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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023477
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129053
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 茂
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB37
2C056EB45
2C056EC07
2C056EC26
2C056EC67
2C056FA10
2C056HA12
2C056HA27
(57)【要約】
【課題】後々問題が生じる可能性がある場合、問題が起きる前に事前に対処できる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体の吐出動作において媒体を保持する媒体保持部材の種類を選択する選択操作画面を表示し、ユーザが選択した当該媒体保持部材の種類を設定する表示操作部と、ユーザに設定された媒体保持部材の種類を示す選択種類情報と吐出動作を指示する吐出指示情報に含まれる媒体保持部材の種類を示す指定種類情報とを記憶し、選択種類情報が特定選択種類情報であり、指定種類情報が特定指定種類情報であるときは、液体の吐出動作不能を報知する警告情報を表示操作部に表示させ、選択種類情報が特定選択種類情報であり、指定種類情報が特定指定種類情報でないときには、液体の吐出動作を継続する制御部と、を有する液体吐出装置による。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記液体の吐出動作において前記媒体を保持する媒体保持部材の種類を選択する選択操作画面を表示し、ユーザが選択した当該媒体保持部材の種類を設定する表示操作部と、
前記ユーザに設定された前記媒体保持部材の種類を示す選択種類情報と前記吐出動作を指示する吐出指示情報に含まれる前記媒体保持部材の種類を示す指定種類情報とを記憶し、
前記選択種類情報が特定選択種類情報であり、前記指定種類情報が特定指定種類情報であるときは、前記液体の吐出動作不能を報知する警告情報を前記表示操作部に表示させ、
前記選択種類情報が特定選択種類情報であり、前記指定種類情報が特定指定種類情報でないときには、前記液体の吐出動作を継続する制御部と、
を有する液体吐出装置。
【請求項2】
前記選択種類情報が前記特定選択種類情報ではなく、前記指定種類情報と前記選択種類情報が不一致であるとき、警告情報を前記表示操作部に表示する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記選択種類情報が特定選択種類情報であっても、前記指定種類情報が特定指定種類情報でなければ、前記液体の吐出動作を継続する、
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体を吐出する吐出部と前記媒体保持部材とのギャップを調整するギャップ調整機構を備え、前記高さの調整を行わなければ前記吐出動作は実行されない、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記高さの調整は、一定の時間間隔にて実行をしなければ、前記吐出動作は実行されない、
請求項4に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置等からの画像形成指示に基づいて媒体に対し液体を吐出して画像形成する液体吐出装置が知られている。当該装置は、液体を媒体に吐出する液体吐出ヘッドを備えるインクジェット式プリンタなどと称される。近年、インクジェット式プリンタとして、媒体に衣類などの布帛を用いることができるものが知られている。当該プリンタは「DTGプリンタ(DTG:Direct To Garment)」と称される。
【0003】
媒体に画像を形成する装置の一例として、装置側に設定した媒体の大きさと、画像形成指示にて指示される媒体の大きさが不一致のとき、画像形成動作を継続するか又は停止するかを選択できる技術が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術によれば、装置側の媒体に関する設定と、画像形成指示で指示される媒体が不一致でも、ユーザが画像形成動作の継続を選択するならば、画像形成動作を停止させずに継続させて、ユーザの利便性を高めることもできる。
【0005】
しかし、媒体に関する設定には様々なものがあり、装置側での媒体設定と、画像形成指示で指示される媒体設定の組み合わせ次第では、画像形成動作を継続すると、ユーザが求める動作結果を得られない場合もあり得る。従来技術では、媒体設定が不一致のときに、ユーザが求める動作結果が得られるか否かを、画像形成指示の都度、ユーザが判断して動作継続又は停止を切り替える変更を要し、ユーザ利便性が損なわれる。
【0006】
すなわち、従来技術では、装置側の設定と動作指示における設定が不一致であっても画像形成動作を実行可能な状況において、画像形成動作を継続させ続けると実行環境の変化によって動作異常に至る可能性があるとき、事前に異常を回避することは困難である。
【0007】
本発明は、後々問題が生じる可能性がある場合、問題が起きる前に事前に対処できる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態は、媒体に液体を吐出する液体吐出装置であって、前記液体の吐出動作において前記媒体を保持する媒体保持部材の種類を選択する選択操作画面を表示し、ユーザが選択した当該媒体保持部材の種類を設定する表示操作部と、前記ユーザに設定された前記媒体保持部材の種類を示す選択種類情報と前記吐出動作を指示する吐出指示情報に含まれる前記媒体保持部材の種類を示す指定種類情報とを記憶し、前記選択種類情報が特定選択種類情報であり、前記指定種類情報が特定指定種類情報であるときは、前記液体の吐出動作不能を報知する警告情報を前記表示操作部に表示させ、前記選択種類情報が特定選択種類情報であり、前記指定種類情報が特定指定種類情報でないときには、前記液体の吐出動作を継続する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、後々問題が生じる可能性がある場合、問題が起きる前に事前に対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る液体吐出装置の内部構造の要部を示す概略平面図。
図2】本実施形態に係る搬送プラテンの昇降機構を説明する図。
図3】本実施形態に係る制御部の概略構成図。
図4】本実施形態に係る処理フローを示すフローチャート。
図5】本実施形態に係る表示部兼操作部の表示態様を例示する図。
図6】本実施形態に係る表示部に表示される警告表示の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る液体吐出装置の実施形態としてのインクジェットプリンタ10について図面を参照しながら説明する。
【0012】
[インクジェットプリンタ10の概要]
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、板金と一体となったスライドレール104でキャリッジ100を保持している。キャリッジ100は、主走査モータ105によって、駆動プーリ106と従動プーリ107間に渡したタイミングベルト102を介して主走査方向に往復移動にて走査される。なお、本明細書において、主走査方向とは、図1等に示したY方向をいう。
【0013】
キャリッジ100には、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、ホワイト1(W1)、ホワイト2(W2)の各色のインク滴を吐出する4個の液吐出ヘッドから成る記録ヘッド118が搭載されている。記録ヘッド118は、複数のインク吐出口(ノズル)を形成したノズル面のノズル列を主走査方向と直交する方向(副走査方向)に配列して搭載され、インク吐出口が下方(搬送プラテン101の方向)に向けられている。また、本明細書において、副走査方向とは、図1等に示したX方向をいう。
【0014】
なお、キャリッジ100に搭載される記録ヘッド118として、各色のインク滴を吐出する複数のノズル列を有するものを例示しているが、インクジェットプリンタ10に適用可能な記録ヘッド118の構成を限定するものではない。たとえば、各色のインク滴に独立して対応するような記録ヘッド118を用いることもできる。また、インク滴として適用される色数や、記録ヘッド118の配列順序も限定されるものではない。
【0015】
記録ヘッド118には、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、これらの他に、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータを圧力発生手段として用いることもできる。いずれの構成であっても、外部から指示される吐出タイミングにおいて、指定された色の液滴を指定された量で吐出することができればよい。
【0016】
インクジェットプリンタ10は、スリットを形成したエンコーダスケール103を主走査方向に沿って設けられている。そして、キャリッジ100には、エンコーダスケール103のスリットを検出するエンコーダセンサ117が設けられている。を設け、これらによって、キャリッジ100の主走査方向位置を検知するためのリニアエンコーダ131を構成している。
【0017】
また、インクジェットプリンタ10は、記録媒体108を保持する媒体保持部材としての搬送プラテン101を備えている。搬送プラテン101は、記録媒体108を保持してた状態で搬送機構によって副走査方向に往復移動させられる。このとき搬送プラテン101は、記録媒体108を記録ヘッド118に対向する位置で往復移動させる。
【0018】
記録媒体108としては、搬送プラテン101にて保持されて搬送されるものであれば、その種類は問わない。したがって、例えば、衣類などの布帛でもよい。
【0019】
この搬送プラテン101は、搬送機構を構成する副走査モータ111を駆動源として副走査方向(X方向)の移動をする。副走査モータ111の回転軸に設けられている搬送駆動プーリ112と、これと乖離した位置に設けられている搬送ローラプーリ113と、の間にはタイミングベルト114が架けられている。搬送ローラプーリ113の回転軸には、搬送ローラ109が接続されている。この構成により、副走査モータ111が回転駆動することで、その駆動力が搬送ローラ109を回転させて、搬送プラテン101を移動させることができる。
【0020】
また、インクジェットプリンタ10は搬送ローラ109との同軸において、スリットを形成したエンコーダホイール115を設けている。そして、エンコーダホイール115のスリットを検出するエンコーダセンサ116が設けられている。エンコーダセンサ116は、図1においては図示を省略しているが、インクジェットプリンタ10の筐体を構成する一部の側板に設けられている。これらの構成によって、搬送プラテン101の副走査方向位置を検知するためのホイールエンコーダ132が構成されている。
【0021】
なお、搬送プラテン101は、フラットベッド方式であり、搬送ローラ109とテンションローラ110との間に掛け渡したタイミングベルト119を介して、副走査方向に水平に搬送される。
【0022】
図2は、搬送プラテン101の高さ調整を可能にするプラテン昇降機構の概要を例示する図である。搬送プラテン101の高さとは、Z方向における搬送プラテン101の最上面の位置に相当する。記録ヘッド118の下面である吐出口から搬送プラテン101の上面までの距離を最適な値に調整することで、画像形成の質を維持し高めることができる。そのため、搬送プラテン101のZ方向における位置を精度よく調整することが重要である。
【0023】
搬送プラテン101は様々な種類を選択することができ、種類に応じて搬送方向における寸法の違いや形状の違いがある。ユーザは記録媒体108の種類に応じて任意の搬送プラテン101を選択し、インクジェットプリンタ10に装着させることができる。
【0024】
インクジェットプリンタ10に搬送プラテン101が装着されたのち、図2に示すように、ギャップ調整機構によって、ギャップの調整が行われる。ギャップ調整機構は、搬送プラテン101を上下方向(Z方向)に可動するギア1011と、ギア1011を上下方向に可動させるプラテン昇降モータ1012と、を有する。プラテン昇降モータ1012が回転すると、その回転に応じてギア1011が上下方向に移動し、搬送プラテン101の上下方向のおける任意の位置に移動して保持される。
【0025】
記録ヘッド118が備える液体の吐出口と、搬送プラテン101とのギャップを調整するときは、図1に示すギャップセンサ134が搬送プラテン101の上面との距離を計測して、所定の距離になるようにプラテン昇降モータ1012を動作させる。このとき、搬送プラテン101の上面の計測位置は、搬送プラテン101の種別に応じて異なる。例えば、搬送プラテン101の大きさや形状に応じて、最も適した位置において計測するように、搬送プラテン101の副走査方向の移動が行われてからギャップの計測及び設定が行われる。
【0026】
なお、本明細書において、搬送プラテン101の上面と吐出口で構成される吐出部とのギャップは、搬送プラテン101の高さにも相当する。したがって、ギャップ調整を高さ調整と表記することもある。
【0027】
なお、搬送プラテン101を特定の種別を限定する設定をせずに、インクジェットプリンタ10において画像形成動作を実行させることも可能である。この場合は、プラテン高さ調整は、搬送プラテン101の副走査方向の中心位置の高さに基づいて行う。
【0028】
[制御ブロックの構成]
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10が備える制御ブロックの構成について図3を用いて説明する。図3に示すように、インクジェットプリンタ10の制御部120は、CPU121、ROM122、RAM123、NVRAM124、ASIC125を備えている。
【0029】
CPU121は、インクジェットプリンタ10に必要な情報の入力及び表示を行うための表示操作部としての操作パネル150と接続されていて、インクジェットプリンタ10全体の制御を司る。また、CPU121は、搬送プラテン101の搬送動作(副走査方向への移動)及びキャリッジ100の主走査方向への移動動作、および、記録ヘッド118による液体吐出動作に関する制御を司る機能を兼ね備えている。
【0030】
ROM122は、CPU121が実行するプログラムやその他の固定データを格納する不揮発性の記憶媒体である。ROM122に記憶されているプログラムをCPU121の演算処理機能により実行することで、後述するプログラム制御部が構成される。
【0031】
RAM123は、画像形成処理に用いられる画像データ等を一時格納する。また、RAM123は、プログラム制御部が実行されるときのワークエリアとして機能する。
【0032】
NVRAM124は、インクジェットプリンタ10の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。
【0033】
ASIC125は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0034】
また、制御部120は、ホストインターフェース(I/F)133、吐出制御部127、主走査モータ駆動部128、ギャップ調整部129、副走査モータ駆動部130、入出力(I/O)部126を備えている。
【0035】
ホストI/F133は、外部装置500が有するプリンタドライバ501等のホスト側とのデータや制御信号の送受を行う役割を担う。
【0036】
吐出制御部127は、記録ヘッド118を駆動するための駆動波形を生成すると共に、記録ヘッド118の圧力発生手段を選択的に駆動させる画像データ及びそれに伴う各種データをヘッドドライバ141に出力する。
【0037】
主走査モータ駆動部128は、主走査モータ105を駆動する。
【0038】
ギャップ調整部129は、搬送プラテン101を昇降するプラテン昇降モータ1012へギャップ調整を指示する。LEDセンサなど、搬送プラテン101を検出して、ノズル口とのギャップの調整を行う。
【0039】
副走査モータ駆動部130は、カセット200を副走査方向に移動させる副走査モータ111を駆動する役割を担う。
【0040】
I/O部126は、インクジェットプリンタ10の動作に要する各種センサからの検知信号を入力する。
【0041】
制御部120では、画像形成処理に係る画像形成指示を外部装置500が備えるプリンタドライバ501から、ケーブルやネットワークを介し、ホストI/F133で受信する。画像形成指示は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読み取り装置、デジタルカメラ等の撮像装置のホスト機能を備える外部装置500のプリンタドライバ501により生成される。
【0042】
画像形成指示を受信した制御部120では、CPU121がホストI/F133に含まれる受信バッファ内の画像形成指示を読み出して解析する。また、その解析結果に応じてASIC125によって必要な画像処理、データの並び替え処理等を行って吐出制御部127に転送する。そこで、吐出制御部127は所要のタイミングでヘッドドライバ141に画像データや駆動波形を出力する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM122にフォントデータを格納して行ってもよいし、ホスト側のプリンタドライバ501で画像データをビットマップデータに展開して装置へ転送するようにしてもよい。ここでは、例えばプリンタドライバ501で行うものとする。
【0043】
したがって、画像形成指示は、吐出指示情報に相当する。
【0044】
吐出制御部127の駆動波形生成部は、ROM122に格納されてCPU121で読み出される駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び増幅器等で構成される。そして、一つの駆動パルスまたは複数の駆動パルスで構成される駆動波形をヘッドドライバ141に対して出力する。ヘッドドライバ141は、シリアルに入力される記録ヘッド118の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて記録ヘッド118を駆動する。このために、ヘッドドライバ141は、吐出制御部127の駆動波形生成部から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド118の圧力発生手段に対して印加する。
【0045】
なお、ヘッドドライバ141は、例えばクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタ、シフトレジスタのレジスト値をラッチ信号でラッチするラッチ回路、を含む。その他、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含む。機能上では、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動パルスを選択的に記録ヘッド118の圧力発生手段に印加する場合を例示できる。
【0046】
画像形成指示には、媒体の種別を示す情報が含まれている。本実施形態に係るインクジェットプリンタ10では、搬送プラテン101を媒体の種類に応じて選択して用いることができる。したがって、画像形成指示に含まれる媒体の種別を示す情報は、用いられる搬送プラテン101の種別を示す情報に相当する。
【0047】
本実施形態に係るインクジェットプリンタ10において選択可能な搬送プラテン101の種類としては「Standard」、「Shoe」、「Hat」、「Sleeve」、「Face covering」、「Other」が想定される。なお、本明細書において、インクジェットプリンタ10においてユーザが選択した搬送プラテン101の設定(種類)を、「プリンタープラテン設定」という。また、画像形成指示に含まれる搬送プラテン101の種類に関する設定を「データプラテン設定」という。
【0048】
上記の選択可能な搬送プラテン101の種類のうち、インクジェットプリンタ10においてユーザが選択した搬送プラテン101の種類が「Other」のときは、画像形成動作(印刷動作)は、画像形成指示に含まれるデータプラテン設定に関わらずに実行される。すなわち、インクジェットプリンタ10において、プリンタープラテン設定が「Other」のときは、基本的に、データプラテン設定とプリンタープラテン設定が不一致でも、画像形成動作を実行する。なお、インクジェットプリンタ10は、プリンタープラテン設定が「Other」以外のときは、データプラテン設定とプリンタープラテン設定が不一致であれば、基本的に、画像形成動作を停止する。
【0049】
[動作フロー]
次に、インクジェットプリンタ10の動作の流れについて、図4図5及び図6を用いて説明する。インクジェットプリンタ10は、搬送プラテン101をユーザが選択して取り付けた状態で画像形成動作(印刷)を実行するとき、まず、装着した搬送プラテン101に対する高さ調整処理を実行する。図5は、高さ調整処理の実行を要求する画面の例であって、操作パネル150に表示される印刷指示画面151の例である。
【0050】
図5(a)に示すように、印刷指示画面151には、印刷開始ボタン1511や、高さ調整実行ボタン1522が含まれている。これらボタン表示をユーザが押下することにより、対応する処理が実行される。なお、搬送プラテン101の高さ調整処理を実行する必要がある状況において、高さ調整処理が未実行のときは、図5(a)に示すように、印刷開始ボタン1511は操作不能状態になっている。なお、図5(a)では操作不能状態の印刷開始ボタン1511を濃いグレー色で表示している。
【0051】
また、高さ調整処理は、定期的に実行する必要がある。したがって、所定の時間間隔において高さ調整処理は実行されるようにタイマー制御の対象となる。そして、高さ調整処理を要するタイミングに至ったとき、続けて画像形成動作(印刷)を実行しようとしても、操作パネル150に表示される印刷指示画面151は、図5(a)に例示するように、印刷開始ボタン1511は操作不能状態になっている。
【0052】
まず、S401において「高さ調整実行ボタン1522」が押下されるまで処理はループする(S401:NO)。すなわち、高さ調整処理の実行が必要な状態になっているときは、高さ調整処理をまず実行しなければ、インクジェットプリンタ10が画像形成動作を実行することはない。
【0053】
S401において「高さ調整実行ボタン1522」が押下されると(S401:YES)、インクジェットプリンタ10に装着した搬送プラテン101の種別を選択する選択操作画面としてのプラテン選択画面152が操作パネル150に表示される(S402)。プラテン選択画面152の例を図5(b)に示す。なお、S402において選択された搬送プラテン101の種別は、「選択種類情報」として制御部120が備える記憶領域に記憶される。
【0054】
S402において、搬送プラテン101の種別を選択するし、「戻る」ボタンを操作すると、高さ調整処理が実行される(S403)。S403において、ギャップ調整部129が搬送プラテン101と吐出ヘッドとのギャップを計測しながらプラテン昇降モータ1012を動作させて、搬送プラテン101の位置が所定の位置に至るまで処理を繰り返す(S404:NO)。
【0055】
高さ調整処理が完了すると(S404:YES)、適切なギャップを形成するように搬送プラテン101の位置が調整された状態にある。そうすると、図5(c)に示すように、印刷指示画面151が再度表示されて、印刷開始ボタン1511が押下可能状状態になっている。
【0056】
なお、搬送プラテン101に対する高さ調整処理を実行するS401からS404の任意のタイミングにおいて、インクジェットプリンタ10は、外部装置500から画像形成指示を受け取ればよい。また、インクジェットプリンタ10は、画像形成指示に含まれている搬送プラテン101の種類を示す情報を「指定種類情報」として制御部120が備える記憶領域に記憶されて保持される。
【0057】
続いて、図5(c)に示すように、操作可能な状態になった印刷開始ボタン1511を押下すると(S405:YES)、印刷処理が開始される。まず、選択種類情報として記憶されている搬送プラテン101に係る選択種類情報が、「特定選択種類情報」としての「Other」であるか否かを判定する(S406)。選択種類情報が「Other」の場合(S406:YES)、インクジェットプリンタ10は、設定されている搬送プラテン101の種類と、「指定種類情報」で示される搬送プラテン101の種類が不一致であっても印刷処理を停止せずに継続するように動作する。
【0058】
このように、インクジェットプリンタ10に装着した搬送プラテン101の種類を、ある種類に設定せず、画像形成指示に基づく吐出動作を継続する設定にした場合、様々な搬送プラテン101を入れ替えながら印刷処理を継続することができる。すなわち、装着されている搬送プラテン101の種類と、画像形成指示において指定されてくる搬送プラテン101の種類が不一致でも、画像形成指示に基づく吐出動作を継続する。これによって、ユーザが許容する画像形成結果を得ることができる場合は、画像形成動作(印刷処理)を継続するので、ユーザの利便性を向上できる。
【0059】
一方、インクジェットプリンタ10における搬送プラテン101の設定を「Other」にして印刷処理の継続を優先し、ある時点では動作に不具合が生じなくても、後々に不具合が生じる場合も想定される。そこで、ユーザにとって予期せぬ不具合が生ずる可能性がある状況になっているか否かを判断し、吐出動作を継続するか否かを一旦、ユーザが判断できる状態にするとよい。つまり、搬送プラテン101の種類に関わらず、印刷処理を継続しても問題がない画像形成指示であれば継続し、特定のデータプラテン設定(指定種類情報)を含む画像形成指示を受信したときには、印刷処理の継続の判断をユーザが行えるようにする。
【0060】
そこで、本実施形態では、選択種類情報が「Other」(特定指定種類情報)であるときでも、無条件で画像形成動作を継続するのではなく、指定種類情報の内容を判定する(S408)。S408において、指定種類情報が特定指定種類情報としての「Face covering」であれば(S408:YES)、操作パネル150に図6に例示するような警告画面153を表示させる(S409)。
【0061】
図6に例示する警告画面153は、ユーザに対して、印刷処理の継続不能であることを報知する警告情報を表示する画面の例である。例えば、「警告!プリンタープラテン設定と、データプラテン設定の組み合わせが印刷できない組み合わせです。ご確認ください」のように、ユーザに対して、インクジェットプリンタ10側の搬送プラテン101の設定(プリンタープラテン設定)を見直すことを促す。すなわち、インクジェットプリンタ10において、継続的に画像形成動作をするつもりで運用しているユーザに対して、ユーザが予測していない不具合が生ずる可能性がある状況であれば、「吐出動作不能」の可能性をユーザに明確に報知する。つまり、特定の条件下は、ユーザに吐出動作の継続の再判断を促す情報を報知することで利便性を高めることができる。
【0062】
S408において、指定種類情報が「Face covering」ではなければ(S408:NO)、印刷を実行する(S410)。
【0063】
以上のように、インクジェットプリンタ10においては、選択種類情報と指定種類情報が不一致であっても、印刷動作を停止せずに継続する設定状態(「Other」設定)であれば、印刷動作を継続することができる。
【0064】
また、選択種類情報と指定種類情報が不一致であって、その選択種類情報が特定のもの(例えば、Face covering)であれば、搬送プラテン101の高さ調整を再度おこなわなければ、ユーザの要求する画像形成結果が得られない可能性がある。このような、「後々になって印刷を継続することができない状態」に至る可能性があるときに、継続した印刷処理の実行前に、ユーザに対して警告画面153を表示することで、設定の見直しを促すことができる。これによって、ユーザの利便性を向上させつつ、質のよい画像形成動作を実行することができる。
【0065】
また、S406において、選択種類情報が特定選択種類情報としての「Other」でなければ(S406:NO)、続いて、選択種類情報と指定種類情報が一致するか否かを判定する(S407)。S407において、選択種類情報と指定種類情報が一致すれば(S407:YES)、印刷を実行する(S410)。
【0066】
また、S407において、選択種類情報と指定種類情報が一致しなければ(S407:NO)、操作パネル150に図6に例示するような警告画面153を表示させる(S409)。
【0067】
以上説明をした本実施形態に係るインクジェットプリンタ10の効果について説明する。インクジェットプリンタ10に対して、ユーザは、任意の搬送プラテン101を装着させることができる。また、外部装置500から入力される画像形成指示に含まれる選択種類情報と装着している搬送プラテン101の指定種類情報が合致しなくても、画像形成動作を行える場合はある。そこで、ユーザが選択種類情報と指定種類情報が合致しなくても画像形成動作を継続することを望む場合、それを可能にする特定選択種類情報が選択種類情報として設定されている状態であれば、画像形成動作を停止させないように制御することが可能となる。
【0068】
しかし、任意のタイミングにおいて、ユーザが搬送プラテン101の種類を変更した場合、変更後の搬送プラテン101が特定指定種類情報であると、定期的に実行される高さ調整動作において、正確な高さ調整がなされない場合が生ずる。そのような、予期せぬ異常が生ずる可能性がある状態にインクジェットプリンタ10が至っているときに、異常を検知する前に、事前に警告画面153を表示するように制御する。
【0069】
これによって、ユーザに搬送プラテン101に関する設定の見直しを促すか、又は、指定種類情報の変更を促すか、などを行うことができる。その結果、画像形成動作を開始してから異常が検知されて処理が中断することでユーザの利便性が損なわれることを回避できる。また、インクジェットプリンタ10の動作を継続して行える状態を整えやすくなるので、動作効率を向上できる。
【0070】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10 :インクジェットプリンタ
100 :キャリッジ
101 :搬送プラテン
108 :記録媒体
118 :記録ヘッド
119 :タイミングベルト
120 :制御部
150 :操作パネル
151 :印刷指示画面
152 :プラテン選択画面
153 :警告画面
200 :カセット
500 :外部装置
501 :プリンタドライバ
1011 :ギア
1012 :プラテン昇降モータ
1511 :印刷開始ボタン
1522 :高さ調整実行ボタン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2003-095482号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6