(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022568
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】洗眼組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20230208BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230208BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230208BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20230208BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230208BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/08
A61K47/10
A61K31/4415
A61P27/02
A61P27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127504
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】見目 晃平
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD37
4C076EE37
4C076FF52
4C076FF57
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC18
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
【課題】清涼感をより長く感じることができ、VDT作業に伴う眼症状を改善できる洗眼組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(B)清涼化剤を含有する、VDT(Visual Display Terminals)作業に伴う眼症状改善用洗眼組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(B)清涼化剤を含有する、VDT(Visual Display Terminals)作業に伴う眼症状改善用洗眼組成物。
【請求項2】
更に、(C)ピリドキシン、コンドロイチン硫酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の洗眼組成物。
【請求項3】
前記VDT作業に伴う眼症状が、ピント調節機能の低下、乾燥感、異物感、ドライアイ及び眼精疲労からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の洗眼組成物。
【請求項4】
前記成分(B)がモノテルペンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の洗眼組成物。
【請求項5】
コンタクトレンズ装着中に使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の洗眼組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
洗眼組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコンをはじめとするディスプレイ付き端末の普及、インターネットの普及等により、VDT(Visual Display Terminals)作業は日常生活に広く浸透している。一方、このようなVDT作業を続けると、瞬きの回数が減少し、眼に汚れが溜まりやすくなったり涙液の分泌量が少なくなることから、VDT作業は乾燥感、異物感、ドライアイ、眼精疲労等の原因になる。また、ブルーライトが眼精疲労等の原因になるともいわれている。従来、例えば、(a)メチルセルロース及び、(b)ポリエチレングリコール、クエン酸及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、熱ゲル化人工涙液が知られており、該製剤によれは涙液を増加できると報告されている(特許文献1)。
【0003】
また、洗眼薬を用いて眼を洗浄することは、眼の汚れを軽減したり眼を潤すといった点から有用である。また、清涼化剤を含有する洗眼薬を用いて眼をスッキリさせることにより、一時的に眼の疲労感を軽減することができ、また、このような清涼感が好まれる傾向がある。しかし、清涼感は長続きしないことも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者は、清涼感をより長く感じることができ、VDT作業に伴う眼症状を改善できる洗眼組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、ヒアルロン酸と清涼化剤とを組み合わせて用いることにより、清涼感をより長期化させながら、VDT(Visual Display Terminals)作業に伴う眼症状を改善できることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.(A)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(B)清涼化剤を含有する、VDT(Visual Display Terminals)作業に伴う眼症状改善用洗眼組成物。
項2.更に、(C)ピリドキシン、コンドロイチン硫酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1に記載の洗眼組成物。
項3.前記VDT作業に伴う眼症状が、ピント調節機能の低下、乾燥感、異物感、ドライアイ及び眼精疲労からなる群より選択される少なくとも1種である、項1または2に記載の洗眼組成物。
項4.前記成分(B)がモノテルペンである、項1~3のいずれか一項に記載の洗眼組成物。
項5.コンタクトレンズ装着中に使用される、項1~4のいずれか一項に記載の洗眼組成物。
【発明の効果】
【0007】
ヒアルロン酸と清涼化剤とを組み合わせて用いることにより、清涼感をより長期化させながら、VDT作業に伴う眼症状を改善できる洗眼組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に包含される実施形態について更に詳細に説明する。
【0009】
本開示は、(A)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(B)清涼化剤を含有する、VDT(Visual Display Terminals)作業に伴う眼症状改善用洗眼組成物を包含する。
【0010】
ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(成分(A)と称する場合がある)は、公知の成分であり、塩として好ましくはナトリウム塩等のアルカリ金属塩等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
成分(A)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該洗眼組成物中、好ましくは0.002~0.03w/v%、より好ましくは0.005~0.03w/v%、更に好ましくは0.01~0.03w/v%、特に好ましくは0.015~0.03w/v%が例示される。
【0012】
清涼化剤(成分(B)と称する場合がある)は、洗眼組成物の成分として眼に適用できるものであればよく、好ましくはモノテルペンが例示される。本開示を制限するものではないが、清涼化剤としてゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ネロール、リナロール等の非環式モノテルペン、リモネン、メントール、チモール、カルバクロール等の環式モノテルペン、ピネン、カンフル、ボルネオール、イソボルネオール、シネオール等の複環式モノテルペン等のモノテルペンが例示され、より好ましくはメントール、ボルネオール、カンフル等が例示される。清涼化剤においてd体、l体、dl体等が存在する場合、その別は問わず、いずれであってもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
成分(B)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該洗眼組成物中、好ましくは0.001~0.02w/v%、より好ましくは0.002~0.01w/v%、更に好ましくは0.004~0.008w/v%が例示される。また、成分(B)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該洗眼組成物中、成分(A)1質量部あたり、好ましくは0.2~6質量部、より好ましくは0.2~4質量部、更に好ましくは0.2~0.5質量部が例示される。
【0014】
本開示の洗眼組成物は、更にピリドキシン、コンドロイチン硫酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(成分(C)と称する場合がある)を含有してもよい。眼の疲労改善、乾燥改善、異物感改善、ピント調節機能改善等のVDT作業に伴う眼症状を一層改善する観点から、成分(C)を配合することが好ましく例示される。成分(C)は公知の成分であり制限されないが、ピリドキシンの塩として塩酸塩(塩酸ピリドキシン)、リン酸塩等の無機酸塩が例示される。
【0015】
コンドロイチン硫酸は、D-グルクロン酸とN-アセチルガラクトサミンの2糖が反復する糖鎖に硫酸がエステル結合した構造を有するムコ多糖である。コンドロイチン硫酸の塩としては、本発明を制限するものではないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が例示される。本発明を制限するものではないが、コンドロイチン硫酸の塩として、好ましくは、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム等が例示される。
【0016】
本開示において使用されるコンドロイチン硫酸やその塩はこの限りにおいて制限されないが、その分子量として、好ましくは重量平均分子量が0.5万~4.5万程度が例示され、より好ましくは1万~4万程度、更に好ましくは1.5万~3万程度が例示される。重量平均分子量はゲルろ過クロマトグラフィーにより測定される。コンドロイチン硫酸やその塩は市販されており、例えば商品名局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業株式会社製、重量平均分子量20000)で販売されている。
【0017】
ピリドキシンやその塩、コンドロイチン硫酸やその塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本開示の洗眼組成物が成分(C)を含有する場合、その含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該洗眼組成物中、成分(C)は好ましくは0.005~0.1w/v%、より好ましくは0.01~0.08w/v%、更に好ましくは0.02~0.08w/v%が例示される。また、成分(C)の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該洗眼組成物中、成分(A)1質量部あたり、好ましくは0.1~7質量部、より好ましくは0.3~5質量部、更に好ましくは0.5~3質量部が例示される。
【0019】
また、本開示を制限するものではないが、より好ましくは、ピリドキシン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種は、該洗眼組成物中、0.001~0.02w/v%、更に好ましくは0.005~0.02w/v%、特に好ましくは0.005~0.01w/v%が例示される。
【0020】
また、本開示を制限するものではないが、より好ましくは、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が、該洗眼組成物中、0.005~0.05w/v%、更に好ましくは0.02~0.05w/v%、特に好ましくは0.03~0.05w/v%が例示される。
【0021】
本開示の洗眼組成物は、点眼や洗眼における使用に許容可能な任意の他の成分を更に含有してもよい。該他の成分として、本開示を制限するものではないが、緩衝剤、安定剤、等張化剤、溶剤(水等)、pH調整剤、薬効成分、防腐剤、刺激剤、増粘剤等が例示される。該他の成分は、本開示の効果を妨げないことを限度として、目的等に応じて適宜選択すればよく、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合量も適宜決定すればよい。なお、前記成分(A)~(C)は、その成分に応じて例えば薬効成分等としても知られているが、本開示において前記成分(A)~(C)は該任意の他の成分には包含されない。
【0022】
該他の成分の一例として緩衝剤を挙げると、緩衝剤としてホウ酸、ホウ砂等が例示される。緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、該組成物がホウ酸を含有する場合、ホウ酸の含有量は、本開示の効果を妨げない限り制限されず、該組成物中、好ましくは0.1~2.5w/v%が例示され、より好ましくは0.5~2w/v%が例示される。例えば、該組成物がホウ砂を含有する場合、ホウ砂の含有量は、本開示の効果を妨げない限り制限されず、該組成物中、好ましくは0.005~0.5w/v%が例示され、より好ましくは0.005~0.05w/v%が例示される。該組成物は、ホウ酸やホウ砂以外の緩衝剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。また、ホウ酸とホウ砂の一方のみを配合してもよい。
【0023】
該他の成分の一例として安定剤を挙げると、安定剤としてポリソルベート(ポリソルベート80、ポリソルベート60等)、ポリオキシエチレン(POE)硬化ヒマシ油(POE(80)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油等、括弧内の数字は酸化エチレンの平均付加モル数を意味する)、POEポリオキシプロピレングリコール、エデト酸ナトリウム(水和物を含む)等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。該組成物が安定剤を含有する場合、その含有量は、本開示の効果を妨げない限り制限されず、該組成物中、好ましくは0.01~0.5w/v%が例示され、より好ましくは0.02~0.5w/v%が例示される。該組成物が安定剤を含有する場合、例えばポリソルベート、POE硬化ヒマシ油、エデト酸ナトリウム及びPOEポリオキシプロピレングリコールから選択されるいずれか1種のみ、または2種のみを含有してもよく、また、ポリソルベートを含有する場合、POE硬化ヒマシ油、エデト酸ナトリウム及び/またはPOEポリオキシプロピレングリコールを配合しないで調製することもできる。
【0024】
該他の成分の一例として薬効成分を挙げると、薬効成分として、アミノ酸類、抗炎症剤、ビタミン類、抗ヒスタミン剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本開示を制限するものではないが、例えばアミノ酸類として、グルタミン酸及びその塩等のアミノ酸及びその塩;タウリンなどのアミノ酸類似物等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の洗眼組成物は、アミノ酸及び/またはその塩を配合しないで調製することもできる。ここでいうアミノ酸とは、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ蛋白質の構成ユニットとなりえるアミノ酸を意味し、例えばL-アスパラギン酸等が含まれる。また、本開示の洗眼組成物は、アミノ酸類似物を配合しないで調製することもできる。
【0026】
本開示を制限するものではないが、例えば抗炎症剤として、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸及びその塩等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示を制限するものではないが、該組成物は好ましくは硫酸亜鉛及び/または乳酸亜鉛を含有しない。また、該組成物は、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸及びその塩を配合しないで調製することもできる。
【0027】
本開示を制限するものではないが、例えばビタミン類として、ビタミンA(パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール、レチノール、レチナール、レチノイン酸等)、ビタミンB(フラビンアデニンジヌクレオチド、シアノコバラミン等)、ビタミンE(酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、リノレン酸トコフェロール等)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示を制限するものではないが、該組成物は、ビタミン類の少なくとも1種を配合しないで調製することもできる。
【0028】
本開示を制限するものではないが、例えば抗ヒスタミン剤として、クロルフェニラミン及びその塩(マレイン酸クロルフェニラミン等)、ジフェンヒドラミン及びその塩(ジフェンヒドラミン塩酸塩等)等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の組成物は、抗ヒスタミン剤を配合しないで調製することもできる。
【0029】
本開示の組成物が薬効成分を含有する場合、本開示の効果を妨げない限り、薬効成分の含有量は制限されず、該組成物中、薬効成分の含有量は好ましくは0.02~0.25w/v%、より好ましくは0.1~0.25w/v%、更により好ましくは0.2~0.25w/v%が例示される。
【0030】
該他の成分の一例として防腐剤を挙げると、防腐剤として第4級アンモニウム塩系防腐剤(ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物等)、パラオキシ安息香酸エステル類(パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸エステル、パラオキシ安息香酸エステルの塩(ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等)等)、クロロブタノール、ソルビン酸類(ソルビン酸、ソルビン酸の塩(カリウム塩等のアルカリ金属塩等)等)等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示を制限するものではないが、本開示の洗眼組成物は防腐剤を配合せず調製することもできる。
【0031】
該他の成分の一例として刺激剤を挙げると、刺激剤としてプロピオンアルデヒド等のアルデヒド等が例示される。本開示の洗眼組成物は、刺激剤を含有してもよく、刺激剤を配合せず調製することもできる。
【0032】
該他の成分の一例として増粘剤を挙げると、増粘剤としてアルギン酸やその塩、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、これらの塩、グリセリン等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の洗眼組成物は、これらの増粘剤を配合せず調製することもできる。
【0033】
本開示の洗眼組成物は、前記成分(A)及び(B)、必要に応じて前記成分(C)、前記他の成分を混合することにより製造することができる。該混合は、これらの成分を混合できる限り制限されず、通常の手順に従い混合すればよい。
【0034】
本開示の洗眼組成物のpHは、点眼剤や洗眼剤として使用可能な範囲であれば制限されないが、室温(25℃)でpH5~8、好ましくはpH5.5~7、より好ましくはpH5.5~6.5、更に好ましくはpH5.5~6、特に好ましくはpH5.5~5.8が例示される。
【0035】
本開示の洗眼組成物の形態は、室温で液状であり、従来公知の方法と同様に眼を洗浄できる限りその使用方法は制限されず、通常、洗眼カップ(アイカップ)を用いた洗眼に使用されるか、点眼による洗眼に使用される。
【0036】
本開示の洗眼組成物は、コンタクトレンズを装着した状態で使用してもよく、装着していない状態で使用してもよい。コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズの別を問わない。
【0037】
本開示の洗眼組成物は、前述のようにして使用できる限り制限されないが、洗眼カップを用いて使用される場合、通常、従来公知の洗眼用に用いられる一般的な容器(例えば、容器本体、キャップを含む)に収容すればよい。該容器の容量も制限されないが、使い勝手が良い等の観点から、容量は好ましくは450~550mLが例示される。
【0038】
洗眼カップを用いる洗眼は、通常の手順に従えばよく、例えば、洗眼カップに本開示の洗眼組成物を前記容器から適量、例えば1眼あたり1回に4~6mLを注ぎ、次いで、該カップを片側の眼周辺に押し当てて該カップ内の洗眼組成物と眼とを接触させ、数回まばたきを行うことにより使用される。該組成物の1日あたりの使用回数も制限されず、例えば、1眼あたり1日1~6回が例示される。
【0039】
また、本開示の洗眼組成物が点眼による洗眼に使用される場合、使い勝手が良い等の観点から、該組成物は、通常、点眼容器に収容して使用される。点眼容器としては、該組成物を収容して点眼できる限り制限されず、例えば、従来公知の点眼剤や点眼型洗眼剤等に使用されている点眼容器(例えば、容器本体、中栓(ノズル)及びキャップの少なくとも2つが一体型となっているタイプ)が例示される。該容器の容量も制限されないが、使い勝手が良い等の観点から、容量は8~20mLが例示される。
【0040】
点眼による洗眼は、通常の使用方法に従えばよく、本開示の洗眼組成物を、1眼あたり1回に4~6滴点眼することにより使用される。1滴あたりの滴下量も制限されないが、1滴あたり、好ましくは35~40μLが例示される。また、該組成物の1日あたりの使用回数も特に制限されず、例えば、1眼あたり1日2~8回が例示される。
【0041】
本開示の洗眼組成物によれば、前記成分(A)と(B)を組み合わせて用いることにより、清涼感を長期化させることができる。また、本開示の洗眼組成物によれば、前記成分(A)と(B)を組み合わせて用いることにより、眼のピント調節機能の低下、乾燥感、異物感、ドライアイ、眼精疲労等のVDT作業に伴う眼症状を改善できる。また、本開示の洗眼組成物によれば、前記成分(A)及び(B)と共に前記成分(C)を用いることにより、清涼感を長期化させながら、VDT作業に伴う眼症状を一層改善できる。該組成物が前述の薬効成分等を更に含有している場合は、該薬効成分等に基づく有用作用も得ることができる。
【実施例0042】
以下、例を示して本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されない。
【0043】
試験例1:清涼感
洗眼組成物の調製
次の表1に示す配合割合に従い各成分を混合し、得られた混合物を滅菌フィルターに通して、洗眼組成物を得た(実施例1~3、比較例1及び2)。製造直後の各組成物のpHを測定した。pHは、室温(25℃)で、卓上型pHメーターF-52(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0044】
清涼感の評価
パネラー6名に、アイカップを用いた一般的な洗眼方法に従って、各洗眼組成物を用いて30秒間洗眼させた(片目5mLずつ、裸眼の状態で両眼使用)。洗眼直後から清涼感が続いた時間(パネラーが清涼感を感じた時間)を計測させた。比較例1の洗眼組成物を用いた場合の清涼感持続時間を100として、次の式に従い、各洗眼組成物を用いた場合の値(清涼感延長率)を算出した(小数点第1位を四捨五入)。
清涼感延長率(%)=洗各洗眼組成物を用いた場合の清涼感持続時間×100/比較例1の洗眼組成物を用いた場合の清涼感持続時間
【0045】
結果
結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
表1に示す通り、清涼化剤とヒドロキシエチルセルロースとを併用した比較例2の洗眼組成物では清涼感延長率が75であり、これは、清涼化剤を用いるもののヒドロキシエチルセルロースを用いていない比較例1の洗眼組成物の持続時間(清涼感持続100)と比較して劣るものであった。
【0048】
これに対して、清涼化剤とヒアルロン酸ナトリウムとを併用した実施例1の洗眼組成物では清涼感延長率が120であり、比較例1の洗眼組成物よりも清涼感の持続時間を長期化できることが分かった。なお、比較例2で使用したヒドロキシエチルセルロースと実施例1で使用したヒアルロン酸ナトリウムはいずれも増粘剤(粘稠剤)としても知られていることから、ヒドロキシエチルセルロースを用いた場合とヒアルロン酸ナトリウムとにおいて同様の結果となることが予想された。しかし、予想とは異なって、前述の通り、ヒドロキシエチルセルロースを併用しても清涼感の長期化は認められず、ヒアルロン酸ナトリウムを併用した場合に清涼感の長期化が認められた。また、実施例1よりもヒアルロン酸ナトリウムを多く配合した実施例2及び3の洗眼組成物では、清涼感の更なる長期化が認められた。また、ソフトコンタクトレンズを装着した状態のまま、実施例2の洗眼組成物で洗眼した場合においても、裸眼で洗眼した実施例2と同程度の清涼感延長率が確認された。
【0049】
このことから、清涼化剤とヒアルロン酸とを組み合わせて使用することにより、清涼感を一層長く持続できることが分かった。
【0050】
試験例2:ピント調節機能、乾燥感、異物感
洗眼組成物の調製
次の表2に示す配合割合に従い各成分を混合し、得られた混合物を滅菌フィルターに通して、洗眼組成物得た(実施例2~5、比較例1、3及び4)。pHは試験例1と同様にして測定した。なお、表中のコンドロイチン硫酸エステルNaは、局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム(重量平均分子量20000)を使用した。
【0051】
ピント調節機能、乾燥感、異物感の評価
パソコン作業(所謂PC作業)を1日8時間以上続けたパネラー9名に、アイカップを用いた一般的な洗眼方法に従って、各洗眼組成物で1日3回1週間継続して洗眼をさせた(1回片目5mLずつ、裸眼の状態で両眼使用)。
【0052】
洗眼組成物使用前(試験開始前:初期)と1週間使用後のピント調節に要する時間(ピントが合うまでの秒数)を、アコモドメーター(型番HS-9E、興和株式会社製)を用いて測定した。アコモドメーターは、ピント調節機能(能力)の検査に用いられる装置である。次の式に従い、ピント調節改善率を算出し、9名の平均改善率を下記の基準にあてはめることにより、ピント調節改善効果を評価した。
ピント調節改善率(%)=(初期に要したピント調節時間(秒)-1週間使用後に要したピント調節時間(秒))×100/初期に要したピント調整時間(秒)
【0053】
<基準>
×:0~5%未満
△:5%以上10%未満
〇:10%以上20%未満
◎:20%以上30%未満
◎◎:30%以上
【0054】
目の乾燥感、異物感については、初期と比較して1週間使用後に眼の乾燥感、異物感が改善したかどうかについてアンケート評価を行った。該アンケートは、「大きく改善した」、「改善した」、「やや改善した」、「どちらともいえない」、「悪化した」の5段階の尺度で行い、「大きく改善した」~「改善した」と答えたパネラーの人数を、それぞれ眼の乾燥感改善のスコア、眼の異物感改善のスコアとした。該スコアを次の基準にあてはめることにより、各改善効果を評価した。なお、改善の程度はパネラー間で予め照らし合わせて基準の統一化を図った。
【0055】
<基準>
×:スコア1以下
△:スコア2~3
○:スコア4~5
◎:スコア6~7
◎◎:スコア8~9
【0056】
結果
結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
表2に記載する比較例1の洗眼組成物は、前述の表1に記載する比較例1と同じである。表2に示す通り、清涼化剤を配合した比較例1の洗眼組成物と、比較例1において更にピリドキシン塩酸塩を配合した比較例3の洗眼組成物では、ピント調節改善結果が×または△であり、所望の改善効果が得られなかった。また、これらの洗眼組成物では、眼の乾燥感改善結果、異物感改善結果が×または△であり、所望の改善効果が得られなかった。また、清涼化剤及びピリドキシン塩酸塩を配合せず、ヒアルロン酸ナトリウムを配合した比較例4の洗眼組成物ではピント調節改善結果が×であり、眼の乾燥感改善結果が○、異物感改善結果が△であり、比較例1、3の洗眼組成物よりも乾燥感、異物感の改善が認められたが、その改善効果は十分ではなかった。
【0059】
これに対して、清涼化剤とヒアルロン酸ナトリウムとを配合した実施例2、3の洗眼組成物ではピント調節改善結果、眼の乾燥感改善結果、異物感改善結果のいずれも◎であった。このことから、清涼化剤とヒアルロン酸ナトリウムとを組み合わせて用いることにより、ピント調節機能、眼の乾燥感、異物感を改善できることが分かった。また、このことから、清涼化剤とヒアルロン酸ナトリウムとの組み合わせは、ドライアイ症状の改善にも有用であることが分かった。実施例2において更にピリドキシンを配合した実施例4の洗眼組成物では、ピント調節改善結果、眼の乾燥感改善結果、異物感改善結果がいずれも◎◎であり、実施例2の洗眼組成物よりも一層顕著にピント調節機能、眼の乾燥感、異物感を改善できることが分かった。また、実施例4において更にコンドロイチン硫酸エステルナトリウムを配合した実施例5の洗眼組成物でも、ピント調節改善結果、眼の乾燥感改善結果、異物感改善結果がいずれも◎◎であり、ピント調節機能、眼の乾燥感、異物感を顕著に改善できることが分かった。また、ソフトコンタクトレンズを装着した状態のまま、実施例2、4、及び5の洗眼組成物で洗眼した場合においても、それぞれ、裸眼で洗眼した実施例2、4及び5と同程度にピント調節機能、眼の乾燥感、異物感を改善できた。
【0060】
このことから、清涼化剤とヒアルロン酸とを組み合わせて使用することにより、VDT作業に伴う眼症状を改善できることが分かった。また、更にピリドキシンやコンドロイチンを組み合わせて使用することにより、VDT作業に伴う眼症状を改善できることが分かった。また、表2から理解できる通り、ピリドキシンやコンドロイチンの配合量が非常に少量であるにもかかわらず、VDT作業に伴う眼症状を効果的に改善できることが分かった。また、結果には示さないが、表2に示す各実施例の洗眼組成物においても、比較例1の洗眼組成物よりも清涼感を一層長く持続できた。
【0061】
試験例3:眼の疲労感
洗眼組成物の調製
次の表3に示す配合割合に従い各成分を混合し、得られた混合物を滅菌フィルターに通して、洗眼組成物得た(実施例4、6及び7、比較例1、3及び5)。pHは試験例1と同様にして測定した。
【0062】
眼の疲労感の評価
パネラー6名に、パソコン作業(所謂PC作業)を3時間させたのち、アイカップを用いた一般的な洗眼方法に従って、各洗眼組成物を用いて洗眼させた(片目5mLずつ、裸眼の状態で両眼使用)。洗眼15分後に疲労感が改善したかどうかについてアンケート評価を行った。該アンケートは、「大きく改善した」、「改善した」、「やや改善した」、「どちらともいえない」、「悪化した」の5段階の尺度で行い、「大きく改善した」~「改善した」と答えたパネラーの人数を、疲労感改善のスコアとした。該スコアを次の基準にあてはめることにより、眼の疲労感改善効果を評価した。なお、改善の程度はパネラー間で予め照らし合わせて基準の統一化を図った。
【0063】
<基準>
×:スコア1以下
△:スコア2~3
○:スコア4~5
◎:スコア6
【0064】
結果
結果を表3に示す。
【0065】
【0066】
表3に記載する比較例1、3の洗眼組成物は、前述の表1または2に記載する比較例1、3と同じである。表3に示す通り、比較例1の洗眼組成物と、比較例1の洗眼組成物にピリドキシン塩酸塩を配合した比較例3の洗眼組成物ではいずれも疲労感改善結果が×であった。また、清涼化剤を配合せずヒアルロン酸ナトリウムを配合した比較例5の洗眼組成物も疲労感改善結果は×であった。
【0067】
これに対して、比較例1の洗眼組成物において、更にピリドキシン塩酸塩とヒアルロン酸ナトリウムとを配合した実施例6の洗眼組成物では疲労感改善結果が〇であり、疲労感を効果的に高めることができた。また、実施例6よりもヒアルロン酸ナトリウムを多く配合した実施例4及び7の洗眼組成物では、疲労感改善結果が◎であり、疲労感を更に顕著に改善できた。また、ソフトコンタクトレンズを装着した状態のまま、実施例4及び7の洗眼組成物で洗眼した場合においても、それぞれ、裸眼で洗眼した実施例4及び7と同程度に疲労感を顕著に改善できた。
【0068】
このことからも、清涼化剤とヒアルロン酸ナトリウムとピリドキシン塩酸塩とを組み合わせて使用することにより、VDT作業に伴う眼症状を改善できることが分かった。また、結果には示さないが、実施例4、6及び7の洗眼組成物においても、比較例1の洗眼組成物よりも清涼感を一層長く持続できた。
【0069】
処方例
表4に示した洗眼組成物を調製し、試験例1~3と同様の方法で、清涼感延長率、眼の疲労感、ピント調節機能、乾燥感及び異物感の評価を行ったところ、処方例1~8いずれの洗眼組成物においても、清涼感の持続時間を長期化でき、疲労感、ピント調節機能、眼の乾燥感、及び異物感を顕著に改善できることが分かった。
【0070】