(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022908
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
C07F7/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128006
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 成紀
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ43
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS35
4H049VW01
4H049VW02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保存安定性に優れたケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の、生産性に優れた製造方法を提供する。
【解決手段】無機吸着剤を用いて式(2)のアミノ基含有有機ケイ素化合物の塩素原子含有量を0.1質量ppm未満に低減したのち、カルボニル化合物と反応させて式(1)で表される有機ケイ素化合物を製造する方法。
(R
1は、独立して、C1~C10のアルキル基等;R
2は、独立して、C1~C10のアルキル基等;R
3およびR
4は、独立して、H、C1~C10のアルキル基等;nは、1~3の整数;mは、1~12の整数。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を製造する方法であって、
塩素原子含有量が0.1質量ppm未満である下記式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物と、下記式(3)で表されるカルボニル化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする、ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
R
2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
nは、1~3の整数を表し、mは、1~12の整数を表す。)
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、nおよびmは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項2】
前記R1が、メチル基またはエチル基であり、前記R3が、イソブチル基であり、前記R4が、メチル基であり、前記mおよびnが、いずれも3である請求項1項記載のケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項3】
無機吸着剤を用いて前記式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物の塩素原子含有量を0.1質量ppm未満に低減する工程を含む請求項1または2記載のケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項4】
下記式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造する方法であって、無機吸着剤を用いて塩素原子含有量を0.1質量ppm未満に低減する工程を含むアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法。
【化3】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
R
2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
nは、1~3の整数を表し、mは、1~12の整数を表す。)
【請求項5】
前記無機吸着剤が、シリカ、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる1種または2種以上である請求項4記載のアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シランカップリング剤は、無機物に対する反応性を有する部分(Si原子に結合した加水分解性基)と、有機物に対する反応性や溶解性に富む部分とを1分子内に併せ持つ化合物であり、樹脂改質剤として広く利用されている。
中でも、ケチミン構造を有するシランカップリング剤は、共役ジエン共重合体の変性剤として検討されている(特許文献1)。
しかし、ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物は保存安定性が悪く、経時で活性水素基を有する有機ケイ素化合物が発生してしまい、混合組成物に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
特許文献2では、アミノ基含有有機ケイ素化合物とカルボニル化合物とを反応させてケチミン構造を有するシランカップリング剤を得た後、無機吸着剤により塩素原子含有量を低減することで、保存安定性を向上させる製造方法が開示されている。しかしながら、ケチミン構造を有するシランカップリング剤から塩素原子を取り除く工程において多量の無機吸着剤を必要とするため、無機吸着剤を除去する際の濾過性の低下や廃棄物の増加を引き起こす等、生産性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-349632号公報
【特許文献2】特開2019-194161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、保存安定性に優れたケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の、生産性に優れた製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、塩素原子含有量が0.1質量ppm未満のアミノ基含有有機ケイ素化合物を反応させることにより、保存安定性の高いケチミン構造を有する有機ケイ素化合物を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を製造する方法であって、
塩素原子含有量が0.1質量ppm未満である下記式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物と、下記式(3)で表されるカルボニル化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする、ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法、
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
R
2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
nは、1~3の整数を表し、mは、1~12の整数を表す。)
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、nおよびmは、前記と同じ意味を表す。)
2. 前記R
1が、メチル基またはエチル基であり、前記R
3が、イソブチル基であり、前記R
4が、メチル基であり、前記mおよびnが、いずれも3である1のケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法、
3. 無機吸着剤を用いて前記式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物の塩素原子含有量を0.1質量ppm未満に低減する工程を含む1または2のケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法、
4. 下記式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造する方法であって、無機吸着剤を用いて塩素原子含有量を0.1質量ppm未満に低減する工程を含むアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法、
【化3】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
R
2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、
nは、1~3の整数を表し、mは、1~12の整数を表す。)
5. 前記無機吸着剤が、シリカ、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる1種または2種以上である4のアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、無機吸着剤の使用量を低減することができ、かつ保存安定性に優れたケチミン構造を有する有機ケイ素化合物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造方法は、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を製造する方法であって、塩素原子含有量が0.1質量ppm未満である下記式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物と、下記式(3)で表されるカルボニル化合物を反応させる工程を有することを特徴とする。
【0010】
【0011】
上記各式において、R1は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表す。
【0012】
炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等が挙げられる。
炭素数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。
【0013】
これらの中でも、R1およびR2としては、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
また、R3およびR4としては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル基がより好ましく、メチル基、イソブチル基がより一層好ましく、メチル基およびイソブチル基の組み合わせがさらに好ましい。
【0014】
nは1~3の整数を表すが、2または3が好ましく、3がより好ましい。
mは1~12の整数を表すが、2または3が好ましく、3がより好ましい。
【0015】
特に、本発明においては、下記式(4)または(5)で表される有機ケイ素化合物が好ましい。
【0016】
【化5】
(式中、R
2、nは、上記と同じ意味を表し、Meは、メチル基を、Etは、エチル基を意味する。)
【0017】
本発明では、塩素原子含有量が0.1質量ppm未満である式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を用いることで、保存安定性が良好なケチミン構造を有する有機ケイ素化合物を得ることができる。
塩素原子含有量が0.1質量ppm未満である式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を用いない場合、式(1)で表されるケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の保存安定性が悪くなる。具体的には式(7)で表される有機ケイ素化合物の場合、経時により式(8)~(11)で表される有機ケイ素化合物が生成する。
【0018】
【0019】
式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物の具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
一方、式(3)で表されるカルボニル化合物の具体例としては、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、プロピオンアルデヒド等が挙げられる。
【0020】
反応時において、上記アミノ基含有有機ケイ素化合物と上記カルボニル化合物の反応は、モル比にしてカルボニル化合物が過剰の条件で行うことが好ましい。
この反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。使用可能な溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒などが挙げられ、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよく、これらの中でもトルエンが好ましい。
【0021】
反応時は、アミノ基含有有機ケイ素化合物とカルボニル化合物の反応により生成する水を反応系内から除く必要がある。
水を除く方法は、特に限定されるものではないが、系内に過剰に存在するカルボニル化合物または溶媒を、Dean-Stark装置等を用いて還流することにより留去する方法が好ましい。
反応温度は、水を留去できる限り特に限定されるものではないが、100~200℃が好ましい。
【0022】
本発明で用いる塩素原子含有量が0.1質量ppm未満である式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物は、無機吸着剤と式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を混合することで、得ることができる。
【0023】
塩素原子含有量の低減に好適に使用できる無機吸着剤としては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム・酸化マグネシウム固溶体等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの無機吸着剤は、例えば、市販の協和化学工業(株)製キョーワードシリーズ(キョーワード100、200、300、500、600、700、2000)として入手できる。中でも、処理効率の観点から、合成ハイドロタルサイトであるキョーワード500(Mg6Al2(OH)16CO3・mH2O)が特に好ましい。
【0024】
無機吸着剤の使用量は、処理効率を高めるとともに、処理後の無機吸着剤の除去を容易にすることを考慮すると、式(2)で表される有機ケイ素化合物100質量部に対し、0.005~5.0質量部が好ましく、0.01~0.2質量部がより好ましく、0.01~0.1質量部がより一層好ましい。
【0025】
さらに、式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物は無機吸着剤と混合後に、蒸留精製されることが好ましい。
【0026】
塩素原子含有量が0.1質量ppm未満である式(2)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を用いることで、ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造工程において、無機吸着剤などの煩雑な工程を省き、保存安定性に優れたケチミン構造を有する有機ケイ素化合物を容易に製造できる。
【実施例0027】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、塩素原子含有量は以下の手法によって測定した。
塩素原子含有量
各実施例および比較例で得られたサンプルまたは3-アミノプロピルトリメトキシシラン10g、トルエン50mLおよび純水20mLを混合後、1時間撹拌を行い、水層を採取して下記条件でイオンクロマトグラフにより水溶性クロルイオン濃度を測定し、塩素原子含有量とした。
イオンクロマトグラフ:東亜DKK(株)製 ICA-2000
分離カラム:TOA-DKK PCI-230
ガードカラム:TOA-DKK PCI-205G
サプレッサ:ケミカルサプレッサ 6810690K
検出器:電気伝導度検出器
溶離液:4mmol/L Na2CO3、2mmol/L NaHCO3
溶離液量:0.9mL/min
注入液量:100μL
注入口温度:250℃
検出器温度:300℃
キャリアガス:He
キャリアガス流量:3.0mL/min
【0028】
[1]塩素原子含有量が0.1質量ppm未満のアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造
(1)アミノ基含有有機ケイ素化合物(12)の製造
[実施例1]
【化7】
【0029】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、3-アミノプロピルトリメトキシシラン1000.0gとキョーワード100(協和化学工業(株)製、以下同様)1.0gを納め、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌した。後に得られた溶液から加圧濾過によりキョーワード100を除き、得られた溶液を10Torr、75℃の条件下で蒸留精製し、無色透明液体のアミノ基含有有機ケイ素化合物(12)890gを得た。得られた無色透明液体の塩素原子含有量は0.1質量ppm未満であった。
【0030】
[実施例2]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード200を使用した以外は、実施例1と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(12)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0031】
[実施例3]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード300を使用した以外は、実施例1と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(12)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0032】
[実施例4]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード500を使用した以外は、実施例1と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(12)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0033】
[実施例5]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード600を使用した以外は、実施例1と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(12)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0034】
[実施例6]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード700を使用した以外は、実施例1と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(12)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0035】
[実施例7]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード2000を使用した以外は、実施例1と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(12)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0036】
(2)アミノ基含有有機ケイ素化合物(8)の製造
[実施例8]
【化8】
【0037】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1000.0gとキョーワード100(協和化学工業(株)製、以下同様)1.0gを納め、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌した。後に得られた溶液から加圧濾過によりキョーワード100を除き、得られた溶液を10Torr、90℃の条件下で蒸留精製し、無色透明液体のアミノ基含有有機ケイ素化合物(8)900gを得た。得られた無色透明液体の塩素原子含有量は0.1質量ppm未満であった。
【0038】
[実施例9]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード200を使用した以外は、実施例8と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(8)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0039】
[実施例10]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード300を使用した以外は、実施例8と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(8)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0040】
[実施例11]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード500を使用した以外は、実施例8と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(8)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0041】
[実施例12]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード600を使用した以外は、実施例8と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(8)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0042】
[実施例13]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード700を使用した以外は、実施例8と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(8)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0043】
[実施例14]
キョーワード100に代えて同質量部のキョーワード2000を使用した以外は、実施例8と同様にして、塩素原子含有量0.1質量ppm未満の上記式(8)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を製造した。
【0044】
[2]ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物の製造
(1)ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物(13)の製造
[実施例15]
【化9】
【0045】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、メチルイソブチルケトン2028g(18.4モル)を納め、実施例1で得られた有機ケイ素化合物540g(3.01モル)を内温105~110℃で1時間かけて滴下した後、115℃で6時間撹拌した。滴下中、熟成中は、生成する水をメチルイソブチルケトンと共に還流させることによって抜き出した。ガスクロマトグラフで分析した結果、3-アミノプロピルトリメトキシシランのピークが消滅しており、熟成後に1680gの淡黄色透明液体が得られた。
得られた溶液を10Torr、160℃の条件下で蒸留精製し、無色透明液体690gを得た。1H-NMRにより、上記式(13)で表される有機ケイ素化合物であることを確認した。
【0046】
[実施例16]
実施例1で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例2で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例15と同様にして、上記式(13)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0047】
[実施例17]
実施例1で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例3で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例15と同様にして、上記式(13)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0048】
[実施例18]
実施例1で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例4で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例15と同様にして、上記式(13)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0049】
[実施例19]
実施例1で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例5で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例15と同様にして、上記式(13)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0050】
[実施例20]
実施例1で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例6で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例15と同様にして、上記式(13)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0051】
[実施例21]
実施例1で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例7で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例15と同様にして、上記式(13)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0052】
[比較例1]
実施例1で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の塩素原子含有量0.1質量ppm以上である3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いた以外は、実施例15と同様にして、上記式(13)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0053】
(2)ケチミン構造を有する有機ケイ素化合物(7)の製造
[実施例22]
【化10】
【0054】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、メチルイソブチルケトン2028g(18.4モル)を納め、実施例8で得られた有機ケイ素化合物667g(3.01モル)を内温105~110℃で1時間かけて滴下した後、115℃で6時間撹拌した。滴下中、熟成中は、生成する水をメチルイソブチルケトンと共に還流させることによって抜き出した。ガスクロマトグラフで分析した結果、3-アミノプロピルトリエトキシシランのピークが消滅しており、熟成後に2050gの淡黄色透明液体が得られた。
得られた溶液を10Torr、170℃の条件下で蒸留精製し、無色透明液体795gを得た。1H-NMRにより、上記式(7)で表される有機ケイ素化合物であることを確認した。
【0055】
[実施例23]
実施例8で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例9で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例22と同様にして、上記式(7)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0056】
[実施例24]
実施例8で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例10で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例22と同様にして、上記式(7)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0057】
[実施例25]
実施例8で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例11で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例22と同様にして、上記式(7)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0058】
[実施例26]
実施例8で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例12で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例22と同様にして、上記式(7)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0059】
[実施例27]
実施例8で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例13で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例22と同様にして、上記式(7)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0060】
[実施例28]
実施例8で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の実施例14で得られた有機ケイ素化合物を用いた以外は、実施例22と同様にして、上記式(7)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0061】
[比較例2]
実施例8で得られた有機ケイ素化合物に代えて同質量部の塩素原子含有量0.1質量ppm以上である3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いた以外は、実施例22と同様にして、上記式(7)で表される有機ケイ素化合物を製造した。
【0062】
上記各実施例および比較例で得られたケチミン構造を有する有機ケイ素化合物を密閉容器に充填し、25℃で保管した。蒸留精製直後の純度と12カ月後の純度を、ガスクロマトグラフを用いて下記条件で測定した。結果を表1に併せて示す。
純度測定
ガスクロマトグラフ:アジレント・テクノロジー(株)製 HP7890B
検出器:熱伝導度型検出器(TCD)
カラム:DB-5 (長さ30m×内径0.530mm×膜厚1.50μm)
カラム温度:100℃→昇温15℃/分→300℃(10分保持)
測定時間 計23.3分
注入口温度:250℃
検出器温度:300℃
キャリアガス:He
キャリアガス流量:3.0mL/min
【0063】
【0064】
表1に示されるように、実施例15~28で得られたケチミン構造を有する有機ケイ素化合物は、長期保存後の純度低下が小さく、高い保存安定性を有していることがわかる。
以上説明したとおり、本発明の製造方法によれば、比較的少量の無機吸着剤を用いた場合でも、保存安定性に優れたケチミン構造を有する有機ケイ素化合物を得ることができる。