(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023373
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230209BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 M
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128840
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】進藤 崇央
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
5F004AA06
5F004BA04
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB23
5F004CA03
(57)【要約】
【課題】下部電極に向けて入射するイオンのエネルギーを低減する技術を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、チャンバと下部電極と上部電極とガス供給部と高周波電源と回路部とを備える。回路部は下部電極に電位を提供するよう構成され第1の回路及び第2の回路を有している。第1の回路は整流部、キャパシタ、第1の電流路、及び第2の電流路を有している。第1の電流路では整流部が下部電極及びキャパシタの間に電気的に接続されていると共にキャパシタが該整流部及び接地の間に電気的に接続されている。第2の電流路では整流部が下部電極及び接地の間に電気的に接続されている。整流部は第1の電流路において電流をキャパシタに向けて流すと共に第2の電流路において電流を下部電極に向けて流すよう構成されている。第2の回路はキャパシタに電気的に接続されキャパシタに生じる電圧を提供するよう構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの内部に設置された基板支持部に含まれている下部電極と、
前記下部電極に対向するよう配置された上部電極と、
前記上部電極及び前記下部電極の間に処理ガスを供給するよう構成されたガス供給部と、
前記上部電極に高周波電圧を印加することによって前記処理ガスのプラズマを生成するよう構成された高周波電源と、
前記下部電極及び接地の間に電気的に接続され、該下部電極に電位を提供するよう構成された回路部と、
を備え、
前記回路部は、第1の回路及び第2の回路を有し、
前記第1の回路は、整流部、キャパシタ、第1の電流路、及び第2の電流路を有し、
前記第1の電流路及び前記第2の電流路は、何れも、前記下部電極及び接地の間に設けられ、
前記第1の電流路では、前記整流部が前記下部電極及び前記キャパシタの間に電気的に接続されていると共に前記キャパシタが該整流部及び接地の間に電気的に接続され、
前記第2の電流路では、前記整流部が前記下部電極及び接地の間に電気的に接続され、
前記整流部は、前記第1の電流路において電流を前記キャパシタに向けて流すよう構成されていると共に前記第2の電流路において電流を前記下部電極に向けて流すよう構成され、
前記第2の回路は、前記キャパシタに電気的に接続され、該キャパシタに生じる電圧を提供するよう構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記整流部は、第1の素子及び第2の素子を有し、
前記第1の素子は、前記第1の電流路において前記下部電極及び前記キャパシタの間に電気的に接続された第1のダイオードであり、
前記第2の素子は、前記第2の電流路において前記下部電極及び接地の間に電気的に接続された第2のダイオードであり、
前記第1のダイオードのカソードは前記キャパシタに電気的に接続され、該第1のダイオードのアノードは前記下部電極に電気的に接続され、
前記第2のダイオードのカソードは前記下部電極に電気的に接続され、該第2のダイオードのアノードは電気的に接地されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記整流部は、第1の素子、第2の素子、及び駆動回路を有し、該駆動回路を介して前記高周波電源に電気的に接続され、
前記第1の素子は、前記第1の電流路において前記下部電極及び前記キャパシタの間に電気的に接続された第1のスイッチング素子であり、
前記第2の素子は、前記第2の電流路において前記下部電極及び接地に電気的に接続された第2のスイッチング素子であり、
前記駆動回路は、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子に電気的に接続され、前記高周波電源から出力される高周波電圧の波形に基づいて前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子のオンオフを制御するよう構成されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子は、何れも、トランジスタである、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2の回路は、可変直流電源であり、
前記可変直流電源の正極は前記キャパシタに電気的に接続され、該可変直流電源の負極は電気的に接地されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第2の回路は、ツェナーダイオードであり、
前記ツェナーダイオードのカソードは前記キャパシタに電気的に接続され、該ツェナーダイオードのアノードは電気的に接地されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第2の回路は、ツェナーダイオード、抵抗素子、及びトランジスタを有し、
前記ツェナーダイオードのカソード及び前記トランジスタのコレクタは、前記キャパシタに電気的に接続され、
前記ツェナーダイオードのアノード及び前記トランジスタのベースは、前記抵抗素子を介して電気的に接地され、
前記トランジスタのエミッタは、電気的に接地されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第2の回路は、可変抵抗素子である、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第1の回路及び前記第2の回路の間に電気的に接続され、高周波電圧を遮蔽するよう構成された第3の回路を更に備え、
前記第3の回路は、キャパシタ及びインダクタを有し、
前記キャパシタ及び前記インダクタは、前記キャパシタ及び前記第2の回路の間に電気的に並列接続されている、
請求項1~8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記下部電極の周囲に設けられ電気的に接地されているリング電極を更に備える、
請求項1~9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板に対する処理としてプラズマ処理が多用されている。特許文献1及び特許文献2には、プラズマ生成に用いられる高周波電流の下部電極につながる電流路のインピーダンスを制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-31685号公報
【特許文献2】特開2015-124397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、下部電極に向けて入射するイオンのエネルギーを低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと下部電極と上部電極とガス供給部と高周波電源と回路部とを備える。下部電極は、チャンバの内部に設置された基板支持部に含まれている。上部電極は、下部電極に対向するよう配置されている。ガス供給部は、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するよう構成されている。高周波電源は、上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するよう構成されている。回路部は、下部電極及び接地の間に電気的に接続され、下部電極に電位を提供するよう構成されている。回路部は、第1の回路及び第2の回路を有している。第1の回路は、整流部、キャパシタ、第1の電流路、及び第2の電流路を有している。第1の電流路及び第2の電流路は、何れも、下部電極及び接地の間に設けられている。第1の電流路では、整流部が下部電極及びキャパシタの間に電気的に接続されていると共にキャパシタが整流部及び接地の間に電気的に接続されている。第2の電流路では、整流部が下部電極及び接地の間に電気的に接続されている。整流部は、第1の電流路において電流をキャパシタに向けて流すと共に第2の電流路において電流を下部電極に向けて流すよう構成されている。第2の回路は、キャパシタに電気的に接続され、キャパシタに生じる電圧を提供するよう構成されている。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、下部電極に向けて入射するイオンのエネルギーを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【
図3】
図2に示す第1の回路の一例を示す図である。
【
図4】
図2に示す第3の回路の一例を示す図である。
【
図5】
図2に示す第2の回路の一例を示す図である。
【
図6】
図2に示す回路部の効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】
図2に示す第1の回路の他の一例を示す図である。
【
図8】
図2に示す第2の回路の他の一例を示す図である。
【
図9】
図2に示す第2の回路の他の一例を示す図である。
【
図10】
図2に示す第2の回路の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと下部電極と上部電極とガス供給部と高周波電源と回路部とを備える。下部電極は、チャンバの内部に設置された基板支持部に含まれている。上部電極は、下部電極に対向するよう配置されている。ガス供給部は、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するよう構成されている。高周波電源は、上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するよう構成されている。回路部は、下部電極及び接地の間に電気的に接続され、下部電極に電位を提供するよう構成されている。回路部は、第1の回路及び第2の回路を有している。第1の回路は、整流部、キャパシタ、第1の電流路、及び第2の電流路を有している。第1の電流路及び第2の電流路は、何れも、下部電極及び接地の間に設けられている。第1の電流路では、整流部が下部電極及びキャパシタの間に電気的に接続されていると共にキャパシタが整流部及び接地の間に電気的に接続されている。第2の電流路では、整流部が下部電極及び接地の間に電気的に接続されている。整流部は、第1の電流路において電流をキャパシタに向けて流すと共に第2の電流路において電流を下部電極に向けて流すよう構成されている。第2の回路は、キャパシタに電気的に接続され、キャパシタに生じる電圧を提供するよう構成されている。
【0010】
一つの例示的実施形態によれば、下部電極の電位はキャパシタに生じる電圧によって提供され、キャパシタに生じる電圧は第2の回路によって提供される。下部電極の電位がキャパシタ及び第2の回路等を有する回路部によって調節されることによって、プラズマ処理時において下部電極を含む基板支持部を通過するRF電力が、制御される。基板支持部を通過するRF電力が制御されることによって、基板支持部に載置される基板の表面に形成されるシース電圧が制御され、これによって、プラズマ処理時に基板及び基板支持部に入射するイオンの量が制御される。したがって、イオンの量が制御されることによって、下部電極に向けて入射するイオンによって提供されるエネルギーが低減される。
【0011】
一つの例示的実施形態において、整流部は、第1の素子及び第2の素子を有している。第1の素子は、第1のダイオードであり得る。第1のダイオードは、第1の電流路において下部電極及びキャパシタの間に電気的に接続されている。第2の素子は、第2のダイオードであり得る。第2のダイオードは、第2の電流路において下部電極及び接地の間に電気的に接続されている。第1のダイオードのカソードは、キャパシタに電気的に接続されている。第1のダイオードのアノードは、下部電極に電気的に接続されている。第2のダイオードのカソードは、下部電極に電気的に接続されている。第2のダイオードのアノードは、電気的に接地されている。
【0012】
一つの例示的実施形態において、整流部は、第1の素子、第2の素子、及び駆動回路を有している。整流部は、駆動回路を介して高周波電源に電気的に接続されている。第1の素子は、第1のスイッチング素子であり得る。第1のスイッチング素子は、第1の電流路において下部電極及びキャパシタの間に電気的に接続されている。第2の素子は、第2のスイッチング素子であり得る。第2のスイッチング素子は、第2の電流路において下部電極及び接地に電気的に接続されている。駆動回路は、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子に電気的に接続されている。駆動回路は、高周波電源から出力される高周波電圧の波形に基づいて第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子のオンオフを制御するよう構成されている。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子は、何れも、トランジスタであり得る。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第2の回路は、可変直流電源であり得る。可変直流電源の正極は、キャパシタに電気的に接続されている。可変直流電源の負極は、電気的に接地されている。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第2の回路は、ツェナーダイオードであり得る。ツェナーダイオードのカソードは、キャパシタに電気的に接続されている。ツェナーダイオードのアノードは、電気的に接地されている。
【0016】
一つの例示的実施形態において、第2の回路は、ツェナーダイオード、抵抗素子、及びトランジスタを有している。ツェナーダイオードのカソード及びトランジスタのコレクタは、キャパシタに電気的に接続されている。ツェナーダイオードのアノード及びトランジスタのベースは、抵抗素子を介して電気的に接地されている。トランジスタのエミッタは、電気的に接地されている。
【0017】
一つの例示的実施形態において、第2の回路は、可変抵抗素子である。
【0018】
一つの例示的実施形態において、第3の回路を更に備える。第3の回路は、第1の回路及び第2の回路の間に電気的に接続され、高周波電圧を遮蔽するよう構成されている。第3の回路は、キャパシタ及びインダクタを有している。キャパシタ及びインダクタは、キャパシタ及び第2の回路の間に電気的に並列接続されている。
【0019】
一つの例示的実施形態において、下部電極の周囲に設けられ電気的に接地されているリング電極を更に備える。
【0020】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間を提供している。チャンバ10は、チャンバ本体12を含み得る。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。チャンバ10の内部空間は、チャンバ本体12の中に提供されている。チャンバ本体12は、アルミニウムといった金属から形成されている。チャンバ本体12は、電気的に接地されている。なお、チャンバ本体12の側壁は、基板Wが搬送される際にそこを通過する通路を提供していてもよい。また、この通路を開閉するために、ゲートバルブがチャンバ本体12の側壁に沿って設けられていてもよい。
【0021】
プラズマ処理装置1は、基板支持部14を更に備えている。基板支持部14は、チャンバ10の内部に設置されている。基板支持部14は、その上に載置される基板Wを支持するよう構成されている。基板支持部14は、本体を有している。基板支持部14の本体は、例えば窒化アルミニウムから形成されており、円盤形状を有し得る。基板支持部14は、支持部材16によって支持されていてもよい。支持部材16は、チャンバ10の底部から上方に延在している。基板支持部14は、下部電極18を含んでいる。下部電極18は、基板支持部14に含まれており、基板支持部14の本体の中に埋め込まれている。
【0022】
プラズマ処理装置1は、上部電極20を更に備えている。上部電極20は、基板支持部14の上方に設けられている。上部電極20は、下部電極18に対向するよう配置されている。上部電極20は、チャンバ10の天部を構成している。上部電極20は、チャンバ本体12と電気的に分離されている。一実施形態において、上部電極20は、絶縁部材21を介してチャンバ本体12の上部に固定されている。
【0023】
一実施形態において、上部電極20は、シャワーヘッドとして構成されている。上部電極20は、その内部においてガス拡散空間20dを提供している。また、上部電極20は、複数のガス孔20hを更に提供している。複数のガス孔20hは、ガス拡散空間20dから下方に延びており、チャンバ10の内部空間に向けて開口している。即ち、複数のガス孔20hは、ガス拡散空間20dとチャンバ10の内部空間を接続している。
【0024】
プラズマ処理装置1は、ガス供給部22を更に備えている。ガス供給部22は、チャンバ10内にガスを供給するよう構成されている。ガス供給部22は、上部電極20及び下部電極18の間に処理ガスを供給するよう構成されている。ガス供給部22は、配管23を介してガス拡散空間20dに接続されている。ガス供給部22は、一つ以上のガスソース、一つ以上の流量制御器、及び一つ以上の開閉バルブを有していてもよい。一つ以上のガスソースの各々は、対応の流量制御器及び対応の開閉バルブを介して、配管23に接続される。
【0025】
一実施形態において、ガス供給部22は、成膜ガスを供給してもよい。即ち、プラズマ処理装置1は、成膜装置であってもよい。成膜ガスを用いて基板W上に形成される膜は、絶縁膜であってもよい。別の実施形態において、ガス供給部22は、エッチングガスを供給してもよい。即ち、プラズマ処理装置1は、プラズマエッチング装置であってもよい。
【0026】
プラズマ処理装置1は、排気装置24を更に備えている。排気装置24は、自動圧力制御弁のような圧力制御器及びターボ分子ポンプ又はドライポンプのような真空ポンプを含んでいる。排気装置24は、チャンバ本体12の側壁に設けられた排気口12eから排気管を介してチャンバ10の内部空間に接続されている。
【0027】
プラズマ処理装置1は、高周波電源26を更に備えている。高周波電源26は、上部電極20に高周波電圧を印加することによって、ガス供給部22から上部電極20及び下部電極18の間に供給される処理ガスのプラズマを生成するよう構成されている。一実施形態において、高周波電源26は、高周波電力を発生する。高周波電力の周波数は、任意の周波数であってもよい。高周波電力の周波数は、13.56MHz以下であってもよい。高周波電力の周波数は、2MHz以下であってもよい。高周波電力の周波数は、20kHz以上であってもよい。
【0028】
高周波電源26は、整合器28を介して、上部電極20に接続されている。高周波電源26からの高周波電力は、整合器28を介して上部電極20に供給される。整合器28は、高周波電源26の負荷のインピーダンスを、高周波電源26の出力インピーダンスに整合させる整合回路を有している。
【0029】
別の実施形態において、高周波電源26は、直流電圧のパルスを周期的に上部電極20に印加するよう構成されていてもよい。高周波電源26からの直流電圧のパルスが上部電極20に印加される周期を規定する周波数は、例えば10kHz以上、10MHz以下である。なお、高周波電源26が直流電圧のパルスを周期的に上部電極20に印加するよう構成されている場合には、プラズマ処理装置1は整合器28を備えていなくてもよい。
【0030】
プラズマ処理装置1は、リング電極30を更に備えている。リング電極30は、環形状を有する。リング電極30は、周方向に沿って配列された複数の電極に分割されていてもよい。リング電極30は、基板支持部14の外周を囲むように、基板支持部14の周囲に設けられている。リング電極30と基板支持部14の外周との間には間隙が設けられているが、当該間隔は設けられていなくてもよい。リング電極30は、電気的に接地されている。
【0031】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、ガス供給部32を更に備えている。ガス供給部32は、リング電極30と基板支持部14との間の間隙を通って上方にパージガスが流れるようパージガスを供給する。ガス供給部32は、ガス導入ポート12pを介してチャンバ10内にパージガスを供給する。図示された例では、ガス導入ポート12pは、基板支持部14の下方においてチャンバ本体12の壁に設けられている。ガス供給部32によって供給されるパージガスは、不活性ガスであってもよく、例えば希ガスであってもよい。
【0032】
プラズマ処理装置1において基板Wに対するプラズマ処理が行われる際には、処理ガスが、ガス供給部22からチャンバ10内に供給される。そして、高周波電源26からの高周波電力又は直流電圧のパルスが上部電極20に与えられる。その結果、プラズマが、チャンバ10内で処理ガスから生成される。基板支持部14上の基板Wは、生成されたプラズマからの化学種によって処理される。例えば、プラズマからの化学種は、基板W上に膜を形成する。或いは、プラズマからの化学種は、基板Wをエッチングする。
【0033】
プラズマ処理装置1は、回路部50を更に備える。一実施形態における回路部50の構成は、
図2に示されている。
図2は、一例の回路部50を示す図である。回路部50は、下部電極18及び接地の間に電気的に接続されている。回路部50は、下部電極18に電位を提供するよう構成されている。
【0034】
回路部50は、第1の回路51、第2の回路53、及び第3の回路52を有する。第1の回路51は、整流部70、キャパシタ513、第1の電流路CL1、及び第2の電流路CL2を有する。第2の回路53は、キャパシタ513に電気的に接続されている。第2の回路53は、キャパシタ513に生じる電圧を提供するよう構成されている。第2の回路53は、単電源又はバイポーラ電源など、外部から電荷を供給する能動的な機能の装置を用いてもよく、またツェナーダイオード、固定抵抗、又は電子負荷のような受動的に電圧を制御する機能の装置を用いてもよい。
【0035】
第3の回路52は、第1の回路51及び第2の回路53の間に電気的に接続されている。第3の回路52は、高周波電圧の信号を遮蔽するよう構成されている。
【0036】
下部電極18の電位はキャパシタ513に生じる電圧によって提供され、キャパシタ513に生じる電圧は第2の回路53によって提供される。下部電極18の電位がキャパシタ513及び第2の回路53等を有する回路部50によって調節されることによって、プラズマ処理時において下部電極18を含む基板支持部14を通過するRF電力が、制御される。基板支持部14を通過するRF電力が制御されることによって、基板支持部14に載置される基板Wの表面に形成されるシース電圧が制御され、これによって、プラズマ処理時に基板W及び基板支持部14に入射するイオンの量が制御される。したがって、イオンの量が制御されることによって、下部電極18に向けて入射するイオンによって提供されるエネルギーが低減される。
【0037】
第1の電流路CL1及び第2の電流路CL2は、何れも、下部電極18及び接地の間に設けられている。下部電極18及び接地の間には、第1の電流路CL1及び第2の電流路CL2によって、二つの電流路が提供されている。第1の電流路CL1では、整流部70が下部電極18及びキャパシタ513の間に電気的に接続されている。第1の電流路CL1では、キャパシタ513が整流部70及び接地の間に電気的に接続されている。第2の電流路CL2では、整流部70が下部電極18及び接地の間に電気的に接続されている。
【0038】
整流部70は、第1の電流路CL1において電流をキャパシタ513に向けて流すよう構成されている。整流部70は、第2の電流路CL2において電流を下部電極18に向けて流すよう構成されている。
【0039】
図3は、
図2に示す第1の回路51の一例を示す図である。
図3に示す一実施形態における整流部70は、第1の素子511及び第2の素子512を有する。第1の素子511は、第1のダイオード511aであり得る。第1のダイオード511aは、第1の電流路CL1において下部電極18及びキャパシタ513の間に電気的に接続されている。第2の素子512は、第2のダイオード512aであり得る。第2のダイオード512aは、第2の電流路CL2において下部電極18及び接地の間に電気的に接続されている。第1のダイオード511aのカソードは、キャパシタ513に電気的に接続されている。第1のダイオード511aのアノードは、下部電極18に電気的に接続されている。第2のダイオード512aのカソードは、下部電極18に電気的に接続されている。第2のダイオード512aのアノードは、電気的に接地されている。第1のダイオード511a及び第2のダイオード512aを有する
図3に示す整流部70によれば、プラズマ処理時のRF電力によって下部電極18から流れる電流が好適に整流され得る。
【0040】
図4は、
図2に示す第3の回路52の一例を示す図である。
図4に示す一実施形態における第3の回路52は、キャパシタ521及びインダクタ522を有している。キャパシタ521及びインダクタ522は、キャパシタ513及び第2の回路53の間に電気的に並列接続されている。これにより、第3の回路52は、第1の回路51及び第2の回路53の間を伝搬する高周波電圧の信号を遮蔽し得る。
【0041】
図5は、
図2に示す第2の回路53の一例を示す図である。
図5に示す一実施形態における第2の回路53は、可変直流電源53aである。可変直流電源53aの正極は、キャパシタ513に電気的に接続されている。可変直流電源53aの負極は、電気的に接地されている。
図5に示す可変直流電源53aは、キャパシタ513に好適に電圧を提供し得る。
【0042】
図6を参照して、回路部50によって下部電極18の電位が調整されることによる効果について説明する。
図6に係る以下の説明は、
図7~
図10に示す第1の回路51及び第2の回路53の他の構成においても、同様である。
【0043】
図6の横軸は、時間(us)を表している。
図6の縦軸は、基板支持部14に載置された基板Wの表面に形成されるシース電圧(V)を表している。
図6に示す結果(波形G1、波形G2、及び波形G3)はシミュレーションによって得られたものである。波形G1は、キャパシタ513によって下部電極18に提供される電圧が0(V)の場合に生じるシース電圧の波形を表している。波形G2は、キャパシタ513によって下部電極18に提供される電圧が150(V)の場合に生じるシース電圧の波形を表している。波形G3は、キャパシタ513によって下部電極18に提供される電圧が600(V)の場合に生じるシース電圧の波形を表している。
【0044】
図6を参照すると、基板支持部14に載置された基板Wの表面に形成されるシース電圧は、下部電極18に提供されるキャパシタ513の電圧が少なくとも0(V)から600(V)に向けて高くなるほど、低減されることがわかる。従って、キャパシタ513の電位が高くなるほど、プラズマ処理時に基板W及び基板支持部14に入射するイオンの量が抑制される。このように、キャパシタ513に生じる電圧を制御することによって、プラズマ処理時に基板W及び基板支持部14に入射するイオンの量を制御し得る。したがって、イオンの量が制御されることによって、下部電極18に向けて入射するイオンによって提供されるエネルギーが低減される。
【0045】
以下、
図7~
図10を参照して、プラズマ処理装置1が有し得る第1の回路51及び第2の回路53の他の構成について説明する。
【0046】
図7は、
図2に示す第1の回路51の他の一例を示す図である。
図7に示す一実施形態における整流部70は、第1の素子511、第2の素子512、検出回路60、及び駆動回路61を有し得る。整流部70は、駆動回路61、検出回路60を介して高周波電源26に電気的に接続されている。第1の素子511は、第1の電流路CL1において下部電極18及びキャパシタ513の間に電気的に接続された第1のスイッチング素子511bであり得る。第2の素子512は、第2の電流路CL2において下部電極18及び接地に電気的に接続された第2のスイッチング素子512bであり得る。第1のスイッチング素子511b及び第2のスイッチング素子512bは、何れも、トランジスタであり得る。
【0047】
検出回路60は、高周波電源26から出力される高周波電圧の波形を検出する電圧プローブであり得る。例えば、より具体的に、検出回路60は、高周波電源26から出力される高周波電圧が、振動中心の0(V)からプラス側にあるか、マイナス側にあるか、を検出し得る。検出回路60は、この検出結果を示す検出信号を駆動回路61に出力する。
【0048】
駆動回路61は、第1のスイッチング素子511b及び第2のスイッチング素子512bに電気的に接続されている。駆動回路61は、高周波電源26から出力される高周波電圧の波形に基づいて第1のスイッチング素子511b及び第2のスイッチング素子512bのオンオフを制御するよう構成されている。より具体的に、駆動回路61は、駆動回路61から出力される上記の検出信号に応じて、第1のスイッチング素子511b及び第2のスイッチング素子512bのそれぞれにオンオフを指示する信号を出力する。従って、
図7に示す整流部70でも、第1のダイオード511a及び第2のダイオード512aを有する
図3に示す整流部70と同様に、下部電極18から流れる電流を好適に整流し得る。なお、検出回路60は、駆動回路61に含まれてもよいし、
図7に示すように駆動回路61とは別体であってもよい。
【0049】
図8は、
図2に示す第2の回路53の他の一例を示す図である。
図8に示す一実施形態における第2の回路53は、ツェナーダイオード53bであり得る。ツェナーダイオード53bのカソードは、キャパシタ513に電気的に接続されている。ツェナーダイオード53bのアノードは、電気的に接地されている。ツェナーダイオード53bを有する
図8に示す第2の回路53でも、キャパシタ513に電圧を好適に提供し得る。
【0050】
図9は、
図2に示す第2の回路53の他の一例を示す図である。
図9に示す一実施形態における第2の回路53は、ツェナーダイオード53c、抵抗素子53d、及びトランジスタ53eを有し得る。ツェナーダイオード53cのカソード及びトランジスタ53eのコレクタは、キャパシタ513に電気的に接続されている。ツェナーダイオード53cのアノード及びトランジスタ53eのベースは、抵抗素子53dを介して電気的に接地されている。トランジスタ53eのエミッタは、電気的に接地されている。ツェナーダイオード53c、抵抗素子53d、及びトランジスタ53eを有する
図9に示す第2の回路53でも、
図8に示す第2の回路53と同様に、キャパシタ513に好適に電圧を提供し得る。
【0051】
図10は、
図2に示す第2の回路53の他の一例を示す図である。
図10に示す一実施形態における第2の回路53は、可変抵抗素子53fであり得る。
図10に示す可変抵抗素子53fの第2の回路53でも、
図8及び
図9に示す第2の回路53と同様に、キャパシタ513に好適に電圧を提供し得る。なお、可変抵抗素子53fに代えて、可変抵抗を電子制御する装置である電子負荷を用いても良い。
【0052】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0053】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0054】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、12e…排気口、12p…ガス導入ポート、14…基板支持部、16…支持部材、18…下部電極、20…上部電極、22…ガス供給部、26…高周波電源、30…リング電極、32…ガス供給部、50…回路部、51…第1の回路、511…第1の素子、511a…第1のダイオード、511b…第1のスイッチング素子、512…第2の素子、512a…第2のダイオード、512b…第2のスイッチング素子、513…キャパシタ、52…第3の回路、521…キャパシタ、522…インダクタ、53…第2の回路、53a…可変直流電源、53b…ツェナーダイオード、53c…ツェナーダイオード、53d…抵抗素子、53e…トランジスタ、53f…可変抵抗素子、60…検出回路、61…駆動回路、70…整流部、CL1…第1の電流路、CL2…第2の電流路、W…基板。