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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023250
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】結晶作製方法及び結晶作製装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20230209BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/268 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128571
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 平司
(72)【発明者】
【氏名】志村 考功
(72)【発明者】
【氏名】細井 卓治
(72)【発明者】
【氏名】國吉 望月
【テーマコード(参考)】
5F152
【Fターム(参考)】
5F152BB02
5F152BB06
5F152BB08
5F152CC03
5F152CC04
5F152CD13
5F152CE02
5F152CE15
5F152CE17
5F152CE22
5F152CE24
5F152CF03
5F152CF09
5F152CF13
5F152CF22
5F152CF26
5F152CG09
5F152CG13
5F152FF01
5F152FF11
5F152FF28
5F152FF44
5F152FG01
5F152FG13
5F152FH02
(57)【要約】
【課題】基板上に形成された半導体に効果的に熱を伝達して、半導体を効果的に溶融することの可能な結晶作製方法を提供する。
【解決手段】結晶作製方法において、半導体3の結晶を作製する。結晶作製方法は、基板1上に半導体3を形成する工程と、半導体3の表面を覆うキャップ層5を形成する工程と、キャップ層5上に、電磁波LTを吸収する電磁波吸収層7を形成する工程と、電磁波吸収層7に電磁波LTを照射して、電磁波吸収層7の温度を上昇させる工程とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体の結晶を作製する結晶作製方法であって、
基板上に前記半導体を形成する工程と、
前記半導体の表面を覆うキャップ層を形成する工程と、
前記キャップ層上に、電磁波を吸収する電磁波吸収層を形成する工程と、
前記電磁波吸収層に前記電磁波を照射して、前記電磁波吸収層の温度を上昇させる工程と
を含む、結晶作製方法。
【請求項2】
前記電磁波吸収層の厚みは、前記基板の厚みよりも小さい、請求項1に記載の結晶作製方法。
【請求項3】
前記キャップ層の厚みは、前記基板の厚みよりも小さい、請求項1又は請求項2に記載の結晶作製方法。
【請求項4】
前記電磁波吸収層を形成する前記工程では、予め定められたパターンを構成するように前記電磁波吸収層を形成し、
前記電磁波吸収層の温度を上昇させる前記工程では、前記電磁波の照射によって、前記予め定められたパターンに対応して、前記基板の主面方向において前記半導体及び/又は前記基板に温度分布を形成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結晶作製方法。
【請求項5】
前記電磁波は、レーザー光であり、
前記電磁波吸収層の温度を上昇させる前記工程では、前記電磁波吸収層における前記レーザー光の照射位置を移動しながら、前記電磁波吸収層に前記レーザー光を照射する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の結晶作製方法。
【請求項6】
前記電磁波吸収層の温度を上昇させる前記工程では、前記電磁波吸収層から前記半導体への熱伝導を通じて前記半導体を溶融させることで、前記半導体を結晶化させる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の結晶作製方法。
【請求項7】
前記電磁波吸収層の温度を上昇させる前記工程によって前記半導体が結晶化した後に、前記キャップ層から前記電磁波吸収層を除去する工程と、
前記キャップ層から前記電磁波吸収層を除去する前記工程よりも後に実行される積層工程と
を更に含み、
前記積層工程は、
前記キャップ層上に新たに半導体を形成する工程と、
前記新たな半導体の表面を覆うキャップ層を新たに形成する工程と、
前記新たなキャップ層上に新たに電磁波吸収層を形成する工程と、
前記新たな電磁波吸収層に電磁波を照射して、前記新たな電磁波吸収層の温度を上昇させる工程と
を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の結晶作製方法。
【請求項8】
半導体の結晶を作製する結晶作製装置であって、
基板上に半導体層を形成する半導体形成部と、
前記半導体層を加工して、前記基板上に前記半導体を形成する半導体加工部と、
前記半導体の表面を覆うキャップ層を形成するキャップ層形成部と、
前記キャップ層上に、電磁波を吸収する電磁波吸収層を形成する電磁波吸収層形成部と、
前記電磁波吸収層に前記電磁波を照射して、前記電磁波吸収層の温度を上昇させるアニール部と
を備える、結晶作製装置。
【請求項9】
前記電磁波吸収層の厚みは、前記基板の厚みよりも小さい、請求項8に記載の結晶作製装置。
【請求項10】
前記キャップ層の厚みは、前記基板の厚みよりも小さい、請求項8又は請求項9に記載の結晶作製装置。
【請求項11】
前記電磁波吸収層形成部は、予め定められたパターンを構成するように前記電磁波吸収層を形成し、
前記アニール部は、前記電磁波の照射によって、前記予め定められたパターンに対応して、前記基板の主面方向において前記半導体及び/又は前記基板に温度分布を形成する、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の結晶作製装置。
【請求項12】
前記電磁波は、レーザー光であり、
前記アニール部は、前記電磁波吸収層における前記レーザー光の照射位置を移動しながら、前記電磁波吸収層に前記レーザー光を照射する、請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の結晶作製装置。
【請求項13】
前記アニール部は、前記電磁波吸収層から前記半導体への熱伝導を通じて前記半導体を溶融させることで、前記半導体を結晶化させる、請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の結晶作製装置。
【請求項14】
前記アニール部が前記電磁波吸収層の温度を上昇させることによって前記半導体を結晶化した後に、前記キャップ層から前記電磁波吸収層を除去する電磁波吸収層除去部を更に備え、
前記キャップ層から前記電磁波吸収層を除去した後に、前記半導体形成部は、前記キャップ層上に新たに半導体層を形成し、
前記半導体加工部は、前記新たな半導体層を加工して、前記キャップ層上に新たに半導体を形成し、
前記キャップ層形成部は、前記新たな半導体の表面を覆うキャップ層を新たに形成し、
前記電磁波吸収層形成部は、前記新たなキャップ層上に新たに電磁波吸収層を形成し、
前記アニール部は、前記新たな電磁波吸収層に電磁波を照射して、前記新たな電磁波吸収層の温度を上昇させる、請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の結晶作製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶作製方法及び結晶作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に記載されたフォトダイオードアレイでは、単結晶GeSnが、石英基板上に形成されている。具体的には、次のような方法によって、単結晶GeSnが形成される。
【0003】
すなわち、まず、石英基板が用意される。次に、非晶質GeSnが石英基板上に成膜される。次に、フォトリソグラフィーによって、非晶質GeSnからなる複数の線状要素が形成される。具体的には、複数の線状要素が、M行×N列に並んでいる。各線状要素は、行方向に延びている。線状要素の長さは30μmであり、線状要素の幅は10μmである。隣り合う線状要素同士の間隔は、5μmである。次に、SiO2のキャップ層によって、複数の線状要素を覆う。次に、レーザー光を行方向に走査しながら、キャップ層を介して各線状要素にレーザー光を照射する。よって、レーザー光によって各線状要素が溶融する。その結果、レーザー光の走査にともなって液相結晶化が誘発されて、単結晶GeSnが形成される。つまり、非晶質GeSnからなる線状要素が、単結晶GeSnからなる線状要素へ変化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H. Oka et al., "Back-side Illuminated GeSn Photodiode Array on Quartz Substrate Fabricated by Laser-induced Liquid-phase Crystallization for Monolithically-integrated NIR Imager Chip", (米), IEDM (IEEE International Electron Devices Meeting)proceedings 16.3.1 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法では、レーザー光は、キャップ層及び石英基板を透過する。キャップ層及び石英基板のバンドギャップが、レーザー光の光子エネルギーよりも大きいためである。この場合でも、隣り合う線状要素同士の間隔が5μm程度で狭いため、線状要素の熱が隣の線状要素に伝達されたり、線状要素の熱が石英基板内部に蓄熱されたりして、各線状要素が、効果的に加熱されて効果的に溶融する。
【0006】
しかしながら、隣り合う線状要素同士の間隔が小さい場合であっても、例えば、隣り合う線状要素同士の間隔が5μm程度であっても、複数の線状要素からなる集団の外縁付近の線状要素(例えば、集団の両端の線状要素)については、加熱が不十分になって、完全に溶融しない場合があり得る。また、隣り合う線状要素同士の間隔が大きくなると、例えば、隣り合う線状要素同士の間隔が10μm以上になると、レーザー光のほとんどが石英基板を透過するだけであり、各線状要素の加熱が不十分になって、各線状要素が完全に溶融しない場合があり得る。GeSnからなる線状要素の溶融が不十分であると、GeSnの液相結晶化が促進されず、単結晶GeSnを形成できない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に形成された半導体に効果的に熱を伝達して、半導体を効果的に溶融することの可能な結晶作製方法及び結晶作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、結晶作製方法において、半導体の結晶を作製する。結晶作製方法は、基板上に前記半導体を形成する工程と、前記半導体の表面を覆うキャップ層を形成する工程と、前記キャップ層上に、電磁波を吸収する電磁波吸収層を形成する工程と、前記電磁波吸収層に前記電磁波を照射して、前記電磁波吸収層の温度を上昇させる工程とを含む。
【0009】
本発明の結晶作製方法において、前記電磁波吸収層の厚みは、前記基板の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0010】
本発明の結晶作製方法において、前記キャップ層の厚みは、前記基板の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0011】
本発明の結晶作製方法において、前記電磁波吸収層を形成する前記工程では、予め定められたパターンを構成するように前記電磁波吸収層を形成することが好ましい。前記電磁波吸収層の温度を上昇させる前記工程では、前記電磁波の照射によって、前記予め定められたパターンに対応して、前記基板の主面方向において前記半導体及び/又は前記基板に温度分布を形成することが好ましい。
【0012】
本発明の結晶作製方法において、前記電磁波は、レーザー光であることが好ましい。前記電磁波吸収層の温度を上昇させる前記工程では、前記電磁波吸収層における前記レーザー光の照射位置を移動しながら、前記電磁波吸収層に前記レーザー光を照射することが好ましい。
【0013】
本発明の結晶作製方法において、前記電磁波吸収層の温度を上昇させる前記工程では、前記電磁波吸収層から前記半導体への熱伝導を通じて前記半導体を溶融させることで、前記半導体を結晶化させることが好ましい。
【0014】
本発明の結晶作製方法は、前記電磁波吸収層の温度を上昇させる前記工程によって前記半導体が結晶化した後に、前記キャップ層から前記電磁波吸収層を除去する工程と、前記キャップ層から前記電磁波吸収層を除去する前記工程よりも後に実行される積層工程とを更に含むことが好ましい。前記積層工程は、前記キャップ層上に新たに半導体を形成する工程と、前記新たな半導体の表面を覆うキャップ層を新たに形成する工程と、前記新たなキャップ層上に新たに電磁波吸収層を形成する工程と、前記新たな電磁波吸収層に電磁波を照射して、前記新たな電磁波吸収層の温度を上昇させる工程とを含むことが好ましい。
【0015】
本発明の他の局面によれば、結晶作製装置は、半導体の結晶を作製する。結晶作製装置は、半導体形成部と、半導体加工部と、キャップ層形成部と、電磁波吸収層形成部と、アニール部とを備える。半導体形成部は、基板上に半導体層を形成する。半導体加工部は、前記半導体層を加工して、前記基板上に前記半導体を形成する。キャップ層形成部は、前記半導体の表面を覆うキャップ層を形成する。電磁波吸収層形成部は、前記キャップ層上に、電磁波を吸収する電磁波吸収層を形成する。アニール部は、前記電磁波吸収層に前記電磁波を照射して、前記電磁波吸収層の温度を上昇させる。
【0016】
本発明の結晶作製装置において、前記電磁波吸収層の厚みは、前記基板の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0017】
本発明の結晶作製装置において、前記キャップ層の厚みは、前記基板の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0018】
本発明の結晶作製装置において、前記電磁波吸収層形成部は、予め定められたパターンを構成するように前記電磁波吸収層を形成することが好ましい。前記アニール部は、前記電磁波の照射によって、前記予め定められたパターンに対応して、前記基板の主面方向において前記半導体及び/又は前記基板に温度分布を形成することが好ましい。
【0019】
本発明の結晶作製装置において、前記電磁波は、レーザー光であることが好ましい。前記アニール部は、前記電磁波吸収層における前記レーザー光の照射位置を移動しながら、前記電磁波吸収層に前記レーザー光を照射することが好ましい。
【0020】
本発明の結晶作製装置において、前記アニール部は、前記電磁波吸収層から前記半導体への熱伝導を通じて前記半導体を溶融させることで、前記半導体を結晶化させることが好ましい。
【0021】
本発明の結晶作製装置は、電磁波吸収層除去部を更に備えることが好ましい。電磁波吸収層除去部は、前記アニール部が前記電磁波吸収層の温度を上昇させることによって前記半導体を結晶化した後に、前記キャップ層から前記電磁波吸収層を除去することが好ましい。前記キャップ層から前記電磁波吸収層を除去した後に、前記半導体形成部は、前記キャップ層上に新たに半導体層を形成することが好ましい。前記半導体加工部は、前記新たな半導体層を加工して、前記キャップ層上に新たに半導体を形成することが好ましい。前記キャップ層形成部は、前記新たな半導体の表面を覆うキャップ層を新たに形成することが好ましい。前記電磁波吸収層形成部は、前記新たなキャップ層上に新たに電磁波吸収層を形成することが好ましい。前記アニール部は、前記新たな電磁波吸収層に電磁波を照射して、前記新たな電磁波吸収層の温度を上昇させることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板上に形成された半導体に効果的に熱を伝達して、半導体を効果的に溶融することの可能な結晶作製方法及び結晶作製装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1に係る半導体構造を示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る結晶作製装置を示すブロック図である。
図3】(a)は、実施形態1に係る結晶作製方法の工程S1を示す斜視図であり、(b)は、工程S2を示す斜視図である。
図4】(a)は、実施形態1に係る結晶作製方法の工程S3を示す斜視図であり、(b)は、工程S4を示す斜視図である。
図5】(a)は、実施形態1に係る結晶作製方法の工程S5を示す斜視図であり、(b)は、工程S6を示す斜視図である。
図6】実施形態1に係る結晶作製方法の工程S7を示す斜視図である。
図7】実施形態1に係る結晶作製方法による液相結晶化を模式的に示す断面図である。
図8】実施形態1の第1変形例に係る結晶作製方法の工程S5を示す斜視図である。
図9】実施形態1の第2変形例に係る結晶作製方法の工程S5を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態2に係る半導体構造を示す斜視図である。
図11】(a)は、実施形態2に係る結晶作製方法の積層工程における工程S11を示す斜視図であり、(b)は、工程S12を示す斜視図である。
図12】(a)は、実施形態2に係る結晶作製方法の積層工程における工程S13を示す斜視図であり、(b)は、工程S14を示す斜視図である。
図13】(a)は、実施形態2に係る結晶作製方法の積層工程における工程S15を示す斜視図であり、(b)は、工程S16を示す斜視図である。
図14】実施形態2に係る結晶作製方法の積層工程における工程S17を示す斜視図である。
図15】(a)は、本発明の実施例1に係る線状のGeSnを示す写真である。(b)は、比較例に係る線状のGeSnを示す写真である。
図16】(a)は、本発明の実施例1に係る線状のGeSnを示す写真である。(b)は、本発明の実施例2に係る線状のGeSnを示す写真である。
図17】(a)は、本発明の実施例1に係る線状のGeSnを示す写真である。(b)は、本発明の実施例3に係る線状のGeSnを示す写真である。(c)は、本発明の実施例4に係る線状のGeSnを示す写真である。
図18】本発明の実施例1~実施例3に係る線状のGeSn及び比較例に係るGeのフォトルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
図19】本発明の実施例1に係るGeSn及び比較例に係るGeのバンド構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0025】
(実施形態1)
図1図7を参照して、本発明の実施形態1に係る半導体構造100及び結晶作製方法を説明する。図1は、実施形態1に係る半導体構造100を示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように、半導体構造100は、基板1と、少なくとも1つの半導体3と、キャップ層5とを備える。図1の例では、半導体構造100は、複数の半導体3を備える。キャップ層5及び複数の半導体3は、構造体2を構成する。つまり、構造体2は、キャップ層5及び複数の半導体3を含む。
【0027】
基板1は、照射される電磁波LT(図5(b))の波長に対して透明であることが好ましい。透明は、無色透明、有色透明、又は、半透明である。基板1は絶縁体である。基板1は、例えば、石英基板である。基板1の厚みd1は、例えば、50μm~1000μm(1mm)である。厚みd1は、基板1の第1方向D1の長さを示す。第1方向D1は、基板1の主面F1及び主面F2に略直交する方向を示す。主面F1と主面F2とは、互いに対向し、略平行である。例えば、主面F1は、基板1のおもて面を示し、主面F2は、基板1の裏面を示す。
【0028】
複数の半導体3は、基板1上に形成される。図1の例では、複数の半導体3は、基板1の主面F1に形成される。半導体3の厚みd3は、例えば、20nm~250nmである。厚みd3は、半導体3の第1方向D1の長さを示す。半導体3は単結晶である。半導体3は、例えば、GeSn(ゲルマニウムスズ)である。
【0029】
図1の例では、複数の半導体3の各々は、基板1上に線状に形成される。つまり、複数の半導体3の各々は、線状要素である。複数の半導体3の各々は、第2方向D2に沿って延びる。第2方向D2は、第1方向D1に交差する方向を示す。図1の例では、第2方向D2は、第1方向D1に略直交する方向を示す。複数の半導体3は、第3方向D3に間隔を空けて並んでいる。第3方向D3に隣り合う半導体3同士の間隔、つまり、隣り合う半導体3の第3方向D3の間隔は、半導体3の幅W以下であってもよいし、半導体3の幅Wよりも大きくてもよい。半導体3の幅Wは、例えば、0.1μm~10μmである。幅Wは、半導体3の第3方向D3の長さを示す。第3方向D3は、第1方向D1及び第2方向D2に交差する方向を示す。図1の例では、第3方向D3は、第1方向D1及び第2方向D2に略直交する。
【0030】
ただし、半導体3の形状は、特に限定されない。例えば、半導体3は、半導体3の目的に応じて任意の形状(例えば、平板形状、正方形状)をとり得る。また、例えば、複数の半導体3の形状は、異なっていてもよいし、同じでもよい。更に、複数の半導体3の間隔は、異なっていてもよいし、同じでもよい。更に、例えば、複数の半導体3が、規則的に配置されていてもよいし(例えば、M行×N列に配置)、不規則に配置されていてもよい。Mは2以上の整数を示し、Nは2以上の整数を示す。
【0031】
半導体3は、例えば、受光素子、発光素子、又は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor FET)などのスイッチング素子若しくは整流素子として利用される。例えば、半導体3及び基板1は、SOI(Silicon on Insulator)構造を形成する。例えば、半導体構造100からキャップ層5を薬剤等によって除去した後に、半導体3及び基板1を利用することもできる。また、半導体3に不純物をドーピングして利用してもよい。
【0032】
特に、GeSnは、Geと比較して、受光効率及び発光効率が高く、キャリア移動度も大きい。Snの含有によって、GeSnのバンド構造が直接遷移化するからである。従って、半導体3がGeSnである場合、半導体3は、受光素子、発光素子、又は、MOSFETなどのスイッチング素子若しくは整流素子としてより好適である。
【0033】
キャップ層5は、複数の半導体3の表面を覆う。半導体3の表面は、半導体3の外面のうち、基板1に接触及び対向している面と異なる面を示す。図1の例では、キャップ層5は、基板1の主面F1及び複数の半導体3の表面を覆う。ただし、キャップ層5は、少なくとも、半導体3の表面を覆っていればよい。
【0034】
キャップ層5は、照射される電磁波LT(図5(b))の波長に対して透明であることが好ましい。透明は、無色透明、有色透明、又は、半透明である。キャップ層5は絶縁体である。キャップ層5は、例えば、SiO2(二酸化ケイ素)である。キャップ層5の厚みd5は、例えば、0.5μm~10μmである。厚みd5は、キャップ層5の第1方向D1の長さを示す。
【0035】
次に、図2図6を参照して、半導体3の結晶(具体的には単結晶)を作成する結晶作製装置200及び結晶作製方法を説明する。図2は、結晶作製装置200を示すブロック図である。図2に示すように、結晶作製装置200は、半導体形成装置201と、半導体加工装置203と、キャップ層形成装置205と、電磁波吸収層形成装置207と、アニール装置209と、電磁波吸収層除去装置211とを備える。半導体形成装置201は本発明の「半導体形成部」の一例に相当する。半導体加工装置203は本発明の「半導体加工部」の一例に相当する。キャップ層形成装置205は本発明の「キャップ層形成部」の一例に相当する。電磁波吸収層形成装置207は本発明の「電磁波吸収層形成部」の一例に相当する。アニール装置209は本発明の「アニール部」の一例に相当する。電磁波吸収層除去装置211は本発明の「電磁波吸収層除去部」の一例に相当する。
【0036】
図3図6は、実施形態1に係る結晶作製方法を示す斜視図である。図3図6に示すように、結晶作製方法は、工程S1~工程S7を含む。結晶作製方法は、図2に示す結晶作製装置200によって実行され、半導体3の結晶(具体的には単結晶)を作製する。つまり、結晶作製装置200が、半導体3の結晶(具体的には単結晶)を作製する。
【0037】
まず、図3(a)に示すように、工程S1において、基板1が用意される。基板1は、照射される電磁波LT(図5(b))の波長に対して透明であることが好ましい。透明は、無色透明、有色透明、又は、半透明である。基板1は絶縁体である。基板1は、例えば、石英基板である。ただし、基板1の素材は、工程S6(図5(b))の電磁波LTによって変形又は溶融しない限りにおいて、特に限定されない。例えば、基板1は、フレキシブル基板であってもよい。フレキシブル基板は、例えば、合成樹脂によって形成される。合成樹脂は、例えば、ポリイミド又はポリエチレンテレフタレートである。基板1の厚みd1は、例えば、50μm~1000μm(1mm)である。ただし、基板1の厚みd1は、基板1上に半導体3を形成できる限りにおいて、特に限定されない。
【0038】
次に、図2及び図3(b)に示すように、工程S2において、半導体形成装置201は、基板1上に(具体的には主面F1に)半導体層3aを形成する。半導体層3aは、非晶質AMRの半導体である。半導体は、例えば、GeSnである。ただし、半導体層3aを構成する半導体の種類は、特に限定されない。例えば、半導体は、混晶半導体(例えば、IV族混晶半導体)、化合物半導体(例えば、III-V族化合物半導体、II-VI族化合物半導体、又は、IV-IV化合物半導体)、又は、単元素半導体である。GeSnは、混晶半導体の一例である。化合物半導体は、例えば、GaAs(ガリウムヒ素)である。単元素半導体は、例えば、Ge(ゲルマニウム)である。
【0039】
例えば、半導体形成装置201は、分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)によって、基板1上に半導体層3aを形成する。ただし、半導体層3aの形成方法は、特に限定されず、例えば、他の物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)、又は、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)を採用できる。他の物理蒸着法は、例えば、スパッタリングである。
【0040】
半導体層3aの厚みd3は、例えば、20nm~250nmである。ただし、半導体層3aの厚みd3は、特に限定されない。
【0041】
次に、図2及び図4(a)に示すように、工程S3において、半導体加工装置203は、基板1上の半導体層3a(図3(b))を加工して、基板1上に複数の半導体3を形成する。以下、非晶質AMRの半導体3を「半導体3b」と記載する場合がある。
【0042】
図4(a)の例では、複数の半導体3bの各々は、基板1上に線状に形成される。つまり、複数の半導体3bの各々は、線状要素である。工程S3では、工程S2と同様に、半導体3bは非晶質AMRである。同様に、半導体3bは、例えば、GeSnである。
【0043】
複数の半導体3bの各々は、第2方向D2に沿って延びる。複数の半導体3bは、第3方向D3に間隔を空けて並んでいる。第3方向D3に隣り合う半導体3b同士の間隔、つまり、隣り合う半導体3bの第3方向D3の間隔は、半導体3bの幅W以下であってもよいし、半導体3bの幅Wよりも大きくてもよい。半導体3bの幅Wは、例えば、0.1μm~10μmである。ただし、半導体3bの幅Wは、特に限定されない。
【0044】
また、半導体3bの形状は、特に限定されない。例えば、半導体3bは、半導体3の目的に応じて任意の形状(例えば、平板形状、正方形状)をとり得る。また、例えば、複数の半導体3bの形状は、異なっていてもよいし、同じでもよい。更に、複数の半導体3bの間隔は、異なっていてもよいし、同じでもよい。更に、例えば、複数の半導体3bが、規則的に配置されていてもよいし(例えば、M行×N列に配置)、不規則に配置されていてもよい。
【0045】
例えば、半導体加工装置203は、各種リソグラフィーによって、半導体層3aから複数の半導体3bを形成する。この場合、例えば、半導体加工装置203は、レジスト塗布装置、露光装置、現像装置、エッチング装置、及び、レジスト剥離装置を含む。レジスト塗布装置は、半導体層3aにレジストを塗布する。露光装置は、露光を実行し、レジスト膜に、複数の半導体3bに対応するパターンを転写する。現像装置は、現像液によって、レジストの感光部分を除去(ポジ型)、又は、未感光部分を除去(ネガ型)する。エッチング装置は、半導体層3aのうちレジスト膜で覆われていない露出した部分をエッチングする。エッチングは、ウエットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよい。レジスト剥離装置は、例えば、薬液又はガスによって、レジスト膜を剥離する。その結果、複数の半導体3bが形成される。
【0046】
ここで、工程S2(図3(b))及び工程S3(図4(a))が、「基板上に半導体を形成する工程」の一例に相当する。
【0047】
次に、図2及び図4(b)に示すように、工程S4において、キャップ層形成装置205は、複数の半導体3bの表面を覆うキャップ層5を形成する。半導体3bの表面は、半導体3bの外面のうち、基板1に接触及び対向している面と異なる面を示す。図4(b)の例では、キャップ層5は、基板1の主面F1及び複数の半導体3bの表面を覆う。ただし、キャップ層5は、少なくとも、半導体3bの表面を覆っていればよい。
【0048】
キャップ層5は、照射される電磁波LT(図5(b))の波長に対して透明であることが好ましい。透明は、無色透明、有色透明、又は、半透明である。キャップ層5は絶縁体である。キャップ層5は、例えば、SiO2である。ただし、キャップ層5の素材は、工程S6(図5(b))の電磁波LTによって変形又は溶融しない限りにおいて、特に限定されない。キャップ層5の厚みd5は、基板1の厚みd1よりも小さい。キャップ層5の厚みd5は、例えば、0.5μm~10μmである。ただし、キャップ層5の厚みd5は、半導体3bの表面を覆うことができる限りにおいて、特に限定されない。キャップ層5の機能については、後述する。
【0049】
例えば、キャップ層形成装置205は、スパッタリングによって、半導体3bの表面を覆うキャップ層5を形成する。ただし、キャップ層5の形成方法は、特に限定されず、例えば、他の物理蒸着法(PVD)を採用できる。他の物理蒸着法は、例えば、分子線エピタキシー法(MBE)又は化学気相蒸着法(CVD)である。
【0050】
次に、図2及び図5(a)に示すように、工程S5において、電磁波吸収層形成装置207は、キャップ層5上に電磁波吸収層7を形成する。電磁波吸収層7は、電磁波吸収層7に照射される電磁波を吸収する。例えば、電磁波吸収層7は、電磁波吸収層7に照射される電磁波の一部を吸収する。従って、図5(b)の工程S6において電磁波吸収層7に電磁波LTが照射されると、電磁波吸収層7は、電磁波LTを吸収して加熱されるため、電磁波吸収層7の温度が上昇する。
【0051】
電磁波吸収層7は、例えば、Si(シリコン)である。ただし、電磁波吸収層7の素材は、工程S6(図5(b))において電磁波LTを吸収できる限りにおいて、特に限定されない。従って、電磁波吸収層7は、半導体に限らず、絶縁体でもよいし、電気導電体でもよい。また、電磁波吸収層7の色彩も特に限定されない。
【0052】
電磁波吸収層7の厚みd5は、基板1の厚みd1よりも小さい。図5(a)の例では、電磁波吸収層7の厚みd5は、キャップ層5の厚みd5よりも小さい。電磁波吸収層7の厚みd7は、例えば、50nm~300nmである。ただし、電磁波吸収層7の厚みd7は、工程S6(図5(b))において電磁波LTを吸収できる限りにおいて、特に限定されない。厚みd7は、電磁波吸収層7の第1方向D1の長さを示す。
【0053】
例えば、電磁波吸収層形成装置207は、スパッタリングによって、キャップ層5上に電磁波吸収層7を形成する。ただし、電磁波吸収層7の形成方法は、特に限定されず、例えば、他の物理蒸着法(PVD)又は化学蒸着法(CVD)を採用できる。
【0054】
次に、図2及び図5(b)に示すように、工程S6において、アニール装置209は、電磁波吸収層7に電磁波LTを照射して、電磁波吸収層7の温度を上昇させる。従って、電磁波吸収層7に熱が発生する。そして、電磁波吸収層7から半導体3c(3b)へ、キャップ層5を介して熱が伝達される。従って、熱によって非晶質AMRの半導体3c(3b)が溶融する。その結果、液相結晶化が起こり、半導体3の単結晶SCRが形成される。図5(b)の例では、非晶質AMRから単結晶SCRへと変化している状態の半導体3を「半導体3c」と記載している。
【0055】
すなわち、本実施形態に係る結晶作製方法では、電磁波吸収層7をキャップ層5上に設けることで、基板1上に形成された半導体3cに効果的に熱を伝達して、半導体3cを効果的に溶融することが可能である。その結果、液相結晶化を効果的に促進できて、欠陥の少ない高品質な半導体3の単結晶を作製できる。
【0056】
特に、実施形態1では、隣り合う半導体3c同士の間隔が大きい場合でも、例えば、隣り合う半導体3c同士の間隔が10μm以上の場合でも、半導体3cを十分加熱することができて、半導体3cを容易に溶融することができる。その結果、隣り合う半導体3c同士の間隔が10μm以上の場合でも、GeSnの液相結晶化が効果的に促進されて、欠陥の少ない高品質な半導体3の単結晶を作製できる。また、隣り合う半導体3c同士の間隔が小さい場合、例えば、隣り合う半導体3c同士の間隔が5μm程度の場合において、複数の半導体3cからなる集団の外縁付近の半導体3c(例えば、集団の両端の半導体3c)についても、十分加熱することができて、容易に溶融することができる。その結果、複数の半導体3cからなる集団の外縁付近の半導体3cについても、GeSnの液相結晶化が効果的に促進されて、欠陥の少ない高品質な単結晶を作製できる。
【0057】
すなわち、実施形態1によれば、複数の半導体3cからなるパターンに依存することなく、半導体3cを十分加熱することができて、半導体3cを容易に溶融することができる。
【0058】
また、実施形態1では、半導体3cは、電磁波吸収層7と基板1との間に位置している。従って、半導体に対して基板の反対側に電磁波吸収層(カーボン)を配置する場合と比較して、電磁波吸収層7から半導体3cまでの距離を短くできる。その結果、半導体に対して基板の反対側に電磁波吸収層を配置する場合と比較して、半導体3cに対して効果的に熱を伝達できる。なお、半導体に対して基板の反対側に電磁波吸収層を配置する場合は、電磁波吸収層からの熱は、比較的厚みの大きな基板を通って半導体に到達する。従って、この場合、熱損失が大きくなる。
【0059】
更に、実施形態1では、電磁波吸収層7からの熱によって半導体3cを効果的に加熱できるため、レーザー光源(光源A1)のパワーを小さくしても、効果的に半導体3cを溶融できる。従って、基板1が軟化温度の比較的低いフレキシブル基板であっても、液相結晶化によって半導体3cの単結晶を作製できる。
【0060】
以上、図5(b)を参照して説明したように、工程S6では、アニール装置209は、電磁波吸収層7への電磁波LTの照射によって、電磁波吸収層7から半導体3cへの熱伝導を通じて半導体3cを溶融させることで、半導体3cを結晶化させる。従って、半導体3cを溶融可能な十分な熱を電磁波吸収層7に発生させることが好ましい。例えば、電磁波吸収層7の素材及び厚みd7は、電磁波吸収層7が電磁波LTの少なくとも50%を吸収できるように選択されることが好ましい。つまり、電磁波吸収層7の光吸収係数(cm-1)及び厚みd7は、電磁波吸収層7が電磁波LTの少なくとも50%を吸収できるように選択されることが好ましい。ただし、電磁波吸収層7が電磁波LTの一部を吸収して半導体3cに熱を伝達できる限りにおいて、電磁波吸収層7の光吸収係数、厚みd7、及び、電磁波吸収率は特に限定されない。
【0061】
引き続き図2及び図5(b)を参照して、アニール装置209及び工程S6を詳細に説明する。
【0062】
図2に示すように、アニール装置209は、光源A1と、ステージA2とを含む。従って、工程S6(図5(b))において、ステージA2には、半導体3b(図5(a))、キャップ層5、及び、電磁波吸収層7が積層された基板1が載置される。そして、工程S6において、光源A1は、電磁波LTを発生して、電磁波LTを電磁波吸収層7に照射する。例えば、電磁波LTの一部が電磁波吸収層7に吸収され、電磁波LTの他の一部が、電磁波吸収層7を透過する。電磁波吸収層7を透過した電磁波LTの一部は、半導体3cに吸収され、電磁波吸収層7を透過した電磁波LTの他の一部は、キャップ層5及び基板1を透過する。
【0063】
図5(b)の例では、電磁波LTは、レーザー光である。従って、光源A1は、レーザー光源である。レーザー光は、連続波(CW:Continuous Wave)である。以下、電磁波LTをレーザー光LTと記載する場合がある。レーザー光LTは、例えば、可視光である。なお、レーザー光LTは、不可視光であってもよい。
【0064】
具体的には、工程S6では、アニール装置209は、電磁波吸収層7におけるレーザー光LTの照射位置を移動しながら、電磁波吸収層7にレーザー光LTを照射する。つまり、アニール装置209は、レーザー光LTを走査方向SCに走査することで、電磁波吸収層7にレーザー光LTを照射する。従って、実施形態1によれば、1回のレーザー光LTの走査によって、多数の半導体3cを結晶化できる。走査方向SCは、第2方向D2に略平行である。
【0065】
図7は、実施形態1に係る結晶作製方法による液相結晶化を模式的に示す断面図である。図7に示すように、レーザー光LTが電磁波吸収層7に照射されると、レーザー光LTの一部が電磁波吸収層7に吸収される。従って、電磁波吸収層7の温度が上昇する。そして、電磁波吸収層7が発生する熱HTは、キャップ層5を伝わり、半導体3cに伝達される。熱HTによって、半導体3cの非晶質AMRの部分が溶融して液体LQになる。レーザー光LTの照射位置が走査方向SCに移動すると、液体LQの温度が下降するので、液体LQが結晶化し単結晶SCRになる。このようにして、走査方向SCに向かって半導体3cの結晶化が進行する。つまり、レーザー光LTの走査に応じて走査方向SCに結晶が成長する。レーザー光LTによる走査が完了すると、半導体3cの結晶化が完了し、単結晶の半導体3が形成される。
【0066】
また、電磁波吸収層7の余熱によって、半導体3cの液体LQが急冷することを防止できる。その結果、より欠陥の少ない半導体3の単結晶を作製できる。
【0067】
特に、工程S6(図5(b))では、熱HTによって半導体3cが溶融する。そこで、半導体3cが溶融した場合であっても、半導体3cの形状を維持するために、工程S4(図4(b))においてキャップ層5が形成される。つまり、キャップ層5は、溶融した半導体3c、つまり、液体LQの半導体3cを保持する。その結果、半導体3cが変形したり、流動したりすることを防止できて、半導体3cの形状を維持できる。ひいては、単結晶の半導体3の形状を維持できる。
【0068】
次に、図2及び図6に示すように、工程S7において、電磁波吸収層除去装置211は、キャップ層5から電磁波吸収層7を除去する。具体的には、アニール装置209が電磁波吸収層7の温度を上昇させることによって半導体3cを結晶化した後に、電磁波吸収層除去装置211は、キャップ層5から電磁波吸収層7を除去する。つまり、電磁波吸収層7の温度を上昇させる工程S6によって半導体3cが結晶化した後に、工程S7が実行される。工程S7では、電磁波吸収層除去装置211は、例えば、反応性ドライエッチング時のSiとSiO2との加工速度差を利用したり、又は、薬剤によって、キャップ層5から電磁波吸収層7を除去する。その結果、図1の半導体構造100の作成が完了する。薬剤は、例えば、KOH等である。ただし、電磁波吸収層7を除去できる限りにおいては、薬剤に限らず、例えば、ガスエッチングによって電磁波吸収層7を除去してもよい。工程S7の完了によって、結晶作製方法が終了する。
【0069】
以上、図3図7を参照して実施形態1に係る結晶作製方法を説明した。特に、図4(b)を参照して説明したように、実施形態1に係る結晶作製方法では、キャップ層5の厚みd5は、基板1の厚みd1よりも小さい。従って、半導体に対して基板の反対側に電磁波吸収層(カーボン)を配置する場合と比較して、電磁波吸収層7から半導体3cまでの距離が短い。その結果、熱損失が小さいため、半導体3cに対して効果的に熱を伝達できる。
【0070】
また、図5(a)を参照して説明したように、実施形態1に係る結晶作製方法では、電磁波吸収層7の厚みd7は、基板1の厚みd1よりも小さい。従って、比較的短時間で電磁波吸収層7を形成できる。また、工程S7(図6)において、電磁波吸収層7を容易に除去できる。
【0071】
(第1変形例)
図2及び図8を参照して、実施形態1の第1変形例を説明する。第1変形例では、電磁波吸収層7aがパターニングされている点で、図5(a)を参照して説明した実施形態1と主に異なる。以下、第1変形例が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0072】
図8は、実施形態1の第1変形例に係る結晶作製方法の工程S5を示す斜視図である。図2及び図8に示すように、工程S5において、キャップ層形成装置205は、予め定められたパターンPA1を構成するように電磁波吸収層7aを形成する。
【0073】
図8の例では、パターンPA1を有する電磁波吸収層7aは、ジグザグ形状の縁EGを有する。電磁波吸収層7aは、縁EGの形状に応じて、全ての半導体3bのうち2以上の半導体3bの各々の一部と第1方向D1に対向し、当該2以上の半導体3bの各々の他の一部とは対向していない。また、電磁波吸収層7aは、縁EGの形状に応じて、全ての半導体3bのうち他の2以上の半導体3bの各々の全体と第1方向D1に対向している。
【0074】
第1変形例の工程S6では、アニール装置209は、電磁波吸収層7aへの電磁波LT(レーザー光LT)の照射によって、予め定められたパターンPA1に対応して、基板1の主面方向において半導体3b及び/又は基板1に温度分布を形成する。従って、例えば、主面方向において、温度を効果的に上昇させる領域(例えば、半導体3b)と、温度の上昇を抑制する領域(例えば、基板1)とを形成できる。また、例えば、半導体3bの結晶化の開始位置を制御できる。基板1の主面方向は、基板1の主面F1に略平行な方向を示す。従って、第2方向D2及び第3方向D3は、基板1の主面方向の一例である。
【0075】
(第2変形例)
図2及び図9を参照して、実施形態1の第2変形例を説明する。第2変形例に係る電磁波吸収層7bのパターンPA2は、第1変形例のパターンPA1と異なる。以下、第2変形例が第1変形例と異なる点を主に説明する。
【0076】
図9は、実施形態1の第2変形例に係る結晶作製方法の工程S5を示す斜視図である。図2及び図9に示すように、工程S5において、キャップ層形成装置205は、予め定められたパターンPA2を構成するように電磁波吸収層7bを形成する。
【0077】
図9の例では、パターンPA2を有する電磁波吸収層7bは、領域AR1と、領域AR2とを有する。領域AR2の面積は、領域AR1の面積よりも大きい。電磁波吸収層7bの領域AR1は、全ての半導体3bのうち2以上の半導体3bの各々の一部と第1方向D1に対向し、当該2以上の半導体3bの各々の他の一部とは対向していない。また、電磁波吸収層7bの領域AR2は、全ての半導体3bのうち他の2以上の半導体3bの各々の全体と第1方向D1に対向している。
【0078】
第2変形例の工程S6では、アニール装置209は、電磁波吸収層7bへの電磁波LT(レーザー光LT)の照射によって、予め定められたパターンPA2に対応して、基板1の主面方向において半導体3b及び/又は基板1に温度分布を形成する。従って、第2変形例では、パターンPA2に対応して、第1変形例と同様の効果を有する。
【0079】
(実施形態2)
図2及び図10図14を参照して、本発明の実施形態2に係る半導体構造100A及び結晶作製方法を説明する。実施形態2では、構造体2n(nは2以上の整数)が積層される点で、構造体2が積層されていない実施形態1と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0080】
図10は、実施形態2に係る半導体構造100Aを示す斜視図である。図10に示すように、半導体構造100Aは、基板1と、複数の構造体2n(nは2以上の整数)とを備える。複数の構造体2nの各々は、キャップ層5nと、複数の半導体3nとを含む。構造体2nの構成は、図1に示す構造体2の構成と同様である。つまり、構造体2nの半導体3n及びキャップ層5nの構成は、それぞれ、図1に示す構造体2の半導体3及びキャップ層5の構成と同様である。図10では、複数の構造体2を識別するために、参照符号「2」に「n」を付している。また、複数の半導体3を識別するために、参照符号「3」に「n」を付している。更に、複数のキャップ層5を識別するために、参照符号「5」に「n」を付している。
【0081】
複数の構造体2nは、第1方向D1において、基板1上に積層されている。図10の例では、3つの構造体21~23が、第1方向D1において、基板1上に積層されている。ただし、積層数は、「2」であってもよいし、「4」以上であってもよく、特に限定されない。
【0082】
具体的には、構造体21が基板1上に形成される。更に具体的には、構造体21は、結晶作製装置200が図3図6に示す工程S1~工程S7を実行することで形成される。つまり、実施形態2の結晶作製方法は、図3図6に示す工程S1~工程S7を含む。
【0083】
次に、図2及び図11図14を参照して、構造体21上に構造体22を積層するための積層工程を説明する。積層工程は、実施形態2に係る結晶作製方法に含まれる。積層工程は、工程S7(図6)よりも後に実行される。
【0084】
図11図14は、実施形態2に係る結晶作製方法の積層工程における工程S11~工程S17を示す斜視図である。つまり、積層工程は工程S11~工程S17を含む。
【0085】
まず、図11(a)に示すように、工程S11において、構造体21が形成された基板1が用意される。
【0086】
次に、図2及び図11(b)に示すように、工程S12において、半導体形成装置201は、キャップ層51上に新たに半導体層32aを形成する。具体的には、半導体形成装置201は、キャップ層51から電磁波吸収層7(図6)を除去した後に、キャップ層51上に新たに半導体層32aを形成する。半導体層32aは、非晶質AMRの半導体である。半導体は、例えば、GeSnである。その他、半導体層32aは、実施形態1の半導体層3a(図3(b))と同様である。
【0087】
例えば、半導体形成装置201は、分子線エピタキシー法(MBE)によって、キャップ層51上に半導体層32aを形成する。ただし、半導体層32aの形成方法は、特に限定されず、例えば、他の物理蒸着法(PVD)又は化学蒸着法(CVD)を採用できる。
【0088】
次に、図2及び図12(a)に示すように、工程S13において、半導体加工装置203は、キャップ層51上の新たな半導体層32a(図11(b))を加工して、キャップ層51上に新たに複数の半導体32を形成する。以下、非晶質AMRの半導体32を「半導体32b」と記載する場合がある。
【0089】
図12(a)の例では、複数の半導体32bの各々は、キャップ層51上に線状に形成される。つまり、複数の半導体32bの各々は、線状要素である。工程S13では、工程S12と同様に、半導体32bは非晶質AMRである。同様に、半導体32bは、例えば、GeSnである。その他、半導体32bは、図4(a)の半導体3bと同様である。
【0090】
例えば、半導体加工装置203は、フォトリソグラフィーによって、半導体層32aから複数の半導体32bを形成する。
【0091】
ここで、工程S12(図11(b))及び工程S13(図12(a))が、「キャップ層上に半導体を新たに形成する工程」の一例に相当する。
【0092】
次に、図2及び図12(b)に示すように、工程S14において、キャップ層形成装置205は、新たな複数の半導体32bの表面を覆うキャップ層52を新たに形成する。半導体32bの表面は、半導体32bの外面のうち、キャップ層51に接触及び対向している面と異なる面を示す。図12(b)の例では、キャップ層52は、キャップ層51の主面F及び複数の半導体32bの表面を覆う。ただし、キャップ層52は、少なくとも、半導体32bの表面を覆っていればよい。
【0093】
キャップ層52は、照射される電磁波LT(図13(b))の波長に対して透明であることが好ましい。透明は、無色透明、有色透明、又は、半透明である。キャップ層52は絶縁体である。キャップ層52は、例えば、SiO2である。その他、キャップ層52は、図4(b)のキャップ層5と同様である。
【0094】
例えば、キャップ層形成装置205は、スパッタリングによって、半導体32bの表面を覆うキャップ層52を形成する。ただし、キャップ層52の形成方法は、特に限定されず、例えば、他の物理蒸着法(PVD)又は化学蒸着法(CVD)を採用できる。
【0095】
ここで、工程S14が、「新たな半導体の表面を覆うキャップ層を新たに形成する工程」の一例に相当する。
【0096】
次に、図2及び図13(a)に示すように、工程S15において、電磁波吸収層形成装置207は、新たなキャップ層52上に新たに電磁波吸収層7を形成する。電磁波吸収層7は、例えば、Si(シリコン)である。その他、電磁波吸収層7は、図5(a)の電磁波吸収層7と同様である。
【0097】
例えば、電磁波吸収層形成装置207は、スパッタリングによって、キャップ層52上に電磁波吸収層7を形成する。ただし、電磁波吸収層7の形成方法は、特に限定されず、例えば、他の物理蒸着法(PVD)又は化学蒸着法(CVD)を採用できる。
【0098】
ここで、工程S15が、「新たなキャップ層上に新たに電磁波吸収層を形成する工程」の一例に相当する。
【0099】
次に、図2及び図13(b)に示すように、工程S16において、アニール装置209は、新たな電磁波吸収層7に電磁波LTを照射して、新たな電磁波吸収層7の温度を上昇させる。工程S16では、電磁波吸収層7から半導体32c(32b)への熱伝導を通じて半導体32c(32b)を溶融させることで、半導体32c(32b)を結晶化させる。図13(b)の例では、非晶質AMRから単結晶SCRへと変化している状態の半導体32を「半導体32c」と記載している。電磁波吸収層7の選択については、図5(b)を参照して説明した電磁波吸収層7の選択と同様である。
【0100】
図13(b)の例では、電磁波LTは、レーザー光である。具体的には、工程S16では、アニール装置209は、電磁波吸収層7におけるレーザー光LTの照射位置を移動しながら、電磁波吸収層7にレーザー光LTを照射する。その他、レーザー光LTは、図5(b)のレーザー光と同様である。
【0101】
レーザー光LTの一部は、電磁波吸収層7に吸収される。その結果、電磁波吸収層7の温度が上昇する。そして、電磁波吸収層7に熱が発生する。熱は、キャップ層52を介して、電磁波吸収層7から半導体32cに伝達される。その結果、半導体32cが溶融し、半導体32cが走査方向SCに向かって結晶化する。よって、単結晶SCRの半導体32が形成される。液相結晶化の原理は、図7を参照して説明した液相結晶化の原理と同様である。また、キャップ層52は、キャップ層51(キャップ層5)と同様に、溶融した半導体32c、つまり、液体LQの半導体32cを保持する。
【0102】
ここで、工程S16は、「新たな電磁波吸収層に電磁波を照射して、新たな電磁波吸収層の温度を上昇させる工程」の一例に相当する。
【0103】
次に、図2及び図14に示すように、工程S17において、電磁波吸収層除去装置211は、例えば、薬剤によって、電磁波吸収層7を除去する。その結果、構造体22が形成される。工程S17の完了によって、構造体22を構造体21上に積層するための積層工程が終了する。
【0104】
ここで、図10の構造体23を構造体22上に積層するための積層工程は、工程S11~S17を含む積層工程と同様である。つまり、構造体2nの積層数に応じて、積層工程が繰り返される。
【0105】
以上、図11図14を参照して説明したように、実施形態2によれば、複数の構造体2nを第1方向D1に積層できる。従って、半導体3nの三次元積層構造を容易に形成できる。例えば、三次元積層構造を有するIV族混晶半導体ベースの光電子集積回路を容易に実現できる。IV族混晶半導体は、例えば、GeSnである。GeSnは、Geと比較して、受光効率及び発光効率が高く、キャリア移動度も大きい。よって、高品質の光電子集積回路を実現できる。
【0106】
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
【実施例0107】
図15図19を参照して、本発明の実施例1~実施例4を説明する。実施例1~実施例4では、図2に示す結晶作製装置200及び図3図6に示す結晶作製方法(工程S1~S7)を使用し、単結晶GeSn(単結晶の半導体3)を作製した。比較例では、電磁波吸収層7(工程S5)を形成しなかった。
【0108】
具体的には、実施例1~4の工程S1(図3(a))では、基板1は石英基板であった。基板1の厚みd1は、500μmであった。工程S1は、比較例においても実行された。
【0109】
実施例1~4の工程S2(図3(b))では、分子線エピタキシー法によって、基板1上に非晶質AMRの半導体層3aを形成した。半導体層3aは、GeSn層であった。半導体層3aの厚みd3は、200nmであった。半導体層3aを構成するGeSnにおいて、Geの組成は98%、Snの組成は2%であった。工程S2は、比較例においても実行された。
【0110】
実施例1~4の工程S3(図4(a))では、フォトリソグラフィーによって、非晶質AMRの半導体層3aから、全長1mmの非晶質AMRの半導体3bを形成した。つまり、全長1mmの非晶質のGeSn細線を形成した。工程S3は、比較例においても実行された。
【0111】
実施例1~4の工程S4(図4(b))では、スパッタリングによって、キャップ層5を形成した。キャップ層5の厚みd5は1μmであった。工程S4は、比較例においても実行された。
【0112】
実施例1~4の工程S5(図5(a))では、スパッタリングによって、電磁波吸収層7を形成した。電磁波吸収層7は、Siであった。電磁波吸収層7の厚みd7は100nmであった。電磁波吸収層7の光吸収係数は103cm-1であった。比較例では、工程S5は実行されなかった。
【0113】
実施例1~4の工程S6(図5(b))では、光源A1としてレーザー光源を使用し、レーザー光LTを走査方向SCに走査した。レーザー光LTの波長は、808nmであった。レーザー光LTの走査速度は、0.1mm/秒であった。レーザー光LTの強度は、13Wであった。電磁波吸収層7の厚みd7が100nmであり、電磁波吸収層7の光吸収係数が103cm-1であったため、電磁波吸収層7は、レーザー光LTの63%を吸収した。
【0114】
一方、比較例では、図4(b)に示す状態(電磁波吸収層7なしの状態)において、レーザー光LTを走査方向SCに走査した。比較例では、レーザー光LTの強度は、35.5Wであった。比較例に係るレーザー光LTの波長及び走査速度は、それぞれ、実施例1~4に係るレーザー光LTの波長及び走査速度と同じであった。
【0115】
(実施例1と比較例との対比)
本発明の実施例1及び比較例では、GeSn細線の線幅Wが1μmであり、GeSn細線の間隔Sは、10μmであった。また、実施例1では、レーザー光LTの強度は13Wであった。一方、比較例では、レーザー光LTの強度は35.5Wであった。
【0116】
図15(a)は、実施例1に係るGeSn細線を示す写真である。図15(b)は、比較例に係るGeSn細線を示す写真である。図15において、黒色部分は、基板1を示す。
【0117】
図15(a)の領域Aに示すように、実施例1のGeSn細線の走査方向SCの端部には、Snが析出した。白色部分が、析出したSnを示す。GeSn細線の走査方向SCの端部にSnが析出したことは、GeSnの結晶化が走査方向SCに進行することを示した。また、GeSn細線の走査方向SCの端部におけるSnの析出は、レーザー光LTの走査に基づく液相結晶化によって、GeSnの単結晶が作製されたことを示した。GeSnの単結晶が作製されたことは、実施例1のGeSn細線のEBSD(Electron Back Scatter Diffraction)像によっても確認された。つまり、各GeSn細線のEBSD像の全域において、特定の結晶方位を示していた。具体的には、各GeSn細線のEBSD像の全域が、同系色で表されていた。EBSD像では、色によって結晶方位が示されるため、同系色の領域では、結晶方位が揃っていることを示す。
【0118】
これに対して、図15(b)に示すように、比較例のレーザー光LTの強度が実施例1のレーザー光LTの強度よりも大きいにもかかわらず、比較例では、GeSn細線の走査方向SCの端部には、Snは析出しなかった。従って、比較例では、GeSnの単結晶が形成されていないことを確認できた。GeSnの単結晶が形成されなかったことは、比較例のGeSn細線のEBSD像によっても確認された。つまり、各GeSn細線のEBSD像において、結晶方位が揃っておらず、バラツキがあった。具体的には、各GeSn細線のEBSD像が、多数の色で表されていた。
【0119】
比較例において、GeSn細線の走査方向SCの端部にSnが析出しなかったことは、比較例のレーザー光LTの強度が実施例1のレーザー光LTの強度よりも大きいにもかかわらず、GeSnが溶融しなかったことを示した。
【0120】
以上、図15(a)及び図15(b)を参照して説明したように、実施例1では、比較例よりも小さなレーザーパワーで、つまり、比較例の1/2以下のレーザーパワーでGeSnの単結晶を作製できた。
【0121】
(実施例1、実施例2)
本発明の実施例1のGeSn細線の間隔Sは10μmであり、実施例2のGeSn細線の間隔Sは、30μmであった。
【0122】
図16(a)は、実施例1に係るGeSn細線を示す写真である。図16(b)は、実施例2に係るGeSn細線を示す写真である。図16(a)及び図16(b)に示すように、細線間隔Sの小さな実施例1だけでなく、細線間隔Sの大きな実施例2においても、GeSn細線の走査方向SCの端部には、Sn(白色部分)が析出した。換言すれば、実施例1及び実施例2の比較結果から、細線間隔Sの広狭に依存することなく、GeSnの単結晶が作製された。更に換言すれば、細線間隔Sの広狭に依存することなく、電磁波吸収層7からGeSnに十分な熱が伝達され、GeSnが溶融することで液相結晶化が促進された。
【0123】
(実施例1、実施例3、実施例4)
実施例1のGeSn細線の線幅Wは1μmであり、実施例3のGeSn細線の線幅Wは2μmであり、実施例4のGeSn細線の線幅Wは5μmであった。
【0124】
図17(a)は、実施例1に係るGeSn細線を示す写真である。図17(b)は、実施例3に係るGeSn細線を示す写真である。図17(c)は、実施例4に係るGeSn細線を示す写真である。
【0125】
図17(a)~図17(c)に示すように、線幅Wに依存することなく、GeSn細線の走査方向SCの端部にSn(白色部分)が析出した。換言すれば、実施例1~3の比較結果から、線幅Wの大小に依存することなく、GeSnの単結晶が作製された。更に換言すれば、線幅Wの大小に依存することなく、電磁波吸収層7からGeSnに十分な熱が伝達され、GeSnが溶融することで液相結晶化が促進された。
【0126】
以上、図16及び図17における実施例1~4から明らかなように、GeSnのパターンに依存することなく、電磁波吸収層7からGeSnへ効果的に熱が伝達されることで、GeSnの単結晶を作製できることを確認できた。
【0127】
なお、実施例1~4では、結晶化を確認するために、敢えてSnを多めに含有させた。実際には、Snが析出しないように、Snの含有量が調整される。
【0128】
(実施例1~3及び比較例のフォトルミネッセンススペクトル)
実施例1~3及び比較例のフォトルミネッセンススペクトルを計測した。具体的には、実施例1~3のGeSn細線及び比較例のGeに対して、励起光を照射して、GeSn細線及び比較例のGeが発光した光のスペクトルを計測した。
【0129】
図18は、実施例1、実施例2、及び、実施例3に係るGeSn細線及び比較例に係るGeのフォトルミネッセンススペクトルを示すグラフである。図18において、縦軸は、スペクトル強度(a.u.)を示し、下横軸は、光の波長(nm)を示し、上横軸は、光の光子エネルギー(eV)を示す。
【0130】
曲線G1は、実施例1のGeSn細線のフォトルミネッセンススペクトルを示し、曲線G2は、実施例2のGeSn細線のフォトルミネッセンススペクトルを示し、曲線G3は、実施例3のGeSn細線のフォトルミネッセンススペクトルを示す。曲線G0は、比較例のGeのフォトルミネッセンススペクトルを示す。ただし、曲線G0によって示される比較例については、縦軸のスペクトル強度のスケールを10倍にしている。
【0131】
曲線G1に示すように、実施例1のGeSn細線の発光強度が最も大きかった。曲線G2に示すように、実施例2のGeSn細線の発光強度が、実施例1のGeSn細線の発光強度の次に大きかった。曲線G3に示すように、実施例3のGeSn細線の発光強度が、最も小さかった。
【0132】
ただし、実施例1~実施例3のいずれの発光強度も、比較例の発光強度よりも大きかった。例えば、実施例1のGeSn細線の最大発光強度は、比較例のGeの最大発光強度の約100倍であった。従って、一例ではあるが、実施例1~3のGeSnが発光素子として効果的に機能できることを推測できた。また、実施例1~実施例3では、近赤外領域での発光強度が大きかった。従って、一例ではあるが、実施例1~3のGeSnが近赤外領域の発光素子として効果的に機能できることを推測できた。また、実施例1~3のGeSnの発光強度のピークは、比較例のGeの発光強度のピークPKよりも、長波長側に位置した。
【0133】
(実施例1及び比較例のバンド構造)
図19は、実施例1に係るGeSn細線及び比較例に係るGeのバンド構造を示す図である。図19において、縦軸はエネルギーEを示し、横軸は波数kを示す。バンド曲線B1は、実施例1のGeSn細線のバンド構造を示し、バンド曲線B0は、比較例のGeのバンド構造を示す。特に、バンド曲線B1は、実施例1のGeSn細線のバンド構造においてL点に対してΓ点のエネルギー位置が急激に低下することを模式的に示している。つまり、GeのΓ点に対するGeSn細線のΓ点のエネルギー位置の低下幅は、GeのL点に対するGeSn細線のL点のエネルギー位置の低下幅よりも大きい。また、重い正孔のバンド曲線HHと、軽い正孔のバンド曲線LHとが示される。
【0134】
バンド曲線B0に示されるように、比較例のGeは、間接遷移型の半導体であった。
【0135】
これに対して、バンド曲線B1に示すように、実施例1がSnを含有しているため、バンド構造が疑似的に直接遷移化した。つまり、Γ点のエネルギーがL点に対して急激に低下した。従って、実施例1のGeSnでは、間接遷移型のGeと比較して、発光強度が増大することを推測できた。この点は、図18に示すグラフによって実証された。また、実施例1のGeSnでは、比較例の間接遷移型のGeよりも、バンドギャップが縮小した。その結果、実施例1のGeSnでは、発光する光の波長が、比較例のGeよりも、長波長側にシフトすることを推測できた。この点は、図18に示すグラフによって実証された。なお、「疑似的な直接遷移化」とは、L点のエネルギー位置とΓ点のエネルギー位置とが同程度又は近接した状態を示す。
【0136】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0137】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0138】
(1)図2に示すアニール装置209の光源A1は、レーザー光源に限定されず、ランプであってもよい。また、電磁波LTが電磁波吸収層7に照射される限りにおいて、光源A1の位置は、特に限定されない。例えば、光源A1が、電磁波吸収層7の上方に配置されていてもよいし、基板1の下方に配置されていてもよいし、基板1の側方に配置されていてもよい。
【0139】
(2)図5(b)及び図13(b)において、各半導体3、3nへのレーザー光LTの照射開始位置は、走査方向SCの反対方向における半導体3、3nの端部であることが好ましい。この好ましい例によれば、各半導体3、3nの全体を結晶化できる。
【0140】
(3)図4(b)に示す基板1と半導体3との間に1又は2以上の層を形成してもよい。例えば、濡れ性を改善するために、基板1と半導体3との間に窒化ケイ素の層を形成してもよい。また、図5(a)に示すキャップ層5と電磁波吸収層7との間に1又は2以上の層を形成してもよい。
【0141】
(4)電磁波吸収層7は、キャップ層5、5nの側面に形成されてもよい。この場合、電磁波吸収層7が、キャップ層5、5nの主面と側面との双方に形成されてもよいし、キャップ層5、5nの側面だけに形成されてもよい。
【0142】
(5)実施形態2における電磁波吸収層7(図13(a))は、図8及び図9に示すパターンPA1、PA2を取り得る。実施形態1、2において、電磁波吸収層7のパターンは、図8及び図9に示すパターンPA1、PA2に限定されず、基板1の主面方向における所望の温度分布に応じて任意の形状を取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、結晶作製方法及び結晶作製装置を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0144】
1 基板
3、3b、3c、3n、31~32、32b、32c 半導体
5、5n、51~53 キャップ層
7、7a、7b 電磁波吸収層
200 結晶作製装置
201 半導体形成装置(半導体形成部)
203 半導体加工装置(半導体加工部)
205 キャップ層形成装置(キャップ層形成部)
207 電磁波吸収層形成装置(電磁波吸収層形成部)
209 アニール装置(アニール部)
211 電磁波吸収層除去装置(電磁波吸収層除去部)
LT 電磁波(レーザー光)
PA1、PA2 パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19