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特開2023-23968定着ベルト、定着装置及び画像形成装置
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  • 特開-定着ベルト、定着装置及び画像形成装置 図1
  • 特開-定着ベルト、定着装置及び画像形成装置 図2
  • 特開-定着ベルト、定着装置及び画像形成装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023968
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】定着ベルト、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129968
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】東海 智史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 紘也
(72)【発明者】
【氏名】林 裕美子
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB12
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】摺動抵抗トルクを低減でき、経時でも安定した摺動を行うことができる定着ベルトを提供する。
【解決手段】ニップ形成部材103により内面側から支持され、該ニップ形成部材に摺動しながら回転して記録媒体上のトナー像を前記記録媒体に定着させる定着ベルト101であって、金属からなる基材と、該基材よりも内周側であって前記ニップ形成部材に摺動する摺動層とを有し、前記摺動層はポリイミド系樹脂を含み、該摺動層の弾性仕事率が70%以上85%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップ形成部材により内面側から支持され、該ニップ形成部材に摺動しながら回転して記録媒体上のトナー像を前記記録媒体に定着させる定着ベルトであって、
金属からなる基材と、該基材よりも内周側であって前記ニップ形成部材に摺動する摺動層とを有し、
前記摺動層はポリイミド系樹脂を含み、該摺動層の弾性仕事率が70%以上85%以下であることを特徴とする定着ベルト。
【請求項2】
前記ポリイミド系樹脂は、エーテル結合を含まないことを特徴とする請求項1に記載の定着ベルト。
【請求項3】
前記摺動層の硬度は、前記ニップ形成部材の硬度よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ベルト。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の定着ベルトと、
前記定着ベルトと対向する位置に配置される加圧部材と、
前記定着ベルトを内面側から支持し、定着ニップを形成するニップ形成部材と、を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
前記ニップ形成部材は、前記定着ベルトを加熱する面状の発熱体であることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体上のトナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置と、を備え、
前記定着装置は、請求項4又は5に記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ベルト、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の定着プロセスにおいて、省エネやコンパクト化によるコストダウンなどが主流となり、摺動定着技術が多く用いられている。摺動定着技術では主に定着ベルトの内周面とそれに対となる部材とで滑らせることが多い。
【0003】
定着ベルトの内周面には摺動層を設ける場合が多く、また摺動部分には潤滑剤が用いられていることが主流である。従前より、いかにして摺動抵抗を少なくするか、耐久性を向上させるか技術開発が進んでいる。
【0004】
特許文献1では、定着ベルトの摺擦層を、第一ポリイミド前駆体と、前記第一ポリイミド前駆体よりも損失弾性率が大きい第二ポリイミド前駆体とを混合して形成されたポリイミド樹脂層にすることが開示されている。特許文献1によれば、上記構成とすることにより、優れた柔軟性と、高い耐摩耗性とを備えた構成を実現できるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、摺動抵抗トルクが高くなり、長期にわたって使用する場合の耐久性等について更なる向上が求められている。摺動抵抗トルクが高い場合、経時での使用により定着ベルトが破断する場合がある。
【0006】
そこで本発明は、摺動抵抗トルクを低減でき、経時でも安定した摺動を行うことができる定着ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の定着ベルトは、ニップ形成部材により内面側から支持され、該ニップ形成部材に摺動しながら回転して記録媒体上のトナー像を前記記録媒体に定着させる定着ベルトであって、金属からなる基材と、該基材よりも内周側であって前記ニップ形成部材に摺動する摺動層とを有し、前記摺動層はポリイミド系樹脂を含み、該摺動層の弾性仕事率が70%以上85%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、摺動抵抗トルクを低減でき、経時でも安定した摺動を行うことができる定着ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の定着装置の一例を示す概略図である。
図2】定着ベルトの一例を説明するための断面図である。
図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る定着ベルト、定着装置及び画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
(定着ベルト及び定着装置)
本発明の定着ベルトは、ニップ形成部材により内面側から支持され、該ニップ形成部材に摺動しながら回転して記録媒体上のトナー像を前記記録媒体に定着させる定着ベルトであって、金属からなる基材と、該基材よりも内周側であって前記ニップ形成部材に摺動する摺動層とを有し、前記摺動層はポリイミド系樹脂を含み、該摺動層の弾性仕事率が70%以上85%以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の定着装置は、本発明の定着ベルトと、前記定着ベルトと対向する位置に配置される加圧部材と、前記定着ベルトを内面側から支持し、定着ニップを形成するニップ形成部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の定着装置の一例について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る定着装置の断面概略図である。
【0014】
まず、本実施形態の定着装置100について概要を説明する。
本実施形態の定着装置は、定着ベルト101と、定着ベルト101と対向する位置に配置される加圧ローラ102と、定着ベルト101を内面側から支持し、定着ニップを形成するニップ形成部材103と、を備える。必要に応じてその他の部材を備える。
【0015】
定着ベルト101は、ニップ形成部材103により内面側から支持され、該ニップ形成部材103に摺動しながら回転して記録媒体107上のトナー像106を記録媒体107に定着させる。定着ベルト101は、例えば内部が中空な表面無端移動体が用いられる。
【0016】
加圧ローラ102は、定着ベルト101に対向して備えられた加圧部材の一例であり、回転可能に設けられた回転体である。
【0017】
定着ベルト101の内側には、定着ニップ部N(定着ニップ、ニップ部、ニップなどとも称する)を形成するためのニップ形成部材103が配置されている。ニップ形成部材103は、定着ベルト101を加熱する。また、ニップ形成部材102を固定する固定部材104が配置されており、固定部材104としては、例えば固定用パッドを用いる。
【0018】
定着ベルト101の内側とニップ形成部材103の摺動面には、潤滑性を確保するために潤滑剤を付与してもよい。
【0019】
本実施形態において、ニップ形成部材103は、定着ニップ部Nのバックアップ部材としての機能も果たしている。本実施形態におけるニップ形成部材103は、定着ニップ部Nを形成するとともに、定着ベルト101を加熱する熱源としても機能する。
【0020】
上記の他にも、本実施形態の定着装置は、定着ベルト101の温度を検知する温度検知手段としての温度センサを有していてもよい。また、本実施形態の定着装置は、定着ベルト101から記録媒体107を分離する記録媒体分離手段としての分離部材を有していてもよい。また、本実施形態の定着装置は、加圧ローラ102を定着ベルト101へ加圧する加圧手段を有していてもよい。
【0021】
<定着ベルト>
本実施形態における定着ベルト101としては、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材を用いることができる。
【0022】
定着ベルトの一例について、図2を用いて説明する。図2は、定着ベルト101の断面図を示す。本例の定着ベルト101は、金属からなる基材202と、該基材202よりも内周側であってニップ形成部材103に摺動する摺動層201とを有し、必要に応じてその他の層を有している。
【0023】
<<基材>>
基材202における金属としては、適宜選択することができ、例えば、ニッケル、銅、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。また、基材202は、単層であってもよいし、複数の層であってもよい。
【0024】
<<摺動層>>
基材202の内周面には、ポリイミド系樹脂を含む摺動層201が設けられている。
摺動層201に用いられるポリイミド系樹脂としては、例えば、下記構造式(1)に示すような化学構造式をもつポリイミド(BPDA/PDA)を用いることができる。
【0025】
【化1】
【0026】
摺動層201に用いられるポリイミド系樹脂は、上記構造式(1)に示すように、エーテル結合を含まないことが好ましい。摺動層にエーテル結合を含まないことによって、潤滑剤との親和性が担保され、安定した駆動トルクを得ることができるため、装置を高寿命にすることができる。
【0027】
また、摺動層201に用いられるポリイミド系樹脂としては、上記の他にも、例えば下記構造式(2)に示すような化学構造式をもつポリイミド(BPDA/ODA)を用いてもよい。下記構造式(2)に示すポリイミド系樹脂を用いることで、屈曲性や伸びなどの柔軟性を付与することができる。
【0028】
【化2】
【0029】
また、構造式(1)に示すポリイミドや構造式(2)に示すポリイミドを混合して用いてもよい。混合することで耐熱性と柔軟性を両立するような機能を付与することができる。
【0030】
なお、エーテル結合の一般的な化学式を下記一般式(1)に示す。一般式(1)中、RとR’は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
【化3】
【0032】
上記の他にも、ポリイミド系樹脂としては、例えばポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。PAIは融点が高く、高温化で使用が可能となる。
【0033】
摺動層201に用いられるポリイミド系樹脂は、例えばワニスという溶媒に溶解された状態のものを用いることができる。例えば、ワニスに溶解されたポリイミド系樹脂もしくはポリイミド系樹脂前駆体と溶媒を混合させて得た混合液を、例えばスプレーコートにより基材202に塗布する。なお、混合液には、耐摩耗性を付与すること等を目的として、充填剤などを添加してもよい。
【0034】
摺動層201の形成方法としては、適宜選択することができるが、例えば上記の混合液をスプレーコートなどにより基材202に塗布し、乾燥させる。次いで、塗布と乾燥を繰り返し、所定の厚みになるまで繰り返す。更にその後、2次乾燥を行い、焼成を実施する。焼成は、例えば縦型連続遠赤加熱炉を用いて行うことができる。
【0035】
本実施形態において、摺動層201の弾性仕事率は70%以上85%以下である。定着ベルトにおける摺動層の弾性仕事率を70%以上85%以下にすることで、安定した低いトルクを維持することができ、定着ベルトが破断することを抑制できる。そのため、本発明によれば、摺動抵抗トルクを低減でき、経時でも安定した摺動を行うことができる。これにより、装置を高寿命化することができる。また、本発明によれば、摺動相手との摺擦による摩耗などを防ぐことができ、摩耗粉を発生させないプロセスにおいて駆動トルクを安定させることができる。
【0036】
本発明では、摺動層201がポリイミド系樹脂を含み、かつ、摺動層201の弾性仕事率は70%以上85%以下であることを要する。摺動層201の弾性仕事率が70%以上85%以下であっても、摺動層201がポリイミド系樹脂を含まない場合、耐熱性が不足し、熱による軟化によって伸びが生じたり、破断したりすることで形状を維持できなくなる。
【0037】
摺動層201の弾性仕事率を上記の範囲にする方法としては、適宜選択することができる。例えば、上記の焼成を実施する温度(焼成温度)を適宜調整する方法が挙げられる。焼成温度によって焼成後の摺動層201の弾性仕事率に違いがある。焼成温度が高いほど弾性仕事率が高くなり、焼成温度が低いほど弾性仕事率が低くなる。
【0038】
摺動層201の弾性仕事率の測定方法としては、フィッシャー製微小硬度計を用い、押込み深さ1.5μm、23℃条件で測定を行う。測定サンプルとしては、摺動層201を有する定着ベルトを所定の大きさの短冊状に切り出してこれを1サンプルとする。この1サンプルにつき5箇所測定し、平均値をとって摺動層201の弾性仕事率を求めることができる。
【0039】
摺動層201の硬度は、ニップ形成部材103の硬度よりも小さいことが好ましい。この場合、摺動面積が小さいニップ形成部材103側の摩耗破損を抑制でき、安定した駆動トルクを得ることができるため、装置を高寿命化することができる。
【0040】
本実施形態において、前記硬度としては、例えばマルテンス硬度が挙げられる。摺動層201とニップ形成部材103のマルテンス硬度の測定方法としては、弾性仕事率の測定方法と同様にして行う。摺動層201のマルテンス硬度は、摺動層201の弾性仕事率の測定と同時に測定することができる。
【0041】
摺動層201には、その他の樹脂が含まれていてもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が挙げられ、PPSは融点が高く、高温化で使用が可能となる。その他の樹脂としては、上記の他にも、PFA、PTFE等のようなフッ素樹脂等が挙げられ、PFA、PTFEは摺動性が向上する。摺動層201にその他の樹脂が含まれる場合、ポリイミド系樹脂を摺動層201中、40質量%以上含むことが好ましい。
【0042】
<<その他の層>>
-離型層-
定着ベルト101は、上記の他にもその他の層を有していてもよい。
例えば、定着ベルト101の外周側に離型層204を有していてもよい。離型層204は、加圧ローラ102と接する。離型層204は、例えば、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成される。
【0043】
離型層204の形成方法としては、適宜選択することができ、例えば、スプレー塗装やディッピング塗装を用いて塗装膜を形成する方法等が挙げられる。
【0044】
-弾性層-
また、基材202と離型層204との間に弾性層203を有していてもよい。弾性層203は、例えば、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料で形成される。シリコーンゴムには耐熱性を付与するための充填材や、熱伝導性を高めるための充填材が充填されていることが多い。
【0045】
弾性層203の形成方法としては、適宜選択することができ、例えば、ディッピング塗装やダイコートを用いて塗装膜を形成する方法等が挙げられる。
【0046】
<<各層の厚み及び定着ベルトの直径>>
定着ベルト101における各層の厚みとしては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。本実施形態では、薄く且つ小径化されていることが好ましく、この場合、低熱容量化を図ることができる。
【0047】
基材202の厚みとしては、20μm以上50μm以下であることが好ましい。
摺動層201の厚みとしては、5μm以上20μm以下であることが好ましい。
弾性層203の厚みとしては、50μm以上300μm以下であることが好ましい。
離型層204の厚みとしては、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0048】
定着ベルト101全体の厚みとしては、1mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.18mm以下であることが更に好ましい。0.2mm以下であることにより、更に低熱容量を図ることができる。
【0049】
定着ベルト101の直径としては、20mm以上50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。なお、ここでいう直径は外径である。
【0050】
なお、後述の加圧ローラ102の直径は20mm以上50mm以下であることが好ましく、定着ベルト101と加圧ローラ102の直径が等しくなるように設定されることが多い。ただし、本実施形態ではこの構成に限られるものではなく、例えば、定着ベルト101の直径が加圧ローラ102の直径よりも小さくなるように構成してもよい。この場合、定着ニップ部Nにおける定着ベルト101の曲率が加圧ローラ102の曲率よりも小さくなるため、定着ニップ部Nから排出される記録媒体107が定着ベルト101から分離されやすくなる。
【0051】
<加圧部材>
本実施形態における加圧ローラ102としては、適宜選択することができる。図1では図示を省略しているが、本実施形態における加圧ローラ102は、芯金、弾性層及び離型層によって構成されている。
【0052】
芯金としては、任意の金属材料を用いることができる。
弾性層は芯金の表面に配置されており、弾性層には、例えば発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることができる。
離型層は弾性層の表面に設けられ、離型層には、例えばPFA、PTFE等を用いることができる。
【0053】
加圧ローラ102は、例えば加圧手段によって定着ベルト101に側に向けて加圧されている。これにより、定着ベルト101、ニップ形成部材103及び加圧ローラ102により定着ニップ部Nを形成している。加圧ローラ102と定着ベルト101とが圧接する箇所では、例えば加圧ローラ102の弾性層が押しつぶされることによって、所定の幅のニップ部が形成されている。
【0054】
加圧ローラ102は、例えばプリンタ本体に設けられているモータ等の駆動源によって回転駆動される。加圧ローラ102が回転駆動されると、その駆動力が定着ニップ部Nで定着ベルト101に伝達され、定着ベルト101が従回転駆動するようになっている。
【0055】
上記の他にも、回転駆動源が定着ベルト101側にあってもよい。この場合、定着ニップ部Nにより伝達された駆動力が加圧ローラ102に伝わることで加圧ローラ102が従回転駆動するようにしてもよい。
【0056】
また本実施形態では、加圧ローラ102を中実のローラとしているが、加圧ローラとして中空のローラを用いてもよい。その場合、加圧ローラの内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配置してもよい。
【0057】
また本実施形態において、加圧ローラ102は弾性層を有しているが、弾性層を有していなくてもよい。弾性層がない場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着のトナーを定着ニップ部Nで押しつぶして定着させるときに、定着ベルト101の表面にある微少な凹凸が画像に転写されて、画像のベタ部に光沢ムラが生じる場合がある。
【0058】
上記のような光沢ムラを防止するためには、加圧ローラ102が厚さ100μm以上の弾性層を有していることが好ましい。この場合、弾性層の弾性変形によって微少な凹凸を吸収することができるため、光沢ムラの発生を防止することができる。
【0059】
弾性層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ102の内部に加熱源がない場合は発泡性のスポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まるため、定着ベルト101の熱が定着ニップ部Nを伝わって奪われていきにくくなり好ましい。
【0060】
加圧ローラ102の直径としては、特に制限されるものではないが、20mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0061】
なお、本実施形態では加圧部材と記載しているが、定着ベルトと加圧部材とが互いに圧接する場合に限られず、加圧部材が加圧を行わず、単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
【0062】
<ニップ形成部材>
ニップ形成部材103は、定着ベルト101を内面側から支持し、定着ニップ部Nを形成する。ニップ形成部材103は、例えば固定用パッド等の固定部材104により固定されている。
【0063】
本実施形態におけるニップ形成部材103は、加熱源としても機能し、定着ベルト101を加熱する。ニップ形成部材103は、例えばプリンタ本体に配置された電源部より出力制御されて発熱する。出力制御は、例えば温度センサを用いて定着ベルト101の表面温度を検知し、温度センサの検知結果に基づいて行うことができる。本実施形態では、このような加熱源としてのニップ形成部材103の出力制御により、定着ベルト101の温度(定着温度)を所望の温度に維持できるようになっている。
【0064】
ニップ形成部材103としては、適宜選択することができ、例えば面状の発熱体とすることができ、本実施形態ではニップ形成部材103として面状発熱体を用いている。面状発熱体としては、例えば面状ヒータ等が挙げられる。
ニップ形成部材103の加熱源としては、例えばハロゲンヒータ、IH(電磁誘導加熱)、カーボンヒータ等を用いることができる。
【0065】
ニップ形成部材103は、定着ベルト101が回転する際、定着ベルト101の表面と摺動する。定着ベルト101とニップ形成部材103との間には、潤滑剤が付与されていてもよい。潤滑剤が付与されている場合、定着ベルト101に生じる駆動トルクを低減できるとともに、定着ベルト101への摩擦力による負荷を軽減させることができる。
【0066】
また本実施形態のように、ニップ形成部材103が定着ベルト101と加圧ローラ102の間にある定着ニップ部Nを直接加熱することで、更なる省エネ性やファーストプリントタイムの短縮などの向上ができる。
【0067】
<潤滑剤>
前記潤滑剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。シリコーンオイルは耐熱性、耐久性、潤滑能力の観点から好ましく、また使用条件により様々な粘度のものを選択できるため好ましい。
その他の潤滑剤としては、例えばフッ素オイル、フッ素グリス、シリコン系グリス等が挙げられる。増ちょう剤を混合したフッ素グリスは、増ちょう剤によってちょう度を調整することができる。このため、定着ベルト内周から外に流出するのを防止するために、ちょう度を調整するといった対応が可能になる。
【0068】
本実施形態に用いられる潤滑剤としては、ニップ形成部材103の全体に1種類のものを含浸させる場合に限られない。この他にも例えば、定着ベルトや加圧ローラの軸方向におけるニップ形成部材103の中央部と両端部とで異なる粘性や材質の潤滑剤を複数種類用いることも可能である。
【0069】
潤滑剤は、例えばニップ形成部材103の表面に塗布される。潤滑剤は、例えば定着ベルト101の内周面に形成される摺動層201とニップ形成部材103との間に付与され、定着ベルト101が回転することで定着ベルト101の内周面に潤滑剤が濡れ広がる。
【0070】
<定着装置の基本動作例>
以下、図1を基に本実施形態に係る定着装置の基本動作例について説明する。なお、本実施形態の定着装置を備えた画像形成装置をプリンタなどと称する。
【0071】
まず本例において、プリンタ本体の電源が投入されると、ニップ形成部材103に電力が供給されるとともに、加圧ローラ102が図中の矢印a方向に回転駆動を開始する。これにより、定着ベルト101は加圧ローラ102との摩擦力によって図中の矢印b方向に従動回転する。
【0072】
ここで、ニップ形成部材103は定着ベルト101の内周面と接しており、ニップ形成部材103は固定部材104によって固定されているため、定着ベルト101の内周面に形成される摺動層201とニップ形成部材103は摺動する。
【0073】
なお、本例におけるニップ形成部材103としては、面状ヒータを用いている。ニップ形成部材103は定着ベルト101を加熱する。
【0074】
また本例において、ニップ形成部材103と定着ベルト101との摺動面には潤滑剤が付与されており、定着ベルト101の回転によって、潤滑剤が定着ベルト101の内周面に濡れ広がる。
【0075】
その後、未定着のトナー像106(トナー画像などとも称する)を有する記録媒体107がガイド板に案内されながら図中の矢印c方向に搬送され、定着ニップ部Nに送入される。本例では、定着ニップ部Nは圧接状態にある。
【0076】
そして、定着ベルト101の熱と、定着ベルト101と加圧ローラ102の間の加圧力とによって、トナー像106が記録媒体107に定着する。定着が行われた記録媒体107は、定着ニップ部Nから反対側へ搬出される。
【0077】
このとき、記録媒体107の先端が分離部材の先端に接触することで、記録媒体107を定着ベルト101から引き離す方向に案内される。これにより、記録媒体107が定着ベルト101から分離される。
【0078】
その後、分離された記録媒体107は機外へ搬出されて排紙トレイにストックされる。
【0079】
(画像形成装置)
本発明に係る画像形成装置の一実施形態としては、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体上のトナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置と、を備える。前記定着装置は、本発明の定着装置が用いられる。必要に応じてその他の手段を備える。
【0080】
本発明に係る画像形成装置の一実施形態について、図3を参照して説明する。本実施形態の画像形成装置500は、電子写真方式を利用したものであり、前述した定着装置100を備えることができる。
【0081】
図3は本発明の一実施形態にかかる定着ローラを備える画像形成装置全体の一例を示す概略構成図である。本実施形態では、画像形成装置500としてタンデム型カラープリンタ用の作像ユニットを備えるものを示している。ただし、本発明の画像形成装置はこれに限定されず、ロータリー型カラープリンタや、モノクロプリンタでもよい。また、画像形成装置はプリンタに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、またはこれらの複合機等の各種画像形成装置とすることができる。
【0082】
画像形成装置500本体の上方に設置されたボトル収容部601には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル602Y、602M、602C、602Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
【0083】
ボトル収容部601の下方には、転写手段の一部としての中間転写ユニット85が配設されている。中間転写ユニット85に設置された中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ静電潜像担持体として感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。
【0084】
また、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像装置76、クリーニング部77、除電部などが配設されている。これらをそれぞれ、帯電手段、現像手段、クリーニング手段、除電手段などと称してもよい。
【0085】
そして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kのそれぞれは回転し、それぞれの感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に対して、下記の作像プロセスが行われて、それぞれの感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成される。ここで、作像プロセスとは、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程を指す。
【0086】
以下に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kに対する作像プロセスについて説明する。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、駆動モータによって、図中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75(図には感光体ドラム5Kに対応したもののみを示している)において、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程)。
【0087】
帯電された後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光手段の一例としての露光部40から発せられるレーザ光により照射及び露光され、各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程)。潜像が形成された感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、現像装置76(図においては、感光体ドラム5Kに対応したものにのみ符号を付している)により静電潜像がトナー現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程)。
【0088】
さらに、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像は、中間転写ベルト78および1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kにより、中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程)。このようにして中間転写ベルト78上に重ねてトナー像が転写されることにより、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
【0089】
前記転写の後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、クリーニング部77に達して、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程)。なお、図には感光体ドラム5Kに対応したものにのみ符号を付している。
【0090】
この後、除電部により感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面の残留電位が除去される。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kに対する一連の作像プロセスが終了する。
【0091】
次に、中間転写ベルト78上で行われる一連の転写プロセスについて説明する。
【0092】
中間転写ユニット85は、無端状の中間転写ベルト78と、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kと、2次転写バックアップローラ82と、クリーニングバックアップローラ83と、テンションローラ84と、中間転写クリーニング部80などにより構成されている。
【0093】
中間転写ベルト78は、2次転写バックアップローラ82とクリーニングバックアップローラ83とテンションローラ84とに張架および支持され、2次転写バックアップローラ82の回転駆動によって、図における矢印方向に移動される。
【0094】
1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとで挟み込むようにして1次転写ニップを形成している。1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kには、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
【0095】
中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、中間転写ベルト78と感光体ドラム5Y、5M、5C、5K間の1次転写ニップを順次通過する。こうして感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写が行われる。
【0096】
1次転写後、中間転写ベルト78は2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置で2次転写バックアップローラ82は、2次転写ローラ89とで中間転写ベルト78を挟み込むようにして2次転写ニップを形成している。2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト78上に形成されている4色のトナー像が、搬送されてくる記録媒体P上に転写される。なお、これら2次転写ローラ89および2次転写バックアップローラ82は転写手段の一部として考慮される。
【0097】
転写後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80に達して、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。こうして、中間転写ベルト78上で行われる一連の転写プロセスが終了する。
【0098】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送される記録媒体107は、画像形成装置500本体の下方に配設された給紙部50から、給紙ローラ97およびレジストローラ98を経由して搬送されるものである。すなわち、給紙部50には、転写紙などの記録媒体107が複数枚重ねて収納される。
【0099】
そして、給紙ローラ97が図中の反時計方向に回転駆動されると、最上位の記録媒体107から順にレジストローラ98に給送される。レジストローラ98に搬送された記録媒体107は、回転駆動を停止したレジストローラ98のローラニップの位置で一旦停止する。
【0100】
そして、中間転写ベルト78上のトナー像にタイミングを合わせて、レジストローラ98が回転駆動されることにより、記録媒体107が前記2次転写ニップに向けて搬送される。このようにして、記録媒体107上にトナー像が転写される。
【0101】
2次転写ニップでカラー画像が転写された記録媒体107は定着装置100に搬送される。そして、記録媒体107は、定着装置100において定着ベルト101と加圧ローラ102による加熱および加圧を受けて、表面に転写されたトナー像が記録媒体107上に定着される。その後、記録媒体107は、排紙ローラ99を経て画像形成装置500の本体外へと排出され、スタック部60上に順次スタックされる。
【0102】
以上により、画像形成装置500による記録媒体107への画像形成が完了する。
【実施例0103】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0104】
(実施例1)
本実施例で用いる定着装置は図1に示す構成とし、本実施例で用いる定着ベルトは図2に示す構成とした。詳細を以下説明する。
【0105】
定着ベルト101における基材202の材料として、ニッケル(Ni)と銅(Cu)を用い、Ni層とCu層を積層させた。Ni層の厚みは30μmとし、Cu層の厚みは10μmとし、積層させてなる基材202は40μmの厚みとなっている。
【0106】
上記基材202の内周面には摺動層201が設けられている。摺動層201には、耐熱性が高いポリイミド系樹脂を用い、スプレー塗装によって塗装膜を成形した。本実施例では、摺動層201に上記構造式(1)に示す化学構造式をもつ宇部興産社製のU-ワニス-Sを用いた。摺動層201の厚みは10μmとした。
【0107】
ここで、摺動層201の形成について詳細を説明する。
まず、U-ワニス-Sに対して関東化学社製のNMP(N-メチル-2-ピロリジノン)を1:0.8の割合になるように調合して混合液を得た。なお、調合した混合液に対して耐摩耗性付与などを理由にした充填剤などを添加することが可能であるが、本実施例では添加しないことにした。
この混合液をスプレーコートで定着ベルト101の基材202の内周面に塗布した。次いで、乾燥を行い、更に塗布と乾燥を繰り返し行って所定の膜厚になるまで繰り返した。厚みが10μmになったら150℃で20分の乾燥を行い、その後、230℃で120分の2次乾燥を実施した。
【0108】
さらに焼成を実施するが、焼成温度によって焼成後の摺動層201の弾性仕事率に違いがある。温度が高いほど弾性仕事率が高くなり、逆は低くなる。本実施例では、縦型連続遠赤加熱炉を用いて定着ベルトが実体温度で340℃になるよう温度設定して30分間焼成を実施した。なお、定着ベルトの実体温度は、熱電対を装着した定着ベルトを焼成炉内に回転させた状態で投入し、無線によって温度測定を実施した。
【0109】
基材202の表面側(外周側)には弾性層203が設けられている。弾性層203の材料としては、シリコーンゴムを用い、ディッピング塗装により塗装膜を形成した。弾性層203の厚みは120μmとした。
【0110】
弾性層203の上には離型層204が設けられている。離型層204の材料にはPFAを用い、ディッピング塗装により塗装膜を形成した。離型層204の厚みは7μmとした。
【0111】
このようにして定着ベルト101を形成した。得られた定着ベルト101の外径は30mmであった。
【0112】
得られた定着ベルト101について、以下のようにして摺動層の弾性仕事率の測定を行った。摺動層の弾性仕事率はフィッシャー製微小硬度計を用いて測定を行った。測定条件としては、押込み深さを1.5μmとし、測定温度を23℃とした。測定サンプルは、定着ベルトを30mm×90mmの短冊状に切り出してサンプルとした。1サンプルに5点の測定を実施し、その平均値を用いることにした。
上記のように測定した結果、摺動層201の弾性仕事率は81%であった。
【0113】
また、弾性仕事率の測定と同時にマルテンス硬度を測定することが可能であり、摺動層201のマルテンス硬度を同条件で測定した。
【0114】
次に、本実施例における定着装置について説明する。
本実施例で用いた定着装置は、定着ベルト101の対向する位置に加圧ローラ102が設けられている。本実施例で用いた加圧ローラ102は、芯金、弾性層、離型層の3構成とした。本実施例で用いた加圧ローラ102としては、上記実施形態で説明した構成を適宜選択した。
【0115】
ニップ形成部材103としては面状ヒータを用い、固定部材104としては固定用パッドを用いた。ニップ形成部材103の表面、すなわち定着ベルト101と摺動する箇所のマルテンス硬度も上記と同様にして測定した。ニップ形成部材103のマルテンス硬度と摺動層201のマルテンス硬度を比較したところ、両者の関係は、摺動層<面状ヒータとなった。
【0116】
また本実施例では潤滑剤を用いた。潤滑剤としてはフッ素オイルを用いた。ニップ形成部材103の表面に潤滑剤を塗布し、定着ベルト101が回転することで内周面に濡れ広がるようにした。
【0117】
本実施例において以下の評価を行った。
本評価では、ランニング試験で400k枚(40万枚)を通紙させ、定着装置における定着ベルト101と加圧ローラ102を回転駆動させた。回転駆動させるモータの動トルク(摺動抵抗トルク)について、初期トルクと、40万枚通紙させたときのトルク(400k時トルク)を測定し、評価を行った。初期トルクと400k時トルクの両方が0.77N・m以下である場合を合格とした。
評価結果を下記表1に示す。また、後述の実施例及び比較例についても同様の評価を実施し、その結果を表1に示す。
【0118】
(実施例2)
実施例1の定着ベルトの作製において、縦型連続遠赤加熱炉を用いて定着ベルトが実体温度で360℃になるよう温度設定したこと以外は、実施例1と同様にして定着ベルトを作製した。
摺動層のマルテンス硬度と面状ヒータのマルテンス硬度の関係は、摺動層>面状ヒータであった。
【0119】
(実施例3)
実施例1において、摺動層201に用いるポリイミド系樹脂として、上記構造式(1)に示すものと、上記構造式(2)に示すものを用いるように変更し、これらを混合して混合液を得た。実際には、宇部興産社製U-ワニス-Sと同社U-ワニス-Aを用い、U-ワニス-Sを80%、U-ワニス-Aを20%となるようにして、混合ポリイミド樹脂を製作した。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製した。
【0120】
(実施例4)
実施例2において、実施例3と同様にして摺動層201に混合ポリイミド樹脂を用いた。それ以外は実施例2と同様にして、定着ベルトを作製した。
【0121】
(比較例1)
実施例1において、摺動層201を焼成する際の実体温度を280℃になるよう温度設定して焼成を実施した。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製した。
得られた定着ベルトにおける摺動層201の弾性仕事率は65%であった。
【0122】
(比較例2)
実施例1において、摺動層201を焼成する際の実体温度を390℃になるよう温度設定して焼成を実施した。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製した。
得られた定着ベルトにおける摺動層201の弾性仕事率は89%であった。
【0123】
(比較例3)
実施例1において、摺動層201を焼成する際の実体温度を280℃になるよう温度設定して焼成を実施した。また、実施例3と同様にして混合ポリイミド樹脂を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製した。
摺動層のマルテンス硬度と面状ヒータのマルテンス硬度の関係は、摺動層>面状ヒータであった。
【0124】
【表1】
【符号の説明】
【0125】
101 定着ベルト
102 加圧ローラ
103 ニップ形成部材
104 固定部材
106 トナー像
107 記録媒体
201 摺動層
202 基材
203 弾性層
204 離型層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【特許文献1】特開2014-081470号公報
図1
図2
図3