いることができる。
【0167】
得られる成形体の形状は、特に限定されず、所望するいずれの形状、例えば、ブロック状、シート状、フィルム状、棒状、その他用途に応じた種々の形状であり得る。
【実施例0168】
本開示の化合物について、以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、パーフルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位(CF2O)及び(CF2CF2O)の存在順序は任意である。また、以下に示される化学式はすべて平均組成を示す。
【0169】
実施例1:HABIを利用したフルオロポリエーテル基(PFPE)含有鎖状化合物の環化反応
【0170】
1.PFPE含有鎖状化合物の末端ロフィン修飾、及びHABI化
下記スキームに従って、HABI型フルオロポリエーテル基(PFPE)含有環状化合物を合成した。
【化21】
【0171】
【0172】
4-(4,5-ジフェニル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンゾニトリルの合成
ベンジル(4.3g、20mmol)、4-シアノベンズアルデヒド(2.7g、21mmol)及び酢酸アンモニウム(4.8g、62mmol)を、メタノール(60mL)と酢酸エチル(30mL)の混合溶媒に溶かし、2日間60℃で加熱攪拌した。室温に戻したあと、ろ過を行い、ろ物をメタノールで洗浄することで白色固体として目的物(3.6g、11mmol、収率55%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 13.01 (bs, 1H), 8.25(d, J = 8.5 Hz 2H), 7.94 (d, J = 8.5 Hz 2H), 7.54-7.24 (m, 10H)
【0173】
4-(4,5-ジフェニル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンジルアミンの合成
超脱水のテトラヒドロフラン(THF、30mL)に、4-(4,5-ジフェニル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンゾニトリル(1.86g、5.79mmol)を溶かし、0℃で水酸化アルミニウムリチウムLAH(1.13g、29.8 mmol)を少しずつ加えた。室温に戻し、窒素下で22時間攪拌した。0℃で水を加え反応を停止させ、ろ過を行い、ろ物を酢酸エチルで洗浄し、洗浄液をろ液に加え、水で洗浄した。次いで、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過により硫酸ナトリウムを除き、溶媒留去、真空乾燥を行い、白色固体として目的物(1.72g、5.29mmol、収率91%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 12.61 (bs, 1H), 8.01(d, J = 8.0 Hz 2H), 7.53-7.23 (m, 12H), 3.76 (s, 2H).
13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ 145.69, 144.31, 128.41, 127.30, 125.02, 45.39
HR-MS (ESI+)、C22H19N3として計算値 [M+H]+ 326.1652, 測定値 326.1658
【0174】
・ロフィン型フルオロポリエーテル基(PFPE)含有鎖状化合物の合成
PFPE化合物(1)として、下記の化合物を準備した。
H3COOC-CF2-(OC2F4)m-(OCF2)n-COOCH3
(m≒19、n≒28)
PFPE化合物(1)(4.53g,1.05mmol)を、ヘキサフルオロ-m-キシレン(25mL)に溶かし、その溶液に4-(4,5-ジフェニル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンジルアミン(2)のTHF溶液(1.32g,4.06mmol,50mL)を加え、窒素下室温で20時間攪拌を行った。その後溶媒留去し、残った固体をメタノールで洗い、乾燥することで、白色固体(4.50g,88%)としてロフィン型鎖状PFPE化合物を得た。
1H NMR (500 MHz, Novec(登録商標) 7200/MeOH (10/1, v/v)) δ 10.27 (bs, 2H), 8.47 (bs, 4H), 8.02 (bs, 8H), 7.91 (bs, 4H), 7.81-7.77 (m, 12H)
19F NMR (470 MHz, (2,4-ビストリフルオロメチルベンゼン/MeOH (10/1, v/v)) δ -54.23, -55.83, -57.55, -80.51, -82.24, -91.16, -92.82, -128.10, -131.74.
【0175】
・HABI型フルオロポリエーテル基(PFPE)含有環状化合物の合成
(環化反応HABI型環状PFPEの合成)
上記で得たロフィン型鎖状PFPE化合物(2.57g)の2,4-ビストリフルオロメチルベンゼン/メタノール(v/v,10/1)溶液(66mL)に、水酸化カリウム(1.29g)とフェリシアン化カリウム(2.72g)を溶解させた水溶液(25mL)を加えて、遮光して窒素下で1時間攪拌した。有機層を分離し、水層をNovec(登録商標)7200/メタノール(10/1,v/v)で抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し揮発成分を減圧下で留去し乾燥することで開始剤1(黄色固体、収量0.25g、収率10%)を得た。
1H NMR (500 MHz, Novec(登録商標) 7200/MeOH (10/1, v/v)) δ ppm 10.22 (bs, 1H), 9.93 (bs, 1H), 8.03-7.62 (m, 26H) 7.38 (bs, 2H).
19F NMR (470 MHz, 2,4-ビストリフルオロメチルベンゼン/MeOH (10/1, v/v)) δ ppm -54.26, -54.86, -57.58, -80.40, -82.12, -91.20, -92.86, -288.15, -131.79.
【0176】
得られた(HABI型環状PFPE化合物)化合物(0.4g)を、2,4-ビストリフルオロメチルベンゼン:メタノール=10:1に溶かし、得られた溶液を開放系で静置することで溶媒をゆっくり蒸発させた。試料が流動しなくなったのちに減圧下でさらに乾燥させることでフィルムを作製した。
【0177】
1H NMRおよび19F NMRにより、HABI型PFPE含有環状化合物(4)が合成されたことが確認された。また、得られた黄色のフィルム状の固体に青色レーザー(405±10nm)の光を照射することで紫色の着色が見られており、紫外可視分光光度計による測定で570nmに吸収極大値が確認された。さらにESRにおいて、g値2.0010のシグナルが、光照射により増大した。この結果から、光照射によりラジカルの生成が起こることが確認され、目的物であるHABI型PFPE含有環状化合物(4)が得られたことが確認された。
【0178】
2.HABI型PFPE含有環状化合物の環化の確認
種々の濃度の溶液に調製したHABI型PFPE含有環状化合物(4)に対し、溶液を攪拌しながら光照射(364±5nm)を100分間行い、光照射停止後暗所で20分間攪拌した後、溶媒留去して黄色固体を得た。得られた固体の分子量分布をGPCによって求めた。その結果、光照射時の濃度が小さいほど高分子成分が小さくなり、2mg/mLの濃度からはほぼ一定となった。さらに、この濃度条件において得られたサンプルのピーク分子量(Mp)について、原料であるPFPE化合物(1)との比を計算すると、0.79となり、この値は一般的に環状になることによるピーク分子量の減少による値と一致していた。この結果から、光照射時の濃度が2mg/mL以下のとき、1分子のPFPE含有鎖状化合物からなる環状高分子が選択的に生成しているということができ、これ以下の基質濃度で環化反応を行えば、一般的な閉環反応においても1分子のPFPE含有鎖状化合物からなる環状高分子化合物を選択的に生成可能であると考えられる。この値は、鎖状高分子化合物の閉環反応により環状化合物を合成する際の一般的な濃度が0.5mg/mL以下であるのに対し、高い値となっている。このことはPFPE含有鎖状化合物を用いた単分子の閉環反応が高濃度で行うことができ、比較的容易に環状高分子化合物の合成が行えることを示唆している。
【0179】
【0180】
3.放射光測定
温度変調による放射光測定を実施した。具体的には、25℃から200℃まで加熱し、再度25℃まで冷却し、25℃、50℃、100℃、150℃、及び200℃において、放射光を測定した。
昇温時には、150℃でヘキサゴナル由来の散乱パターンが明確に確認され、200℃で等方相が確認された。また、降温時には、150℃でヘキサゴナル散乱パターンが現れ、100℃以下では散乱がブロードになった。
【0181】
4.偏光顕微鏡(POM)観察
スライドガラスにHABI型PFPE含有環状化合物(4)を挟み、ホットステージで200℃まで加熱した。その後、10℃/分の降温条件で冷却した。この間のHABI型PFPE含有環状化合物(4)の状態を、偏光顕微鏡で観察した。その結果、146.5℃から結晶が確認された。
【0182】
5.結晶性PFPE含有化合物の製造
上記1で得られたHABI型PFPE含有環状化合物(4)を、200℃まで加熱し、溶融させた。その後、10℃/分の降温条件で室温まで冷却し、結晶性PFPE含有化合物を得た。
【0183】
実施例2:末端アルキンを利用したPFPE含有鎖状化合物のGlaserカップリング環化反応
【0184】
1.PFPEの末端アルキン修飾
PFPE化合物(1)、プロパルギルアミン(5)、及び溶媒としてメタキシレンフルオライドを、室温で3日間、反応させ、プロパルギルアミド型PFPE含有鎖状化合物(6)を得た。反応の進行は、19FNMRにより確認した。
【0185】
【0186】
2.プロパルギルアミド型PFPE含有鎖状化合物(6)の環化(実施例X)
CuBr(25mg)、及びN,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)(0.04mL)を、F6-m-キシレン(90mL)に懸濁させ、1時間攪拌した。その溶液に、プロパルギルアミド型PFPE含有鎖状化合物(194mg)をF6-m-キシレン(10mL)に溶かした溶液を加えた。1日攪拌後、CuBr(65mg)及びPMDETA(0.12mL)を、F6-m-キシレン(5mL)に懸濁させ、1時間攪拌した溶液を加え、追加で1日攪拌を行った。その後、MeOHを少量加え、飽和食塩水による洗浄を行い、有機層に硫酸ナトリウムを加えてろ過し、ろ液を濃縮した。得られた油状物を、F6-m-キシレンとアセトンの混合溶媒(約10:1)に溶かし、シリカゲルに通したのちに濃縮することで、白濁した薄黄色油状物(42.3mg)を得た。得られたサンプルは1HNMRよりカップリング反応の進行を確認した。
【0187】
3.プロパルギルアミド型PFPE含有鎖状化合物(6)の環化(実施例Y)
さらに、同様の反応を、F6-m-キシレン:MeOH=9:1を用いて行った。CuBr(110mg)及びPMDETA(0.15mL)を、F6-m-キシレン(80mL)とMeOH(10mL)の混合溶媒に懸濁させ、1時間攪拌した。その溶液に、プロパルギルアミド型PFPE含有鎖状化合物(190mg)をF6-m-キシレン(10mL)に溶かした溶液を加えた。1日攪拌したのち、MeOHを少量加え、飽和食塩水による洗浄を行い、有機層に硫酸ナトリウムを加えろ過し、ろ液を濃縮した。得られた油状物をF6-m-キシレンとアセトンの混合溶媒(約10:1)に溶かし、シリカゲルに通したのちに濃縮することで、白濁した薄黄色油状物(98.3mg)を得た。得られたサンプルは1HNMRよりカップリング反応の進行を確認した。
【0188】
4.環化の確認
GPCを用いて環化の確認を行った。反応前後のGPCデータから、Mn、Mw及び分子量分布を測定した。結果を下記表2及び
図1に示す。
【0189】
【0190】
上記の結果から、低分子量(2000超5000以下)の割合が増加したことから、環化反応が進行したことが確認された。また、高分子量(8000超)の割合が増加したことから、前駆体化合物の重合物が生成していることが確認された。これらのことから、前駆体化合物の重合物を含みながらも環化が進行し、環状化合物と前駆体化合物の重合物を含む組成物が得られたことが確認された。
本開示の化合物は、封止剤、接着剤、相溶化剤、撥水材料、コーティング剤、ポッティングゲル、Oリング、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、バルブ、シールなどのゴム材料等の広範な用途に用いることができる。
前記式(1)で表される含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び式(3)で表される含フッ素オイルを含む、請求項10に記載の組成物。
前記式(1)で表される含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、及び両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物を含む、請求項9に記載の組成物。
前記式(1)で表される含フッ素環状化合物、式(1’)で表される含フッ素環状化合物、両末端にカップリング官能基を有するフルオロポリエーテル基含有鎖状化合物、及び式(3)で表される含フッ素オイルを含む、請求項9に記載の組成物。