(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024096
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】双極型蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/18 20060101AFI20230209BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20230209BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20230209BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20230209BHJP
H01M 4/68 20060101ALI20230209BHJP
H01M 10/12 20060101ALI20230209BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H01M10/18
H01M4/70 A
H01M50/474
H01M50/477
H01M4/68 A
H01M10/12 K
H01M10/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130177
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平 芳延
(72)【発明者】
【氏名】冨永 希
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 広樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】須山 健一
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H028
【Fターム(参考)】
5H017AA01
5H017AS03
5H017DD01
5H017EE02
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE15
5H028AA08
5H028CC19
5H028EE01
5H028EE06
(57)【要約】
【課題】電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供する。
【解決手段】正極用集電体111aを有する正極111、負極用集電体112aを有する負極112、および電解質層113を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材110と、基板121と、枠体122と、正極側と負極側との間を貫通して形成される導通孔121aと、を含む空間形成部材120と、を有し、正極用集電体111aは、互いに隣接した位置に配置される第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間に設けられる緩衝部180を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、前記正極側と前記負極側との間を貫通して形成される導通孔と、積層した際に隣接する前記基板同士を互いに支持する柱部と、を含む空間形成部材と、
を有し、
前記正極用集電体は、互いに隣接した位置に配置される第1の導通孔と第2の導通孔との間に設けられる緩衝部を備えていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記緩衝部の一端部及び他端部は、それぞれ前記正極用集電体の周縁部と前記柱部を回避するための柱部用貫通穴とから離間して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記緩衝部は、前記柱部を回避するための柱部用貫通穴から前記第1の導通孔と前記第2の導通孔との間を隔てるように伸び、前記緩衝部の一端部は、前記正極用集電体の周縁部から離間した位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記緩衝部は、前記柱部を回避するための柱部用貫通穴から前記第1の導通孔と前記第2の導通孔との間を隔てるように伸び、前記正極用集電体の周縁部まで連通することを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記柱部用貫通穴から伸びる前記緩衝部は、隣接する前記柱部用貫通穴との間で連通するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記緩衝部は、前記導通孔及び前記柱部を回避するための柱部用貫通穴の周囲を囲むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項7】
前記緩衝部は、前記正極用集電体の表面及び裏面の両方、或いは、いずれか一方に設けられる凹凸部であることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項8】
前記凹凸部は、前記正極用集電体の周縁部と前記柱部を回避するための柱部用貫通穴とを結ぶように設けられていることを特徴とする請求項7に記載の双極型蓄電池。
【請求項9】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、前記正極側と前記負極側との間を貫通して形成される導通孔と、を含む空間形成部材と、
を有し、
前記正極用集電体は、互いに隣接した位置に配置される第1の導通孔と第2の導通孔との間に設けられる緩衝部を備えていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項10】
前記緩衝部の一端部は、前記正極用集電体の周縁部から離間して設けられていることを特徴とする請求項9に記載の双極型蓄電池。
【請求項11】
前記一端部を有する前記緩衝部であって、前記正極用集電体の外縁を形成する辺であって互いに対向する2辺の間に配置される2つの前記緩衝部のそれぞれの他端部は、それぞれの前記一端部を結ぶ直線上において互いに対向しつつ離間した位置に配置されることを特徴とする請求項10に記載の双極型蓄電池。
【請求項12】
前記一端部を有する前記緩衝部であって、前記正極用集電体の外縁を形成する辺であって互いに対向する2辺の間に配置される2つの前記緩衝部のそれぞれの他端部は、それぞれの前記一端部を結ぶ直線上において互いに連結されていることを特徴とする請求項10に記載の双極型蓄電池。
【請求項13】
前記緩衝部は、前記第1の導通孔と前記第2の導通孔との間を隔て、前記正極用集電体の外縁を形成する辺であって互いに対向する2辺の周縁部の間を連通するように形成されていることを特徴とする請求項9に記載の双極型蓄電池。
【請求項14】
前記緩衝部は、前記導通孔の周囲を囲むように設けられていることを特徴とする請求項9に記載の双極型蓄電池。
【請求項15】
前記緩衝部は、前記正極用集電体の表面及び裏面の両方、或いは、いずれか一方に設けられる凹凸部であることを特徴とする請求項9に記載の双極型蓄電池。
【請求項16】
前記凹凸部は、前記正極用集電体の辺であって互いに対向する2辺の周縁部を結ぶように設けられていることを特徴とする請求項15に記載の双極型蓄電池。
【請求項17】
前記緩衝部は、空間形成部材の周縁部に近接して設けられる前記導通孔に対して、前記導通孔を囲みつつ、前記空間形成部材の周縁部に向けて開放されるように配置されることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項9または請求項10のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項18】
前記第1の導通孔と前記第2の導通孔との間に設けられる第1の緩衝部と、前記第1の導通孔と第3の導通孔との間に設けられる第2の緩衝部と、を備え、前記第1の緩衝部の他端部と前記第2の緩衝部の他端部とが接続され、前記第1の緩衝部と前記第2の緩衝部とが1つの緩衝部として形成されていることを特徴とする請求項17に記載の双極型蓄電池。
【請求項19】
前記緩衝部は、前記空間形成部材の周縁部に近接して設けられる前記導通孔に対して、前記導通孔の四方のうち三方を囲み、一方は前記空間形成部材の周縁部に向けて開放されるように配置されることを特徴とする請求項17に記載の双極型蓄電池。
【請求項20】
前記緩衝部は、スリットであることを特徴とする請求項1ないし請求項6、請求項9ないし請求項14のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項21】
前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項20のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、双極型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された鉛蓄電池では、額縁形をなす樹脂からなるフレーム(リム)の内側に、樹脂からなる基板(バイポーラプレート)が取り付けられている。基板の一方面及び他方面には、正極用鉛層及び負極用鉛層が設けられている。正極用鉛層には、正極用活物質層が隣接している。負極用鉛層には、負極用活物質層が隣接している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
さらに正極用鉛層と負極用鉛層とは、基板に複数形成された穿孔の内部で直接的に接合されている。すなわち、特許文献1に記載の鉛蓄電池は、一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(連通孔)を有する基板とセル部材とが交互に複数積層された双極(バイポーラ)型鉛蓄電池である。
【0005】
セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を設けた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を設けた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有し、一方のセル部材の正極用鉛層と他方のセル部材の負極用鉛層とが基板の穿孔の内部に没入して接合されることにより、セル部材同士が直列に接続されたものとなっている。ここで正極用鉛層と負極用鉛層とが接合される際には、例えば、抵抗溶接が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した基板に設けられる正極用鉛層、或いは、負極用鉛層は、それぞれ薄い膜状(鉛箔)に形成されている。これら正極用鉛箔と負極用鉛箔を基板の上に設ける方法としては、例えば、基板の上に接着剤を塗布してその上から正極用鉛箔と負極用鉛箔を載置し、接着剤を介して基板に接着することが考えられる。ここで、接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂が用いられる。
【0008】
このように接着剤を用いて基板に正極用鉛箔と負極用鉛箔とを接着した状態を示すのが
図9である。なお、接着剤を用いて基板と接着される鉛箔は正極用鉛箔と負極用鉛箔とがあるが、
図9では正極用鉛箔を例に挙げて説明している。すなわち
図9の(a)に示すように、このバイポーラ電極の正極は、樹脂製の基板210の一方の面の上に接着層240を介して正極用鉛箔220が配され、当該正極用鉛箔220の上に正極用活物質層(図示せず)が配されることによって構成されている。
【0009】
上記のような双極型鉛蓄電池においては、電解液に含有される硫酸によって正極用鉛箔220が腐食して正極用鉛箔220の表面に腐食生成物(酸化鉛)の被膜260が生成されることがある(
図9の(b)を参照)。そして、この腐食生成物の被膜260の成長によって正極用鉛箔220に伸び(グロース)が生じるおそれがあった。
【0010】
また、このグロースによって正極用鉛箔220と接着層240とが剥離し、正極用鉛箔220と接着層240との界面に電解液が浸入して、硫酸による正極用鉛箔220の腐食がさらに進行するおそれがあった(
図9の(c)を参照)。その結果、腐食が例えば正極用鉛箔220の裏面(基板210に対向する面)にまで達すると、正極用鉛箔220の剥離が生じるなどして電池の性能が低下する場合があった。
【0011】
さらには、正極と負極との導通を図るために設けられる、上述した一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(連通孔)を介して電解液が正極側から負極側に到達すると、いわゆる液洛が生じ、電圧低下を引き起こして電池性能の低下を招来する。
【0012】
また、例えば、正極用鉛層と負極用鉛層とを接合するに当たっては、上述したように抵抗溶接が利用される。しかしながら、上述したグロースが発生することによって、正極用鉛層が伸びて引っ張られてしまい、負極用鉛層と接合された部分に応力が掛かる可能性がある。
【0013】
このような場合であって、応力が大きかった場合、抵抗溶接により接合された部分が裂けてしまうことも考えられる。正極用鉛層の破損により基板と正極用鉛層との間に電解液が浸入すると、上述したような電解液による液洛が生じてしまい、電池性能の低下を生じてしまうおそれがあった。
【0014】
また、抵抗溶接は、正極用鉛層及び負極用鉛層の両側から圧力を掛けつつ電流を流すことで生じる抵抗熱によって溶接を行うものである。複数の連通孔が設けられている場合、第1の連通孔における正極用鉛層及び負極用鉛層を溶接した後に、隣接する第2の連通孔を溶接する際に、先の第1の連通孔へ向けて、電流が分散しまう現象が起こりうる。当該現象が生ずると、抵抗溶接に必要な抵抗熱が十分発生せず(電流が分散してしまい)接合不良が起きてしまいかねず、上述したような液洛の発生、電池性能の低下を招来しかねない。
【0015】
本発明は、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、正極側と負極側との間を貫通して形成される導通孔と、積層した際に隣接する基板同士を互いに支持する柱部と、を含む空間形成部材と、を有し、正極用集電体は、互いに隣接した位置に配置される第1の導通孔と第2の導通孔との間に設けられる緩衝部を備えている。
【0017】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、正極側と負極側との間を貫通して形成される導通孔と、を含む空間形成部材と、を有し、正極用集電体は、互いに隣接した位置に配置される第1の導通孔と第2の導通孔との間に設けられる緩衝部を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、正極側と負極側との間を貫通して形成される導通孔と、積層した際に隣接する基板同士を互いに支持する柱部と、を含む空間形成部材と、を有し、正極用集電体は、互いに隣接した位置に配置される第1の導通孔と第2の導通孔との間に設けられる緩衝部を備えている。このような構成を採用することによって、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することができる。
【0019】
本発明によれば、本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、正極側と負極側との間を貫通して形成される導通孔と、を含む空間形成部材と、を有し、正極用集電体は、互いに隣接した位置に配置される第1の導通孔と第2の導通孔との間に設けられる緩衝部を備えている。このような構成を採用することによって、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の構造の概略を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る正極用鉛箔の全体を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る正極用鉛箔のうち、
図2に示す正極用鉛箔をA-A線で切断、拡大して示す拡大平面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る正極用鉛箔のうち、
図2に示す正極用鉛箔をA-A線で切断、拡大して示す拡大平面図である。
【
図5】本発明の第3の実施の形態に係る正極用鉛箔の全体を示す平面図である。
【
図6】本発明の第4の実施の形態に係る正極用鉛箔のうち、
図2に示す正極用鉛箔をA-A線で切断、拡大して示す拡大平面図である。
【
図7】本発明の第5の実施の形態に係る正極用鉛箔の全体を示す平面図である。
【
図8】本発明の第6の実施の形態に係る正極用鉛箔の全体を示す平面図及び当該平面図においてB-B線で切断された状態を示す断面図である。
【
図9】従来の双極型鉛蓄電池において、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極用鉛箔にグロースが生じた結果、正極用鉛箔と接着層との界面に電解液が浸入する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
〔全体構成〕
まず、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池の全体構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造の概略を示す概略断面図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイポーラプレート(空間形成部材)120と、第1のエンドプレート(空間形成部材)130と、第2のエンドプレート(空間形成部材)140と、カバープレート170とを有する。
【0024】
ここで、
図1ではセル部材110が3個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイポーラプレート120の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0025】
なお、以下においては、
図1に示すように、セル部材110の積層方向をZ方向(
図1の上下方向)とし、Z方向に垂直な方向で且つ互いに垂直な方向をX方向およびY方向とする。
【0026】
セル部材110は、正極111、負極112、およびセパレータ(電解質層)113を備えている。正極111は、正極用集電体である正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとを有する。負極112は、負極用集電体である負極用鉛箔112aと負極用活物質層112bとを有する。
【0027】
セパレータ113には電解液が含浸されている。セパレータ113は、正極111と負極112との間に介在している。セル部材110において、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112aは、この順に積層されている。
【0028】
正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法は、正極用活物質層111bのX方向およびY方向の寸法より大きい。同様に、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法は、負極用活物質層112bのX方向およびY方向の寸法より大きい。また、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きく(厚く)、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0029】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイポーラプレート120の基板121が配置されている。すなわち、複数のセル部材110は、バイポーラプレート120の基板121の間に挟まれた状態で積層されている。
【0030】
このように、複数枚のバイポーラプレート120と第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための空間形成部材である。
【0031】
すなわち、バイポーラプレート120は、セル部材110の正極側および負極側の両方を覆い、平面形状が長方形の基板121と、セル部材110の側面を囲うとともに基板121の4つの端面を覆うに枠体122と、を含む空間形成部材である。
【0032】
また、
図1に示すように、バイポーラプレート120は、さらに基板121の両面から垂直に突出する柱部123を備える。当該基板121の各面から突出する柱部123の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0033】
バイポーラプレート120を構成する基板121と枠体122と柱部123は、一体に、例えば、熱可塑性樹脂で形成されている。バイポーラプレート120を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリプロピレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、成形性に優れているとともに耐硫酸性にも優れている。よって、バイポーラプレート120に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート120に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0034】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。そして、複数のバイポーラプレート120が枠体122および柱部123同士が接触されて積層されることにより、基板121と基板121とが互いに支持されるとともに、基板121と基板121との間に空間Cが形成され、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0035】
正極用鉛箔111aには、柱部123を貫通させる柱部用貫通穴111cが形成されている。また、同様に、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113にも、柱部123を貫通させる貫通穴111d,112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0036】
バイポーラプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の導通孔121aを有する。基板121の一方の面に第1の凹部121bが、他方の面に第2の凹部121cが形成されている。第1の凹部121bの深さは第2の凹部121cの深さより深い。第1の凹部121bおよび第2の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0037】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、鉛又は鉛合金からなる正極用集電体である正極用鉛箔111aが配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、鉛又は鉛合金からなる負極用集電体である負極用鉛箔112aが配置されている。
【0038】
具体的には、正極用鉛箔111aは、基板121の第1の凹部121bと正極用鉛箔111aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第1の凹部121bに接合されている。また、負極用鉛箔112aは、基板121の第2の凹部121cと負極用鉛箔112aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第2の凹部121cに接合されている。
【0039】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが接着剤150を介して配置されている。
【0040】
本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120の基板121の導通孔121aには導通体160が配置されている。また、導通体160の両端面は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aと接触し、結合されている。すなわち、導通体160により正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続されている。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続されている。
【0041】
なお、ここでは導通体160を導通孔121aに挿入した例を挙げたが、上述した方法の他、例えば導通体160を用いず、正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aが導通孔121a内において直接接合される構造を採用することによって、正極側と負極側との間の導通を取ることとしても良い。
【0042】
正極用鉛箔111aの外縁部には、当該外縁部を覆うためのカバープレート170が設けられている。このカバープレート170は、薄板状の枠体で、長方形の内形線および外形線を有する。そして、カバープレート170の内縁部が正極用鉛箔111aの外縁部と重なり、カバープレート170の外縁部が基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と重なっている。
【0043】
すなわち、カバープレート170の内形線をなす長方形は、正極用活物質層111bの外形線をなす長方形より小さく、カバープレート170の外形線をなす長方形は、第1の凹部121bの開口面をなす長方形より大きい。
【0044】
接着剤150は、正極用鉛箔111aの端面から第1の凹部121bの開口側の外縁部まで回り込んで、カバープレート170の内縁部と正極用鉛箔111aの外縁部との間に配置される。また接着剤150は、カバープレート170の外縁部と基板121の一面との間にも配置されている。
【0045】
すなわち、カバープレート170は接着剤150により、基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と正極用鉛箔111aの外縁部とに亘って固定されている。これにより、正極用鉛箔111aの外縁部は、第1の凹部121bの周縁部との境界部においてもカバープレート170で覆われている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。
【0046】
なお、
図1では示していないが、負極用鉛箔112aの外縁部も正極用鉛箔111aの外縁部を覆っているカバープレート170と同様のカバープレートで覆われていても良い。また、カバープレートについては、薄板状の枠体であることを例に挙げて説明したが、例えば、耐電解液(耐硫酸)性を備えていればテープ状の物等であっても構わない。
【0047】
第1のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。また、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133を備える。
【0048】
基板131の平面形状は長方形であり、基板131の4つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は1つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部133と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0049】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、第1のエンドプレート130は、最も外側(正極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層される。
【0050】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第1のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第1のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0051】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111aには、柱部133を貫通させる柱部用貫通穴111cが形成されている。また同様に、正極用活物質層111b、およびセパレータ113にも、柱部133を貫通させる貫通穴111d,113aがそれぞれ形成されている。
【0052】
第1のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0053】
第1のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが上述したように接着剤150を介して配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121と同様に、カバープレート170が接着剤150により基板131の一面側に固定され、正極用鉛箔111aの外縁部が、凹部131bの周縁部との境界部においてもカバープレート170で覆われている。
【0054】
また、第1のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aと電気的に接続された、
図1では図示されていない正極端子を備えている。
【0055】
第2のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。また、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143を備える。
【0056】
基板141の平面形状は長方形であり、基板141の4つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部143と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0057】
Z方向において、枠体142の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、第2のエンドプレート140は、最も外側(負極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層される。
【0058】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第2のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第2のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0059】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0060】
第2のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0061】
第2のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。また、第2のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aと電気的に接続された、
図1では図示されていない負極端子を備えている。
【0062】
ここで、隣接するバイポーラプレート120同士、第1のエンドプレート130と隣接するバイポーラプレート120、或いは、第2のエンドプレート140と隣接するバイポーラプレート120との接合の際には、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着といった、各種溶着の方法を採用することができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そのためより好適には、振動溶着が用いられる。
【0063】
なお、溶着の対象としては、互いに隣接するバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140において対向する位置に配置される枠体のみならず、各柱部も含まれる。
【0064】
なお図面には示されていないが、枠体が有する四つの端面のうちの一つの端面には、空間Cに電解液を入れるための注入穴を形成する切り欠き部が形成されている。この切り欠き部は、例えば図面右側に存在する枠体の側面に形成されている場合、枠体をX方向に貫通し、枠体のZ方向の両端面から半円弧状に凹む形状を有する。そして、この切り欠き部は上述の接合構造に関与せず、振動溶接により上述の接合構造が形成される際に、対向する切り欠き部によって円形の注入穴が形成される。
【0065】
〔製造方法〕
この第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100は、例えば、以下に説明する各工程を有する方法で製造することができる。
【0066】
<正負極用鉛箔付きバイポーラプレートの作製工程>
先ず、バイポーラプレート120の基板121を、第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、第1の凹部121bに接着剤150を塗布し、第1の凹部121b内に正極用鉛箔111aを入れる。その際に、正極用鉛箔111aの柱部用貫通穴111cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0067】
次に、基板121の第2の凹部121c側を上に向けて作業台に置き、導通孔121aに導通体160を挿入する。そして、第2の凹部121cに接着剤150を塗布し、第2の凹部121c内に負極用鉛箔112aを入れる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の他面に負極用鉛箔112aを貼り付ける。
【0068】
次に、基板121の第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、正極用鉛箔111aの外縁部の上および第1の凹部121bの縁部となる基板121の上面に接着剤150を塗布し、その上にカバープレート170を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート170を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板121の部分(第1の凹部121bの周縁部)の上に亘って固定する。
【0069】
次に、抵抗溶接を行って、正極用鉛箔111a、導通体160、及び負極用鉛箔112aを接合する。ここで抵抗溶接については、具体的に以下の通りに行われる。基板121に設けられている導通孔121aには、導通体160が挿入されている。そして、この導通孔121a及び導通体160を覆うように、正極用鉛箔111aが配置されている。
【0070】
すなわち、基板121の一方の面に、接着剤150が設けられ、その上に正極用鉛箔111aが配置されて接着剤150と正極用鉛箔111aとが接着されている。なお、当該接着剤150は、導通孔121aの近傍には設けられていない。また、同じように、基板121の他方の面には、接着剤150が設けられ、その上に負極用鉛箔112aが配置されて接着剤150と負極用鉛箔112aとが接着されている。
【0071】
この状態で、溶接機を用いて正極側及び負極側の正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aから導通体160に向けて加圧、通電する。具体的には、一方の電極が正極用鉛箔111aに接し、他方の電極が負極用鉛箔112aに接する。
【0072】
そして、それぞれの電極が導通孔121aに向けて互いに近接するように圧力を掛けながら移動する。この際に電流が溶接機において流れることで、互いに溶融接合される。これにより、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を得る。この正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を必要枚数だけ用意する。
【0073】
<正極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第1のエンドプレート130の基板131を、凹部131b側を上に向けて作業台に置き、凹部131bに接着剤150を塗布し、凹部131b内に正極用鉛箔111aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、正極用鉛箔111aの柱部用貫通穴111cにエンドプレート130の柱部133を通す。この接着剤150を硬化させて、基板131の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0074】
次に、正極用鉛箔111aの外縁部の上および凹部131bの縁部となる基板131の上面に接着剤150を塗布し、その上にカバープレート170を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート170を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板131の部分の上に亘って固定する。これにより、正極用鉛箔付きエンドプレートを得る。
【0075】
<負極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第2のエンドプレート140の基板141を、凹部141b側を上に向けて作業台に置き、凹部141bに接着剤150を塗布し、凹部141b内に負極用鉛箔112aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cに第2のエンドプレート140の柱部143を通す。この接着剤150を硬化させて、基板141の一面に負極用鉛箔112aが貼り付けられた第2のエンドプレート140を得る。これにより、正極用鉛箔付きエンドプレート及び負極用鉛箔付きエンドプレートの作製が完了する。
【0076】
<プレート同士を積層して接合する工程>
先ず、正極用鉛箔111aおよびカバープレート170が固定された第1のエンドプレート130を、正極用鉛箔111aを上に向けて作業台に置き、カバープレート170の中に正極用活物質層111bを入れて正極用鉛箔111aの上に置く。その際に、正極用活物質層111bの貫通穴111dに第1のエンドプレート130の柱部133を通す。次に、正極用活物質層111bの上に、セパレータ113、負極用活物質層112bを置く。
【0077】
次に、この状態の第1のエンドプレート130の上に、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120の負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。その際に、バイポーラプレート120の柱部123を、セパレータ113の貫通穴113aおよび負極用活物質層112bの貫通穴112dに通して、第1のエンドプレート130の柱部133の上に載せるとともに、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122を載せる。
【0078】
この状態で、第1のエンドプレート130を固定し、バイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122が接合され、第1のエンドプレート130の柱部133の上にバイポーラプレート120の柱部123が接合される。
【0079】
その結果、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合され、第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120とで形成される空間Cにセル部材110が配置され、バイポーラプレート120の上面に正極用鉛箔111aが露出した状態となる。
【0080】
次に、このようにして得られた、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合されている結合体の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後、さらに、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0081】
この状態で、この結合体を固定し、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。この振動溶接工程を、必要な枚数のバイポーラプレート120が第1のエンドプレート130の上に接合されるまで続けて行う。
【0082】
最後に、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後、さらに、第2のエンドプレート140を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0083】
この状態で、この結合体を固定し、第2のエンドプレート140を基板141の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、第2のエンドプレート140が接合される。
【0084】
以上でバイポーラプレート120に正極用活物質層111b、負極用活物質層112b、及び、セパレータ113の載置、各プレート同士の積層、接合が行われる流れを説明した。
【0085】
<注液および化成工程>
上述の各プレート同士の積層、接合工程において、枠体の対向面同士の振動溶接による接合構造が形成され、対向する枠体の切り欠き部によって、双極型鉛蓄電池100の例えばX方向の一端面の各空間Cの位置に、円形の注入穴が形成されている。この注入穴から各空間Cの内部に電解液を所定量注液し、セパレータ113に電解液を含浸させる。その上で所定の条件で化成することで、双極型鉛蓄電池100を作製できる。
【0086】
なお、注入穴は、上述のように、予め枠体に切り欠き部を設けることで形成してもよいし、枠体の接合後にドリル等を用いて開けてもよい。
【0087】
次に、本発明の実施の形態において用いられる、後述する緩衝部180が設けられる前の集電体(鉛箔)について以下、説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る正極用鉛箔111aの全体を示す平面図である。なお、
図2以降、正極用鉛箔111aの平面図におけるハッチングは、図示の都合上省略している。
【0088】
上述したように、正極用鉛箔111aは、基板121の第1の凹部121bに接着剤150を介して接合されている。その際、基板121に設けられている柱部123を回避するために設けられている柱部用貫通穴111cを当該柱部123に通す。本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100の場合、基板121には柱部123が4つ設けられていることから、柱部用貫通穴111cについても柱部123の位置に合わせて4つ設けられている。
【0089】
図2に示す正極用鉛箔111aにおいては、柱部用貫通穴111cの他、基板121に設けられている導通孔121aの位置についても破線で示している。すなわち、正極用鉛箔111aが基板121に接合され負極側との間で導通を取る際には、これら導通孔121aの位置において負極用鉛箔112aと抵抗溶接によって接合される。本発明の実施の形態における基板121には、4つの柱部123を囲むように8つ、これらの柱部123の中央に1つの合計9つの導通孔121aが設けられている。
【0090】
図2に示す正極用鉛箔111aについては、今後説明するいずれの実施の形態においても使用され、当該正極用鉛箔111aに様々な緩衝部180が設けられる。但し、各実施の形態においては、基本的に
図2のように正極用鉛箔111aの全体を示すことはせず、正極用鉛箔111aの右上の部分においてA-A線で切断した部分のみを拡大して示す。
【0091】
なお
図2においては、説明の便宜上、正極用鉛箔111aのX方向及びY方向の寸法は同じとして描画している。また、
図2に限らず、
図3以降の各図についてもX方向とY方向が同じとなるように描画されている。
【0092】
さらに、以下正極用鉛箔111aに設けられる緩衝部180については、その形態ごとに各実施の形態において説明するが、いずれの実施の形態においても正極用鉛箔については「正極用鉛箔111a」と表している。
【0093】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る正極用鉛箔111aのうち、
図2に示す正極用鉛箔111aをA-A線で切断、拡大して示す拡大平面図である。
図3で示されている正極用鉛箔111aは、
図2の正極用鉛箔111aを4分割した際の右上の部分に該当する。そのため、
図3の正極用鉛箔111aの右端及び上端が正極用鉛箔111aの周縁部に該当する。また、
図3に示す正極用鉛箔111aの左端と下端は、それぞれ隣接する分割された正極用鉛箔111aの左上、右下の部分と接する。
【0094】
図3に示す正極用鉛箔111aにおいて、左下の角に近い位置に基板121の柱部123を通すための柱部用貫通穴111cが設けられている。また、
図3に示す正極用鉛箔111aには、4つの導通孔121aを示す破線が描画されている。そのうち右上に描画されている1つは破線で円形状に示されている。なおここでは、当該円形状に示されている導通孔121aを、説明の便宜上「第1の導通孔121aa」と表す。
【0095】
これに対して、この正極用鉛箔111aは
図2に示す正極用鉛箔111aをA-A線で切断、拡大して示されていることから、柱部用貫通穴111cを挟んで上記第1の導通孔121aに対向する位置に示される、図面上左下の導通孔121aは1/4分のみ示されている。
【0096】
そして第1の導通孔121aaを基準としてX方向及びY方向にもそれぞれ導通孔121aが配置されており、それぞれ破線の半円で示されている。これら半円形に示される2つの導通孔121aは、第1の導通孔121aaとの配置関係において、基板121に設けられる9つの導通孔121aの中で第1の導通孔121aaと互いに隣接した位置に配置される導通孔121aであるといえる。
【0097】
そこで、これらの導通孔121aのうち、第1の導通孔121aaとX方向において隣接する導通孔121aを以下「第2の導通孔121ab」と表す。また、第1の導通孔121aaとY方向において隣接する導通孔121aを以下「第3の導通孔121ac」と表す。
【0098】
さらに、
図3に示す正極用鉛箔111aの左下、第2の導通孔121abとX方向において、及び、第3の導通孔121acとY方向において隣接する導通孔121aを、以下「第4の導通孔121ad」と表す。そして上述したように、第4の導通孔121adは1/4円状に示されている。
【0099】
本発明の各実施の形態における正極用鉛箔111aには、緩衝部180が設けられている。なお、以下の各実施の形態においては、それぞれ設けられる緩衝部180について区別するべく各実施の形態ごとに異なる符号を付しているが、緩衝部としてまとめて説明する場合には、「緩衝部180」と表す。
【0100】
以下、各実施の形態において説明する緩衝部180は、
図2に示す正極用鉛箔111aの中央からその周縁部に向かってグロースによって生ずるひずみを吸収することを前提として設けられている。
【0101】
すなわち、当該緩衝部180は、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極用鉛箔111aにグロース(伸び)が生じても当該グロースを吸収して、導通孔121aにおいて接合されている正極用鉛箔111aが破損することを回避する。
【0102】
また、緩衝部180を設けることによって、導通孔121aにおいて正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとを接合する際の抵抗溶接に必要な電流が分散することも防止する。
【0103】
緩衝部180はこのような役割を担っていることから、第1の実施の形態における緩衝部180Aは、互いに隣接した位置に配置される第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間、或いは、第1の導通孔121aaと第3の導通孔121acとの間に設けられる。また、第1の実施の形態における緩衝部180Aは、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121ab或いは第3の導通孔121acとを最短で結ぶ線を跨ぐように設けられている。
【0104】
すなわち、
図3の正極用鉛箔111aに示されているように、互いに隣接する第1の導通孔121aa及び第2の導通孔121ab、第1の導通孔121aa及び第3の導通孔121acの間に緩衝部180Aがそれぞれ設けられている。そして、第1の導通孔121aaとX方向に隣接する第2の導通孔121abとの間であって、これらを最短で結ぶ線を跨ぐように緩衝部180Aが設けられている。また、第1の導通孔121aaとY方向に隣接する第3の導通孔121acとの間にも同様の位置関係をもって緩衝部180Aが設けられている。
【0105】
なお、
図3に示す緩衝部180Aは、いずれも第1の導通孔121aaと第2の導通孔121ab、或いは第3の導通孔121acとを最短で結ぶ線に対して直交するように配置されている。但し、緩衝部180Aの配置位置は、このような角度をもって配置されることに限定されず、例えば、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121ab或いは第3の導通孔121acとを最短で結ぶ線を跨ぐように配置されるのであればどのような角度をもって配置されていても良い。
【0106】
また、緩衝部180Aは、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121acとを最短で結ぶ線の概ね半分の距離となる位置に設けられている。但し、この配置位置に関しても、緩衝部180Aは、第1の導通孔121aa、第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121acのいずれかに寄った位置に配置されていても良い。
【0107】
さらに、上述した配置角度、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121acとからの距離については、複数の緩衝部180Aそれぞれで異なるように設定されても良い。
【0108】
なお、このように緩衝部180Aの配置位置、向きは任意に設定することができるが、上述した緩衝部180Aを設ける目的からすれば、より好適には隣接する2つの貫通穴121aを隔てるように、両者を最短で結ぶ線を跨ぐように緩衝部180Aの両端部が配置されることが好ましい。
【0109】
第1の実施の形態における緩衝部180Aは、スリットで形成されている。また、その形状は、正極用鉛箔111aの周縁部に近い端部を一端部とし、柱部用貫通穴111cに近い端部を他端部とした場合に、当該一端部と他端部はいずれも曲線で構成され、一端部と他端部とは直線で結ばれる長孔形状である。但し、このような形状に限定されるものではなく、例えば長方形や楕円形といった、長孔形状以外の形状に形成されていても良い。
【0110】
緩衝部180Aを構成する一端部は正極用鉛箔111aの周縁部から離間した位置に、また、他端部は柱部用貫通穴111cから離間した位置となるように配置されている。
【0111】
また、
図3は
図2に示す正極用鉛箔111aがA-A線で切断、拡大して示されていることから途切れているように描画されているが、
図3に示す正極用鉛箔111aの左下に示されている第4の導通孔121adと第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121acとの間にも上述した緩衝部180Aと同じく緩衝部180Aが設けられている。
【0112】
すなわち、第2の導通孔121abと第4の導通孔121adとの間に設けられる緩衝部180Aは、第1の導通孔121aaと第3の導通孔121acとの間に設けられる緩衝部180Aと柱部用貫通穴111cを挟んで対向する位置に配置される。
【0113】
また、第3の導通孔121acと第4の導通孔121adとの間に設けられる緩衝部180Aは、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間に設けられる緩衝部180Aと柱部用貫通穴111cを挟んで対向する位置に配置される。
【0114】
図3に示されているような緩衝部180Aは、上述したような正極用鉛箔111aの所定の位置に、例えば、型抜きによって設けられる。或いは、エッチングといった手法を採用して緩衝部180Aを設けることも可能である。
【0115】
第1の実施の形態における緩衝部180Aは、以上説明した通りの位置に配置されているが、緩衝部180Aの一端部と他端部とをつなぐ直線の間の距離や、一端部や他端部がそれぞれ正極用鉛箔111aの周縁部、柱部用貫通穴111cからの離間距離等については、任意に設定することができる。
【0116】
以上説明した通り、本発明の第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、隣接する位置に配置される2つの導通孔121a同士の間に緩衝部180Aを設ける。このような構成を採用したことから、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することができる。
【0117】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0118】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る正極用鉛箔111aのうち、
図2に示す正極用鉛箔111aをA-A線で切断、拡大して示す拡大平面図である。
図4に示される第2の実施の形態における正極用鉛箔111aに設けられる緩衝部180Bは、第1の実施の形態における緩衝部180Aと形状が相違する。
【0119】
具体的には、緩衝部180Bは、その他端部が柱部用貫通穴111cに接して一体となっている。そのため緩衝部180Bは、第1の実施の形態における緩衝部180Aのように柱部用貫通穴111cから独立して設けられていない。すなわち、第2の実施の形態における緩衝部180Bは、それぞれ隣接する導通孔121a(第1の導通孔121aaないし第4の導通孔121ad)の間に柱部用貫通穴111cから四方に、各導通孔121の間を隔てるように伸びている。
【0120】
このように柱部貫通穴111cから伸びる緩衝部180Bのうち、基板121の周縁部に設けられる各導通孔121に向けて伸びる緩衝部180Bの一端部は、正極用鉛箔111aの周縁部から離間した位置に配置される。
【0121】
但しこの一端部は、第1の実施の形態における緩衝部180Aより周縁部に近い位置に配置されることから、緩衝部180Bの長さ、すなわち、他端部(ここでは柱部用貫通穴111c)から一端部までの長さは、当該緩衝部180Aよりも長い。
【0122】
そしてより好適には、緩衝部180Bの一端部は、隣接する2つの貫通穴121aを隔てるべく、少なくとも両者を最短で結ぶ線を超えるように他端部から伸びて配置されることが好ましい。
【0123】
さらに、柱部用貫通穴111cから伸びる緩衝部180Bは、隣接する柱部用貫通穴111cとの間で連通するように設けられている。すなわち、
図4に示されている柱部用貫通穴111cと互いに隣接する柱部用貫通穴111cとの間をつなぐように緩衝部180Bが設けられている。具体的には、
図4であれば、第4の導通孔121adと第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121acに設けられる緩衝部180Bである。そして、
図4ではその一部のみが示されている。
【0124】
なお、第1の導通孔121aaないし第4の導通孔121adのそれぞれの導通孔121aの間において、緩衝部180Bが配置される角度、距離については、緩衝部180Aと同じである。
【0125】
以上説明した通り、本発明の第2の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、隣接する位置に配置される2つの導通孔121a同士の間に緩衝部180Bを設ける。このような構成を採用したことから、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することができる。
【0126】
(第3の実施の形態)
次に本発明における第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態において、上述の第1、第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0127】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る正極用鉛箔111aの全体を示す平面図である。なお、このように第3の実施の形態においては正極用鉛箔111aの全体図を示して説明を行うが、適宜、
図5に示される正極用鉛箔111aの全体図のうち、これまで通り第1及び第2の実施の形態における拡大平面図において示した領域(正極用鉛箔111aの全体図のうち右上の領域であって
図5において正極用鉛箔111aの周縁部及び一点鎖線で囲まれる領域。以下、この領域のことを適宜「当該領域R」と表す。)も例に挙げて説明する。
【0128】
第3の実施の形態においては、正極用鉛箔111aに設けられる4つの柱部用貫通穴111cの中心に設けられる導通孔121a(
図5に示す第4の導通孔121ad)を除く8つの導通孔121aを囲むように緩衝部180Cが設けられている。
【0129】
すなわち、これら正極用鉛箔111aの周縁部に近い領域に配置される導通孔121aに対して、第3の実施の形態における緩衝部180Cは、個別にこれらの導通孔121aを囲むとともに、当該周縁部に向けて開放されるように配置される。
【0130】
具体的には、例えば、第1の導通孔121aaのように、基板121の周縁部であって四隅に設けられる4つの導通孔121aを囲むように設けられる緩衝部180Cと、当該四隅の導通孔121aに挟まれて設けられる4つの導通孔121a(
図5に示す導通孔121aであれば、第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121ac)を囲むように設けられる緩衝部180Cである。その結果、第3の実施の形態における緩衝部180Cは、2種類の形状を備えている。
【0131】
1つ目の形状である、四隅に設けられる4つの導通孔121aを囲むように設けられる緩衝部180Cは、略L字状となるように形成されている。当該L字状の緩衝部180Cを構成する緩衝部のうち一方の第1の緩衝部180Caは、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間であって両者を最短で結ぶ線を直交して跨ぐように設けられている。但し、その位置はより第1の導通孔121aaに近い位置となるように配置されている。
【0132】
また、L字状の緩衝部180Cを構成する緩衝部のうち他方の第2の緩衝部180Cbは、第1の導通孔121aaと第3の導通孔121acとの間であって両者を最短で結ぶ線を直交して跨ぐように設けられている。但し、その位置はより第1の導通孔121aaに近い位置となるように配置されている。
【0133】
そして、第1の緩衝部180Caと第2の緩衝部180Cbとのそれぞれ他端側は、互いに接続され、第1の緩衝部180Caと第2の緩衝部180Cbとは、一体の緩衝部として形成されている。すなわち、L字状の角部は柱部用貫通穴111cに近接した位置に配置され、第1の緩衝部180Caと第2の緩衝部180Cbが正極用鉛箔111aの周縁部との間で第1の導通孔121aaを囲むように配置される。
【0134】
そして、第1の導通孔121aaは、第1の緩衝部180Caと第2の緩衝部180Cbで構成されるL字状の緩衝部180Cで囲まれるものの、第1の導通孔121aaを挟んで当該L字状の緩衝部180Cと対向する位置には緩衝部180Cは配置されない。すなわち上述したように、緩衝部180Cは、正極用鉛箔111aの周縁部に向けて開放された状態となるように配置される。
【0135】
なお、
図5に示すL字状の緩衝部を構成する第1の緩衝部180Caと第2の緩衝部180Cbは、同じ長さに形成されているが、これらの長さは異なっていても良い。また角部は、第1の緩衝部180Ca及び第2の緩衝部180Cbがそれぞれ第1の導通孔121aaと第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121acとの間を最短で結ぶ線に直交するように設けられているため、概ね直角となるように形成されるが、この角部が鋭角、或いは、鈍角に形成されるよう第1の緩衝部180Caと第2の緩衝部180Cbが配置されても良い。
【0136】
次に、2つ目の形状からなる緩衝部180C(第3の緩衝部180Cc、第4の緩衝部180Cd)が設けられている。当該2つ目の形状を有する第3の緩衝部180Cc及び第4の緩衝部180Cdは、
図5に示されているように、第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121acを囲むように設けられている。
【0137】
すなわち、第2の導通孔121abを囲むように設けられる第3の緩衝部180Ccを例に挙げると、第3の緩衝部180Ccは、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間、第2の導通孔121abと第4の導通孔121adとの間、そして、第2の導通孔121abと、当該第2の導通孔121abを挟んで第1の導通孔121aaと反対側に設けられている第5の導通孔121aeとの間をそれぞれ隔てるように設けられている。一方で、第3の緩衝部180Ccは、第2の導通孔121abと正極用鉛箔111aの周縁部との間には設けられておらず、当該周縁部に向けて開放された形状とされている。
【0138】
そして、第2の導通孔121abと第4の導通孔121adとの間に設けられる緩衝部は、その一方に第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間に伸びる緩衝部が接続され、他方には、第5の導通孔121aeと第2の導通孔121abとの間に伸びる緩衝部が接続される。従って、第3の緩衝部180Ccは、2つの角部を備えている。
【0139】
従って、第3の緩衝部180Ccは、第2の導通孔121abを三方から囲むとともに、正極用鉛箔111aの周縁部に向けて開放された形状に形成されている。また同様に、第4の緩衝部180Cdは、第3の導通孔121acを三方から囲むとともに、正極用鉛箔111aの周縁部に向けて開放された形状に形成されている。
【0140】
正極用鉛箔111aの周縁部に対向した位置に配置される当該第3の緩衝部180Cc、或いは、第4の緩衝部180Cdの両端部は、当該周縁部から離間した位置に配置され、2つ形成される角部は柱部用貫通穴111cに近接した位置に配置されている。
【0141】
さらに第3の緩衝部180Ccにおいて隣接する第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間に配置される、1つの端部から角部に伸びる部分は、これらの導通孔121aを最短で結ぶ線を跨ぐように直交して設けられている。また、第2の導通孔121abと第5の導通孔121aeとに挟まれて配置されるもう1つの端部から角部に伸びる部分も同様である。
【0142】
また、第4の緩衝部180Cdにおいて隣接する第1の導通孔121aaと第3の導通孔121acとの間に配置される、1つの端部から角部に伸びる部分は、これらの導通孔121aを最短で結ぶ線を跨ぐように直交して設けられている。また、第3の導通孔121acを挟んでもう1つの端部から角部に伸びる部分も同様である。
【0143】
そのため、第2の導通孔121abを囲む第3の緩衝部Ccであって、2つの端部からそれぞれの角部に伸びる部分は、第1の緩衝部180Caと平行となる。また、第3の導通孔121acを囲む第4の緩衝部180Cdであって、2つの端部からそれぞれの角部に伸びる部分は、第2の緩衝部180Cbと平行となる。
【0144】
第3の緩衝部180Ccであって2つの端部からそれぞれの角部に伸びる部分は、このように配置されることから、例えば、第3の緩衝部180Ccのうち、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間には、第1の緩衝部180Caの他、第3の緩衝部180Ccのうち1つの端部から当該領域Rに示す柱部用貫通穴111cに近接する角部に伸びる部分が配置される。
【0145】
また、第4の緩衝部180Cdのうち、第1の導通孔121aaと第3の導通孔121acとの間には、第2の緩衝部180Cbの他、第4の緩衝部180Cdのうち1つの端部から当該領域Rに示す柱部用貫通穴111cに近接する角部に伸びる部分が配置される。よって、隣接する2つの導通孔121aの間には2つの平行する緩衝部180Cの一部分が配置されることになる。
【0146】
そして、第3の緩衝部180Ccであって、第2の導通孔121abと第4の導通孔121adとの間に設けられる2つの角部を有する部分は、第2の緩衝部180Cbと同軸上に配置される。また、第4の緩衝部180Cdであって、第3の導通孔121acと第4の導通孔121adとの間に設けられる2つの角部を有する部分は、第1の緩衝部180Caと同軸上に配置される。
【0147】
そのため緩衝部180Cは、例えば、第1の実施の形態における緩衝部180Aのように柱部用貫通穴111cの中心点を通るX軸、或いは、Y軸上に配置されるのではなく、緩衝部180Aの場合よりも、囲む対象となる導通孔121aに接近した位置にそれぞれ配置される。
【0148】
さらに、第1の導通孔121aaと第2の導通孔121abとの間に配置される第1の緩衝部180Caと第3の緩衝部180Ccのうち1つの端部から当該領域Rに示す柱部用貫通穴111cに近接する角部に伸びる部分とは、この柱部用貫通穴111cの中心点を通るX軸から等距離にあるX軸上に配置されている。
【0149】
また、第1の導通孔121aaと第3の導通孔121acとの間に配置される第2の緩衝部180Cbと第4の緩衝部180Cdのうち1つの端部から当該領域Rに示す柱部用貫通穴111cに近接する角部に伸びる部分とは、この柱部用貫通穴111cの中心点を通るY軸から等距離にあるY軸上に配置されている。
【0150】
なお、柱部用貫通穴111cの中心点を通るX軸、或いは、Y軸から等距離、というのは、当該X軸及びY軸から第2の導通孔121ab側、或いは、第3の導通孔121ac側に等距離、という意味である。
【0151】
また、上述した第1の緩衝部180Caないし第4の緩衝部180Cdは、より好適には、いずれも隣接する2つの貫通穴121aを隔てるべく、少なくとも両貫通穴121aを最短で結ぶ線を跨ぐように配置されていることが好ましい。
【0152】
以上説明した通り、本発明の第3の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、隣接する位置に配置される2つの導通孔121a同士の間であって、各導通孔121aを囲むように緩衝部180Cを設ける。このような構成を採用したことから、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することができる。
【0153】
(第4の実施の形態)
次に本発明における第4の実施の形態について説明する。なお、第4の実施の形態において、上述の第1ないし第3の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0154】
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る正極用鉛箔111aのうち、
図2に示す正極用鉛箔111aをA-A線で切断、拡大して示す拡大平面図である。第4の実施の形態における正極用鉛箔111aでは、正極用鉛箔111aの周縁部と柱部用貫通穴111cとの間に緩衝部180Dが設けられている。
【0155】
すなわち、第4の実施の形態における緩衝部180Dは、それぞれ隣接する導通孔121a(第1の導通孔121aaないし第4の導通孔121ad)の間に柱部用貫通穴111cから四方に、各導通孔121の間を隔てるように伸びている。
【0156】
しかも、柱部用貫通穴111cから伸びる緩衝部180Dは、隣接する柱部用貫通穴111cとの間で連通するように設けられている。すなわち、
図6に示されている柱部用貫通穴111cと互いに隣接する柱部用貫通穴111cとの間をつなぐように緩衝部180Dが設けられている。具体的には、
図6であれば、第4の導通孔121adと第2の導通孔121ab、或いは、第3の導通孔121acに設けられる緩衝部180Dであり、その一部のみが示されている。
【0157】
換言すれば、緩衝部180Dは、正極用鉛箔111aの周縁部と柱部用貫通穴111cとの間にあって正極用鉛箔111aを分割するように設けられている。そのため、例えば、第1の導通孔121aaが配置される領域に設けられる正極用鉛箔111aは、他の隣接する導通孔121aが配置される領域に設けられる正極用鉛箔111aとは独立して設けられることになる。
【0158】
なお、緩衝部180Dは、正極用鉛箔111aの周縁部と柱部用貫通穴111cとの間において直線状に設けられているが、直線状ではなく、例えば曲線をもって設けられていても良い。また、緩衝部180Dによって互いに分割される正極用鉛箔111a同士の間の距離、すなわち、緩衝部180DがX方向に設けられる場合の緩衝部180DのY方向の距離、或いは、緩衝部180DがY方向に設けられる場合の緩衝部180DのX方向の距離については、任意に設定することができる。
【0159】
以上説明した通り、本発明の第4の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、隣接する位置に配置される2つの導通孔121a同士の間に緩衝部180Dを設ける。このような構成を採用したことから、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することができる。
【0160】
特に第4の実施の形態においては、隣接して設けられる正極用鉛箔111a同士が緩衝部180Dによって完全に分離されて設けられるので、たとえ正極用鉛箔111aにグロースが生じたとしてもそのグロースによって生ずるひずみを十分に吸収することができる。従って、グロースによる導通孔121aにおける正極用鉛箔111aが破断することを回避でき、液洛を防止することができる。
【0161】
(第5の実施の形態)
次に本発明における第5の実施の形態について説明する。なお、第5の実施の形態において、上述の第1ないし第4の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0162】
図7は、本発明の第5の実施の形態に係る正極用鉛箔111aの全体を示す平面図である。第5の実施の形態における正極用鉛箔111aでは、緩衝部180Eが柱部用貫通穴111cの周囲及び正極用鉛箔111aが基板121の一方の面に接着剤150を介して設けられる際に、導通孔121aが配置される位置においてその導通孔121aの周囲に設けられている。
【0163】
すなわち、第5の実施の形態における正極用鉛箔111aには、これまで同様4つの柱部用貫通穴111cが設けられている。ここでは、その周囲を取り囲むように緩衝部180Eが設けられている。
【0164】
また、基板121の導通孔121aが設けられる位置においても、正極用鉛箔111aを基板121に設けた場合に当該導通孔121aの周囲を取り囲むことになるように緩衝部180Eが設けられている。
【0165】
第5の実施の形態における緩衝部180Eは、
図7に示すように、柱部用貫通穴111cの周囲、或いは、導通孔121aの周囲に4分割されて設けられている。但し、緩衝部180Eとしての役割を全うさせるとともに、導通孔121a内に載置される導通体160を介して正負極間の導通を確保できれば、4分割でなく、2分割や3分割でも良い。
【0166】
このように、導通孔または柱部用貫通穴の周囲に緩衝部を設けることで、四方八方から生じるグロースによるひずみを効果的に吸収できることが期待される。
【0167】
また、
図7に示す正極用鉛箔111aのうち導通孔121aの周囲に設けられている緩衝部180Eのように、緩衝部180Eが隣接する2つの貫通穴121aを隔てるべく、少なくとも両貫通穴121aを最短で結ぶ線を跨ぐように配置されていることによって、よりひずみを効果的に吸収することができる。
【0168】
なお、
図7に示す緩衝部180Eは柱部用貫通穴111cや導通孔121aの周囲に一重に設けられているが、二重に設ける等しても良い。
【0169】
さらに、柱部用貫通穴111cの周囲に設けられる緩衝部180Eと導通孔121aの周囲に設けられる緩衝部180Eとでその大きさや何重に設けるかといった点について、それぞれが異なるように設定することができる。また併せて、例えば
図3に示すような緩衝部180Aが隣接する導通孔121aの間に設けられていても良い。
【0170】
以上説明した通り、本発明の第5の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、隣接する位置に配置される2つの導通孔121a同士の間であって、導通孔121aや柱部用貫通穴111cの周囲に緩衝部180Eを設ける。このような構成を採用したことから、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することができる。
【0171】
(第6の実施の形態)
次に本発明における第6の実施の形態について説明する。なお、第6の実施の形態において、上述の第1ないし第5の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0172】
これまで第1ないし第5の実施の形態において説明してきた緩衝部180Aないし緩衝部180Eは、いずれも正極用鉛箔111aの表裏を貫通するように設けられている。一方、第6の実施の形態における緩衝部180Fは、正極用鉛箔111aを貫通しない程度に凹凸部を設けて、当該凹凸部の厚みが正極用鉛箔111aの他の領域の厚みよりも薄くなるように形成されている。
【0173】
図8は、本発明の第6の実施の形態に係る正極用鉛箔111aの全体を示す平面図及び当該平面図においてB-B線で切断された状態を示す断面図である。
図8においては、上部に平面図が示されており、下部に当該平面図のB-B線切断断面図が示されている。
【0174】
平面図に示されている通り、柱部用貫通穴111cを通り互いに直交するように、凹凸部(緩衝部180F)が設けられている。当該緩衝部180Fは、平面図で示すと、
図8に示すように、線状に見えるが、これを断面で見ると、正極用鉛箔111aの表裏において凹凸が設けられている。
【0175】
すなわち、断面図に示されているように、第6の実施の形態における正極用鉛箔111aでは、凹凸部はその表面においては4つの凹部からなり、裏面においては3つの凹部からなる。また、当該凹部は半円形状とされている。
【0176】
なお、正極用鉛箔111aの表裏面にどのように緩衝部180Fを形成するかによっては、任意の方法を採用することができる。また、正極用鉛箔111aの表裏面にどの深さでどのような形状で緩衝部180Fを設けるかについても、任意に設定することができる。
【0177】
緩衝部180Fを構成する凹凸については、様々な方法を用いて設けることができるが、正極用鉛箔111aを製造する際に緩衝部180Fを設ける位置において、例えば、凹凸が設けられた金型を用いてプレスすることによって設けても良い。
【0178】
以上説明した通り、本発明の第6の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、隣接する位置に配置される2つの導通孔121a同士の間に緩衝部180Fを設ける。このような構成を採用したことから、電解液による腐食によって正極にグロースが発生することで生ずる導通部へのひずみを吸収するとともに、導通孔を介した正極側と負極側との抵抗溶接を適切に実行することで、電解液が当該導通孔を介して正極側から負極側に至る液洛の発生をより確実に防止することによって、電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池を提供することができる。
【0179】
特に、第6の実施の形態における緩衝部180Fは、正極用鉛箔111aを貫通させて設けるのではなく、その厚みをその他の領域よりも薄くするだけであることから、正極用鉛箔111aの面積を維持することができる。正極用鉛箔111aの面積が減少しないということは、正極用活物質層111bとの接触面積を減らさないことにつながり、これまで以上に双極型鉛蓄電池100の性能の向上が期待できる。
【0180】
また、緩衝部180Fを設けることによって、隣接する導通孔121aの間に正極用鉛箔111aの厚みが薄い領域が設けられることになる。正極用鉛箔111aの厚みが薄くなると、電流が流れる際の抵抗を大きくすることができるため、抵抗溶接を行う際に、近隣の導通孔121aに向けて電流が分散する現象を減らすことができる。
【0181】
なお、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態においては、正極用鉛箔111aの表裏を貫通するように設けられる緩衝部180としてスリットを設けた例を挙げて説明した。但し、当該緩衝部180についてはスリットに限らず、例えば、柱部用貫通穴111cと正極用鉛箔111aの周縁部との間において複数の貫通穴を設けることによって緩衝部180とすることも可能である。
【0182】
また、これまでは正極用鉛箔111aに緩衝部180が設けられる例を挙げて説明してきたが、当該緩衝部180は、負極用鉛箔112aに設けられていても良い。
【0183】
そして、これまでの本発明の実施の形態では、柱部123が形成されている基板121を例に挙げて説明してきた。しかしながら緩衝部180を設けることについては、例えば柱部123を備えていない基板121を用いる場合であっても可能であり、これまで説明してきた効果を奏する。
【0184】
なお、上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電体に鉛ではなく他の金属を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【符号の説明】
【0185】
100・・・双極型鉛蓄電池
110・・・セル部材
111・・・正極
112・・・負極
111a・・・正極用鉛箔
111c・・・柱部用貫通穴
112a・・・負極用鉛箔
111b・・・正極用活物質層
112b・・・負極用活物質層
113・・・セパレータ
120・・・バイプレート
121・・・バイプレートの基板
121a・・・基板の導通孔
122・・・バイプレートの枠体
130・・・第1のエンドプレート
131・・・第1のエンドプレートの基板
132・・・第1のエンドプレートの枠体
140・・・第2のエンドプレート
141・・・第2のエンドプレートの基板
142・・・第2のエンドプレートの枠体
150・・・接着剤
160・・・導通体
170・・・カバープレート
180~180F・・・緩衝部
C・・・セル部材を収容する空間