(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002306
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 33/14 20060101AFI20221227BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20221227BHJP
A61K 36/534 20060101ALI20221227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221227BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20221227BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20221227BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20221227BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20221227BHJP
A61K 31/77 20060101ALI20221227BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20221227BHJP
C11D 3/10 20060101ALI20221227BHJP
C11D 1/74 20060101ALI20221227BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20221227BHJP
C11D 3/18 20060101ALI20221227BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20221227BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
A61K33/14
A61P11/02
A61K36/534
A61P43/00 121
A61K33/00
A61K31/14
A61K31/045
A61K31/122
A61K31/77
C11D3/04
C11D3/10
C11D1/74
C11D1/62
C11D3/18
C11D3/50
A61K127:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103476
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】大森 広太郎
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
4C206
4H003
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA16
4C086HA24
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4C088AB38
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4C206NA05
4C206ZA34
4C206ZC75
4H003AC12
4H003AE05
4H003BA12
4H003DA02
4H003EA16
4H003EA19
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB05
4H003ED02
4H003FA26
(57)【要約】
【課題】本発明は、鼻腔内の好酸球浸潤を抑制できる新たな製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)塩化アルカリ金属塩及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選択される無機塩、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び(C)第四級アンモニウム塩を含む組成物は、鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤として有効である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩化アルカリ金属塩及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選択される無機塩、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び(C)第四級アンモニウム塩を含む、鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤。
【請求項2】
さらに(D)モノテルペン化合物を含む、請求項1に記載の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤。
【請求項3】
前記(D)成分が、前記(D)成分を含むペパーミント油の形態で含まれる、請求項2に記載の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤。
【請求項4】
鼻腔内洗浄用組成物である、請求項1~3のいずれかに記載の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻腔粘膜は、直接外界に露出されており、外界からの刺激に対して敏感に反応する上皮組織である。鼻腔粘膜に、花粉、微生物、ハウスダスト等の異物が付着すると、不快感を生じたり、アレルギー疾患や感染症等の各種疾患を発症したりすることが知られている。このような鼻腔粘膜症状を予防又は改善するには、洗浄液等によって粘膜に付着した異物を除去すること(所謂鼻うがい)が有効であると考えられている。鼻洗浄剤は、所定の洗浄効果を得るとともに、鼻腔での刺激を低減するために、塩濃度やpHが適宜調整されている。例えば、鼻洗浄剤の例として、クエン酸とクエン酸ナトリウムとが配合され、前記クエン酸ナトリウムが0.02重量%以上0.2重量%以下配合されていることを特徴とする鼻用洗浄剤(特許文献1)、精製水、塩化ナトリウム、グリセリン、香料及び塩化ベンザルコニウムを混合することにより得られる溶液(特許文献2)等が知られている。
【0003】
鼻腔内の粘膜に好酸球が増加し、当該粘膜に好酸球浸潤を生じると、再発を繰り返しやすい慢性副鼻腔炎である好酸球性副鼻腔炎を招来する。好酸球性副鼻腔炎では、鼻腔内に多発性鼻茸を有する篩骨洞主体の病変を呈し、嗅覚障害を伴う。好酸球性副鼻腔炎に抗菌薬は無効であり、ステロイドの内服にのみ反応する(非特許文献1)。このため、好酸球性副鼻腔炎の治療法としては、長期の経口ステロイドと内視鏡下副鼻腔手術が主体となっている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-001317号公報
【特許文献2】特開2017-213280号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)”、[online]、令和2年10月、難病情報センター、[令和3年6月16日検索]、インターネット<URL: https://www.nanbyou.or.jp/entry/4538>
【非特許文献2】日耳鼻117: 96―102,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鼻腔内の粘膜に好酸球浸潤を伴う症状は難治性であり、通常の副鼻腔炎等とも異なり、もはや抗菌薬の適用ではなくなる。しかしながら、現在の治療法のうち、ステロイドの長期服用については副作用の点で、内視鏡下副鼻腔手術については侵襲性の点で問題がある。そこで、鼻腔内粘膜における好酸球浸潤を抑制するための簡便な方法が新たに望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、鼻腔内の好酸球浸潤を抑制できる新たな製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、塩化アルカリ金属塩及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選択される無機塩と、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、第四級アンモニウム塩を含む組成物が、意外にも、鼻腔内の好酸球の浸潤を抑制できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)塩化アルカリ金属塩及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選択される無機塩、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び(C)第四級アンモニウム塩を含む、鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤。
項2. さらに(D)モノテルペン化合物を含む、項1に記載の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤。
項3. 前記(D)成分が、前記(D)成分を含むペパーミント油の形態で含まれる、項2に記載の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤。
項4. 鼻腔内洗浄用組成物である、項1~3のいずれかに記載の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鼻腔内の好酸球浸潤を抑制できる新たな製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤は、(A)塩化アルカリ金属塩及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選択される無機塩(以下において、「(A)成分」とも記載する)、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(以下において、「(B)成分」とも記載する)、及び(C)第四級アンモニウム塩(以下において、「(C)成分」とも記載する)を含むことを特徴とする。以下、本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤について詳述する。
【0012】
(A)無機塩
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤は、(A)成分として所定の無機塩を含有する。
【0013】
無機塩は、塩化アルカリ金属塩及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選択される。塩化アルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。炭酸アルカリ金属塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
これらの無機塩の中でも、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは塩化ナトリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0015】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤における(A)成分の含有量としては特に限定されず、鼻腔粘膜に対する刺激を回避することを考慮して当業者が適宜決定することができる。具体的には、本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤における(A)成分の含有量としては、例えば0.6~1.04重量%、好ましくは0.65~0.9重量%が挙げられる。
【0016】
(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤は、(B)成分としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有することができる。
【0017】
本発明で用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、例えば、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0018】
上記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおける酸化エチレン(EO)の平均付加モル数としては特に限定されないが、例えば5~40モルが挙げられる。
【0019】
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
上記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられ、より好ましくはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられる。
【0021】
また、上記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、酸化エチレン(EO)の付加モル数が、好ましくは10~30モルのもの、より好ましくは15~25モルのもの、さらに好ましくは18~22モルのものが挙げられる。
【0022】
具体的には、上記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、特に好ましくは、酸化エチレン(EO)の付加モル数が18~22モルのモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリオキシエチレン(18~22)ソルビタンモノオレート)、酸化エチレン(EO)の付加モル数が18~22モルのモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリオキシエチレン(18~22)ソルビタンモノステアレート)が挙げられる。
【0023】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤における(B)成分の含有量としては特に限定されないが、例えば0.01~0.1重量%、重量%以上が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.03~0.07重量%、より好ましくは0.04~0.07重量%が挙げられる。
【0024】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤において、(A)成分と(B)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量として、例えば0.01~0.12重量部が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.03~0.12重量部、より好ましくは0.05~0.11重量部が挙げられる。
【0025】
(C)第四級アンモニウム
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤は、(C)成分として第四級アンモニウムを含有する。第四級アンモニウムは、抗菌剤の1種であり、抗菌剤は好酸球浸潤の症状に対しては無効と認識されてきたが、(A)成分及び(B)成分と共に配合されることで、抗酸菌の浸潤を効果的に抑制することができる。
【0026】
本発明で用いられる第四級アンモニウムとしては特に限定されないが、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。これらの抗菌又は殺菌剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
これらの第四級アンモニウムの中でも、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム及び塩化セチルピリジニウムが挙げられ、より好ましくは塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0028】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤における(C)成分の含有量については特に限定されないが、例えば、0.0001~0.01重量%が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.0005~0.01重量%、より好ましくは0.001~0.008重量%、さらに好ましくは0.001~0.005重量%が挙げられる。
【0029】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤において、(A)成分と(C)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量として、例えば0.001~0.05重量部が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.001~0.01重量部、より好ましくは0.002~0.007重量部が挙げられる。
【0030】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤において、(B)成分と(C)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(B)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量として、例えば0.01~0.1重量部が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.02~0.08重量部、より好ましくは0.04~0.08重量部が挙げられる。
【0031】
(D)モノテルペン化合物
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤は、好酸球浸潤抑制効果を一層高めることを目的として、(D)成分としてモノテルペン化合物をさらに含むことができる。モノテルペン化合物は、イソプレン単位2個からなるC10H16の炭化水素を基本骨格として有する化合物である。
【0032】
本発明で用いられるモノテルペン化合物としては、具体的には、メントール、ネオメントール、ネオイソメントール、イソメントール、テレピネオール、トランスツラノール、リナロール、イソプレゴール、チモール、ゲラニオール、ボルネオール等のアルコールモノテルペン;シトラール、シトロネラール、ペリルアルデヒド、サフラナール等のアルデヒドモノテルペン;ピネン、サビネン、ミルセン、テルピネン、パラシメン、リモネン、シスオシメン、テルピノレン等の炭化水素モノテルペン;メントン、イソメントン、プレゴン、ピペリトン、カルボメントン、ヨノン、カンフル等のケトンモノテルペン;シネオール等のエーテルテルペン;酢酸メンチル等のモノテルペンエステル;メントフラン等のフランモノテルペン等が挙げられる。
【0033】
これらのモノテルペン化合物に光学異性体が存在する場合には、d体、l体、dl体のいずれであってもよい。また、これらのモノテルペンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
これらのモノテルペン化合物の中でも、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくはアルコールモノテルペン及び/又はケトンモノテルペンが挙げられ、より好ましくはメントール及び/又はメントンが挙げられる。
【0035】
また、これらのモノテルペン化合物は、モノテルペン化合物を含む精油の形態で含まれていてもよい。モノテルペン化合物を含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。これらの精油の中でも、好酸球浸潤抑制効果をより一層高める観点から、好ましくはペパーミント及びハッカ油が挙げられ、より好ましくはペパーミント油が挙げられる。
【0036】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤が(D)成分を含む場合、(D)成分の含有量については特に限定されないが、例えば0.001~1.7重量%が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.005~1.6重量%、より好ましくは0.008~1.5重量%、さらに好ましくは0.01~1.4重量%、0.01~1重量%、0.01~0.7重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.3重量%、0.01~0.1重量%、0.01~0.05重量%、又は0.01~0.03重量%が挙げられる。
【0037】
また、本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤に(D)成分としてメントールを含む場合、メントールの含有量については、例えば0.001~1.7重量%が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.005~1.6重量%、より好ましくは0.008~1.5重量%、さらに好ましくは0.01~1.4重量%、0.01~1重量%、0.01~0.7重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.3重量%、0.01~0.1重量%、0.01~0.05重量%、又は0.01~0.03重量%が挙げられる。
【0038】
さらに、本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤における(D)成分としてメントンを含む場合、メントンの含有量については、鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤に備えさせるべき爽快感、又はさらに鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤の濃縮率等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.002~1.7重量%が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.01~1.6重量%、より好ましくは0.015~1.5重量%、0.015~1重量%、0.015~0.7重量%、0.015~0.5重量%、0.015~0.3重量%、0.015~0.1重量%、0.015~0.05重量%、又は0.015~0.03重量%が挙げられる。
【0039】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤において、(A)成分と(D)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(A)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量として、例えば0.001~0.2重量部が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.005~0.15重量部、より好ましくは0.01~0.1重量部が挙げられる。
【0040】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤において、(B)成分と(D)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(B)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量として、例えば0.05~3重量部が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは0.1~2重量部、より好ましくは0.2~1.2重量部が挙げられる。
【0041】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤において、(C)成分と(D)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(C)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量として、例えば0.5~50重量部が挙げられ、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは1~25重量部、より好ましくは3~20重量部が挙げられる。
【0042】
他の成分
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤化等に必要とされる他の基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、炭素数1~5の一価低級アルコール、多価アルコールの水性基剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、防腐剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。これらの基材や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの基剤や添加剤の含有量は、製剤形態等に応じて適宜設定することができる。
【0043】
これらの基剤や添加剤の中でも、好酸球浸潤抑制効果を一層高める観点から、好ましくは多価アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、二価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール等のアルキレンジオール、及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルジオールが挙げられ、好ましくはアルキレンジオールが挙げられ、より好ましくはプロピレングリコールが挙げられる。)及び三価アルコール(例えば、グリセリン等)が挙げられ、好ましくはプロピレングリコール及びグリセリンが挙げられる。本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤が多価アルコールを含む場合、多価アルコールの含有量としては、例えば0.2~0.5重量%、好ましくは0.3~0.5重量%が挙げられる。
【0044】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ビタミン類、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、粘膜保護剤、血行促進成分、清涼化剤、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの薬理成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0045】
形態
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤の形態については、鼻腔内粘膜に適用可能な形態であれば特に限定されず、液剤、及び半固形剤(軟膏剤、ゲル剤等)が挙げられ、好ましくは、液剤が挙げられる。
【0046】
用途
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤は、鼻腔内の粘膜に適用して使用される。具体的な適用形態としては、本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤と鼻腔内粘膜とが接触する形態であれば特に限定されず、例えば、洗浄、噴霧及び塗布等が挙げられるが、好ましくは洗浄が挙げられる。このため、本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤は鼻腔内洗浄用組成物として用いられることが好ましい。
【0047】
本発明の鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤の具体的な使用方法としては、適用による効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、鼻腔内に直接流し込んで洗浄する方法、スプレー等で粘膜に噴霧する方法、治具を用いて直接粘膜に塗布する方法等が挙げられる、好ましくは、鼻腔内に直接流し込んで洗浄する方法が挙げられる。鼻腔内に直接流し込んで洗浄する方法としては、さらに具体的には、鼻腔内洗浄用組成物として調製された鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤を鼻腔に流しこみ口から吐き出す方法、及び鼻腔内洗浄用組成物として調製された鼻腔内の好酸球浸潤抑制剤を一方の鼻腔に流しこみ他方の鼻腔から吐き出す方法等が挙げられる。
【実施例0048】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
試験例
表1に示す組成の被験サンプルを調製した。調製した被験サンプルは、鼻腔内洗浄用組成物の形態で調製した。なお、ペパーミント油としては、モノテルペンが94.5重量%含まれ、モノテルペンのうちメントールが32.7重量%、メントンが27.5重量%含まれるものを用いた。
【0050】
被験動物として、鼻腔内の好酸球浸潤を確認した6週齢のモルモット4匹を用いた。これらモルモットをウレタン麻酔した後、両鼻腔にカテーテルを挿し、一方の鼻腔を陰圧にした状態で他方の鼻腔から被験サンプルを流し込むことで、鼻腔内に適用した(鼻洗浄を行った)。この鼻洗浄操作は、1日1回、2日にわたって実施した。その後、モルモットの鼻腔を摘出し、パラフィンブロック化後にスライスして組織切片を作成した。組織切片をCongo-Red染色により好酸球の染色を行い、浸潤の有無を評価した。鼻腔内の好酸球浸潤抑制の効果の程度を、以下の基準に基づいて採点した。4例中、浸潤が認められたものが1例までであれば、所望の好酸球浸潤抑制効果が認められたと評価した。結果を表1に示す。
【0051】
++: 4例中、全ての例で浸潤が認められなかった
+: 4例中、1例が浸潤した
-: 4例中、2例が浸潤した
--: 4例中、3例が浸潤した
---: 4例中、全ての例で浸潤した
【0052】
【0053】
表1に示すとおり、無処理の場合では全ての例において浸潤が認められ(参考例1)、また、(A)成分のみを含む溶液で洗浄したとしても実質的な浸潤抑制効果は認められなかった(比較例1)が、(A)成分、(B)成分及び(C)成分をともに含む溶液で洗浄することで、所望の浸潤抑制効果が認められた(実施例1~3)。さらに、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加えて(D)成分を含む場合は、浸潤抑制効果がさらに高められることも認められた(実施例4~8)。
【0054】
処方例
表2に示した組成の被験サンプルを調製した。調製した被験サンプルは、鼻腔内洗浄用組成物の形態で調製した。各被験サンプルについて実施例と同様の方法で好酸球浸潤抑制効果を確認したところ、処方例1の被験サンプルは実施例1~3と同程度の浸潤抑制効果が認められ、処方例2~10の被験サンプルは、実施例4~8と同程度の浸潤抑制効果が認められた。
【0055】