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特開2023-23827ポリロタキサン、架橋EPDM組成物及びウエザストリップ
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  • 特開-ポリロタキサン、架橋EPDM組成物及びウエザストリップ 図1
  • 特開-ポリロタキサン、架橋EPDM組成物及びウエザストリップ 図2
  • 特開-ポリロタキサン、架橋EPDM組成物及びウエザストリップ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023827
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ポリロタキサン、架橋EPDM組成物及びウエザストリップ
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/08 20060101AFI20230209BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20230209BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230209BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20230209BHJP
   C08G 81/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C08G65/08
C08L23/26
C08L71/02
C08G63/08
C08G81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129719
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 明繁
(72)【発明者】
【氏名】安藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 耕三
(72)【発明者】
【氏名】眞弓 皓一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4J029
4J031
【Fターム(参考)】
4J002BB20W
4J002CH02X
4J005AA04
4J005BD05
4J029EG08
4J029JC712
4J029JE012
4J029KH01
4J031AA02
4J031AA12
4J031AA28
4J031AA49
4J031AA53
4J031AB01
4J031AC13
4J031AD03
(57)【要約】
【課題】ヒドロシリル基を有するポリロタキサンを固体化後でも主要な溶媒に再溶解可能とし、もって固体での取扱を可能にするとともに、該ポリロタキサンを架橋剤とすることで引張強さと破断伸びが大きく向上した架橋EPDM組成物及びウエザストリップを提供する。
【解決手段】 直鎖状分子と環状分子と封止基とを有するポリロタキサンにおいて、環状分子の側鎖がカプロラクトン構造と末端のヒドロシリル基とを含む。また、ポリロタキサンは、環状分子にヒドロシリル基を含み、固体であり、クロロホルム、テトラヒドロフラン及びトルエンのいずれにも溶解可能である。架橋EPDM組成物は、これらのポリロタキサンを架橋剤として、EPDMポリマーが架橋されてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状分子と、前記直鎖状分子を串刺し状に包接する環状分子と、前記直鎖状分子の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封止基とを有するポリロタキサンにおいて、
前記環状分子の側鎖がカプロラクトン構造と末端のヒドロシリル基とを含むことを特徴とするポリロタキサン。
【請求項2】
直鎖状分子と、前記直鎖状分子を串刺し状に包接する環状分子と、前記直鎖状分子の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封止基とを有するポリロタキサンにおいて、
前記環状分子にヒドロシリル基を含み、固体であり、クロロホルム、テトラヒドロフラン及びトルエンのいずれにも溶解可能であることを特徴とするポリロタキサン。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポリロタキサンを架橋剤として、EPDMポリマーが架橋されていることを特徴とする架橋EPDM組成物。
【請求項4】
引張強さが10MPa以上であり、破断伸びが1000%以上である請求項3記載の架橋EPDM組成物。
【請求項5】
請求項3又は4記載の架橋EPDM組成物で形成されているウエザストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリロタキサンとそれを含む架橋EPDM組成物及びウエザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPDM)は、耐オゾン性、耐候性、耐水性等に優れ、ウエザストリップ、ホース、ベルト等の材料として広く使用されているが、破断伸びと引張強さは格別優れてはいない。
【0003】
近年、ポリロタキサンをゴムの架橋剤として機能させることで、従来の架橋ゴムと異なる物性を発現させる試みがある。ポリロタキサンは、特許文献1に開示されているように、環状分子に直鎖状分子が相対スライド可能に貫通し、直鎖状分子の両末端に配された封鎖基により環状分子が脱離しない構造の分子集合体であり、スライドリングマテリアルとも称されている。
【0004】
特許文献2には、ビニル基を有するポリロタキサンをEPDMと硫黄架橋した架橋EPDMについて、引張伸長率(破断伸び)・引張強さ・圧縮永久歪みといった諸特性が改善されたことが開示されている。しかし、その破断伸びは130~460%、引張強さは1.48~6.59MPaであり、さらに改善の余地があった。
【0005】
そこで、本出願人は先に、ヒドロシリル基を有する環状分子をもつポリロタキサンを開発し、該ポリロタキサンを架橋剤としEPDM等のポリマーを架橋した架橋高分子組成物が、破断伸び1000%以上を示しうることを見出した(特願2020-021219号(本出願時において未公開))。このポリロタキサンは、溶媒(クロロホルム)中で合成した後、そのまま溶液の状態で使用可能であるが、溶液は取扱性が良くない。とはいえ、取扱性を改善すべく、溶媒を揮発させて固体のポリロタキサンとすると、クロロホルムその他の主要な溶媒への再溶解が不可能となり、EPDM等のポリマーと溶液系で混合させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/080469号
【特許文献2】特開2015-203037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒドロシリル基を有するポリロタキサンが、固体化後に主要な溶媒への再溶解が不可能となる理由は、水素結合により化合物が凝集するためと考えられる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ヒドロシリル基を有するポリロタキサンを固体化後でも主要な溶媒に再溶解可能とし、もって固体での取扱を可能にするとともに、該ポリロタキサンを架橋剤とすることで引張強さと破断伸びが大きく向上した架橋EPDM組成物及びウエザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]ポリロタキサン
直鎖状分子と、前記直鎖状分子を串刺し状に包接する環状分子と、前記直鎖状分子の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封止基とを有するポリロタキサンにおいて、
前記環状分子の側鎖がカプロラクトン構造と末端のヒドロシリル基とを含むことを特徴とするポリロタキサン。
【0010】
(作用)
環状分子の側鎖がカプロラクトン構造と末端のヒドロシリル基とを含むことにより、分子間距離が長くなり、水素結合が抑制される結果、化合物の凝集が抑制される。これにより、ヒドロシリル基を有するポリロタキサンでありながら、固体化後に主要な溶媒に再溶解可能であり、もって固体での取扱が可能となる。
【0011】
[2]ポリロタキサン
直鎖状分子と、前記直鎖状分子を串刺し状に包接する環状分子と、前記直鎖状分子の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封止基とを有するポリロタキサンにおいて、
前記環状分子にヒドロシリル基を含み、固体であり、クロロホルム、テトラヒドロフラン及びトルエンのいずれにも溶解可能であることを特徴とするポリロタキサン。
【0012】
(作用)
ヒドロシリル基を有するポリロタキサンが、固体で、クロロホルム、テトラヒドロフラン及びトルエンという主要な溶媒のいずれにもに再溶解可能であることにより、これらの溶媒を適宜選択して使用し、EPDM等のポリマーと溶液系で均一に混合させることができ、該ポリロタキサンによる架橋が可能となる。
ポリロタキサン合成用の溶媒とポリマー架橋用の溶媒とは、同じものでもよいし、異なるものでもよい。
【0013】
[3]架橋EPDM組成物
上記[1]又は[2]記載のポリロタキサンを架橋剤として、EPDMポリマーが架橋されていることを特徴とする架橋EPDM組成物。
【0014】
(作用)
架橋EPDM組成物は、上記ポリロタキサンを架橋剤として、EPDMポリマーが架橋されていることにより、引張強さと破断伸びが改善する。
架橋EPDM組成物は、引張強さが10MPa以上であり、破断伸びが1000%以上であることが好ましい。
【0015】
[4]ウエザストリップ
上記[3]又はその好ましい態様の架橋EPDM組成物で形成されているウエザストリップ。
【0016】
<作用>
架橋EPDM組成物は引張強さと破断伸びに優れるため、ウエザストリップの強度、伸び及び耐久性が改善する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヒドロシリル基を有するポリロタキサンを固体化後でも主要な溶媒に再溶解可能とし、もって固体での取扱を可能にするとともに、該ポリロタキサンを架橋剤とすることで引張強さと破断伸びが大きく向上した架橋EPDM組成物及びウエザストリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は実施例で用いたポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンの化学式を示す図、(b)は同ポリロタキサンのヒドロシリル基修飾反応を説明する模式図、(c)は実施例の架橋EPDM組成物の構造を説明する模式図である。
図2図2(a)は比較例3で用いたヒドロキシプロピル修飾ポリロタキサンのヒドロシリル基修飾反応を説明する模式図、(b)は比較例3の架橋EPDM組成物の架橋反応を化学式で示す図である。
図3図3は実施例及び比較例の架橋体の引張試験における応力-歪曲線を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.ポリロタキサン
ポリロタキサンは、環状分子がヒドロシリル基を有していること以外、特に限定されない。
環状分子としては、シクロデキストリン、クラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリル、環状アミド等を例示できる。環状分子は、シクロデキストリンが好ましく、中でもα‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンから選択されるのがよい。シクロデキストリンとともに他の環状分子が含有されていてもよい。
【0020】
直鎖状分子としては、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテル等を例示できる。直鎖状分子は、ポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールとともに他の直鎖状分子が含有されていてもよい。
【0021】
封鎖基としては、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを例示できる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを例示できる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類等を例示できる。ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類である。
【0022】
2.EPDMポリマー
EPDMポリマーは側鎖に二重結合を有し、該二重結合とポリロタキサンのヒドロシリル基とが化学反応する。
EPDMとしては、特に限定されないが、二重結合はビニリデン基を含むことが好ましく、そのようなポリマーとしてはVNB(5-ビニル-2-ノルボルネン)-EPDMを例示できる。
【0023】
3.架橋EPDM組成物
架橋EPDM組成物の製造方法としては、特に限定されないが、触媒の存在下で、前記環状分子のヒドロシリル基と前記EPDMポリマーの二重結合を化学反応させることが好ましい。
触媒としては、特に限定されないが、白金触媒(白金錯体触媒も含む。)、白金族触媒(白金族錯体触媒も含む。)を例示できる。
【0024】
4.ウエザストリップ
ウエザストリップとしては、特に限定されないが、車体のドア開口部、サイドウィンドウ、ボンネット開口部、トランク開口部、ラッゲージ開口部、ルーフサイド等に取り付けられるウエザストリップ、窓枠部に取り付けられてガラスが摺接するガラスラン等を例示できる。
【実施例0025】
以下、本発明を具体化した実施例について比較例と共に、次の順に説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
<1>ポリカプロラクトン修飾ポリロタキサン
<2>ヒドロシリル基修飾されたポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンの合成
<3>ヒドロシリル基修飾されたヒドロキシプロピル修飾ポリロタキサンの合成
<4>ポリロタキサンの溶解性試験
<5>架橋体の作製
<6>特性の測定
<7>評価
【0026】
<1>ポリカプロラクトン修飾ポリロタキサン
図1(a)及び(b)左辺に示すように、環状分子が、側鎖にポリカプロラクトン構造が修飾されたシクロデキストリンであり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、封鎖基がアダマンタン基である、ポリカプロラクトン修飾ポリロタキサン(以下「PCL-PR」と略記することがある。)として、株式会社ASM製の商品名「SH1300P」(直鎖状分子の分子量11,000g/mol,全体分子量 約18万g/mol,ポリカプロラクトン繰り返し構造単位数 約8ユニット)を用いた。
なお、同社の商品名「SH2400P」(軸分子量20,000g/mol)、「SH3400P」(軸分子量35,000g/mol)を用いることもでき、その場合にも本発明の効果は得られる。
【0027】
<2>ヒドロシリル基修飾されたポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンの合成
上記ポリカプロラクトン修飾ポリロタキサン5.0gをよく乾燥したクロロホルム(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)200mLに完全に溶解させた後、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(TMDS)(東京化成工業株式会社製)を10mL加え、室温、開放系にて8時間撹拌し、図1(b)に示すとおり、環状分子の側鎖のカプロラクトン構造の末端にヒドロシリル基修飾反応を行った。
得られた反応溶液を800mLのヘキサン(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)に沈殿し、6時間程度撹拌後、ヘキサンの上澄みを除去し、沈殿物を乾燥した。
乾燥した沈殿物を、クロロホルム/ヘキサン系での溶解再沈殿により少なくとも3回精製してから、最後に40℃真空乾燥にて12時間以上乾燥し、溶媒を除去することで、図1(b)右辺に示すように、固体である、ヒドロシリル基修飾されたポリカプロラクトン修飾ポリロタキサン(以下「SiH-PCL-PR」と略記することがある。)4.5gを得た。
【0028】
<3>ヒドロシリル基修飾されたヒドロキシプロピル修飾ポリロタキサンの合成
環状分子がシクロデキストリンであり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、封鎖基がアダマンタン基であるポリロタキサンとして、国際公開第2005/080469号(特許文献1)に開示された、ヒドロキシプロピル基で修飾されたポリロタキサン(以下「HAPR」と略記することがある。)を調製した。図2(a)の左辺にHAPRを模式的に示す。
2口フラスコに、クロロホルム(富士フィルム和光純薬社製の試薬特級,200mL)、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(TMDS)(東京化成工業社製、10mL)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(東京化成工業社製、0.1mL)を順に注ぎ入れ、5分間撹拌した。
そこに、上記HAPR5gを加え、室温で撹拌した。加えた直後は溶解せずダマになったが、界面から徐々に溶解し、1~2時間程度で完全に溶解した。
HAPRがクロロホルムに溶解し始めてから、図2(a)に示す反応が終了するまで、副生成物であるアンモニアガスが発生するため、そのアンモニアガスの発生が止まったら反応終了であり(反応時間約3日程度)、図2(a)の右辺に示すヒドロシリル基修飾されたヒドロキシプロピル修飾ポリロタキサン(以下「SiH-HAPR」と略記することがある。)が生成された。アンモニア発生の確認はフェノールフタレイン溶液(50%エタノール水溶液)を指示薬として用いた。
反応終了後、クロロホルム300mLを加え希釈し、ロートとPTFEメンブレンフィルター(メルクミリポア社製、口径10μm)で濾過液を得た。
・この濾過後の溶液状態のSiH-HAPRを、下記<5>の架橋体作製に使用した。同溶液中のSiH-HAPR濃度は2.5質量%である。
・この濾過後の溶液状態のSiH-HAPRを、40℃真空乾燥にて12時間以上乾燥し、溶媒を除去することで固体であるSiH-HAPRを得て、下記<4>の溶解性試験を行った。
【0029】
<4>ポリロタキサンの溶解性試験
上記<2>で得た固体SiH-PCL-PRと、<3>で得た固体SiH-HAPRの各サンプル10mgに、溶媒1mLを加え、室温にて24時間静置した後、目視にて固形物、ゲルなどの残存を確認して溶解性を判断した。溶媒は、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、トルエンの3種類とした。
次の表1に結果を示すとおり、固体SiH-PCL-PRは3種類の溶媒のいずれにも溶解したが、固体SiH-HAPRは3種類の溶媒のいずれにも溶解しなかった。
【表1】
【0030】
<5>架橋体の作製
次の表2に示す配合(単位はg)の架橋体(架橋EPDM組成物のフィルム)を、以下のように作製した。
【表2】
【0031】
<5-1>実施例1,2
EPDMゴム(三井化学社製 VNB-EPT)560mgを、トルエン11mLに溶解させた。そこに、上記<2>で得た固体SiH-PCL-PRを実施例1では5.6mg(1wt%)、実施例2では56mg(10wt%)加えて溶解させた。均一になった溶液を、Φ90シャーレに注いだ。そこに、白金錯体触媒であるカルシュテッド触媒(karsted触媒、シグマアルドリッチ社製479519-5G)を5滴加え、攪拌して適度に混和させた。この溶液を、ドラフト中にて室温に2~3日間静置し、溶媒を揮発させて製膜した。完全に乾燥した後、100℃恒温槽中にて12時間アニーリングした。室温に戻した後、膜にエタノールを加えて洗浄後、40℃で真空乾燥することによって実施例1,2の架橋体を得た。膜厚は92μmであった。
実施例1,2では、図1(c)に示すように、SiH-PCL-PRのヒドロシリル基とEPDMの二重結合が化学反応して架橋点が生成し、架橋体が生成された。
【0032】
<5-2>比較例1~3
EPDM(三井化学社のVNB-EPDM、固体)5gをシャーレに入れ、クロロホルム(富士フィルム和光純薬社の製品コード038-02601)に溶解させ、攪拌して均一溶液とした。そこに、上記カルシュテッド触媒を5滴加え、攪拌して適度に混和させた。この溶液を、ドラフト中にて1,2日室温で溶媒を揮発させて各架橋体を成膜し、該膜を剥離した。膜の厚さは0.3mmである。次に、膜をメタノール中で12時間以上浸漬し、不純物を除去した。その後、膜を45℃、24時間以上真空乾燥し、溶媒を除去して比較例1の架橋体を得た。
EPDM90gと、テトラメチルジシラザン(TMDS、東京化成工業社の製品コードT0833)10gとをシャーレに入れ、それ以降は比較例1と同様にして、比較例2の架橋体を得た。
EPDM4.95gと、上記<3>で得た溶液状態のSiH-HAPR(固形分換算で0.05g)とをシャーレに入れ、それ以降は比較例1と同様にして、比較例3の架橋体を得た。SiH-HAPRの比率は1質量%である。比較例3では、図2(b)に示す架橋反応が起こり、SiH-HAPRのヒドロシリル基とEPDMの二重結合が化学反応することで架橋された架橋体が生成された。
【0033】
<6>特性の測定
各架橋体を短冊形(初期長20~40mm×幅10mm)に加工し、測定試料とした。ここで、架橋体ごとに初期長は相違したが、特性は初期長(及び初期長を基にした面積)で規格化して算出する数値であり、初期長の相違による影響はほぼないと考えられる。
各測定試料について、島津製作所社製の試験機「AG-X universal tester」を用いて引張速度500mm/minで長さ方向に引張試験を行い、応力-歪曲線を測定し(図3に示す)、引張強さと伸びを求めた(表2に示す)。
伸びは、比較例3については、3000%を越えて伸びたときに未破断であったが試験機のチャックが滑り出したため、その滑りがない所までの伸びとした(よって破断伸びはより大きいと考えられる)。その他の実施例1~3、比較例1,2については、破断伸びである。
【0034】
<7>評価
比較例1の引張強さと破断伸びに対して、比較例2,3の破断伸びは顕著に大きいが引張強さはやや高い程度である。
これに対して、実施例1~3は引張強さ10MPa以上、破断伸び1000~1500%といずれも十分に優れており、実用性が高く、適用範囲が広い。よって、ウエザストリップのような強度、伸び及び耐久性が要求される部品の材料として非常に適している。
【0035】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
図1
図2
図3