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特開2023-2250排気網の製造方法、プラズマ処理装置および排気網
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002250
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】排気網の製造方法、プラズマ処理装置および排気網
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20221227BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221227BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C23C16/44 B
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103382
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠治
(72)【発明者】
【氏名】増澤 健二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一憲
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA04
4K030EA11
4K030FA01
4K030GA02
4K030KA28
4K030KA46
4K030LA15
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004BC03
5F004BD04
5F004CA02
5F045AA08
5F045AE17
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EB03
5F045EC05
5F045EC08
5F045EF05
5F045EG02
5F045EH02
5F045EK07
5F045EM09
(57)【要約】
【課題】排気性能および放電安定性の両立を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置の処理容器からガスを排気する際に当該ガスを通過させる排気網の製造方法であって、(a)複数の金属板を準備する工程と、(b)複数の六角形状の貫通孔が隣接するハニカム構造を前記複数の金属板の各々に形成し、複数の薄板ハニカム網を得る工程と、(b)前記複数の薄板ハニカム網の前記複数の貫通孔が相互に連通するように前記複数の薄板ハニカム網を積層し、当該複数の薄板ハニカム網同士を接合することにより厚板化された前記排気網を製作する工程と、を含む、ことを特徴とする排気網の製造方法が提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の処理容器からガスを排気する際に当該ガスを通過させる排気網の製造方法であって、
(a)複数の金属板を準備する工程と、
(b)複数の六角形状の貫通孔が隣接するハニカム構造を前記複数の金属板の各々に形成し、複数の薄板ハニカム網を得る工程と、
(c)前記複数の薄板ハニカム網の前記複数の貫通孔が相互に連通するように前記複数の薄板ハニカム網を積層し、当該複数の薄板ハニカム網同士を接合することにより厚板化された前記排気網を製作する工程と、を含む、
ことを特徴とする排気網の製造方法。
【請求項2】
前記排気網における前記ハニカム構造の開口率は、85%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の排気網の製造方法。
【請求項3】
前記複数の貫通孔のうち相互に隣接する貫通孔同士の間隔は、0.3mm~0.4mmの範囲である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の排気網の製造方法。
【請求項4】
前記複数の貫通孔を挟んで平行に延在する一対の孔辺間の間隔は、前記排気網の厚みに対して1.4倍~2.0倍の範囲である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排気網の製造方法。
【請求項5】
前記(c)の工程では、前記複数の薄板ハニカム網同士を拡散接合により接合する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の排気網の製造方法。
【請求項6】
前記(b)の工程では、前記複数の金属板の各々に複数のハニカム形状のマスクを介してウェットエッチングを行うことにより、前記複数の貫通孔を形成する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の排気網の製造方法。
【請求項7】
基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
前記基板を載置する載置台を備えた処理容器と、
前記処理容器に設けられた排気口に接続される排気管と、
前記排気管に設けられ、前記処理容器内のガスを排気する排気機構と、
前記載置台から前記排気口を介して前記排気管の前記排気機構に至るまでの間の位置に設けられる排気網と、を含み、
前記排気網は、
複数の六角形状の貫通孔が隣接するハニカム構造を有するとともに、複数の薄板ハニカム網を厚み方向に接合した構成を有することで厚板化している、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記排気網は、前記複数の薄板ハニカム網同士を拡散接合により接合した構成を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記排気網が設けられる位置は、前記排気網によって前記排気口が覆われる位置である、
ことを特徴とする請求項7または8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置に設けられる排気網であって、
複数の六角形状の貫通孔が隣接するハニカム構造を有するとともに、複数の薄板ハニカム網を厚み方向に接合した構成を有することで厚板化している、
ことを特徴とする排気網。
【請求項11】
前記排気網は、前記複数の薄板ハニカム網同士を拡散接合により接合した構成を有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の排気網。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気網の製造方法、プラズマ処理装置および排気網に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理容器内にガスを導入してプラズマ化し、エッチング等の処理を基板に対して行うプラズマ処理装置が開示されている。この処理時に発生したガスは、処理容器内から排気部(排気機構)に排気される。排気部へのプラズマの侵入を抑制するため、プラズマ処理装置は、金属から形成され、接地電位に接続される排気網(網部材)を備える。排気網は、当該排気網の厚さ方向に貫通した円形の貫通孔を複数有する。
【0003】
この種の排気網は、各貫通孔の開口率が大きいほどガスが排気し易くなるが、プラズマの侵入による異常放電が発生し易くなる。つまり、排気網の排気性能と放電安定性はトレードオフの関係にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020‐188194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、排気性能および放電安定性の両立を図ることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、プラズマ処理装置の処理容器からガスを排気する際に当該ガスを通過させる排気網の製造方法であって、(a)複数の金属板を準備する工程と、(b)複数の六角形状の貫通孔が隣接するハニカム構造を前記複数の金属板の各々に形成し、複数の薄板ハニカム網を得る工程と、(c)前記複数の薄板ハニカム網の前記複数の貫通孔が相互に連通するように前記複数の薄板ハニカム網を積層し、当該複数の薄板ハニカム網同士を接合することにより厚板化された前記排気網を製作する工程と、を含む、ことを特徴とする排気網の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、排気性能および放電安定性の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図である。
図2図1の処理容器からガスを排気する箇所を拡大して示す断面模式図である。
図3】一実施形態に係る排気網を示す斜視図である。
図4】一実施形態に係る排気網のハニカム構造を拡大した説明図である。
図5】一実施形態に係る排気網の製造方法を示す工程説明図である。
図6】一実施形態に係る排気網の排気性能を確認した実験結果を示す説明図である。
図7】一実施形態に係る処理容器内の圧力の変化およびプラズマの出力の変化における放電安定性を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図である。図1に示すように、一実施形態に係る排気網100は、プラズマ処理装置1に適用される。以下、本発明の理解の容易化のため、プラズマ処理装置1の構成について先に説明する。
【0011】
プラズマ処理装置1は、FPD用基板(以下、単に基板Gという)に対して各種の基板処理を行う誘導結合プラズマ(Inductive Coupled Plasma:ICP)の処理装置である。基板Gを加工して製造されるFPDは、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence:EL)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)等があげられる。この場合、基板Gの材料としては、ガラスまたは合成樹脂等が適用される。基板Gは、表面に回路がパターニングされたもの、あるいは回路を備えない支持基板等を含み得る。基板Gの平面寸法は、長辺が1800mm~3400mm程度の範囲であり、短辺が1500mm~3000mm程度の範囲であるとよい。また、基板Gの厚みは、0.2mm~4.0mm程度の範囲であるとよい。プラズマ処理装置1が行う基板処理としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いた成膜処理やエッチング処理等があげられる。以下では、基板処理として成膜処理を行うプラズマ処理装置1について説明する。
【0012】
プラズマ処理装置1は、直方体状の箱型の処理容器10を備える。処理容器10は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって形成される。なお、処理容器10は、基板Gの形状に応じて適切な形状に形成されるとよく、例えば、基板Gが円板や楕円板である場合に、処理容器10は円筒状や楕円筒状等に形成されることが好ましい。
【0013】
処理容器10は、鉛直方向の所定位置に、当該処理容器10の内側に突出する矩形状の支持枠11を備え、この支持枠11により誘電体板12を水平方向に支持している。処理容器10は、誘電体板12を挟んで上チャンバ13と下チャンバ14とに分かれている。上チャンバ13は、アンテナ室13aを内側に形成している。下チャンバ14は、基板Gが収容されるとともに、基板処理を行う内部空間14aを内側に形成している。
【0014】
下チャンバ14の側壁15は、ゲートバルブ16によって開閉する搬出入口17を備える。プラズマ処理装置1は、ゲートバルブ16の開放時に、図示しない搬送装置により、搬出入口17を介して基板Gの搬出入を行う。
【0015】
また、下チャンバ14の側壁15は、接地線18を介して接地(接地電位に接続)されている。下チャンバ14の四方の側壁15は、無端状に周回するシール溝19を上端に有する。シール溝19にOリング等のシール部材20が配置されることにより、支持枠11および下チャンバ14は、内部空間14aを気密にシールしている。
【0016】
支持枠11は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって形成されている。また、誘電体板12は、アルミナ(Al)等のセラミックスや石英によって形成されている。
【0017】
支持枠11の内側には、当該支持枠11に連結され、複数の長尺状部材からなり内部空間14aにガスを吐出するシャワーヘッド21が、誘電体板12を支持する支持梁を兼ねて設けられている。誘電体板12は、シャワーヘッド21の上面に支持されている。シャワーヘッド21は、アルミニウム等の金属によって形成され、陽極酸化による表面処理が施されていることが好ましい。シャワーヘッド21の内部には、水平方向に沿ってガス流路21aが形成されている。また、シャワーヘッド21は、ガス流路21aとシャワーヘッド21の下面(内部空間14a)を連通する複数のガス吐出孔21bを有する。
【0018】
シャワーヘッド21の上面には、ガス流路21aに連通するガス導入管22が接続されている。ガス導入管22は、上チャンバ13内を上方向に延在して当該上チャンバ13を貫通し、処理容器10の外部に設けられたガス供給部23に接続されている。
【0019】
ガス供給部23は、ガス導入管22に結合されるガス供給管24を有するとともに、ガス供給管24の上流から下流に向かって順に、ガス供給源25、マスフローコントローラ26および開閉バルブ27を備える。成膜処理において、ガスは、ガス供給源25から供給され、マスフローコントローラ26により流量が制御されるとともに、開閉バルブ27により供給タイミングが制御される。このガスは、ガス供給管24からガス導入管22を通ってガス流路21aに流入し、各ガス吐出孔21bを通って内部空間14aに放出される。
【0020】
アンテナ室13aを形成する上チャンバ13内には、高周波アンテナ28が設置されている。高周波アンテナ28は、銅等の導電性の金属から形成されるアンテナ線を、環状もしくは渦巻き状に配線して形成される。あるいは、高周波アンテナ28は、環状のアンテナ線を多重に設置したものでもよい。高周波アンテナ28の端子には、上チャンバ13内を上方向に延在する給電部材29が接続されている。
【0021】
給電部材29は、処理容器10の外部に突出する上端を有し、この上端に給電線30が接続されている。給電線30は、インピーダンス整合を行う整合器31を介して高周波電源32に接続されている。高周波電源32は、基板処理に応じた周波数(例えば、13.56MHz)の高周波電力を高周波アンテナ28に印加する。これにより、高周波アンテナ28は、下チャンバ14内に誘導電界を形成する。
【0022】
そして、処理容器10は、搬出入口17から搬入された基板Gを載置するステージ40(載置台)を下チャンバ14内に備える。ステージ40は、ステージ本体41、台座42、複数のリフトピン43および複数のリフトピン昇降機構44を有する。下チャンバ14に搬入された基板Gは、各リフトピン昇降機構44により上昇された各リフトピン43に受け渡されて、各リフトピン43を下降させることで、ステージ本体41上に載置される。
【0023】
ステージ本体41は、平面視で長方形状に形成され、基板Gと同程度の平面寸法の載置面411を有する。例えば、載置面411の平面寸法は、長辺が1800mm~3400mm程度の範囲であり、短辺が1500mm~3000mm程度の範囲であるとよい。
【0024】
ステージ本体41の載置面411とシャワーヘッド21との間には、プラズマ処理空間PCSが形成される。プラズマ処理空間PCSにおいては、高周波アンテナ28が形成した誘導電界により、シャワーヘッド21から内部空間14aに供給したガスをプラズマ化したプラズマが生成される。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理空間PCSにて生成されたプラズマ中の成膜プリカーサを基板Gに提供する。
【0025】
また、ステージ本体41は、アルミニウムやアルミニウム合金等によって形成され、抵抗体であるヒータ線45を内部に備える。ヒータ線45は、ヒータ駆動部46に接続され、ヒータ駆動部46の電力供給に基づき昇温する。ヒータ駆動部46は、プラズマ処理装置1の制御部60に接続され、制御部60の温度指令に応じた電力を出力する。さらに、ステージ本体41は、冷却機構を備えて精密な温度制御を行えるようにしてもよい。例えば、プラズマ処理装置1は、基板処理(成膜処理)を行う際に、ステージ40の載置面411を、200℃程度に加熱してその温度状態を維持する。
【0026】
台座42は、絶縁材料によって形成され、下チャンバ14の底板33に配置されてステージ本体41を支持する。台座42は、底部に開口を有しており、底板33に対してステージ本体41を離間させた状態で、ステージ本体41を固定および支持している。
【0027】
プラズマ処理装置1は、装置全体の動作を制御する制御部60を有する。制御部60は、1以上のプロセッサ61、メモリ62、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を備える制御用コンピュータである。メモリ62は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含み、プログラムおよびレシピデータを保存する制御部60の記憶部を形成している。なお、メモリ62の一部は、プロセッサ61に内蔵されていてもよい。入出力インタフェースには、プラズマ処理装置1の入出力装置(不図示)が接続されている。入出力装置としては、例えば、タッチパネル、モニタ、キーボード等があげられる。1以上のプロセッサ61は、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものであり得る。1以上のプロセッサ61は、メモリ62のプログラムを実行し、またレシピデータに沿ってプラズマ処理を基板Gに対して行う。
【0028】
そして、プラズマ処理装置1は、処理容器10の底板33に、内部空間14aのガスを排気する排気口14bを有するとともに、排気口14bを介して処理容器10に接続する排気部70を備える。なお、図1中では、1つの排気口14bおよび1つの排気部70を例示しているが、プラズマ処理装置1は、排気口14bおよび排気部70を複数備えてもよい。
【0029】
排気口14bは、正円形状に形成され、処理容器10の側壁とステージ40との間に設けられている。排気口14bの直径は、処理容器10の大きさにもよるが、例えば、200mm~400mm程度の範囲に設定されることが好ましく、本実施形態では、300mmに設定されている。なお、排気口14bの形状は、配置位置によっては必ずしも正円形状でなくてもよく、半円形状など、配置位置に応じた形状となってもよい。
【0030】
図2は、処理容器10からガスを排気する排気口14b(ガス排気口)を拡大して示す断面模式図である。図2に示すように、排気部70は、排気口14bに接続される排気管71と、排気管71に設けられて処理容器10内のガス(例えば、揮発性ガス)を排気する排気機構72と、を含む。
【0031】
排気管71は、断面形状が円形であり、排気口14bと連通する通路71aを内側に有するパイプであり、適宜の金属から形成されている。排気管71は、図2中に示すように下方に向かって直線状に延在していてもよく、途中位置で湾曲または屈曲した形状でもよい。また上記したように、処理容器10が接地されていることで、処理容器10に連結された排気管71も接地される。通路71aを構成する排気管71の内周面には、当該排気管71の腐食を抑制するためのコーティングが施されていることが好ましい。
【0032】
図1および図2に示すように、排気機構72は、排気管71のガスの流通方向下流側に向かって順に、APC(Automatic Pressure Control)バルブ73、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)74およびドライポンプ75を備える。排気機構72は、ドライポンプ75により処理容器10内を粗引きした後、ターボ分子ポンプ74により処理容器10内を真空引きする。また、排気機構72は、APCバルブ73の開度を調整することにより、内部空間14aの圧力を制御する。
【0033】
排気網100は、プラズマ処理装置1においてステージ40(載置台)から排気口14bを介して排気管71の排気機構72のAPCバルブ73の入口側に至るまでの間に、排気管71若しくは下チャンバ14と接触して配置され得る。排気網100は、接地電位である排気管71若しくは下チャンバ14と接触することにより、接地電位となる。これにより、プラズマを排気網100により遮蔽して、APCバルブ73、ターボ分子ポンプ74等へのプラズマの侵入を抑止できる。排気網100は、より好ましくは、APCバルブ73の入口側よりも排気口14b側、または、排気口14bの近傍位置(出口側、入口側)にその一部が下チャンバ14に接触するように配置されるとよい。排気網100は、排気口14bの近傍位置に配置することで、排気管71内へのプラズマの侵入による放電を回避することができる。また、排気網100により、排気管71内のAPCバルブ73まで部品が落下することを防止できる。
【0034】
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、排気管71内の排気口14b側の接続端部で当該排気口14bの出口側に隣接する位置に排気網100を配置している。あるいは、排気網100は、排気口14bの入口側に配置されてもよい。なお、排気網100は、排気口14bの入口側に下チャンバ14に接触するように配置されてもよいし、または排気口14b内(出口側と入り口側の間)に下チャンバ14に接触するように配置されてもよい。あるいは、排気網100は、排気口14bよりも上側の内部空間14aに下チャンバ14に直接的または間接的に電気的導通をもって接触するように配置されてもよい。プラズマ処理装置1は、排気管71(または排気口14b)に排気網100を備える他に、図示しないバッフルプレートを処理容器10内に備えていてもよい。なお、排気網100が、電気的に下チャンバ14と接触せず、また、排気管71とも接触しないことにより接地電位とならない場合、排気網100がプラズマを遮蔽する効果は弱くなる。
【0035】
図3は、排気網100を示す斜視図である。図3に示すように、排気網100は、平面視で、正円形状に形成されている。排気網100の直径は、好ましくは、200mm~400mm程度の範囲に設定されるとよい。本実施形態では、排気口14bのサイズに応じて、300mmの直径を有する排気網100を適用している。
【0036】
図2および図3に示すように、排気網100は、リング状の外枠部101と、外枠部101の内側においてガスを流通させる内側部102と、を備える。なお、外枠部101を設けず、ハニカム構造104を有する内側部102のみで排気網100を構成してもよい。また、排気管71および排気網100は、係合構造76によって、排気管71に対して排気網100を離脱可能に固定している。
【0037】
例えば、係合構造76は、処理容器10に接続する排気管71の接続端部(上端部)に設けられる。排気管71の内径は、内側部102の直径と略同一に設定され、排気管71の接続端部は、外枠部101に対応して径方向外側に広がるフランジ部77を備える。排気管71は、排気網100の外枠部101をフランジ部77に載置した状態で、ネジ止め等の連結手段によって処理容器10の底板33に固定される。これにより、プラズマ処理装置1は、排気管71の接続に伴って、処理容器10の排気口14bの隣接位置に排気網100を配置することができる。また、内側部102は、排気管71の配置状態で、ちょうど排気管71内の通路71aに対向配置される。
【0038】
外枠部101および内側部102は、ステンレス鋼(例えば、SUS304)またはアルミニウム等を主成分とする金属によって、相互に連続している。なお、排気網100は、イットリア(Y)等のセラミックスが表面に被覆されてもよい。セラミックス被膜により、排気網100はプラズマ耐性を有することができる。ただし、セラミックス被膜は、排気網100がRF回路において接地電位として機能する程度の膜厚にとどめておく必要がある。金属により形成されて排気管71に固定された排気網100は、排気管71および処理容器10を介して接地(接地電位に接続)される。
【0039】
図4は、排気網100のハニカム構造104を拡大した説明図である。図4(a)は、排気網100の内側部102の部分平面図、図4(b)は、(a)のIV-IV線の部分断面図である。排気網100の内側部102は、板状に形成され、相互に辺を共有して隣接する複数の六角形状(正六角形状)の貫通孔103が並ぶことでハニカム構造104を形成している。すなわち、図4(a)に示すように、内側部102は、複数の貫通孔103と、複数の貫通孔103の各々を囲う複数の孔辺105と、を有する。なお、各貫通孔103は、正六角形状以外の(例えば、扁平な)六角形状であってもよい。
【0040】
ハニカム構造104の各貫通孔103は、各孔辺105同士が平行に並ぶ方向(孔辺105の長手方向に直交する方向)に沿って配列されることで、排気網100の網目(メッシュ)を形成している。各孔辺105は、各貫通孔103の大きさに比べて細長く、また一定の幅で直線状に延在している。さらに、各孔辺105は、六角形状の各貫通孔103に応じて互いに同じ長さに形成されるとともに、互いに120°の角度で連結し合っている。このような複数の貫通孔103および複数の孔辺105を有することで、内側部102(排気網100)の開口率は、85%以上に設定される。つまり、ハニカム構造104によって、排気網100は、内側部102の開口率が大幅に高められ、排気口14bから通路71aにガスを容易に流通させることができる。
【0041】
また図4(b)に示すように、排気網100は、後述する製造方法によって、ハニカム構造104を有する複数の薄板(以下、薄板ハニカム網110という)同士が積層され、かつ当該複数の薄板ハニカム網110同士が接合されることにより形成される。そのため、排気網100は、複数の薄板ハニカム網110を厚み方向に接合した構成(接合部106)を有する。
【0042】
接合部106は、製造方法における適宜の接合手段によって生成される。例えば、接合部106は、拡散接合によって、下層の薄板ハニカム網110の原子と上層の薄板ハニカム網110の原子とがこれらの界面において互いに他方の薄板ハニカム網110に拡散しつつ界面を横断して新たに結晶粒を形成した状態を呈している。なお、接合部106は、拡散接合に限らず、下層の薄板ハニカム網110と上層の薄板ハニカム網110との電気的導通を維持することができる接合であれば、接着、溶接、圧着等の接合手段によって下層の薄板ハニカム網110と上層の薄板ハニカム網110とを接合したものでもよい。
【0043】
薄板ハニカム網110の厚みts(板厚:厚み方向の寸法)は、後記の孔辺105の幅We(隣接する2つの貫通孔103の間隔)に応じて設定されることが好ましく、例えば、孔辺105の幅Weと同じまたは孔辺105の幅Weよりも若干短いとよい。本実施形態に係る薄板ハニカム網110の厚みtsは、0.4mmに設定している。
【0044】
そして、複数の孔辺105の幅Weは、高周波の周波数f、比透磁率μ、真空の透磁率μ、導電率σを用いて下記の式(1)の表皮深さ(スキンデプス)δ以上に設定することが好ましい。孔辺105により構成される貫通孔103の内壁面に沿って高周波電力を流れ易くするためである。
【0045】
δ=1/(π×f×μ×μ×σ)1/2 ・・・(1)
【0046】
一例として、薄板ハニカム網110の材料としてSUS304を適用し、かつ高周波電力の周波数として3.2MHzを出力することを想定した場合、式(1)の表皮深さδは0.27mmとなる。このため、孔辺105の幅We(貫通孔103間の間隔)は、0.3mm以上の値とする。これにより、高周波電力が薄板ハニカム網110を接合して構成される排気網100の貫通孔103の内壁面を流れ易くなり、排気網100を介して高周波電力をグランドへ流すことができる。この結果、排気網100において異常放電が発生することを回避できる。例えば、孔辺105の幅Weは、0.3mm~1.0mm程度の範囲に設定してもよい。ただし、孔辺105の幅Weを広くすると開口率が下がり、コンダクタンスが低下し、ガスの排気効率が悪くなる。よって、孔辺105の幅Weは、0.4mm以下が好ましい。以上から、排気性能と放電安定性との両立を図るためには、薄板ハニカム網110の貫通孔103間の間隔は0.3mm以上0.4mm以下の範囲に設定することがより好ましい。
【0047】
本実施形態に係る孔辺105の幅Weは、0.4mmとしている。つまり、薄板ハニカム網110の孔辺105は、当該孔辺105の延在方向に直交する断面において、厚みtsが0.4mm、かつ幅Weが0.4mmの略正方形状を呈している。
【0048】
また、排気網100を構成する薄板ハニカム網110の積層枚数は、任意に設計してよく、例えば、2枚~15枚程度の範囲であることが好ましく、本実施形態では10枚としている。すなわち、複数の薄板ハニカム網110を積層した排気網100の全体の厚みTとしては、0.8mm~6.0mm程度の範囲に設定されることが好ましく、本実施形態では4.0mmとなる。排気網100の厚みTを0.8mm以上とすることで、プラズマがAPCバルブ73側に侵入することを抑制できる。
【0049】
排気網100の各貫通孔103の大きさは、処理容器10において高周波の電力により生成されるプラズマの侵入を抑制するために、各貫通孔103の六角形状の対向する2つの頂点を結ぶ線の長さEが高周波の波長よりも短い寸法になるように設定される。また、各貫通孔103は、処理容器10に使用される部品(例えば、M4のネジ)の落下を防ぐために、部品よりも小さな寸法に設定されることが好ましい。一例として、各貫通孔103を挟んで平行に延在する一対の孔辺105同士の間隔D(貫通孔103の幅)は、3.0mm~7.0mm程度の範囲に設定されるとよく、本実施形態では、4.77mm(=3/16インチ)に設定している。
【0050】
また、孔辺105間の間隔Dが4.77mmにおいて、排気網100の厚みTが2.0mmの時、放電が不安定となり、厚みTが4.0mmの時、排気特性が悪くなった。このことから、貫通孔103の幅(一対の孔辺105間の間隔D)は、排気網100の厚みTに対して1.4倍~2.0倍の範囲であることが好ましい。貫通孔103の幅が排気網100の厚みTの1.4倍よりも小さい場合には、開口率が低下してガスが流通し難くなる可能性が高まる。一方、貫通孔103の幅が排気網100の厚みTの2.0倍より大きい場合には、開口率が高まるもののプラズマが排気網100を通過し異常放電が起こり易くなる。
【0051】
また、貫通孔103の幅(一対の孔辺105同士の間隔D)に対する孔辺105の幅Weの割合としては、1/15~1/8程度の範囲であることが好ましい。この割合が1/15よりも小さい場合には、排気網100のプラズマの放電安定性や機械強度が低下し、この割合が1/8よりも大きい場合には、開口率が低下する可能性がある。
【0052】
図5は、排気網100の製造方法を示す工程説明図である。次に、図5を参照して、上記の排気網100を製造する製造方法について説明する。
【0053】
排気網100の製造において、製造者は、準備工程と、板加工工程と、接合工程と、を順に実施する。
【0054】
準備工程は、薄板ハニカム網110の基材となる複数の金属板120を準備する工程であり、製造者は、成形、購入等によって複数の金属板120を用意する。本実施形態において、複数の金属板120は、ステンレス鋼(SUS)の板であり、形成予定の薄板ハニカム網110の厚みtsと同じ厚みを有するものである。準備工程では、形成予定の薄板ハニカム網110の厚みtsと異なる厚みを有する板材に対して、適宜の加工(例えば、プレス)を行うことで、目的の厚みtsを得てもよい。
【0055】
板加工工程は、金属板120に複数の貫通孔103を形成することで、ハニカム構造104を有する薄板ハニカム網110を製作する工程である。例えば、板加工工程では、複数の金属板120の各々に対してエッチングを行う。
【0056】
金属板120にエッチングを行う装置としては、ウェットエッチングを行うエッチング装置(不図示)があげられる。この場合、製造者は、複数の貫通孔103を有するハニカム構造104の加工レシピをエッチング装置に入力するとともに、エッチング装置に金属板120をセットする。あらかじめ、ハニカム構造104の各孔辺105のマスクを金属板120上に形成し、さらにエッチング装置のエッチング液に金属板120を浸漬することで、マスクから露出している箇所に貫通孔103を形成する。打抜きなどの機械加工などにおいてはバリ等が生じることがあるが、このように板加工工程においてエッチングを行うことで、金属板120にバリ等の加工あとが生じることを抑制できる。なお、板加工工程では、エッチングに限らず、バリ等の生じない方法であれば、他の加工方法によって、複数の貫通孔103を各金属板120に形成してもよい。なお、上記のウェットエッチングによる貫通孔103の形成と同時に、薄板ハニカム網110の外周形状を形成してもよく、また、貫通孔103の形成に先立ち、予め金属板120を薄板ハニカム網110の外周形状に加工しておいてもよい。
【0057】
接合工程は、板加工工程で形成した複数の薄板ハニカム網110同士を積層し、当該複数の薄板ハニカム網110同士を接合することにより、厚板化した排気網100を製作する工程である。この際、製造者は、複数の薄板ハニカム網110の各貫通孔103同士が相互に連通するように、薄板ハニカム網110同士を位置決めしつつ、薄板ハニカム網110を積層していく。例えば、複数の薄板ハニカム網110を積層する場所(例えば、接合作業の作業台等)には、六角形状の貫通孔103よりも若干小さい幾つかのピン(不図示)が起立しており、これらのピンの各々に各貫通孔103を挿入することで、各薄板ハニカム網110同士を相互に位置決めするとよい。
【0058】
また例えば、複数の薄板ハニカム網110同士を接合する方法としては、拡散接合(真空拡散接合またはアルゴン拡散接合を含む)を行うことがあげられる。この場合、製造者は、拡散接合装置(不図示)を用いて、積層した複数の薄板ハニカム網110に加圧および加熱(ホットプレス)を行う。これにより、相互に積層し合う薄板ハニカム網110間の界面の金属原子同士が拡散により混合して空隙が消失していき、界面を横断して、新たに金属原子の結晶粒(接合部106)が形成されて薄板ハニカム網110同士が接合される。
【0059】
以上の製造方法によって製造された排気網100は、バリや段差がない綺麗なハニカム構造104の厚板となる。すなわち、板加工工程および接合工程を経た排気網100の各貫通孔103は、排気網100の厚み方向(複数の薄板ハニカム網110の積層方向)に沿って滑らかに連続し、複数の薄板ハニカム網110の高い開口率を維持する。したがって、排気網100は、厚み方向にガスを安定的に通過させることを可能とし、また適宜の厚みTによってプラズマの異常放電を抑制することができる。
【0060】
図6は、排気網の排気性能を確認した実験結果を示す説明図である。図6(a)は、処理容器10内の圧力を10mT(1.33Pa)に調圧した際における排気網の排気性能を示すグラフを示す。横軸はAPCバルブ73の開口度であり、縦軸はマスフローコントローラ26により処理容器10に供給される酸素ガスの供給流量[slm]である。すなわち、処理容器10内の圧力を10mTに調圧している最中において、処理容器10内に供給されるガスの供給流量の変化は、処理容器10から排気部70に排出されるガスの排気量に相当する。
【0061】
また、図6(a)のグラフ中では、本実施形態に係るハニカム構造104を有する排気網100(以下、ハニカム排気網Aという)を適用した場合の流量変化を実線で示す。そして、従来技術であり比較例に係る複数の丸孔130を有する排気網(以下、丸孔排気網Bという)を適用した場合の流量変化を破線で示す。図6(b)は、実験で使用したハニカム排気網Aを例示する拡大平面図である。図6(c)は、実験で使用した丸孔排気網Bを例示する拡大平面図である。
【0062】
ハニカム排気網Aの各貫通孔103の大きさ(一対の孔辺105の間隔D)は、上記したように4.77mmであり、この場合のハニカム排気網A全体の開口率は85.1%となる。これに対して、丸孔排気網Bの各丸孔130の直径は、5mmであるが、丸孔排気網B全体の開口率は62.9%となる。ハニカム排気網Aおよび丸孔排気網Bのいずれも直径(外径)は350mmである。ハニカム排気網Aの厚みは3mm、丸孔排気網Bの厚みは2mmである。
【0063】
図6(a)に示すように、ハニカム排気網Aおよび丸孔排気網Bの両方とも、APCバルブ73の開口度が増えるにつれて、処理容器10へのガスの供給流量が増加している。つまり、処理容器10内の圧力は一定であるので、ガスの供給流量の増加は排気量が増えていることを意味している。ただし、APCバルブ73の開口度が大きくなる程、ハニカム排気網Aのほうが丸孔排気網Bよりもガスの供給流量が増えている。例えば、APCバルブ73の開口度が400の場合に、丸孔排気網Bの供給流量が4.55[slm]のであるのに対して、ハニカム排気網Aの供給流量が4.8[slm]となっている。すなわち、ハニカム排気網Aは、丸孔排気網Bよりも処理容器10から排気部70へガスを多く排気しており、ハニカム排気網Aの排気性能のほうが丸孔排気網Bの排気性能よりも優れていると言える。なお、実験においてはそれぞれの排気網の製造上の制約などにより単純比較できない部分もあるが、六角形状の貫通孔103の配置と丸孔130の配置とについて究極的に考えると、以下のように考えられる。六角形状の貫通孔103の場合、貫通孔103間の距離を0に近づけると開口率は100%に近づく。一方、丸孔130の場合、丸孔130間の距離を0に近づけても3つの丸孔130の開口の間に余白部が残り、開口率は約93%程度が限界となる。このことからも、ハニカム排気網Aの方が、丸孔排気網Bよりも開口率が優れていることがわかる。
【0064】
図7は、処理容器10内の圧力の変化およびプラズマの出力の変化における放電安定性を示す表である。また、図7(a)は、本実施形態に係るハニカム構造104を有する排気網100(ハニカム排気網A)を適用した場合であり、図7(b)は、比較例に係る複数の丸孔130を有する排気網(丸孔排気網B)を適用した場合である。放電安定性は、複数の貫通孔103または複数の丸孔130に対する異常放電の発生を目視によって観察したものである。具体的には、プラズマによる発光が各貫通孔103または各丸孔130に生じていない場合には、放電安定性があると判定してOKを記載している。プラズマによる発光が貫通孔103または丸孔130に生じた場合には、放電安定性がないと判定してNGを記載している。
【0065】
図7(b)に示すように、丸孔排気網Bは、処理容器10の圧力が15mT(2.00Pa)以下では放電安定性がある。一方、丸孔排気網Bは、処理容器10の圧力が20mT(2.67Pa)、かつプラズマの出力(高周波電力)が11.1kW以上の場合に、放電安定性がない。また、丸孔排気網Bは、処理容器10の圧力が25mT(3.33Pa)~35mT(4.67Pa)の場合には、プラズマの出力が5.5kW以上で異常放電が生じている。そして、丸孔排気網Bは、処理容器10の圧力が40mT(5.33Pa)の場合に、プラズマの出力に関係なく放電安定性がなくなっている。
【0066】
これに対し、図7(a)に示すように、ハニカム排気網Aは、処理容器10の圧力が20mT(2.67Pa)以下では異常放電が生じていない。そして、ハニカム排気網Aは、処理容器10の圧力が25mT(3.33Pa)、かつプラズマの出力(高周波電力)が18.0kW以上の場合に、放電安定性がない。また、ハニカム排気網Aは、処理容器10の圧力が30mT(4.00Pa)、かつプラズマの出力が8.3kW以上の場合に、放電安定性がない。さらにハニカム排気網Aは、処理容器10の圧力が35mT(4.67Pa)~40mT(5.33Pa)の場合には、プラズマの出力が5.5kW以上になると、放電安定性がない。このため、ハニカム排気網Aは、処理容器10の圧力が40mT(5.33Pa)の場合にも、低いプラズマ出力においては放電安定性が得られている。
【0067】
図7(a)および図7(b)から分かるように、ハニカム排気網Aは、丸孔排気網Bよりも放電安定性が得られやすく、放電安定領域が拡大している。すなわち、ハニカム排気網Aは、放電安定性の観点で丸孔排気網Bよりも優れていると言える。
【0068】
以上のように、本開示の一態様に係る排気網100の製造方法は、複数の六角形状の貫通孔103が並ぶハニカム構造104を、排気網100に対して精度よく形成することが可能となる。そして、排気網100の開口率がハニカム構造104によって大幅に高められるので、排気網100は、ガスを排気する際の排気性能を向上させることができる。また、排気網100の製造方法では、複数の薄板ハニカム網110同士を接合して厚板化する。これにより、排気網100は、プラズマの異常放電を低減して、放電安定性を一層向上させる。つまり、排気網100は、排気性能と放電安定性の両方を高めることができる。
【0069】
また、排気網100におけるハニカム構造104の開口率は、85%以上である。これにより、排気網100は、排気性能をより向上させることができる。
【0070】
また、複数の貫通孔103のうち相互に隣接する貫通孔103同士の間隔は、0.3mm~0.4mmの範囲である。これにより、排気網100は、複数の貫通孔103同士の間を延在する孔辺105の幅Weが狭くなり、開口率を一層容易に高めることができる。
【0071】
また、複数の貫通孔103を挟んで平行に延在する一対の孔辺105間の間隔Dは、排気網100の厚みTに対して1.4倍~2.0倍の範囲である。これにより、排気網100は、複数の貫通孔103のサイズを大きくして排気性能を向上させつつ、厚み方向に沿った貫通孔103の長さを充分にとることで放電安定性を向上させることができる。
【0072】
また、接合工程では、複数の薄板ハニカム網110同士を拡散接合により接合する。これにより、排気網100の製造方法は、複数の薄板ハニカム網110同士を強固に固定し、かつバリや段差を抑制した排気網100を安定的に製作することができる。
【0073】
また、板加工工程では、複数の金属板120の各々に複数のハニカム形状のマスクを介してウェットエッチングを行うことにより、複数の貫通孔103を形成する。これにより、排気網100の製造方法は、薄板ハニカム網110を効率的かつ精度よく形成することが可能となる。
【0074】
また、本開示の一態様に係る基板Gをプラズマ処理するプラズマ処理装置1は、基板Gを載置する載置台(ステージ40)を備えた処理容器10と、処理容器10に設けられた排気口14bに接続される排気管71と、排気管71に設けられ、処理容器10内のガスを排気する排気機構72と、ステージ40から排気口14bを介して排気管71の排気機構72に至るまでの間の位置に設けられる排気網100と、を含み、排気網100は、複数の六角形状の貫通孔103が隣接するハニカム構造104を有するとともに、複数の薄板ハニカム網110を厚み方向に接合した構成を有することで厚板化している。これにより、プラズマ処理装置1は、排気性能および放電安定性を向上させることができる。
【0075】
また、排気網100は、複数の薄板ハニカム網110同士を拡散接合により接合した構成を有する。これにより、接合部106を有する排気網100は、バリや段差が抑制されつつ厚板化し、排気性能および放電安定性を一層向上させることができる。
【0076】
また、排気網100が設けられる位置は、排気網100によって排気口14bが覆われる位置である。プラズマ処理装置1は、排気網100により排気口14bを覆うことで、排気網100よりも下流側に接続される排気管71へのプラズマの侵入を良好に抑制することができる。
【0077】
また、本開示の一態様に係る排気網は、基板Gをプラズマ処理するプラズマ処理装置1に設けられる排気網100であって、複数の六角形状の貫通孔103が隣接するハニカム構造104を有するとともに、複数の薄板ハニカム網110を厚み方向に接合した構成を有することで厚板化している。これにより、排気網100は、プラズマ処理装置1の排気性能および放電安定性を向上させることができる。
【0078】
また、排気網100は、複数の薄板ハニカム網110同士を拡散接合により接合した構成を有する。これにより排気網100は、バリや段差が抑制されつつ厚板化される。
【0079】
今回開示された実施形態に係る排気網100の製造方法、プラズマ処理装置1および排気網100は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0080】
本開示のプラズマ処理装置1は、PE-ALD(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition)、PE-CVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)及びドライエッチングのいずれのタイプの装置でも適用可能である。プラズマ処理装置1にてプラズマ処理される対象は、例えば、G6の1.5m×1.85mの基板および他の寸法の矩形の基板が挙げられるが、これに限定されず、円盤形状のウエハ等の種々の部材を対象とし得る。
【符号の説明】
【0081】
1 プラズマ処理装置
10 処理容器
14b 排気口
40 ステージ
71 排気管
72 排気機構
100 排気網
103 貫通孔
104 ハニカム構造
106 接合部
110 薄板ハニカム網
120 金属板
G 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7