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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002201
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】試料観察装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20221227BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20221227BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/2251
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103285
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土居 悠輝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直明
(72)【発明者】
【氏名】原田 実
(72)【発明者】
【氏名】中山 英樹
(72)【発明者】
【氏名】嶺川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕治
【テーマコード(参考)】
2G001
4M106
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA07
2G001GA06
2G001JA11
2G001KA03
2G001LA11
4M106AA01
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DJ14
4M106DJ20
4M106DJ27
5L096BA03
5L096EA35
5L096FA60
5L096FA69
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】試料観察装置に関して、ユーザが簡易に欠陥検出に係わる精度を向上できる技術を提供する。
【解決手段】試料観察装置は、試料観察処理(ステップS705~S708)よりも前に行われる学習処理において、欠陥位置情報で示す欠陥位置毎に、第1の撮像条件での学習用低画質画像を取得し、撮像枚数の設定値に基づいて、欠陥位置毎の学習用低画質画像に対応付けられた複数の学習用高画質画像の撮像の枚数および複数の撮像点を決定し、第2の撮像条件での複数の学習用高画質画像を取得し(ステップS702)、学習用低画質画像、および複数の学習用高画質画像を用いて、高画質画像推定モデルを学習し(ステップS703)、高画質画像推定モデルを用いて、試料観察処理の欠陥検出に係わるパラメータを調整する(ステップS704)。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、
高画質画像推定モデルを学習する学習処理と、欠陥検出を行う試料観察処理と、を実行するプロセッサと、
を備える試料観察装置であって、
(A)前記学習処理は:
(A1)学習用試料に関する1以上の学習用欠陥位置を取得し、
(A2)前記学習用欠陥位置毎に、第1の撮像条件での学習用低画質画像を取得し、
(A3)学習用高画質画像の撮像枚数に係る第1設定値を取得し、
(A4)前記学習用欠陥位置毎に:
(A4a)前記第1設定値に基づいて、前記学習用高画質画像の撮像枚数を決定し、
(A4b)(A4a)で決定した撮像枚数に基づいて、前記学習用高画質画像を撮像する位置である、1以上の撮像点を決定し、
(A4c)(A4b)で決定した1以上の前記撮像点の各々について、第2の撮像条件での前記学習用高画質画像を取得し、
(A5)前記学習用低画質画像、および前記学習用高画質画像を用いて、前記高画質画像推定モデルを学習し、
(A6)前記高画質画像推定モデルを用いて、欠陥検出パラメータを調整し、
(B)前記試料観察処理は、調整後の前記欠陥検出パラメータに基づいて:
(B1)前記第1の撮像条件で、観察対象試料の欠陥位置の第1検査画像を取得し、
(B2)前記第1検査画像に基づいて、前記観察対象試料の欠陥候補を検出する、
試料観察装置。
【請求項2】
請求項1記載の試料観察装置において、
前記プロセッサは、ユーザによる入力に基づいて、前記撮像枚数に係わる前記第1設定値を設定する、
試料観察装置。
【請求項3】
請求項1記載の試料観察装置において、
前記プロセッサは、前記撮像点を決定する際に、
前記学習用低画質画像中の欠陥候補の特徴量に基づいて、前記欠陥候補毎の優先度を決定し、
前記欠陥候補毎の優先度に基づいて、前記撮像枚数以下となるように、前記学習用低画質画像の複数の欠陥候補から前記第2の撮像条件で撮像する複数の欠陥候補を選択し、
前記選択した複数の欠陥候補を撮像するための前記撮像点を決定する、
試料観察装置。
【請求項4】
請求項3記載の試料観察装置において、
前記プロセッサは、前記撮像点を決定する際に、
前記学習用低画質画像中にいくつかの欠陥候補が近在している場合に、前記撮像点を中心とした領域が、前記いくつかの欠陥候補を内包する1つの領域となるように、前記撮像点を決定する、
試料観察装置。
【請求項5】
請求項1記載の試料観察装置において、
前記学習処理は、
前記学習用欠陥位置毎に、前記第1の撮像条件で、前記学習用低画質画像に対応付けられた、欠陥を含まない学習用参照画像を取得し、
前記学習用参照画像を用いて、前記モデルを学習し、
前記試料観察処理は、
前記観察対象試料の欠陥位置毎に、前記第1の撮像条件で、前記第1検査画像に対応付けられた、欠陥を含まない第1参照画像を取得し、
前記第1検査画像と前記第1参照画像との比較に基づいて、前記欠陥候補の位置および特徴量を算出する、
試料観察装置。
【請求項6】
請求項5記載の試料観察装置において、
前記プロセッサは、
前記学習用参照画像を取得する際に、前記第1の撮像条件で前記撮像装置により撮像することで前記学習用参照画像を取得し、
前記第1参照画像を取得する際に、前記第1の撮像条件で前記撮像装置により撮像することで前記第1参照画像を取得する、
試料観察装置。
【請求項7】
請求項5記載の試料観察装置において、
前記プロセッサは、
前記学習用参照画像を取得する際に、前記学習用低画質画像から前記学習用参照画像を合成し、
前記第1参照画像を取得する際に、前記第1検査画像から前記第1参照画像を合成する、
試料観察装置。
【請求項8】
請求項5記載の試料観察装置において、
前記プロセッサは、前記欠陥検出パラメータの調整の際に、
前記学習用低画質画像から、前記欠陥候補について、画像を切り出し、
切り出された前記画像から、前記高画質画像推定モデルを用いて前記学習用高画質画像を推定し、または、前記取得された学習用高画質画像から前記欠陥候補を含んだ学習用高画質画像を選択し、
前記学習用参照画像から、前記欠陥候補に対応付けられた位置について、前記高画質画像推定モデルを用いて前記学習用参照画像を推定し、または、前記学習用高画質画像から前記学習用参照画像を合成し、
前記学習用高画質画像と前記学習用参照画像とを用いて、前記欠陥候補について、欠陥か否かを弁別することで、前記学習用高画質画像中の欠陥位置を決定し、
決定された前記欠陥位置を検出可能なパラメータを評価に基づいて選択する、
試料観察装置。
【請求項9】
請求項8記載の試料観察装置において、
前記プロセッサは、前記学習用低画質画像、前記学習用高画質画像、前記第1検査画像からの前記高画質画像推定モデルによる高画質検査画像の推定結果、前記欠陥検出パラメータの調整結果、および、前記欠陥検出パラメータの調整後の前記第1検査画像中の検出された欠陥候補に対応した欠陥位置を画面に表示させる、
試料観察装置。
【請求項10】
撮像装置と、高画質画像推定モデルを学習する学習処理と、欠陥検出を行う試料観察処理と、を実行するプロセッサと、を備える試料観察装置における、試料観察方法であって、
前記試料観察装置により実行されるステップとして、
(A)前記学習処理は:
(A1)学習用試料に関する1以上の学習用欠陥位置を取得し、
(A2)前記学習用欠陥位置毎に、第1の撮像条件での学習用低画質画像を取得し、
(A3)学習用高画質画像の撮像枚数に係る第1設定値を取得し、
(A4)前記学習用欠陥位置毎に:
(A4a)前記第1設定値に基づいて、前記学習用高画質画像の撮像枚数を決定し、
(A4b)(A4a)で決定した撮像枚数に基づいて、前記学習用高画質画像を撮像する位置である、1以上の撮像点を決定し、
(A4c)(A4b)で決定した1以上の前記撮像点の各々について、第2の撮像条件での前記学習用高画質画像を取得し、
(A5)前記学習用低画質画像、および前記学習用高画質画像を用いて、前記高画質画像推定モデルを学習し、
(A6)前記高画質画像推定モデルを用いて、欠陥検出パラメータを調整し、
(B)前記試料観察処理は、調整後の前記欠陥検出パラメータに基づいて:
(B1)前記第1の撮像条件で、観察対象試料の欠陥位置の第1検査画像を取得し、
(B2)前記第1検査画像に基づいて、前記観察対象試料の欠陥候補を検出する、
試料観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料観察技術に関し、例えば半導体ウェハ等の試料における欠陥や異常等(欠陥と総称する場合がある)および回路パターン等を観察する機能を有する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体ウェハの製造では、製造プロセスを迅速に立ち上げて、高い歩留まりの量産体制に早期に移行させることが、収益確保のためには重要である。この目的のために、製造ラインには、各種の検査装置、観察装置、および計測装置等が導入されている。試料である半導体ウェハは、例えば検査装置において欠陥の検査が行われ、半導体ウェハの面における欠陥の位置を示す座標情報が、欠陥位置情報として、検査装置から出力される。試料観察装置は、その欠陥位置情報に基づいて、対象の半導体ウェハにおける欠陥の位置や部位を高解像度で撮像する。試料観察装置としては、例えば走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いた観察装置(レビューSEMとも呼ばれる)が使用されている。
【0003】
レビューSEMによる観察作業は、半導体ウェハの量産ラインでは、自動化が望まれている。その自動化のために、レビューSEMを含むシステムは、自動欠陥レビュー(Automatic Defect Review:ADR)機能と、自動欠陥分類(Automatic Defect Classification:ADC)機能とを備えている。ADR機能は、試料内の欠陥位置における画像を自動で収集する欠陥画像自動収集処理を行う機能である。ADC機能は、収集された欠陥画像から欠陥を自動で分類する欠陥画像自動分類処理を行う機能である。
【0004】
検査装置から供給された欠陥位置情報の欠陥座標には、誤差が含まれている。そのため、レビューSEMは、ADR機能において、欠陥位置情報の欠陥座標を中心として、まず第1の撮像条件で広視野・低倍率に撮像し、これにより得た画像(言い換えると低画質画像)から、欠陥を再検出する。レビューSEMは、この再検出により得られた欠陥部位を、ADR機能において、第2の撮像条件で狭視野・高倍率に撮像し、これにより得た画像(言い換えると高画質画像)を、観察用画像として出力する。このように、第1段階では広視野の画像で欠陥を探索し、第2段階では高画質の画像で欠陥を詳細に観察するといった2段階の画像で観察する方法がある。なお、上記画質などの高低は、相対的な定義であり、撮像条件に応じた画質などであり、例えば第2の撮像条件での倍率が、第1の撮像条件での倍率よりも高いことを意味する。画質(画像品質)の概念は、倍率や解像度、シグナル/ノイズ比などを含む。
【0005】
上記試料観察装置によって撮像された画像(検査画像とも記載)から欠陥を判定・検出する方法としては以下がある。その方法は、欠陥部位と同一の回路パターンが形成されている領域を撮像した画像を参照画像として、欠陥部位を撮像した検査画像と欠陥を含まない参照画像とを比較することで欠陥を判定・検出する方法である。また、特開2009-250645号公報(特許文献1)には、検査画像を用いて参照画像を合成することで、参照画像の撮像を省略する方法について記載がある。
【0006】
ADR機能においては、半導体ウェハに形成されたパターンの外観に応じて、欠陥検出に係わる処理パラメータを調整する必要がある。この処理パラメータを自動調整する方法としては、ユーザによって予め教示された欠陥部位を検出可能な処理パラメータを探索する方法がある。また、欠陥部位を撮像した検査画像と複数枚の参照画像とを用いて、欠陥とニュイサンスを高精度に弁別可能な処理パラメータを探索する方法がある。
【0007】
また、ADR機能のスループットを向上させるためには、高解像度の画像を推定することで撮像を省略する方法がある。この方法では、まず広視野で撮像した検査画像と、高倍率で撮像した高画質画像とを得て、それらの関係性を学習することでモデルを作成する。そして、この方法では、ADRを実行する際に、検査画像のみを撮像し、学習済みモデルを使用して、高画質画像である観察用画像を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-250645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば半導体デバイス製造では、デバイス性能向上や製造コスト削減のため、集積密度を高める試みが継続的に行われており、半導体ウェハ上に形成する回路パターン寸法の微細化が進められている。それに伴い、デバイスの動作に致命的となる欠陥の寸法も微小化する傾向にある。そのため、レビューSEMのADR機能においても、微小な欠陥を視認可能な観察用画像として高画質画像を得ることが求められている。そのために、レビューSEMのADR機能等に関する従来技術としては、機械学習を用いて、低画質の検査画像から高画質の観察用画像を推定して得る方法がある。
【0010】
しかしながら、この方法を用いる従来技術は、精度の観点で改善余地がある。この方法では、低画質の検査画像から高画質の観察用画像を推定するためのモデルの学習は、欠陥検出に係わる処理パラメータの調整前に行われている。この方法では、その調整前の初期設定(デフォルト)の処理パラメータを用いて、学習用の検査画像と高画質画像を取得する。この場合、検査画像中に存在する欠陥が高画質画像中に写り込まない可能性がある。そのため、モデルの精度が低下し、高精度の推定が出来ない。
【0011】
本発明の目的は、試料観察装置の技術に関して、ユーザが簡易に欠陥検出に係わる精度を向上できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のうち代表的な実施の形態は以下に示す構成を有する。実施の形態の試料観察装置は、撮像装置と、高画質画像推定モデルを学習する学習処理と、欠陥検出を行う試料観察処理と、を実行するプロセッサと、を備える試料観察装置であって、(A)前記学習処理は:(A1)学習用試料に関する1以上の学習用欠陥位置を取得し、(A2)前記学習用欠陥位置毎に、第1の撮像条件での学習用低画質画像を取得し、(A3)学習用高画質画像の撮像枚数に係る第1設定値を取得し、(A4)前記学習用欠陥位置毎に:(A4a)前記第1設定値に基づいて、前記学習用高画質画像の撮像枚数を決定し、(A4b)(A4a)で決定した撮像枚数に基づいて、前記学習用高画質画像を撮像する位置である、1以上の撮像点を決定し、(A4c)(A4b)で決定した1以上の前記撮像点の各々について、第2の撮像条件での前記学習用高画質画像を取得し、(A5)前記学習用低画質画像、および前記学習用高画質画像を用いて、前記高画質画像推定モデルを学習し、(A6)前記高画質画像推定モデルを用いて、欠陥検出パラメータを調整し、(B)前記試料観察処理は、調整後の前記欠陥検出パラメータに基づいて:(B1)前記第1の撮像条件で、観察対象試料の欠陥位置の第1検査画像を取得し、(B2)前記第1検査画像に基づいて、前記観察対象試料の欠陥候補を検出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、試料観察装置の技術に関して、ユーザが簡易に欠陥検出に係わる精度を向上できる。上記した以外の課題、構成および効果等については、発明を実施するための形態において示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1の試料観察装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態1で、上位制御装置の機能ブロック構成を示す図である。
図3】実施の形態1で、SEMの検出器の配置を斜め上方向から見た図である。
図4】実施の形態1で、SEMの検出器の配置をz軸方向から見た図である。
図5】実施の形態1で、SEMの検出器の配置をy軸方向から見た図である。
図6】検査装置の欠陥位置情報で示される、半導体ウェハ面における欠陥座標の例を模式的に示す説明図である。
図7】実施の形態1の試料観察装置の全体の処理を示すフロー図である。
図8】実施の形態1で、欠陥検出のステップS707に関する説明図である。
図9】実施の形態1で、画像取得のステップS702のフロー図である。
図10】実施の形態1で、撮像枚数決定に関する画面例を示す図である。
図11】実施の形態1で、撮像点決定のステップS905のフロー図である。
図12】実施の形態1で、撮像点決定処理に関する説明図である。
図13】実施の形態1で、高画質画像推定モデルの構成例を示す説明図である。
図14】実施の形態1で、パラメータ調整のステップS704のフロー図である。
図15】実施の形態1で、高画質検査画像の取得処理に関する説明図である。
図16】実施の形態1で、高画質検査画像の推定処理の例を示す模式図である。
図17】実施の形態1で、高画質参照画像の推定処理の例を示す模式図である。
図18】実施の形態1で、高画質参照画像の合成処理の例を示す模式図である。
図19】実施の形態1で、画像取得に関する画面例を示す図である。
図20】実施の形態1で、モデル学習およびパラメータ調整に関する画面例を示す図である。
図21】実施の形態2で、上位制御装置の機能ブロック構成を示す図である。
図22】実施の形態2で、試料観察装置の全体の処理を示すフロー図である。
図23】実施の形態2で、画像取得のステップS2102のフロー図である。
図24】実施の形態3で、上位制御装置の機能ブロック構成を示す図である。
図25】実施の形態3で、試料観察装置の全体の処理を示すフロー図である。
図26】実施の形態3で、画像取得のステップS2502のフロー図である。
図27】実施の形態3で、撮像点決定処理に関する説明図である。
図28】実施の形態3で、モデルの構成例を示す説明図である。
図29】実施の形態3で、パラメータ調整のステップS2504のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、各構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、および範囲等を表していない場合がある。説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。プロセッサは、所定の演算が可能なデバイスや回路で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてインストールされてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えばメモリカード)等でもよい。プログラムは、複数のモジュールから構成されてもよい。コンピュータシステムは、1台の装置に限らず、複数台の装置によって構成されてもよい。コンピュータシステムは、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム、IoTシステム等で構成されてもよい。各種のデータや情報は、例えばテーブルやリスト等の構造で構成されるが、これに限定されない。識別情報、識別子、ID、名、番号等の表現は互いに置換可能である。
【0016】
<実施の形態>
実施の形態の試料観察装置は、半導体ウェハ等の試料に形成された回路パターンや欠陥を観察する装置である。試料観察装置は、検査装置が作成・出力した欠陥位置情報の欠陥位置毎に第1の撮像条件で検査画像(言い換えると低画質画像)を取得する検査画像取得部と、欠陥位置毎に第2の撮像条件で複数の高画質画像を取得する高画質画像取得部と、検査画像を用いて欠陥候補の位置と特徴量を算出する欠陥検出部と、検査画像と高画質画像とを用いて第1の撮像条件で取得した画像から第2の撮像条件で取得した画像を推定するモデル(高画質画像推定モデル)を学習するモデル学習部と、そのモデルを用いて欠陥検出部の欠陥検出処理に係わるパラメータを調整するパラメータ調整部とを備える。
【0017】
実施の形態の試料観察方法は、実施の形態の試料観察装置において実行されるステップを有する方法であり、上記各部に対応付けられるステップを有する。試料観察装置での処理や対応するステップは、大別して、試料観察処理(言い換えると欠陥検出処理など)と、学習処理とがある。学習処理は、試料観察処理で用いる画像に対応させて、機械学習によるモデル学習を行い、試料観察処理に係わるパラメータを調整する処理である。
【0018】
以下では、試料観察装置として、半導体ウェハを試料として半導体ウェハの欠陥等を観察する装置を例に説明する。この試料観察装置は、欠陥検査装置からの欠陥位置情報の欠陥座標に基づいて試料を撮像する撮像装置を備える。以下では、撮像装置としてSEMを用いる例を説明する。撮像装置は、SEMに限定されず、SEM以外の装置、例えばイオン等の荷電粒子を用いた撮像装置としてもよい。
【0019】
<実施の形態1>
図1図20を用いて、実施の形態1の試料観察装置等について説明する。比較例の試料観察装置においては、試料欠陥観察のためのADR処理に係わる処理パラメータの調整前に高画質画像推定モデルの学習用の高画質画像を収集する。この構成では、高画質画像中に欠陥が写り込まない場合があり、その場合にはモデルの精度が低下する。そこで、実施の形態1の試料観察装置(例えば図2)は、高画質画像取得部206を備える。高画質画像取得部206は、高画質画像の撮像枚数を決定する撮像枚数決定部207と、欠陥検出部215で算出した欠陥候補の位置と特徴量、および撮像枚数に基づいて、高画質画像の複数の撮像点を決定する撮像点決定部208と、決定した複数の撮像点の撮像点毎に第2の撮像条件での高画質画像を撮像する高画質画像撮像部209とを有する。これにより、モデルの精度を向上でき、モデルを用いたパラメータの調整によって、試料欠陥観察の精度を向上できる。
【0020】
実施の形態1では、ADR機能の欠陥検出処理(後述の図7のステップS707)は、一般的な画像処理(即ち、検査画像と参照画像との比較による差分の判定等)を用いて実現される。実施の形態1では、その欠陥検出処理のためのパラメータを調整(ステップS704)するために、機械学習(ステップS703)を用いる。なお、前述のように、2段階の画像において、画質などの高低の関係は、相対的な定義である。また、その画質などを規定する撮像条件(言い換えると画質条件)は、実際に撮像装置で撮像する場合に限らず、処理によって画像を作成する場合にも適用される条件とする。
【0021】
[1-1.試料観察装置]
図1は、実施の形態1の試料観察装置1の構成を示す。試料観察装置1は、大別して、撮像装置2と、上位制御装置3とを有して構成されている。試料観察装置1は具体例としてレビューSEMである。撮像装置2は具体例としてSEM101である。撮像装置2には上位制御装置3が結合されている。上位制御装置3は、撮像装置2等を制御する装置であり、言い換えるとコンピュータシステムである。試料観察装置1等は、必要な機能ブロックや各種のデバイスを備えているが、図面では必須な要素を含む一部を図示している。図1の試料観察装置1を含む全体は、言い換えると欠陥検査システムとして構成されている。上位制御装置3には、記憶媒体装置4や入出力端末6が接続されており、ネットワークを介して欠陥分類装置5や検査装置7等が接続されている。
【0022】
試料観察装置1は、自動欠陥レビュー(ADR)機能を有する装置またはシステムである。本例では、予め、外部の検査装置7において試料を検査した結果として欠陥位置情報8が作成されており、検査装置7から出力・提供されたその欠陥位置情報8が予め記憶媒体装置4に格納されている。上位制御装置3は、欠陥観察に係わるADR処理の際に、記憶媒体装置4からその欠陥位置情報8を読み出して参照する。撮像装置2であるSEM101は、試料9である半導体ウェハの画像を撮像する。試料観察装置1は、撮像装置2で撮像した画像に基づいて、ADR処理を行って複数の高画質検査画像を得る。
【0023】
欠陥分類装置5(言い換えると欠陥画像分類装置)は、自動欠陥分類(ADC)機能を有する装置またはシステムであり、試料観察装置1によるADR機能を用いた欠陥観察処理結果の情報・データに基づいて、ADC処理を行って、欠陥(対応する欠陥画像)を分類した結果を得る。欠陥分類装置5は、分類した結果の情報・データを、例えばネットワークに接続された図示しない他の装置に供給する。なお、図1の構成に限らず、試料観察装置1に欠陥分類装置5が併合された構成等も可能である。
【0024】
上位制御装置3は、制御部102、記憶部103、演算部104、外部記憶媒体入出力部105(言い換えると入出力インタフェース部)、ユーザインタフェース制御部106、およびネットワークインタフェース部107等を備える。それらの構成要素は、バス114に接続されており、相互に通信や入出力が可能である。なお、図1の例では、上位制御装置3が1つのコンピュータシステムで構成される場合を示すが、上位制御装置3が複数のコンピュータシステム(例えば複数のサーバ装置)等で構成されてもよい。
【0025】
制御部102は、試料観察装置1の全体を制御するコントローラに相当する。記憶部103は、プログラムを含む各種の情報やデータを記憶し、例えば磁気ディスクや半導体メモリ等を備える記憶媒体装置で構成される。演算部104は、記憶部103から読み出されたプログラムに従って演算を行う。制御部102や演算部104は、プロセッサやメモリを備えている。外部記憶媒体入出力部(言い換えると入出力インタフェース部)105は、外部の記憶媒体装置4との間でデータの入出力を行う。
【0026】
ユーザインタフェース制御部106は、ユーザ(言い換えるとオペレータ)との間で情報・データの入出力を行うためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を含むユーザインタフェースを提供・制御する部分である。ユーザインタフェース制御部106には入出力端末6が接続されている。ユーザインタフェース制御部106には、他の入力デバイスや出力デバイス(例えば表示デバイス)が接続されてもよい。ネットワークインタフェース部107にはネットワーク(例えばLAN)を介して欠陥分類装置5や検査装置7等が接続されている。ネットワークインタフェース部107は、ネットワークを介して欠陥分類装置5等の外部装置との間の通信を制御する通信インタフェースを有する部分である。外部装置の他の例は、DBサーバやMES(製造実行システム)等が挙げられる。
【0027】
ユーザは、入出力端末6を用いて、試料観察装置1(特に上位制御装置3)に対し、情報(例えば指示や設定)を入力し、試料観察装置1から出力された情報を確認する。入出力端末6は、例えばPCが適用でき、キーボード、マウス、ディスプレイ等を備える。入出力端末6は、ネットワークに接続されたクライアントコンピュータとしてもよい。ユーザインタフェース制御部106は、後述のGUIの画面を作成し、入出力端末6の表示デバイスで表示させる。
【0028】
演算部104は、例えばCPU、ROM、およびRAM等によって構成され、記憶部103から読み出されたプログラムに従って動作する。制御部102は、例えばハードウェア回路またはCPU等によって構成される。制御部102がCPU等で構成される場合、制御部102も、記憶部103から読み出されたプログラムに従って動作する。制御部102は、例えばプログラム処理に基づいて各機能(後述の各機能ブロック)を実現する。記憶部103には、外部記憶媒体入出力部105を介して記憶媒体装置4からプログラム等のデータが供給・格納される。あるいは、記憶部103には、ネットワークインタフェース部107を介してネットワークからプログラム等のデータが供給・格納されてもよい。
【0029】
撮像装置2を構成するSEM101は、ステージ109、電子源110、検出器111、図示しない電子レンズ、偏向器112等を備える。ステージ109(言い換えると試料台)は、試料9である半導体ウェハが載置され、少なくとも水平方向に移動可能であるステージである。電子源110は、試料9に電子ビームを照射するための電子源である。図示しない電子レンズは、電子ビームを試料9面上に収束させる。偏向器112は、電子ビームを試料9上で走査するための偏向器である。検出器111は、試料9から発生した二次電子や反射電子等の電子・粒子を検出する。言い換えると、検出器111は、試料9面の状態を画像として検出する。本例では、検出器111として、図示のように複数の検出器(後述)を有する。
【0030】
SEM101の検出器111によって検出された情報(言い換えると画像信号)は、上位制御装置3のバス114に供給される。その情報は、演算部104等によって処理される。本例では、上位制御装置3は、SEM101のステージ109、偏向器112、および検出器111等を制御する。なお、ステージ109等の駆動のための駆動回路等については図示を省略している。試料9に対する欠陥観察処理は、SEM101からの情報(言い換えると画像)を上位制御装置3であるコンピュータシステムが処理することで実現される。
【0031】
本システムは、以下のような形態としてもよい。上位制御装置3はクラウドコンピューティングシステム等のサーバとし、ユーザが操作する入出力端末6はクライアントコンピュータとする。例えば、機械学習に多くのコンピュータ資源が要求される場合には、クラウドコンピューティングシステム等のサーバ群において、機械学習処理を行わせるようにしてもよい。サーバ群とクライアントコンピュータとの間で処理機能を分担してもよい。ユーザは、クライアントコンピュータを操作し、クライアントコンピュータは、サーバに対し要求を送信する。サーバは、要求を受信し、要求に応じた処理を行う。例えば、サーバは、要求された画面(例えばWebページ)のデータを、応答としてクライアントコンピュータに送信する。クライアントコンピュータは、その応答のデータを受信し、表示デバイスの表示画面に画面(例えばWebページ)を表示する。
【0032】
[1-2.機能ブロック]
図2は、実施の形態1で、図1の上位制御装置3の制御部102、記憶部103、および演算部104により実現される機能ブロック構成例を示す。制御部102および演算部104には、プログラム処理に基づいて、図2のような各機能ブロックが構成され、記憶部103には、図2のような各記憶部が構成される。制御部102は、ステージ制御部201、電子ビームスキャン制御部202、検出器制御部203、参照画像取得部204、検査画像取得部205、および高画質画像取得部206を有する。高画質画像取得部206は、撮像枚数決定部207、撮像点決定部208、および高画質画像撮像部209を有する。演算部104は、欠陥検出部215、モデル学習部216、高画質画像推定部217、およびパラメータ調整部218を有する。
【0033】
ステージ制御部201は、図1のステージ109の移動や停止を制御する。電子ビームスキャン制御部202は、所定の視野内において電子ビームが照射されるように図1の偏光器112等を制御する。検出器制御部203は、電子ビームのスキャンに同期させて図1の検出器111からの信号をサンプリングし、サンプリングされた信号のゲインやオフセット等を調整し、デジタル画像を生成する。
【0034】
参照画像取得部204は、ステージ制御部201、電子ビームスキャン制御部202、および検出器制御部203を動作させ、欠陥観察処理で使用するための、欠陥を含まない参照画像を、第1の撮像条件で撮像することで取得する。検査画像取得部205は、ステージ制御部201、電子ビームスキャン制御部202、および検出器制御部203を動作させ、欠陥観察処理で使用する検査画像を、第1の撮像条件で撮像することで取得する。
【0035】
高画質画像取得部206は、検査画像取得部205で取得した検査画像に対応付けられる、複数枚の高画質画像を、第2の撮像条件で撮像することで取得する。高画質画像は、欠陥観察用の画像であり、試料9の面の欠陥や回路パターンの視認性が高いことが求められる。そのため、この高画質画像は、検査画像よりも高画質とされ、一般的に、第2の撮像条件は、第1の撮像条件と比べると、より高画質の画像を撮像できる条件とされる。例えば、第2の撮像条件は、第1の撮像条件と比べて、電子ビームの走査速度が遅く、画像の加算フレーム数が多く、画像解像度が高くなる。なお、撮像条件はこれに限定されない。
【0036】
記憶部103は、画像記憶部210、欠陥検出パラメータ記憶部211、高画質画像推定パラメータ記憶部212、撮像パラメータ記憶部213、および観察座標記憶部214を有する。画像記憶部210は、検出器制御部203によって生成されたデジタル画像(言い換えるとSEM101によって撮像された画像)を、付帯情報(言い換えると属性情報、メタデータ、管理情報など)とともに記憶し、演算部104によって生成された画像を記憶する。
【0037】
欠陥検出パラメータ記憶部211は、欠陥観察に必要な欠陥検出処理に係わるパラメータ(欠陥検出パラメータと記載する場合がある)を記憶する。高画質画像推定パラメータ記憶部212は、高画質画像推定モデルに係わるパラメータ(モデルパラメータと記載する場合がある)を記憶する。撮像パラメータ記憶部213は、SEM101において撮像する際の条件(撮像条件とも記載する)等の情報・データを、撮像パラメータとして記憶する。撮像条件は、前述の第1の撮像条件や第2の撮像条件を含み、予め設定可能である。撮像パラメータの例は、電子ビーム走査速度、画像加算フレーム数、画像解像度などが挙げられる。観察座標記憶部214は、欠陥位置情報8に基づいて入力された観察対象の欠陥位置の欠陥座標(観察座標とも記載する)等の情報・データを記憶する。
【0038】
欠陥検出部215は、検査画像内の欠陥候補の位置と特徴量を算出する。モデル学習部216は、第1の撮像条件で取得した画像から第2の撮像条件で取得した画像を推定する推定処理を行うために必要なモデル(高画質画像推定モデルとも記載する)の学習処理を行う。なお、モデルにおける推定の意味は、実際に撮像した画像ではない高画質画像を、推定によって作成・出力するという意味である。なお、モデル学習の際の使用画像と、学習済みモデルを用いた実際の欠陥観察の際の使用画像とでは異なる。
【0039】
高画質画像推定部217は、モデルを用いて、第1の撮像条件で取得した第1画像から第2の撮像条件で取得した第2画像への推定処理を行う。高画質画像推定部217は、第1画像をモデルに入力し、推定結果の出力として第2画像を得る。
【0040】
パラメータ調整部218は、欠陥観察に係わる処理パラメータ(言い換えるとレシピ等)を自動的に調整するパラメータ調整機能を実現する部分である。この処理パラメータは、欠陥検出パラメータと、モデルパラメータと、撮像パラメータとを含む。欠陥検出パラメータは、例えば欠陥判定用の閾値等が挙げられる。モデルパラメータは、高画質画像推定モデルを構成(言い換えると設定)するパラメータであり、例えば後述のCNN等を構成するパラメータである。
【0041】
[1-3.検出器]
図3は、実施の形態1で、SEM101におけるステージ109に対する検出器111の配置を斜め上方向から見た投影図である。本例では、検出器111として、5つの検出器301~305を有し、これらの検出器301~305が、図示のようにSEM101内の所定の位置に搭載されている。検出器111の数はこれに限定されない。図4は、上記検出器111の配置をz軸方向から見た平面図である。z軸は、鉛直方向と対応している。図5は、上記検出器111の配置をy軸方向から見た断面図である。x軸およびy軸は水平方向と対応しており、直交する2つの方向である。
【0042】
図3図5に示すように、検出器301および検出器302は、y軸に沿った位置P1および位置P2に配置され、検出器303および検出器304は、x軸に沿った位置P3および位置P4に配置されている。これらの検出器301~304は、特に限定しないが、z軸において同一の平面内に配置されている。検出器305は、z軸に沿い、検出器301~304が配置されたz軸の平面の位置に比べて、ステージ109の試料9から離れた位置P5に配置されている。なお、図4および図5では、検出器305を省略している。
【0043】
検出器301~304は、特定の放出角度(仰角および方位角)を持つ電子を選択的に検出できるように配置されている。検出器301は、試料9からy軸の方向(矢印で示す正方向)に沿って放出された電子を検出可能であり、検出器302は、試料9からy軸の方向(正方向に対し反転方向)に沿って放出された電子を検出可能である。同様に、検出器304は、x軸の方向(正方向)に沿って放出された電子を検出可能であり、検出器303は、x軸の反転方向に沿って放出された電子を検出可能である。これにより、あたかも各検出器に対して対向方向から光を照射したかのようなコントラストのついた画像を取得可能となる。検出器305は、主に試料9からz軸の方向に放出された電子を検出可能である。
【0044】
上記のように、実施の形態1では、複数の検出器が異なる軸に沿って複数の位置に配置された構成により、コントラストのついた画像を取得可能であるため、より精細な欠陥観察が可能である。このような検出器111の構成には限定されず、図3とは異なる位置や向きで配置された構成としてもよい。
【0045】
[1-4.欠陥位置情報]
図6は、外部の検査装置7からの欠陥位置情報8に含まれている欠陥座標で示される欠陥位置の例を示す模式図である。図6では、対象の試料9のx-y面において、欠陥座標を、点(×印)で図示している。試料観察装置1からみると、この欠陥座標は、観察対象となる観察座標である。ウェハWWは、円形の半導体ウェハ面領域を示す。ダイDIは、ウェハWWに形成されている複数のダイ(言い換えると半導体チップ)の領域を示す。
【0046】
実施の形態1の試料観察装置1は、このような欠陥座標に基づいて、試料9の面の欠陥部位の高精細な画像を高画質画像として自動的に収集するADR機能を有する。ただし、検査装置7からの欠陥位置情報8内の欠陥座標には、誤差が含まれている。言い換えると、検査装置7の座標系での欠陥座標と、試料観察装置1の座標系での欠陥座標との間には誤差が生じ得る。誤差の要因としては、ステージ109上の試料9の位置合わせの不完全さ等が挙げられる。
【0047】
そのため、実施の形態1の試料観察装置1は、まず欠陥位置情報8の欠陥座標を中心として第1の撮像条件で広視野・低倍率の画像(言い換えると相対的に低画質の画像)を検査画像として撮像し、その検査画像に基づいて、欠陥部位を再検出する。そして、試料観察装置1は、事前に学習した高画質画像推定モデルを用いて、その再検出した欠陥部位について、第2の撮像条件で狭視野・高倍率の高画質画像を推定して、その高画質画像を観察用画像として取得する。
【0048】
ウェハWWには規則的に複数のダイDIが含まれている。そのため、欠陥部位を持つダイDIに対して例えば隣接する他のダイDIを撮像した場合、欠陥部位を含まない良品ダイの画像を取得可能である。試料観察装置1における欠陥検出処理では、例えばこのような良品ダイ画像を参照画像として用いることができる。そして、欠陥検出処理では、参照画像と検査画像との間で、欠陥判定として、例えば濃淡(特徴量の例)の比較が行われ、濃淡の異なる箇所を欠陥部位として検出可能である。前述の欠陥検出パラメータの一例として、このように欠陥部位を判定する際の濃淡の差を定める閾値がある。
【0049】
[1-5.欠陥観察方法]
次に、試料観察装置1での欠陥観察方法について説明する。まず、欠陥観察方法・処理の全体を説明し、欠陥観察方法で実施される各ステップについて順に詳細説明する。なお、ステップの実行の主体は、主に上位制御装置3(特にプロセッサ)であり、適宜に図2の制御部102、記憶部103および演算部104等が用いられる。ステップで必要な情報は記憶部103から読み出され、ステップで生成した情報は記憶部103に記憶される。なお、学習処理時(後述の図7のステップS702~S707)に対象とする学習用試料と、試料観察処理時(後述のステップS705~S708)に対象とする観察対象試料とは、別な試料でもよく、対象とする位置は、同じ試料の別な位置でもよい。
【0050】
[1-6.全体処理]
図7は、実施の形態1で、試料観察装置1の全体の処理・動作として、欠陥観察処理フローを示す。図7はステップS701~S708を有する。欠陥観察の開始時、ステップS701で、上位制御装置3は、図2の欠陥検出パラメータ記憶部211、高画質画像推定パラメータ記憶部212、撮像パラメータ記憶部213等から、各パラメータ等の情報を読み込み、欠陥観察・欠陥検出処理に係わるレシピがセットアップ済みか判定する。レシピは、欠陥観察・欠陥検出処理を行うために必要な情報のセットであり、ADR機能に係わる処理パラメータ等を含む。レシピがセットアップされていない場合(No)にはステップS702、セットアップされている場合(Yes)にはステップS705へ移る。ステップS702~S704は、レシピのセットアップのための処理(前述の学習処理)である。ステップS705~S708は、実際の試料観察・欠陥検出の処理である。
【0051】
ステップS702は、画像取得ステップである。ステップS702では、上位制御装置3は、図2の参照画像取得部204、検査画像取得部205、および高画質画像取得部206を用いて、高画質画像推定モデルの学習(ステップS703)、および欠陥検出パラメータ調整(ステップS704)で使用する画像(学習用低画質画像および学習用高画質画像)を取得する。この際、上位制御装置3は、観察座標記憶部214から、画像を取得する対象となる図6のようなウェハWWの欠陥座標を読み込み、全ての欠陥座標に対応する画像を取得し、取得した画像を画像記憶部210に格納する。
【0052】
次に、ステップS703のモデル学習ステップが行われる。ステップS703では、上位制御装置3は、ステップS702で取得した画像を画像記憶部210から読み込み、モデル学習部216を用いて、高画質画像推定部217の処理に係わる高画質画像推定モデルの学習を実行する。学習されたモデルは、高画質画像推定パラメータ記憶部212に記憶される。
【0053】
次に、ステップS704のパラメータ調整ステップが行われる。ステップS704では、上位制御装置3は、パラメータ調整部218を用いて、欠陥検出パラメータを調整する。調整された欠陥検出パラメータは、欠陥検出パラメータ記憶部211に記憶される。
【0054】
欠陥観察前にレシピがセットアップ済みであった場合、または、ステップS702~S704によってセットアップされた後、ステップS705~S708のループ処理が実行される。このループ処理では、観察対象試料における欠陥座標で示す欠陥位置毎に、ステップS705~S708の処理が繰り返される。欠陥座標に対応する欠陥位置をiとし、i=1~Lとする。
【0055】
ステップS705は、参照画像取得ステップである。ステップS705で、上位制御装置3は、参照画像取得部204を用いて、欠陥位置(i)を含んだダイDIに隣接するダイDIを、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第1の撮像条件で撮像することで、検査画像(第1検査画像)に対応させた参照画像(第1参照画像)を取得する。
【0056】
ステップS706は、検査画像取得ステップである。ステップS706で、上位制御装置3は、検査画像取得部205を用いて、欠陥位置(i)における検査画像(第1検査画像)を、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第1の撮像条件で撮像することで取得する。これらのステップで取得した参照画像と検査画像は、対応付けて、画像記憶部210に保存される。
【0057】
ステップS707は、欠陥検出ステップである。ステップS707では、上位制御装置3は、欠陥検出部215において、ステップS705で得た参照画像と、ステップS706で得た検査画像と、欠陥検出パラメータ記憶部211に記憶されたセットアップ済み(言い換えると調整済み)の欠陥検出パラメータとを用いて、検査画像中からの欠陥検出を行う。欠陥検出パラメータは、後述する混合処理の際の画像混合比率などである。
【0058】
ステップS708は、高画質画像推定ステップである。ステップS708では、上位制御装置3は、ステップS707で得た検査画像中の欠陥検出結果の欠陥位置情報と、高画質画像推定部217とを用いて、高画質画像推定を行う。即ち、上位制御装置3は、検査画像からモデルに基づいて欠陥観察用の高画質画像を推定して得る。推定された高画質画像は、検査画像および参照画像と同様に、対応付けて、画像記憶部210に保存される。このステップS708の推定では、セットアップ済み、またはステップS703でセットアップされた高画質画像推定モデルを用いてもよい。また、試料観察処理では、このステップS708で得られた高画質画像を用いて、高精度な欠陥検出や欠陥の観察、解析、計測、評価などを実施してもよい。ステップS705~S708の処理が全ての欠陥位置(i)で行われると、本欠陥観察フローが終了する。
【0059】
[1-7.ステップS707 欠陥検出]
図8は、ステップS707の欠陥検出処理に関する説明図である。ステップS707で、欠陥検出部215は、検査画像801と参照画像802とのそれぞれに、ステップS805の前処理として、平滑化処理や、検出器111(301~305)で取得した画像の混合処理を行う。その後、ステップS808で、欠陥検出部215は、前処理された検査画像806と参照画像807との差分を計算し、その差分から第1の閾値を用いて二値化して二値化画像803を得る。
【0060】
ステップS809で、欠陥検出部215は、二値化画像803における、第1の閾値より大きいと判定された領域804毎に、異常度を計算する。欠陥検出部215は、異常度が第2の閾値より大きい箇所を欠陥811として検出して、二値化画像810(言い換えると欠陥検出結果画像)を得る。異常度としては、例えば、二値化領域内の差分画像の輝度値の和を用いることができる。図8の処理において、前述の欠陥検出パラメータの例は、前処理中の平滑化処理の際の平滑化度合い、混合処理の際の画像混合比率、第1の閾値や第2の閾値などである。図8の例では、欠陥検出結果の二値化画像810として、1つの欠陥811が検出された場合を示しているが、欠陥が検出されない場合や複数の欠陥が検出される場合もある。
【0061】
[1-8.ステップS702 画像取得]
図9は、ステップS702の画像取得処理に係わる詳しいフローを示す。実施の形態1の試料観察装置1では、欠陥観察のために、欠陥位置(i)毎に、欠陥部位を含む検査画像と、欠陥を含まない参照画像と、複数の高画質画像とが必要となる。そのため、このステップS702では、上位制御装置3は、検査画像取得部205と参照画像取得部204と高画質画像取得部206とを用いて、それらの画像(言い換えると学習用低画質画像、学習用参照画像、学習用高画質画像)を取得する。
【0062】
高画質画像は、検査画像に対して欠陥検出を行って検出した欠陥位置(対応する欠陥候補)について、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第2の撮像条件で撮像することで取得される。しかし、欠陥検出パラメータは、対象とする工程(半導体ウェハの製造工程)に調整されていないデフォルトパラメータである。デフォルトパラメータを用いて欠陥検出を行って検出された欠陥候補のうち、1つだけ(例えば異常度が最大となるもの)を撮像した場合、高画質画像中に欠陥が写り込まない可能性がある。そのため、実施の形態1では、検査画像から検出された欠陥候補毎に、撮像領域を変えながら、高画質画像を取得する。これにより、欠陥が写り込んだ高画質画像を取得する確率を高める。実施の形態1の試料観察装置1は、1枚の検査画像から複数の欠陥候補を検出した場合、欠陥候補毎に対応する高画質画像を撮像する。
【0063】
図9のフローはステップS901~S906を有する。まず、ステップS901では、上位制御装置3は、撮像枚数決定部207を用いて、撮像枚数(Nとする)を決定する。この撮像枚数(N)は、高画質画像(学習用高画質画像)を撮像する最大枚数である。実施の形態1では、高画質画像を撮像する最大枚数は、撮像したい欠陥候補の数である。ステップS901では、プロセッサは、1つの検査画像に対応付けられる撮像枚数(N)を、ユーザによる入力(言い換えると設定)によって決定する。
【0064】
図10は、実施の形態1で、ステップS901の撮像枚数決定の際のGUIの画面例を示す。ユーザは、この画面で、領域1001に、高画質画像を撮像する最大枚数に対応した撮像枚数(N)を入力する。入力後、ユーザは、決定ボタンの領域1002を押すことで、撮像枚数(N)を設定できる。この撮像枚数(N)は、撮像パラメータ記憶部213に記憶される。図10の例では、N=5である。
【0065】
図9で、ステップS901の後、上位制御装置3は、欠陥位置(i)毎に、ステップS902~S906のループ処理を行う。ステップS902は参照画像取得ステップである。ステップS902で、上位制御装置3は、参照画像取得部204を用いて、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第1の撮像条件で、欠陥位置(i)の参照画像(学習用参照画像)を取得する。ステップS903は検査画像取得ステップである。ステップS903で、上位制御装置3は、検査画像取得部205を用いて、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第1の撮像条件で、欠陥位置(i)の検査画像(学習用低画質画像)を取得する。ステップS902は前述のステップS705と同様の処理、ステップS903は前述のステップS706と同様の処理である。これらによって取得された画像は、画像記憶部210に保存される。
【0066】
ステップS904は欠陥検出ステップである。ステップS904では、上位制御装置32は、ステップS902およびステップS903で取得した検査画像および参照画像と、欠陥検出部215とを用いて、検査画像中からの欠陥検出処理を行う。ステップS904は前述のステップS707と同様の処理である。
【0067】
次に、ステップS905で、上位制御装置3は、撮像点決定部208を用いて、複数の高画質画像の1以上の撮像点を決定する。撮像点をjとし、j=1~Jとする。その後、ステップS906は、高画質画像撮像のループ処理である。このループ処理では、上位制御装置3は、高画質画像撮像部209を用いて、撮像点(j)毎の高画質画像の取得を繰り返す。ステップS906で、上位制御装置3は、欠陥位置(i)に対応付けられた撮像点(j)における高画質画像を、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第2の撮像条件で撮像することで、撮像点(j)毎の複数の高画質画像を得る。得られた高画質画像は、画像記憶部210に保存される。全ての欠陥位置(i)でのループ処理が完了すると、本画像取得フローが終了する。
【0068】
[1-9.ステップS905 撮像点決定]
図11は、ステップS905の高画質画像撮像点決定処理に関するフローを示す。図11のフローはステップS1101~1103を有する。まず、ステップS1101で、上位制御装置3は、検査画像(学習用低画質画像)中の欠陥候補の優先度を決定する。この優先度としては、例えば、欠陥検出のステップS707で用いた異常度を用いることができる。この異常度が大きいほど、検査画像と参照画像との差異が大きく、欠陥である確率が高いといえる。そのため、本例では、上位制御装置3は、この異常度が大きいほど、対応する欠陥候補の優先度を高くするように、計算・設定する。
【0069】
次に、ステップS1102で、上位制御装置3は、優先度の高い欠陥候補を選択する。具体的には、上位制御装置3は、ステップS901で決定された撮像枚数(N)を、撮像パラメータ記憶部213から読み込み、優先度の高い順に、撮像枚数(N)に対応させた最大N個の欠陥候補を選択する。例えば、欠陥画像内の欠陥候補数が100、撮像枚数(N)が10である場合、100個の欠陥候補から異常度の高い上位10個の欠陥候補が選択される。また例えば、欠陥候補数が5、N=10である場合には、5個の欠陥候補が選択される。
【0070】
次に、ステップS1103では、上位制御装置3は、ステップS1102で選択した最大N個の欠陥候補を撮像可能な1以上の撮像点(j)を決定する。撮像点は、例えば学習用高画質画像の撮像領域の中心点に対応する撮像位置である。
【0071】
[1-10.ステップS1103 撮像点決定]
図12は、ステップS1103での高画質画像の撮像点の決定処理に関する説明図である。まず左側に示す検査画像1202について説明する。検査画像1202は、欠陥位置(i)に応じた第1の撮像条件での検査画像である。図12では、検査画像内の欠陥候補の位置を、欠陥候補1201のように、白色塗りつぶしの×印で表している。本例では、1つの検査画像1202内に、複数、例えば5個の欠陥候補1201が含まれている。本例のように、検査画像1202内で複数の欠陥候補1201が近在している場合を考える。高画質画像撮像領域1203は、欠陥候補1201を含んだ高画質画像を撮像する領域であり、矩形で図示している。
【0072】
上位制御装置3は、各欠陥候補1201の位置座標を中心として、高画質画像撮像領域1203を決定する。すると、本例では、複数の欠陥候補1201が近在していることから、高画質画像撮像領域1203同士が大きく重なってしまう。例えば、a,bで示す2つの欠陥候補1201は相対的に近い位置にあり、それらに対応したA,Bで示す2つの高画質画像撮像領域1203は、相対的に重なる面積が大きい。この場合、重なった一部の領域を何度も撮像することになるので、撮像効率が悪く、結果、セットアップ時間が長くなってしまう。
【0073】
そのため、実施の形態1では、右側に示す検査画像1204のように図11の処理が行われる。上位制御装置3は、検査画像1204内で複数の欠陥候補1201が近在していることから、1つの高画質画像撮像領域1205内に複数の欠陥候補1201を内包できる場合には、それらの内包する複数の欠陥候補1201の重心を、高画質画像撮像点1206として決定する。高画質画像撮像点1206を、黒色塗りつぶしの×印で表している。高画質画像撮像領域1205は、高画質画像撮像点1206を中心とした矩形である。例えば、a,bで示す2つの欠陥候補1201については、それらに対応してxで示す高画質画像撮像点1206が決定されて、Xで示す1つの高画質画像撮像領域1205が決定される。
【0074】
上記処理により、左側の検査画像1202での5個の高画質画像撮像領域1203に対し、右側の検査画像1204での3個の高画質画像撮像領域1205が得られる。右側の検査画像1204では、高画質画像撮像領域1205同士の重なりが少なく、複数の欠陥候補1201(例えば5個)をより少ない枚数(例えば3枚)の高画質画像の撮像で捕捉可能となる。即ち、撮像効率が良く、結果、セットアップ時間を短くできる。
【0075】
ステップS1102で選択した全ての欠陥候補を撮像可能な高画質画像撮像領域1205および高画質画像撮像点1206(=j)が決定された後、その撮像点(j)の座標や個数等の情報は、撮像パラメータ記憶部213に記憶される。
【0076】
[1-11.ステップS703 モデル学習]
図13は、ステップS703のモデル学習に関する、高画質画像推定モデルの構成例に関する説明図である。実施の形態1での高画質画像推定処理においては、検査画像と高画質画像との対応関係を機械学習する。そして、その機械学習したモデルを用いて、第1の撮像条件で撮像した検査画像または参照画像から第2の撮像条件で撮像した画像が推定される。
【0077】
上位制御装置3は、ステップS903で撮像した検査画像に対し、ステップS905で決定した撮像点毎に、複数の高画質画像に対応する領域の切り出し・拡大処理を行い、切り出した画像と高画質画像との対を作成する。ここでは、検査画像から切り出した画像を、低画質画像と呼ぶ。低画質画像と高画質画像とのそれぞれは、同じ領域を含んでいるが、低画質画像は、撮像視野を拡大するような画像処理が施されている。そのため、この低画質画像は、高画質画像に比べて例えばぼやけた画像となる。
【0078】
実施の形態1では、機械学習の実装方法として、公知の深層学習を用いる。具体的には、モデルとして、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いる。図13は、CNNの具体的な一例として、3層構造を持つニューラルネットワークを用いた例を示す。
【0079】
図13のCNNにおいて、Yは、入力となる低画質画像を示し、F(Y)は、出力である推定結果を示す。また、F1(Y)およびF2(Y)は、入力と推定結果との間の中間データを示す。中間データF1(Y)および中間データF2(Y)と推定結果F(Y)は、下記の式1~式3によって算出される。
式1: F1(Y)=max(0,W1*Y+B1)
式2: F2(Y)=max(0,W2*F1(Y)+B2)
式3: F(Y)=W3*F2(Y)+B3
【0080】
ここで、記号*は、畳み込み演算を示し、W1は、n1個のc0×f1×f1サイズのフィルタを示し、c0は、入力画像のチャネル数を示し、f1は、空間フィルタのサイズを示す。図13のCNNでは、入力画像Yにc0×f1×f1サイズのフィルタをn1回畳み込むことで、n1次元の特徴マップが得られる。B1は、n1次元のベクトルであり、n1個のフィルタに対応したバイアス成分である。同様に、W2は、n2個のn1×f2×f2サイズのフィルタ、B2は、n2次元のベクトル、W3は、c3個のn2×f3×f3サイズのフィルタ、B3は、c3次元のベクトルである。c0とc3は、低画質画像と高画質画像のチャネル数により決まる値である。また、f1、f2、n1、n2は、学習シーケンス前にユーザが決定する。例えば、f1=9、f2=5、n1=128、n2=64とすればよい。上記の各種のパラメータは、モデルパラメータの例である。
【0081】
モデル学習のステップS703において、調整する対象となるモデルパラメータは、W1、W2、W3、B1、B2およびB3である。上位制御装置3は、第1の撮像条件で撮像した検査画像から画像領域を切り出して撮像視野が拡大された画像である低画質画像を、上記CNNのモデルの入力(Y)とする。上位制御装置3は、第2の撮像条件で撮像した高画質画像を推定結果(F(Y))として、上記CNNのモデルのパラメータを調整する。上位制御装置3は、モデルによる推定結果が高画質画像と整合するようなパラメータを、調整の結果として、高画質画像推定パラメータ記憶部212に記憶する。
【0082】
上記モデルパラメータ調整においては、ニューラルネットワークの学習において一般的な誤差逆伝搬を用いればよい。また、推定誤差を算出する際に、取得した学習用画像対(上記低画質画像と高画質画像との対)の全てを用いてもよいが、ミニバッチ方式を採用してもよい。即ち、学習用画像対の中から数枚の画像をランダムに抜き出し、高画質画像推定処理パラメータを更新することを繰り返し実行してもよい。さらには、1つの学習用画像対からパッチ画像をランダムに切り出し、ニューラルネットワークの入力画像(Y)としてもよい。これらにより、効率的な学習が可能である。なお、本例に示したCNNの構成に限らず、他の構成を用いてもよい。例えば、層の数を変更してもよく、4層以上のネットワーク等を用いてもよいし、スキップコネクションを持つ構成にしてもよい。
【0083】
[1-12.ステップS704 パラメータ調整]
図14は、ステップS704の欠陥検出パラメータ調整に関する詳しい処理フローを示す。図14のフローはステップS1401~S1406を有する。ここでは、検査画像(学習用低画質画像)から高画質画像推定モデルを用いて推定した画像を、高画質検査画像(学習用高画質画像)と呼ぶ。本パラメータ調整では、上位制御装置3は、まず、欠陥位置(i)の検査画像で詳細な欠陥位置を決定するために、欠陥位置(i)に対応付けられた欠陥候補に対し、ステップS1401~S1403のループ処理を行う。欠陥候補をkとし、k=1~Kとする。この際、高画質検査画像と、高画質検査画像に対応する高画質参照画像とを用いることで、高精度な欠陥位置の決定が可能となる。
【0084】
[1-13.ステップS1401 高画質検査画像の取得]
図15は、ステップS1401の高画質検査画像の取得処理に関する説明図である。図15の1つの検査画像2900では、複数の欠陥候補(k)2901が含まれている。ステップS1401で、上位制御装置3は、ステップS904で検出した検査画像中の複数の欠陥候補(k)について、高画質検査画像を取得する。具体的には、k1で示す欠陥候補2901のように、欠陥候補の位置がステップS905で決定した高画質検査画像の撮像領域2902と重なっていた場合(言い換えると含まれている場合)には、その欠陥候補2901に対応する高画質検査画像がステップS906で取得されているため、画像記憶部210からその高画質検査画像が選択される。このような処理を、高画質検査画像の選択処理と記載する。
【0085】
ステップS904で検出した欠陥候補の数が、ステップS901で決定した撮像枚数N(高画質画像を撮像する最大枚数)よりも多い場合、例えば図15のk3で示す欠陥候補2903のように、優先度の低い欠陥候補では、その欠陥候補を含んだ高画質画像が撮像されていない。そこで、上位制御装置3は、このように欠陥候補の位置が高画質検査画像の撮像領域2902と重なっていない場合(含まれていない場合)には、高画質画像推定部217を用いて、高画質検査画像を推定する。このような処理を、高画質検査画像の推定処理と記載する。高画質検査画像の推定処理の詳細については後述する。
【0086】
ステップS1401の後、ステップS1402で、上位制御装置3は、高画質検査画像に対応する高画質参照画像を取得する。高画質参照画像を取得する方法としては、参照画像から高画質参照画像を推定する方法や、高画質検査画像から高画質参照画像を合成する方法が適用できる。実施の形態1では、いずれの方法を適用しても構わない。これらの方法に対応した、高画質参照画像の推定処理と高画質参照画像の合成処理の詳細については後述する。
【0087】
ステップS1402の後、ステップS1403では、上位制御装置3は、高画質検査画像と高画質参照画像とを用いて、欠陥弁別処理を行う。欠陥弁別処理では、例えば、高画質検査画像と高画質参照画像との比較で得られた異常度を、弁別の指標値として用いる。異常度が大きいほど、高画質検査画像と高画質参照画像との差分が大きい。そのため、上位制御装置3は、異常度が最大の高画質検査画像と対応する、検査画像の欠陥候補を、欠陥と判定する。欠陥弁別処理の指標値としては、異常度に限定されない。
【0088】
次に、ステップS1404では、上位制御装置3は、ステップS1403で得た欠陥弁別結果から、検査画像中の欠陥位置の決定処理を行う。上位制御装置3は、欠陥弁別処理によって欠陥と判定された欠陥候補の検査画像上での位置を、欠陥位置として決定する。
【0089】
全ての検査画像で詳細な欠陥位置が決定された後、ステップS1405で、上位制御装置3は、欠陥検出パラメータセット(pとする)毎に、検査画像中の欠陥位置を検出可能であるか評価する。実施の形態1では、この際の評価指標としては、ステップS1404で決定した欠陥位置の検出数を用いる。
【0090】
最後に、ステップS1406で、上位制御装置3は、欠陥位置の検出数が最大の欠陥検出パラメータを、欠陥検出パラメータ記憶部211に記憶し、出力する。これにより、図14のパラメータ調整フローが終了する。
【0091】
[1-14.高画質検査画像の推定処理]
図16を用いて、上記高画質検査画像の推定処理について説明する。まず、上位制御装置3は、検査画像1501中の欠陥候補を中心に、破線で示す切り出し領域1502を決定し、画像切り出しのステップS1503を行う。本例では、欠陥候補は、図示のように縦ラインから横に少し出ている部分である。そして、上位制御装置3は、切り出された画像1504に対し、高画質画像推定部217を用いて、高画質検査画像推定のステップS1505を行うことで、高画質検査画像1506を推定して得る。
【0092】
[1-15.高画質参照画像を推定する方法]
図17を用いて、上記高画質参照画像を推定する方法について説明する。まず、上位制御装置3は、検査画像1601を用いて、参照画像切り出し領域決定のステップS1602を行う。検査画像1601は、ステップS1401の際に高画質検査画像を取得した領域1603が含まれている。ここで、前述の高画質検査画像の選択処理が行われた場合には、選択された高画質画像の撮像領域が、領域1603として決定され、前述の高画質検査画像の推定処理が行われた場合には、図16の画像切り出しのステップS1503での切り出し領域が、領域1603として決定される。
【0093】
ステップ1602では、上位制御装置3は、欠陥位置(i)での検査画像1601の欠陥候補(k)で、ステップS1401の際に高画質検査画像を取得した領域1603と対応する切り出し領域1604を、検査画像1601に対応した参照画像1605から選択する。
【0094】
切り出し領域1604の決定後、上位制御装置3は、画像切り出しのステップS1606を行う。ステップS1606は、図16のステップS1503と同様の処理である。そして、上位制御装置3は、切り出した参照画像1607に対し、高画質画像推定部217を用いて、高画質参照画像推定のステップS1608を行うことで、高画質参照画像1609を得る。
【0095】
[1-16.高画質参照画像を合成する方法]
図18を用いて、上記高画質参照画像を合成する方法について説明する。上位制御装置3は、ステップS1401で得た高画質検査画像1506に対し、ステップS1701で、高画質参照画像合成処理を行う。この合成処理は、例えば特許文献1に記載の参照画像合成処理を同様に適用可能である。これにより、欠陥を含まない高画質参照画像1702が合成される。なお、ここでの「合成」は、事前に参照画像を収集したデータベースを作成し、検査画像中の特徴的な領域をデータベースの類似領域との置き換えを実施する処理のことであるが、この処理に限らずに適用可能である。
【0096】
[1-17.ユーザインタフェース]
図1で、ユーザは、入出力端末6を用いて、実施の形態1の試料観察装置1を操作する。ユーザは、上位制御装置3のユーザインタフェース制御部106が提供するGUIの画面を見て操作する。
【0097】
図19は、実施の形態1で、ステップS702の画像取得に関するGUIの画面例を示す。本画面で、検査画像リストの領域1801には、画像取得が完了した検査画像のIDがリストで表示される。ユーザはリストからIDを選択できる。検査画像の領域1802には、リストで選択されたIDの検査画像が表示される。この際、チェックボックスの領域1803の「高画質画像撮像領域を表示」のチェックが選択された場合、領域1802には、高画質画像の撮像領域が、例えば破線の矩形で表示される。また、高画質画像の領域1804には、リストで選択されたIDの検査画像に係わる高画質検査画像(領域1802の高画質画像撮像領域と対応している)が表示される。例えば複数の高画質検査画像が並列で表示される。検出器(Detector)の領域1805では、前述の検出器111に対応した検出対象・画像種類が選択できる。
【0098】
図20は、前述のステップS703の高画質画像推定モデル学習とステップS704の欠陥検出パラメータ調整に関するGUIの画面例を示す。本画面は、大別して、高画質画像推定の領域1901と、パラメータ調整の領域1910とを有する。高画質画像推定モデルの学習には、領域1901が用いられる。領域1902は、モデル学習を指示するボタンであり、高画質画像推定モデルの学習処理を実行するためにモデル学習部216を手動で呼び出すボタンである。領域1903は、高画質画像推定を指示するボタンであり、高画質画像推定部217を手動で呼び出すボタンである。領域1904には、検査画像が表示される。領域1905には、高画質画像推定部217を用いて推定された高画質画像が表示される。領域1906には、検査画像のIDのリストが表示される。領域1907には、領域1905の推定高画質画像との比較のために、取得された高画質画像が表示される。上位制御装置3は、画像記憶部210から取得高画質画像を読み込んでこの領域1907に表示する。
【0099】
欠陥検出パラメータ調整には、領域1910が用いられる。領域1910内の上部の領域1911には、欠陥検出パラメータ(複数のパラメータ)がスライダー等の部品を用いて表示されている。本例では、ユーザが各パラメータ(#1~#4)のスライダー位置を変更することで、各パラメータ値を手動で調整可能である。また、各パラメータには、デフォルト値が、灰色のスライダーで表示されている。
【0100】
領域1912は、自動調整を指示するボタンである。領域1912が押された場合、上位制御装置3は、パラメータ調整部218による処理を実行して欠陥検出パラメータを自動調整する。上位制御装置3は、調整後の欠陥検出パラメータの値に応じて、上部の領域1911の各パラメータのスライダーの値(位置)の表示を自動的に変更する。
【0101】
領域1915には、検査画像の一覧がIDのリストで表示されており、検査画像における実欠陥の検出成否(OK/NG)が、「Run1」、「Run2」のような実行の項目毎に表示されている。領域1916には、検査画像における欠陥領域(欠陥部位を含む領域)が、破線で囲まれた領域として表示される。また、領域1916では、ユーザが手動で欠陥領域を指定することも可能である。領域1913は、欠陥領域追加を指示するボタンであり、欠陥領域を追加する処理を呼び出すボタンである。また、領域1914は、欠陥領域削除を指示するボタンであり、検査画像上の欠陥領域を削除する処理を呼び出すボタンである。領域1918は、欠陥の捕捉率を表示する領域である。領域1919は、パラメータ出力を指示するボタンであり、領域1910で設定された欠陥検出パラメータを欠陥検出パラメータ記憶部211に記憶する処理を呼び出すボタンである。
【0102】
[1-18.効果等]
以上のように、実施の形態1の試料観察装置および方法では、撮像装置2であるSEM101を用いて、欠陥位置情報8の欠陥座標毎に、検査画像、参照画像、および複数の高画質画像を取得し、検査画像と高画質画像とを用いて高画質画像推定モデルを学習し、高画質検査画像と高画質参照画像とを用いて欠陥検出パラメータを調整する。実施の形態1によれば、ユーザが簡易に欠陥検出に係わる精度を向上できる。実施の形態1によれば、高画質画像推定モデルの精度を向上でき、ADR機能のレシピの作成に係わるユーザビリティも向上できる。実施の形態1によれば、欠陥位置情報8で示す欠陥位置毎に、複数の高画質画像が撮像可能となる。そのため、検査画像中の欠陥を高画質画像中に捕捉する可能性が向上するので、高画質推定モデルの精度が向上する。これにより、欠陥検出処理パラメータ調整の精度が向上する。また、欠陥観察に推定された高画質画像の精度が向上する。また、実施の形態1によれば、前述のような機能をユーザに提供し、ユーザは、前述のGUIの画面を見ながら操作が可能であるため、欠陥観察作業時のユーザビリティが向上する。
【0103】
なお、前述のステップS901に関して、図10の画面でユーザが撮像枚数(N)を設定できる。これによる効果としては以下が挙げられる。機械学習のモデルを用いたADR機能における、使用する画像の枚数に関して、一般的には、精度と処理時間とにトレードオフの関係がある。画像枚数を多くすれば精度を高くできるかもしれないが、処理時間が長くなる。そこで、実施の形態1では、ユーザが撮像枚数(N)を調整できることで、ユーザの好みの精度と処理時間とに調整しやすい。ユーザが撮像枚数(N)を可変に設定できる構成に限定されず、変形例としては、試料観察装置1を含むシステムが自動的に撮像枚数(N)を決定・設定する構成も可能である。
【0104】
<実施の形態2>
図21以降を用いて、実施の形態2について説明する。実施の形態2等における基本的な構成は実施の形態1と同様であり、以下では主に実施の形態2等における実施の形態1とは異なる構成部分について説明する。
【0105】
実施の形態2では、検査画像から参照画像を生成する際に、低画質画像と高画質画像との両方を合成によって生成する。即ち、実施の形態2では、低画質検査画像から合成によって低画質参照画像を生成し、高画質検査画像から合成によって高画質参照画像を生成する。欠陥観察における画像取得時には、撮像する画像の枚数が少ないほど、取得時間が短縮され、スループットが向上する。実施の形態2では、参照画像を検査画像から生成することで、参照画像の撮像を省略して、欠陥観察を実施する。実施の形態2でのGUIは、実施の形態1で説明した図10図19図20のようなGUIを同様に適用できる。
【0106】
[2-1.参照画像取得部2001]
図21は、実施の形態2における、上位制御装置3の制御部102および演算部104により実現される機能ブロック構成を示す。実施の形態2の構成は、実施の形態1に対し主に異なる構成部分としては、参照画像取得部である。実施の形態2では、図21のように、演算部104に、参照画像取得部2001が構成されている。参照画像取得部2001は、SEM101の制御を行わずに演算処理のみを行うため、演算部104に構成されている。参照画像取得部2001は、検査画像取得部205において第1の撮像条件で取得した検査画像を、記憶部103(図示省略。図2と同様)の画像記憶部210から読み込み、検査画像に対し、参照画像合成処理を実行することで、欠陥を含まない参照画像を取得する。参照画像合成処理は、例えば特許文献1に記載の参照画像合成処理と同様の処理を適用できる。
【0107】
[2-2.全体処理]
実施の形態2の試料観察装置1で実行される欠陥観察方法について説明する。図22は、実施の形態2の試料観察装置1の全体の処理・動作を示す。図21のフローはステップS2101~S2108を有する。欠陥観察の開始時、ステップS2101(図7のS701に相当)では、欠陥検出処理に係わるレシピがセットアップ済みか判定される。セットアップされていない場合にはステップS2102、セットアップされている場合にはステップS2105へ移る。
【0108】
ステップS2102では、上位制御装置3は、参照画像取得部2001、検査画像取得部205、および高画質画像取得部206を用いて、高画質画像推定モデル学習および欠陥検出パラメータ調整で使用する画像を取得する。ステップS2103(図7のS703に相当)では、モデル学習が行われる。ステップS2104(図7のS704に相当)では、パラメータ調整が行われる。
【0109】
レシピがセットアップ済みであった場合、または、ステップS2102~S2104によってセットアップされた後、欠陥位置情報8の欠陥位置(i)毎に、ステップS2105~S2108のループ処理が行われる。ステップS2105(図7のS706に相当)では、上位制御装置3は、検査画像取得部205を用いて、欠陥位置(i)における検査画像を取得する。ステップS2106では、上位制御装置3は、参照画像取得部2001において、画像記憶部210から読み込んだ検査画像を用いて、参照画像合成処理を行って、参照画像を得る。得た参照画像は、画像記憶部210に保存される。ステップS2107(図7のS707に相当)では、欠陥検出が行われる。ステップS2108(図7のS708に相当)では、高画質画像推定が行われる。ステップS2105~S2108の処理が全ての欠陥位置(i)で行われると、本欠陥観察フローが終了する。
【0110】
[2-3.ステップS2102 画像取得]
図23は、ステップS2102の画像取得処理に関するフローを示す。上位制御装置3は、検査画像取得部205と参照画像取得部2001と高画質画像取得部206とを用いて、この画像取得処理を行う。まず、ステップS2201(図9のS901に相当)では、上位制御装置3は、撮像枚数(N)(高画質画像を撮像する最大枚数)を決定する。ステップS2201の後、欠陥位置情報8の欠陥位置(i)毎に、ステップS2202~S2206のループ処理が行われる。
【0111】
ステップS2202(図9のS903に相当)では、上位制御装置3は、欠陥位置(i)の検査画像を、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第1の撮像条件で取得する。ステップS2203では、上位制御装置3は、参照画像取得部2001において、画像記憶部210から読み込んだ検査画像を用いて、欠陥位置(i)の参照画像を合成する。ステップS2203は、前述のステップS2106と同様の処理である。合成された参照画像は、画像記憶部210に保存される。
【0112】
次に、ステップS2204(図9のS904に相当)では、上位制御装置3は、欠陥検出を行い、ステップS2205(図9のS905に相当)では、高画質画像の撮像点(j)を決定する。撮像点(j)が決定された後、ステップS2206(図9のS906に相当)で、上位制御装置3は、欠陥位置(i)での撮像点(j)における高画質画像を、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第2の撮像条件で撮像する。撮像した高画質画像は、画像記憶部210に保存される。全ての欠陥位置でステップS2202~S2206の処理が完了すると、本画像取得フローが終了する。
【0113】
[2-4.効果等]
以上のように、実施の形態2によれば、検査画像のみを撮像することで、参照画像の合成が可能となる。そのため、実施の形態2によれば、参照画像の撮像を省略でき、欠陥観察に係わるスループットを向上できる。
【0114】
<実施の形態3>
図24以降を用いて、実施の形態3について説明する。前述の実施の形態1および2では、高画質画像推定モデル学習や欠陥検出パラメータの調整において検査画像中の欠陥を検出するために、参照画像を利用する方法について述べた。実施の形態3では、検査画像の全領域を高画質画像で撮像することで、参照画像を必要としない欠陥観察を実現する。実施の形態3では、参照画像の取得が省略されるので、欠陥観察に係わるスループットが向上する。実施の形態3でのADR処理は、機械学習を用いて実現される。実施の形態3でのGUIは、前述の実施の形態1のGUIを同様に適用できる。
【0115】
[3-1.機能ブロック]
図24は、実施の形態3で、上位制御装置3の制御部102および演算部104の機能ブロック構成を示す。実施の形態3で主に異なる構成部分は、制御部102および演算部104における構成であり、まず、制御部102または演算部104に参照画像取得部を有さない。また、高画質画像取得部2301の構成も異なり、撮像枚数決定部を有さない。そして、実施の形態3では、撮像枚数決定部を不要とするように、制御部102の高画質画像取得部2301内に、撮像点決定部2302を備える。加えて、欠陥検出部2303の処理・動作も、実施の形態1および2とは異なるため、パラメータ調整部2304の処理・動作も異なる。
【0116】
[3-2.欠陥観察]
実施の形態3の試料観察装置1で実行される欠陥観察方法について説明する。図25は、実施の形態3の試料観察装置1の全体の処理・動作を示す。欠陥観察の開始時、ステップS2501(図7のS701に相当)において、欠陥検出処理に係わるレシピがセットアップ済みか判定される。セットアップされていない場合にはステップS2502、セットアップされている場合にはステップS2505へ移る。ステップS2502では、上位制御装置3は、検査画像取得部205および高画質画像取得部2301を用いて、高画質画像推定モデル学習および欠陥検出パラメータ調整で使用する画像を取得する。続いて、ステップS2503(図7のS703に相当)でモデル学習が行われ、続いて、ステップS2504(図7のS704に相当)でパラメータ調整が行われる。なお、実施の形態3で、ステップS2503のモデル学習では、実施の形態1と同様のモデル(ここでは第1モデルとする)を使用する。ステップS2504のパラメータ調整は、ステップS2506の欠陥検出処理に係わるパラメータの調整である。
【0117】
レシピがセットアップ済みであった場合、または、ステップS2502~S2504によってセットアップされた後、欠陥位置情報8の欠陥位置(i)毎に、ステップS2505~S2507のループ処理が行われる。ステップS2505(図7のS706に相当)では、上位制御装置3は、検査画像取得部205を用いて、欠陥位置(i)での検査画像を、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第1の撮像条件で取得する。ステップS2506では、上位制御装置3は、欠陥検出部2303を用いて、検査画像中の欠陥を検出する。実施の形態3で、ステップS2506の欠陥検出処理では、ステップS2503の第1モデルとは別のモデル(ここでは第2モデルとする)を使用する。ステップS2506の欠陥検出処理は、実施の形態1での画像処理による欠陥検出処理とは異なり、機械学習による欠陥検出処理であるため、機械学習の第2モデルを使用する。ステップS2507(図7のS708に相当)では、上位制御装置3は、高画質画像を推定する。ステップS2505~S2507の処理が全ての欠陥位置で行われると、本欠陥観察フローが終了する。
【0118】
[3-3.ステップS2502 画像取得]
図26は、ステップS2502の画像取得処理のフローを示す。上位制御装置3は、検査画像取得部205と高画質画像取得部2301とを用いて、この画像取得処理を行う。実施の形態3の試料観察装置1は、欠陥位置情報8の欠陥位置(i)毎に、欠陥部位を含む検査画像と、検査画像の撮像範囲を全て撮像するように撮像範囲を決定した複数の高画質画像とが必要となる。そのため、ステップS2502では、それらの画像が取得される。
【0119】
実施の形態3では、撮像枚数(N)は、検査画像と高画質画像との撮像範囲(言い換えると視野範囲)の大きさの比によって決定される(後述)。そのため、画像取得のステップS2502において、ユーザによる撮像枚数(N)の決定は必要としない。このステップS2502では、欠陥位置情報8の欠陥位置(i)毎に、ステップS2601~S2603のループ処理が実行される。
【0120】
検査画像取得のステップS2601(図9のS903に相当)では、上位制御装置3は、検査画像取得部205を用いて、欠陥位置(i)の検査画像を、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第1の撮像条件で取得する。ステップS2601は前述のステップS706と同様である。取得した画像は、画像記憶部210に保存される。
【0121】
その後、ステップS2602で、上位制御装置3は、撮像点決定部2302を用いて、高画質画像の撮像点(j)を決定する。このステップS2602では、実施の形態1および2とは異なり、上位制御装置3は、検査画像の撮像範囲を全て撮像できる最小個数の撮像点(j)を決定する。ステップS2602の詳細については後述する。
【0122】
撮像点(j)が決定された後、ステップS2603(図9のS906に相当)では、上位制御装置3は、高画質画像撮像部209を用いて、欠陥位置(i)に対応した撮像点(j)における高画質画像を、撮像パラメータ記憶部213に記憶された第2の撮像条件で撮像する。撮像した高画質画像は、画像記憶部210に保存される。全ての欠陥位置でステップS2601~S2603の処理が完了すると、本画像取得フローが終了する。
【0123】
[3-4.ステップS2602 撮像点決定]
図27は、実施の形態3で、ステップS2602の撮像点決定処理に関する説明図である。図27では、検査画像と高画質画像とにおける撮像範囲(視野範囲)のサイズ比率が2である例を示している。本例では、検査画像2701は正方形とし、横のサイズ(画素数で表せる)をSX1で示す。高画質画像(破線で示す)は正方形とし、横のサイズをSX2とし、SX1の半分とする。例えば、サイズ比は、SX1:SX2であり、サイズ比率は、SX1/SX2=2である。
【0124】
図27の検査画像2701を用いて撮像点の決定を行う場合、上位制御装置3は、検査画像2701の縦と横をそれぞれサイズ比率(=2)と同じ数に分割した領域2702を構成する。本例では検査画像2701の全領域をカバーする4個の領域2702が構成される。そして、上位制御装置3は、これらの領域2702を高画質画像領域として撮像できるように、×印で示す複数(4個)の撮像点(j)2703を決定する。
【0125】
[3-5.ステップS2506 欠陥検出]
図28は、ステップS2506の欠陥検出処理に関する説明図である。実施の形態3での欠陥検出処理においては、機械学習のモデルを使用して、検査画像の欠陥検出が行われる。実施の形態3での欠陥検出の機械学習の実装方法としては、公知の深層学習を用いる。具体的には、図28のようなCNNを用いる。実施の形態3での欠陥検出では、出力を欠陥検出結果画像(G(Z))とする。欠陥検出結果画像は、欠陥として検出された領域を示す二値画像であり、8ビットグレースケール画像の場合、例えば、欠陥検出領域の画素値が255、それ以外の領域の画素値が0となる。出力された欠陥検出結果画像は、画像記憶部210に保存される。
【0126】
図28で、Zは、入力となる検査画像を示し、G(Z)は、推定結果としての出力となる欠陥検出結果画像である。また、G1(Z)およびG2(Z)は、入力と推定結果との間の中間データを示す。中間データG1(Z)および中間データG2(Z)と推定結果である欠陥検出結果画像G(Z)は、下記の式4~式6によって算出される。
式4: G1(Z)=max(0,V1*Z+A1)
式5: G2(Z)=max(0,V2*G1(Z)+A2)
式6: G(Z)=V3*G2(Z)+A3
【0127】
ここで、記号*は、畳み込み演算を示し、V1は、m1個のd0×g1×g1サイズのフィルタを示し、d0は、入力画像のチャネル数を示し、g1は、空間フィルタのサイズを示す。入力画像Zにd0×g1×g1サイズのフィルタをm1回畳み込むことで、m1次元の特徴マップが得られる。A1は、m1次元のベクトルであり、m1個のフィルタに対応したバイアス成分である。同様に、V2は、m2個のm1×g2×g2サイズのフィルタ、A2は、m2次元のベクトル、V3は、1個のm2×g3×g3サイズのフィルタ、A3は、1次元のベクトルである。g1、g2、m1、m2は、欠陥検出前にユーザが決定する値であり、例えば、g1=9、g2=5、m1=128、m2=64とすればよい。
【0128】
実施の形態3でのパラメータ調整部2304において、調整を行う対象となるモデルパラメータは、V1、V2、V3、A1、A2およびA3である。上記CNNの構成には限定されない。
【0129】
[3-6.ステップS2504 パラメータ調整]
図29は、ステップS2504の欠陥検出パラメータ調整処理に関するフローを示す。図29はステップS2801~S2805を有する。実施の形態3でのパラメータ調整では、まず欠陥位置(i)の検査画像で詳細な欠陥位置を決定するために、高画質画像の撮像点(j)に対し、高画質検査画像選択のステップS2801、および欠陥弁別のステップS2802が行われる。ステップS2801では、画像取得のステップS2502で検査画像の全領域に対応する高画質画像が取得されているため、高画質画像の選択処理のみが行われる。ステップS2802では、上位制御装置3は、高画質検査画像を用いて欠陥弁別処理を行う。実施の形態3での欠陥弁別処理では、欠陥検出部2303において、高画質検査画像を用いて、高画質検査画像に対応する欠陥検出結果画像を取得する。この際に、欠陥検出パラメータは、まだ対象の製造工程に対して調整されていない。そのため、例えば、以前に異なる製造工程で調整した欠陥検出パラメータを用いて、高画質検査画像に欠陥検出処理を適用する。
【0130】
ステップS2803(図14のS1404に相当)では、上位制御装置3は、ステップS2802で得られた、高画質検査画像の欠陥検出結果画像を用いて、検査画像中の欠陥位置の決定処理を行う。ステップS2804では、上位制御装置3は、ステップS2803で決定した検査画像上の詳細な欠陥位置を用いて、検査画像と対応する欠陥検出結果画像を作成する。作成された欠陥検出結果画像は画像記憶部210に保存される。
【0131】
全ての検査画像で、対応する欠陥検出結果画像を作成した後、最後に、ステップS2805(図14のS1406に相当)で、上位制御装置3は、前述のモデルを用いて、検査画像を入力とし、欠陥検出結果画像を推定結果として、欠陥検出パラメータを調整する。このステップ2805での図28のCNNを用いた処理は、前述の図13のCNNを用いた処理と同様に、各種の方式を適用でき、効率化等が可能である。上記ニューラルネットワークの学習が終了した後、上位制御装置3は、欠陥検出パラメータを、調整の結果として、欠陥検出パラメータ記憶部211に記憶し、本パラメータ調整のフローが終了する。
【0132】
[3-7.効果等]
以上のように、実施の形態3によれば、参照画像を取得しない高画質画像推定モデルの学習とパラメータ調整を行うことで、参照画像の取得が省略可能となり、試料観察装置のスループットを向上可能である。
【0133】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0134】
1…試料観察装置(レビューSEM)、2…撮像装置、3…上位制御装置(コンピュータシステム)、4…記憶媒体装置、5…欠陥分類装置、6…入出力端末、7…検査装置、8…欠陥位置情報、9…試料(半導体ウェハ)、101…SEM、101…制御部。
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