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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002460
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】エッチング方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083897
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2021171587
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021102876
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】高田 郁弥
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正太
(72)【発明者】
【氏名】森北 信也
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA05
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB26
5F004BB28
5F004BD04
5F004CA02
5F004CA04
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA03
5F004DA26
5F004DB03
5F004EA05
5F004EA28
5F004EB01
5F004FA08
(57)【要約】
【課題】エッチング選択比を向上できるエッチング方法及びプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】エッチング方法は、基板を準備する工程であり、基板は、シリコン及び窒素を含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、工程と、炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスから生成されるプラズマに第1領域及び第2領域を晒すことによって、第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、第2領域をエッチングする工程と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備する工程であり、前記基板は、シリコン及び窒素を含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、工程と、
炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスから生成されるプラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域をエッチングする工程と、
を含む、エッチング方法。
【請求項2】
前記エッチングする工程において、前記第2領域が除去された後において前記タングステン含有保護層が前記第1領域上に残存している、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記処理ガスが、炭素及びフッ素を含有するガスと、タングステン含有ガスとを含む、請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記タングステン含有ガスが、六フッ化タングステンガスを含む、請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記炭素及びフッ素を含有するガスが、フルオロカーボンガスを含む、請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記処理ガスが酸素を含む、請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記第1領域は凹部を有し、前記第2領域は前記凹部内に埋め込まれる、請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記エッチングする工程は、セルフアラインコンタクト工程において行われる、請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記エッチングする工程では、前記プラズマを生成するために、プラズマ処理装置に高周波電力及びバイアス電力を供給し、
前記エッチングする工程は、
(a)前記高周波電力を第1の電力とし、前記バイアス電力を第2の電力とすることにより、前記第1領域上に優先的にタングステン含有堆積物を堆積させる工程と、
(b)前記高周波電力を、前記第1の電力より低い第3の電力とし、前記バイアス電力を前記第2の電力とする遷移工程と、
(c)前記高周波電力を前記第3の電力とし、前記バイアス電力を前記第2の電力より高い第4の電力とすることにより、前記第2領域をエッチングする工程と、
を含む、請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記(a)~(c)を含むサイクルが2回以上繰り返して実施される、請求項9に記載のエッチング方法。
【請求項11】
露出した上面を有するシリコン窒化物と、露出した上面を有するシリコン酸化物とを含む基板を準備する工程と、
前記シリコン酸化物及び前記シリコン窒化物を、六フッ化タングステンガスを含む処理ガスから生成されるプラズマに曝すことにより、前記シリコン窒化物上にタングステン窒化物含有保護層を形成する工程と、
前記シリコン酸化物及び前記シリコン窒化物を、六フッ化タングステンガスを含む処理ガスから生成されるプラズマに曝すことにより、前記シリコン窒化物に対して前記シリコン酸化物を優先的にエッチングする工程と、
を含む、エッチング方法。
【請求項12】
前記処理ガスが、フルオロカーボンガスを含む、請求項11に記載のエッチング方法。
【請求項13】
チャンバと、
前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持器であり、前記基板は、シリコン及び窒素を含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、基板支持器と、
炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記プラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域がエッチングされるように、前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成される、プラズマ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法及びプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板に対するプラズマ処理によって、酸化シリコンから構成された第1領域を窒化シリコンから構成された第2領域に対して選択的にエッチングする方法を開示する。第2領域は凹部を有する。第1領域は、凹部を埋めると共に第2領域を覆うように設けられる。第1領域は、フルオロカーボンを含む処理ガスから生成されたプラズマによりエッチングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-157793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチング選択比を向上できるエッチング方法及びプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法は、基板を準備する工程であり、前記基板は、シリコン及び窒素を含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、工程と、炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスから生成されるプラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域をエッチングする工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、エッチング選択比を向上できるエッチング方法及びプラズマ処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図2図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図3図3は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法のフローチャートである。
図4図4は、図3の方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
図5図5は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の一工程を示す断面図である。
図6図6は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法を実行することによって得られる一例の基板の部分拡大断面図である。
図7図7は、本体部中の電極に与えられるRF電力及び対向電極に与えられるRF電力の時間変化を示すタイミングチャートの一例である。
図8図8は、図3の方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
図9図9は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法を実行することによって得られる一例の基板の部分拡大断面図である。
図10図10は、エッチングする工程の一例を示す図である。
図11図11は、第1実験及び第2実験においてエッチング方法を実行することによって得られる基板の断面のTEM画像を示す図である。
図12図12は、第3実験及び第4実験においてエッチング方法を実行することによって得られる基板の断面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法は、基板を準備する工程であり、前記基板は、シリコン及び窒素を含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、工程と、炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスから生成されるプラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域をエッチングする工程と、を含む。
【0010】
上記エッチング方法によれば、第1領域に対する第2領域のエッチング選択比を向上できる。また、上記エッチング方法によれば、第1領域上にタングステン含有保護層が形成されるため、特に第1領域の肩部分を保護できる。その結果、当該肩部分が傾斜し難くなるので、第1領域の上面における平坦部分の面積を広く確保することができる。
【0011】
前記エッチングする工程において、前記第2領域が除去された後において前記タングステン含有保護層が前記第1領域上に残存していてもよい。
【0012】
前記処理ガスが、炭素及びフッ素を含有するガスと、タングステン含有ガスとを含んでもよい。
【0013】
前記タングステン含有ガスが、六フッ化タングステンガスを含んでもよい。
【0014】
前記炭素及びフッ素を含有するガスが、フルオロカーボンガスを含んでもよい。
【0015】
前記処理ガスが酸素を含んでもよい。この場合、炭素含有膜が第1領域上に形成され難くなる。
【0016】
前記第1領域は凹部を有し、前記第2領域は前記凹部内に埋め込まれてもよい。この場合、第2領域をエッチングすることにより、凹部を形成できる。
【0017】
前記エッチングする工程は、セルフアラインコンタクト工程において行われてもよい。
【0018】
前記エッチングする工程では、前記プラズマを生成するために、プラズマ処理装置に高周波電力及びバイアス電力を供給し、前記エッチングする工程は、(a)前記高周波電力を第1の電力とし、前記バイアス電力を第2の電力とすることにより、前記第1領域上に優先的にタングステン含有堆積物を堆積させる工程と、(b)前記高周波電力を、前記第1の電力より低い第3の電力とし、前記バイアス電力を前記第2の電力とする遷移工程と、(c)前記高周波電力を前記第3の電力とし、前記バイアス電力を前記第2の電力より高い第4の電力とすることにより、前記第2領域をエッチングする工程と、を含んでもよい。
【0019】
前記(a)~(c)を含むサイクルが2回以上繰り返して実施されてもよい。
【0020】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法は、露出した上面を有するシリコン窒化物と、露出した上面を有するシリコン酸化物とを含む基板を準備する工程と、前記シリコン酸化物及び前記シリコン窒化物を、六フッ化タングステンガスを含む処理ガスから生成されるプラズマに曝すことにより、前記シリコン窒化物上にタングステン窒化物含有保護層を形成する工程と、前記シリコン酸化物及び前記シリコン窒化物を、六フッ化タングステンガスを含む処理ガスから生成されるプラズマに曝すことにより、前記シリコン窒化物に対して前記シリコン酸化物を優先的にエッチングする工程と、を含む。
【0021】
前記処理ガスが、フルオロカーボンガスを含んでもよい。
【0022】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、チャンバと、前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持器であり、前記基板は、シリコン及び窒素を含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、基板支持器と、炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記プラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域がエッチングされるように、前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成される。
【0023】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0024】
図1及び図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【0025】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0026】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;CapacitivelyCoupledPlasma)、誘導結合プラズマ(ICP;InductivelyCoupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:HeliconWavePlasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(DirectCurrent)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(RadioFrequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0027】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0028】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
プラズマ処理システムは、容量結合プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0029】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。本体部111は、導電性部材を含む。本体部111の導電性部材は電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0030】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は、基板支持部11と対向し、電極(以下、対向電極と称する場合がある)として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0031】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0032】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0033】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0034】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0035】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0036】
図3は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法のフローチャートである。図3に示されるエッチング方法MT(以下、「方法MT」という)は、上記実施形態のプラズマ処理装置1により実行され得る。方法MTは、基板Wに適用され得る。
【0037】
図4は、図3の方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。図4に示されるように、一実施形態において、基板Wは、第1領域R1と第2領域R2とを含む。第1領域R1は少なくとも1つの凹部R1aを有してもよい。第1領域R1は複数の凹部R1aを有してもよい。各凹部R1aは、コンタクトホールを形成するための凹部であってもよい。第2領域R2は凹部R1a内に埋め込まれてもよい。第2領域R2は第1領域R1を覆うように設けられてもよい。
【0038】
第1領域R1は、シリコンを含む。第1領域R1は、窒素及び炭素のうち少なくとも1つを含んでもよい。第1領域R1は、シリコン窒化物(SiN)を含んでもよい。第1領域R1は、シリコンカーバイド(SiC)を含んでもよい。第1領域R1は、シリコン炭窒化物(SiCN)を含んでもよい。第1領域R1は、シリコンを含んでもよい。第1領域R1は、例えばCVD等により成膜された領域であってもよいし、シリコンを窒化又は炭化することにより得られる領域であってもよい。第1領域R1は、シリコン窒化物(SiN)を含む第1部分と、シリコンカーバイド(SiC)を含む第2部分とを含んでもよい。この場合、第1部分が凹部R1aを有する。
【0039】
第2領域R2は、シリコン及び酸素を含む。第2領域R2は、シリコン酸化物(SiO)を含んでもよい。第2領域R2は、例えばCVD等により成膜された領域であってもよいし、シリコンを酸化することにより得られる領域であってもよい。第2領域R2は、凹部R2aを有してもよい。凹部R2aは、凹部R1aの幅よりも大きい幅を有する。
【0040】
基板Wは、下地領域URと、下地領域UR上に設けられた少なくとも1つの隆起領域RAとを含んでもよい。下地領域UR及び少なくとも1つの隆起領域RAは、第1領域R1によって覆われる。下地領域URはシリコンを含んでもよい。下地領域UR上には複数の隆起領域RAが位置する。複数の隆起領域RA間に第1領域R1の凹部R1aが位置する。各隆起領域RAは、トランジスタのゲート領域を形成してもよい。
【0041】
基板Wは、マスクMKを含んでもよい。マスクMKは、第2領域R2上に設けられる。マスクMKは金属、又はシリコンを含んでもよい。マスクMKは開口OPを有してもよい。開口OPは、第2領域R2の凹部R2aに対応する。
【0042】
以下、方法MTについて、方法MTが上記実施形態のプラズマ処理装置1を用いて基板Wに適用される場合を例にとって、図3図6を参照しながら説明する。図5は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の一工程を示す断面図である。図6は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法を実行することによって得られる一例の基板の部分拡大断面図である。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部2によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MTが実行され得る。方法MTでは、図2に示されるように、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板支持部11(基板支持器)上の基板Wを処理する。
【0043】
図3に示されるように、方法MTは、工程ST1及び工程ST2を含む。工程ST1及び工程ST2は順に実行され得る。
【0044】
工程ST1では、図4に示される基板Wを準備する。基板Wは、プラズマ処理チャンバ10内において基板支持部11により支持され得る。基板Wは、プラズマエッチングの結果として図4に示される形状となっていてもよいし、プラズマ処理チャンバ10に提供した当初から図4に示される形状であってもよい。工程ST1において、第1領域R1の上面及び第2領域R2の上面が露出してもよい。すなわち、工程ST1において、シリコン窒化物の上面及びシリコン酸化物の上面が露出してもよい。
【0045】
工程ST2では、図5に示されるように、炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスから生成されるプラズマに第1領域R1及び第2領域R2に晒すことによって、第2領域R2をエッチングする。エッチングではマスクMKが用いられる。エッチングは以下のように行われてもよい。まず、ガス供給部20により、炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に供給する。次に、プラズマ生成部12により、プラズマ処理チャンバ10内で処理ガスからプラズマを生成する。制御部2は、第1領域R1及び第2領域R2をプラズマに晒すことによって、第1領域R1上にタングステン含有保護層を形成しつつ、第2領域R2がエッチングされるように、ガス供給部20及びプラズマ生成部12を制御する。
【0046】
処理ガスは、炭素及びフッ素を含有するガスと、タングステン含有ガスとを含んでもよい。炭素及びフッ素を含有するガスは、フルオロカーボンガス及びハイドロフルオロカーボンガスのうち少なくとも1つを含んでもよい。フルオロカーボン(C)ガスは、CFガス、Cガス、Cガス及びCガスのうち少なくとも1つを含んでもよい。カーボン堆積を制御するガスとしての酸素含有ガス(例えばOガス)の代わりに、Fが比較的多く含まれるCガス、例えば、Cガスを用いてもよい。Cガス及び酸素含有ガスの混合ガスの代わりに、例えば、Cガス及びCガスの混合ガスを用いてもよい。ハイドロフルオロカーボン(C)ガスは、CHガス、CHFガス及びCHFガスのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0047】
タングステン含有ガスは、ハロゲン化タングステンガスを含んでもよい。ハロゲン化タングステンガスは、六フッ化タングステン(WF)ガス、六臭化タングステン(WBr)ガス、六塩化タングステン(WCl)ガス及びWFClガスの少なくとも1つを含んでもよい。タングステン含有ガスは、ヘキサカルボニルタングステン(W(CO))ガスを含んでもよい。
【0048】
処理ガスは、酸素を含んでもよいし、酸素を含まなくてもよい。処理ガスは、酸素含有ガスを含んでもよい。酸素含有ガスは、Oガス、COガス、及びCOガスの少なくとも1つを含んでもよい。処理ガスは、例えばアルゴン等の貴ガスを含んでもよい。
【0049】
工程ST2において、基板支持部11の温度は100℃以上であってもよく、120℃以上であってもよく、130℃以上であってもよく、130℃を超えてもよく、140℃以上であってもよく、150℃以上であってもよい。また、基板支持部11の温度は250℃以下であってもよく、200℃以下であってもよい。
【0050】
工程ST2において、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は1mTorr(0.13Pa)以上であってもよく、10mTorr(1.3Pa)以上であってもよい。また、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は50mTorr(6.7Pa)以下であってもよく、30mTorr(4.0Pa)以下であってもよい。
【0051】
工程ST2では、図5に示されるように、タングステン含有膜DP(タングステン含有保護層)が第1領域R1上に形成され得る。タングステン含有膜DPは、特に、第1領域R1の凹部R1aにおける肩部分SHを保護できる。その結果、肩部分SHが傾斜し難くなるので、第1領域R1の上面における平坦部分の面積を広く確保することができる。タングステン含有膜DPは窒素を含んでもよい。タングステン含有膜DPはタングステン窒化物(WN)を含んでもよい。タングステン含有膜DP上には炭素含有膜が形成されてもよい。炭素含有膜はフッ素を含んでもよい。タングステン含有膜DP及び炭素含有膜により、第1領域R1のエッチングが抑制される。第2領域R2は、タングステン含有膜DPによって覆われないので、エッチングされる。第2領域R2をエッチングすることにより、図6に示されるように、コンタクトホールHLが形成される。コンタクトホールHLは第1領域R1の凹部R1aに対応する。このように、工程ST2は、セルフアラインコンタクト(SAC)工程において行われてもよい。凹部R1a内の第2領域R2が除去された後において、第1領域R1上にタングステン含有膜DPが残存する。タングステン含有膜DPは、工程ST2の後、洗浄によって除去され得る。
【0052】
上記方法MTによれば、第1領域R1に対する第2領域R2のエッチング選択比を向上できる。例えば、シリコン窒化物(SiN)を含む第1領域R1に対するシリコン酸化物(SiO)を含む第2領域R2の選択比を5以上とすることができる。理論に拘束されないが、その理由は以下のように考えられる。プラズマ中のフッ素を含む活性種によって、シリコン酸化物を含む第2領域R2はエッチングされる。例えばWFがSiOと反応すると、WO又はWOが生成される。これにより、SiOがエッチングされる。一方、プラズマ中のタングステンを含む活性種は第1領域R1のシリコン窒化物と反応して、第1領域R1の上面にタングステン窒化物が堆積する。あるいは、プラズマ中のタングステンを含む活性種が第1領域R1のシリコン窒化物と反応して、第1領域R1の上面の少なくとも一部を改質し、その改質部分がタングステン窒化物を含む。例えばWFがSiNと反応すると、WN及びSiFが生成される。WNは第1領域R1の上面の堆積層に含まれていてもよいし、第1領域R1の上面を改質した層に含まれていてもよい。これにより、第1領域R1上に、タングステン窒化物を含むタングステン含有膜DPが形成される。プラズマ中のタングステンを含む活性種が比較的高いエネルギーをもって入射する部分、すなわち第1領域R1の上面において優先的に、タングステン含有膜DPが堆積するか、又は第1領域R1の上面のシリコン窒化物が改質される。タングステン含有膜DPによって、第1領域R1のエッチングが抑制される。その結果、第1領域R1に対する第2領域R2のエッチング選択比が向上する。
【0053】
さらに、上記方法MTによれば、タングステン含有膜DPがエッチングマスクとして機能するので、タングステン含有膜DP上に厚い炭素含有膜を形成する必要がない。厚い炭素含有膜は、コンタクトホールの閉塞(クロッギング)を引き起こす可能性がある。よって、上記方法MTでは、炭素含有膜によるコンタクトホールHLの閉塞が抑制される。
【0054】
処理ガスが酸素を含む場合、炭素含有膜が第1領域R1上に形成され難くなる。そのため、炭素含有膜によるコンタクトホールHLの閉塞が抑制される。一方、処理ガスが酸素を含むと、第1領域R1の表面の酸化により、第1領域R1の表面にシリコン酸化物が形成される。その結果、第1領域R1の表面がエッチングされる。処理ガスが酸素を含まない場合、そのような第1領域R1のエッチングが抑制される。その結果、第1領域R1に対する第2領域R2のエッチング選択比が更に向上する。
【0055】
図7は、基板支持部11の本体部111中の電極に与えられるバイアス電力及び対向電極に与えられるRF電力の時間変化を示すタイミングチャートの一例である。このタイミングチャートは、方法MTにおける工程ST2に関連する。工程ST2では、本体部111中の電極にバイアス電力が与えられてもよい。バイアス電力は、例えばRF電力LFであってもよい。以下の記載は、直径300ミリメートルの基板に用いられる電力の例である。RF電力LFは10W以上、300W以下であってもよく、30W以上、200W以下であってもよく、50W以上、100W以下であってもよい。RF電力LFの周波数は、100kHz以上、40.68MHz以下であってもよい。RF電力LFが小さいと、プラズマ中のイオンによる第1領域R1のエッチングが抑制される。工程ST2では、対向電極にRF電力HFが与えられてもよい。RF電力HFは50W以上、1000W以下であってもよく、80W以上、800W以下であってもよく、100W以上、500W以下であってもよい。RF電力HFの周波数は、27MHz以上、100MHz以下であってもよい。RF電力LF及びRF電力HFは、周期CYで周期的に印加されてもよい。なお、バイアス電力は、基板支持部11の導電性部材に供給されてもよい。また、RF電力HFは、1又は複数のコイルを含むアンテナに供給されてもよい。
【0056】
プラズマのイオンエネルギーは、50eV以上、700eV以下であってもよく、100eV以上、600eV以下であってもよく、120eV以上、500eV以下であってもよい。イオンエネルギーが大きくなると、タングステン含有膜DPの厚みを大きくできる。なお、本開示のイオンエネルギーは、基板上面に入射する平均イオンエネルギーであってもよく、基板上面に入射するイオンエネルギーの分布として表されてもよい。
【0057】
周期CYは、第1期間PA、第2期間PB及び第3期間PCを含み得る。第1期間PAにおいて、RF電力LFは低電力L1(第2の電力。例えば100W未満)に維持され、RF電力HFは高電力H2(第1の電力。例えば100W超)に維持される。第1期間PAでは、タングステン含有膜DP及び炭素含有膜の堆積が促進される。第2期間PBにおいて、RF電力LFは低電力L1に維持され、RF電力HFは低電力L2(第3の電力。例えば200W未満)に維持される。低電力L2は、高電力H2よりも小さく、低電力L1よりも大きい。第3期間PCにおいて、RF電力LFは高電力H1(第4の電力。例えば50W超)に維持され、RF電力HFは低電力L2に維持される。高電力H1は、低電力L1よりも大きく、高電力H2よりも小さい。第3期間PCでは、第2領域R2のエッチングが促進される。第2期間PBは、第1期間PAから第3期間PCへの遷移期間である。工程ST2では、第1期間PA、第2期間PB及び第3期間PCを含む周期CYに対応する1サイクルが2回以上繰り返して実施されてもよい。
【0058】
周期CYにおいて第1期間PAが占める割合は、周期CYにおいて第3期間PCが占める割合よりも小さい。周期CYにおいて第1期間PAが占める割合は、10%以上であってもよいし、50%未満であってもよい。第1期間PAが占める割合が大きいと、第1領域R1に対する第2領域R2のエッチング選択比が大きくなる。第1期間PAが占める割合が小さいと、コンタクトホールHLの閉塞が抑制される。周期CYにおいて第3期間PCが占める割合は、50%以上であってもよい。第3期間PCが占める割合が大きいと、第1領域R1に対する第2領域R2のエッチング選択比が大きくなる。周期CYを規定する周波数は、1kHz以上1MHz以下であり得る。周期CYの時間長は、周期CYを規定する周波数の逆数である。
【0059】
図8は、図3の方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。図8に示されるように、一実施形態において、基板Wは、第1領域R1と第2領域R2とを含む。基板Wは下地領域URを含んでもよい。第1領域R1は第2領域R2上に設けられてもよい。第2領域R2は下地領域UR上に設けられてもよい。第1領域R1、第2領域R2及び下地領域URのそれぞれは膜であってもよい。第1領域R1はマスクとして機能してもよい。第1領域R1は少なくとも1つの開口OP1を有してもよい。第1領域R1は複数の開口OP1を有してもよい。各開口OP1は、コンタクトホールを形成するための開口であってもよい。開口OP1の寸法は200nm以下であってもよい。開口OP1の寸法は15nm以上であってもよい。第1領域R1は、シリコン及び窒素を含む。第1領域R1は、窒素を含まなくてもよい。第2領域R2は、シリコン及び酸素を含む。下地領域URは、シリコン及び窒素を含んでもよい。下地領域URは、シリコン窒化物(SiN)を含んでもよい。
【0060】
図9は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法を実行することによって得られる一例の基板の部分拡大断面図である。方法MTが図8の基板Wに適用されると、図9に示されるように、開口OP1に対応する凹部RSが第2領域R2に形成される。凹部RSはコンタクトホールであってもよい。凹部RSの底は下地領域URに到達してもよい。工程ST2では、図9に示されるように、タングステン含有膜DPが第1領域R1上に形成され得る。
【0061】
上記方法MTによれば、第1領域R1に対する第2領域R2のエッチング選択比を向上できる。また、工程ST2において、炭素及びフッ素を含有するガスの流量を少なくできるので、凹部RSの側壁に炭素含有膜が堆積することを抑制できる。よって、凹部RSの側壁を垂直に近づけることができる。さらに、工程ST2におけるエッチングレートを大きくできるので、エッチング時間を例えば半分程度に短縮できる。
【0062】
図10は、エッチングする工程の一例を示す図である。方法MTにおいて、エッチングする工程ST2は、第1工程ST21及び第2工程ST22を含んでもよい。第1工程ST21及び第2工程ST22は順に実行され得る。エッチングする工程ST2は、第1工程ST21と第2工程ST22との間の第3工程ST23を更に含んでもよい。
【0063】
一つの例示的実施形態において、第1工程ST21では、プラズマ処理装置1にバイアス電力(第5の電力)を供給することにより、第1領域R1上にタングステン含有膜DP(第1タングステン含有堆積物)を形成してもよい(図5参照)。タングステン含有膜DPの厚みは2nm以上5nm以下であってもよい。バイアス電力は、基板支持部11の本体部111中の電極に与えられるRF電力LFであってもよい。以下の記載は、直径300ミリメートルの基板に用いられる電力の例である。RF電力LFは50W以上又は300W以上であってもよい。RF電力LFを大きくすると、プラズマのイオンエネルギーが大きくなるので、タングステン含有膜DPの厚みを大きくできる。RF電力LFは、500W以下であってもよく、800W以下であってもよい。RF電力LFを小さくすると、第1領域R1の減少量(エッチング量)を小さくできる。第1工程ST21において、プラズマ処理装置1には、対向電極に与えられるRF電力HFが供給されなくてもよい。第1工程ST21における他のプロセス条件(処理ガスの種類、各ガスの流量比、処理時間、温度及び圧力等)は、上述の工程ST2におけるプロセス条件と同じであってもよい。第1工程ST21における処理ガスは、酸素、炭素、フッ素及びタングステンを含んでもよい。第1工程ST21において第2領域R2がエッチングされてもよい。
【0064】
第3工程ST23では、水素含有ガスを含む処理ガスから生成されるプラズマにタングステン含有膜DPを晒してもよい(水素プラズマ処理)。水素含有ガスを含む処理ガスは、第1工程ST21の処理ガスと異なってもよい。水素含有ガスは、Hガス、SiHガス及びCHガスのうち少なくとも1つを含んでもよい。第3工程ST23の処理ガスは、アルゴン等の貴ガスを更に含んでもよい。第3工程ST23の時間は、5秒以上15秒以下であってもよい。第3工程ST23の時間が長いと、水素ラジカルによる第1領域R1の減少量が大きくなる。
【0065】
第2工程ST22では、プラズマ処理装置1に高周波電力及びバイアス電力を供給することにより、タングステン含有膜DP上に更なるタングステン含有膜DP(第2タングステン含有堆積物)を形成しつつ、第2領域R2をエッチングしてもよい。高周波電力は、対向電極に与えられるRF電力HFであってもよい。第2工程ST22におけるバイアス電力(第6の電力)は第1工程ST21におけるバイアス電力(第5の電力)より低くてもよい。各工程においてバイアス電力が変化する場合、各工程におけるバイアス電力は、バイアス電力の平均値であってもよい。第2工程ST22におけるプロセス条件は、上述の工程ST2におけるプロセス条件と同じであってもよい。第2工程ST22における処理ガスは、酸素、炭素、フッ素及びタングステンを含んでもよい。
【0066】
他の一つの例示的実施形態において、第1工程ST21では、処理ガスが水素含有ガスを含むことにより、第1領域R1上にタングステン含有膜DP(第1タングステン含有堆積物)を形成してもよい。水素含有ガスの例は、第3工程ST23の水素含有ガスの例と同じであってもよい。処理ガスに含まれるガスの例は、上述の工程ST2の処理ガスに含まれるガスの例と同じであってもよい。第1工程ST21における他のプロセス条件(各ガスの流量比、処理時間、温度、圧力及び印加電力等)は、上述の工程ST2におけるプロセス条件と同じであってもよい。第1工程ST21における処理ガスは、水素、炭素、フッ素及びタングステンを含んでもよい。第1工程ST21において第2領域R2がエッチングされてもよい。
【0067】
第2工程ST22では、処理ガスが酸素含有ガスを含むことにより、更なるタングステン含有膜DP(第2タングステン含有堆積物)を形成しつつ、第2領域R2をエッチングしてもよい。第2工程ST22におけるプロセス条件(処理ガスの種類、各ガスの流量比、処理時間、温度、圧力及び印加電力等)は、上述の工程ST2におけるプロセス条件と同じであってもよい。第2工程ST22における処理ガスは、酸素、炭素、フッ素及びタングステンを含んでもよい。
【0068】
通常、比較的小さい寸法を有する開口では、タングステンを含む活性種が開口内に輸送され難くなるので、タングステン含有膜の厚さが小さくなる可能性がある。これに対して、第1工程ST21を含む方法MTによれば、マスクMKの開口OPの寸法(凹部R2aの幅)によらず、高い膜厚均一性を有するタングステン含有膜DPを形成できる。そのため、比較的大きい寸法を有する開口OPと比較的小さい寸法を有する開口OPとの両方において、第1領域R1に対する第2領域R2のエッチング選択比を向上できる。さらに、第1工程ST21を含む方法MTによれば、タングステン含有膜DPの厚さを大きくできる。第1工程ST21において処理ガスが水素含有ガスを含む場合、第1工程ST21におけるRF電力LFを大きくしなくてもタングステン含有膜DPの厚みを大きくできる。これは、水素含有ガスによって還元されたタングステンがCVDにより堆積されるからと推測される。
【0069】
第3工程ST23を行う場合、又は、第1工程ST21において処理ガスが水素含有ガスを含む場合、タングステン含有膜DP中のタングステンの組成比を大きくできる。これは、酸化タングステンが水素によって還元されて金属タングステンが生成されるからと推測される。
【0070】
第1工程ST21の後、第2工程ST22を行わずに、タングステン含有ガスを含まない処理ガスを用いて第2領域R2をエッチングしてもよい。
【0071】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0072】
例えば、方法MTの工程ST2が適用される対象は、セルフアラインコンタクト(SAC)工程に限定されない。工程ST2は、高いエッチング選択比が望まれる他の工程に適用されてもよい。
【0073】
また、例えば、タングステン含有ガスの代わりに、あるいはタングステン含有ガスに加えて、モリブデン含有ガスを用いてもよい。モリブデン含有ガスは、ハロゲン化モリブデンガスを含んでもよい。ハロゲン化モリブデンガスは、六フッ化モリブデン(MoF)ガス、及び六塩化モリブデン(MoCl)ガスのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0074】
以下、方法MTの評価のために行った種々の実験について説明する。以下に説明する実験は、本開示を限定するものではない。
【0075】
(第1実験)
第1実験では、シリコン窒化物(SiN)を含む第1領域R1と、シリコン酸化物(SiO)を含む第2領域R2とを含む基板Wを準備した。その後、プラズマ処理装置1を用いて基板Wに対して工程ST2を実施した。工程ST2において、処理ガスは、フルオロカーボンガスと酸素ガスと六フッ化タングステンガス(WF)との混合ガスである。また、六フッ化タングステンガス(WF)の流量比は、フルオロカーボンガスの流量比よりも高く、酸素ガスの流量比よりも高い。
【0076】
(第2実験)
第2実験では、工程ST2において、処理ガスから六フッ化タングステンガス(WF)を除去したこと以外は第1実験の方法と同じ方法を実行した。
【0077】
(実験結果)
第1実験及び第2実験において方法が実行された基板Wの断面のTEM画像を観察した。図11の(a)は、第1実験においてエッチング方法を実行することによって得られる基板の断面のTEM画像を示す図である。図11の(b)は、第2実験においてエッチング方法を実行することによって得られる基板の断面のTEM画像を示す図である。図11の(a)では、第1領域R1上に形成された膜DP(図中の黒色部分)が確認された。TEM-EDXの結果から、図11の(a)中の膜DPに対応する部分がタングステンを含有することが確認された。一方、図11の(b)では、第1領域R1上にタングステン含有膜は確認されなかった。さらに、図11の(a)では、エッチングにより形成された凹部の底(第2領域R2の上面)が平坦になっている。一方、図11の(b)では、エッチングにより形成された凹部の底(第2領域R2の上面)が傾斜している。よって、第1実験では、エッチングにより凹部の底を所望の形状に加工できることが分かる。
【0078】
(第3実験)
第3実験では、シリコン酸化物(SiO)を含む第2領域R2とシリコン窒化物(SiN)を含む第1領域R1とシリコン窒化物(SiN)を含む下地領域URとを含む図8の基板Wを準備した。その後、プラズマ処理装置1を用いて基板Wに対して工程ST2を実施した。これにより、第2領域R2に凹部RSが形成された。工程ST2において、処理ガスは、フルオロカーボンガスと酸素ガスと六フッ化タングステンガス(WF)とアルゴンガスとの混合ガスである。また、六フッ化タングステンガス(WF)の流量比は、フルオロカーボンガスの流量比よりも高く、酸素ガスの流量比よりも高い。工程ST2では、図7に示されるRF電力HF及びRF電力LFが与えられた。
【0079】
(第4実験)
第4実験では、工程ST2において、処理ガスから六フッ化タングステンガス(WF)を除去し、工程ST2のRF電力HF及びRF電力LFを一定にしたこと以外は第3実験の方法と同じ方法を実行した。すなわち、工程ST2において、処理ガスは、フルオロカーボンガスと酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスである。
【0080】
(断面)
第3実験及び第4実験において方法が実行された基板Wの断面のTEM画像を観察した。図12の(a)及び(b)は、第3実験においてエッチング方法を実行することによって得られる基板の断面の例を示す図である。図12の(a)は、密集したパターンが形成された領域における断面を示す。図12の(b)は、孤立したパターンが形成された領域における断面を示す。図12の(a)及び(b)では、第1領域R1上に形成されたタングステン含有膜DP及び炭素含有膜CDPが確認された。炭素含有膜CDPはタングステン含有膜DPを覆うように形成されている。第2領域R2に形成された凹部RSの側壁には、炭素含有膜CDPがごく薄くしか確認できなかった。
【0081】
図12の(c)及び(d)は、第4実験においてエッチング方法を実行することによって得られる基板の断面の例を示す図である。図12の(c)は、密集したパターンが形成された領域における断面を示す。図12の(d)は、孤立したパターンが形成された領域における断面を示す。図12の(c)及び(d)では、第1領域R1上にタングステン含有膜DPは確認されず、炭素含有膜CDPが確認された。また、第2領域R2に形成された凹部RSの側壁に炭素含有膜CDPが確認された。
【0082】
図12の(a)において、第2領域R2の底面における寸法から第2領域R2の頂面における寸法を減じた値は4.0nmであった。図12の(c)において、第2領域R2の底面における寸法から第2領域R2の頂面における寸法を減じた値は5.1nmであった。図12の(b)において、第2領域R2の底面における寸法から第2領域R2の頂面における寸法を減じた値は8.5nmであった。図12の(d)において、第2領域R2の底面における寸法から第2領域R2の頂面における寸法を減じた値は12.4nmであった。したがって、第3実験では、第4実験に比べて凹部RSの側壁が垂直に近かった。これは、第4実験では、凹部RSの側壁に形成された炭素含有膜CDPによってエッチングが直線的に進み難いからと考えられる。
【0083】
(エッチング選択比)
第1領域R1のエッチング量と第2領域R2のエッチング量とを測定することによって、第1領域R1に対する第2領域R2のエッチング選択比を算出した。第3実験では、図12の(a)の領域におけるエッチング選択比は3.7であった。第4実験では、図12の(c)の領域におけるエッチング選択比は2.7であった。第3実験では、図12の(b)の領域におけるエッチング選択比は4.5であった。第4実験では、図12の(d)の領域におけるエッチング選択比は4.2であった。したがって、第3実験では、第4実験に比べてエッチング選択比を向上できることが分かった。これは、第3実験では、タングステン含有膜DPによって第1領域R1がエッチングされ難いからと考えられる。
【0084】
(第5実験)
第5実験では、図4の構造を有する基板Wを準備した。基板Wは、シリコン窒化物(SiN)を含む第1領域R1と、シリコン酸化物(SiO)を含む第2領域R2とを含む。基板Wは、比較的大きい寸法を有する開口OP(以下、ロングパターン)と比較的小さい寸法を有する開口OP(以下、ショートパターン)とを有する。その後、プラズマ処理装置1を用いて基板Wに対して第1工程ST21及び第2工程ST22を実施した(図10参照)。
【0085】
第1工程ST21では、第1領域R1上にタングステン含有膜DPを形成しつつ、第2領域R2をエッチングして、凹部R1a内に約20nmの深さを有するスリットを形成した(図5参照)。第1工程ST21において、処理ガスは、フルオロカーボンガスと酸素(O)ガスとアルゴンガスと六フッ化タングステンガス(WF)との混合ガスである。また、六フッ化タングステンガス(WF)の流量比は、フルオロカーボンガスの流量比よりも高く、酸素ガスの流量比よりも高い。プラズマ処理装置1に供給されるRF電力HFは0Wである。プラズマ処理装置1に供給されるRF電力LFは400Wである。よって、プラズマのイオンエネルギーは比較的大きい。
【0086】
第2工程ST22では、第1領域R1上にタングステン含有膜DPを形成しつつ、第2領域R2をエッチングして、凹部R1a内に約70nmの深さを有するスリットを形成した。第2工程ST22において、処理ガスは、フルオロカーボンガスと酸素ガスとアルゴンガスと六フッ化タングステンガス(WF)との混合ガスである。また、六フッ化タングステンガス(WF)の流量比は、フルオロカーボンガスの流量比よりも高く、酸素ガスの流量比よりも高い。RF電力HF及びRF電力LFは、図7のタイミングチャートに従ってプラズマ処理装置1に供給される。第1期間PAにおいて、高電力H2は800Wであり、低電力L1は50Wである。第3期間PCにおいて、低電力L2は0Wであり、高電力H1は100Wである。よって、第2工程ST22におけるRF電力LFの平均値は、第1工程ST21におけるRF電力LFよりも低い。
【0087】
(第6実験)
第6実験では、第5実験と同じ基板Wを準備した。その後、プラズマ処理装置1を用いて基板Wに対して工程ST2を実施した。工程ST2は、エッチング工程及び堆積工程を含む。エッチング工程及び堆積工程は順に行われる。
【0088】
エッチング工程では、第1領域R1上にタングステン含有膜DPを形成しつつ、第2領域R2をエッチングして、凹部R1a内に約20nmの深さを有するスリットを形成した(図5参照)。エッチング工程のプロセス条件は、第5実験の第2工程ST22のプロセス条件(BSL条件)と同じである。
【0089】
堆積工程では、タングステン含有膜DP上に堆積膜を形成しつつ、第2領域R2をエッチングして、凹部R1a内に約70nmの深さを有するスリットを形成した。堆積工程は、第6実験のエッチング工程と炭素含有膜堆積工程とを含む。炭素含有膜堆積工程において、処理ガスは、一酸化炭素(CO)ガスとアルゴンガスとの混合ガスである。プラズマ処理装置1に供給されるRF電力HFは800Wである。プラズマ処理装置1に供給されるRF電力LFは0Wである。
【0090】
(実験結果)
第5実験及び第6実験においてエッチングが実行された基板Wの断面のTEM画像を観察した。第5実験では、ロングパターンにおいて、第1工程ST21後の第1領域R1の減少量(エッチング量)は4.9nmであり、第2工程ST22後の第1領域R1の減少量は7.3nmであった。よって、第2工程ST22により第1領域R1の減少量は2.4nm増加した。
【0091】
一方、第6実験では、ロングパターンにおいて、エッチング工程後の第1領域R1の減少量は2.8nmであり、堆積工程後の第1領域R1の減少量は3.8nmであった。よって、堆積工程により第1領域R1の減少量は1.0nm増加した。
【0092】
第5実験では、ショートパターンにおいて、第1工程ST21後の第1領域R1の減少量は6.7nmであり、第2工程ST22後の第1領域R1の減少量は10.2nmであった。よって、第2工程ST22により第1領域R1の減少量は3.5nm増加した。
【0093】
一方、第6実験では、ショートパターンにおいて、エッチング工程後の第1領域R1の減少量は4.3nmであり、堆積工程後の第1領域R1の減少量は10.4nmであった。よって、堆積工程により第1領域R1の減少量は6.1nm増加した。したがって、第5実験では、第6実験に比べて、ショートパターンにおいて、第2工程ST22による第1領域R1の減少量の増加量を小さくできる。第5実験では、第1工程ST21におけるプラズマのイオンエネルギーが高くなるので、ショートパターンにおいて厚いタングステン含有膜DPを形成できるからであると推測される。
【0094】
第5実験では、第2工程ST22後、ショートパターンにおけるスリットの幅(凹部R1aの幅)は12.8nmであり、ロングパターンにおけるスリットの幅は9.4nmであった。よって、ショートパターンにおけるスリットの幅とロングパターンにおけるスリットの幅との差LtSは3.4nmである。
【0095】
一方、第6実験では、第2工程ST22後、ショートパターンにおけるスリットの幅は13.8nmであり、ロングパターンにおけるスリットの幅は8.7nmであった。よって、ショートパターンにおけるスリットの幅とロングパターンにおけるスリットの幅との差LtSは5.1nmである。したがって、第5実験では、第6実験に比べて差LtSを小さくできる。
【0096】
(第7実験)
第7実験では、第5実験と同じ基板Wを準備した。その後、プラズマ処理装置1を用いて基板Wに対して第1工程ST21を実施した(図10参照)。第5実験では、第1工程ST21の処理ガスが酸素ガスを含むのに対して、第7実験では、第1工程ST21の処理ガスが水素(H)ガスを含む。
【0097】
第1工程ST21では、第1領域R1上にタングステン含有膜DPを形成しつつ、第2領域R2をエッチングして、凹部R1a内に約20nmの深さを有するスリットを形成した(図5参照)。第1工程ST21において、処理ガスは、フルオロカーボンガスと水素ガスとアルゴンガスと六フッ化タングステンガス(WF)との混合ガスである。また、六フッ化タングステンガス(WF)の流量比は、フルオロカーボンガスの流量比よりも高く、水素ガスの流量比よりも低い。プラズマ処理装置1に供給されるRF電力HFは200Wである。プラズマ処理装置1に供給されるRF電力LFは100Wである。
【0098】
(実験結果)
第7実験においてエッチングが実行された基板Wの断面のTEM画像を観察した。第7実験では、ロングパターンにおいて、第1工程ST21後の第1領域R1の減少量は、2.7nmであり、第5実験における第1工程ST21後の第1領域R1の減少量(4.9nm)よりも小さかった。
【0099】
第5実験では、第1工程ST21後に第1領域R1上に形成されたタングステン含有膜DPの厚さは4.3nmであった。第7実験では、第1工程ST21後に第1領域R1上に形成されたタングステン含有膜DPの厚さは4.9nmであった。したがって、第7実験では、第5実験に比べて、タングステン含有膜DPの厚みが大きくなる。
【0100】
第5実験及び第7実験において第1工程ST21が実施された基板Wについて、X線光電子分光法(XPS)により、第1領域R1上に形成されたタングステン含有膜DPの分析を行った。第5実験において、タングステンの組成比は2.4atom%であった。第7実験において、タングステンの組成比は5.0atom%であった。したがって、第7実験では、第5実験に比べて、タングステン含有膜DP中のタングステンの組成比が大きくなる。これは、水素によりWOが還元されて金属タングステンが生成するからと推測される。
【0101】
(第8実験)
第8実験では、第5実験と同じ基板Wを準備した。その後、プラズマ処理装置1を用いて基板Wに対して第1工程ST21及び第2工程ST22を実施した(図10参照)。第8実験の第1工程ST21のプロセス条件は、第7実験の第1工程ST21のプロセス条件と同じである。第8実験の第2工程ST22のプロセス条件は、第5実験の第2工程ST22のプロセス条件(BSL条件)と同じである。
【0102】
(実験結果)
第8実験においてエッチングが実行された基板Wの断面のTEM画像を観察した。ロングパターンにおいて、第8実験における第2工程ST22後の第1領域R1の減少量は、3.9nmであり、第6実験における堆積工程後の第1領域R1の減少量(3.8nm)と同等であった。ショートパターンにおいて、第8実験における第2工程ST22後の第1領域R1の減少量は、9.5nmであり、第6実験における堆積工程後の第1領域R1の減少量(10.4nm)と同等であった。
【0103】
第8実験では、第2工程ST22後、ショートパターンにおけるスリットの幅(凹部R1aの幅)は12.6nmであり、ロングパターンにおけるスリットの幅は8.3nmであった。よって、ショートパターンにおけるスリットの幅とロングパターンにおけるスリットの幅との差LtSは4.3nmである。したがって、第8実験では、第6実験に比べて、差LtSを小さくできる。
【0104】
第8実験では、第6実験のように堆積工程が行われないので、第8実験のプロセス時間は、第6実験のプロセス時間よりも短い。
【0105】
(第9実験)
第9実験では、第5実験と同じ基板Wを準備した。その後、第3工程ST23を実施すること以外は第5実験と同様に、プラズマ処理装置1を用いて基板Wに対して第1工程ST21、第3工程ST23及び第2工程ST22を実施した(図10参照)。
【0106】
第3工程ST23では、水素ガスから生成されるプラズマにタングステン含有膜DPを晒す処理(水素プラズマ処理)を行った。プラズマ処理装置1に供給されるRF電力HFは300Wである。プラズマ処理装置1に供給されるRF電力LFは0Wである。第3工程ST23の処理時間は5秒である。
【0107】
(実験結果)
第9実験においてエッチングが実行された基板Wの断面のTEM画像を観察した。第9実験では、ロングパターンにおいて、第1工程ST21後の第1領域R1の減少量は4.9nmであり、第2工程ST22後の第1領域R1の減少量は6.3nmであった。よって、第2工程ST22により第1領域R1の減少量は1.4nm増加した。
【0108】
第9実験では、ショートパターンにおいて、第1工程ST21後の第1領域R1の減少量は6.7nmであり、第2工程ST22後の第1領域R1の減少量は9.4nmであった。よって、第2工程ST22により第1領域R1の減少量は2.7nm増加した。第9実験では、第5実験に比べて、ショートパターンにおいて、第2工程ST22による第1領域R1の減少量の増加量を小さくできる。
【0109】
第9実験では、第2工程ST22後、ショートパターンにおけるスリットの幅(凹部R1aの幅)は12.7nmであり、ロングパターンにおけるスリットの幅は9.8nmであった。よって、ショートパターンにおけるスリットの幅とロングパターンにおけるスリットの幅との差LtSは2.9nmである。
【0110】
第9実験では、第3工程ST23の後、第1領域R1上に形成されたタングステン含有膜DPの厚さは約5.6nmであった。したがって、第9実験では、第5実験に比べて、タングステン含有膜DPの厚みが大きくなる。
【0111】
第9実験において第1工程ST21及び第3工程ST23が実施された基板Wについて、X線光電子分光法(XPS)により、第1領域R1上に形成されたタングステン含有膜DPの分析を行った。第9実験において、タングステンの組成比は12.5atom%であった。したがって、第9実験では、第5実験に比べて、タングステン含有膜DP中のタングステンの組成比が大きくなる。これは、水素によりWOが還元されて金属タングステンが生成するからと推測される。
【0112】
(付記1)
基板を準備する工程であり、前記基板は、シリコン及び窒素を含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、工程と、
炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスから生成されるプラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域をエッチングする工程と、
を含む、エッチング方法。
(付記2)
前記エッチングする工程において、前記第2領域が除去された後において前記タングステン含有保護層が前記第1領域上に残存している、付記1に記載のエッチング方法。
(付記3)
前記処理ガスが、炭素及びフッ素を含有するガスと、タングステン含有ガスとを含む、付記1又は2に記載のエッチング方法。
(付記4)
前記タングステン含有ガスが、六フッ化タングステンガスを含む、付記3に記載のエッチング方法。
(付記5)
前記炭素及びフッ素を含有するガスが、フルオロカーボンガスを含む、付記3又は4に記載のエッチング方法。
(付記6)
前記処理ガスが酸素を含む、付記1~5のいずれか一項に記載のエッチング方法。
(付記7)
前記第1領域は凹部を有し、前記第2領域は前記凹部内に埋め込まれる、付記1~6のいずれか一項に記載のエッチング方法。
(付記8)
前記エッチングする工程は、セルフアラインコンタクト工程において行われる、付記7に記載のエッチング方法。
(付記9)
前記エッチングする工程では、前記プラズマを生成するために、プラズマ処理装置に高周波電力及びバイアス電力を供給し、
前記エッチングする工程は、
(a)前記高周波電力を第1の電力とし、前記バイアス電力を第2の電力とすることにより、前記第1領域上に優先的にタングステン含有堆積物を堆積させる工程と、
(b)前記高周波電力を、前記第1の電力より低い第3の電力とし、前記バイアス電力を前記第2の電力とする遷移工程と、
(c)前記高周波電力を前記第3の電力とし、前記バイアス電力を前記第2の電力より高い第4の電力とすることにより、前記第2領域をエッチングする工程と、
を含む、付記1~8のいずれか一項に記載のエッチング方法。
(付記10)
前記(a)~(c)を含むサイクルが2回以上繰り返して実施される、付記9に記載のエッチング方法。
(付記11)
露出した上面を有するシリコン窒化物と、露出した上面を有するシリコン酸化物とを含む基板を準備する工程と、
前記シリコン酸化物及び前記シリコン窒化物を、六フッ化タングステンガスを含む処理ガスから生成されるプラズマに曝すことにより、前記シリコン窒化物上にタングステン窒化物含有保護層を形成する工程と、
前記シリコン酸化物及び前記シリコン窒化物を、六フッ化タングステンガスを含む処理ガスから生成されるプラズマに曝すことにより、前記シリコン窒化物に対して前記シリコン酸化物を優先的にエッチングする工程と、
を含む、エッチング方法。
(付記12)
前記処理ガスが、フルオロカーボンガスを含む、付記11に記載のエッチング方法。
(付記13)
チャンバと、
前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持器であり、前記基板は、シリコン及び窒素を含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、基板支持器と、
炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記プラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域がエッチングされるように、前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成される、プラズマ処理装置。
(付記14)
基板を準備する工程であり、前記基板は、シリコンを含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、工程と、
炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスから生成されるプラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域をエッチングする工程と、
を含み、
前記エッチングする工程は、第1工程及び第2工程を含み、
前記第1工程では、プラズマ処理装置にバイアス電力を供給することにより、前記第1領域上に第1タングステン含有堆積物を形成し、前記バイアス電力は第5の電力であり、
前記第2工程では、前記プラズマ処理装置に高周波電力及びバイアス電力を供給することにより、前記第1タングステン含有堆積物上に第2タングステン含有堆積物を形成しつつ、前記第2領域をエッチングし、前記第2工程における前記バイアス電力は前記第5の電力より低い第6の電力である、エッチング方法。
(付記15)
前記エッチングする工程は、前記第1工程と前記第2工程との間の第3工程を含み、
前記第3工程では、水素含有ガスを含む処理ガスから生成されるプラズマに前記第1タングステン含有堆積物を晒す、付記14に記載のエッチング方法。
(付記16)
基板を準備する工程であり、前記基板は、シリコンを含む第1領域と、シリコン及び酸素を含む第2領域とを含む、工程と、
炭素、フッ素及びタングステンを含む処理ガスから生成されるプラズマに前記第1領域及び前記第2領域を晒すことによって、前記第1領域上にタングステン含有保護層を形成しつつ、前記第2領域をエッチングする工程と、
を含み、
前記エッチングする工程は、第1工程及び第2工程を含み、
前記第1工程では、前記処理ガスが水素含有ガスを含むことにより、前記第1領域上に第1タングステン含有堆積物を形成し、
前記第2工程では、前記処理ガスが酸素含有ガスを含むことにより、前記第1タングステン含有堆積物上に第2タングステン含有堆積物を形成しつつ、前記第2領域をエッチングする、エッチング方法。
【0113】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0114】
1…プラズマ処理装置、2…制御部、10…プラズマ処理チャンバ、11…基板支持部、12…プラズマ生成部、20…ガス供給部、DP…タングステン含有膜(タングステン含有保護層)、R1…第1領域、R2…第2領域、W…基板。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12