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  • 特開-記録方法及び記録装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002279
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】記録方法及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20221227BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221227BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20221227BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20221227BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 114
B41M5/00 132
B41J2/01 123
C09D11/54
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103420
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】平出 智大
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 慎
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056HA42
2H186AB02
2H186AB03
2H186AB12
2H186AB13
2H186AB27
2H186AB41
2H186AB49
2H186AB55
2H186AB56
2H186AB57
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA13
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
4J039EA36
4J039EA44
4J039EA48
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 インクを付与される布帛に対して事前に付与される処理液の貯蔵安定性と、処理液及びインクを用いて形成される印刷物の柔軟性と、を両立させるのは困難である課題がある。
【解決手段】 第一の処理液を布帛に対して付与する第一の処理液付与工程と、第二の処理液を前記布帛に対して付与する第二の処理液付与工程と、インクを前記布帛の前記第一の処理液及び前記第二の処理液が付与された領域に対して付与するインク付与工程と、を含み、前記第一の処理液は、水及び滑剤を含み、前記第二の処理液は、水及び凝集剤を含むことを特徴とする記録方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の処理液を布帛に対して付与する第一の処理液付与工程と、
第二の処理液を前記布帛に対して付与する第二の処理液付与工程と、
インクを前記布帛の前記第一の処理液及び前記第二の処理液が付与された領域に対して付与するインク付与工程と、を含み、
前記第一の処理液は、水及び滑剤を含み、
前記第二の処理液は、水及び凝集剤を含むことを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記第一の処理液付与工程は、前記第一の処理液をインクジェット方式で前記布帛に対して吐出する工程であり、
前記第二の処理液付与工程は、前記第二の処理液をインクジェット方式で前記布帛に対して吐出する工程である請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記凝集剤は、無機塩、有機塩、又はカチオンポリマーである請求項1又は2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記滑剤は、アニオン性化合物又はノニオン性化合物である請求項1から3のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項5】
前記滑剤は、シロキサン化合物である請求項1から4のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項6】
前記滑剤は、ジメチルポリシロキサン又はアミノ変性オルガノポリシロキサンである請求項1から5のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項7】
前記滑剤の含有量は、前記第一の処理液の質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1から6のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項8】
前記第一の処理液は、更に、有機溶剤及びシリコーン系界面活性剤を含み、
前記第二の処理液は、更に、有機溶剤及びシリコーン系界面活性剤を含む請求項1から7のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項9】
前記インクは、顔料、有機溶剤、及びウレタン系樹脂粒子を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項10】
第一の処理液を収容した第一の処理液収容手段と、
第二の処理液を収容した第二の処理液収容手段と、
インクを収容したインク収容手段と、
前記第一の処理液を布帛に対して付与する第一の処理液付与手段と、
前記第二の処理液を前記布帛に対して付与する第二の処理液付与手段と、
前記インクを前記布帛の前記第一の処理液及び前記第二の処理液が付与された領域に対して付与するインク付与手段と、を有し、
前記第一の処理液は、水及び滑剤を含み、
前記第二の処理液は、水及び凝集剤を含むことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有するため、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。また近年では、家庭用のみならず、例えば、ディスプレイ、ポスター、掲示板等の産業用途にも利用されている。
【0003】
捺染分野においても、Tシャツ等の衣類に直接印字するいわゆるDTG(Direct to Garment)分野の市場規模は年々拡大しており、また、近年のアパレル業界におけるパーソナルレコメンデーションビジネスの隆盛や、インテリアテキスタイル分野において認められるファインアートとのコラボレーションの活発化といった動向より、ファブリックに対して発色性及び種々堅牢性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要がますます高まりつつある。
【0004】
顔料を色材として含むインクを用いて生地に直接インクジェットで作像する捺染方式においては、スクリーン捺染及びその他の従来の捺染とは異なり、版の作製・保管・洗浄等版に関する事柄が必要なく、少量多品種生産に適していること、転写等の工程を含まないため短納期化が可能なこと、耐光性に優れること等の点において優位性を有している。そのため、顔料捺染では、印刷物の発色性、堅牢性等向上のため種々の検討がされているが、インクのみでこれらの特性を満足することは困難であり、近年ではインクを布帛に印捺する前に布帛に前処理を行う手法が提案されている。
【0005】
特許文献1には、水及びインク凝集剤を少なくとも含有する第一の前処理液を布に塗布する第一の工程と、第一の前処理液よりもインク凝集力の小さい第二の前処理液を布に塗布する第二の工程と、水性インクジェットインクを用いて布にインクジェット印刷する第三の工程と、を含む捺染物の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、樹脂分散体及び架橋剤の少なくともいずれか一方と、滑剤と、水とを含有し、インクジェット顔料捺染に用いられる前処理液が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インクを付与される布帛に対して事前に付与される処理液の貯蔵安定性と、処理液及びインクを用いて形成される印刷物の柔軟性と、を両立させるのは困難である課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第一の処理液を布帛に対して付与する第一の処理液付与工程と、第二の処理液を前記布帛に対して付与する第二の処理液付与工程と、インクを前記布帛の前記第一の処理液及び前記第二の処理液が付与された領域に対して付与するインク付与工程と、を含み、前記第一の処理液は、水及び滑剤を含み、前記第二の処理液は、水及び凝集剤を含むことを特徴とする記録方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクを付与される布帛に対して事前に付与される処理液の貯蔵安定性と、処理液及びインクを用いて形成される印刷物の柔軟性と、が共に向上する記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、記録装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、収容手段の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
<<記録方法>>
本発明の記録方法は、第一の処理液を布帛に対して付与する第一の処理液付与工程と、第二の処理液を布帛に対して付与する第二の処理液付与工程と、インクを布帛の前記第一の処理液及び前記第二の処理液が付与された領域に対して付与するインク付与工程と、を含む。また、本発明の記録方法は、必要に応じて、その他工程を含んでもよい。
本開示において「第一の処理液」及び「第二の処理液」は、それぞれ、インクが付与される前の布帛に対して事前に付与される液体組成物である。
本開示において「インク」は、布帛の第一の処理液及び第二の処理液が付与された領域に対して付与されることで画像を形成する液体組成物である。
【0013】
<第一の処理液付与工程>
第一の処理液付与工程は、第一の処理液を布帛に対して付与する工程である。
第一の処理液を付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット方式で布帛に対して吐出する工程であることが好ましい。本開示の記録方法に用いられる第一の処理液は、後述する通り、粘度変化が生じにくく貯蔵安定性に優れるため、吐出性能が粘度等の影響を強く受けるインクジェット方式であっても好適に適用できるためである。
【0014】
-第一の処理液-
第一の処理液は、滑剤及び水を含む。また、第一の処理液は、必要に応じて、有機溶剤、界面活性剤、及びその他成分を含んでもよい。
【0015】
--滑剤--
滑剤とは、印刷物を構成する成分として含まれることで、印刷物の堅牢性及び柔軟性を向上させる機能を有する成分を表す。第一の処理液に滑剤を含有させることで、第一の処理液等を付与することで形成される印刷物における堅牢性及び柔軟性を向上させることができる。
【0016】
滑剤は、第一の処理液を布帛に付与する際に生じるミストが装置内を汚染することを抑制する観点から、アニオン性化合物又はノニオン性化合物であることが好ましい。なお、ミストの発生は、第一の処理液をインクジェット方式で吐出する場合に顕著になるため、このような場合においてアニオン性化合物又はノニオン性化合物を用いることがより好ましい。
【0017】
滑剤としては、例えば、シロキサン化合物及びワックスなどが挙げられる。これらの中でも、印刷物の堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる観点からシロキサン化合物が好ましい。
【0018】
シロキサン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサンや、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ヒドロキシ変性オルガノポリシロキサン、エポキシ変性オルガノポリシロキサン、フェニル変性オルガノポリシロキサンなどの変性オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、印刷物の乾摩擦堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる観点から、ジメチルポリシロキサン又はアミノ変性オルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
シロキサン化合物の市販品としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-860A、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9737A、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9782、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-862T、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9738A、信越化学工業株式会社製)、アミノ変性オルガノポリシロキサン(商品名:POLON-MF-14、信越化学工業株式会社製)、アミノ変性オルガノポリシロキサン(商品名:POLON-MF-51、信越化学工業株式会社製)、エポキシ変性オルガノポリシロキサン(商品名:X-51-1264、信越化学工業株式会社製)、フェニル変性オルガノポリシロキサン(商品名:KM-9739、信越化学工業株式会社製)、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(商品名:BYK-307、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:BYK-333、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:BYK-378、ビックケミー・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0020】
ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、印刷物の堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる観点から、例えば、ポリエチレンワックス及びカルナバワックスなどが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリエチレンワックスとしては、市販品を用いることができ、例えば、サンノプコ社製のノプコートシリーズ、サンノプコ社製のノプコマルシリーズ、東邦化学工業株式会社製のハイテックシリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のAQUACERシリーズ(例えば、AQUACER-515)などが挙げられる。
【0022】
カルナバワックスとしては、市販品を用いることができ、例えば、中京油脂株式会社製のセロゾール524、トラソルCNなどが挙げられる。
【0023】
ワックスの融点は、50℃以上130℃以下が好ましく、60℃以上120℃以下がより好ましい。融点が上記範囲であることで印刷物の堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる。
【0024】
滑剤は、第一の処理液中において滑剤粒子の形態、言い換えると分散状態で含有されていることが好ましい。第一の処理液中において滑剤粒子の形態を安定して維持できることで、第一の処理液における粘度変化が抑制されて貯蔵安定性が向上し、吐出性能が粘度等の影響を強く受けるインクジェット方式であっても好適に適用できる。なお、滑剤粒子を構成する滑剤は液体であっても固体であってもよい。
滑剤の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm以上が好ましく、0.01μm以上0.2μm以下がより好ましい。体積平均粒径が、0.01μm以上であると、印刷物に柔軟性をより向上させることができる。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(装置名:ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0025】
滑剤の含有量は、第一の処理液の質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上6.0質量%以下であることがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であると、印刷物の柔軟性をより向上させることができる。また、含有量が10.0質量%以下であると、印刷物の洗濯堅牢性が向上する。
【0026】
--水--
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、及び超純水などを用いることができる。
第一の処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第一の処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、第一の処理液の質量に対して10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下が更に好ましい。
【0027】
--有機溶剤--
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤などを用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0028】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0029】
有機溶剤としては、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0030】
有機溶剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第一の処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、第一の処理液の質量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましい。
【0031】
--界面活性剤--
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などが使用可能であるが、滑剤と併用した際に印刷物における柔軟性をより向上させることができる観点からシリコーン系界面活性剤であることが好ましい。なお、界面活性剤は、滑剤と異なり、第一の処理液中において溶解している態様で含有されることが好ましい。
【0032】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0033】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
【0034】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0035】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0036】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
【0037】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0038】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0039】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。
これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0040】
第一の処理液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れる点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0041】
--その他成分--
その他の成分としては、必要に応じて、公知の種々の添加剤用いることができ、例えば、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、及び防錆剤などが挙げられる。
【0042】
--第一の処理液の物性--
第一の処理液の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
第一の処理液の25℃での粘度は、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
第一の処理液の表面張力としては、布帛上で好適にレベリングされ、乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
第一の処理液のpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0043】
<第二の処理液付与工程>
第二の処理液付与工程は、第二の処理液を布帛に対して付与する工程である。第一の処理液付与工程及び第二の処理液付与工程の実行順は特に限定されないが、印刷物における乾摩擦堅牢性向上の観点から、第一の処理液付与工程後に第二の処理液付与工程を実行することが好ましい。第一の処理液付与工程後に第二の処理液付与工程を実行する場合、第一の処理液付与工程及び第二の処理液付与工程の間に、他の工程を介在させずに連続的に実行させてもよいが、第一の処理液付与工程で付与された第一の処理液を乾燥させる工程を行ってから第二の処理液付与工程を実行してもよい。
第二の処理液を付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット方式で布帛に対して吐出する工程であることが好ましい。本開示の記録方法に用いられる第二の処理液は、後述する通り、粘度変化が生じにくく貯蔵安定性に優れるため、吐出性能が粘度等の影響を強く受けるインクジェット方式であっても好適に適用できるためである。
【0044】
-第二の処理液-
第二の処理液は、凝集剤及び水を含む。また、第二の処理液は、必要に応じて、有機溶剤、界面活性剤、及びその他成分を含んでもよい。なお、第二の処理液における水、有機溶剤、界面活性剤、及びその他成分の詳細(種類、含有量など)は、上記の第一の処理液における説明と同様であるため、説明を省略する。また、第二の処理液の物性についても、上記の第一の処理液の物性における説明と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
--凝集剤--
凝集剤とは、インクと接触したときに、インクにおいて凝集又は増粘を生じさせる成分を表す。具体的には、例えば、インクに含まれる色材又は樹脂などの分散性粒子(主にアニオン性化合物)を凝集させる成分が挙げられる。このような凝集剤を含む第二の前処理液を用いることで、第二の前処理液が付与された領域と接触したインクにおいて凝集又は増粘を生じさせ、これにより布帛表面において色材等のインク成分を留めることができ、印刷物の画像濃度が向上する。
【0046】
本発明において、凝集剤が第二の処理液に含有され、滑剤を含有する第一の処理液と独立して2液で用いられる理由、言い換えると、凝集剤及び滑剤の両方を含有する1液の処理液を用いない理由について説明する。
上記の通り、凝集剤は、インクに含まれる色材又は樹脂などのアニオン性の水分散性粒子を凝集させる成分であるため、カチオン性化合物であることが好ましい。このとき、処理液中においてカチオン性化合物である凝集剤と滑剤とを共存させた場合、凝集剤により滑剤が凝集して処理液が増粘するため、長期的な保存安定性(貯蔵安定性)の観点から、凝集剤及び滑剤はそれぞれ別の処理液に含有されて2液で用いられることが好ましい。また、凝集剤と滑剤とを共存させた場合に生じる凝集は、滑剤がアニオン性化合物である場合に顕著になるため、得られる効果(貯蔵安定性)が大きくなる観点から、本発明における滑剤はアニオン性化合物であることが好ましい。以上より、第一の処理液は滑剤を含むが凝集剤を実質的に含まず、第二の処理液は凝集剤を含むが滑剤を実質的に含まないことが好ましい。なお、実質的に含まないとは、所定の成分を含まない場合に限定されず、所定の成分の影響が生じない範囲であればよく、例えば、公知かつ技術常識の手法で分析した場合に所定の成分が検出限界以下である場合などが挙げられる。
また、本発明では、滑剤を含有する第一の処理液と凝集剤を含有する第二の処理液とをそれぞれ独立して保存及び付与するため、滑剤及び凝集剤の両方を含有する処理液と比較して粘度変化(増粘)が抑制されるため、吐出性能が粘度等の影響を強く受けるインクジェット方式であっても好適に適用できる。
【0047】
凝集剤としては、例えば、無機塩、有機塩、及びカチオンポリマーなどを用いることができる。これらの中でも、材料の安全性の観点から無機塩又は有機塩であることが好ましい。得られる印刷物の洗濯堅牢性の観点からは1価の無機塩又は有機塩であることが好ましく、画像濃度の観点からは2価以上の無機塩であることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウムなどの1価の無機塩、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ニッケル、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸鉄(III)、硫酸カリウムアルミニウム、カリウム鉄ミョウバン、アンモニウム鉄ミョウバンなどの2価以上の無機塩が挙げられる。
【0049】
有機塩としては、酢酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、乳酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0050】
カチオンポリマーとしては、例えば、第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物が好ましく、具体的には、ジアルキルアリルアンモニウムクロライド重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩重合物、変性ポリビニルアルコールジアルキルアンモニウム塩重合物、及びジアルキルジアリルアンモニウム塩重合物などが挙げられる。
また、その他のカチオン性ポリマーとしては、カチオン性特殊変性ポリアミン化合物、カチオン性ポリアミドポリアミン化合物、カチオン性尿素-ホルマリン樹脂化合物、カチオン性ポリアクリルアミド化合物、カチオン性アルキルケテンダイマー、カチオン性ジシアンジアミド化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ホルマリン縮合化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ポリアミン縮合化合物、カチオン性ポリビニルホルムアミド化合物、カチオン性ポリビニルピリジン化合物、カチオン性ポリアルキレンポリアミン化合物、及びカチオン性エポキシポリアミド化合物などが挙げられる。
【0051】
凝集剤の含有量は、印刷物における画像濃度向上及び滲み抑制の観点から、第二の処理液の質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
<インク付与工程>
インク付与工程は、インクを布帛の第一の処理液及び第二の処理液が付与された領域に対して付与する工程である。すなわち、インクは、滑剤及び凝集剤をともに含有する布帛上の領域に対して付与される。
インクを付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット方式で布帛に対して吐出する工程であることが好ましい。
【0053】
-インク-
インクは、有機溶剤、水、色材、樹脂、界面活性剤、及びその他の成分などを含む。なお、インクにおける有機溶剤、水、界面活性剤、及びその他の成分の詳細(種類、含有量など)は、上記の第一の処理液における説明と同様であるため、説明を省略する。また、インクの物性についても、上記の第一の処理液の物性における説明と同様であるため、説明を省略する。
また、カチオン性であることが好ましい凝集剤を含む上記の第二の処理液に合わせて、色材及び樹脂から選ばれる少なくとも1つは、アニオン性であることが好ましい(これらを「アニオン性化合物」と総称してもよい)。色材及び樹脂から選ばれる少なくとも1つがアニオン性であることで、インクが第二の処理液に含まれていた成分(凝集剤)と接触した際に、インクが凝集又は増粘を生じ、これにより布帛表面において色材等を留めることができ、画像濃度が向上する。
【0054】
--色材--
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能であるが、顔料であることが好ましい。また、色材は、上記の通り、凝集剤と作用する観点からアニオン性であることが好ましく、アニオン性の顔料であることがより好ましい。
【0055】
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0056】
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0057】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0058】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
【0059】
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0060】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0061】
色材の含有量は、インクの用途等によって適宜決定すればよいが、インクの質量に対して0.1質量%以上15.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。
【0062】
顔料を分散させてインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、用いられる顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料が含まれてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
--樹脂--
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、画像堅牢性と柔軟性の観点から、ウレタン樹脂であることが好ましい。また、樹脂は、上記の通り、凝集剤と作用する観点からアニオン性であることが好ましい。
【0064】
樹脂のインク中における形態は特に限定されないが、樹脂粒子の形態で分散されていることが好ましい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0065】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0066】
樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性及びインクの保存安定性の点から、インクの質量に対して、1.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。
【0067】
<布帛>
布帛は、上記の第一の処理液、第二の処理液、及びインクの被付与物であり、これらを付与されることで印刷物を形成する。本開示において「布帛」とは、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。繊維としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、及び天然繊維などの有機質繊維であることが好ましい。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及びポリイミドなどの繊維が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、トリアセテートなどの繊維が挙げられる。再生繊維としては、例えば、ポリノジック、レーヨン、リヨセル、及びキュプラなどの繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、麻、絹、及び毛などの繊維が挙げられる。
【0068】
また、繊維としては、生分解性ポリエステル組成物を含む繊維を用いてもよい。生分解性ポリエステル組成物は、例えば、生分解性脂肪族-芳香族ポリエステル又はポリ乳酸などを含有し、必要に応じて、有機フィラー又は無機フィラーなど含有してもよい。生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)などを挙げることができる。有機フィラーとしては、天然澱粉、可塑化澱粉、変性澱粉、天然繊維、木粉などを挙げることができる。無機フィラーとしては、タルク粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、グラファイト、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、珪灰石、二酸化チタン、ケイ酸塩、雲母、ガラス繊維、鉱物繊維などを挙げることができる。
【0069】
布帛を用いた場合の印刷物は、フィルムや紙などと異なり、用途上の要請から乾摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び柔軟性などの特性を求められることが多い。そのため、上記のような、滑剤を含む第一の処理液を用いてこれら特性を達成することが好ましい。
また、布帛は、フィルムや紙などと比較してインクを浸透しやすいことで色材が布帛表面に残り難く、高い画像濃度の印刷物を得ることは困難である。そのため、凝集剤を含む第二の処理液を用いて画像濃度を向上させることが好ましい。
【0070】
<<記録装置>>
記録装置は、第一の処理液を収容した第一の処理液収容手段と、第二の処理液を収容した第二の処理液収容手段と、インクを収容したインク収容手段と、第一の処理液を布帛に対して付与する第一の処理液付与手段と、第二の処理液を布帛に対して付与する第二の処理液付与手段と、インクを布帛の第一の処理液及び第二の処理液が付与された領域に対して付与するインク付与手段と、を有し、必要に応じてその他構成を有してもよい。その他構成としては、例えば、布帛に付与された第一の処理液、第二の処理液、又はインクなどの各種液体を加熱する加熱手段などが挙げられる。
【0071】
図1~2を参照して、記録装置について説明する。図1は、記録装置の一例を示す概略図である。図2は、収容手段(第一の処理液収容手段、第二の処理液収容手段、又はインク収容手段)の一例を示す概略図である。
【0072】
図1に示す記録装置400は、シリアル型のインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置である。記録装置400の外装401内に機構部420が設けられている。第一の処理液用の第一の処理液収容手段410p、第二の処理液収容手段410p、ブラックインク用のブラックインク収容手段410k、シアンインク用のシアンインク収容手段410cにおける収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これにより各収容手段410は、カートリッジとして用いられる。
【0073】
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、各収容手段410が着脱自在に装着される。これにより、各供給チューブ436を介して、各収容手段410の排出口413とインクジェット吐出ヘッド434(第一の処理液付与手段、第二の処理液付与手段、及びインク付与手段の一例)とが連通し、インクジェット吐出ヘッド434から布帛へ第一の処理液、第二の処理液、及びインクをそれぞれ吐出可能となる。
【0074】
なお、記録装置400は、布帛に付与された第一の処理液、第二の処理液、又はインクなどの各種液体を加熱する加熱手段を有していてもよい。なお、加熱手段としては、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などの公知の加熱手段を挙げることができる。
【実施例0075】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
なお、特に記載が無い場合、各種液体の調製及び評価は、室温25℃、湿度60%の条件下で行った。
【0076】
<処理液の作製>
下記表1に示す組成の処理液を常法により調整し、平均孔径1.2μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行い、第一の処理液である処理液1A~1I、第二の処理液である処理液2A~2C、第一の処理液及び第二の処理液に該当しないその他処理液3A~3Cを作製した。なお、表1中の組成物の含有量を示す数値の単位は「質量%」である。
【0077】
なお、下記表1において示す各種材料の詳細は以下の通りである。
-滑剤-
・KM-862T:信越化学工業社製、ノニオン性、ジメチル型ポリシロキサン、分散粒径250nm
・KM-9782:信越化学工業社製、アニオン/ノニオン性、ジメチル型ポリシロキサン、分散粒径200nm
・MEM-1997:ダウ・東レ社製、カチオン性、ジメチル型ポリシロキサン、分散粒径150nm
・POLON-MF-51:信越化学工業社製、ノニオン性、アミノ変性ポリシロキサン、分散粒径30nm
・X-51-1264:信越化学工業社製、ノニオン性、エポキシ型ポリシロキサン、分散粒径130nm
・AQUACER513:三井化学社製、ノニオン性、ポリエチレン系ワックス、分散粒径150nm
-有機溶剤-
・ソルフィットMMB:クラレ社製、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール
-界面活性剤-
・SAG-503A:日信化学工業社製、シリコーン系界面活性剤
・BYK-348:ビッグケミー・ジャパン製、シリコーン系界面活性剤
-消泡剤-
・AD01:エンバイロジェムAD01、エアープロダクツ社製
-防腐防黴剤-
・プロキセルLV:アビシア社製
【0078】
【表1】
【0079】
<インクの作製>
-顔料分散液の調整-
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散して顔料分散液(顔料濃度:15質量%)を得た。
・カーボンブラック顔料(キャボット社製、Monarch800):15.0質量%
・アニオン性界面活性剤(竹本油脂株式会社製、A-51-B):3.0質量%
・水:残量(全量で100質量%となる量)
【0080】
-樹脂分散液の調整-
温度計、窒素ガス導入管、及び撹拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール(商品名:PTMG1,000、三菱化学株式会社製、平均分子量:1,000)200.4g、2,2-ジメチロールプロピオン酸15.7g、イソホロンジイソシアネート48.0g、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1gを、ジブチルスズジラウレート(DMTDL、東京化成工業株式会社製)0.06gを触媒として使用して反応させた。反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7gを供給し、更に反応を継続した。反応を合計6時間になるように行った後、メタノール1.4gを投入し、反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を13.4g加えることにより、ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和した。次いで、水715.3gを加え、十分に撹拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分濃度が30質量%の樹脂粒子を含む、ポリエステルウレタン樹脂分散液を得た。
【0081】
-インクの調整-
下記組成のインクを常法により調製し、平均孔径1.2μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行い、インクを作製した。
・グリセリン:20.0質量%
・ソルフィットMMB:10.0質量%
・SAG-503A:0.5質量%
・AD01:0.1質量%
・プロキセルLV:0.5質量%
・顔料分散液:30.0質量%
・樹脂粒子分散液:30.0質量%
・イオン交換水:残量(全量で100質量%となる量)
【0082】
<印刷物の作製>
(実施例1)
まず、インクジェットプリンターRi100(株式会社リコー製)に処理液1Aを充填し、A4サイズに切り出した綿ブロード(色染社製)に対して、2.0g/mの付着量で処理液1Aを付与した。
次に、インクジェットプリンターRi100(株式会社リコー製)に処理液2Aを充填し、処理液1Aを付与された綿ブロード(色染社製)に対して、2.0g/mの付着量で処理液2Aを付与した。
次に、インクジェットプリンターRi6000(株式会社リコー製)にインクを充填し、綿ブロード(色染社製)の処理液1A及び処理液2Aを付与された領域に対して、20g/mの付着量でインクを付与してベタ画像を形成した。
その後、180℃に設定した熱風循環型恒温槽にて6分間乾燥させ、実施例1の印刷物を作製した。
【0083】
(実施例2~9)
実施例1において、用いる処理液を下記表2に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして実施例2~9の印刷物を作製した。
【0084】
(実施例10)
まず、自動スプレー塗布機に処理液1G’を充填し、A4サイズに切り出した綿ブロード(色染社製)に対して、10g/mの付着量で処理液1G’を付与した。
次に、自動スプレー塗布機に処理液2C’を充填し、処理液1G’を付与された綿ブロード(色染社製)に対して、10g/mの付着量で処理液2C’を付与した。
次に、150℃に設定したヒートプレスにて30秒乾燥させた。
次に、インクジェットプリンターRi6000(株式会社リコー製)にインクを充填し、綿ブロード(色染社製)の処理液1G’及び処理液2C’を付与された領域に対して、20g/mの付着量でインクを付与してベタ画像を形成した。
その後、180℃に設定した熱風循環型恒温槽にて6分間乾燥させ、実施例10の印刷物を作製した。
なお、処理液1G’は処理液1Gを水で5倍希釈したものであり、処理液2C’は処理液2Cを水で5倍希釈したものである。
【0085】
(実施例11)
実施例1において、処理液1A及び処理液2Aの付与する順番を逆にした以外は実施例1と同様にして実施例11の印刷物を作製した。
【0086】
(実施例12)
実施例7において、用いる布帛を、綿ブロードから下記組成の均一混合物からなる生分解性ポリエステル繊維により形成された布帛に変更した以外は実施例6と同様にして実施例12の印刷物を作製した。
-生分解性ポリエステル繊維の組成-
・ポリブチレンアジペートテレフタレート:84.1質量部
・ポリ乳酸:10.0質量部
・タルク粉:1.6質量部
・ADR4370(BASF社製):0.3質量部
・ステアラミド:0.5質量部
・テトラヒドロフラン:15ppm(組成物全体に対して)
・シクロペンタノン:10ppm(組成物全体に対して)
【0087】
(比較例1)
まず、インクジェットプリンターRi100(株式会社リコー製)に処理液2Bを充填し、A4サイズに切り出した綿ブロード(色染社製)に対して、2.0g/mの付着量で処理液2Bを付与した。
次に、インクジェットプリンターRi6000(株式会社リコー製)にインクを充填し、綿ブロード(色染社製)の処理液2Bを付与された領域に対して、20g/mの付着量でインクを付与してベタ画像を形成した。
その後、180℃に設定した熱風循環型恒温槽にて6分間乾燥させ、比較例1の印刷物を作製した。
【0088】
(比較例2~3)
比較例1において、用いる処理液を下記表2に示すものに変更した以外は比較例1と同様にして比較例2~3の印刷物を作製した。
【0089】
【表2】
【0090】
各実施例及び比較例で用いた処理液の貯蔵安定性、並びに各実施例及び比較例で作製された印刷物における画像濃度、乾摩擦堅牢性、洗濯堅牢性、及び柔軟性を下記のようにして評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0091】
[貯蔵安定性]
各実施例及び比較例で用いた処理液をそれぞれ密閉容器に入れ、70℃の恒温槽で2週間静置し、保存前後の粘度変化を測定し、下記評価基準に基づいて貯蔵安定性を評価した。なお、粘度は、コーンプレート型回転粘度計(装置名:VISCOMETER TV-22、東機産業株式会社製)を用い、恒温循環水の温度が25℃、回転数が50rpm、せん断速度が191.4sec-1の条件で測定した。
(評価基準)
A:粘度変化率が±5%以内である
B:粘度変化率が±5%を超え、±10%以内である
C:粘度変化率が±10%を超える
【0092】
なお、貯蔵安定性試験後の処理液をインクジェットプリンターRi100(株式会社リコー製)に充填して吐出させたところ、比較例2~3の処理液において、一部ノズルに吐出曲がりが観察された。
【0093】
[画像濃度]
各実施例及び比較例で作製された印刷物における画像濃度を分光測色計(X-Rite eXact)により測定し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A+:ブラックの画像濃度が1.30以上である
A:ブラックの画像濃度が1.25以上1.30未満である
B:ブラックの画像濃度が1.20以上1.25未満である
C:ブラックの画像濃度が1.20未満である
【0094】
[乾摩擦堅牢性]
各実施例及び比較例で作製された印刷物に対し、JIS L0849 II型に基づいた乾摩擦堅牢性の試験を実施し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A+:4.5級以上である
A:4.0級である
B:3.5級である
C:3.0級以下である
【0095】
[洗濯擦堅牢性]
各実施例及び比較例で作製された印刷物に対し、JIS L0844 A-2型に基づいた洗濯擦堅牢性(変退色性)の試験を実施し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A+:4.5級以上である
A:4.0級である
B:3.5級である
C:3.0級以下である
【0096】
[柔軟性]
各実施例及び比較例で作製された印刷物に対し、JIS L1069 E法に基づいた柔軟性(剛軟度)の試験を実施し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A+:21g未満である
A:21g以上28g未満である
B:28g以上35g未満である
C:35g以上である
【0097】
【表3】
【符号の説明】
【0098】
400 記録装置
401 記録装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410p 第一の処理液収容手段
410p 第二の処理液収容手段
410k ブラックインク収容手段
410c シアンインク収容手段
411 収容部
413 排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 インクジェット吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開2020-139242号公報
【特許文献2】特開2018-165417号公報
図1
図2