(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023312
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】電子機器又は基板の資源価値を推定するプログラム、方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230209BHJP
G06T 7/62 20170101ALI20230209BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230209BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06T7/62
G06T7/00 350B
G06T7/00 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128711
(22)【出願日】2021-08-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
(72)【発明者】
【氏名】古屋仲 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大木 達也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA05
5L096EA43
5L096FA06
5L096FA32
5L096GA38
5L096GA55
5L096KA04
5L096MA03
(57)【要約】
【課題】より精度良く電子機器又はそれに含まれる基板の資源価値を推定できるようにする。
【解決手段】本推定方法は、(A)電子機器のメーカを特定するステップと、(B)特定されたメーカに基づき、電子機器に含まれる基板上に実装される部品のうち着目すべき部品の種別を特定するステップと、(C)基板の画像から、着目すべき部品の種別に属する部品の領域を抽出する抽出ステップと、(D)抽出された部品の領域の合計面積及び上記メーカに基づき、電子機器又は基板の資源価値を推定するステップとを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器のメーカを特定するステップと、
特定された前記メーカに基づき、前記電子機器に含まれる基板上に実装される部品のうち着目すべき部品の種別を特定するステップと、
前記基板の画像から、前記着目すべき部品の種別に属する部品の領域を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記部品の領域の合計面積及び前記メーカに基づき、前記電子機器又は前記基板の資源価値を推定するステップと、
を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記着目すべき部品の種別を特定するステップが、
メーカと着目すべき部品の1又は複数の種別との対応関係を格納したデータ格納部から、特定された前記メーカに対応付けられた着目すべき部品の1又は複数の種別を特定するステップ
を含む請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
前記着目すべき部品の種別が、IC(Integrated Circuit)と、コネクタと、IC及びコネクタとのうちのいずれかである
請求項1又は2記載のプログラム。
【請求項4】
前記抽出ステップが、
前記着目すべき部品の種別毎に、抽出部品の特徴色のHSL(Hue/Saturation/Luminance)成分分布に基づくカラー二値化、平均化フィルタリング、及び部品形状の特徴に基づく所定のフィルタリングの組み合わせを含む
請求項1乃至3のいずれか1つ記載のプログラム。
【請求項5】
前記部品形状の特徴に基づく所定のフィルタリングが、長辺サイズに基づくフィルタリング、アスペクト比に基づくフィルタリング、及び稠密度に基づくフィルタリングを含む
請求項4記載のプログラム。
【請求項6】
前記抽出ステップが、
前記着目すべき部品の種別毎に、当該部品の種別に属する部品の領域を特定するように機械学習された学習済みモデルを用いて行われる
請求項1乃至3のいずれか1つ記載のプログラム。
【請求項7】
電子機器のメーカを特定するステップと、
特定された前記メーカに基づき、前記電子機器に含まれる基板上に実装される部品のうち着目すべき部品の種別を特定するステップと、
前記基板の画像から、前記着目すべき部品の種別に属する部品の領域を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記部品の領域の合計面積及び前記メーカに基づき、前記電子機器又は前記基板の資源価値を推定するステップと、
を含み、コンピュータが実行する推定方法。
【請求項8】
電子機器のメーカを特定する手段と、
特定された前記メーカに基づき、前記電子機器に含まれる基板上に実装される部品のうち着目すべき部品の種別を特定する手段と、
前記基板の画像から、前記着目すべき部品の種別に属する部品の領域を抽出する抽出手段と、
抽出された前記部品の領域の合計面積及び前記メーカに基づき、前記電子機器又は前記基板の資源価値を推定する手段と、
を有する情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器又は基板の資源価値を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄される電子機器の資源価値を非破壊で推定する技術は既に幾つか存在している。例えば、特許文献1には、金、銀、銅、プラチナなどの資源(すなわち元素)毎に、基板に含まれる含有量を、電子部品の種別毎の、基板上の総面積と、対応する係数との積和で算出できることが記載されている。元素毎に含有量が分かれば、元素の単価から資源価値も算出することが出来る。しかしながら、従来技術では、電子機器のメーカによる差異について着目したものはない。すなわち、電子機器のメーカによって、電子部品の種別毎の、基板上の総面積と、資源価値との関係は大きく異なっており、電子機器のメーカというデータを無視していては、精度の良い資源価値の推定は出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-222511号公報
【特許文献2】特開2015-232449号公報
【特許文献3】特開2016-218979号公報
【特許文献4】特開2017-106792号公報
【特許文献5】特開2017-133850号公報
【特許文献6】特開2020-190881号公報
【特許文献7】特開2015-222510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、一側面によれば、より精度良く電子機器又はそれに含まれる基板の資源価値を推定できるようにする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る推定方法は、(A)電子機器のメーカを特定するステップと、(B)特定されたメーカに基づき、電子機器に含まれる基板上に実装される部品のうち着目すべき部品の種別を特定するステップと、(C)基板の画像から、着目すべき部品の種別に属する部品の領域を抽出する抽出ステップと、(D)抽出された部品の領域の合計面積及び上記メーカに基づき、電子機器又は基板の資源価値を推定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0006】
一側面によれば、より精度良く電子機器又はそれに含まれる基板の資源価値を推定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、電子機器1機種(1基板)当たりのAu価値と総資源価値との関係を表す図である。
【
図2】
図2は、各部品のAu濃度と、部品搭載時に基板中に含まれるAu量に占める割合(分配率)との関係を表す図である。
【
図3A】
図3Aは、ICの上面面積の和とAu価値との関係を表す図である。
【
図3B】
図3Bは、コネクタの上面面積の和とAu価値との関係を表す図である。
【
図3C】
図3Cは、IC+コネクタの上面面積の和とAu価値との関係を表す図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態に係る情報処理装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、種別選定テーブルの一例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【
図7】
図7は、IC抽出処理の具体例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、情報処理装置であるコンピュータの機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施の形態の前提]
家庭電化製品などの電子機器は、複数の部品を実装した基板(一般的にはプリント基板)を含む。また、実装される部品には、メモリ、プロセッサその他のIC(Integrated Circuit)、トランジスタやダイオード、各種コンデンサ、コイルやトランス、水晶振動子、コネクタ等が含まれる。このような基板は、様々な元素を含む。例えば、本願発明者は、廃デジタルカメラ26機種(5メーカ、2000年乃至2014年製)を収集した。それらを手解体して複数枚のプリント基板を取り出し、小型カッターミルで粉砕し、空気雰囲気下にて焙焼した後(450℃、4時間)、蛍光X線分析を行った。また微量元素分析用に加圧酸分解し、ICP発光分光分析および質量分析を行った。元素分析後に得られた各元素重量に、2020年4月30日当時の元素価格)をそれぞれ掛け合わせ、廃デジカメ1機種に含まれる基板の価格を算出した。(Au:6411円/g,Ag:56.8円/g,Cu:0.56円/g,Ta:16.4円/g,Pd:7207円など)
【0009】
図1に、電子機器1機種(含まれる基板は1枚乃至5枚)当たりのAuの価値(Au元素価格×重量)と総資源価値との関係を示す。総資源価値は30乃至492円の間でばらつきがあり、平均値は187円であった。プロットがほぼ直線上に分布しており(相関係数Rの二乗値(寄与率)R
2=0.990)、Auの価値と総資源価値との間に強い正相関が認められる。回帰直線の傾きが1.11であることから、いずれの価値の基板においてもAuの価値が占める割合は、一律におよそ90.0%と推定しても、全体として価値の誤差はほとんど生じない、ということが分かる。すなわち、Auのみに着目しても精度上問題ない。
【0010】
また、本願発明者は、検証用に別に入手した廃デジタルカメラ18機種に搭載されている電子部品を全て基板から剥離させ、部品種類毎に重量割合を測定し、上記の元素分析を実施した。元素分析の結果より、各部品のAu濃度と、部品搭載時に基板中に含まれるAu量に占める割合を分配率として計算した結果を
図2に示す。重量割合の高い部品はアルミ電解コンデンサ(19.3%)、ポート(9.3%)、IC・メモリ(8.6%)等であり、部品のない基板部分(ガラスエポキシ樹脂基板+フレキシブル基板)は33.8%を占める。Au濃度の高い部品は、IC・メモリ(8960ppm)、トランジスタ・ダイオード(5500ppm)、水晶振動子(4000ppm)の順となったが、重量割合を考慮した分配率に換算すると、IC・メモリの値が圧倒的に高く(66.0%)、次にコネクタ(7.52%)と続いた。基板部分を除いた部品のみの分配率を考慮すると、IC・メモリとコネクタの2種類で8割を超えた。このようにAuのみに着目するならば、IC(メモリやプロセッサを含む)とコネクタに着目すれば精度的に十分であることが分かる。
【0011】
さらに、本願発明者は、Au価値がICやコネクタの個数のみならずサイズにも依存すると考えられるため、それぞれ上面の面積(すなわち基板上の面積)を計測し、総和を取ることにより、総資源価値を推定し得ると予測した。
図3A乃至
図3Cに、5メーカ製造の廃デジタルカメラ26機種について、それぞれに含まれる基板に搭載されているIC、コネクタ、及びIC+コネクタの上面面積の和と、1機種当たりのAu価値との関係をそれぞれ示す。なおIC及びコネクタは、長辺サイズ2mm未満の個数が少なく、上面面積の和に占める割合も少ないと考えられたため、2mm以上のものを対象とした。
【0012】
図3A乃至
図3Cからすると、おおよそICやコネクタの上面面積(合計面積とも呼ぶ)の和とAu価値との間には正相関があり、面積和が大きければAu価値が高いことを示した。具体的に、
図3Aに示すように、IC上面面積との相関は、メーカA及びBの場合に寄与率(R
2)がそれぞれ0.97、0.94と非常に高く、メーカC及びDの場合は0.6前後である程度示された。一方、メーカEのIC上面面積データは狭い範囲に留まり、相関が見い出せなかった。
【0013】
また、
図3Bに示すように、コネクタ上面面積との相関はメーカEの場合を除いてどれも高く、メーカBの寄与率が0.96、次いでメーカA、C及びDが0.85乃至0.9程度であった。一方、比較的広い範囲にデータがあったにもかかわらず、メーカEのみ明確な正相関が見られなかった。さらに、
図3Cに示すように、IC+コネクタの上面面積との相関については、メーカCの場合に寄与率がやや低くなったものの(0.67)、メーカA、B及びDで0.94以上の極めて強い正相関を示すことが分かった。一方、メーカEの場合は、どちらかというと負の相関が示唆された。
【0014】
以上のように、本願発明者によれば、メーカによって着目すべき部品の種別(IC/コネクタ/IC+コネクタ)が異なるという新たな知見が得られた。特に、負の相関を表すようなメーカEのような存在があるとすると、メーカというパラメータ無しでは高精度な資源価値の推定は不可能である。以下、上記のような前提に基づき、資源価値を算出するための構成について詳細に説明する。
【0015】
[実施の形態の構成例]
本実施の形態に係る処理を実行する情報処理装置1000は、
図4に示すように、画像取得部102と、画像格納部104と、メーカ特定部106と、種別選定部108と、種別選定テーブル格納部110と、IC抽出部112と、コネクタ抽出部114と、価値算出部116と、価値算出データベース(DB)118と、出力部120と、処理結果格納部122とを含む。
【0016】
画像取得部102は、例えばデジタルカメラなどから基板の画像を取得し、画像格納部104に格納する。メーカ特定部106は、基板を含む電子機器のメーカを、各種手法を用いて特定する。例えば、特開2019-81971号公報記載の手法を採用しても良いし、電子機器又は基板の画像から特徴量を抽出してメーカ名又はメーカ識別子を特定したり、ユーザにメーカ名又はメーカ識別子を入力させるようにしても良い。さらに、電子機器又は基板の画像からメーカ識別子を出力するように機械学習された学習済みモデルを用いて特定するようにしても良い。
【0017】
種別選定部108は、電子機器のメーカに基づき、着目すべき部品の種別を、種別選定テーブル格納部110から選定する。種別選定テーブル格納部110には、例えば
図5に示すようなテーブルを格納している。テーブルでは、メーカ名に対応付けて着目すべき部品種別が登録されている。
図3A乃至
図3Cのような結果からすると寄与率に着目し、メーカAに対応付けて部品種別「IC」が登録されており、メーカBに対応付けて部品種別「IC+コネクタ」が登録されており、メーカCに対応付けて部品種別「コネクタ」が対応付けられており、メーカDに対応付けて部品種別「IC+コネクタ」が登録されており、メーカEに対応付けて部品種別「IC+コネクタ」が登録されている。なお、同一特性を有するメーカをグループ化する場合もあるし、メーカ不明の場合の汎用のデータを登録するようにしても良い。
【0018】
IC抽出部112は、種別選定部108の選定結果に基づき、着目すべき部品の種別にICが含まれている場合には、画像格納部104に格納されている基板の画像から、ICの領域を抽出して当該領域の総面積(合計面積とも呼ぶ)を算出する。コネクタ抽出部は、種別選定部108の選定結果に基づき、着目すべき部品の種別にコネクタが含まれている場合には、画像格納部104に格納されている基板の画像から、コネクタの領域を抽出して当該領域の総面積を算出する。
【0019】
価値算出部116は、特定されたメーカ名又はメーカ識別子とIC抽出部112とコネクタ抽出部114と廃棄時の資源価値を算出し、処理結果格納部122に格納する。なお、価値算出DB118には、例えば、
図3A乃至
図3Cに示すような総面積とAu価値との関係を表す数式と、
図1に示すようなAu価値と基板の資源価値との関係を表す数式とをメーカ毎に保持しておく。但し、これらの数式を統合した数式や、数式に対応するテーブル等のデータを保持しておくようにしても良い。また、基板の資源価値だけではなく、電子機器全体の資源価値を算出する場合には、基板の資源価値から電子機器全体の資源価値を算出するような数式などを保持しておいても良い。なお、基板の資源価値は、電子機器全体の資源価値に対する所定割合(例えば90%)であることが分かっているので、基板の資源価値から電子機器全体の資源価値を推定することは可能である。
【0020】
出力部120は、処理結果格納部122に格納された資源価値を、情報処理装置1000の表示装置や印刷装置、ネットワークに接続された他のコンピュータ等に出力する。
【0021】
次に、
図6A乃至
図7を用いて、情報処理装置1000の処理内容について詳細に説明する。なお、
図6A及び
図6Bの処理については、基板毎に実行される。
まず、画像取得部102は、デジタルカメラなどで撮影された処理対象基板の画像を取得し、画像格納部104に格納する(
図6A:ステップS1)。情報処理装置1000がデジタルカメラに接続されていて当該デジタルカメラから画像を取得しても良いし、他のネットワークに接続されたコンピュータ等を経由して画像を取得するようにしても良い。
【0022】
次に、メーカ特定部106は、上でも述べたように各種手法を用いて、基板を含む電子機器のメーカを特定する(ステップS3)。例えば、資源価値を推定すべき基板の順番で、電子機器のメーカ名又はメーカ識別子のデータが登録されたファイルを用意して、当該ファイルから、
図6A及び
図6Bの処理を実行する毎にメーカ名又はメーカ識別子を読み出すような形であっても良い。
【0023】
種別選定部108は、特定されたメーカで種別選定テーブルを参照することで、着目すべき部品の種別を選定する(ステップS5)。
図5に示したような種別選定テーブルを保持していれば、メーカ名又はメーカ識別子から、IC、IC+コネクタ(両方)、又はコネクタが、着目すべき部品の種別として特定される。
【0024】
そして、着目すべき部品の種別が、IC又は両方(IC+コネクタ)である場合には(ステップS7:Yesルート)、IC抽出部112は、画像格納部104に格納されている画像に対してIC抽出処理を実行する(ステップS9)。IC抽出処理は、画像解析で行う場合もあれば、基板の画像からICの領域を抽出するように機械学習された学習済みモデルによって行う場合もある。
【0025】
画像解析にてICの領域を抽出する場合には、以下のような処理を行う。すなわち、ICの特徴色のHSL(Hue/Saturation/Luminance)成分分布に基づくカラー二値化を行う。例えば、色相:20乃至200、彩度:0乃至70、輝度:25乃至95の範囲を1に、それ以外を0にすることで、二値化を実施する。例えば、
図7の上段左端に示すような基板の画像を処理する場合には、カラー二値化(Color binarization)を行うと、上段左から2番目の画像が得られる。点線で囲まれたICはほぼ抽出されているが、多数のIC以外の部品も含まれている。次に、所定サイズ(例えば7×7ピクセル)の画素領域における画素値をそれらの平均値に置換する平均化フィルタリング(Average filtering)を行う。
図7の例では、上段左から2番目の画像に対して平均化フィルタリングを行うと、上段左から3番目の画像が得られる。これによりICの輪郭を明確化でき、IC以外の端子などで生ずるノイズを除去することが出来る。
【0026】
次に、現段階でのICの領域内部に含まれる微小な領域に対して穴埋め処理(Filling)を実行する。
図7の上段左から3番目の画像ではIC表面に印字されたIC名などが見られるが、穴埋め処理を実行すると、
図7の上段右端の画像では、IC名などが埋められて見えなくなっている。さらに、IC以外の細かい領域(粒子)を除去するため、2度目の平均化フィルタリングを実行する。
図7の上段右端の画像に対して、所定サイズ(例えば9×9ピクセル)の画素領域における画素値をそれらの平均値に置換する2度目の平均化フィルタリングを実行すると、
図7の下段左端の画像が得られる。
【0027】
その後、検出すべきICの形状(サイズを含む)の特徴に基づくフィルタリングを行う。具体的には、長辺サイズの範囲(例えば、2-5mm、5-10mm、10-15mm、15mm-30mm)を設定して、それ以外を除去する長辺サイズフィルタリングを行う。
図7の下段左端の画像に対して長辺サイズフィルタリング(Long side size filtering)を実行すると、
図7の下段左から2番目の画像が得られる。さらに、アスペクト比の範囲(例えば、1乃至3.5)を指定して、それ以外を除去するアスペクト比フィルタリングを実行する。
図7の下段左から2番目の画像に対してアスペクト比フィルタリング(Aspect ratio filtering)を実行すると、
図7の下段左から3番目の画像が得られる。さらに、稠密度(抽出領域面積とその外接長方形面積との比)の範囲(例えば0.6-1)を指定して、それ以外を除去する稠密度フィルタリングを実行する。
図7の下段左から3番目の画像に対して、稠密度フィルタリング(Compactness filtering)を実行すると、
図7の下段右端の画像が得られる。このような処理を行うことにより、あまりに大きな領域、アスペクト比の高い領域、稠密度の低いケーブル部分などの領域を除去できるようになる。
【0028】
このように抽出された領域の総面積を計算する。なお、上で述べた数値については、一例に過ぎず、処理すべき基板に基づき設定することになる。
【0029】
さらに、基板の画像からICの領域を抽出するように機械学習された学習済みモデルの場合には、例えば、残差ネットワーク(Residual Network)に対して教師有りの学習処理を行って得られた学習済みモデルを用いる。より具体的には、ResNet50という既知の残差ネットワークを用いる。なお、デジタルカメラのプリント基板上のIC画像2367枚を学習させた上で未学習の基板の画像263枚に対してICの検出を行わせたところ、検出率97.3%、検出したICの正解率90.1%であった。なお、残差ネットワークではなく、他のタイプのニューラルネットワークを使用することも可能である。
【0030】
図6Aの説明に戻って、ステップS9の後に、着目すべき部品の種別が両方(IC+コネクタ)ではない場合(ステップS11:Noルート)、端子Aを介して
図6Bの処理に移行する。一方、着目すべき部品の種別が、IC及び両方(IC+コネクタ)ではない場合(ステップS7:Noルート)、又は着目すべき部品の種別が、両方(IC+コネクタ)である場合(ステップS11:Yesルート)、コネクタ抽出部114は、画像格納部104に格納されている画像に対してコネクタ抽出処理を実行する(ステップS13)。その後、処理は端子Aを介して
図6Bの処理に移行する。
【0031】
コネクタ抽出処理についても、IC抽出処理における処理の基本構造は同じである。すなわち、特徴色のHSL成分分布に基づくカラー二値化、平均化フィルタリング、穴埋め処理、2度目の平均化フィルタリング、長辺サイズフィルタリング、アスペクト比フィルタリング、及び稠密度フィルタリングを、コネクタについて適切なパラメータを設定して実行する。なお、コネクタの色は様々なので、色毎にコネクタ抽出処理を実行するようにしても良い。さらに、同じ色でもサイズなどが異なる場合には、色且つサイズ毎にコネクタ抽出処理を実行するようにしても良い。
【0032】
さらに、基板の画像からコネクタの領域を抽出するように機械学習された学習済みモデルの場合には、例えば、残差ネットワーク(Residual Network)に対して教師有りの学習処理を行って得られた学習済みモデルを用いる。より具体的には、ResNet50という既知の残差ネットワークを用いる。なお、デジタルカメラのプリント基板のコネクタ画像1350枚を学習させた上で未学習の基板の画像150枚に対してICの検出を行わせたところ、検出率95.9%、検出したICの正解率97.3%であった。なお、残差ネットワークではなく、他のタイプのニューラルネットワークを使用することも可能である。
【0033】
図6Bの処理に移行して、価値算出部116は、IC抽出部112とコネクタ抽出部114とのうち抽出処理を実行したものが抽出した領域の面積を合計する(ステップS15)。そして、価値算出部116は、特定されたメーカに対応する、資源価値算出のためのデータを価値算出DB118から読み出して、当該資源価値算出のためのデータにより合計面積に対応する資源価値を算出し、処理結果格納部122に格納する(ステップS17)。資源価値算出のためのデータは、上で述べたように、基板の資源価値を算出するための数式などである場合もあれば、電子機器全体の資源価値を算出するための数式などである場合もある。
【0034】
そして、出力部120は、処理結果格納部122に格納されている資源価値のデータを、表示装置などの出力装置に出力する(ステップS19)。このようにすることで、メーカによる傾向を反映させて、精度良く基板又は電子機器全体の資源価値を推定できるようになる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態において、任意の要素を除去して実施する場合もある。処理フローについては、処理結果が変わらない限り順番を入れ替えたり、複数のステップを並列に実行する場合もある。また、
図4に示した情報処理装置の機能ブロック構成は、一例に過ぎず、プログラムモジュール構成やファイル構成などと異なる場合もある。
【0036】
なお、1台の情報処理装置で情報処理装置1000の機能を実現するのではなく、複数台の情報処理装置が協働して情報処理装置1000の機能を実現する場合もある。いずれの場合も、情報処理装置1000を情報処理システムと呼ぶ場合がある。
【0037】
なお、上で述べた情報処理装置1000は、例えばコンピュータ装置であって、
図8に示すように、メモリ2501とCPU(Central Processing Unit)2503とハードディスク・ドライブ(HDD:Hard Disk Drive)2505と表示装置2509に接続される表示制御部2507とリムーバブル・ディスク2511用のドライブ装置2513と入力装置2515とネットワークに接続するための通信制御部2517と周辺機器(イメージセンサ100、減衰機構300、冷却機構400などを含む)と接続するための周辺機器接続部2521とがバス2519で接続されている。なお、HDDはソリッドステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)などの記憶装置でもよい。オペレーティング・システム(OS:Operating System)及び本発明の実施の形態における処理を実施するためのアプリケーション・プログラムは、HDD2505に格納されており、CPU2503により実行される際にはHDD2505からメモリ2501に読み出される。CPU2503は、アプリケーション・プログラムの処理内容に応じて表示制御部2507、通信制御部2517、ドライブ装置2513を制御して、所定の動作を行わせる。また、処理途中のデータについては、主としてメモリ2501に格納されるが、HDD2505に格納されるようにしてもよい。例えば、上で述べた処理を実施するためのアプリケーション・プログラムはコンピュータ読み取り可能なリムーバブル・ディスク2511に格納されて頒布され、ドライブ装置2513からHDD2505にインストールされる。インターネットなどのネットワーク及び通信制御部2517を経由して、HDD2505にインストールされる場合もある。このようなコンピュータ装置は、上で述べたCPU2503、メモリ2501などのハードウエアとOS及びアプリケーション・プログラムなどのプログラムとが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
【0038】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0039】
本実施の形態に係る推定方法は、(A)電子機器のメーカを特定するステップと、(B)特定されたメーカに基づき、電子機器に含まれる基板上に実装される部品のうち着目すべき部品の種別を特定するステップと、(C)基板の画像から、着目すべき部品の種別に属する部品の領域を抽出する抽出ステップと、(D)抽出された部品の領域の合計面積及び特定されたメーカに基づき、電子機器又は基板の資源価値を推定するステップとを含む。
【0040】
上でも述べたように、メーカによって着目すべき部品の種別が異なり、さらに基板上の領域の合計面積と資源価値との関係も異なってくるので、上記のような処理を行うことで、資源価値推定の精度が向上する。
【0041】
また、上で述べた着目すべき部品の種別を特定するステップが、メーカと着目すべき部品の1又は複数の種別との対応関係を格納したデータ格納部から、特定されたメーカに対応付けられた着目すべき部品の1又は複数の種別を特定するステップを含むようにしても良い。上記対応関係を事前に準備することで、より精度の高い資源価値推定が行われるようになる。
【0042】
さらに、上で述べた着目すべき部品の種別が、IC(Integrated Circuit)と、コネクタと、IC及びコネクタとのうちのいずれかである場合もある。Auの価格に基づくとICとコネクタとに着目することが好ましいが、価格変動があれば他の元素に着目するような場合もあり、そのような場合には、ICとコネクタとに着目しない場合もあり得る。
【0043】
上で述べた抽出ステップが、着目すべき部品の種別毎に、抽出部品の特徴色のHSL(Hue/Saturation/Luminance)成分分布に基づくカラー二値化、平均化フィルタリング、及び部品形状の特徴に基づく所定のフィルタリングの組み合わせを含むようにしても良い。画像解析による抽出を行う場合には、適切なパラメータを設定した上でこのような処理を行うことで、適切な抽出が行われるようになる。
【0044】
なお、部品形状の特徴に基づく所定のフィルタリングが、長辺サイズに基づくフィルタリング、アスペクト比に基づくフィルタリング、及び稠密度に基づくフィルタリングを含むようにしても良い。これらにより抽出すべき部品に絞り込まれるようになる。
【0045】
さらに、上で述べた抽出ステップが、着目すべき部品の種別毎に、当該部品の種別に属する部品の領域を特定するように機械学習された学習済みモデルを用いて行われるようにしても良い。例えば、画像から特定種別の部品を抽出するように学習された残差ネットワーク等の学習済みモデルであっても良い。
【0046】
以上述べた方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを作成することができて、そのプログラムは、様々な記憶媒体に記憶される。
【符号の説明】
【0047】
1000 情報処理装置
102 画像取得部 104 画像格納部
106 メーカ特定部 108 種別選定部
110 種別選定テーブル格納部
112 IC抽出部 114 コネクタ抽出部
116 価値算出部 118 価値算出DB
120 出力部 122 処理結果格納部