(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002408
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ダイボンディング装置、ウェハおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20221227BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221227BHJP
H01L 21/67 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/78 Y
H01L21/68 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103654
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 健太
【テーマコード(参考)】
5F047
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047BA21
5F047BB03
5F047BB19
5F047FA01
5F047FA02
5F047FA04
5F047FA08
5F047FA32
5F047FA35
5F047FA72
5F047FA79
5F063AA05
5F063AA11
5F063AA33
5F063AA48
5F063BA36
5F063DD87
5F063DE02
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE33
5F063EE21
5F131AA04
5F131BA54
5F131EC74
5F131EC75
5F131KA22
5F131KA60
5F131KB02
5F131KB43
(57)【要約】
【課題】ダイに掛かるストレスをより軽減する技術を提供することにある。
【解決手段】ダイボンディング装置は、ワークが貼付されたダイシングテープを吸着可能であり、前記ワークを前記ダイシングテープから剥離する剥離ユニットと、前記剥離ユニットの動作を制御する制御部と、を備える。前記ワークは半導体基板により形成されたダイまたは降伏点を有しない延性材料により前記ダイと略同じ大きさに形成されたダイプレートである。前記制御部は、前記剥離ユニットにより前記ダイプレートが剥離される際に形成される前記ダイプレートの変形量に基づいて前記ダイが剥離される際の前記剥離ユニットによる吸着力を設定するよう構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが貼付されたダイシングテープを吸着可能であり、前記ワークを前記ダイシングテープから剥離する剥離ユニットと、
前記剥離ユニットを制御する制御部と、
を備え、
前記ワークは半導体基板により形成されたダイまたは降伏点を有しない延性材料により前記ダイと略同じ大きさに形成されたダイプレートであり、
前記制御部は、前記剥離ユニットにより前記ダイプレートが剥離される際に形成される前記ダイプレートの変形量に基づいて前記ダイが剥離される際の前記剥離ユニットによる吸着力を設定するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項2】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記制御部は、
前記剥離ユニットにより前記ダイプレートが剥離される際に形成される前記ダイプレートの変形量と前記ダイプレートが剥離される際の前記剥離ユニットによる吸着力との第一相関データを記憶装置に記録し、
前記第一相関データに基づいて前記ダイプレートの変形量が所定値になる前記剥離ユニットによる吸着力を前記ダイが剥離される際の前記剥離ユニットによる吸着力として設定するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項3】
請求項2のダイボンディング装置において、
前記制御部は、
前記剥離ユニットにより第二ダイプレートが剥離される際に形成される前記第二ダイプレートの変形量と前記剥離ユニットにより第二ダイが剥離される際の形成される前記第二ダイの変形量との第二相関データを前記記憶装置に記録し、
前記第二相関データに基づいて前記所定値を設定するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項4】
請求項3のダイボンディング装置において、
前記制御部は、
前記剥離ユニットにより前記第二ダイプレートが剥離される際に形成される前記第二ダイプレートの変形量と前記第二ダイプレートが剥離される際の前記剥離ユニットによる吸着力との第三相関データを記憶装置に記録し、
前記剥離ユニットにより前記第二ダイが剥離される際に形成される前記第二ダイの変形量と前記第二ダイが剥離される際の前記剥離ユニットによる吸着力との第四相関データを記憶装置に記録し、
前記第三相関データおよび前記第四相関データに基づいて前記第二相関データを取得するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項5】
請求項4のダイボンディング装置において、さらに、
前記剥離ユニットに接続される吸引機構と、
前記ワークを吸着するコレットを有し、上下動が可能なヘッドと、
を備え、
前記剥離ユニットは、前記ダイシングテープと接触するブロックと、前記ブロックの外側に設けられ、前記ダイシングテープが吸着可能なドームプレートと、を有し、前記ブロックによりワークを前記ダイシングテープから剥離するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項6】
請求項5のダイボンディング装置において、
前記制御部は、
前記ドームプレートの吸引口および前記ブロックと前記ドームプレートとの間の隙間により前記ワークが貼付されたダイシングテープを吸着し、
前記ヘッドにより前記コレットを前記ワークに着地し、
前記コレットにより前記ワークを吸着し、
前記ドームプレートから前記ブロックを上昇させるよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項7】
請求項4のダイボンディング装置において、
前記ダイプレートの変形例量はレーザ顕微鏡を用いて測定されるダイボンディング装置。
【請求項8】
請求項4のダイボンディング装置において、
前記ダイプレートの表面にマーキングが施されているダイボンディング装置。
【請求項9】
請求項4のダイボンディング装置において、
前記ダイプレートの一部が薄く形成されるダイボンディング装置。
【請求項10】
半導体チップの変形量を評価するウェハであって、
降伏点を有しない延性材料により前記半導体チップと略同じ厚さに形成される円盤状のプレートと、
前記プレートに貼付され、前記プレートを分割するためのダイシングテープと、
を有するウェハ。
【請求項11】
請求項10のウェハにおいて、
前記プレートは、前記半導体チップと同等の大きさのダイプレートに分割されているウェハ。
【請求項12】
ワークが貼付されたダイシングテープが吸着可能であり、前記ワークを前記ダイシングテープから剥離する剥離ユニットと、前記剥離ユニットの動作を制御する制御部と、を備え、前記ワークは半導体基板により形成されたダイまたは降伏点を有しない延性材料により前記ダイと略同じ大きさに形成されたダイプレートであり、前記制御部は、前記剥離ユニットにより前記ダイプレートが剥離される際に形成される前記ダイプレートの変形量に基づいて前記ダイが剥離される際の前記剥離ユニットによる吸着力を設定するよう構成されるダイボンディング装置に、前記ダイシングテープを保持するウェハリングを搬入する搬入工程と、
前記剥離ユニットで前記ダイを突き上げてコレットで前記ダイをピックアップするピックアップ工程と、を備える半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はダイボンディング装置に関し、例えば剥離ユニットを備えるダイボンダに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ダイと呼ばれる半導体チップを配線基板やリードフレームなどの基板に搭載してパッケージを組み立てる工程の一部に、半導体ウェハからダイを分割するダイシング工程と、分割したダイを基板上に搭載するダイボンディング工程とがある。
【0003】
ダイボンディング工程の中には、半導体ウェハから分割されたダイを剥離する剥離工程がある。剥離工程では、ダイシングテープ裏面から剥離ユニットによって、ピックアップ装置に保持されたダイシングテープから、1個ずつ剥離し、ヘッドに設けられたコレット等の吸着ノズルを使ってピックアップする。ここで、ダイシングテープはダイシング工程において半導体ウェハ等のワークを固定するための粘着テープである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ダイ積層パッケージや3D-NAND(3次元NANDフラッシュ)の出現によって、半導体ウェハ(ダイ)はより薄くなってきている。ダイが薄くなると、ダイシングテープの粘着力に比べてダイの剛性が極めて低くなる。そのため、ダイシングテープの厚さよりも薄いダイを使用する際は、ピックアップ動作中のストレスで割れまたは変形が生じてしまう。
【0006】
本開示の課題はダイに掛かるストレスをより軽減する技術を提供することにある。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、ダイボンディング装置は、ワークが貼付されたダイシングテープを吸着可能であり、前記ワークを前記ダイシングテープから剥離する剥離ユニットと、前記剥離ユニットの動作を制御する制御部と、を備える。前記ワークは半導体基板により形成されたダイまたは降伏点を有しない延性材料により前記ダイと略同じ大きさに形成されたダイプレートである。前記制御部は、前記剥離ユニットにより前記ダイプレートが剥離される際に形成される前記ダイプレートの変形量に基づいて前記ダイが剥離される際の前記剥離ユニットによる吸着力を設定するよう構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ダイに掛かるストレスをより軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施例におけるダイボンダを上から見た概念図である。
【
図2】
図2は
図1において矢印A方向から見たときにピックアップヘッドおよびボンディングヘッドの動作を説明する図である。
【
図3】
図3は
図1に示すダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は
図1に示すダイボンダを用いる半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7(a)はコレットをダイに接触させた状態を示す図である。
図7(b)は全てのブロックを同時に突上げた状態を示す図である。
図7(c)は最外周のブロックを引き下げた状態を示す図である。
図7(d)はコレットによりダイを吸着して上昇する状態を示す図である。
【
図8】
図8(a)は実施形態におけるウェハを示す上面図であり、
図8(b)は
図8(a)に示すウェハの正面図である。
【
図10】
図10はダイ変形量とダイプレート変形量との相関性を取得する方法について説明するフローチャートである。
【
図11】
図11はダイプレート変形量に基づく吸着力の設定方法について説明するフローチャートである。
【
図12】
図12(a)はコレットをダイプレートに接触させた状態を示す図である。
図12(b)は全てのブロックを同時に突上げた状態を示す図である。
図12(c)は最外周のブロックを引き下げた状態を示す断面図である。
図12(d)はコレットによりダイプレートを吸着して上昇する状態を示す図である。
【
図13】
図13(a)はダイプレートの変形について説明する概念図である。
図13(b)はダイとの変形について説明する概念図である。
【
図14】
図14(a)は第一変形例におけるダイプレートの上面を示す模式図である。
図14(b)は
図14(a)に示されるダイプレートの正面を示す模式図である。
【
図15】
図15(a)は第二変形例におけるダイプレートの上面を示す模式図である。
図15(b)は
図15(a)に示されるB-B線における断面を示す模式図である。
【
図16】
図16(a)は第三変形例におけるダイプレートの上面を示す模式図である。
図16(b)は
図16(a)に示されるB-B線における断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態および変形例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【0011】
実施形態におけるダイボンダの構成について
図1および
図2を用いて説明する。
図1は実施形態におけるダイボンダを上から見た概念図である。
図2は
図1において矢印A方向から見たときに、ピックアップヘッド及びボンディングヘッドの動作を説明する図である。
【0012】
ダイボンディング装置の一例であるダイボンダ10は、大別して、ダイ供給部1と、ピックアップ部2、中間ステージ部3と、ボンディング部4と、搬送部5、基板供給部6と、基板搬出部7と、各部の動作を監視し制御する制御部8と、を有する。Y軸方向がダイボンダ10の前後方向であり、X軸方向が左右方向である。ダイ供給部1がダイボンダ10の手前側に配置され、ボンディング部4が奥側に配置される。ここで、基板Sは、一つ又は複数の、最終1パッケージとなる製品エリア(以下、パッケージエリアPという。)がプリントされている。
【0013】
ダイ供給部1は、半導体ウェハ11を保持するウェハ保持台12と、半導体ウェハ11からダイDを剥離する点線で示す剥離ユニット13と、を有する。ダイ供給部1は図示しない駆動手段によってXY軸方向に移動し、ピックアップするダイDを剥離ユニット13の位置に移動させる。ここで、基板Sは、一つ又は複数の、最終1パッケージとなる製品エリア(以下、パッケージエリアPという。)がプリントされている。
【0014】
ピックアップ部2は、ダイDをピックアップするピックアップヘッド21と、ピックアップヘッド21をY軸方向に移動させるピックアップヘッドのY駆動部23と、コレット22を昇降、回転及びX軸方向移動させる図示しない各駆動部と、を有する。ピックアップヘッド21は、剥離されたダイDを先端に吸着保持するコレット22を有し、ダイ供給部1からダイDをピックアップし、中間ステージ31に載置する。ピックアップヘッド21は、コレット22を昇降、回転及びX軸方向移動させる図示しない各駆動部を有する。
【0015】
中間ステージ部3は、ダイDを一時的に載置する中間ステージ31と、中間ステージ31上のダイDを認識する為のステージ認識カメラ32を有する。
【0016】
ボンディング部4は、ボンディングヘッド41と、Y駆動部43と、基板認識カメラ44と、を有する。ボンディングヘッド41はピックアップヘッド21と同様にダイDを先端に吸着保持するコレット42を備える。Y駆動部43はボンディングヘッド41をY軸方向に移動させる。基板認識カメラ44は基板SのパッケージエリアPの位置認識マーク(図示せず)を撮像し、ボンディング位置を認識する。ボンディング部4は、中間ステージ31からダイDをピックアップし、搬送されてくる基板SのパッケージエリアP上にボンディングし、又は既に基板SのパッケージエリアPの上にボンディングされたダイの上に積層する形でボンディングする。このような構成によって、ボンディングヘッド41は、ステージ認識カメラ32の撮像データに基づいてピックアップ位置・姿勢を補正し、中間ステージ31からダイDをピックアップする。そして、ボンディングヘッド41は、基板認識カメラ44の撮像データに基づいて基板のパッケージエリアP上に、または既に基板SのパッケージエリアPの上にボンディングされたダイの上に積層する形で、ダイDをボンディングする。
【0017】
搬送部5は、基板Sを掴み搬送する基板搬送爪51と、基板Sが移動する搬送レーン52と、を有する。基板Sは、搬送レーン52に設けられた基板搬送爪51の図示しないナットを搬送レーン52に沿って設けられた図示しないボールネジで駆動することによって移動する。このような構成によって、基板Sは、基板供給部6から搬送レーン52に沿ってボンディング位置まで移動し、ボンディング後、基板搬出部7まで移動して、基板搬出部7に基板Sを渡す。
【0018】
制御部8は、ダイボンダ10の各部の動作を監視し制御するプログラム(ソフトウェア)を格納するメモリと、メモリに格納されたプログラムを実行する中央処理装置(CPU)と、を備える。
【0019】
次に、ダイ供給部1の構成について
図3を用いて説明する。
図3は
図1に示すダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
【0020】
ダイ供給部1は、水平方向(XY軸方向)に移動するウェハ保持台12と、上下方向に移動する剥離ユニット13と、を備える。ウェハ保持台12は、ウェハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウェハリング14に保持され複数のダイDが接着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、を有する。剥離ユニット13は支持リング17の内側に配置される。
【0021】
ダイ供給部1は、ダイDの突き上げ時に、ウェハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。その結果、ウェハリング14に保持されているダイシングテープ16が引き伸ばされダイDの間隔が広がり、剥離ユニット13によりダイD下方よりダイDを突き上げ、ダイDのピックアップ性を向上させている。なお、ダイを基板に接着する接着剤は、液状からフィルム状となり、半導体ウェハ11とダイシングテープ16との間にダイアタッチフィルム(DAF)18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けている。ダイアタッチフィルム18を有する半導体ウェハ11では、ダイシングは、半導体ウェハ11とダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。従って、剥離工程では、半導体ウェハ11とダイアタッチフィルム18をダイシングテープ16から剥離する。なお、以降では、ダイアタッチフィルム18を省略して、剥離工程を説明する。
【0022】
図2に示すように、剥離ユニット13の内部空間は、配管191および圧力調整器としてのバルブ192を介して真空ポンプ193に連通されている。また、配管191には、真空ポンプ193により内部空間内で実現される真空圧をモニタする圧力センサ194が取り付けられている。バルブ192、真空ポンプ193及び圧力センサ194は、制御部8に接続されている。制御部8は、圧力センサ194から受信した信号に基づき、真空ポンプ193を動作制御する。この実施の形態では、制御部8の制御下で、バルブ192および真空ポンプ193により内部空間内で実現される真空圧が変更可能であり、サイズやアスペクト比の異なる各種のダイに応じて、随時、適切な真空圧(吸着力)を設定することができる。配管191、バルブ192、真空ポンプ193および圧力センサ194により吸引機構が構成される。
【0023】
次に、剥離ユニット13について
図4および
図5を用いて説明する。
図4は
図2に示す剥離ユニットの上面図である。
図5は
図4に示す剥離ユニットの要部断面図であり、ダイシングテープに接している状態を示している。
【0024】
剥離ユニット13の上面の周辺部に位置するドームプレート132には、複数の吸引口132aと、複数の吸引口132aを連結する複数の溝132bと、が設けられている。複数の吸引口132aはドームプレート132の内部空間を介して上述の吸引機構に接続されている。
【0025】
剥離ユニット13の中心部には、ダイシングテープ16を上方に突き上げる四個のブロック131a~131dが組み込まれている。外側の三個のブロック131a~131cは四角筒状であり、最内側のブロック131dは四角柱状である。四個のブロック131a~131dは、径が最も大きい第一のブロック131aの内側に、それよりも径の小さい第二のブロック131bが配置され、それよりも径の小さい第三のブロック131cが配置され、さらにその内側に最も径の小さい第四のブロック131dが配置されている。ブロック131a~131d間の隙間131gおよびドームプレート132とブロック131aとの隙間131fはドームプレート132の内部空間を介して上述の吸引機構に接続されている。
【0026】
四個のブロック131a~131dのうち、最も径の大きい最外周のブロック131aは、剥離の対象となるダイDよりも一回り径が小さい。これにより、ブロック131aの上面の外周となる角部がダイDの外縁よりもわずかに内側に位置するようになるので、ダイDとダイシングテープ16が剥離する際の起点となる箇所(ダイDの最外周部)に両者を剥離させる力を集中させることができる。
【0027】
四個のブロック131a~131dは図示しない駆動部により独立に上下運動が可能である。駆動部は、例えば、モータとモータの回転をカムまたはリンクによって上下動に変換するプランジャ機構とを備える。四個のブロック131a~131dのそれぞれの上面の高さは、初期状態(ブロック131a~131dの非動作時)においては互いに等しく、また、ドームプレート132の上面の高さと等しい、若しくは、低くなっている。
【0028】
例えば、剥離ユニット13は、四個のブロック131a~131dを同時に突上げ、その後さらに、内側のブロック131b~131dを同時に突上げ、その後さらに、ブロック131c,131dを同時に突上げ、その後さらに、ブロック131dを突上げてピラミッド状にする動作を行うことができる。また、例えば、剥離ユニット13は、四個のブロック131a~131dを同時に突上げてからブロック131a、ブロック131b、ブロック131cの順に下げる動作を行うことができる。後者の動作を本開示ではRMS(Reverse Multi Step)という。
【0029】
複数の吸引口132aの内部、ブロック131a~131d間の隙間およびドームプレートとブロック131aとの隙間は、剥離ユニット13を上昇させてその上面をダイシングテープ16の裏面に接触させる際、吸引機構によって減圧される。このとき、ダイシングテープ16の裏面が下方に吸引され、ドームプレート132の上面と密着する。
【0030】
次に、実施形態におけるダイボンダを用いた半導体装置の製造方法について
図6を用いて説明する。
図6は
図1に示すダイボンダを用いた半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0031】
(ステップS11:ウェハ・基板搬入工程)
半導体ウェハ11から分割されたダイDが貼付されたダイシングテープ16を保持したウェハリング14をウェハカセット(不図示)に格納し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8はウェハリング14が充填されたウェハカセットからウェハリング14をダイ供給部1に供給する。また、基板Sを準備し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8は基板供給部6で基板Sを基板搬送爪51に取り付ける。
【0032】
(ステップS12:ピックアップ工程)
制御部8は上述したようにダイDを剥離し、剥離したダイDを半導体ウェハ11からピックアップする。このようにして、ダイアタッチフィルム18と共にダイシングテープ16から剥離されたダイDは、コレット22に吸着、保持されて次工程(ステップS13)に搬送される。そして、ダイDを次工程に搬送したコレット22がダイ供給部1に戻ってくると、上記した手順に従って、次のダイDがダイシングテープ16から剥離され、以後同様の手順に従ってダイシングテープ16から1個ずつダイDが剥離される。
【0033】
(ステップS13:ボンディング工程)
制御部8はピックアップしたダイを基板S上に搭載又は既にボンディングしたダイの上に積層する。制御部8は半導体ウェハ11からピックアップしたダイDを中間ステージ31に載置し、ボンディングヘッド41で中間ステージ31から再度ダイDをピックアップし、搬送されてきた基板Sにボンディングする。
【0034】
(ステップS14:基板搬出工程)
制御部8は基板搬出部7で基板搬送爪51からダイDがボンディングされた基板Sを取り出す。ダイボンダ10から基板Sを搬出する。
【0035】
上述したように、ダイDは、ダイアタッチフィルム18を介して基板S上に実装され、ダイボンダから搬出される。その後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。積層パッケージを製造する場合は、続いて、ダイDが実装された基板Sがダイボンダに搬入されて基板S上に実装されたダイDの上にダイアタッチフィルム18を介して第2のダイDが積層される。そして、ダイボンダから搬出された後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。第2のダイDは、前述した方法でダイシングテープ16から剥離された後、ペレット付け工程に搬送されてダイDの上に積層される。上記工程が所定回数繰り返された後、基板Sをモールド工程に搬送し、複数個のダイDとAuワイヤとをモールド樹脂(図示せず)で封止することによって、積層パッケージが完成する。
【0036】
上述したように、基板上に複数個のダイを三次元的に実装する積層パッケージを組み立てに際しては、パッケージ厚の増加を防ぐために、ダイの厚さを数十μm以下まで薄くすることが要求されることがある。一方、ダイシングテープの厚さは100μm程度であるから、ダイシングテープの厚みは、ダイの厚みの2~5倍程度にもなっている。このような薄いダイをダイシングテープから剥離させようとすると、ダイシングテープの変形に追従したダイの変形がより顕著に発生しやすくなる。ダイの割れであれば、例えば、ステージ認識カメラ32等の撮像装置を用いた外観検査により容易に確認できるが、変形は確認が難しく、変形があると製品の不良に繋がる懼れがある。
【0037】
変形等の不良に対しては、ストレスを検出・解析し、改善する必要がある。そのため、薄ダイをコレットで吸着した後の真空リーク(リーク量)を用いて確認を行うことがある。この方法では、通常は、真空リークは発生せず、ダイの変形箇所のみリーク量が異なることを利用し、変形を確認する。しかし、リーク量もコレットの吸引孔の配置によっては検出できないこともあるので、すべての薄ダイに有効な方法ではない。また、薄ダイに対するストレスの数値化が明確にできていないため、どの程度で破損や変形が発生するか明確でない。ダイにセンサ等を付けて変形量やかかるストレスを確認することも考えられるが、ストレスを確認しようとすると、センサ分剛性が上がってしまうため明確にストレスを判断できない。
【0038】
次に、ダイDをダイシングテープ16からピックアップする動作におけるRMS動作の例について
図7(a)から
図7(d)を用いて説明する。
図7(a)はコレットをダイに接触させた状態を示す図である。
図7(b)は全てのブロックを同時に突上げた状態を示す図である。
図7(c)は最外周のブロックを引き下げた状態を示す図である。
図7(d)はコレットによりダイを吸着して上昇する状態を示す図である。
【0039】
上記のような剥離ユニット13を備えたダイ供給部1を使ってダイDをダイシングテープ16から剥離するには、まず、剥離の対象となる1個のダイDの真下に剥離ユニット13の中心部(ブロック131)を移動させる。それと共に、このダイDの上方にコレット22を移動させる。ピックアップヘッド21に支持されたコレット22の底面には、内部が減圧される吸着口が設けられており、剥離の対象となる1個のダイDのみを選択的に吸着、保持できるようになっている。
【0040】
次に、
図7(a)に示すように、剥離ユニット13を上昇させてその上面をダイシングテープ16の裏面に接触させると共に、前述した吸引口132a、溝132bおよび隙間132gの内部を減圧する。ここで、ブロック131の上面には凹凸があり、凹部が隙間132gと連通している。これにより、剥離の対象となるダイDと接触しているダイシングテープ16がブロック131の上面に密着する。また、このダイDに隣接する他のダイDと接触しているダイシングテープ16が剥離ユニット13の上面周辺部に密着する。
【0041】
また、剥離ユニット13の上昇とほぼ同時にコレット22を下降させ、コレット22の底面を剥離の対象となるダイDの上面に接触させてダイDを吸着すると共に、ダイDを下方に軽く押さえ付ける。このように、剥離ユニット13を使ってダイシングテープ16を下方に吸引する際、コレット22を使ってダイDを上方に吸引すると、ブロック131の突き上げによるダイシングテープ16とダイDの剥離を促進させることができる。
【0042】
次に、
図7(b)に示すように、ブロック131(4個のブロック131a~131d)を同時に上方に突き上げてダイシングテープ16の裏面に上向きの荷重を加え、ダイDとダイシングテープ16とを押し上げる。また、この際、ダイDの裏面を、ダイシングテープ16を介してブロック131の上面(接触面)で支え、ダイDにかかる曲げ応力を軽減するとともに、ブロック131の上面の外周(角部)を、ダイDの外周よりも内側に配置する。これにより、ダイDとダイシングテープ16の剥離起点となっている界面に剥離する応力が集中し、ダイDの周縁部がダイシングテープ4から効率的に剥離される。このとき、剥離の対象となるダイDに隣接する他のダイDの下方のダイシングテープ16を下方に吸引し、剥離ユニット13の上面周辺部に密着させておくことにより、ダイDの周縁部におけるダイシングテープ16の剥離を促進させることができる。
【0043】
ダイDはコレット22とブロック131に挟まれたまま上昇するが、ダイシングテープ16の周辺部はドームプレート132に吸着されたままなので、ダイDの周辺で張力が生じ、その結果、ダイD周辺でダイシングテープ16が剥離されることになる。しかし、一方この時、ダイD周辺は下側に応力を受け、湾曲することになる。ブロック131の上昇を停止し待機状態を維持すると、ダイシングテープ16の剥離が進行して、ダイDの湾曲が元に戻る場合がある(弾性変形)。ダイDが薄い場合やダイシングテープ16を吸着する力が強い場合、塑性変形してしまったり破損してしまったりすることがある。
【0044】
次に、
図7(c)に示すように、最外周ブロック131aを引き下げる。これにより、ダイDを支えるブロック131bの上面の外周(角部)の位置が、ブロック131aによって支えられていた状態に比較して、より内側に移るため、ダイDとダイシングテープ16との剥離がブロック131bの上面の外周より外側の領域からダイDの中心方向へと進行する。そして、外周ブロック131bを引き下げる。これにより、ダイDを支えるブロック131cの上面の外周(角部)の位置が、ブロック131bによって支えられていた状態に比較して、より内側に移るため、ダイDとダイシングテープ16との剥離がブロック131cの上面の外周より外側の領域からダイDの中心方向へと進行する。そして、外周ブロック131cを引き下げる。これにより、ダイDを支えるブロック131dの上面の外周(角部)の位置が、ブロック131cによって支えられていた状態に比較して、より内側に移るため、ダイDとダイシングテープ16との剥離がブロック131dの上面の外周より外側の領域からダイDの中心方向へと進行する。これらの剥離動作中に、
図7(b)の状態において変形が発生していない場合はダイDの変形が発生したり、
図7(b)の状態において変形が発生している場合はダイDの変形が進んだり破損に至ったりすることがある。
【0045】
続いて、
図7(d)に示すように、ブロック131dを下方に引き下げると共に、コレット22を上方に引き上げることにより、ダイDをダイシングテープ16から剥がす作業が完了する。なお、上記ブロック131dの上面は、ブロック131dを下方に引き下げた際、コレット22の吸引力だけでダイDがダイシングテープ16から剥がれる程度に面積が小さい。
図7(b)および
図7(c)の状態において発生したダイDの変形等が元に戻ることなく、コレット22に吸着される。
【0046】
次に、ピックアップ動作によるダイの変形または破損を抑制する方法について説明する。本実施形態では、ダイDに代えて塑性変形し易い素材の薄い板で構成されるダイプレートDPに対してピックアップ動作を行い、ダイプレートDPの変形量に基づいてダイDの変形量を把握し、それに基づいてダイDの変形を抑制する。
【0047】
まず、ダイプレートDPについて
図8(a)、
図8(b)および
図9を用いて説明する。
図8(a)は実施形態におけるウェハを示す上面図であり、
図8(b)は
図8(a)に示すウェハの正面図である。
図9は応力-ひずみ曲線を示す図である。
【0048】
ダイプレートDPは、例えば、無地の平板であり、ダイDと同程度の大きさであり、平面視において矩形状である。ダイプレートDPは、例えば、
図8(a)および
図8(b)に示すように、ダイDと同程度の厚さの円盤状の延性材料を半導体ウェハ11のダイシングテープ16と同様のダイシングテープに貼付したウェハWをダイシングすることにより形成される。ウェハWは半導体ウェハ11と同様にウェハリング14に保持される。ここで、塑性変形とは、外力を取り除いても残る変形であり、降伏点を超える外力が作用するとき生じる変形である。力を取り除いて残った変形を、残留変形や永久変形ともいう。延性材料は、力が作用した際に大きな塑性変形を伴う破壊をする材料であり、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ステンレス鋼(SUS)、プラスチック、ゴムなどである。
【0049】
図9に示すように、脆性材料(BM)はあまり伸びずに破壊し、少し変形させるのにも大きな応力(σ)を必要とするので、ダイプレートDPの素材としては好ましくない。また、延性材料であっても軟鋼(MS)などは降伏点(σ
UY)以上のひずみの領域では、少し変形させるのに小さな応力(σ)で済むが、応力(σ)とひずみ(ε)の関係が線形に近くないので好ましくない。延性材料のうち、少し変形させるのに小さな応力(σ)で済み、応力(σ)とひずみ(ε)の関係が線形に近い素材(DM)がダイプレートDPとして適している。なお、シリコン(Si)や炭化シリコン(SiC)等の半導体により形成されるダイDは、
図9に示す脆性材料(BM)の特性を有する。よって、ダイプレートDPは降伏点を有しない延性材料により構成する。延性材料としては、例えば、銅(Cu)を使用する。Cuは、Si等より伸びのある材質のため割れにくく変形による伸びが剥離途中のストレスが見やすくなる。
【0050】
次に、ピックアップ動作によるダイの変形または破損が生じないようにするための剥離ユニットにおける吸着力の設定方法について
図10および
図11を用いて説明する。
図10はダイ変形量とダイプレート変形量との相関性を取得する方法について説明するフローチャートである。
図11はダイプレート変形量に基づく吸着力の設定方法について説明するフローチャートである。
【0051】
本実施形態では、最初に、
図10に示すように、ダイ変形量とダイプレート変形量との相関性を取得する。この工程(第一工程)は、原則、1回のみ行う。その後、
図11に示すように、第一工程において取得した相関性を用いて、新たに測定するダイプレートの変形量に基づいて吸着力を設定する。この工程(第二工程)は、ダイの種類等が変更になった毎に行う。
【0052】
まず、第一工程においてダイ変形量とダイプレート変形量との相関性を取得する方法について
図10を用いて説明する。
【0053】
(吸着力とダイ変形等との相関データ取得:ステップS21)
ステップS21について
図7(a)から
図7(d)を用いて説明する。
図7(a)から
図7(d)に示すシーケンスによりダイDをピックアップした後、コレット22からダイDを取り外して変形および破損を観察し、変形がある場合は変形量を測定する。そのときの、ダイDの種類、剥離ユニット13の吸着力、ダイDの変形および破損の有無、ダイDの変形量を記録する。そして、剥離ユニット13の吸着力を変えて、ダイDのピックアップを行い、ダイの種類、剥離ユニット13の吸着力、ダイDの変形および破損の有無、ダイDの変形量を測定し、それらを制御部8のメモリまたはダイボンダ10の外部の制御装置等のメモリ(以下、単に、記憶装置という。)に記録する。ここで、吸着力は、剥離ユニット13の吸引口132a、溝132bおよび隙間132gの内部を減圧する圧力であり、例えば、バルブ192の開閉度により調整されうる。
【0054】
また、ダイの種類を変えて、ダイDのピックアップを行い、ダイの種類、剥離ユニット13の吸着力、変形および破損の有無、変形量等、相関性(第三相関データ)等を記憶装置に記録する。ここで、ダイの種類とは、例えば、ダイの厚さ、同一の剥離ユニットで剥離可能な範囲内のダイのサイズ、ダイに形成されるICの種類等である。これにより、剥離ユニット13における吸着力とダイDの変形量の相関性(第三相関データ)が得られる。
【0055】
(吸着力とダイプレート変形との相関データ取得:ステップS22)
ステップS22について
図12(a)から
図12(d)を用いて説明する。
図12(a)はコレットをダイプレートに接触させた状態を示す図であり、
図7(a)に対応する図である。
図12(b)は全てのブロックを同時に突上げた状態を示す図であり、
図7(b)に対応する図である。
図12(c)は最外周のブロックを引き下げた状態を示す断面図であり、
図7(c)に対応する図である。
図12(d)はコレットによりダイプレートを吸着して上昇する状態を示す図であり、
図7(d)に対応する図である。
【0056】
図12(a)から
図12(d)に示すように、ダイプレートDPのピックアップ動作を、
図7(a)から
図7(d)に示すダイDのピックアップ動作と同様に行う。その後、コレット22からダイプレートDPを取り外して変形を観察し、変形がある場合は変形量を測定する。そのときの、剥離ユニット13の吸着力、ダイプレートDPの変形の有無、変形量を記憶装置に記録する。そして、剥離ユニット13の吸着力を変えて、ダイプレートDPのピックアップを行い、剥離ユニット13の吸着力、ダイプレートDPの変形の有無および変形量を記憶装置に記録する。これにより、剥離ユニット13における吸着力とダイプレートDPの変形量の相関性(第二相関データ)が得られる。
【0057】
(ダイ変形等がない吸着力におけるダイプレートの変形量の取得:ステップS23)
ステップS23について
図13(a)および
図13(b)を用いて説明する。
図13(a)はダイプレートの変形について説明する概念図である。
図13(b)はダイとの変形について説明する概念図である。
【0058】
図13(a)に示すダイプレートDPの変形量と
図13(b)に示すダイDの変形量とを比較し、その相関性(相関データ)を記憶装置に記録する。
図13(a)および
図13(b)においては剥離ユニット13の吸着力が異なる場合を一つの図により表している。右側は左側よりも吸着力が大きく、変形量が大きい。また、ダイプレートDPに対する吸着力とダイDに対する吸着力は同じである。左側のダイプレートの変形量をδ1、右側の変形量をδ2、左側のダイDの変形量をδ3とすると、δ3<δ1<δ2である。なお、右側のダイDは破損している。ダイDの変形がない状態(δ3=0となるとき)の吸着力におけるダイプレートDPの変形量(δ1)を求めて、これを所定値として記憶装置に記録する。
【0059】
次に、第一工程において取得した相関性等を用いて、第二工程において新たに測定するダイプレートの変形量に基づいて吸着力を設定する方法について
図11を用いて説明する。
【0060】
(吸着力とダイプレート変形との相関データ取得:ステップS31)
ステップS22と同様に、剥離ユニット13の吸着力を変えて、ダイプレートDPの変形量を測定して、吸着力とダイプレート変形との相関データ(第一相関データ)を取得して記憶装置に記録する。
【0061】
(ダイプレート変形量が所定値である吸着力の取得:ステップS32)
制御部8は、ステップS22で求めた変形量(δ1)以下になるよう吸着力をステップS31で取得した相関データより取得する。
【0062】
(吸着力の設定:ステップS33)
制御部8は、剥離ユニット13の吸着力がステップS33により取得した吸着力になるようを吸引機構のバルブ192の開閉度等を設定する。
【0063】
次に、変形量の測定について以下説明する。変形量は、例えば、レーザ顕微鏡を用いてダイプレートDPやダイDのワークの表面を観察することにより測定される。レーザ顕微鏡は、光源からレーザを照射し、対物レンズを通過したレーザが観察対象を走査し、観察対象からの反射光が再度対物レンズに入射する。そして、レーザ顕微鏡は、ハーフミラーでその反射光の経路を検出器に向けて変更し、結像位置に設けられたピンホールで散乱光を排除し、検出器に入射したレーザを増幅して三次元画像を表示する。また、共焦点の場合には合焦した状態で最も輝度が高くなるため、対象物の高さを得ることができる。コンフォーカル光学系においては、輝度が最大、すなわち最も明るくなったZの位置がワークの表面の高さ情報を表すことになる。このことを利用し、輝度が最大となったときのZ位置を記録することにより、ワークの高さ情報を取り込むことが可能となる。
【0064】
実施形態によれば、下記の一つまたは複数の効果が得られる。
【0065】
(1)Cu等の塑性変形し易い素材の薄い板としてのダイプレートを吸着して、ダイプレートの変形を確認(測定)する。塑性変形し易い素材を用いているので、少しの力を薄い板に加えると薄い板は比較的大きく変形し、明確に数値化することができ、変形量から加わっている力を推定しやすくなる。
【0066】
(2)測定によって得られた変形量と、ダイの変形・破損状態を記録する。これにより、吸着力とダイプレートの変形量の関係を通じ、ダイの変形量や破損を関連付けられる。
【0067】
(3)上記(2)の記録をもとに、ダイの種類に応じて剥離ユニットの吸着力を設定する。これにより、ダイを変更する場合、吸着力の設定をするだけで済む。
【0068】
(4)データを蓄積すれば色々な種類のダイについて変形量を把握できる様になり、ダイプレートでの変形を確認せずともダイの破損等を少なくできる。
【0069】
(5)素子が吸着(突き上げ)される際の変形または破損を低減することができる。これにより、不良品が減少すると共に、製品の製造速度を向上することができる。
【0070】
(6)多様の素子に対応しやすいダイボンディング装置を提供することが可能になる。
【0071】
<変形例>
以下、実施形態の代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施形態の一部、および、複数の変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0072】
(第一変形例)
第一変形例におけるダイプレートについて
図14(a)および
図14(b)を用いて説明する。
図14(a)は第一変形例におけるダイプレートの上面を示す模式図である。
図14(b)は
図14(a)に示されるダイプレートの正面を示す模式図である。
【0073】
実施形態では、ダイプレートDPを無地の平板である例を説明したが、第一変形例ではダイプレートDPの表面にマーキング予め施しておく。ここで、マーキングは、例えば、格子状の線や
図14(a)および
図14(b)に示すようなメッシュ加工等である。マーキングを観察して(撮像装置により撮像して画像処理を行うことにより)変形を定量的に測定するようにしてもよい。例えば、ピックアップしたダイプレートDPをピックアップヘッド21により中間ステージ31に載置してステージ認識カメラ32によりダイプレートDPを撮像する。測定時にマーキングの変化を確認できれば、変形を視覚化し、変形の有無がさらに見やすくなる。但し、
図14(a)および
図14(b)のダイプレートDPではコレットで吸着する際のエアーがダイプレートDPの側面からリークしてしまうので、加工面を透明な平板で覆う必要がある。
【0074】
(第二変形例)
第二変形例におけるダイプレートについて
図15(a)および
図15(b)を用いて説明する。
図15(a)は第二変形例におけるダイプレートの上面を示す模式図である。
図15(b)は
図15(a)に示されるB-B線における断面を示す模式図である。
【0075】
第二変形例では、ダイプレートDPの一部を更に薄くする。例えば、
図15(b)に示されるように、穴または貫通孔が開いた板の両面にプレートを貼り付けてダイプレートDPを形成する。ダイプレートDPの一部を薄くすることにより、塑性変形が起きやすくなり、変形エリアの特定が容易になる。
【0076】
(第三変形例)
第三変形例におけるダイプレートについて
図16(a)および
図16(b)を用いて説明する。
図16(a)は第三変形例におけるダイプレートの上面を示す模式図である。
図16(b)は
図16(a)に示されるB-B線における断面を示す模式図である。
【0077】
ダイプレートDPの上面をディンプル加工する。ダイプレートDPの一部を薄くすることにより、塑性変形が起きやすくなり、変形エリアの特定が容易になる。但し、この際もダイプレートDPの表面に平板を設けても良い。
【0078】
以上、本開示者によってなされた開示を実施形態、変形例および実施例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態、変形例および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0079】
例えば、実施形態では、複数のブロックの数は四個の例を説明したが、ダイサイズに応じてブロックの数が三個以下または五個以上であってもよい。
【0080】
また、剥離ユニットの複数のブロックは同心四角状のものについて説明したが、同心円形状や同心楕円形状のものであってもよいし、四角状ブロックを平行に並べて構成してもよい。
【0081】
また、剥離ユニットは複数のブロックを突き上げる例を説明したが、一つのブロックをスライドするようにしてもよい。
【0082】
また、実施形態では、半導体ウェハからダイをピックアップする際のダイの変形および破損について説明したが、製造段階での破損変形を起こしやすい工程前の確認事項として応力変化を確認するようにしてもよい。
【0083】
また、実施形態では、ダイアタッチフィルムを用いる例を説明したが、基板に接着剤を塗布するプリフォーム部を設けてダイアタッチフィルムを用いなくてもよい。
【0084】
また、実施形態では、ピックアップヘッドおよび中間ステージを設ける例を説明したが、これに限定されるものではなく、ダイ供給部からダイをピックアップするダイボンディング装置に適用可能である。例えば、中間ステージとピックアップヘッドがなく、ダイ供給部のダイをボンディングヘッドで基板にボンディングするダイボンダにも適用可能である。
【0085】
8・・・制御部
10・・・ダイボンダ(ダイボンディング装置)
13・・・剥離ユニット
16・・・ダイシングテープ
D・・・ダイ(ワーク)
DP・・・ダイプレート(ワーク)