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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002317
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】粘膜適用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/14 20060101AFI20221227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K33/14
A61P43/00
A61K47/10
A61K47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103496
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】大森 広太郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB21
4C076CC50
4C076DD38
4C076DD46
4C076FF56
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA24
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA56
4C086NA06
4C086ZC80
(57)【要約】
【課題】本発明は、金属腐食性が低減された粘膜適用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)塩化アルカリ金属塩、(B)二価アルコール、及び(C)水を含み、前記(A)成分の含有量が0.5~18重量%である粘膜適用組成物は、金属腐食性が低減されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩化アルカリ金属塩、(B)二価アルコール、及び(C)水を含み、前記(A)成分の含有量が0.5~18重量%である、粘膜適用組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の含有量が5~18重量%である、請求項1に記載の粘膜適用組成物。
【請求項3】
前記(A)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が、0.1重量部以上である、請求項1又は2に記載の粘膜適用組成物。
【請求項4】
さらに(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む、請求項1~3のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属腐食性が低減された粘膜適用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の粘膜に対する衛生や保護の意識に高まりに伴い、粘膜のケアを目的とした組成物が粘膜に適用されることがある。粘膜は皮膚と異なり刺激に弱い構造を有しているため、粘膜適用組成物は、体液と同じ浸透圧濃度に調整された塩化アルカリ金属塩等が等張化剤として配合された状態で用いられ、これによって、適用される粘膜への刺激を軽減している。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化ベンザルコニウム0.002~0.1重量%、塩化ナトリウム0.65重量%、グリセリン0.5重量%、水98~99重量%等を含む粘膜適用組成物が、析出物の生成が抑制され、使用感も良好に維持されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-196367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘膜の洗浄は通常水まわりで行われる。また、水まわりには金属製の部材が部分的に用いられているのが常であり、また、水まわりに金属製の部材が用いられた小物等がおかれている状況も多く存在する。粘膜適用組成物を使用すると、水まわりに存在している金属の表面にも付着し、洗い流されないまま放置されると、粘膜適用組成物に等張化剤として配合されている塩化アルカリ金属塩により金属腐食が起こるという問題が生じる。さらに、粘膜適用組成物は1回に比較的多くの量が用いられることから、使用前は濃縮液の状態で用意され、用時に適正な濃度に希釈して用いられることもある。このように濃縮液を希釈する過程において、水まわりに存在している金属の表面に濃縮液が付着すると、腐食が起こる問題はより顕著となる。
【0006】
そこで、本発明は、金属腐食性が低減された粘膜適用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、所定濃度の塩化アルカリ金属塩及び水を含む粘膜適用組成物に二価アルコールを配合することによって、金属腐食性が低減されることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)塩化アルカリ金属塩、(B)二価アルコール、及び(C)水を含み、前記(A)成分の含有量が0.5~18重量%である、粘膜適用組成物。
項2. 前記(A)成分の含有量が5~18重量%である、項1に記載の粘膜適用組成物。
項3. 前記(A)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が、0.1重量部以上である、項1又は2に記載の粘膜適用組成物。
項4. さらに(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む、項1~3のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属腐食性が低減された粘膜適用組成物が適用される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粘膜適用組成物は、(A)塩化アルカリ金属塩(以下において、「(A)成分」とも記載する)、(B)二価アルコール(以下において、「(B)成分」とも記載する)、及び(C)水(以下において、「(C)成分」とも記載する)を含み、前記(A)成分の含有量が0.5~18重量%であることを特徴とする。以下、本発明の粘膜適用組成物について詳述する。
【0011】
(A)塩化アルカリ金属塩
本発明の粘膜適用組成物は、(A)成分として塩化アルカリ金属塩を所定濃度で含有する。
【0012】
塩化アルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの塩化アルカリ金属塩は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの塩化アルカリ金属塩の中でも、好ましくは塩化ナトリウムが挙げられる。
【0013】
本発明の粘膜適用組成物における(A)成分の含有量は、0.5~18重量%である。このため、本発明の粘膜適用組成物は、(A)成分の含有量に応じて、用時に希釈せずにそのまま用いることもできるし、用時に水で希釈して用いることもできる。本発明の粘膜適用組成物は金属腐食低減性に優れているため、本来的に金属腐食性が高くなる高濃度の(A)成分が含まれている場合であっても、効果的に金属腐食低減性を奏することができる。このような観点から、本発明の粘膜適用組成物における(A)成分の含有量の好適な例としては、用時に水で希釈した場合に粘膜適用に適した濃度となる高濃度が挙げられ、具体的には、3~18重量%、好ましくは4~18重量%、より好ましくは5~18重量%、5~15重量%、5~12重量%、5~10重量%、5~8重量%、又は5~7重量%が挙げられる。
【0014】
(B)二価アルコール
本発明の粘膜適用組成物は、(B)成分として二価アルコールを含有する。0.5~18重量%の(A)成分と(C)成分とを含む粘膜適用組成物は金属腐食性を有するが、本発明の粘膜適用組成物は、さらに(B)成分を配合することで、金属腐食性を低減することができる。
【0015】
本発明で用いられる二価アルコールとしては特に限定されないが、例えばアルキレンジオール及びポリアルキレンエーテルジオールが挙げられる。アルキレンジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール等が挙げられる。ポリアルキレンエーテルジオールとしては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらの二価アルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
これらの二価アルコールの中でも、金属腐食抑制性をより一層高める観点から、好ましくはアルキレンジオールが挙げられ、より好ましくはプロピレングリコール及び/又は1,3-ブチレングリコールが挙げられ、さらにより好ましくはプロピレングリコールが挙げられる。
【0017】
本発明の粘膜適用組成物における(B)成分の含有量としては特に限定されないが、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有量が、例えば0.1重量部以上となる量が挙げられ、金属腐食抑制性をより一層高める観点から、好ましくは0.3重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは0.7重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、又は2重量部以上となる量が挙げられる。本発明の粘膜適用組成物における(B)成分の含有量の上限としても特に限定されないが、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有量の上限として、例えば4重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、又は0.8重量以下となる量が挙げられる。
【0018】
本発明の粘膜適用組成物における(B)成分の具体的な含有量については、(A)成分の含有量と、上記の(A)成分に対する(B)成分の含有量とにより定まるが、例えば、0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上、一層好ましくは4重量%以上が挙げられる。本発明の粘膜適用組成物における(B)成分の具体的な含有量の上限としても特に限定されないが、例えば、15重量%以下、12.5重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、又は5重量%以下が挙げられる。
【0019】
(C)水
本発明の粘膜適用組成物は、(C)成分として水を含む。水としては、精製水、蒸留水、滅菌水、海洋深層水等が挙げられる。
【0020】
本発明の粘膜適用組成物において、(C)成分の含有量としては特に限定されず、例え60~99重量%、好ましくは65~96重量%、より好ましくは70~92重量%が挙げられる。
【0021】
(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
本発明の粘膜適用組成物は、金属腐食抑制性をより一層高めることを目的として、(D)成分としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有することができる。
【0022】
本発明で用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、例えば、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0023】
上記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおける酸化エチレン(EO)の平均付加モル数としては特に限定されないが、例えば5~40モルが挙げられる。
【0024】
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、金属腐食抑制性をより一層高める観点から、好ましくはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられ、より好ましくはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられる。
【0026】
また、上記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、金属腐食抑制性をより一層高める観点から、酸化エチレン(EO)の付加モル数が、好ましくは10~30モルのもの、より好ましくは15~25モルのもの、さらに好ましくは18~22モルのものが挙げられる。
【0027】
具体的には、上記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、金属腐食抑制性をより一層高める観点から、特に好ましくは、酸化エチレン(EO)の付加モル数が18~22モルのモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリオキシエチレン(18~22)ソルビタンモノオレート)が挙げられる。
【0028】
本発明の粘膜適用組成物が(D)成分を含む場合における(D)成分の含有量としては特に限定されないが、(A)成分1重量部に対する(D)成分の含有量が、例えば0.05重量部以上となる量が挙げられ、金属腐食抑制性をより一層高める観点から、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、さらに好ましくは0.4重量部以上、0.6重量部以上、0.8重量部以上又は0.9重量部以上となる量が挙げられる。本発明の粘膜適用組成物が(D)成分を含む場合における(D)成分の含有量の上限としても特に限定されないが、(A)成分1重量部に対する(D)成分の含有量の上限として、例えば4重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、0.7重量部以下、又は0.5重量以下となる量が挙げられる。
【0029】
また、本発明の粘膜適用組成物が(D)成分を含む場合における(D)成分の含有量としては、(B)成分1重量部に対する(D)成分の含有量が、例えば0.08重量部以上となる量が挙げられ、金属腐食抑制性をより一層高める観点から、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.4重量部以上、さらに好ましくは0.5重量部以上、0.8重量部以上、又は1重量部以上となる量も挙げられる。本発明の粘膜適用組成物が(D)成分を含む場合における(D)成分の含有量の上限としても特に限定されないが、(B)成分1重量部に対する(D)成分の含有量の上限として、例えば5重量部以下、2.5重量部以下、1.5重量部以下、0.8重量部以下、又は0.6重量以下となる量も挙げられる。
【0030】
本発明の粘膜適用組成物における(D)成分の具体的な含有量については、(A)成分の含有量と、上記の(A)成分及び/又は上記の(B)成分に対する(D)成分の含有量とにより定まるが、例えば、0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは4重量%以上が挙げられる。本発明の粘膜適用組成物における(D)成分の具体的な含有量の上限としても特に限定されないが、例えば、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、又は6重量%以下が挙げられる。
【0031】
他の成分
本発明の粘膜適用組成物には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤化等に必要とされる他の基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、炭素数1~5の低級1価アルコール、及びグリセリン等の水性基剤、油性基剤、界面活性剤(上記(D)成分以外)、防腐剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、防腐剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。これらの基材や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの基剤や添加剤の含有量は、製剤形態等に応じて適宜設定することができる。
【0032】
本発明の粘膜適用組成物には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ビタミン類、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、粘膜保護剤、血行促進成分、清涼化剤、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの薬理成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
形態
本発明の粘膜適用組成物の形態については、流動性がある形態であれば特に限定されず、液剤、及び半固形剤(軟膏剤、ゲル剤等)が挙げられ、好ましくは、粘膜適用時に水回りに存在する金属の表面に滴下又は飛沫しやすい液剤が挙げられる。好ましくは、用時に水により希釈することで各成分の濃度が粘膜への適用に適した粘膜適用液状組成物となるように調製される、濃縮液剤として設計されることができる。
【0034】
用途
本発明の粘膜適用組成物は、希釈せずそのままで、又は、用時に水により希釈することで各成分の濃度が粘膜への適用に適した粘膜適用液剤組成物として調製した後、粘膜に適用する目的で使用される。粘膜の部位としては特に限定されず、例えば、鼻腔、眼、咽頭、口腔、耳、膣、膀胱、直腸等の粘膜が挙げられ、好ましくは鼻腔の粘膜が挙げられる。また、粘膜への適用形態としても、本発明の粘膜適用組成物と粘膜とが接触する形態であれば特に限定されず、例えば、洗浄及び塗布等が挙げられるが、好ましくは洗浄が挙げられる。
【0035】
本発明の粘膜適用組成物の使用方法としては、適用による効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、粘膜に滴下する方法;スプレー等で粘膜に噴霧する方法;カテーテル等により注入する方法;鼻腔であれば洗浄液を鼻腔に流しこみ口から吐き出す方法や、洗浄液を一方の鼻腔に流しこみ他方の鼻腔から吐き出す方法;眼であれば洗浄液をアイカップに注いで眼を洗眼する方法;口腔であれば口に含んで洗口する方法及びブラシにより磨く方法;膣であれば腟腔に注入して腟口から流出させる方法等が挙げられる。
【実施例0036】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
表1及び表2に示す組成の液状の粘膜適用組成物を調製した。この粘膜適用組成物は、鼻腔粘膜に適用できるものである。表1及び表2に示す粘膜適用組成物のうち、比較例1~3及び実施例1,2の粘膜適用組成物は、希釈せずにそのまま粘膜に適用するものとして構成されており、比較例4~8及び実施例3~10の粘膜適用組成物は、用時に水で希釈して用いる濃縮タイプの粘膜適用組成物として構成されている。得られた粘膜適用組成物50mlをビーカー(50ml容量)に入れ、さらに、表1及び表2に示す金属を浸漬し、室温で1日放置した。放置後における金属腐食の程度を観察した。粘膜適用組成物と接触した金属に腐食が起こると、粘膜適用組成物に金属が溶解して褐色化及び/又は沈殿物を生じるため、金属腐食の程度は粘膜適用組成物の褐色化及び沈殿物の有無及びそれらの度合いに基づいて評価した。具体的には、以下の基準に基づいて腐食性を評価した。
【0038】
◎:着色なく澄明(腐食性なし)
〇:わずかに褐色化しているが澄明(わずかな腐食性のみ)
△:褐色化し、細かい澱が生じている(腐食性あり)
△△:褐色化し、多くの沈殿が生じている(やや強い腐食性あり)
×:濃く褐色化し、より多くの沈殿が生じている(強い腐食性あり)
××:かなり濃く褐色化し、大きな沈殿物が生じている(かなり強い腐食性あり)
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
上記表1及び表2の結果が示すように、表示量の塩化ナトリウムを含む粘膜適用組成物は、金属に対して腐食性を示し(比較例1)、3価アルコールであるグリセリンをさらに添加しても金属腐食性は改善されず、むしろ金属腐食性が悪化する場合さえあり(比較例2,3)、塩化ナトリウムの濃度が高い濃縮タイプの粘膜適用組成物においては、金属腐食性が特に悪化した(比較例4~8)。これに対して、表示量の塩化ナトリウムを含む粘膜適用組成物に、2価アルコールであるプロピレングリコールを加えると、金属腐食性が顕著に低減された(実施例1~10)。さらに、プロピレングリコールに変えて、2価アルコールである1,3-ブチレングリコールを加えた場合も実施例1~10と同様に、金属腐食性が顕著に低減されたことを確認した。