IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-排ガス処理装置 図1
  • 特開-排ガス処理装置 図2
  • 特開-排ガス処理装置 図3
  • 特開-排ガス処理装置 図4
  • 特開-排ガス処理装置 図5
  • 特開-排ガス処理装置 図6
  • 特開-排ガス処理装置 図7
  • 特開-排ガス処理装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002338
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20221227BHJP
   B01D 53/74 20060101ALI20221227BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20221227BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20221227BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20221227BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20221227BHJP
   F23J 15/04 20060101ALI20221227BHJP
   F23J 15/06 20060101ALI20221227BHJP
   F23J 15/08 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B01D53/38 ZAB
B01D53/74
B01D53/75
B01D53/78
B01D53/18 150
F23G7/06 B
F23J15/04
F23J15/06
F23J15/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103522
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】川端 宏文
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和信
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 信昭
(72)【発明者】
【氏名】関田 誠
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐輔
【テーマコード(参考)】
3K070
3K078
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
3K070DA05
3K070DA36
3K070DA37
3K070DA52
3K078AA06
3K078BA05
3K078BA26
4D002AA22
4D002AA26
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA05
4D002BA13
4D002BA16
4D002CA01
4D002CA07
4D002CA13
4D002DA35
4D002EA02
4D002EA05
4D002GA01
4D002GB20
4D020BA23
4D020BB03
4D020CB08
4D020CB25
4D020CC30
4D020CD01
4D020DA03
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】小さい設置面積かつ省エネルギーで排ガスを分解できる排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置は、排ガスを加熱分解処理する反応部11と、前記反応部11の下流側に接続され、前記反応部11から排出される高温ガスを接触によって冷却処理する冷却水を貯留した冷却水槽であるタンク部12と、前記タンク部12の下流側に接続され、加熱分解処理後の排ガスを洗浄してガス中に含まれる水溶性成分を水に溶解させるスクラバ部13とを有し、前記反応部11は、ポンプ10の出口10aに接続される排ガス導入管14と、前記排ガス導入管14から供給される前記排ガスを加熱分解処理する分解管15と、前記分解管15において生じた生成物を前記タンク部12に排気する排気管16とを備えており、前記分解管15の軸線が、傾斜しているか水平方向に延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプから排出される排ガスを加熱分解処理する反応部と、前記反応部の下流側に接続され、前記反応部から排出される高温ガスを接触によって冷却処理する冷却水を貯留したタンク部と、前記タンク部の下流側に接続され、前記加熱分解処理後の排ガスを洗浄してガス中に含まれる水溶性成分を水に溶解させるスクラバ部と、を有する排ガス処理装置であって、
前記反応部は、ポンプの出口に接続される排ガス導入管と、前記排ガス導入管から供給される前記排ガスを加熱分解処理する分解管と、前記分解管において生じた生成物を前記タンク部に排気する排気管とを備えており、
前記分解管の軸線が、傾斜していることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
ポンプから排出される排ガスを加熱分解処理する反応部と、前記反応部の下流側に接続され、前記反応部から排出される高温ガスを接触によって冷却処理する冷却水を貯留したタンク部と、前記タンク部の下流側に接続され、前記加熱分解処理後の排ガスを洗浄してガス中に含まれる水溶性成分を水に溶解させるスクラバ部と、を有する排ガス処理装置であって、
前記反応部は、ポンプの出口に接続される排ガス導入管と、前記排ガス導入管から供給される前記排ガスを加熱分解処理する分解管と、前記分解管において生じた生成物を前記タンク部に排気する排気管とを備えており、
前記分解管の軸線が、水平方向に延びていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
前記ポンプに前記排ガス導入管が接続された状態において、前記ポンプの出口と前記分解管の入口の高さが同じであることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
一つの前記タンク部に前記反応部が複数接続されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記排気管の出口は、前記タンク部内の水面よりも下に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記反応部が内筒と外筒からなる二重筒構造であって、前記内筒の内壁を洗浄する内筒自動洗浄機構が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記タンク部は、中間高さまで冷却水を貯留する冷却水槽と、該冷却水槽の上部に設けられ、前記スクラバ部が接続される排気口と、前記冷却水槽の底部から立設して前記排気管の周囲を囲む筒状のオーバーフロー管とを備え、
前記排気管は、下端部が前記冷却水槽内の冷却水中に鉛直方向に挿入されるとともに、前記冷却水の水面より上方に、内周壁に沿って冷却水を流下させる冷却水導入部を備え、
前記オーバーフロー管は、外部から内部に向かって冷却水が流入する冷却水流入部が下部に設けられるとともに、前記排気管から冷却水中に導入された排ガスの気泡に同伴されて上昇する冷却水が前記オーバーフロー管の上端から外部に流出可能な高さに設定され、
前記排気管と前記オーバーフロー管との間に、前記排気管から冷却水中に導入された排ガスにより発生する気泡を分散させるための気泡分散材を設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記タンク部の冷却水中への前記排気管の挿入量が65mm以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の排ガス処理装置。
【請求項9】
前記排ガスは、電子デバイス製造装置の反応チャンバから排出されるものであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置に関し、詳しくは、半導体などの各種電子デバイス製造装置から排出される有害成分を含む排ガスの処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体などの各種電子デバイス製造装置において、ケイ素を含むプロセスガスや、フッ素を含むクリーニングガスが利用されている。当該プロセスガス及びクリーニングガス(以下、排ガスという)は有害成分を含むため、ポンプを介して排ガス処理装置に送られ無害化される。そのような無害化を行う排ガス処理装置として、特許文献1に示される装置(除害装置)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-93792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような従来の排ガス処理装置50は、図5に示されるように、加熱部53が鉛直方向を向いていたため、ポンプ51の出口と加熱部53の入口が離れていた。このため、ポンプ51と加熱部53を接続する排ガス導入管52が長くなり、その途中で必要に応じて屈曲部が設けられていた。
【0005】
上記のように排ガス導入管52が長くなる場合、排ガスが管の途中で冷却されて粉体が生成し、管内に当該粉体が堆積してしまうことがある。特に管の屈曲部において粉体が堆積しやすい。粉体の堆積は管の閉塞の原因となるため、これを防止する必要がある。そのために、従来の排ガス処理装置は、管全体をヒーター等によって加熱し、上記粉体が生成するのを防止していた。その結果、装置全体として、排ガスの分解に直接寄与しないエネルギーを消費していた。
【0006】
また、排ガス導入管52が長くなる場合、管途中でのガス漏れによる爆発のリスクが高くなる。この爆発を防止するために、排ガスを窒素ガス等の希釈ガスで希釈する必要がある。しかし、その一方で、排ガスを希釈することによって当該排ガスの分解が進行しにくくなってしまう。このため、従来の排ガス処理装置は、加熱部分を大型にしてガスの分解性能を上げる必要があった。その結果、装置全体が大型になるだけでなく、排ガスの分解に直接寄与しないエネルギーを消費していた。
【0007】
さらに、ガスでの希釈を行うと、希釈された排ガスは温度が低下するため、管内で粉体が生成しやすくなる。これを防ぐためにも希釈するためのガスを加温する必要があり、そのための加熱装置が別途必要でもあった。
【0008】
以上の点に鑑みて、本発明は、コンパクトかつ省エネルギーな排ガス処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、ポンプから排出される排ガスを加熱分解処理する反応部と、前記反応部の下流側に接続され、前記反応部から排出される高温ガスを接触によって冷却処理する冷却水を貯留したタンク部と、前記タンク部の下流側に接続され、前記加熱分解処理後の排ガスを洗浄してガス中に含まれる水溶性成分を水に溶解させるスクラバ部と、を有する排ガス処理装置であって、前記反応部は、ポンプの出口に接続される排ガス導入管と、前記排ガス導入管から供給される前記排ガスを加熱分解処理する分解管と、前記分解管において生じた生成物を前記タンク部に排気する排気管とを備えており、前記分解管の軸線が、傾斜していることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の第2の発明は、ポンプから排出される排ガスを加熱分解処理する反応部と、前記反応部の下流側に接続され、前記反応部から排出される高温ガスを接触によって冷却処理する冷却水を貯留したタンク部と、前記タンク部の下流側に接続され、前記加熱分解処理後の排ガスを洗浄してガス中に含まれる水溶性成分を水に溶解させるスクラバ部と、を有する排ガス処理装置であって、前記反応部は、ポンプの出口に接続される排ガス導入管と、前記排ガス導入管から供給される前記排ガスを加熱分解処理する分解管と、前記分解管において生じた生成物を前記タンク部に排気する排気管とを備えており、前記分解管の軸線が、水平方向に延びていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の第3の発明は、前記ポンプに前記排ガス導入管が接続された状態において、前記ポンプの出口と前記分解管の入口の高さが同じであることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の第4の発明は、一つの前記タンク部に前記反応部が複数接続されることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の第5の発明は、前記排気管の出口は、前記タンク部内の水面よりも下に位置することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の第6の発明は、前記反応部が内筒と外筒からなる二重筒構造であって、前記内筒を洗浄する内筒自動洗浄機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の第7の発明は、前記タンク部は、中間高さまで冷却水を貯留する冷却水槽と、該冷却水槽の上部に設けられ、前記スクラバ部が接続される排気口と、前記冷却水槽の底部から立設して前記排気管の周囲を囲む筒状のオーバーフロー管とを備え、前記排気管は、下端部が前記冷却水槽内の冷却水中に鉛直方向に挿入されるとともに、前記冷却水の水面より上方に、内周壁に沿って冷却水を流下させる冷却水導入部を備え、前記オーバーフロー管は、外部から内部に向かって冷却水が流入する冷却水流入部が下部に設けられるとともに、前記排気管から冷却水中に導入された排ガスの気泡に同伴されて上昇する冷却水が前記オーバーフロー管の上端から外部に流出可能な高さに設定され、前記排気管と前記オーバーフロー管との間に、前記排気管から冷却水中に導入された排ガスにより発生する気泡を分散させるための気泡分散材を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の第8の発明は、前記タンク部の冷却水中への前記排気管の挿入量が65mm以上であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の第9の発明は、前記排ガスは、電子デバイス製造装置の反応チャンバから排出されるものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、分解管の入口とポンプの出口が接近する為、両者をつなぐ排ガス導入管を従来よりも短くすることができる。また、それに伴って、排ガスの漏洩リスクが小さくなるため、希釈するための窒素ガスを減らすことができ、加熱部分の分解性能を大きくする必要がない。よって、装置を小型化できるとともに、少ないエネルギーで排ガスを分解することができる。また、排ガス導入管を短くできるので、排ガスの温度が低下しにくくなり、加熱に要するエネルギーも抑制できる。
【0019】
第2の発明によれば、分解管の入口とポンプの出口が向き合うため、排ガス導入管を大きく曲げる必要がなくなり、全長を従来よりも短くできる。よって、排ガス導入管を加熱するエネルギーを抑制できる。また、排ガスを希釈するための窒素ガスを低減できるので、排ガスの分解に直接寄与しないエネルギーを抑制できる。
【0020】
第3の発明によれば、排ガス導入管が直線状となり、屈曲部がないため、管内部での粉体の滞留が生じにくい。また、排ガス導入管を直線状として管の全長を短くすることができるので、排ガス導入管を加熱するエネルギーを抑制できる。
【0021】
第4の発明によれば、複数の反応部からの排ガスを1つのタンク部で冷却できて、装置全体がコンパクトになる。
【0022】
第5の発明によれば、排ガスを効率よく冷却でき、粉体の捕捉などを行うこともできる。また、装置全体の高さを低くすることができ、排気管を短くすることができる。
【0023】
第6の発明によれば、加熱分解処理によって生じ、反応部内に堆積した粉体を効率よく除去することができる。
【0024】
第7の発明によれば、排気管から冷却水中に排ガスを直接導入して両者を接触させることによって排ガスを冷却するので、排ガスの冷却段階で冷却水を噴出するスプレーや冷却水圧送装置が不要になるだけでなく、スプレーした冷却水と排ガスとの接触・滞留時間を稼ぐための冷却部構造が不要となることから、装置の小型化を図ることができ、設備コストや運転コストの削減を図れる。
【0025】
第8の発明によれば、排ガスを効率よく冷却できる。また、簡単な構造で、従来のスプレー式の冷却設備と同等の冷却能力を得ることができる。さらに、タンク部に、耐食性を有し、安価な素材として一般的にタンク素材として用いられている耐熱性硬質ポリ塩化ビニル(耐熱温度90℃)を使用することが可能となり、設備コストの削減を図ることができる。
【0026】
第9の発明によれば、設置面積が小さくてコンパクトかつ省エネルギーで排ガスを分解できる、電子デバイス製造装置の反応チャンバからの排ガスを処理する排ガス処理装置を提供することができる。
【0027】
これら本発明によれば、設置面積が小さくてコンパクトかつ省エネルギーで排ガスを分解できる排ガス処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)の排ガス処理装置を示す図である。
図2】本発明の別の実施形態(第2実施形態)の排ガス処理装置を示す図である。
図3】本発明のさらに別の実施形態(第3実施形態)の排ガス処理装置の平面図である。
図4】本発明のさらに別の実施形態(第4実施形態)の排ガス処理装置を示す図である。
図5】従来の排ガス処理装置を示す図である。
図6】上記第1実施形態の排ガス処理装置の変形例を示す図である。
図7】上記第2実施形態の排ガス処理装置の変形例を示す図である。
図8】上記第1実施形態におけるタンク部の冷却水中への排気管の挿入量(水深)とタンク部で冷却処理されて排出される排気ガスの温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明を適用した一実施形態(第1実施形態)である排ガス処理装置を示している。半導体などの各種電子デバイス製造装置において、反応チャンバから排ガスが発生する。発生した排ガスは、有害成分を処理するために、まずポンプ10に送られる。上記第1実施形態に示す排ガス処理装置1は、上記ポンプ10から送られてくる前記排ガス中の有害成分を加熱分解処理によって無害化するものであり、図1に示すように、反応部11、タンク部12、スクラバ部13を備える。
【0030】
反応部11は、前記ポンプ10を介して送られてきた前記排ガスを加熱分解処理するものであって、排ガス導入管14、分解管15、排気管16を備える。
【0031】
排ガス導入管14は排ガスを後述する分解管15へ送る金属製の管であり、一方の端部がポンプ10の出口10aに接続されており、他方の端部が分解管15の入口に接続されている。当該排ガス導入管14の外周には、排ガスの温度を下降させないための加熱装置(ヒーター)が設けられてもよい。
【0032】
分解管15は、前記排ガス導入管14から送られてきた排ガス中の有害成分を加熱分解処理するものであって、内筒と外筒からなる二重筒構造を有し、内筒の内部にバーナー(図示せず)を備える。当該バーナーには、燃料供給管と支燃性流体供給管と排ガス導入管14とが同一軸線上に同心円状に配置されており、燃料供給管から供給される燃料が支燃性流体供給管から供給される支燃性流体と混合されて燃焼する時に、排ガス導入管14から供給される排ガスが加熱分解処理される。処理された排ガスは、後述する排気管16へと送られる。
【0033】
ここで、上記分解管15は、その軸線が、当該分解管15の入口が前記ポンプ10の出口10aの方を向いて、鉛直方向に対してポンプ10の出口10a側(スクラバ部13の反対側)に角度αだけ傾斜している。当該傾斜角度αの下限は、例えば30°以上が好ましく、45°以上がさらに望ましい。当該傾斜角度αの上限は、例えば90°以下が好ましい。このような態様とすることで、排ガス導入管14の全長を短くすることができるので、排ガス導入管14を加熱するためのエネルギーを低減することができる。さらに、排ガス導入管14の全長が短くなることで、希釈用の窒素ガスを削減することができるので、排ガスの分解に直接寄与しないエネルギーを削減できる。
【0034】
排気管16は、前記分解管15の下流側に位置する配管であり、分解管15での加熱分解処理の際に生じたガスや粉体を、後述するタンク部12へ排出する。また当該排気管16は、下端部が前記タンク部12の冷却水槽内の冷却水中に鉛直方向に挿入されるとともに、当該冷却水の水面より上方に、内周壁に沿って冷却水を流下させる冷却水導入部20を備えている。
【0035】
タンク部12は、前記反応部11の下流側に設けられる、内部に密閉状態で中間高さまで冷却水が貯留された冷却水槽であり、上部に後述するスクラバ部13が接続される排気口を備え、底部に当該底部から立設して前記排気管16の周囲を囲む筒状のオーバーフロー管17を備えている。当該オーバーフロー管17は、外部から内部に向かって冷却水が流入する冷却水流入部18が下部に設けられるとともに、前記排気管16から冷却水中に導入された排ガスの気泡に同伴されて上昇する冷却水が前記オーバーフロー管17の上端から外部に流出可能な高さに設定されている。これにより、タンク部12内の冷却水は、下部の冷却水流入部18からオーバーフロー管17の内部に流入し、オーバーフロー管17の上部から流出する循環流を形成する。
【0036】
また、前記排気管16と前記オーバーフロー管17との間には、前記排気管16から冷却水中に導入された排ガスにより発生する気泡を分散させるための気泡分散材19が設けられている。当該気泡分散材19が設けられることで、上昇する大きな気泡を分散させて小さな気泡とし、圧力変動を小さくできるほか、冷却水と排ガスとの接触効率を高めて冷却効率の向上を図ることができる。
【0037】
排気管16における冷却水の水面より上方のタンク部12内部には、前記排気管16の内周壁に沿って冷却水を流下させる冷却水導入部20を備えている。この冷却水導入部20は、前記排気管16を、上端が冷却水槽12の天板21に固着された大径管部22と、下端が冷却水中に挿入された小径管部23とによる二重管構造とし、小径管部23の上端を前記大径管部22の下端部に設けた底板24を貫通させて大径管部22の上下方向中間位置まで突出させ、大径管部22の内周と小径管部23の外周との間の底板24の部分に水溜部25を形成するとともに、当該水溜部25に補給用の冷却水を供給する冷却水供給管26を設けている。
【0038】
前記冷却水供給管26から水溜部25に供給された補給用の冷却水は、小径管部23の上端を超えて小径管部23内に流入し、小径管部23の内周面に沿って濡れ壁を形成して流下する。これにより、排ガスと冷却水との接触時間を長くすることができ、排ガスを効果的に冷却することができるため、排気管16が冷却水の水面下に浸漬する長さ(排気管16の挿入量)を最小化することができる。排気管16の水面下への浸漬長さは当該浸漬部分の前後の圧力損失の大きさとなるため、この構造により高い冷却効率を維持しつつ圧力損失を抑えることが可能となり、後の排気経路内に設けられる吸引設備の負荷を小さくすることができる。さらに、この濡れ壁構造は、分解管15よりも下流側に配置されているため、分解管15でのエネルギーロスを生じさせるものとはならない。
【0039】
上記タンク部12において、排気管16から排出されるガスは冷却水に接触して冷却され、排気管16から排出される粉体(生成物)は冷却水により捕捉される。この際に、排気管16の出口が冷却水の水面よりも下に位置していることで、排出されるガスや粉体が冷却水に直接接触することになり、ガスの冷却や粉体の捕捉が効率的に行われる。なお、図示は省略するが、タンク部12には、冷却水の貯留量を一定に保ちながら新たな冷却水を導入して水を取り替えるための給水経路及び排水経路が設けられている。
【0040】
スクラバ部13は、前記タンク部12の上部に設けられており、内部に充填材27を充填するとともに、当該充填材27の上方にスプレーノズル28を設けたものである。当該スクラバ部13では、前記タンク部12の冷却水で冷却されたガス中の不純物を充填材27によって捕捉した後、スプレーノズル28から散水される洗浄水によってガスを洗浄して水溶性成分を除去する。不純物や水溶性成分が除去された排ガスは無害化されているので、ミストキャッチャー29を通過させて水分を除去した後に、スクラバ部13上部の排気経路から安全に排出することができる。
【0041】
図2は、本発明を適用した別の実施形態(第2実施形態)である排ガス処理装置を示している。当該第2実施形態における排ガス処理装置は、前記第1実施形態における分解管15の傾斜角度αが90°である場合を示しており、前記分解管15の軸線が水平方向に延びる態様となっている。その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0042】
上記第2実施形態の排ガス処理装置は、分解管15の軸線が水平方向に延びていることで、ポンプ10の出口10aと分解管15の入口が向き合うため、排ガス導入管14を大きく曲げる必要がなくなり、全長を従来よりも短くできる。そのため、排ガス導入管14を加熱するエネルギーを抑制できる。また、排ガスを希釈するための窒素ガスを低減できるので、排ガスの分解に直接寄与しないエネルギーを抑制できる。このとき、前記ポンプ10の出口10aと前記分解管15の入口の設置面Gからの高さが同じであると、排ガス導入管14に屈曲部が設けられず、直線状の管となり、管中での粉体の滞留が生じにくくなるので、より好ましい。
【0043】
また、前記ポンプ10の出口10aと前記分解管15の入口の設置面Gからの高さが異なる場合は、図6図7に変形例として示すように、排ガス処理装置1とポンプ10の両方又はいずれか一方を架台Dに乗せて高さを同じにすることもできる。
【0044】
図3は、本発明を適用したさらに別の実施形態(第3実施形態)である排ガス処理装置を示している。当該第3実施形態における排ガス処理装置は、複数の排ガス処理装置の反応部11が一つのタンク部12に接続されている点で、先の実施形態の排ガス処理装置と相違する。その他の構成は、前記第1実施形態と同様であり、複数の分解管15は各ポンプ10の出口側に傾斜しているが、複数台のポンプ10はタンク部12の側部に配置されている。前記第1実施形態ではポンプ10、タンク部12、スクラバ部13が一直線上に並んでいたのに対して、本形態では、ポンプ10とスクラバ部13とが一直線上に並ばないような位置関係になっている。
【0045】
前記第1実施形態において示したように、本発明の排ガス処理装置は、窒素ガスの希釈量を減らすことができるので、加熱分解処理後の排ガス量を少なくできる上に、排ガスの分解に直接寄与しないエネルギーを削減できる。そのため、当該第3実施形態に示されるように、一つのタンク部で、複数の反応部から排出される加熱分解処理後の排ガスを冷却することができるようになる。このような態様とすることで、排ガスの処理量を多くしつつ、全体としてコンパクトな排ガス処理装置を提供できる。なお、図3においては、一つのタンク部に3つの排ガス処理装置が接続されている態様を示しているが、接続される排ガス処理装置の数は、排ガスを冷却水によって冷却可能な限りにおいて、2つでも4つ以上でも構わない。
【0046】
図4は、本発明を適用したさらに別の実施形態(第4実施形態)である排ガス処理装置を示している。当該第4実施形態における排ガス処理装置は、反応部11の内部に内筒自動洗浄機構が設けられている点で、前記第1実施形態の排ガス処理装置と相違する。その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0047】
上記第4実施形態において設けられる内筒自動洗浄機構とは、前記分解管15が内筒30と外筒31とからなる二重筒構造であって、前記内筒30が内壁32と外壁33とから構成される場合に、排ガスの加熱分解処理によって生じた粉体が内筒30の内部に堆積することを防止するために、当該内筒30の内部を自動的に洗浄して粉体を除去する機構である。
【0048】
当該内筒自動洗浄機構は、内筒30の内部に堆積した粉体を除去するために、粉体除去用ガスを噴射する経路を備えている。当該経路は、外部の粉体除去用ガス源(図示せず)から、外筒31の貫通口34、内筒30の外壁33に設けられた粉体除去用ガス導入口35を介して、内筒30の内部へと通じている。当該経路を通じて内筒30の内部に粉体除去用ガスが噴出されると、内筒30の内壁32がガイドの役割を果たすことで、前記粉体除去用ガスが内筒30の内部に沿って勢いよく流れ、堆積された粉体をガスの風圧によって剥離、除去することができる。除去された粉体は、タンク部12へ排出され、当該タンク部12内部の冷却水によって捕捉される。
【0049】
なお、前記粉体除去用ガス導入口35は、内筒30の軸方向の同一断面において、円周方向に等間隔で複数設けられて、内壁32の内面全体から粉体が効率良く除去されるようになっているのが好ましい。また、粉体除去用ガスは、粉体を内筒の内面から風圧により剥離できればどのような種類のものでもよく、好適には窒素ガスやドライエアー等が用いられる。その供給圧力は例えば0.2~0.5MPa程度である。
【0050】
次に、上記第1実施形態に示す構成の排ガス処理装置を使用して、タンク部12の冷却水中への排気管16の挿入量(先端の水深)を変化させ、水深に対する処理ガスの冷却効果の変化を測定した。排ガスは、分解管15に燃料と支燃性ガスとを供給して燃焼させることにより、発生熱量が250kcal/min、ガス流量が1m/minの処理ガスを発生させた。タンク部12内の冷却水は、水替え量を5L/minに設定した。そして、当該冷却水への排気管16の挿入量を65mm,90mm,115mm,135mmに設定して、タンク部12の排気口から排出された処理ガス(排気ガス)の温度をそれぞれ測定した。
【0051】
その結果を図8に三角印で示す。当該図8における破線Aは、蒸発潜熱のみを利用した場合の冷却温度理論値である。この結果から、冷却水中への排気管16の挿入量を65mm以上にすることで、十分な冷却効果を発揮することができ、90mm以上にすることによって理論値と同等の冷却能力を確保できることがわかる。したがって、簡単な構造で、保守の面倒もない構成の排ガス処理装置で、従来のスプレー式の冷却設備と同等の冷却能力を得ることができる。また、タンク部12に、耐食性を有し、安価な素材として一般的にタンク素材として用いられている耐熱性硬質ポリ塩化ビニル(耐熱温度90℃)を使用することが可能となり、設備コストの低減を図ることができる。
【0052】
なお、上記各実施形態において、気泡分散材19は必須の構成ではなく、排ガスにより発生する気泡が十分分散しているのであれば、設けられていなくてもよい。また、上記各実施形態において、排ガスの加熱分解処理をバーナーによる方法によって行っているが、当該加熱分解処理はバーナーによる方法のみに限られず、プラズマによる方法やヒーターによる方法などを採用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1・・・排ガス処理装置、10・・・ポンプ、10a・・・ポンプの出口、11・・・反応部、12・・・タンク部、13・・・スクラバ部、14・・・排ガス導入管、15・・・分解管、16・・・排気管、17・・・オーバーフロー管、18・・・冷却水流入部、19・・・気泡分散材、20・・・冷却水導入部、21・・・天板、22・・・大径管部、23・・・小径管部、24・・・底板、25・・・水溜部、26・・・冷却水供給管、27・・・充填材、28・・・スプレーノズル、29・・・ミストキャッチャー、30・・・内筒、31・・・外筒、32・・・内壁、33・・・外壁、34・・・貫通口、35・・・粉体除去用ガス導入口、50・・・排ガス処理装置、51・・・ポンプ、52・・・排ガス導入管、53・・・加熱部、D・・・架台、G・・・設置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8