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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002319
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】MEMSデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/02 20060101AFI20221227BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20221227BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20221227BHJP
   H10N 30/06 20230101ALI20221227BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20221227BHJP
   H03H 9/24 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H04R17/02
H01L41/09
H01L41/047
H01L41/29
B81B3/00
H03H9/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103498
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】大原 悠希
(72)【発明者】
【氏名】情家 智也
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】片上 崇治
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝英
(72)【発明者】
【氏名】口地 博行
(72)【発明者】
【氏名】桝本 尚己
【テーマコード(参考)】
3C081
5D004
5J108
【Fターム(参考)】
3C081AA15
3C081BA06
3C081BA22
3C081BA43
3C081BA46
3C081BA48
3C081BA77
3C081DA03
3C081DA27
3C081DA29
3C081EA21
5D004AA07
5D004CD09
5D004DD03
5J108BB08
5J108CC04
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE07
5J108GG03
(57)【要約】
【課題】補強膜が剥がれることの抑制されたMEMSデバイスを提供する。
【解決手段】MEMSデバイスは、圧力を電気信号に変換する圧電素子を含む振動子220と、振動子の強度を補強するための補強膜260と、を有する。振動子には補強膜の一部の設けられる溝部270が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を電気信号に変換する圧電素子を含む振動子(220)と、
前記振動子の強度を補強するための補強膜(260)と、を有し、
前記振動子には前記補強膜の一部の設けられる溝部(270)が形成されているMEMSデバイス。
【請求項2】
前記補強膜は前記振動子における前記溝部の開口する一面(220d)と、前記溝部を区画する区画面(220f,270a)それぞれに連結されている請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
前記溝部の少なくとも一部は、前記一面からその裏側の裏面(220e)に向かうにしたがって、前記一面と前記裏面とを結ぶ厚み方向に直交する横方向の長さが長くなっている請求項2に記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
前記補強膜の形成材料には、有機材料と、前記振動子の構成材料との線膨張係数差を低減するためのフィラーと、が含有されている請求項1~3いずれか1項に記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
前記振動子は、支持台(210)に一部が固定される支持端部(221)と、前記支持端部に一体的に連結された開放端部(222)と、を有し、
前記溝部が前記開放端部に形成され、
前記補強膜が前記開放端部に設けられている請求項1~4いずれか1項に記載のMEMSデバイス。
【請求項6】
前記支持端部に含まれる前記圧電素子と、前記開放端部に含まれる前記圧電素子とが絶縁し、
前記支持端部に含まれる前記圧電素子と外部装置(300)とを接続するための電極(250)が前記支持端部の前記支持台側に形成されている請求項5に記載のMEMSデバイス。
【請求項7】
前記開放端部は前記支持端部から離れるにしたがって先細りになっており、
複数の前記振動子における前記開放端部の前記支持端部から離れた先端(220c)側が前記補強膜によって架橋されている請求項6に記載のMEMSデバイス。
【請求項8】
複数の前記振動子の間に構成された、音響圧力を抜くための隙間の一部が前記補強膜によって閉塞されている請求項1~7いずれか1項に記載のMEMSデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、圧電素子を備えるMEMSデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、音響圧力を電圧に変換する圧電型MEMSマイクロフォンが知られている。この圧電型MEMSマイクロフォンは片持ち支持梁構造の振動板を備えている。この振動板に圧電薄膜が形成されている。振動板が音響圧力によって振動した際に圧電薄膜に応力が作用する。この音響圧力に応じた電圧が圧電薄膜で発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-137297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧電型MEMSマイクロフォンでは、弾性係数を高めるための付加薄膜が振動板に形成されている。この付加薄膜(補強膜)が振動板から剥がれる虞がある。
【0005】
本開示の目的は、補強膜が剥がれることの抑制されたMEMSデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるMEMSデバイスは、圧力を電気信号に変換する圧電素子を含む振動子(220)と、
振動子の強度を補強するための補強膜(260)と、を有し、
振動子には補強膜の一部の設けられる溝部(270)が形成されている。
【0007】
これにより補強膜(260)が振動子(220)から剥がれることが抑制される。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】圧電型MEMSマイクロフォンの概略構成を示す断面図である。
図2】MEMSデバイスの上面図である。
図3図2に示すIII-III線に沿う断面図である。
図4】圧電素子の電気的な構成を示す回路図である。
図5】薄膜の積層を説明するための断面図である。
図6】レジストを説明するための断面図である。
図7】溝部の形成を説明するための断面図である。
図8】補強膜の形成を説明するための断面図である。
図9】ウエハのエッチングを説明するための断面図である。
図10】露光とエッチングを説明するための断面図である。
図11】第2電極薄膜のエッチングを説明するための断面図である。
図12】補強膜の形成を説明するための断面図である。
図13】ウエハのエッチングを説明するための断面図である。
図14】露光とエッチングを説明するための断面図である。
図15】第2電極薄膜のエッチングを説明するための断面図である。
図16】第1圧電薄膜のエッチングを説明するための断面図である。
図17】第1電極薄膜のエッチングを説明するための断面図である。
図18】補強膜の形成を説明するための断面図である。
図19】MEMSデバイスの上面図である。
図20】MEMSデバイスの上面図である。
図21】MEMSデバイスの上面図である。
図22】MEMSデバイスの上面図である。
図23】MEMSデバイスの断面図である。
図24】MEMSデバイスの上面図である。
図25】MEMSデバイスの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0011】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせが可能である。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、組み合わせが可能であることを明示していなくても、実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1図8に基づいてMEMSデバイスを説明する。
【0013】
<圧電型MEMSマイクロフォン>
図1に示す圧電型MEMSマイクロフォン100は、MEMSデバイス200、ASIC300、および、パッケージ400を有する。MEMSはMicro Electro Mechanical Systemsの略である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。
【0014】
MEMSデバイス200とASIC300は電気的に接続されている。パッケージ400は基板410と蓋部420を有する。基板410の内面410aにMEMSデバイス200とASIC300それぞれが搭載されている。この内面410aが蓋部420によって覆われている。基板410と蓋部420とによって構成されるパッケージ400の内部空間にMEMSデバイス200とASIC300が収納されている。
【0015】
基板410には、内面410aとその裏側の外面410bとに開口する導入孔410cが形成されている。導入孔410cはパッケージ400の内部空間とその外側の外部空間とを連通している。この導入孔410cの内部空間側の開口がMEMSデバイス200によって覆われている。
【0016】
係る構成のため、外部空間で空気の振動(音)が発生すると、その振動が音響圧力としてMEMSデバイス200に作用する。MEMSデバイス200はその音響圧力に応じた電気信号(電圧)をASIC300に出力する。これにより外部空間で発生した音が検出される。ASIC300が外部装置に相当する。
【0017】
<MEMSデバイス>
以下、MEMSデバイス200を詳説する。それにあたって、以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。
【0018】
図2図3に示すようにMEMSデバイス200は支持台210と振動子220を有する。支持台210に振動子220が一体的に連結されている。
【0019】
<支持台>
支持台210はz方向で積層された基部211と設計層212を有する。基部211はシリコンから成る。設計層212は酸化シリコンから成る。
【0020】
基部211と設計層212とが一体的に連結されている。基部211と設計層212それぞれにはz方向に開口する開放孔210aが形成されている。基部211と設計層212それぞれはz方向まわりの周方向で環状を成している。
【0021】
<振動子>
MEMSデバイス200は複数の振動子220を有する。これら複数の振動子220それぞれが支持台210の設計層212に一体的に連結されている。複数の振動子220は設計層212に片持ち支持されている。複数の振動子220によって、開放孔210aの設計層212側の開口が覆われている。
【0022】
図2に示すように、1つの振動子220はz方向に直交する平面で三角形を成している。振動子220の備える3辺のうちの1つの下辺220a側が支持台210に固定されている。残り2つの斜辺220bは下辺220aから離間するように延びた後、交差して先端220cを構成している。この振動子220の先端220c側が支持台210から開放されている。
【0023】
以下においては説明を簡便とするため、振動子220の下辺220a側を支持端部221、先端220c側を開放端部222と示す。そして支持端部221と開放端部222とが並ぶ方向を延長方向と示す。図2では支持端部221と開放端部222の境界を破線で示している。
【0024】
振動子220は延長方向に延びている。振動子220は支持台210から離れるにしたがって先細りになっている。振動子220の備える支持端部221はz方向に直交する平面で台形を成している。開放端部222はz方向に直交する平面で三角形を成している。
【0025】
支持端部221は上記の下辺220aを有している。台形を成す支持端部221における下辺220aと延長方向で離間して並ぶ上辺側が開放端部222に一体的に連結されている。
【0026】
支持端部221の下辺220a側は支持台210のz方向への投影領域に位置している。支持端部221の上辺側は開放孔210aのz方向への投影領域に位置している。支持端部221の下辺220a側と上辺側はそれぞれz方向に直交する平面で台形を成している。
【0027】
開放端部222は支持端部221の上辺側とともに、開放孔210aのz方向への投影領域に位置している。図2では、振動子220における支持台210のz方向への投影領域に位置する部位と開放孔210aの投影領域に位置する部位との境界を一点鎖線で示している。この一点鎖線は、支持端部221の下辺220a側と上辺側の境である。
【0028】
<隙間>
図2に示すように、MEMSデバイス200は振動子220を4つ有する。これら4つの振動子220はz方向まわりの周方向で順に並んでいる。4つの振動子220のうちの2つはx方向で並び、残り2つはy方向で並んでいる。x方向で並ぶ2つの振動子220それぞれの延長方向と、y方向で並ぶ2つの振動子220それぞれの延長方向とは交差している。
【0029】
延長方向の交差する2つの振動子220が周方向で隣り合って並んでいる。これら2つの振動子220のうちの一方の備える2つの斜辺220bのうちの1つと、他方の備える2つの斜辺220bのうちの1つとが微小な隙間を介して周方向で対向している。この隙間は振動子220のz方向で離間して並ぶ上面220d側と下面220e側それぞれで開口している。
【0030】
周方向で並ぶ4つの振動子220それぞれの斜辺220bの間で構成される隙間は、z方向に直交する平面でバツ印を構成している。このバツ印の隙間の中心を介して、x方向で並ぶ2つの振動子220それぞれの先端220cがx方向で対向している。このバツ印の隙間の中心を介して、y方向で並ぶ2つの振動子220それぞれの先端220cがy方向で対向している。MEMSデバイス200の中心点は、このバツ印の隙間の中心をz方向に通る中心軸に位置している。図2ではこのバツ印の中心を通る2つのガイド線を二点鎖線で示している。2つのガイド線の一方はx方向に沿い、他方はy方向に沿っている。
【0031】
<振動>
図1図3に示すように、振動子220の備える支持端部221と開放端部222それぞれにおける開放孔210aのz方向への投影領域に位置する部位は、開放孔210aの設計層212側の開口を覆っている。そして、支持端部221と開放端部222それぞれにおける開放孔210aのz方向への投影領域に位置する部位と、支持台210の開放孔210aを区画する部位とが、導入孔410cの内部空間側の開口を覆っている。
【0032】
係る構成のため、外部空間で発せられた音によって開放孔210aの空気が振動すると、その振動が音響圧力として振動子220に作用する。これにより振動子220の支持端部221と開放端部222それぞれが振動する。支持端部221と開放端部222に撓みが生じる。
【0033】
なお、音響圧力の一部は、上記した隙間を介して、パッケージ400の内部空間に抜ける。係る構成のため、隙間が設計値よりも広がると、音響圧力がパッケージ400の内部空間へと抜けやすくなる。音響圧力によって振動子220が振動しがたくなる。係る不具合が生じることを避けるために、隙間は微小になっている。
【0034】
<材料>
振動子220には圧力を電圧に変換する圧電素子が含まれている。図3に示すように、振動子220は圧電層230と電極層240を有する。圧電層230と電極層240がz方向で積層されている。圧電層230は窒化アルミニウムなどの圧電材料を含んでいる。電極層240はモリブデンなどの導電材料を含んでいる。なお、圧電層230にはScAlN、PZTなどが含まれていてもよい。
【0035】
圧電層230は第1圧電層231と第2圧電層232を有する。電極層240は第1電極層241と、第2電極層242と、第3電極層243と、を有する。
【0036】
図3に示すように、第1電極層241、第1圧電層231、第2電極層242、第2圧電層232、および、第3電極層243がz方向で順次積層されている。第1電極層241が支持台210に連結されている。第1電極層241が振動子220の下面220e側に位置している。第3電極層243が振動子220の上面220d側に位置している。
【0037】
第1電極層241と第2電極層242が第1圧電層231を介してz方向で並ぶことで、下層コンデンサが形成されている。第2電極層242と第3電極層243が第2圧電層232を介してz方向で並ぶことで、上層コンデンサが形成されている。
【0038】
これら2つのコンデンサは第2電極層242を共通の構成要素として備えている。この共通の構成要素を介して、2つのコンデンサはz方向で電気的に直列接続されている。図4に示すように、本実施形態のMEMSデバイス200は、これら電気的に直列接続された2つのコンデンサから成る合成コンデンサを12個備えている。
【0039】
図4では、第1圧電層231と第2圧電層232にハッチングを付与している。合成コンデンサをC1,C2,…C12と表記している。以下においては表記を簡便とするため、合成コンデンサを単にコンデンサと表記する。なお、このコンデンサの数は12個に限定されない。
【0040】
<取り出し電極>
振動子220の支持端部221には、これら12個のコンデンサそれぞれを電気的に接続するとともに、このコンデンサの電圧を検出するための取り出し電極250が13個形成されている。この取り出し電極250の数はコンデンサの数よりも多いものの、その数は13個に限定されない。
【0041】
nを2以上12未満の整数とすると、13個の取り出し電極250のうちの11個は、Cnのコンデンサの第2電極層242と、Cn+1のコンデンサの第1電極層241および第3電極層243それぞれとを電気的に接続している。これにより、図4に示すように、C1~C12のコンデンサが順に電気的に接続されている。
【0042】
残り2個の取り出し電極250のうちの1つは、C1のコンデンサの第1電極層241と第3電極層243それぞれに電気的に接続されている。この第1電極層241と第3電極層243はグランドに接続される。最後の1個の取り出し電極250はC12のコンデンサの第2電極層242に接続される。これら残り2個の取り出し電極250それぞれがワイヤ310を介してASIC300に接続される。この結果、12個の電気的に接続されたコンデンサの両端電圧がASIC300に出力される。
【0043】
<音響圧力の検出>
コンデンサの両端電圧は、音響圧力などによって振動子220が撓むことで変化する。音響圧力が作用すると、振動子220がz方向に振動する。第1圧電層231と第2圧電層232のうちの一方に引張応力が作用し、他方に圧縮応力が作用する。
【0044】
この作用する応力の差のため、第1圧電層231と第2圧電層232に極性の異なる電圧が発生する。この電圧が上記したコンデンサの電極層240に発生する。12個のコンデンサそれぞれで発生した電圧を合計した電圧が、音響圧力に応じた電圧としてASIC300に出力される。
【0045】
上記したように支持端部221の一部が支持台210に固定され、開放端部222の全てが支持台210から開放されている。係る構成の差のため、音響圧力が作用すると、開放端部222は支持端部221よりも振動振幅が大きくなる。その反面、開放端部222には支持端部221よりも小さな応力が作用する。支持端部221の振動振幅は小さいが、支持端部221には大きな応力が作用する。係る応力の差のため、支持端部221側に形成されたコンデンサの出力が音響圧力の検出に用いられる。開放端部222側に形成されたコンデンサの出力は音響圧力の検出に用いられない。
【0046】
支持端部221側のコンデンサと開放端部222側のコンデンサとを電気的に非接続とするため、図3に示すように、支持端部221側の電極層240と開放端部222側の電極層240とは電気的に非接続(絶縁)となっている。係る構成のため、支持端部221に形成された取り出し電極250と、開放端部222の電極層240とは電気的に非接続となっている。図4に示すコンデンサは支持端部221側のコンデンサである。
【0047】
<検出感度>
音響圧力の検出感度は、支持台210に固定された支持端部221の撓みやすさに依存している。支持端部221の撓みやすさは、音響圧力に対する支持端部221の振動振幅に依存している。そして、支持端部221の振動振幅は、開放端部222のバネ定数が高いほどに上昇する。開放端部222のバネ定数は、形状の変形のしにくさ(強度)に依存している。この形状の変形のしにくさは、以下に示す補強膜260によって補強される。
【0048】
<補強膜>
例えば図2でハッチングを施して示すように、複数の振動子220それぞれに補強膜260が形成されている。補強膜260は形成時に流動性を示し、形成終了時に固体化する有機材料で形成されている。
【0049】
補強膜260の形成材料には、この有機材料のほかに、振動子220との線膨張係数差を低減するためのフィラーが含まれていてもよい。振動子220の主たる構成要素は圧電層230と電極層240である。これら2つの構成要素のうち、圧電層230のほうが電極層240よりも振動子220に多く含まれている。そのために上記フィラーの構成材料としては、圧電層230の形成材料と同等の線膨張係数を備えるものを採用してもよい。
【0050】
図3に示すように補強膜260は複数の振動子220の間の隙間にも設けられている。本実施形態では4つの振動子220それぞれに対して共通する1つの補強膜260が形成されている。
【0051】
図2に示すように、補強膜260はz方向に直交する平面で矩形を成している。補強膜260は振動子220の第3電極層243側の上面220dに形成されている。補強膜260によって複数の振動子220が架橋されている。補強膜260によって複数の振動子220の間の隙間の一部が閉塞されている。
【0052】
補強膜260は複数の振動子220それぞれの開放端部222に形成されている。複数の振動子220の先端220c側が補強膜260によって補強されている。隙間における振動子220の先端220c側が補強膜260によって覆われている。
【0053】
このように複数の振動子220が補強膜260によって架橋されるとともに、隙間の一部が補強膜260によって覆われる。そのために複数の振動子220それぞれが同一の振動モードで振動しやすくなっている。隙間を介してパッケージ400の内部空間に音響圧力が抜けにくくなっている。係る変化はあるものの、上記したように、開放端部222は支持端部221よりも振動振幅が大きく、開放端部222には支持端部221よりも小さな応力が作用する関係性に変わりはない。
【0054】
<側面>
上記したように振動子220はz方向で順次積層された第1電極層241、第1圧電層231、第2電極層242、第2圧電層232、および、第3電極層243を有する。これら3つの電極層と2つの圧電層とによって、上記した斜辺220bと連なる側面220fが振動子220に構成されている。側面220fはz方向において振動子220の上面220dと下面220eとの間に位置している。側面220fは上面220dと下面220eとを連結している。上面220dが一面に相当する。下面220eが裏面に相当する。
【0055】
側面220fはz方向まわりの周方向に対して交差している。周方向で隣り合って並ぶ2つの振動子220のうちの一方の備える2つの側面220fのうちの1つと、他方の備える2つの側面220fのうちの1つとが上記した微小な隙間を介して周方向で対向している。これら隣り合って隙間を構成する2つの側面220fそれぞれに補強膜260が設けられている。
【0056】
<溝部>
図3に示すように、開放端部222の側面220fに溝部270が構成されている。側面220fを構成する電極層と圧電層のうち一方の一部が選択的に除去されている。z方向に直行する平面において、微小な隙間(溝部270)に対して、側面220fにおける3つの電極層で形成される部位と2つの圧電層で形成される部位の一方が凹、他方が凸になっている。
【0057】
本実施形態では、側面220fを構成する電極層と圧電層のうち電極層の一部が選択的に除去されている。側面220fにおける3つの電極層で形成される部位が局所的に凹、2つの圧電層で形成される部位が相対的に凸となっている。側面220fに凸凹形状の溝部270が構成されている。
【0058】
溝部270の一部は、局所的にみると、z方向において上面220dから下面220eに向かうにしたがって、z方向に直交する方向の長さが段階的に長くなっている。溝部270の他の部位は、局所的にみると、z方向において上面220dから下面220eに向かうにしたがってz方向に直交する方向の長さが段階的に短くなっている。
【0059】
例えば図3に示すように、この溝部270に補強膜260の一部が形成されている。補強膜260の一部が溝部270の凹部と凸部それぞれに設けられている。補強膜260の一部が溝部270の凹部と凸部に連結されている。
【0060】
このように補強膜260は振動子220の上面220dでz方向に直交する方向に延び広がるだけではなく、側面220fでz方向に延長している。そしてこの補強膜260におけるz方向に延長する部位が、z方向に直交する方向に延長して、溝部270に設けられている。
【0061】
<製造方法>
次に、MEMSデバイス200の製造方法を図5図8に基づいて説明する。なお、この製造方法ではウェットエッチングやドライエッチングなどの微細加工処理が実施される。どの種類のエッチングを用いるのかは設計者が適宜選択することができる。そのため、以下においては特にエッチングの種類を峻別せずに、単にエッチングと表記する。
【0062】
先ず、図5に示すようにウエハ500を準備する。ウエハ500はz方向に並ぶ表面500aと裏面500bを有する。この表面500aの表層にはボロンなどの不純物が添加されている。
【0063】
図5に示すようにウエハ500の表面500aに酸化シリコンの設計薄膜510が形成されている。この設計薄膜510の上面510a側に第1電極薄膜520、第1圧電薄膜530、第2電極薄膜540、第2圧電薄膜550、および、第3電極薄膜560がz方向に順次積層されている。
【0064】
これら3つの電極薄膜はパターニングされている。このパターニングによって、3つの電極薄膜それぞれはz方向に直交する平面で複数の電気的に独立した通電経路に分けられている。また、エッチングと成膜とによって、3つの電極薄膜のうちの少なくとも1部が部分的にz方向で導通状態になっている。これにより取り出し電極250が形成されている。
【0065】
次に、図6に示すように、第3電極薄膜560の上面560a側にレジスト570を形成する。このレジスト570には切れ目570aが形成されている。
【0066】
次に、図7に示すように、この切れ目570aを介したエッチングを行う。これにより第1電極薄膜520、第1圧電薄膜530、第2電極薄膜540、第2圧電薄膜550、および、第3電極薄膜560それぞれに、これらを複数の振動子220に切り分けるための切れ目が形成される。この結果、側面220fが形成される。
【0067】
また、切れ目570aを介したエッチングによって、第1電極薄膜520、第2電極薄膜540、および、第3電極薄膜560それぞれの端部をz方向に直交する方向で除去する。これにより溝部270が側面220fに構成される。
【0068】
次に、図8に示すように、レジスト570を除去して、第3電極薄膜560の上面560a側に流動性の補強膜260の形成材料を塗布する。この補強膜260の形成材料を側面220f側にも塗布する。補強膜260の形成材料を隙間の一部に充填する。そして補強膜260の形成材料を固体化する。これにより、上面560a側、側面220f側(溝部270)それぞれに補強膜260が形成される。これら各箇所に形成された補強膜260が一体的に連結されている。
【0069】
最後に、ウエハ500の裏面500b側から、ウエハ500と設計薄膜510をエッチングによって選択的に除去する。そして、ウエハ500を例えばダイシングなどによって複数のMEMSデバイス200に切り分ける。これにより、図3に示す振動子220と支持台210が形成される。
【0070】
これまでに説明した処理によって、ウエハ500が基部211に成形される。設計薄膜510が設計層212に成形される。第1電極薄膜520が第1電極層241に成形される。第1圧電薄膜530が第1圧電層231に成形される。第2電極薄膜540が第2電極層242に成形される。第2圧電薄膜550が第2圧電層232に成形される。第3電極薄膜560が第3電極層243に成形される。
【0071】
<作用効果>
補強膜260が振動子220に形成されている。補強膜260の一部が溝部270に設けられている。これによれば、補強膜260によって振動子220の強度が補強される。それとともに、補強膜260が振動子220から剥がれることが抑制される。
【0072】
上記したように振動子220の強度が補強される。これにより振動子220がz方向に反ることが抑制される。隣り合って並ぶ2つの振動子220の間の隙間が広がることが抑制される。この結果、音響圧力の検出感度の低下が抑制される。
【0073】
補強膜260は溝部270の開口する上面220dと、溝部270を区画する側面220fそれぞれに連結されている。これによれば、補強膜260と振動子220との間のアンカー効果によって、補強膜260が振動子220から剥がれることが抑制される。本実施形態では側面220fが区画面に相当する。
【0074】
側面220fにおける3つの電極層で形成される部位が局所的に凹、2つの圧電層で形成される部位が相対的に凸となることで溝部270が構成されている。この溝部270に補強膜260が設けられている。これによれば、補強膜260と溝部270を区画する側面220fとの間にアンカー効果が生じる。補強膜260の溝部270からの剥離が抑制される。
【0075】
補強膜260の形成材料には、有機材料と、振動子220の構成材料との線膨張係数差を低減するためのフィラーと、が含有されている。これによれば、補強膜260と振動子220との間の界面で、両者の線膨張係数差に起因する応力の発生が抑制される。この応力によって補強膜260が振動子220から剥がれることが抑制される。
【0076】
支持端部221側に形成された電極層240に取り出し電極250が接続されている。開放端部222側に形成された電極層240は支持端部221側に形成された電極層240と電気的に非接続となっている。
【0077】
このように、支持端部221と開放端部222のうち支持端部221に形成された電極層240が圧電層230で生じた電圧を取り出し電極250に出力する機能を果たしている。支持端部221に形成された電極層240と圧電層230が音響圧力の検出に用いられるが、開放端部222に形成された電極層240と圧電層230が音響圧力の検出に用いられなくなっている。この開放端部222に溝部270が形成されている。
【0078】
このため、溝部270のために、音響圧力の検出に用いられる圧電層230や電極層240に意図しないひずみの生じることが抑制される。このひずみのために、音響圧力の検出精度が低下することが抑制される。
【0079】
4つの振動子220が共通する1つの補強膜260によって架橋されている。そして、補強膜260によって複数の振動子220の間の隙間の一部が閉塞されている。これによれば、振動子220の反りによる隙間の拡大が抑制される。
【0080】
複数の振動子220の先端220c側が補強膜260によって補強されている。隙間における振動子220の先端220c側が補強膜260によって覆われている。これによれば、振動子220の先端220c側の反りによる隙間の拡大が抑制される。
【0081】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図9図12に基づいて説明する。
【0082】
第1実施形態では、第1電極層241、第2電極層242、および、第3電極層243それぞれに、溝部270の凹部が形成される例を示した。本実施形態では、これら3つの電極層のうち第2電極層242だけに溝部270の凹部が形成される。
【0083】
第2電極層242は、第1電極層241と第2電極層242それぞれとは異なる材料で形成されている。第2電極層242は、第1実施形態で説明したコンデンサの一部を構成してもよいし、構成しなくともよい。z方向で離間して並び、コンデンサを構成するための電極層の数は2層以上であればよい。係る形態は、以下に示す製造方法を採用することで形成することができる。
【0084】
例えば図10に示すように、レジスト570の切れ目570aを介したエッチングによって、第1電極薄膜520、第1圧電薄膜530、第2電極薄膜540、第2圧電薄膜550、および、第3電極薄膜560それぞれに切れ目を形成する。
【0085】
次に、図11に示すように、切れ目570aを介したエッチングによって、3つの電極薄膜のうち第2電極薄膜540の端部をz方向に直交する方向で除去する。係るエッチングは、例えば、第1電極薄膜520および第3電極薄膜560それぞれよりも第2電極薄膜540のエッチングレートの高いエッチング液剤を用いることで実現することができる。これにより第2電極薄膜540に溝部270の凹部が形成される。なお、厳密には、係るエッチングによって第1電極薄膜520と第3電極薄膜560それぞれの端部も若干除去される。
【0086】
次に、図12に示すように、レジスト570を除去して、第3電極薄膜560の上面560a側と側面220f側に補強膜260を形成する。その後、ウエハ500の裏面500b側を選択的に除去し、ウエハ500を複数のMEMSデバイス200に切り分ける。これにより、図9に示す振動子220と支持台210が形成される。
【0087】
なお本実施形態に記載のMEMSデバイス200には、第1実施形態に記載のMEMSデバイス200と同等の構成要素が含まれている。そのために本実施形態のMEMSデバイス200が第1実施形態に記載のMEMSデバイス200と同等の作用効果を奏することは言うまでもない。そのためにその記載を省略する。以下に示す他の実施形態でも重複する作用効果の記載を省略する。
【0088】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図13図18に基づいて説明する。
【0089】
第1実施形態では、溝部270を形成するためにエッチングによって除去される量が複数の電極薄膜で同等である例を示した。これにより溝部270がz方向に直交する方向での深さの等しい複数の凹部を有する例を示した。
【0090】
これに対して本実施形態では、溝部270を形成するためにエッチングによって除去される量が複数の電極薄膜で異なる。また、エッチングによって複数の圧電薄膜も除去されるが、その量が異なっている。
【0091】
図13に示すように隙間は上面220d側と下面220e側それぞれで開口している。この隙間を区画する側面220fに形成された溝部270は、z方向において上面220dから下面220eに向かうにしたがってz方向に直交する方向の長さが長くなっている。
【0092】
複数の電極層と複数の圧電層それぞれの側面220f側の端部が除去されているが、その除去量が各層で異なっている。その除去量は、第3電極層243、第2圧電層232、第2電極層242、第1圧電層231、および、第1電極層241の順に多くなっている。
【0093】
例えば図14に示すように、レジスト570の切れ目570aを介したエッチングによって第3電極薄膜560と第2圧電薄膜550それぞれに切れ目を形成する。そして、エッチングによって、第2圧電薄膜550の側面220f側の端部をz方向に直交する方向に除去する。
【0094】
次に、図15に示すように、エッチングによって、第2電極薄膜540の側面220f側の端部をz方向に直交する方向に除去する。第2電極薄膜540を第2圧電薄膜550よりも多く除去する。この際、図示しない保護膜を第3電極薄膜560と第2圧電薄膜550の側面220f側に形成しておく。
【0095】
次に、図16に示すように、エッチングによって、第1圧電薄膜530の側面220f側の端部をz方向に直交する方向に除去する。第1圧電薄膜530を第2電極薄膜540よりも多く除去する。この際、図示しない保護膜を第3電極薄膜560、第2圧電薄膜550、および、第2電極薄膜540の側面220f側に形成しておく。
【0096】
次に、図17に示すように、エッチングによって、第1電極薄膜520の側面220f側の端部をz方向に直交する方向に除去する。第1電極薄膜520を第2圧電薄膜550よりも多く除去する。この際、図示しない保護膜を第3電極薄膜560、第2圧電薄膜550、第2電極薄膜540、および、第1圧電薄膜530の側面220f側に形成しておく。そしてレジスト570と保護膜を除去する。なお、図15図17ではレジスト570を図示しているが、実際には、エッチングから保護するための保護膜がレジスト570の代わりに第3電極薄膜560に形成される。
【0097】
次に、図18に示すように、第3電極薄膜560の上面560a側、側面220f側、および、溝部270それぞれに補強膜260を形成する。ウエハ500の裏面500b側を選択的に除去し、ウエハ500を複数のMEMSデバイス200に切り分ける。これにより、図13に示す振動子220と支持台210が形成される。
【0098】
これまでに説明したように、溝部270は上面220dから下面220eに向かうにしたがってz方向に直交する方向の長さが長くなっている。補強膜260はこの溝部270を構成する側面220fに連結されている。そして補強膜260は上面220dに連結されている。
【0099】
これにより、z方向において下面220eから上面220d側に向かう方向の力の作用によって補強膜260が振動子220から剥がれることが効果的に抑制される。z方向が厚み方向に相当する。z方向に直交する方向の長さが横方向に相当する。
【0100】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を図19図21に基づいて説明する。なお図19図21では補強膜260の図示を省略している。
【0101】
第1実施形態では開放端部222の先端220c側の側面220fに溝部270が形成される例を示した。これに対して本実施形態では、例えば図19に示すように開放端部222の支持端部221側の側面220fに溝部270が形成されている。
【0102】
本実施形態では、4つの振動子220の備える2つの側面220fそれぞれに溝部270が独立して形成されている。周方向で隣り合って並ぶ2つの振動子220の隣り合って並ぶ2つの側面220fそれぞれに形成された溝部270が周方向で並んでいる。これら2つの溝部270のz方向に直交する平面での外形輪郭線を延長して囲まれる形状が平行四辺形をなしている。平行四辺形の有する2組の隅を結ぶ対角線の長さの比が1:2以上になっている。言い換えると、溝部270の幅と長さの比が1:2以上になっている。
【0103】
なお、周方向で隣り合って並ぶ2つの溝部270の外形輪郭線を延長して囲まれる形状は、平行四辺形などの特定の形状に限定されない。
【0104】
例えば図20に示すように、この平行四辺形における1つの溝部270で区画される角部の平面形状が円形をなしてもよい。これによれば、溝部270に補強膜260が充填されやすくなる。溝部270の平面形状は、補強膜260の充填されやすさや、補強膜260と溝部270とのアンカー効果の強さなどに応じて、適宜決定することができる。
【0105】
また、1つの振動子220に形成される溝部270の数としては特に限定されない。図19に示すように1つの振動子220に2つの溝部270が形成されてもよい。図21に示すように1つの振動子220に4つの溝部270が形成されてもよい。
【0106】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態を図22図23に基づいて説明する。図22では補強膜260の図示を省略している。
【0107】
第1実施形態では振動子220の側面220fに溝部270が構成される例を示した。そのために溝部270が隙間の一部を区画する例を示した。これに対して本実施形態では、例えば図22に示すように溝部270は振動子220における側面220fとは異なる箇所に形成されている。溝部270は凹面270aによって区画されている。
【0108】
この溝部270は上面220d側で開口している。その開口形状は平行四辺形をなしている。ただし、この開口形状は特に限定されない。nを3以上の整数とすると、開口形状はn角形を採用することもできる。開口形状は楕円を採用することもできる。
【0109】
この溝部270は例えば図23に示すように、振動子220の上面220d側で開口されているものの、下面220e側で閉塞されている。なお、もちろんではあるが、この溝部270は下面220e側で開口してもよい。
【0110】
複数の振動子220それぞれに独立して形成される溝部270のz方向の長さは、例えば図23に示すように異なっていてもよい。なお、もちろんではあるが、複数の振動子220それぞれに独立して形成される溝部270のz方向の長さは、同一でもよい。
【0111】
第1実施形態では複数の振動子220それぞれに対して1つの補強膜260が共通して形成される例を示した。しかしながら、例えば図23に示すように、複数の振動子220それぞれに対して複数の補強膜260が個別に形成されてもよい。
【0112】
第1実施形態では複数の振動子220の間の隙間の一部が補強膜260によって閉塞される例を示した。しかしながら例えば図23に示すように、隙間のすべてが補強膜260によって閉塞されない構成を採用することもできる。
【0113】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態を図24に基づいて説明する。
【0114】
第1実施形態では開放端部222に補強膜260が形成される例を示した。これに対して本実施形態では、例えば図24に示すように補強膜260が開放端部222と支持端部221に形成されている。そして溝部270が支持端部221に形成されている。
【0115】
これによれば溝部270のために支持端部221が撓みやすくなる。これにより音響圧力の検出感度の増大が期待される。なお、補強膜260は開放端部222と支持端部221のうち支持端部221のみに形成されてもよい。そして、開放端部222と支持端部221での補強膜260の形成領域の大きさは同一でも不同でもよい。
【0116】
第1実施形態では補強膜260のz方向に直交する平面の形状が矩形である例を示した。しかしながら補強膜260の平面形状は特に限定されない。例えば図24に示すように補強膜260の平面形状は環状でもよい。特にもう図示しないが、補強膜260の平面形状は円形、楕円形、多角形などを適宜採用することができる。
【0117】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態を図25に基づいて説明する。図25では補強膜260と溝部270の図示を省略している。
【0118】
第1実施形態では複数の振動子220の間で隙間が構成される例を示した。これに対して本実施形態のMEMSデバイス200は振動子220の構成材料を含む規定部290を有する。規定部290によって支持台210に片持ち支持された振動子220の周りが囲まれている。振動子220と規定部290との間で隙間が構成されている。
【0119】
第1実施形態では振動子220が先細りの三角形を成す例を示した。これに対して本実施形態の振動子220は長方形を成している。
【0120】
第1実施形態では振動子220の数が4である例を示した。これに対して本実施形態の振動子220の数が1になっている。
【0121】
なお、図示しないが、振動子220の数が2の構成を採用することもできる。この構成では、2つの振動子220の間と、振動子220と規定部290との間それぞれに隙間が構成される。振動子220の数としては特に限定されない。
【0122】
本実施形態の振動子220にも、これまでに説明した補強膜260と溝部270が形成されている。これにより補強膜260の振動子220からの剥がれが抑制されている。
【0123】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0124】
100…圧電側MEMSマイクロフォン、200…MEMSデバイス、210…支持台、220…振動子、220c…先端、220d…上面、220e…下面、220f…側面、221…支持端部、222…開放端部、250…取り出し電極、260…補強膜、270…溝部、270a…凹面、300…ASIC、400…パッケージ、500…ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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