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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002200
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20221227BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/26
C23C16/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103284
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布瀬 暁志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】東雲 秀司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲也
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA04
4K030BA28
4K030BB14
4K030CA01
4K030FA01
4K030FA08
4K030FA17
4K030JA06
4K030JA10
4K030KA26
5F045AA08
5F045AA11
5F045AB07
5F045AC00
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD03
5F045AE13
5F045AF01
5F045AF08
5F045AF10
5F045DB09
5F045DP03
5F045EB03
5F045EE12
5F045EG02
5F045EH18
5F045EJ03
5F045EM07
5F045EM09
5F045EN04
(57)【要約】
【課題】マスクを設けることなく、金属膜と絶縁膜が表面に露出した基板の金属膜上に選択的に成膜を行うこと。
【解決手段】成膜方法は、選択的に成膜を行う。成膜方法は、冷却工程と、成膜工程とを有する。冷却工程は、金属膜と絶縁膜が表面に露出し、チャンバ内に支持された基板を、c-CガスとSFガスの分子が基板の表面に凝縮する温度に冷却する。成膜工程は、c-CガスとSFガスを含んだ処理ガスをチャンバ内に供給すると共に基板の表面を励起して、金属膜上に炭素含有膜を成膜する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に成膜を行う成膜方法であって、
金属膜と絶縁膜が表面に露出し、チャンバ内に支持された基板を、c-CガスとSFガスの分子が前記基板の表面に凝縮する温度に冷却する冷却工程と、
c-CガスとSFガスを含んだ処理ガスを前記チャンバ内に供給すると共に前記基板の表面を励起して、前記金属膜上に炭素含有膜を成膜する成膜工程と、
を有する成膜方法。
【請求項2】
前記冷却工程は、前記基板を120[K]以下に冷却する
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記金属膜は、Cu膜であり、
前記絶縁膜は、SiO膜である
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記成膜工程は、c-CガスとSFガスを1:3~3:1の比率で含んだ処理ガスを前記チャンバ内に供給する
請求項1~3の何れか1つに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記炭素含有膜を成膜した後、絶縁膜の原料ガスを前記チャンバ内に供給し、前記炭素含有膜をマスクとして、絶縁膜上に第2の絶縁膜を成膜する絶縁膜成膜工程
をさらに有する請求項1~3の何れか1つに記載の成膜方法。
【請求項6】
金属膜と絶縁膜が表面に露出した基板を支持するステージが内部に設けられたチャンバと、
前記ステージに支持された前記基板を、c-CガスとSFガスの分子が前記基板の表面に凝縮する温度に冷却する冷却部と、
c-CガスとSFガスを含んだ処理ガスを前記チャンバ内に供給する供給部と、
前記基板の表面を励起する励起機構と、
前記供給部から前記処理ガスを前記チャンバ内に供給しつつ前記励起機構により前記基板の表面を励起して、前記金属膜上に炭素含有膜を成膜する制御を行う制御部と、
を有する成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理化学物質を用いて反応スペース表面を処理して複数の堆積反応物との反応に対して反応スペース表面を不活性化した後、基板を複数の反応物に曝露することによって基板上に層を堆積する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-501902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、マスクを設けることなく、金属膜と絶縁膜が表面に露出した基板の金属膜上に選択的に成膜を行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、選択的に成膜を行う。成膜方法は、冷却工程と、成膜工程とを有する。冷却工程は、金属膜と絶縁膜が表面に露出し、チャンバ内に支持された基板を、c-CガスとSFガスの分子が基板の表面に凝縮する温度に冷却する。成膜工程は、c-CガスとSFガスを含んだ処理ガスをチャンバ内に供給すると共に基板の表面を励起して、金属膜上に炭素含有膜を成膜する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、マスクを設けることなく、金属膜と絶縁膜が表面に露出した基板の金属膜上に選択的に成膜を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る成膜装置の概略的な構成の一例に示す断面図である。
図2A図2Aは、実施形態に係る第1の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。
図2B図2Bは、実施形態に係る第1の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る第2の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。
図4A図4Aは、実施形態に係る第3の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。
図4B図4Bは、実施形態に係る第3の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る第4の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。
図6図6は、半導体デバイスの製造工程の一例を説明する図である。
図7図7は、実施形態に係る成膜方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示する成膜方法及び成膜装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示する成膜方法及び成膜装置が限定されるものではない。
【0009】
[実施形態]
実施形態について説明する。最初に、本開示の成膜方法を実施するための成膜装置の一例を説明する。図1は、実施形態に係る成膜装置100の概略的な構成の一例に示す断面図である。図1に示す成膜装置100は、チャンバ101と、ステージ102と、ガス供給機構103と、排気装置104と、励起機構105と、制御部150とを有する。
【0010】
チャンバ101は、例えばアルミニウム及びその合金等の金属材料によって形成されている。チャンバ101は、成膜対象とされた半導体ウエハ等の基板Wを収容する。チャンバ101は、内部にステージ102が設けられている。基板Wは、ステージ102に載置される。
【0011】
ガス供給機構103及び励起機構105は、チャンバ101の天板に設けられている。ガス供給機構103は、チャンバ101内に成膜処理に用いる各種のガスを供給する。例えば、ガス供給機構103は、パーフルオロカーボンガス(PFCガス)としてc-CガスやSFガスを成膜処理に用いる処理ガスとしてチャンバ101内に供給する。
【0012】
励起機構105は、基板Wにエネルギーを与えて基板Wの表面を励起する。例えば、励起機構105は、放電管が設けられ、放電管内で希ガス(Heガス、Arガスなど)、HガスあるいはNガスなど放電を起こして、低速電子(Ek≦200eV)や希ガスの準安定励起種(He*、Ar*など)あるいは、H原子やN原子を生成し、基板Wに照射して基板Wの表面を励起する。なお、ガス供給機構103及び励起機構105は、チャンバ101の側壁に設けられてもよい。
【0013】
チャンバ101の側壁には、開口部が設けられ、該開口部に接続された排気管111を介して排気装置104が設けられている。排気装置104は、ゲートバルブ112と、分子ターボポンプ113と、補助排気ポンプ114とを備えている。排気装置104の分子ターボポンプ113及び補助排気ポンプ114により排気管111を介してチャンバ101内が排気される。チャンバ101内の圧力は、排気装置104のゲートバルブ112により制御される。
【0014】
ステージ102は、金属材料、例えば、無酸素銅(Cu)により構成されている。ステージ102は、上面に基板Wが載置される。ステージ102は、載置された基板Wを支持する。ステージ102は、チャンバ101の底部中央から上方に延びる支持部材120により支持されている。
【0015】
図示を省略するが、ステージ102及び支持部材120には、基板Wを冷却する冷却部が設けられている。冷却部は、例えば、無酸素銅(Cu)もしくはクライオスタットのような冷却機構を含んで構成され、ステージ102を冷却することで、ステージ102を介して基板Wを冷却する。また、ステージ102は、基板Wとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。なお、ステージ102よび支持部材120表面は、周囲からの輻射熱の入熱を防ぐ目的として金(Au)やクロムメッキされていることが望ましい。
【0016】
上記のように構成された成膜装置100は、制御部150によって、動作が統括的に制御される。制御部150には、ユーザインターフェース151と、記憶部152とが接続されている。
【0017】
ユーザインターフェース151は、工程管理者が成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボード等の操作部や、成膜装置100の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等の表示部から構成されている。ユーザインターフェース151は、各種の動作を受け付ける。例えば、ユーザインターフェース151は、プラズマ処理の開始を指示する所定操作を受け付ける。
【0018】
記憶部152は、各種のデータを記憶する記憶デバイスである。例えば、記憶部152は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部152は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、NVSRAM(Non Volatile Static Random Access Memory)などのデータを書き換え可能な半導体メモリであってもよい。
【0019】
記憶部152は、制御部150で実行されるOS(Operating System)や各種レシピを記憶する。例えば、記憶部152は、後述する成膜方法の成膜処理を実行するレシピを含む各種のレシピを記憶する。さらに、記憶部152は、レシピで用いられる各種データを記憶する。なお、プログラムやデータは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用してもよい。或いは、プログラムやデータは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0020】
制御部150は、成膜装置100を制御するデバイスである。制御部150としては、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路を採用できる。制御部150は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。
【0021】
制御部150は、成膜装置100の各部を制御する。例えば、制御部150は、記憶部152に記憶したレシピデータのレシピに従い、成膜処理を実施するよう成膜装置100の各部を制御する。成膜装置100は、ステージ102に成膜対象の基板Wが載置される。成膜対象の基板Wは、金属膜と絶縁膜が表面に露出している。例えば、基板Wには、金属膜として銅(Cu)膜と、絶縁膜としてSiO膜が成膜されており、Cu膜とSiO膜が表面に露出している。
【0022】
成膜装置100は、ステージ102に載置された基板Wに対して成膜処理を実施する。例えば、成膜装置100は、冷却部により、ステージ102に載置された基板Wを、c-CガスとSFガスの分子が基板Wの表面に凝縮する温度に冷却する。例えば、成膜装置100は、基板Wを120[K]以下の温度に冷却する。本実施形態では、例えば、基板Wを80[K]に冷却する。
【0023】
成膜装置100は、排気装置104によりチャンバ101内の圧力を10-3[Torr]以下に減圧する。本実施形態では、例えば、チャンバ101内の圧力を10-4[Torr]に減圧する。
【0024】
成膜装置100は、ガス供給機構103から成膜処理に用いる各種のガスをチャンバ101内に供給すると共に、励起機構105から希ガス(He、Arなど)やHガスあるいはNガスなどを放電プラズマなどを利用して活性化し、生じた低速電子や希ガスの準安定励起種(He*、Ar*など)あるいは、H原子やN原子を、基板Wに照射して基板Wの表面を励起して、成膜を実施する。例えば、成膜装置100は、ガス供給機構103からc-CガスやSFガスを含む処理ガスをチャンバ101内に供給すると共に励起機構105により基板Wの表面を励起して、金属膜上に炭素含有膜としてフッ素を含有するアモルファスカーボン膜(以下、a-C:F膜と略す)を成膜する。処理ガスとして供給するガスの種類、流量は、例えば、以下のとおりである。
【0025】
・処理ガス
c-Cガス:0.001~100[sccm](好ましくは0.01~1[sccm])
SFガス:0.001~100[sccm](好ましくは0.01~1[sccm])
【0026】
なお、処理ガスは、c-Cガスに代えて、CF、C、C、C14(C2n+2)、Cなどのパーフルオロカーボンガスを使用してもよく、SFガスに代えて、NFガスを使用してもよい。
【0027】
ここで、本実施形態に係る成膜方法の成膜処理において、処理ガスに含まれるc-CガスとSFガスの比率を変えた場合の成膜の結果を説明する。
【0028】
最初に、第1の成膜処理の成膜の結果を説明する。第1の成膜処理では、表面にSiO膜が露出した基板Wに対して、c-CガスとSFガスの比率を変え、SFガスを100%とした処理ガスをチャンバ101内に供給すると共に基板Wの表面を励起して成膜を実施した。図2Aは、実施形態に係る第1の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。図2Aには、第1の成膜処理を開始した直後(0min)と、第1の成膜処理を実施している途中の2分(2min)、4分(4min)、6分(6min)、8分(8min)、10分(10min)の各タイミングでの波数ごとに吸光度が示されている。図2Aは、例えば、チャンバ101に透過窓を設けて赤外分光光度計により、赤外吸収スペクトルの時間変化を求めたものである。赤外吸収スペクトルの1070cm-1付近の波形は、SiOの成分に対応している。図2Aに示すように、1070cm-1付近の波形は、処理時間の経過と共に低下している。このことから、SFガスを100%とした場合、基板WのSiO膜がエッチングされる。図2Bは、実施形態に係る第1の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。図2Bには、基板Wに対する第1の成膜処理の処理時間と、基板Wの表面に露出したSiO膜の膜厚の変化が示されている。図2Bに示すように、処理時間の経過と共に、SiO膜の膜厚の膜厚が減少しており、SiO膜がエッチングされる。
【0029】
次に、第2の成膜処理の成膜の結果を説明する。第2の成膜処理では、表面にSiO膜が露出した基板Wに対して、c-CガスとSFガスの比率を変え、c-Cガスを100%とした処理ガスをチャンバ101内に供給すると共に基板Wの表面を励起して成膜を実施した。図3は、実施形態に係る第2の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。図3には、第2の成膜処理を開始した直後(0min)と、第2の成膜処理を実施している途中の2分(2min)、4分(4min)、6分(6min)、8分(8min)、10分(10min)の各タイミングでの波数ごとに吸光度が示されている。赤外吸収スペクトルの1100~1400cm-1付近の波形は、フッ素を含有するアモルファスカーボンのCF系(CFx(x=1~3))の振動モードによる吸収に対応している。図3に示すように、1100~1400cm-1付近の波形は、処理時間の経過と共に増加している。このことから、c-Cガスを100%とした場合、基板WのSiO膜上にアモルファスカーボンなどのCF系の膜が成膜される。
【0030】
次に、第3の成膜処理の成膜の結果を説明する。第3の成膜処理では、表面にSiO膜が露出した基板Wに対して、c-CガスとSFガスの比率を変え、c-CガスとSFガスを1:1(50%ずつ)とした処理ガスをチャンバ101内に供給すると共に基板Wの表面を励起して成膜を実施した。図4Aは、実施形態に係る第3の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。図4Aには、第3の成膜処理を開始した直後(0min)と、第3の成膜処理を実施している途中の2分(2min)、4分(4min)、6分(6min)、8分(8min)、10分(10min)の各タイミングでの波数ごとに吸光度が示されている。赤外吸収スペクトルの1070cm-1付近の波形は、SiOの成分に対応している。図4Aに示すように、1070cm-1付近の波形は、処理時間の経過と共に低下している。このことから、c-CガスとSFガスを1:1とした場合、基板WのSiO膜がエッチングされる。図4Bは、実施形態に係る第3の成膜処理の処理結果の一例を示す図である。図4Bには、基板Wに対する第3の成膜処理の処理時間と、基板Wの表面に露出したSiO膜の膜厚の変化が示されている。図4Bに示すように、処理時間の経過と共に、SiO膜の膜厚の膜厚が減少しており、SiO膜がエッチングされる。
【0031】
次に、第4の成膜処理の成膜の結果を説明する。第4の成膜処理では、表面にCu膜が露出した基板Wに対して、c-CガスとSFガスの比率を変え、c-CガスとSFガスを1:1(50%ずつ)とした処理ガスをチャンバ101内に供給すると共に基板Wの表面を励起して成膜を実施した。図5には、第4の成膜処理を開始した直後(0min)と、第4の成膜処理を実施している途中の2分(2min)、4分(4min)、6分(6min)、8分(8min)、10分(10min)の各タイミングでの波数ごとに吸光度が示されている。赤外吸収スペクトルの1100~1400cm-1付近の波形は、フッ素を含有するアモルファスカーボンのCF系(CFx(x=1~3))の振動モードによる吸収に対応している。図5に示すように、1100~1400cm-1付近の波形は、処理時間の経過と共に増加している。このことから、c-CガスとSFガスを1:1(50%ずつ)とした場合、基板WのCu膜上にアモルファスカーボンなどのCF系の膜が成膜される。
【0032】
図4A図4B及び図5に示した第3及び第4の成膜処理の結果から、処理ガスに含まれるc-CガスとSFガスを1:1とした場合、基板WのCu膜上にアモルファスカーボンなどのCF系の膜が成膜される。一方、基板WのSiO膜がエッチングされる。このことから、処理ガスに含まれるc-CガスとSFガスの比率を1:1とした場合、Cu膜とSiO膜が表面に露出した基板Wに対して、マスクを設けることなく、Cu膜上に選択的に成膜できる。実施形態に係る成膜方法の成膜処理では、処理ガスに含まれるc-CガスとSFガスの比率を1:3~3:1とすることにより、マスクを設けることなく、基板WのCu膜上に選択的に成膜できる。
【0033】
次に、実施形態に係る成膜方法の成膜処理を用いた半導体デバイスの製造工程の一例を説明する。図6は、半導体デバイスの製造工程の一例を説明する図である。図6の(A)~(E)には、各工程での基板Wの変化が模試的に示されている。図6(A)には、基板Wの表面に露出したCu膜200と、SiO膜201が示されている。実施形態に係る成膜方法の成膜処理により、基板WのCu膜200上に選択的にa-C:F膜202を成膜する(図6(B))。このa-C:F膜202を次プロセスによる成膜時のプロセスブロックとして使用する。例えば、a-C:F膜202をブロック層として、基板Wに、第2の絶縁膜203を成膜する(図6(C))。例えば、成膜装置100は、a-C:F膜202を成膜した後、ガス供給機構103から絶縁膜の原料ガスをチャンバ101内に供給し、a-C:F膜202をマスクとして、SiO膜201上に第2の絶縁膜203を成膜する。この時、a-C:F膜202上にも絶縁膜203が僅かに堆積される。次に、基板Wに対してブロック層除去プロセスを実施して基板Wからブロック層としたa-C:F膜202を除去する(図6(D))。これにより、Cu膜200が露出する。次に、基板Wに対してメタルによる配線層204の埋め込み処理を実施する(図6(E))。このように、実施形態に係る成膜方法の成膜処理による基板WのCu膜200上に選択的に成膜を用いることで、図6の(A)~(E)のような工程を実現できる。
【0034】
次に、実施形態に係る成膜方法の成膜処理を行う際の処理動作について説明する。図7は、実施形態に係る成膜方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0035】
成膜装置100では、金属膜と絶縁膜が表面に露出した基板Wがステージ102に載置される(S10)。例えば、Cu膜とSiO膜が表面に露出した基板Wがステージ102に載置される。
【0036】
成膜装置100では、基板Wを、c-CガスとSFガスの分子が基板Wの表面に凝縮する温度に冷却する(S11)。例えば、基板Wを80[K]に冷却する。
【0037】
成膜装置100では、ガス供給機構103から、c-CガスとSFガスを含んだ処理ガスをチャンバ101内に供給すると共に、励起機構105により、基板Wの表面を励起して、金属膜上に炭素含有膜を成膜する(S12)。S12の工程は、必要な膜厚が得られる処理時間実施し、処理を終了する。
【0038】
これにより、本実施形態に係る成膜装置100は、マスクを設けることなく、金属膜と絶縁膜が表面に露出した基板Wの金属膜上に選択的に成膜を行うことができる。
【0039】
なお、上記の実施形態では、励起機構105が、希ガス(He、Arなど)やHガスあるいはNガスなどの放電プラズマを利用して活性化し、生じた低速電子や希ガスの準安定励起種(He*、Ar*など)あるいは、H原子やN原子をチャンバ101内に供給することで、基板Wにエネルギーを与えて基板Wの表面を励起する場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。励起機構105は、紫外線を発生する紫外線源を有し、紫外線源で発生した紫外線を基板Wに照射することで、基板Wにエネルギーを与えて基板Wの表面を励起するものとしてもよい。また、励起機構105は、チャンバ101内に希ガスのプラズマを生成することで基板Wにエネルギーを与えて基板Wの表面を励起するものとしてもよい。
【0040】
以上のように、実施形態に係る成膜方法は、選択的に成膜を行う。成膜方法は、冷却工程(S11)と、成膜工程(S12)とを有する。冷却工程は、金属膜と絶縁膜が表面に露出し、チャンバ内に支持された基板Wを、c-CガスとSFガスの分子が基板Wの表面に凝縮する温度に冷却する。成膜工程は、c-CガスとSFガスを含んだ処理ガスをチャンバ101内に供給すると共に基板Wの表面を励起して、金属膜上に炭素含有膜を成膜する。これにより、実施形態に係る成膜方法は、マスクを設けることなく、金属膜と絶縁膜が表面に露出した基板Wの金属膜上に選択的に成膜を行うことができる。
【0041】
また、冷却工程は、基板Wを120[K]以下に冷却する。これにより、実施形態に係る成膜方法は、c-CガスとSFガスの分子を基板Wの表面に凝縮させることができる。
【0042】
また、金属膜は、Cu膜である。絶縁膜は、SiO膜である。これにより、実施形態に係る成膜方法は、マスクを設けることなく、基板WのCu膜上に選択的に成膜を行うことができる。
【0043】
また、成膜工程は、c-CガスとSFガスを1:3~3:1の比率で含んだ処理ガスをチャンバ101内に供給する。これにより、実施形態に係る成膜方法は、マスクを設けることなく、金属膜と絶縁膜が表面に露出した基板Wの金属膜上に選択的に成膜を行うことができる。
【0044】
また、実施形態に係る成膜方法は、絶縁膜成膜工程をさらに有する。絶縁膜成膜工程は、炭素含有膜を成膜した後、絶縁膜の原料ガスをチャンバ101内に供給し、炭素含有膜をマスクとして、絶縁膜上に第2の絶縁膜を成膜する。これにより、実施形態に係る成膜方法は、絶縁膜上に選択的に第2の絶縁膜を成膜できる。
【0045】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上述した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上述した実施形態は、請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0046】
例えば、上記の実施形態では、基板Wを半導体ウエハとした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。基板Wは、何れであってもよい。
【0047】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 成膜装置
101 チャンバ
102 ステージ
103 ガス供給機構
104 排気装置
105 励起機構
112 ゲートバルブ
113 分子ターボポンプ
114 補助排気ポンプ
150 制御部
151 ユーザインターフェース
152 記憶部
200 Cu膜
201 SiO
W 基板
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7