(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023499
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】接合装置および接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230209BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129086
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】杉原 紳太郎
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA60
5F131CA07
5F131EA04
5F131EB01
5F131EB72
5F131EB81
5F131JA12
(57)【要約】
【課題】重合基板の歪みを低減することができる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による接合装置は、第1保持部と、第2保持部と、吸着圧力発生部と、リフトピンと、を備える。第1保持部は、第1基板を保持する。第2保持部は、第1保持部と対向する位置に設けられ、第1基板に接合される第2基板を吸着する吸着面を有する。吸着圧力発生部は、吸着面に吸着圧力を発生させる。リフトピンは、吸着面上の第2基板を第2保持部に対して離間させる。また、第2保持部には、リフトピンが通過する開口を含む空間が設けられ、空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板を保持する第1保持部と、
前記第1保持部と対向する位置に設けられ、前記第1基板に接合される第2基板を吸着する吸着面を有する第2保持部と、
前記吸着面に吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部と、
前記吸着面上の前記第2基板を前記第2保持部に対して離間させるリフトピンと、
を備え、
前記第2保持部には、前記リフトピンが通過する開口を含む空間が設けられ、
前記空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される
接合装置。
【請求項2】
前記空間は、前記吸着圧力発生部によって吸引される
請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記空間を大気圧よりも低い圧力に吸引する吸引部、
をさらに備える
請求項1に記載の接合装置。
【請求項4】
前記吸引部は、前記空間が前記吸着圧力よりも高い圧力になるように前記空間を吸引する
請求項3に記載の接合装置。
【請求項5】
前記第2保持部は、
前記空間を形成する筐体と、
前記第1基板と前記第2基板とが接合される際に、前記筐体と前記リフトピンとの間の隙間を塞ぐシール部材と、
を有する
請求項1~4のいずれか一つに記載の接合装置。
【請求項6】
前記第2保持部は、
前記空間を形成する筐体と、
前記リフトピンを駆動する駆動部と、
前記筐体と前記駆動部との間に配置されるとともに、内部が前記空間に接続されるベローズと、
を有する
請求項1~4のいずれか一つに記載の接合装置。
【請求項7】
前記吸着面は、前記第2基板を支持する複数の支持ピンを有し、
前記リフトピンの先端部は、前記第1基板と前記第2基板とが接合される際に、複数の前記支持ピンの先端部と略面一である
請求項1~6のいずれか一つに記載の接合装置。
【請求項8】
前記吸着面は、前記第2基板を支持する複数の支持ピンを有し、
前記支持ピンは、前記開口の周囲に沿って配置される
請求項1~7のいずれか一つに記載の接合装置。
【請求項9】
第1保持部で第1基板を保持する工程と、
前記第1保持部と対向する位置に設けられる第2保持部の吸着面に吸着圧力を発生させて第2基板を保持する工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを接合する工程と、
を含み、
前記接合する工程では、前記第2保持部に設けられ、前記吸着面上の前記第2基板を前記第2保持部に対して離間させるリフトピンが通過する開口を含む空間が、大気圧よりも低い圧力に制御される
接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合装置および接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハなどの基板同士を接合する手法として、基板の接合される表面を改質し、改質された基板の表面を親水化し、親水化された基板同士をファンデルワールス力および水素結合(分子間力)によって接合する手法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、重合基板の歪みを低減することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による接合装置は、第1保持部と、第2保持部と、吸着圧力発生部と、リフトピンと、を備える。第1保持部は、第1基板を保持する。第2保持部は、前記第1保持部と対向する位置に設けられ、前記第1基板に接合される第2基板を吸着する吸着面を有する。吸着圧力発生部は、前記吸着面に吸着圧力を発生させる。リフトピンは、前記吸着面上の前記第2基板を前記第2保持部に対して離間させる。また、前記第2保持部には、前記リフトピンが通過する開口を含む空間が設けられ、前記空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、重合基板の歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る接合システムの構成を示す模式平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る接合システムの構成を示す模式側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る上ウェハおよび下ウェハの模式側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る表面改質装置の構成を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る接合装置の構成を示す模式平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る接合装置の構成を示す模式側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る接合装置の上チャックおよび下チャックの構成を示す模式側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る接合システムが実行する処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態に係る下チャックの構成を示す拡大断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る下チャックの吸着面の構成を示す拡大上面図である。
【
図11】
図11は、参考例における下チャックに吸着される下ウェハの変位のシミュレーションモデルおよびシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る下チャックに吸着される下ウェハの変位のシミュレーションモデルおよびシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態の変形例1に係る下チャックの構成を示す拡大断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態の変形例1に係る下チャックに吸着される下ウェハの変位のシミュレーションモデルおよびシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態の変形例2に係る下チャックの構成を示す拡大断面図である。
【
図16】
図16は、実施形態の変形例3に係る下チャックの構成を示す拡大断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態の変形例3に係る下チャックの吸着面の構成を示す拡大上面図である。
【
図18】
図18は、実施形態の変形例4に係る下チャックの構成を示す拡大断面図である。
【
図19】
図19は、実施形態の変形例5に係る下チャックの構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する接合装置および接合方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0009】
従来、半導体ウェハなどの基板同士を接合する手法として、基板の接合される表面を改質し、改質された基板の表面を親水化し、親水化された基板同士をファンデルワールス力および水素結合(分子間力)によって接合する手法が知られている。
【0010】
一方で、親水化された基板同士を接合して重合基板を形成する際に、いずれかの基板が局所的に変形していると、かかる変形に起因して重合基板に歪み(ディストーション)が生じる場合がある。これにより、重合基板内に形成される素子の歩留まりが低下する恐れがある。
【0011】
そこで、上述の問題点を克服し、重合基板の歪みを低減することができる技術の実現が期待されている。
【0012】
<接合システムの構成>
まず、実施形態に係る接合システム1の構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る接合システム1の構成を示す模式平面図であり、
図2は、同模式側面図である。また、
図3は、実施形態に係る上ウェハおよび下ウェハの模式側面図である。なお、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きをZ軸の正方向とする直交座標系を示す場合がある。
【0013】
図1に示す接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板Tを形成する。
【0014】
第1基板W1は、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、たとえば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
【0015】
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」と記載する。すなわち、上ウェハW1は第1基板の一例であり、下ウェハW2は第2基板の一例である。また、上ウェハW1と下ウェハW2とを総称する場合、「ウェハW」と記載する場合がある。
【0016】
また、以下では、
図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
【0017】
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
【0018】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(たとえば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1、C2、C3がそれぞれ載置される。たとえば、カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合基板Tを収容するカセットである。
【0019】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。
【0020】
搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能である。そして、搬送装置22は、載置板11に載置されたカセットC1~C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tの搬送を行う。
【0021】
なお、載置板11に載置されるカセットC1~C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1、C2、C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセットなどが載置されてもよい。
【0022】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、たとえば3つの処理ブロックG1、G2、G3が設けられる。たとえば、処理ステーション3の正面側(
図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(
図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(
図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
【0023】
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2jを処理ガスのプラズマによって改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j、W2jを改質する。
【0024】
なお、表面改質装置30では、たとえば、減圧雰囲気下において所与の処理ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる処理ガスに含まれる元素のイオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2jに照射されることにより、接合面W1j、W2jがプラズマ処理されて改質される。かかる表面改質装置30の詳細については後述する。
【0025】
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、たとえば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2jを親水化するとともに、接合面W1j、W2jを洗浄する。
【0026】
表面親水化装置40では、たとえばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j、W2j上を拡散し、接合面W1j、W2jが親水化される。
【0027】
接合装置41は、上ウェハW1と下ウェハW2とを接合する。かかる接合装置41の詳細については後述する。
【0028】
第3処理ブロックG3には、
図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tのトランジション(TRS)装置50、51が下から順に2段に設けられる。
【0029】
また、
図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。
【0030】
かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所与の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tを搬送する。
【0031】
また、接合システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部5および記憶部6を備える。記憶部6には、接合処理などの各種処理を制御するプログラムが格納される。制御部5は、記憶部6に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって接合システム1の動作を制御する。
【0032】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置4の記憶部6にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0033】
<表面改質装置の構成>
次に、表面改質装置30の構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、表面改質装置30の構成を示す模式断面図である。
【0034】
図4に示すように、表面改質装置30は、内部を密閉可能な処理容器70を有する。処理容器70の搬送領域60(
図1参照)側の側面には、上ウェハW1または下ウェハW2の搬入出口71が形成され、当該搬入出口71にはゲートバルブ72が設けられる。
【0035】
処理容器70の内部には、ステージ80が配置される。ステージ80は、たとえば下部電極であり、たとえばアルミニウムなどの導電性材料で構成される。ステージ80の下方には、たとえばモータなどを備えた複数の駆動部81が設けられる。複数の駆動部81は、ステージ80を昇降させる。
【0036】
ステージ80と処理容器70の内壁との間には、複数のバッフル孔が設けられた排気リング103が配置される。排気リング103により、処理容器70内の雰囲気が処理容器70内から均一に排気される。
【0037】
ステージ80の下面には、導体で形成された給電棒104が接続される。給電棒104には、たとえばブロッキングコンデンサなどからなる整合器105を介して、第1の高周波電源106が接続される。プラズマ処理時には、第1の高周波電源106から所与の高周波電圧がステージ80に印加される。
【0038】
処理容器70の内部には、上部電極110が配置される。ステージ80の上面と上部電極110の下面とは、互いに平行に、所与の間隔をあけて対向して配置されている。ステージ80の上面と上部電極110の下面との間隔は、駆動部81により調整される。
【0039】
上部電極110は接地され、グランド電位に接続されている。このように上部電極110が接地されているため、プラズマ処理中、上部電極110の下面の損傷を抑制することができる。
【0040】
このように、第1の高周波電源106から下部電極であるステージ80に、高周波電圧が印加されることにより、処理容器70の内部にプラズマが発生する。
【0041】
実施形態において、ステージ80、給電棒104、整合器105、第1の高周波電源106、上部電極110、および整合器は、処理容器70内に処理ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生機構の一例である。なお、第1の高周波電源106は、上述の制御装置4の制御部5によって制御される。
【0042】
上部電極110の内部には中空部120が形成されている。中空部120には、ガス供給管121が接続されている。ガス供給管121は、内部に処理ガスや除電用ガスを貯留するガス供給源122に連通している。また、ガス供給管121には、処理ガスや除電用ガスの流れを制御するバルブや流量調整部などを含む供給機器群123が設けられている。
【0043】
そして、ガス供給源122から供給された処理ガスや除電用ガスは、供給機器群123で流量制御され、ガス供給管121を介して、上部電極110の中空部120に導入される。処理ガスには、たとえば酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガスなどが用いられる。また、除電用ガスには、たとえば窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが用いられる。
【0044】
中空部120の内部には、処理ガスや除電用ガスの均一拡散を促進するためのバッフル板124が設けられている。バッフル板124には、多数の小孔が設けられている。上部電極110の下面には、中空部120から処理容器70の内部に処理ガスや除電用ガスを噴出させる多数のガス噴出口125が形成されている。
【0045】
処理容器70には、吸気口130が形成される。吸気口130には、処理容器70の内部の雰囲気を所与の真空度まで減圧する真空ポンプ131に連通する吸気管132が接続される。
【0046】
ステージ80の上面、すなわち上部電極110との対向面は、上ウェハW1および下ウェハW2よりも大きい径を有する平面視円形の水平面である。かかるステージ80の上面にはステージカバー90が載置され、上ウェハW1または下ウェハW2は、かかるステージカバー90の載置部91上に載置される。
【0047】
<接合装置の構成>
次に、接合装置41の構成について、
図5および
図6を参照しながら説明する。
図5は、実施形態に係る接合装置41の構成を示す模式平面図であり、
図6は、実施形態に係る接合装置41の構成を示す模式側面図である。
【0048】
図5に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器190を有する。処理容器190における搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tの搬入出口191が形成され、当該搬入出口191には開閉シャッタ192が設けられる。
【0049】
処理容器190の内部は、内壁193によって搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口191は、搬送領域T1における処理容器190の側面に形成される。また、内壁193にも、上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tの搬入出口194が形成される。
【0050】
また、処理容器190の内部は、図示しない湿度保持機構によって、所与の一定の湿度に維持されている。これにより、接合装置18は、上ウェハW1と下ウェハW2との接合処理を安定した環境で実施することができる。
【0051】
搬送領域T1のY軸負方向側には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tを一時的に載置するためのトランジション200が設けられる。トランジション200は、たとえば2段に形成され、上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tのいずれか2つを同時に載置することができる。
【0052】
搬送領域T1には、搬送機構201が設けられる。搬送機構201は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。そして、搬送機構201は、搬送領域T1内、または搬送領域T1と処理領域T2との間で上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tを搬送する。
【0053】
搬送領域T1のY軸正方向側には、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調整する位置調整機構210が設けられる。かかる位置調整機構210では、図示しない保持部に吸着保持された上ウェハW1および下ウェハW2を回転させながら図示しない検出部で上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出する。
【0054】
これにより、位置調整機構210は、当該ノッチ部の位置を調整して上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調整する。また、搬送領域T1には、上ウェハW1の表裏面を反転させる反転機構220が設けられる。
【0055】
また、
図6に示すように、処理領域T2には、上チャック230と下チャック231とが設けられる。上チャック230は、上ウェハW1を上方から吸着保持する。また、下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2を下方から吸着保持する。上チャック230は第1保持部の一例であり、下チャック231は第2保持部の一例である。
【0056】
上チャック230は、
図6に示すように、処理容器190の天井面に設けられた支持部材300に支持される。支持部材300には、下チャック231に保持された下ウェハW2の接合面W2jを撮像する図示しない上部撮像部が設けられる。かかる上部撮像部は、上チャック230に隣接して設けられる。
【0057】
また、
図5および
図6に示すように、下チャック231は、当該下チャック231の下方に設けられた第1下チャック移動部310に支持される。第1下チャック移動部310は、後述するように下チャック231を水平方向(Y軸方向)に移動させる。また、第1下チャック移動部310は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
【0058】
図5に示すように、第1下チャック移動部310には、上チャック230に保持された上ウェハW1の接合面W1jを撮像する図示しない下部撮像部が設けられている。かかる下部撮像部は、下チャック231に隣接して設けられる。
【0059】
また、
図5および
図6に示すように、第1下チャック移動部310は、当該第1下チャック移動部310の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール315に取り付けられる。第1下チャック移動部310は、レール315に沿って移動自在に構成される。
【0060】
一対のレール315は、第2下チャック移動部316に設けられる。第2下チャック移動部316は、当該第2下チャック移動部316の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール317に取り付けられる。
【0061】
そして、第2下チャック移動部316は、レール317に沿って移動自在に、すなわち下チャック231を水平方向(X軸方向)に移動させるように構成される。なお、一対のレール317は、処理容器190の底面に設けられた載置台318上に設けられる。
【0062】
次に、接合装置41における上チャック230と下チャック231の構成について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、実施形態に係る接合装置41の上チャック230および下チャック231の構成を示す模式側面図である。
【0063】
上チャック230は、略円板状であり、
図7に示すように、複数、たとえば3つの領域230a、230b、230cに区画される。これらの領域230a、230b、230cは、上チャック230の中心部から周縁部(外周部)に向けてこの順で設けられる。領域230aは平面視において円形状を有し、領域230b、230cは平面視において環状形状を有する。
【0064】
各領域230a、230b、230cには、
図7に示すように上ウェハW1を吸着保持するための吸引口240a、240b、240cがそれぞれ独立して設けられる。各吸引口240a、240b、240cには、異なる吸着圧力発生部241a、241b、241cがそれぞれ接続される。このように、上チャック230は、各領域230a、230b、230c毎に上ウェハW1に対する吸着圧力を発生可能に構成されている。
【0065】
上チャック230の中心部には、当該上チャック230を厚み方向に貫通する貫通孔243が形成される。この上チャック230の中心部は、当該上チャック230に吸着保持される上ウェハW1の中心部W1aに対応している。そして、貫通孔243には、基板押圧機構250の押圧ピン253が挿通するようになっている。
【0066】
基板押圧機構250は、上チャック230の上面に設けられ、押圧ピン253によって上ウェハW1の中心部W1aを押圧する。押圧ピン253は、シリンダ部251およびアクチュエータ部252によって鉛直軸沿いに直動可能に設けられ、先端部において対向する基板(実施形態では、上ウェハW1)をかかる先端部で押圧する。
【0067】
具体的には、押圧ピン253は、後述する上ウェハW1および下ウェハW2の接合時に、まず上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aとを当接させるスタータとなる。
【0068】
下チャック231は、略円板状であり、複数、たとえば2つの領域231a、231bに区画される。これらの領域231a、231bは、下チャック231の中心部から周縁部に向けてこの順で設けられる。そして、領域231aは平面視において円形状を有し、領域231bは平面視において環状形状を有する。
【0069】
各領域231a、231bには、
図7に示すように下ウェハW2を吸着保持するための吸引口260a、260bがそれぞれ独立して設けられる。各吸引口260a、260bには、異なる吸着圧力発生部280a、280bがそれぞれ接続される。
【0070】
このように、下チャック231は、各領域231a、231b毎に下ウェハW2に対する吸着圧力を発生可能に構成されている。なお、以下の説明では、下ウェハW2に対する吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部280a、280bを総称して「吸着圧力発生部280」と呼称する。
【0071】
また、下チャック231は、鉛直方向に昇降自在な複数のリフトピン265と、かかる複数のリフトピン265を駆動する駆動部266とを備える。下チャック231にあっては、たとえば、リフトピン265が吸着面271から突出された状態で下ウェハW2を載置して受け取り、その後リフトピン265が下降して下ウェハW2を吸着面271に接触させる。
【0072】
続いて下チャック231にあっては、吸着圧力発生部280a,280bが作動し、
図7に示すように、各領域231a,231bにおいて下ウェハW2を吸着保持する。
【0073】
下チャック231の周縁部には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合基板Tが当該下チャック231から飛び出したり、滑落したりすることを防止するストッパ部材263が複数箇所、たとえば5箇所に設けられる。
【0074】
<接合システムが実行する処理>
つづいて、
図8を参照しながら、実施形態に係る接合システム1が実行する処理の詳細について説明する。なお、以下に示す各種処理は、制御装置4の制御部5による制御に基づいて実行される。
【0075】
図8は、実施形態に係る接合システム1が実行する処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所与の載置板11に載置される。
【0076】
その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
【0077】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。このとき、ゲートバルブ72が開かれており、処理容器70内が大気圧に開放されている。表面改質装置30では、所与の減圧雰囲気下において、処理ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。
【0078】
このように発生したイオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、接合面W1jの最表面にシリコン原子のダングリングボンドが形成され、上ウェハW1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
【0079】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。
【0080】
そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散する。これにより、表面改質装置30では、改質された上ウェハW1の接合面W1jにおけるシリコン原子のダングリングボンドにOH基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される(ステップS102)。また、当該純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される。
【0081】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウェハW1は、トランジション200を介して位置調整機構210に搬送される。そして位置調整機構210によって、上ウェハW1の水平方向の向きが調整される(ステップS103)。
【0082】
その後、位置調整機構210から反転機構220に上ウェハW1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、反転機構220を動作させることにより、上ウェハW1の表裏面が反転される(ステップS104)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
【0083】
その後、反転機構220が回動して上チャック230の下方に移動する。そして、反転機構220から上チャック230に上ウェハW1が受け渡される。上ウェハW1は、上チャック230にその非接合面W1nが吸着保持される(ステップS105)。
【0084】
上ウェハW1に上述したステップS101~S105の処理が行われている間、下ウェハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
【0085】
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS106)。なお、かかるステップS106は、上述のステップS101と同様の処理である。
【0086】
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化される(ステップS107)。なお、かかるステップS107は、上述のステップS102と同様の処理である。
【0087】
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウェハW2は、トランジション200を介して位置調整機構210に搬送される。そして位置調整機構210によって、下ウェハW2の水平方向の向きが調整される(ステップS108)。
【0088】
その後、下ウェハW2は、下チャック231に搬送され、下チャック231に吸着保持される(ステップS109)。下ウェハW2は、ノッチ部を予め決められた方向に向けた状態で、下チャック231にその非接合面W2nが吸着保持される。
【0089】
次に、上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調整が行われる(ステップS110)。
【0090】
次に、第1下チャック移動部310によって下チャック231を鉛直上方に移動させて、上チャック230と下チャック231の鉛直方向位置の調整を行う。これにより、当該上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調整が行われる(ステップS111)。
【0091】
このとき、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間の間隔は予め設定された距離、たとえば80μm~100μmになっている。
【0092】
次に、基板押圧機構250の押圧ピン253を下降させることによって、上ウェハW1の中心部W1aを押し下げて、上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aとを所定の力で押圧する(ステップS112)。
【0093】
これにより、押圧された上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aとの間で接合が開始する。具体的には、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101、S106において改質されているため、まず、接合面W1j、W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j、W2j同士が接合される。
【0094】
さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102、S107において親水化されているため、接合面W1j、W2j間のOH基が水素結合し、接合面W1j、W2j同士が強固に接合される。
【0095】
その後、上ウェハW1と下ウェハW2との接合領域は、上ウェハW1および下ウェハW2の中心部から外周部へ拡大していく。その後、押圧ピン253によって上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aを押圧した状態で、吸着圧力発生部241bの作動を停止して、領域230bにおける吸引口240bからの上ウェハW1の真空引きを停止する。
【0096】
そうすると、領域230bに保持されていた上ウェハW1が下ウェハW2上に落下する。さらにその後、吸着圧力発生部241cの作動を停止して、領域230cにおける吸引口240cからの上ウェハW1の真空引きを停止する。
【0097】
このように上ウェハW1の中心部W1aから外周部に向けて、上ウェハW1の真空引きを段階的に停止し、上ウェハW1が下ウェハW2上に段階的に落下して当接する。そして、上述した接合面W1j、W2j間のファンデルワールス力と水素結合による接合が中心部W1a、W2aから外周部に向けて順次拡がる。
【0098】
こうして、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2が接合される(ステップS113)。
【0099】
その後、押圧ピン253を上チャック230まで上昇させる。また、下チャック231において吸引口260a、260bからの下ウェハW2の真空引きを停止して、下チャック231による下ウェハW2の吸着保持を解除する。これにより、接合装置41での接合処理が終了する。
【0100】
<下チャックの構成>
つづいて、実施形態に係る下チャック231の詳細な構成について、
図9~
図12を参照しながら説明する。
図9は、実施形態に係る下チャック231の構成を示す拡大断面図であり、
図10は、実施形態に係る下チャック231の吸着面271の構成を示す拡大上面図である。
【0101】
図9に示すように、下チャック231は、リフトピン265と、駆動部266とを有し、かかるリフトピン265を駆動部266で昇降させることにより、下ウェハW2を受け渡し可能に構成される。また、リフトピン265における所与の位置には、リップシール267が設けられる。かかるリップシール267は、シール部材の一例である。
【0102】
また、下チャック231は、下ウェハW2を保持する吸着面271が上側に設けられた筐体270を有する。かかる筐体270の内部には、リフトピン265における上側の部位およびリップシール267を収容するとともに、リフトピン265が上下に移動可能に構成される空間272が形成される。
【0103】
空間272は、開口273と、拡径部274とを有する。開口273は、リフトピン265が上昇する際にかかるリフトピン265が通過するとともに、吸着面271に露出する部位である。
【0104】
拡径部274は、開口273よりも内径が大きく、下降しているリフトピン265における上側の部位およびリップシール267が収容される部位である。なお、
図9に示すように、リフトピン265が下側のポジションに位置する際に、筐体270とリフトピン265との間の隙間は、リップシール267で塞がれる。
【0105】
また、筐体270の吸着面271は、リブ275と、複数の支持ピン276とを有する。
図10に示すように、リブ275は、開口273の周囲に沿って略円環状に形成される。複数の支持ピン276は、吸着面271の全面に略均等に配置される。
【0106】
また、
図9に示すように、リブ275の先端部と、複数の支持ピン276の先端部とは略面一に配置される。これにより、下ウェハW2を略水平に支持することができるとともに、吸着圧力発生部280からの吸着圧力を下ウェハW2の非接合面W2n全体に略均等に行き渡らせることができる。
【0107】
なお、実施形態では、開口273の周囲に円環状のリブ275が形成されることにより、吸着面271に下ウェハW2が載置される際には、かかるリブ275の内側と外側とが互いに隔離される。
【0108】
また、下チャック231は、吸着面271に吸着圧力を発生させる吸着圧力発生部280を有する。吸着圧力発生部280は、流路281と、バルブ282と、吸引機構283とを有する。流路281は、筐体270の吸着面271と吸引機構283との間に接続される。
【0109】
吸引機構283は、たとえばポンプであり、バルブ282を介して吸着面271に載置される下ウェハW2を吸引する。制御部5は、バルブ282および吸引機構283を動作させることにより、下ウェハW2に対する吸着圧力を発生させることができる。
【0110】
ここで、実施形態では、吸着圧力発生部280が、吸着面271に加えて、筐体270に形成される空間272も吸引する。たとえば、実施形態では、流路281が分岐して空間272の拡径部274にも接続されることにより、筐体270に形成される空間272も吸引される。
【0111】
そして、空間272内において、リフトピン265と筐体270との間の隙間がリップシール267で塞がれていることから、実施形態では、空間272が大気圧よりも低い圧力に制御される。たとえば、実施形態では、空間272内の圧力が、吸着面271の吸着圧力と略等しい。
【0112】
空間272が大気圧よりも低い圧力に制御されることによる効果について、以下に説明する。
図11は、参考例における下チャック231に吸着される下ウェハW2の変位のシミュレーションモデルおよびシミュレーション結果を示す図である。
【0113】
図11の(a)に示すように、この参考例では、下ウェハW2が下チャック231に吸着される際に、開口273(すなわち、空間272)が大気圧である。この場合、下ウェハW2の接合面W2jは全面が大気圧で押圧される一方、非接合面W2nは開口273に接する部位のみが大気圧で押圧される。
【0114】
すなわち、この参考例では、非接合面W2nにおいて開口273に接する部位のみが局所的に押圧されるため、
図11の(b)に示すように、開口273に接する部位が接合面W2j側(上側)に大きく変形する。
【0115】
そのため、参考例では、かかる下ウェハW2の大きな変形に起因して、上ウェハW1と下ウェハW2とが貼り合わされた重合基板Tに大きな歪み(ディストーション)が生じてしまう。
【0116】
図12は、実施形態に係る下チャック231に吸着される下ウェハW2の変位のシミュレーションモデルおよびシミュレーション結果を示す図である。
【0117】
図12の(a)に示すように、実施形態では、下ウェハW2が下チャック231に吸着される際に、開口273(すなわち、空間272)が大気圧よりも低い圧力(負圧)である。この場合、下ウェハW2の接合面W2jは全面が大気圧で押圧されるとともに、非接合面W2nは全面が負圧の空間と接している。
【0118】
すなわち、実施形態では、非接合面W2nの全体において圧力がバランスするように制御されるため、
図12の(b)に示すように、参考例と比較して下ウェハW2の変形を小さくすることができる。したがって、実施形態によれば、重合基板Tの歪みを低減することができる。
【0119】
また、実施形態では、空間272が、吸着圧力発生部280によって吸引されるとよい。これにより、空間272を吸引する吸引部を別途設ける必要がなくなることから、接合装置41の製造コストを低減することができる。
【0120】
また、実施形態では、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合される際に、筐体270とリフトピン265との間の隙間を塞ぐリップシール267が設けられるとよい。これにより、空間272を安定して負圧に制御することができることから、重合基板Tの歪みを安定して低減することができる。
【0121】
<変形例1>
つづいて、実施形態の各種変形例について、
図13~
図19を参照しながら説明する。なお、以下の各種変形例において、実施形態と同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0122】
図13は、実施形態の変形例1に係る下チャック231の構成を示す拡大断面図である。
図13に示すように、変形例1では、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合される際におけるリフトピン265の先端部265aの位置が実施形態と異なる。
【0123】
具体的には、変形例1では、リフトピン265の先端部265aが、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合される際に、複数の支持ピン276の先端部と略面一である。すなわち、変形例1では、リフトピン265の先端部265aが、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合される際に、リブ275の先端部とも略面一である。
【0124】
これにより、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合される際に、リブ275の内側でも下ウェハW2を支持することができる。この構成の効果について、以下に説明する。
図14は、実施形態の変形例1に係る下チャック231に吸着される下ウェハW2の変位のシミュレーションモデルおよびシミュレーション結果を示す図である。
【0125】
図14の(a)に示すように、変形例1では、下ウェハW2が下チャック231に吸着される際に、開口273(すなわち、空間272)が負圧であり、かつ開口273の中央部において下ウェハW2がリフトピン265の先端部265aで支持されている。
【0126】
この場合、隣接する支持ピン276同士の間隔よりも径が大きい開口273の内側において、下ウェハW2をリフトピン265の先端部265aで支持することができる。これにより、
図14の(b)に示すように、さらに下ウェハW2の変形を小さくすることができる。したがって、変形例1によれば、重合基板Tの歪みをさらに低減することができる。
【0127】
<変形例2>
図15は、実施形態の変形例2に係る下チャック231の構成を示す拡大断面図である。
図15に示すように、変形例2では、空間272を吸引する吸引部290が別途設けられる点が実施形態と異なる。
【0128】
吸引部290は、流路291と、バルブ292と、吸引機構293とを有する。流路291は、筐体270の空間272と吸引機構293との間に接続される。吸引機構293は、たとえばポンプであり、バルブ292を介して空間272を吸引する。
【0129】
制御部5は、バルブ292および吸引機構293を動作させることにより、空間272を大気圧よりも低い圧力に制御することができる。これにより、空間272を安定して負圧に制御することができることから、重合基板Tの歪みを安定して低減することができる。
【0130】
また、変形例2では、吸引部290が、空間272が吸着面271の吸着圧力よりも高い圧力になるように空間272を吸引するとよい。これにより、隣接する支持ピン276同士の間隔よりも径が大きい開口273の内側において、下ウェハW2が非接合面W2n側に変形することを抑制することができる。
【0131】
したがって、変形例2によれば、重合基板Tの歪みをさらに低減することができる。
【0132】
<変形例3>
図16は、実施形態の変形例3に係る下チャック231の構成を示す拡大断面図であり、
図17は、実施形態の変形例3に係る下チャック231の吸着面271の構成を示す拡大上面図である。
図16および
図17に示すように、変形例3では、吸着面271の構成が実施形態と異なる。
【0133】
具体的には、変形例3では、吸着面271において、開口273の周囲全体にリブ275が設けられるのではなく、開口273の周囲に沿って複数の支持ピン276が設けられる。
【0134】
このように、下ウェハW2における開口273の近傍を線状のリブ275で支持するのではなく、点状の複数の支持ピン276で支持することにより、吸着面271におけるその他の部位との支持状態の違いによる下ウェハW2の変形を抑制することができる。
【0135】
したがって、変形例3によれば、重合基板Tの歪みをさらに低減することができる。
【0136】
また、変形例3では、リフトピン265の先端部265aが、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合される際に、リブ275の先端部と略面一であるとよい。これにより、隣接する支持ピン276同士の間隔よりも径が大きい開口273の内側において、下ウェハW2をリフトピン265の先端部265aで支持することができる。
【0137】
したがって、変形例3によれば、さらに下ウェハW2の変形を小さくすることができることから、重合基板Tの歪みをさらに低減することができる。
【0138】
なお、
図16の例では、流路281が空間272にも接続される例について示しているが、流路281が空間272に接続されていなくてもよい。これによっても、吸着圧力発生部280は、吸着面271を経由して空間272を負圧に制御することができる。
【0139】
<変形例4>
図18は、実施形態の変形例4に係る下チャック231の構成を示す拡大断面図である。上記の実施形態では、筐体270とリフトピン265との間の隙間を塞ぐシール部材として、リップシール267を用いた例について示したが、本開示のシール部材はリップシールに限られない。
【0140】
たとえば、
図18に示すように、筐体270とリフトピン265との間の隙間を塞ぐシール部材として、Oリングシール268が用いられてもよい。これによっても、空間272を安定して負圧に制御することができることから、重合基板Tの歪みを安定して低減することができる。
【0141】
<変形例5>
図19は、実施形態の変形例5に係る下チャック231の構成を示す拡大断面図である。上記の実施形態では、筐体270とリフトピン265との間の隙間をシール部材で塞ぐことにより、空間272を安定して負圧に制御する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。
【0142】
たとえば、
図19に示すように、下チャック231にベローズ269が設けられてもよい。かかるベローズ269は、筐体270と駆動部266との間に配置されるとともに、内部が空間272に接続される。また、ベローズ269は、リフトピン265における下側の部位を収容する。
【0143】
これによっても、リフトピン265が駆動部266によって昇降する際に、空間272を安定して負圧に制御することができる。したがって、変形例5によれば、重合基板Tの歪みを安定して低減することができる。
【0144】
また、変形例5によれば、リフトピン265が昇降する際に発生するパーティクルの量を低減することができることから、重合基板Tの接合品質を向上させることができる。
【0145】
実施形態に係る接合装置41は、第1保持部(上チャック230)と、第2保持部(下チャック231)と、吸着圧力発生部280と、リフトピン265と、を備える。第1保持部(上チャック230)は、第1基板(上ウェハW1)を保持する。第2保持部(下チャック231)は、第1保持部(上チャック230)と対向する位置に設けられ、第1基板(上ウェハW1)に接合される第2基板(下ウェハW2)を吸着する吸着面271を有する。吸着圧力発生部280は、吸着面271に吸着圧力を発生させる。リフトピン265は、吸着面271上の第2基板(下ウェハW2)を第2保持部(下チャック231)に対して離間させる。また、第2保持部(下チャック231)には、リフトピン265が通過する開口273を含む空間272が設けられ、空間272は、大気圧よりも低い圧力に制御される。これにより、重合基板Tの歪みを低減することができる。
【0146】
また、実施形態に係る接合装置41において、空間272は、吸着圧力発生部280によって吸引される。これにより、接合装置41の製造コストを低減することができる。
【0147】
また、実施形態に係る接合装置41は、空間272を大気圧よりも低い圧力に吸引する吸引部290、をさらに備える。これにより、重合基板Tの歪みを安定して低減することができる。
【0148】
また、実施形態に係る接合装置41において、吸引部290は、空間272が吸着圧力よりも高い圧力になるように空間272を吸引する。これにより、重合基板Tの歪みをさらに低減することができる。
【0149】
また、実施形態に係る接合装置41において、第2保持部(下チャック231)は、筐体270と、シール部材(リップシール267、Oリングシール268)と、を有する。筐体270は、空間272を形成する。シール部材(リップシール267、Oリングシール268)は、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)とが接合される際に、筐体270とリフトピン265との間の隙間を塞ぐ。これにより、重合基板Tの歪みを安定して低減することができる。
【0150】
また、実施形態に係る接合装置41において、第2保持部(下チャック231)は、筐体270と、駆動部266と、ベローズ269とを有する。筐体270は、空間272を形成する。駆動部266は、リフトピン265を駆動する。ベローズ269は、筐体270と駆動部266との間に配置されるとともに、内部が空間272に接続される。これにより、重合基板Tの歪みを安定して低減することができる。
【0151】
また、実施形態に係る接合装置41において、吸着面271は、第2基板(下ウェハW2)を支持する複数の支持ピン276を有する。また、リフトピン265の先端部265aは、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)とが接合される際に、複数の支持ピン276の先端部と略面一である。これにより、重合基板Tの歪みをさらに低減することができる。
【0152】
また、実施形態に係る接合装置41において、吸着面271は、第2基板(下ウェハW2)を支持する複数の支持ピン276を有する。また、支持ピン276は、開口273の周囲に沿って配置される。これにより、重合基板Tの歪みをさらに低減することができる。
【0153】
また、実施形態に係る接合方法は、第1基板(上ウェハW1)を保持する工程と、第2基板(下ウェハW2)を保持する工程と、接合する工程と、を含む。第1基板(上ウェハW1)を保持する工程は、第1保持部(上チャック230)で第1基板(上ウェハW1)を保持する。第2基板(下ウェハW2)を保持する工程は、第1保持部(上チャック230)と対向する位置に設けられる第2保持部(下チャック231)の吸着面271に吸着圧力を発生させて第2基板(下ウェハW2)を保持する。接合する工程は、第1基板(上ウェハW1)と第2基板(下ウェハW2)とを接合する。また、接合する工程では、第2保持部(下チャック231)に設けられ、吸着面271上の第2基板(下ウェハW2)を第2保持部に対して離間させるリフトピン265が通過する開口273を含む空間272が、大気圧よりも低い圧力に制御される。これにより、重合基板Tの歪みを低減することができる。
【0154】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、下チャック231に設けられるリフトピン265が挿通する空間272を負圧に制御する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。
【0155】
たとえば、本開示において、上チャック230に設けられるリフトピンが挿通する開口を含んだ空間が負圧に制御されてもよい。これにより、上ウェハW1の変形を小さくすることができることから、重合基板Tの歪みを低減することができる。
【0156】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0157】
1 接合システム
5 制御部
41 接合装置
230 上チャック(第1保持部の一例)
231 下チャック(第2保持部の一例)
265 リフトピン
266 駆動部
267 リップシール(シール部材の一例)
268 Oリングシール(シール部材の一例)
269 ベローズ
270 筐体
271 吸着面
272 空間
273 開口
275 リブ
276 支持ピン
280 吸着圧力発生部
290 吸引部
W1 上ウェハ(第1基板の一例)
W2 下ウェハ(第2基板の一例)