(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023403
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230209BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/00 398
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128915
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】中山 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 崇彦
(72)【発明者】
【氏名】梶田 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】平野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大野 築
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】松村 恭平
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033BA31
2H033CA06
2H033CA07
2H033CA23
2H033CA24
2H270KA46
2H270LA01
2H270LA70
2H270MA35
2H270MB27
2H270MB31
2H270MB39
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】並列接続されるヒータの数が多い場合にも、コストの上昇を抑えてヒータの断線を検出する。
【解決手段】画像形成装置は、記録媒体への画像の定着に使用する並列に接続された複数のヒータと、前記複数のヒータに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、前記複数のヒータのうち、所定数の第1ヒータに近接する位置に配置される温度検出手段と、前記複数のヒータのうち、前記第1ヒータを除く所定数の第2ヒータに接続され、前記所定数の第2ヒータを流れる電流を検出する電流検出手段と、前記温度検出手段が検出する温度に基づいて前記第1ヒータの断線を判断し、前記電流検出手段が検出する電流に基づいて前記所定数の第2ヒータの断線を判断する故障判断部と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体への画像の定着に使用する並列に接続された複数のヒータと、
前記複数のヒータに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、
前記複数のヒータのうち、所定数の第1ヒータに近接する位置に配置される温度検出手段と、
前記複数のヒータのうち、前記第1ヒータを除く所定数の第2ヒータに接続され、前記所定数の第2ヒータを流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記温度検出手段が検出する温度に基づいて前記第1ヒータの断線を判断し、前記電流検出手段が検出する電流に基づいて前記所定数の第2ヒータの断線を判断する故障判断部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1ヒータを前記電流検出手段に接続するスイッチを備え、
前記故障判断部は、前記電流検出手段が検出する電流に基づいて前記第2ヒータの断線を判断する場合、前記スイッチをオフすること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記所定数の第2ヒータを各々含む複数の第2ヒータ群と、
前記複数の第2ヒータ群を前記電流検出手段にそれぞれ接続する複数のスイッチを備え、
前記故障判断部は、前記複数のスイッチを1つずつオンし、前記電流検出手段が検出する電流に基づいて、オンしたスイッチに接続された前記第2ヒータ群の断線を判断する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記故障判断部が断線を判断するために前記電流検出手段に接続する前記第2ヒータの数は、前記電圧検出手段の検出ばらつき、前記電流検出手段の検出ばらつき、および前記複数の第2ヒータのヒータ容量のばらつきの最悪条件の組み合わせにおいて、前記電流検出手段が検出する電流により、前記第2ヒータの1本の断線時と前記第2ヒータの正常時とを判別可能な数であること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記故障判断部は、前記第2ヒータの断線を判断するために前記電流検出手段が検出した電流値が過電流を示す場合、前記第2ヒータの高温異常を判断すること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
記録媒体への画像の定着に使用する並列に接続された複数のヒータと、前記複数のヒータに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、前記複数のヒータのうち、所定数の第1ヒータに近接する位置に配置される温度検出手段と、前記複数のヒータのうち、前記第1ヒータを除く所定数の第2ヒータに接続され、前記所定数の第2ヒータを流れる電流を検出する電流検出手段と、を備えた画像形成装置の制御方法であって、
前記温度検出手段が検出する温度に基づいて前記第1ヒータの断線を判断し、
前記電流検出手段が検出する電流に基づいて前記所定数の第2ヒータの断線を判断すること
を特徴とする画像形成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、トナー像を転写紙等の記録媒体に転写した後、複数のヒータが並列に接続される定着装置により転写紙上にトナー像を定着させる。例えば、ヒータを流れる電流値を検出することで、ヒータの断線等の故障を検出する手法が知られている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ヒータの容量およびヒータを流れる電流を検出する電流検出器の検出精度には、ばらつきがあるため、ヒータの並列接続数が多い場合、ヒータを流れる電流によりヒータの断線を精度よく検出することが困難になる。例えば、断線の検出時の電流の最大値が、正常な電流の最小値より大きい場合、ヒータの断線は検出できない。容量のばらつきの小さいヒータを採用し、あるいは、電流の検出精度の高い電流検出器を採用する場合、さらには、ヒータの本数に応じて電流検出器の数を増やす場合、画像形成装置のコストが上昇してしまう。
【0004】
開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、並列接続されるヒータの数が多い場合にも、コストの上昇を抑えてヒータの断線を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の画像形成装置は、記録媒体への画像の定着に使用する並列に接続された複数のヒータと、前記複数のヒータに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、前記複数のヒータのうち、所定数の第1ヒータに近接する位置に配置される温度検出手段と、前記複数のヒータのうち、前記第1ヒータを除く所定数の第2ヒータに接続され、前記所定数の第2ヒータを流れる電流を検出する電流検出手段と、前記温度検出手段が検出する温度に基づいて前記第1ヒータの断線を判断し、前記電流検出手段が検出する電流に基づいて前記所定数の第2ヒータの断線を判断する故障判断部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
並列接続されるヒータの数が多い場合にも、コストの上昇を抑えてヒータの断線を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態における画像形成装置の全体構成の一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の定着装置の構成の概要を示す回路図である。
【
図3】
図2のヒータの断線検出制御の一例を示すフロー図である。
【
図4】第2の実施形態の画像形成装置における定着装置の構成の概要を示す回路図である。
【
図5】
図4のヒータの断線検出制御の一例を示すフロー図である。
【
図6】第6の実施形態の画像形成装置における定着装置の構成の概要を示す回路図である。
【
図7】
図6のヒータの断線検出制御の一例を示すフロー図である。
【
図9】他の画像形成装置における定着装置の構成の概要を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における画像形成装置の全体構成の一例を示す側面図である。
図1に示す画像形成装置1は、例えば、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能等を有するデジタル複合機である。画像形成装置1は、図示しない操作部のアプリケーション切り替えキーにより、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のいずれかに動作モードを切り替えることが可能である。例えば、画像形成装置1は、複写機能の選択時に複写モードとなり、プリンタ機能の選択時にプリンタモードとなる。また、画像形成装置1は、スキャナモードの選択時にスキャナモードとなり、ファクシミリモードの選択時にファクシミリモードとなる。なお、画像形成装置1は、複写機またはプリンタでもよい。
【0010】
例えば、画像形成装置1は、自動原稿送り装置(ADF;Auto Document Feeder)10、画像読み取り装置20、書き込みユニット30、プリンタユニット40および蓄電装置50を有する。説明を分かりやすくするために、プリンタユニット40は、透過させた状態で示される。プリンタユニット40は、感光体ドラム41(感光体)、現像装置42、搬送ベルト43および定着装置44等を有する。プリンタユニット40は、画像情報に基づいて転写紙等の記録媒体に転写するトナー像を作成する。トナー像は画像の一例である。以下、画像形成装置1での画像形成の流れの一例として、動作モードが複写モードに設定されている場合について簡単に説明する。
【0011】
複写モードでは、複写の対象である複数枚の原稿が自動原稿送り装置10にセットされる。図示しない操作部のスタートボタンが押されると、自動原稿送り装置10は、原稿を1枚ずつ画像読み取り装置20に送る。画像読み取り装置20は、自動原稿送り装置10から順に送られる原稿の画像情報を読み取る。読み取られた画像情報は、画像処理部60により処理される。
【0012】
書き込みユニット30は、画像処理部60により処理された画像情報を光情報に変換する。感光体ドラム41は、図示しない帯電器により一様に帯電された後、書き込みユニット30により変換された光情報を含むレーザ光により露光される。露光により、感光体ドラム41上には静電潜像が形成される。
【0013】
現像装置42は、感光体ドラム41の静電潜像を現像し、感光体ドラム41上にトナー像を形成する。搬送ベルト43は、トナー像を転写紙等の記録媒体に転写する。定着装置44は、トナー像を転写紙上に定着させる。そして、原稿の画像が複写された転写紙等の記録媒体は、排出部から排出される。
【0014】
図2は、
図1の定着装置44の構成の概要を示す回路図である。例えば、定着装置44は、上述したトナー像の転写紙上への定着に使用される並列に接続された4つのヒータH1、H2、H3、H4を有する。また、定着装置44は、CPU(Central Processing Unit)441、温度検出器442、トライアック等の駆動素子443、電流検出器A1、電圧検出器V1および電源444を有する。なお、電源444は、
図1の蓄電装置50に配置されてもよい。CPU441は、故障判断部の一例である。温度検出器442は、温度検出手段の一例である。電流検出器A1は、電流検出手段の一例である。電圧検出器V1は、電圧検出手段の一例である。
【0015】
ヒータH1、H2は、一端が電源線VDDに接続され、他端が電流検出器A1および駆動素子443を介して接地線VSSに接続される。ヒータH3、H4は、一端が電源線VDDに接続され、他端が駆動素子443を介して接地線VSSに接続される。ヒータH1、H2は、第2ヒータの一例である。ヒータH3、H4は、第1ヒータの一例である。
【0016】
換言すれば、並列接続されたヒータH1、H2と電流検出器A1と駆動素子443とが、電源線VDDと接地線VSSとの間に直列に接続され、並列接続されたヒータH3、H4と駆動素子443とが、電源線VDDと接地線VSSとの間に直列に接続される。駆動素子443は、ヒータH1、H2、H3、H4に流す電流を制御する。電圧検出器V1は、電源線VDDと接地線VSSとの間に配置される。
【0017】
温度検出器442は、ヒータH3、H4に近接する位置に配置され、ヒータH3、H4を流れる電流によるヒータH3、H4の発熱を検出可能である。温度検出器442から離れているヒータH1、H2を流れる電流によるヒータH1、H2の発熱は、温度検出器442で検出できない。ヒータH1、H2を流れる電流は、ヒータH1、H2の電流の経路に配置された電流検出器A1により検出可能である。このため、ヒータH1、H2の発熱量(すなわち、ヒータH1、H2のヒータ容量)は、電流検出器A1が検出する電流と電圧検出器V1が検出する電圧とに応じて検出可能である。
【0018】
例えば、電流検出器A1に接続するヒータH1、H2の数は、各種の部品の電気的特性が最悪条件にばらついた場合にも、電流検出器A1が検出する電流により、ヒータH1、H2の1本の断線時とヒータH1、H2の正常時とを判別可能な数に設定される。ここで、各種の部品の電気的特性のばらつきは、電圧検出器V1の検出ばらつき、電流検出器A1の検出ばらつき、およびヒータH1、H2のヒータ容量のばらつきを含む。
【0019】
温度検出器442は、ヒータH3、H4の抵抗値が正常にばらついている範囲内で、ヒータH3、H4の発熱の有無を温度として検出できる程度の精度を有する。電流検出器A1および電圧検出器V1のそれぞれは、ヒータH1、H2の抵抗値が正常にばらついている範囲内で、ヒータH1、H2の発熱の有無を検出できる程度の精度を有する。換言すれば、上記の電気的特性のばらつきの最悪条件を考慮して電流検出器A1に接続するヒータH1、H2の数を設定することで、温度検出器442、電流検出器A1および電圧検出器V1は、高精度のものを必要としない。
【0020】
CPU441は、駆動素子443のオン/オフを制御する。また、CPU441は、電流検出器A1が検出する電流を示す電流情報を受け、電圧検出器V1が検出する電圧を示す電圧情報を受ける。CPU441は、温度検出器442が検出する温度を示す温度情報を受ける。
【0021】
CPU441は、駆動素子443をオンさせているとき、電流検出器A1が検出する電流値をモニタすることで、ヒータH1、H2の断線の有無を検出する。例えば、CPU441は、検出された電流値が第1閾値より小さい場合、ヒータH1、H2の両方の断線を判断してもよい。CPU441は、算出される電流値が第1閾値以上で第2閾値より小さい場合、ヒータH1、H2の一方の断線を判断してもよい。ここで、第2閾値は、第1閾値より大きい。CPU441は、算出される電流値が第2閾値以上の場合、ヒータH1、H2が正常であると判断してもよい。
【0022】
なお、CPU441は、電流検出器A1が検出する電流値が第2閾値より小さいか否かにより、ヒータH1、H2の断線の有無のみを検出してもよい。この場合、CPU441は、ヒータH1、H2のいずれが断線したかを判断しない。
【0023】
一方、CPU441は、駆動素子443をオンさせているとき、温度検出器442が検出する温度をモニタすることで、ヒータH3、H4の断線の有無を判断する。CPU441は、温度検出器442が検出する温度が第3閾値より小さい場合、ヒータH1、H2の両方の断線を判断してもよい。CPU441は、温度検出器442が検出する温度が第3閾値以上で第4閾値より小さい場合、ヒータH1、H2の一方の断線を判断してもよい。ここで、第4閾値は、第3閾値より大きい。CPU441は、温度検出器442が検出する温度が第4閾値以上の場合、ヒータH1、H2が正常であると判断してもよい。
【0024】
なお、CPU441は、駆動素子443をオンしてから温度検出器442が検出する温度が規定の温度を超えるまでの時間(上昇時間または上昇の傾き)に基づいて、ヒータH3、H4の故障の有無を判断してもよい。この場合、CPU441は、2種類の上昇時間(または上昇の傾き)を第5閾値および第6閾値とすることで、ヒータH3、H4の両方の断線、一方の断線、またはヒータH3、H4が正常であることを判断できる。
【0025】
なお、CPU441は、温度検出器442が検出する温度が第4閾値より小さいか否かにより、ヒータH3、H4の断線の有無のみを検出してもよい。また、CPU441は、温度検出器442が検出する温度の上昇時間または上昇の傾きが第6閾値より小さいか否かにより、ヒータH3、H4の断線の有無のみを検出してもよい。この場合、CPU441は、ヒータH3、H4のいずれが断線したかを判断しない。
【0026】
図3は、
図2のヒータH1-H4の断線検出制御の一例を示すフロー図である。例えば、
図3に示す処理は、CPU441が制御プログラムを実行することで実現される。
図3は、画像形成装置1の制御方法の一例も示している。
図3に示す処理は、定着装置44の定着制御の開始に基づいて開始される。
【0027】
まず、ステップS11において、CPU441は、駆動素子443をオンし、ヒータH1-H4に電流を流すことで、ヒータH1-H4をオンする。次に、ステップS12において、CPU441は、電圧検出器V1が検出する電圧、電流検出器A1が検出する電流および温度検出器442が検出する温度をモニタする。例えば、CPU441は、電圧検出器V1が検出する電圧に基づいて、ヒータH1-H4に印加される電圧が正常であることを判断する。
【0028】
次に、ステップS13において、CPU441は、電流検出器A1が検出した電流値が規定値以上(例えば、第2閾値以上)であるか否かと、温度検出器442が検出した温度上昇(傾き)が規定値以上(例えば、第6閾値以上)であるか否かを判定する。CPU441は、電流値が規定値以上であり、かつ、温度上昇が規定値以上の場合、ヒータH1-H4が断線することなく正常にオンしていると判断し、処理をステップS14に移行する。
【0029】
CPU441は、電流値が規定値未満である場合、ヒータH1、H2の少なくともいずれかが断線したと判断し、処理をステップS15に移行する。また、CPU441は、温度上昇(傾き)が規定値未満である場合、ヒータH3、H4の少なくともいずれかが断線したと判断し、処理をステップS15に移行する。ステップS14において、CPU441は、通常の定着制御を実行し、
図3に示す処理を終了する。
【0030】
ステップS15において、CPU441は、駆動素子443をオフすることで、ヒータH1-H4をオフする。次に、ステップS16において、CPU441は、ヒータH1-H4のいずれかが断線したことを、画像形成装置1の全体の動作を制御する上位のコントローラに通知し、
図3に示す処理を終了する。なお、上位のコントローラは、断線の通知に基づいて異常処理を実行する。
【0031】
図3に示すフローでは、CPU441は、電流値が既定値未満の場合に断線を検出するが、電流値と電圧値とから算出されるヒータ容量が既定値未満の場合に断線を検出してもよい。また、過電流異常または高温異常を検出する処理が、
図3に示すフローに追加されてもよい。
【0032】
この場合、例えば、ステップS14の手前に、電流値または温度上昇の傾きが、それぞれの規定値より大きい異常値を超えている場合(過電流)、過電流異常または高温異常を検出する処理が追加される。これにより、定着装置44の高温異常を検出することができ、高温異常に伴う画像形成装置1の不具合の発生を防止することができる。また、CPU441は、温度検出器442から離れた位置にあるヒータH1、H2の高温異常を検出することができる。この結果、画像形成装置1の安全性および信頼性を向上することができる。
【0033】
以上、この実施形態では、ヒータH1、H2を流れる電流を検出する電流検出器A1と、ヒータH3、H4の発熱を検出する温度検出器442とが、定着装置44に設けられる。これにより、画像形成装置1は、ヒータH1、H2の断線とヒータH3、H4の断線とを独立に検出できる。この結果、画像形成装置1は、通常の検出精度の電圧検出器V1および電流検出器A1により、ヒータH1―H4の断線の有無を確実に検出できる。
【0034】
ヒータH1―H4の断線の有無を検出するために、高精度の温度検出器442、高精度の電流検出器A1および高精度の電圧検出器V1は不要である。また、例えば、ヒータH1-H4毎に、温度検出器442または電流検出器A1を設ける必要はない。したがって、定着装置44の部品コストを削減することができ、画像形成装置1のコストの上昇を防止することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の画像形成装置における定着装置の構成の概要を示す回路図である。
図4に示す定着装置44Aは、
図1の定着装置44の代わりに画像形成装置1に搭載される。この実施形態の画像形成装置1は、定着装置44の代わりに定着装置44Aが搭載されることを除き、
図1に示した画像形成装置1の構成および機能と同様である。
【0036】
定着装置44Aは、
図1の定着装置44の構成に加えてスイッチSW1を有する。スイッチSW1は、ヒータH3、H4の接地線VSS側に接続される。スイッチSW1は、CPU441によりオン/オフが制御される。この実施形態では、ヒータH3、H4は、一端が電源線VDDに接続され、他端がスイッチSW1、電流検出器A1および駆動素子443を介して接地線VSSに接続される。
【0037】
図5は、
図4のヒータH1-H4の断線検出制御の一例を示すフロー図である。
図3と同様の処理については、詳細な説明は省略する。例えば、
図5に示す処理は、画像形成装置1の制御方法の一例を示し、CPU441が制御プログラムを実行することで実現される。
図5に示す処理は、定着装置44の定着制御の開始に基づいて開始される。
【0038】
まず、ステップS21において、CPU441は、スイッチSW1をオンし、駆動素子443をオンし、ヒータH1-H4に電流を流すことで、ヒータH1-H4をオンする。なお、スイッチSW1と駆動素子443とをオンしている期間、CPU441は、電流検出器A1によりヒータH1-H4に流れる総電流を検出できる。次に、ステップS22において、CPU441は、電圧検出器V1が検出する電圧および温度検出器442が検出する温度をモニタする。
【0039】
次に、ステップS23において、CPU441は、温度検出器442が検出した温度上昇(傾き)が規定値以上(例えば、第6閾値以上)であるか否かを判定する。CPU441は、温度上昇が規定値以上の場合、ヒータH3、H4が断線することなく正常にオンしていると判断し、処理をステップS24に移行する。CPU441は、温度上昇(傾き)が規定値未満である場合、ヒータH3、H4の少なくともいずれかが断線したと判断し、処理をステップS29に移行する。
【0040】
ステップS24において、CPU441は、スイッチSW1をオフする。次に、ステップS26において、CPU441は、電流検出器A1が検出する電流をモニタする。次に、ステップS26において、CPU441は、電流検出器A1が検出した電流値が規定値以上(例えば、第2閾値以上)であるか否かを判定する。CPU441は、電流値が規定値以上の場合、ヒータH1、H2が断線することなく正常にオンしていると判断し、処理をステップS27に移行する。すなわち、CPU441は、全てのヒータH1-H4が正常と判断した場合に処理をステップS27に移行する。CPU441は、電流値が規定値未満の場合、ヒータH1、H2の少なくともいずれかが断線したと判断し、処理をステップS29に移行する。
【0041】
ステップS27において、CPU441は、スイッチSW1をオンする。次に、ステップS28において、CPU441は、通常の定着制御を実行し、
図5に示す処理を終了する。ステップS29の処理と、ステップS29の後に実行されるステップS30の処理は、
図3のステップS15、S16の処理と同じである。
【0042】
なお、
図5に示すフローでは、CPU441は、電流値が既定値未満の場合に断線を検出するが、電流値と電圧値とから算出されるヒータ容量が既定値未満の場合に断線を検出してもよい。また、過電流異常または高温異常を検出する処理が、
図5に示すフローに追加されてもよい。
【0043】
この場合、例えば、ステップS28の手前に、電流値または温度上昇の傾きが、それぞれの規定値より大きい異常値を超えている場合に、過電流異常または高温異常を検出する処理が追加される。これにより、定着装置44Aの高温異常を事前に検出することができ、高温異常に伴う画像形成装置1の不具合の発生を防止することができる。この結果、画像形成装置1の安全性および信頼性を向上することができる。
【0044】
以上、この実施形態においても上述した実施形態と同様に、画像形成装置1は、ヒータH1、H2の断線とヒータH3、H4の断線とを独立に検出できる。これにより、画像形成装置1は、通常の検出精度の電圧検出器V1および電流検出器A1により、ヒータH1―H4の断線の有無を確実に検出できる。この結果、定着装置44Aの部品コストを削減することができ、画像形成装置1のコストの上昇を防止することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の画像形成装置における定着装置の構成の概要を示す回路図である。
図6に示す定着装置44Bは、
図1の定着装置44の代わりに画像形成装置1に搭載される。この実施形態の画像形成装置1は、定着装置44の代わりに定着装置44Bが搭載されることを除き、
図1に示した画像形成装置1の構成および機能と同様である。
【0046】
定着装置44Bは、
図1の定着装置44の構成に加えてスイッチSW2、SW3およびヒータH5、H6を有する。ヒータH1、H2およびヒータH5、H6は、それぞれ第2ヒータ群の一例である。
【0047】
スイッチSW2は、ヒータH1、H2の接地線VSS側に接続される。スイッチSW3は、ヒータH5、H6の接地線VSS側に接続される。スイッチSW2、SW3は、CPU441によりオン/オフが制御される。ヒータH5、H6は、一端が電源線VDDに接続され、他端がスイッチSW3、電流検出器A1および駆動素子443を介して接地線VSSに接続される。
【0048】
図7および
図8は、
図6のヒータH1-H6の断線検出制御の一例を示すフロー図である。
図3および
図5と同様の処理については、詳細な説明は省略する。例えば、
図7および
図8に示す処理は、画像形成装置1の制御方法の一例を示し、CPU441が制御プログラムを実行することで実現される。
図7に示す処理は、定着装置44の定着制御の開始に基づいて開始される。
【0049】
まず、ステップS31において、CPU441は、スイッチSW2、SW3をオンし、駆動素子443をオンし、ヒータH1-H6に電流を流すことで、ヒータH1-H6をオンする。ステップS31の後に実行されるステップS32、S33の処理は、
図5のステップS22、S23の処理と同様である。CPU441は、ステップS33において、温度上昇(傾き)が規定値以上の場合、ヒータH3、H4が断線することなく正常にオンしていると判断し、処理をステップS34に移行する。CPU441は、温度上昇(傾き)が規定値未満である場合、ヒータH3、H4の少なくともいずれかが断線したと判断し、処理を
図8のステップS42に移行する。
【0050】
ステップS34において、CPU441は、スイッチSW3をオフする。スイッチSW3のオフにより、電流検出器A1は、ヒータH1、H2を流れる電流のみを検出可能になる。ステップS34の後に実行されるステップS35、S36の処理は、
図5のステップS25、S26の処理と同様である。CPU441は、ステップS36において、電流検出器A1が検出した電流値が規定値以上の場合、ヒータH1、H2が断線することなく正常にオンしていると判断し、処理を
図8のステップS37に移行する。CPU441は、電流値が規定値未満の場合、ヒータH1、H2の少なくともいずれかが断線したと判断し、処理を
図8のステップS42に移行する。
【0051】
図8のステップS37において、CPU441は、スイッチSW2をオフし、スイッチSW3をオンする。スイッチSW2のオフおよびスイッチSW3のオンにより、電流検出器A1は、ヒータH5、H6を流れる電流のみを検出可能になる。ステップS37の後に実行されるステップS38、S39の処理は、ヒータH5、H6の断線の有無が判断されることを除き、
図7のステップS35、S36の処理と同様である。
【0052】
CPU441は、ステップS39において、電流検出器A1が検出した電流値が規定値以上の場合、ヒータH5、H6が断線することなく正常にオンしていると判断し、処理をステップS40に移行する。CPU441は、電流値が規定値未満の場合、ヒータH5、H6の少なくともいずれかが断線したと判断し、処理をステップS42に移行する。
【0053】
ステップS40において、CPU441は、スイッチSW2をオンする。次に、ステップS41において、CPU441は、通常の定着制御を実行し、
図7および
図8に示す処理を終了する。ステップS42の処理と、ステップS42の後に実行されるステップS43の処理は、
図3のステップS15、S16の処理と同じである。
【0054】
なお、
図7および
図8に示すフローでは、CPU441は、電流値が既定値未満の場合に断線を検出するが、電流値と電圧値とから算出されるヒータ容量が既定値未満の場合に断線を検出してもよい。また、過電流異常または高温異常を検出する処理が、
図7および
図8に示すフローに追加されてもよい。
【0055】
この場合、例えば、ステップS41の手前に、電流値または温度上昇の傾きが、それぞれの規定値より大きい異常値を超えている場合に、過電流異常または高温異常を検出する処理が追加される。これにより、定着装置44Bの高温異常を事前に検出することができ、高温異常に伴う画像形成装置1の不具合の発生を防止することができる。この結果、画像形成装置1の安全性および信頼性を向上することができる。
【0056】
以上、この実施形態においても上述した実施形態と同様に、画像形成装置1は、ヒータH1、H2の断線とヒータH3、H4の断線とヒータH5、H6の断線とを独立に検出できる。これにより、画像形成装置1は、通常の検出精度の電圧検出器V1および電流検出器A1により、ヒータH1―H6の断線の有無を確実に検出できる。この結果、定着装置44Bの部品コストを削減することができ、画像形成装置1のコストの上昇を防止することができる。
【0057】
なお、
図6の定着装置44Bに、さらにヒータH7、H8が追加される場合、ヒータH7、H8と電流検出器A1との間にスイッチSW4が追加されてもよい。ヒータH7、H8は、第2ヒータ群の一例である。ヒータが増える毎にヒータと電流検出器A1との間にスイッチが追加されることで、CPU441は、並列数の多いヒータ構成であっても、スイッチを1つずつオンして電流を検出することで、ヒータの断線の有無を確実に判断できる。したがって、ヒータの数が多い場合にも、高精度な電流検出器A1および電圧検出器V1を設ける必要はなく、また、複数の電流検出器A1を設ける必要はない。この結果、ヒータの数が多い場合にも、定着装置44Bの複雑化を防止することができ、画像形成装置1のコストの上昇を防止することができる。
【0058】
(比較例)
図9は、他の画像形成装置における定着装置の構成の概要を示す回路図である。
図9に示す定着装置44Cは、ヒータH3、H4が電流検出器A1を介さずに駆動素子443に接続される点で、
図1の定着装置44の構成と相違する。すなわち、ヒータH1-H4は、電源線VDDと電流検出器A1との間に並列に接続される。この場合、電流検出器A1は、ヒータH1-H4に流れる電流を常に検出する。
【0059】
図9に示す定着装置44Cの構成では、電流検出器A1および電圧検出器V1の精度が低い場合、CPU441は、電流検出器A1による電流値の検出に基づいてヒータH1、H2の断線を検出できないおそれがある。例えば、ヒータ容量ばらつきが±10%、電流検出器A1および電圧検出器V1の検出ばらつきがそれぞれ±5%であるとする。
【0060】
3つのヒータが並列に接続される場合(3並列)、ヒータのいずれかが断線したときの抵抗値の下限Rmin1は、式(1)により示される。また、ヒータが正常のときの抵抗値の上限Rmax1は、式(2)により示される。式中の符号Rは、ヒータの抵抗値(カタログ値)を示し、符号*は、乗算記号を示す。
Rmin1=R/2*0.9=0.45R ‥(1)
Rmax1=R/3*1.1*1.05*1.05=0.404R ‥(2)
【0061】
式(1)の値0.9は、ヒータの抵抗値の低い側のばらつきを示す。式(2)の値1.1は、ヒータの抵抗値の高い側のばらつきを示す。式(2)の値1.05は、電圧検出器V1の電圧検出の高い側のばらつき、および電流検出器A1の電流検出の高い側のばらつきを示す。
【0062】
式(1)、(2)より、3並列までは、"1本のヒータの断線時の抵抗値の下限Rmin1">"ヒータの正常時の抵抗値の上限Rmax1"となる。このため、ヒータの断線時と正常時での抵抗値の重なり部分がなく、ヒータの断線を確実に検出することができる。
【0063】
一方、4本のヒータが並列に接続される場合(4並列)、ヒータのいずれかが断線したときの抵抗値の下限Rmin2は、式(3)により示される。また、ヒータが正常のときの抵抗値の上限Rmax2は、式(4)により示される。
Rmin2=R/3*0.9=0.3R ‥(3)
Rmax2=R/4*1.1*1.05*1.05=0.303R ‥(4)
【0064】
式(3)、(4)より、4並列以上では、"1本のヒータの断線時の抵抗値の下限Rmin2"<"ヒータの正常時の抵抗値の上限Rmax2"となる。このため、ヒータの断線時と正常時での抵抗値の重なり部分が生じ、ヒータの断線を検出することができない。
【0065】
図1から
図8に示した実施形態では、ヒータが4本以上ある場合にも、CPU441は、ヒータの断線を2本単位で検出する。したがって、式(1)、(2)に示すように、Rmin1>Rmax1の関係を常に満足することができ、ヒータの断線の有無を確実に検出することができる。なお、
図1から
図8に示した実施形態において、式(1)、(2)に示すように、各部品の電気的特性のばらつきのワースト条件によっても、Rmin1>Rmax1を満足する場合、3並列のヒータまでの断線を検出できる。
【0066】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 画像形成装置
20 画像読み取り装置
30 書き込みユニット
40 プリンタユニット
41 感光体ドラム
42 現像装置
43 搬送ベルト
44、44A、44B、44C 定着装置
50 蓄電装置
60 画像処理部
441 CPU
442 温度検出器
443 駆動素子
444 電源
A1 電流検出器
H1、H2、H3、H4、H5、H6 ヒータ
SW1、SW2、SW3 スイッチ
V1 電圧検出器
VDD 電源線
VSS 接地線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】