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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002305
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20221227BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20221227BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/285 C
H01L21/90 A
H01L21/88 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103472
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石坂 忠大
(72)【発明者】
【氏名】多田 國弘
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 隆
(72)【発明者】
【氏名】花田 良幸
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4M104BB04
4M104BB25
4M104DD23
4M104DD43
4M104DD84
4M104HH15
5F033HH07
5F033HH27
5F033JJ07
5F033JJ27
5F033KK19
5F033XX07
(57)【要約】
【課題】抵抗値が低い配線を基板に形成すること。
【解決手段】第1の金属膜及びシリコン含有膜が設けられた基板に第1の処理ガスを供給して、前記第1の金属膜の表面における金属酸化物を除去する第1の酸化物除去工程と、前記基板に第2の処理ガスを供給して、前記シリコン含有膜の表面をシリサイドにするシリサイド形成工程と、前記第1の酸化物除去工程及び前記シリサイド形成工程の後に、前記基板に成膜ガスを供給して前記第1の金属膜及びシリサイド上に第2の金属膜を積層する成膜工程と、を実施する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属膜及びシリコン含有膜が設けられた基板に第1の処理ガスを供給して、前記第1の金属膜の表面における金属酸化膜を除去する第1の酸化膜除去工程と、
前記基板に第2の処理ガスを供給して、前記シリコン含有膜の表面に金属シリサイド膜を形成する金属シリサイド形成工程と、
前記第1の酸化物除去工程及び前記金属シリサイド形成工程の後に、前記基板に成膜ガスを供給して前記第1の金属膜及び前記金属シリサイド膜上に第2の金属膜を積層する成膜工程と、
を備える基板処理方法。
【請求項2】
前記金属シリサイド形成工程は、前記第1の酸化膜除去工程の後に行われる請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記金属シリサイド形成工程を行う前に、前記基板に第3の処理ガスを供給して前記シリコン含有膜の表面におけるシリコン酸化膜を変質させ、当該基板を加熱して変質した前記シリコン酸化膜を昇華させて除去する第2の酸化膜除去工程が行われる請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1の処理ガスはハロゲン化物を含むガスであり、
前記第1の酸化膜除去工程は、当該第1の処理ガスをプラズマ化させずに行う請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1の処理ガス及び前記第2の処理ガスは互いに同じハロゲン化金属を含むガスであり、
前記金属シリサイド形成工程は、前記第2の処理ガスをプラズマ化させて行う請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化金属は、四塩化チタンである請求項5記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1の金属膜及び前記シリコン含有膜は、酸化シリコンにより側壁が形成される凹部の底部を構成し、
前記金属シリサイド形成工程は、前記凹部の側壁を被覆するように第3の金属膜を形成する工程を含み、
前記成膜工程は、前記第3の金属膜が形成された凹部内に当該第2の金属膜を埋め込む工程である請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第2の金属膜は、ルテニウム膜、タングステン膜またはモリブデン膜である請求項1ないし7のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1の酸化膜除去工程及び前記金属シリサイド形成工程は同一の処理容器内の前記基板に対して行われる請求項1ないし8のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1の酸化膜除去工程は内部が真空雰囲気とされる第1の処理容器内の前記基板に対して行われ、
前記成膜工程は内部が真空雰囲気とされ、前記第1の処理容器とは異なる第2の処理容器内の前記基板に対して行われ、
前記第1の酸化膜除去工程を行った後、前記基板を前記第1の処理容器から前記第2の処理容器へ真空雰囲気とされる搬送路を介して搬送する搬送工程と、
前記搬送工程において前記搬送路に前記基板が搬送される前に当該搬送路の圧力を1.333×10-5Paより低い圧力にする工程と、
を備える請求項1ないし9のいずれか一つに記載の基板処理方法
【請求項11】
前記第1の金属膜の表面における金属酸化物を除去するための第1の処理ガスを、第1の金属膜及びシリコン含有膜が設けられた基板に供給する第1の処理ガス供給部と、
前記シリコン含有膜の表面に金属シリサイド膜を形成するための第2の処理ガスを、前記基板に供給する第2の処理ガス供給部と、
前記第1の処理ガス及び第2の処理ガスが供給された前記基板に成膜ガスを供給し、前記第1の金属膜及び金属シリサイド膜上に第2の金属膜を積層するための成膜ガス供給部と、
を備える基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造するにあたり、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)上に金属配線が形成される。この配線の形成工程においては金属膜の表面における酸化物の除去処理が行われる場合が有る。例えば特許文献1では、タングステン膜における当該酸化物を除去する手法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-59916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、抵抗値が低い配線を基板に形成することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の基板処理方法は、第1の金属膜及びシリコン含有膜が設けられた基板に第1の処理ガスを供給して、前記第1の金属膜の表面における金属酸化物を除去する第1の酸化物除去工程と、
前記基板に第2の処理ガスを供給して、前記シリコン含有膜の表面をシリサイドにするシリサイド形成工程と、
前記第1の酸化物除去工程及び前記シリサイド形成工程の後に、前記基板に成膜ガスを供給して前記第1の金属膜及びシリサイド上に第2の金属膜を積層する成膜工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、抵抗値が低い配線を基板に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本開示の一実施形態に係る処理がなされるウエハの縦断側面図である。
図1B】前記ウエハの縦断側面図である。
図1C】前記ウエハの縦断側面図である。
図2A】前記ウエハの縦断側面図である。
図2B】前記ウエハの縦断側面図である。
図2C】前記ウエハの縦断側面図である。
図3】前記ウエハAに対して行う処理フローを示すチャート図である。
図4】前記処理を行うための基板処理装置の一実施形態を示す平面図である。
図5】前記基板処理装置に設けられる処理モジュールの一例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の基板処理方法の一実施形態について説明するにあたり、処理を行う前の基板であるウエハAの構成について説明する。図1Aは、処理前のウエハAの表層を示す縦断側面図である。当該ウエハAは例えばSi(シリコン)により構成されているが、当該Siからなる層(Si層)の表示は省略している。
【0009】
上記のSi層の上側にSiOx(酸化シリコン)層11が形成されており、このSiOx層11には縦長の孔が形成されており、当該孔内の下部側にはW(タングステン)膜21が設けられている。なお、このW膜21の下部側はSi層に陥入するように形成されており、Buried Power Rail(BPR)と呼ばれる、当該ウエハAから製造される半導体装置の微細化を目的とした配線構造となっている。
【0010】
上記のSiOx層11及びW膜21によって、上方に開口した凹部12が形成されている。当該凹部12の側壁はSiOx層11により構成されているが、この凹部12の側壁については下側に比べて上側の開口幅が大きくなるように段13を備えた構成とされている。上記のSiOx層11からなる段13には縦方向(ウエハAの厚さ方向)に沿った孔が設けられており、当該孔にはSi膜22が埋設されている。このSi膜22の上部は、段13の上面から若干突出している。当該Si膜22は例えば、ウエハAから製造される半導体装置のソースまたはドレインとして構成され、その下端は上記のSi層に接続されている。
【0011】
以上のように各膜及び各層が構成されるため、凹部12の底部としてはW膜21と、段13をなすSiOx層11と、Si膜22と、によって構成されている。また、この凹部12内に臨むW膜21の表面及びSi膜22の表面については夫々自然酸化されることにより、WOx膜(タングステン酸化膜)23、SiOx膜24とされている。
【0012】
上記のウエハAへの処理の概略を述べると、凹部12内に金属配線としてRu(ルテニウム)膜27を成膜し、W膜21及びSi膜22に対して積層させることで電気的にコンタクトさせる。このコンタクトの形成にあたり、Si膜22の表層についてはTi(チタン)による金属シリサイド化を行う。さらにこの金属シリサイド化及びRu膜の成膜の前に、WOx膜23及びSiOx膜24については除去する。
【0013】
以下、ウエハAの表面の変化の様子を示す図1B図1C及び図2A図2Cも参照して、ウエハAに対して行う一連の処理について説明する。また、図3の処理のフローチャートも適宜参照する。このフローチャートに示す一連の処理中、ウエハAの周囲の環境は真空雰囲気とされる。即ちこの一連の処理中にウエハAは大気曝露されない。なお、各処理はウエハAを処理容器内に格納した状態で行われる。
【0014】
先ず、ウエハAに第3の処理ガスであるNHガス及びHFガスを供給する。これらのガスとSiOx膜24とが反応し、当該SiOx膜24はフルオロケイ酸アンモニウム(AFS)膜24Aに変化(変質)する(図1B、ステップS1)。続いて、ウエハAに不活性ガス、例えばNガスが供給されると共にステップS1実行時よりもウエハAが高い温度に加熱される。それにより、AFS膜24Aが昇華してウエハAの表面から除去され、凹部12内にSi膜22が露出する(図1C、ステップS2)。
【0015】
続いて、ウエハAが例えば400℃程度の温度とされた状態で、当該ウエハAに第1の処理ガスとしてTiCl(四塩化チタン)ガスが供給される。金属酸化膜であるWOx膜23が当該TiClガスと反応してエッチングされ、凹部12内にW膜21が露出する(図2A、ステップS3)。続いて、例えばウエハAがステップS3の実行時と同じ温度とされた状態で、第2の処理ガスとして、TiClガスと、TiClに対する還元ガスであるHガスとが、ウエハAに供給されると共に、これらのガスがプラズマ化されてプラズマCVDが行われる。この処理中にTiClが還元されてTiが生じ、SiOx層11を被覆するように、配線バリア膜となるTi膜25が形成される。つまり凹部12の側壁を被覆するように第3の金属膜であるTi膜25が成膜される。また、TiはSi膜22上にも堆積し、プラズマのエネルギーによって当該TiとSi膜22の表面とが反応して、金属シリサイド膜としてTiSix(チタンシリサイド)膜26が形成される。つまり、Si膜22を被覆するようにTiSix膜26が形成される(図2B、ステップS4)。なおTiはW膜21に対する吸着性が比較的低いため、このステップS4においてW膜21上へのTi膜25の成膜は抑制される。
【0016】
その後、ウエハAの温度が上記のステップS3、S4実行時よりも低い温度、例えば200℃以下の温度とされる。そして、当該ウエハAに成膜ガスとして例えばRu(CO)12ガスが供給されてCVDが行われる。それにより、凹部12内に埋め込まれるようにRu膜27が形成される(図2C、ステップS5)。従って、上記したようにRu膜27とW膜21との間にコンタクトが形成されると共に、Ru膜27とSi膜22との間にTiSix膜26を介したコンタクトが形成される。なお、ステップS1、S2は第2の酸化膜除去工程、ステップS3は第1の酸化膜除去工程、ステップS4は金属シリサイド形成工程、ステップS5は成膜工程に相当する。
【0017】
仮にRu膜27とW膜21との間にWOxが介在すると、これらのRu膜27とW膜21との間の配線抵抗が大きくなってしまう。しかし上記のステップS3においてWOx膜23が除去されているので、当該配線抵抗を小さくすることができる。また、仮にRu膜27とSi膜22との間にSiOxが介在すると、これらのRu膜27とSi膜22との間の配線抵抗が大きくなってしまう。しかし上記のようにステップS1、S2よりSiOx膜24が除去されているので、当該配線抵抗についても低くすることができる。さらにステップS4において、Si膜22の表面が金属シリサイド化され、ステップS5にてTiSix膜26を介してSi膜22とRu膜27とが接続されるため、Si膜22とRu膜27との間の配線抵抗について、より確実に低い値とすることができる。従って、既述のステップS1~S5を実施したウエハAから製造される半導体装置について、配線抵抗を低くすることができる。
【0018】
続いて、ステップS1~S5を実施することができる基板処理装置の一実施形態である基板処理装置3について、図4の平面図を参照して説明する。基板処理装置3は、ローダーモジュール31、ロードロックモジュール35、第1の真空搬送モジュール41、第2の真空搬送モジュール42、接続モジュール43、第1の処理モジュール51、第2の処理モジュール52、第3の処理モジュール53及び第4の処理モジュール54を備えている。なお、以下の説明では、第1の真空搬送モジュール41及び第2の真空搬送モジュール42は、まとめて真空搬送モジュール41、42と記載する場合が有る。また、第1~第4の処理モジュール51~54については、単に処理モジュール51~54として記載する場合が有る。
【0019】
ローダーモジュール31、ロードロックモジュール35、第1の真空搬送モジュール41、接続モジュール43、第2の真空搬送モジュール42は、この順に直線状に横方向に並んで設けられている。以下の基板処理装置3に関する説明では、ローダーモジュール31が位置する側を前方側、第2の真空搬送モジュール42が位置する側を後方側とする。
【0020】
ローダーモジュール31は、内部が大気圧である筐体と、筐体内に設けられるウエハAの搬送機構32と、ロードポート33と、を備えている。ロードポート33は本例では4つ、上記の筐体の前方側に左右に並んで設けられている。各ロードポート33にはFOUP(Front Opening Unified Pod)と呼ばれる、ウエハAを格納する搬送容器34が載置される。上記の搬送機構32は例えば左右に移動可能な多関節アームによって構成されており、各ロードポート33上の搬送容器34と、各ロードロックモジュール35との間でウエハAを搬送可能である。
【0021】
ロードロックモジュール35については、本例では3つ左右に並んで設けられている。ロードロックモジュール35は筐体を備えており、当該筐体は、その前方側、後方側に夫々設けられたゲートバルブGを介してローダーモジュール31、第1の真空搬送モジュール41に接続されている。そして、筐体の前方側及び後方側のゲートバルブGが閉じた状態で、当該筐体内の圧力を大気圧と真空圧力との間で変更自在である。また、上記の筐体内には当該ウエハAが載置される不図示のステージが設けられており、当該ステージは、当該ロードロックモジュール35に各々アクセスする上記の搬送機構32及び後述の真空搬送機構44に対して、ウエハAを受け渡し可能に構成されている。
【0022】
第1の真空搬送モジュール41及び第2の真空搬送モジュール42は互いに同様に構成されており、夫々筐体41A、42Aを備えている。筐体41A、42Aには排気口45が各々開口しており、当該排気口45には排気管の一端が接続されている。排気管の他端は、ターボ分子ポンプにより構成される排気機構46に接続されており、排気機構46による排気口45からの排気により、筐体41A内及び筐体42A内が各々真空雰囲気に保たれる。
【0023】
また、上記の接続モジュール43は本例では2つ左右に並んで設けられている。接続モジュール43は筐体43Aを備え、当該筐体43Aは真空搬送モジュール41、42の各筐体41A、42Aに接続されている。上記の排気機構46による排気によって、接続モジュール43の筐体43A内も筐体41A、42A内と同じ圧力の真空雰囲気とされる。筐体43A内にはウエハWが載置されると共に、後述の真空搬送機構44との間で当該ウエハWを受け渡し可能に構成された不図示のステージが設けられている。
【0024】
以降、排気機構46によって真空雰囲気とされる筐体41A内、筐体42A内、筐体43A内をまとめて、ウエハAの真空搬送路40として記載する。筐体41A、42Aについて補足して説明すると、これらの筐体41A、42Aは、図示しないN(窒素)ガスの供給部を各々備えており、当該Nガスが筐体41A、42A内に夫々供給される。それによって真空搬送路40の圧力は、処理モジュール51~54を各々構成する処理容器内の圧力よりも高い所定の圧力に保たれ、真空搬送路40へのガスの流入が防止される。このNガス供給部によるNガスの供給が行われない状態で、上記の排気機構46は真空搬送路40を1×10-7Torr(1.333×10-5Pa)よりも低い圧力にすることができるように構成されている。そのような構成とする理由は後述する。
【0025】
第1の真空搬送モジュール41の筐体41Aの左右の一方には、第1の処理モジュール51及び第3の処理モジュール53がゲートバルブG1を介して接続されており、これらの処理モジュール51、53は前後に並んで配置される。そして、筐体41Aの左右の他方には第2の処理モジュール52及び第3の処理モジュール53がゲートバルブG1を介して接続されており、これらの処理モジュール52、53は前後に並んで配置される。第2の真空搬送モジュール42の筐体42Aの左右の一方、他方には2つずつ第4の処理モジュール54がゲートバルブG1を介して接続されている。筐体42Aの左側、右側の各々で、2つの第3の処理モジュール53は前後に並んで配置されている。なお、処理モジュール51~54では、互いに並行してウエハAを処理可能である。第4の処理モジュール54による処理が、他の処理モジュール51~53による処理よりも時間を要するため、本例では処理モジュール51~54の中のうち、第4の処理モジュール54の数を最も多く設けることで、スループットの向上が図られている。
【0026】
筐体41A内、42A内には真空搬送機構44が設けられており、真空搬送機構44は例えば前後に移動可能な多関節アームによって構成されている。筐体41A内の真空搬送機構44は、ロードロックモジュール35と、接続モジュール43と、第1の処理モジュール51と、第2の処理モジュール52と、第3の処理モジュール53との間でウエハAを受け渡す。筐体42A内の真空搬送機構44は、接続モジュール43と第4の処理モジュール54との間でウエハAを受け渡す。
【0027】
処理モジュール51~54の各々で行われる処理と、図3のフローで述べた各ステップSとの対応を示す。第1の処理モジュール51ではステップS1が行われ、第2の処理モジュール52ではステップS2が行われ、第3の処理モジュール53ではステップS3、S4が行われ、第4の処理モジュール54ではステップS5が行われる。各処理モジュール51~54は各々、内部が真空雰囲気となるように排気される処理容器61を備えており、各ステップSは処理容器61内で行われる。従って上記したステップS2、S3は、同一の処理容器61内のウエハAに対して行われる。なお、第3の処理モジュール54は、第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部を構成し、当該第3の処理モジュール54の処理容器61は第1の処理容器に相当する。そして、成膜ガス供給部を構成する第4の処理モジュール54の処理容器61は、第2の処理容器に相当する。
【0028】
基板処理装置3はコンピュータである制御部30を備えており、この制御部30は、プログラムを備えている。プログラムには、既述したウエハAの処理及びウエハAの搬送が行われるように命令(各ステップ)が組み込まれており、このプログラムは、記憶媒体、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、DVD等に格納され、制御部30にインストールされる。制御部30は当該プログラムにより基板処理装置3の各部に制御信号を出力し、各部の動作を制御する。具体的には処理モジュール51~54の動作、ゲートバルブG、G1の開閉、搬送機構32の動作、各真空搬送機構44の動作、排気機構46の動作、ロードロックモジュール35内の圧力の切替えなどの動作が制御される。上記の処理モジュール51~54の動作の制御とは、具体的には例えば後述するヒーター66への電力供給によるウエハAの温度制御、各ガスの処理容器61内への給断の制御、処理モジュール53については高周波電源73のオンオフによるプラズマの形成の制御などである。
【0029】
基板処理装置3におけるウエハAの搬送経路を述べると、ウエハAは先ず、搬送容器34→ローダーモジュール31→ロードロックモジュール35→第1の真空搬送モジュール41の順で搬送される。そして、ウエハAは第1の処理モジュール51→第1の真空搬送モジュール41→第2の処理モジュール52→第1の真空搬送モジュール41→第3の処理モジュール53→第1の真空搬送モジュール41→接続モジュール43→第2の真空搬送モジュール42→第4の処理モジュール54の順で搬送される。その後、ウエハAは第2の真空搬送モジュール42→接続モジュール43→第1の真空搬送モジュール41→ロードロックモジュール35→ローダーモジュール31の順で搬送されて、搬送容器34に戻される。
【0030】
なお、ロードロックモジュール35の筐体内の圧力は、第1の真空搬送モジュール41へのウエハAの搬送時には大気圧から真空に、ローダーモジュール31へのウエハAへの搬送時には真空から大気圧に切り替えられる。そして、このように第1の真空搬送モジュール41に搬入されてから当該第1の真空搬送モジュール41から搬出されるまで、ウエハAは真空搬送路40を介して各処理モジュール51~54の処理容器61間を搬送されるので、上記したようにステップS1~S5の一連の処理が行われる間、ウエハAは大気雰囲気に曝されない。
【0031】
続いて処理モジュール51~54のうち、代表してステップS3、S4を行う第3の処理モジュール53についての一例を、図5の縦断側面図を用いて説明する。上記したように第3の処理モジュール53は処理容器61を備えており、処理容器61の側壁に形成されたウエハAの搬送口が、上記のゲートバルブG1により開閉される。また、この第3の処理モジュール53における処理容器61は接地されている。そして、処理容器61の壁面には排気管62の一端が開口し、排気管62の他端に設けられる排気機構63により、処理容器61内が所望の圧力の真空雰囲気となるように排気される。
【0032】
処理容器61内にはウエハAを載置するステージ64が設けられており、当該ステージ64上にて突没自在に構成された昇降ピン65により、当該ステージ64と真空搬送機構44との間でウエハAが受け渡される。ステージ64にはヒーター66が埋設されており、処理中にウエハAを既述した温度に加熱する。また、ステージ64にはプラズマ形成用の電極67が埋設されており、当該電極67は接地されている。
【0033】
処理容器61の天井部には、絶縁部材68を介してガスシャワーヘッド71が設けられている。ガスシャワーヘッド71には整合器72を介して高周波電源73が接続されている。ガスシャワーヘッド71と、ステージ64の電極67とは平行平板電極として構成されており、高周波電源73からの高周波の供給により、ガスシャワーヘッド71と、ステージ64との間にプラズマを形成することができる。
【0034】
ガスシャワーヘッド71には、ガス供給路74の下流端が接続されている。このガス供給路74の上流側は分岐して、ガス流路75、76、77を構成している。ガス流路75の上流端はTiClガス供給源75Aに接続されており、ガス流路76の上流端はHガス供給源76Aに接続されており、ガス流路77の上流端はArガス供給源77Aに接続されている。なお、Ar(アルゴン)ガスはプラズマ形成用ガスであり、且つTiClガス及びHガスに対するキャリアガスでもある。
【0035】
ガス流路75~77にはバルブ及びマスフローコントローラを含むガス供給機器78が介設されており、上記の制御部30からの制御信号に従って下流側への各ガスの給断を行う。このような構成によりTiClガス、Arガス、Hガスを独立して処理容器61内に供給することができる。ステップS3ではTiClガス及びArガスが処理容器61内に供給される。その際に高周波電源73はオフとされ、既述したように処理容器61内にプラズマは形成されずに、WOx膜23がエッチングされる。そして、ステップS4ではTiClガス、Arガス、Hガスが処理容器61内に供給される。その際に高周波電源73はオンとなり、既述したように処理容器61内にプラズマが形成されて、Ti膜25及びTiSix膜26が成膜される。
【0036】
第3の処理モジュール53以外の処理モジュール51、52、54についても、第3の処理モジュール53との差異点を中心に、簡単に説明しておく。これら処理モジュール51、52、54については、高周波電源73やステージ64の電極67が設けられておらず、処理容器61内にプラズマが形成されない構成となっている。また、処理容器61内にガスを供給するガス供給源としては、各々の処理モジュールで行う処理に応じたガスが貯留される。これらの差異点を除いて処理モジュール51、52、54については、第3の処理モジュール53と概ね同様の構成であり、従って、各処理容器61内においてステージ64上のウエハAを例示した温度に加熱しつつ、例示した各ガスをウエハAに供給して処理を行うことができる。
【0037】
ところで、これまでに述べたようにステップS3、S4は第3の処理モジュール53にて行われ、ステップS5は第4の処理モジュール54にて行われる。つまりステップS3、S4と、ステップS5とは異なる処理容器61にウエハAを格納して行われる。これは、既述したようにステップS3、S4におけるウエハAの処理温度と、ステップS5におけるウエハAの処理温度とが異なるためである。つまり、このように別々の処理容器61で処理を行うようにすることで、各処理容器61内のステージ64の温度を変化させる必要を無くして、スループットの向上が図られるように装置が構成されている。なお、このようにステップS3、S4と、S5と、を異なる処理容器内で行うのは、処理にTiを用いるステップS3、S4と、処理にRuを用いるステップS5とで、処理容器61内の清浄化(クリーニング)の手法が異なることもその理由として挙げられる。
【0038】
従って基板処理装置3の搬送経路の説明で示したように、ウエハAは第3の処理モジュール53の処理容器61から、真空搬送路40を通過して第4の処理モジュール54の処理容器61に搬送する搬送工程が行われる。その搬送工程の際に仮に真空搬送路40に水分子が残留していると、その水分子に由来する酸素によりW膜21の表面が再度酸化されてしまう。つまり、ステップS3にてWOx膜23を除去しているが、当該WOx膜23がRu膜27の成膜前に再度形成されてしまうことになる。
【0039】
そこで基板処理装置3について、メンテナンス等により真空搬送路40が大気に開放された後は、排気機構46の排気によって真空搬送路40の圧力を1×10-7Torrよりも低い圧力とすることで、真空搬送路40から水分子を略完全に除去する。真空搬送路40に残留する水分子の除去について述べたが、真空搬送路40にリークする各成分もこの排気によって除去される。従って、当該成分に含まれる酸素分子などのWOx膜23を形成する要因となる各分子も同時に除去されることになる。なお、この際に真空搬送路40へのNガスの供給は行わない。
【0040】
その後、排気機構46による排気状態を維持したまま(真空搬送路40へのガス供給が無いとした場合に1×10-7Torrよりも低い圧力となる排気状態としたまま)、真空搬送路40へのNガスの供給を行い、真空搬送路40の圧力を上昇させる。それによって、既述したように処理容器61から真空搬送路40へのガスの流入が防止される状態とする。そして、そのように排気とNガスの供給とが行われた状態で、真空搬送路40にウエハAが搬送され、既述した順番で処理モジュール51~54間を受け渡されて処理される。以上のように、真空搬送路40が1×10-7Torrより低い圧力とされた後にウエハAの搬送及び処理が行われ、そのウエハAの処理が終了するまでの間は、真空搬送路40は大気曝露されない運用とされる。
【0041】
上記したようにウエハAは水分子が略無い状態の真空搬送路40を通過して、第3の処理モジュール53から第4の処理モジュール54へ搬送される。そのため、この搬送中におけるWOx膜23の再度の形成が防止される。WOx膜23の再形成の防止について述べてきたが、このように真空搬送路40の水分子が除去されているため、ステップS1,S2でSiOx膜24が除去された後、Ru膜27が成膜されるまでの間における当該SiOx膜24の再形成についても防止される。
【0042】
なお、上記の1×10-7Torrより低い圧力とは、処理容器61間のウエハAの搬送に要する時間が20秒以下であるとした場合に、酸素原子が膜に1層付着しないとされる圧力である。従って、上記した搬送経路でウエハAを搬送するにあたり、一つの処理モジュールから次の処理モジュールへの搬送に要する時間が20秒以下であればウエハW表面の酸化を回避でき、当該表面を清浄に保ことができる。そのように真空搬送機構44の搬送動作を制御してもよい。
【0043】
ところでステップS3について、プラズマエッチングを行うことでWOx膜23を除去することも考えられる。しかし上記のようにハロゲン化物であるTiClからなるガスを用いてプラズマを形成せずにエッチングを行うことで、SiOx層11がダメージを受けることが防止される。その結果として、半導体装置の配線の信頼性を高いものとすることができる。
【0044】
そしてステップS3、S4については、同じ第3の処理モジュール53の処理容器61内、つまり同一の処理容器61内で行われる。従って、ステップS3の終了後、ステップS4の開始までの時間の短縮化を図ることができるので、基板処理装置3のスループットの向上を図ることができる。また、そのように処理容器61を共通化することで、基板処理装置3の構成の簡素化を図ることができるという利点も有る。
【0045】
さらに共通の処理容器61でステップS3、S4を行うにあたり、ステップS3、S4で各々TiClガスが用いられ、プラズマ形成の有無及びHガスの供給の有無によって、ウエハAに対して異なる処理がなされるようにしている。そのようにステップS3、S4で共通してTiClガスが用いられるため、処理容器61に接続される配管系について簡素なものとすることができるので、装置の製造コストや運用コストの低減を図ることができる利点が有る。
【0046】
なお、ステップS3のWOx膜23の除去は、TiCl以外のハロゲン化物からなるガスを用いてもよい。具体例を挙げると、BClガス、WFガス、WClガス、WClガスやなどを用いることができる。その他にMoのハロゲン化物や、TiCl以外のTiのハロゲン化物を用いてもよい。ただし、上記したようにステップS3、S4では共通のガスを用いることが好ましいため、ステップS3ではハロゲン化金属であるTiClガスを用いることが好ましい。なお上記のBClガスのように、ステップS4で用いるTiClガスとは異なるハロゲン化物からなるガスをステップS3で用いるとしても、これらステップS3、S4は同じ処理容器61内におけるウエハAに対して行うことができる。なお、このステップS3ではハロゲン含有ガスと共に、不活性ガスとしてArガスを共に供給するように述べたが、当該不活性ガスとしてはArガスに限られず例えばNガスを供給するようにしてもよい。
【0047】
凹部12内へのRu膜27の成膜についてはRu(CO)12からなる成膜ガスを用いることには限られない。例えば、(2,4-dimethylpentadienyl)(ethylcyclopentadienyl)ruthenium[(Ru(DMPD)(EtCp)]、bis(2,4-dimethylpentadienyl)Ruthenium[Ru(DMPD)2]、(4- dimethylpentadienyl)(methylcyclopentadienyl) Ruthenium[(Ru(DMPD)(MeCp)]、Bis(Cyclopentadienyl)Ruthenium[(Ru(C5H5)2]、Cis-dicarbonyl bis(5-methylhexane-2,4-dionate)ruthenium(II)、bis(ethylcyclopentadienyl)Ruthenium(II)[Ru(EtCp)2]、Ru(chd)(ipmb)、Ru(EtBz)(EtCHD)等を含むガスをRu(CO)12の代りに用いてRu膜27の成膜を行うことができる。
【0048】
凹部12内に形成する第2の金属膜としては配線抵抗値を小さくするために、Ru膜27とすることが好ましいが、当該Ru膜27を形成することには限られない。例えば、成膜ガスを供給することで、Ru膜27の代わりにMo(モリブデン)膜や、W膜を形成しても比較的小さい配線抵抗値とすることができるため好ましい。なお、第1の金属膜であるW膜21上にRu膜27を積層する例を示したが、この第1の金属膜についてもW膜であることには限られず、第2の金属膜として例示されるRu膜やMo膜であってもよい。
【0049】
上記の例では金属シリサイド化されるシリコン含有膜としてはSi膜22であるが、当該Si膜22であることには限られない。具体的には例えばSiGe(シリコンゲルマニウム)膜であってもよい。なおここでいうシリコン含有膜とは、シリコン自体により構成される膜(即ち、Si膜)か、あるいは上記のSiGe膜のように複数の構成成分からなり、その構成成分のうちの一つがシリコンである膜の意味であり、不純物としてシリコンを含む膜の意味では無い。
【0050】
上記の基板処理装置3については例えば第1の処理モジュール51及び第2の処理モジュール52が設けられず、ステップS1、S2が行われない構成であってもよい。具体的には例えばSiOx膜22については基板処理装置3の外部でウエットエッチングによって除去し、その後にウエハAを基板処理装置3に搬送してもよい。このように基板処理装置3ではステップS3以降のWOx膜23の除去以降の処理のみが行われる場合が有る。上記の真空搬送路40を1×10-7Torrよりも低い圧力にすることについて補足すると、このステップS3以降の処理のみ行われる装置構成である場合、WOx膜23の除去を終えて真空搬送路40にウエハWが搬送される前に、当該真空搬送路40が上記の範囲の真空度に到達していればよい。それによってWOx膜23の除去後、Ru膜27の形成までの各段階におけるWOx膜23の再形成を防止する。
基板処理装置3でSiOx膜24の除去も行う場合は、例えばSiOx膜24の除去を終えて第2の処理モジュール52から真空搬送路40にウエハWが搬送される前に、そのような真空度とされればよい。その他に、上記したようにロードロックモジュール35から真空搬送路40にウエハWが搬送される前のタイミングで、真空搬送路40が上記の範囲の真空度に到達するようにしてもよい。
【0051】
また、上記の図3のフローで示した例では、ステップS3のWOx膜23の除去を先に、ステップS4のシリサイドの形成及びTi膜25の成膜を後に行っている。しかし、ステップS4を先に行い、ステップS3を後に行ってもよい。ただし、その場合はステップS4でWOx膜23上にTi膜が形成されることになる。そのために後のステップS3で、WOx膜23の除去を完了するまでに比較的長い時間を要するおそれが有るため、図3で述べたようにステップS3、S4の順で行うことが好ましい。
【0052】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0053】
A ウエハ
21 W膜
22 Si膜
23 WOx膜
26 TiSix膜
27 Ru膜
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5