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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002461
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】基板処理装置及び静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221227BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221227BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084767
(22)【出願日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2021103011
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大槻 興平
(72)【発明者】
【氏名】山口 伸
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 大輔
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030CA04
4K030EA06
4K030FA02
4K030FA03
4K030FA04
4K030GA02
4K030KA22
4K030KA41
4K030LA12
4K030LA15
5F004AA01
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004BD04
5F004CA04
5F004CA06
5F045AA08
5F045BB02
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EF05
5F045EH05
5F045EH14
5F045EH20
5F045EJ03
5F045EJ10
5F045EK07
5F045EM05
5F045EM07
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA04
5F131CA06
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB54
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
5F131JA13
(57)【要約】
【課題】基板の温度を適切に制御し、基板面内におけるプラズマ処理の均一性を向上させる。
【解決手段】基板処理装置は、チャンバと、前記チャンバ内に配置され、少なくとも1つの第1のガス供給路を有する基板支持部であり、基台と、前記基台上に配置され、上面を有する静電チャックであり、前記上面は、複数の突起と、第1の環状溝群とを有し、前記第1の環状溝群は、第1の内側環状溝、第1の中間環状溝及び第1の外側環状を含み、前記第1の内側環状溝、前記第1の中間環状溝及び前記第1の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第1のガス供給路に連通している、前記静電チャックと、を有する、前記基板支持部と、前記少なくとも1つの第1のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を制御するように構成される少なくとも1つの制御バルブと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置され、少なくとも1つの第1のガス供給路を有する基板支持部であり、
基台と、
前記基台上に配置され、上面を有する静電チャックであり、
前記上面は、複数の突起と、第1の環状溝群とを有し、
前記第1の環状溝群は、第1の内側環状溝、第1の中間環状溝及び第1の外側環状溝を含み、
前記第1の内側環状溝、前記第1の中間環状溝及び前記第1の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第1のガス供給路に連通している、前記静電チャックと、
を有する、前記基板支持部と、
前記少なくとも1つの第1のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を制御するように構成される少なくとも1つの制御バルブと、
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板支持部は、少なくとも1つの第2のガス供給路をさらに有し、
前記静電チャックの前記上面は、前記第1の環状溝群を囲む第2の環状溝群をさらに有し、
前記第2の環状溝群は、第2の内側環状溝、第2の中間環状溝及び第2の外側環状溝を含み、
前記第2の内側環状溝、前記第2の中間環状溝及び前記第2の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第2のガス供給路に連通しており、
前記少なくとも1つの制御バルブは、前記少なくとも1つの第1のガス供給路及び前記少なくとも1つの第2のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を制御するように構成される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの制御バルブは、
前記少なくとも1つの第1のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を独立して制御するように構成される第1の制御バルブと、
前記少なくとも1つの第2のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を独立して制御するように構成される第2の制御バルブと、
を含む、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板支持部は、少なくとも1つの第3のガス供給路をさらに有し、
前記静電チャックの前記上面は、前記第2の環状溝群を囲む第3の環状溝群をさらに有し、
前記第3の環状溝群は、第3の内側環状溝及び第3の外側環状溝を含み、
前記第3の内側環状溝及び前記第3の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第3のガス供給路に連通しており、
前記少なくとも1つの制御バルブは、前記少なくとも1つの第1のガス供給路、前記少なくとも1つの第2のガス供給路及び前記少なくとも1つの第3のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を制御するように構成される、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの制御バルブは、
前記少なくとも1つの第1のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を独立して制御するように構成される第1の制御バルブと、
前記少なくとも1つの第2のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を独立して制御するように構成される第2の制御バルブと、
前記少なくとも1つの第3のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を独立して制御するように構成される第3の制御バルブと、
を含む、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1の環状溝群、前記第2の環状溝群及び前記第3の環状溝群は、円形状を有する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の環状溝群及び前記第2の環状溝群は、多角形状を有する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1の環状溝群及び前記第2の環状溝群は、中心非対称の形状を有する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1の内側環状溝は、周方向に分割された複数の第1の内側溝セグメントを有し、
前記第1の中間環状溝は、周方向に分割された複数の第1の中間溝セグメントを有し、
前記第1の外側環状溝は、周方向に分割された複数の第1の外側溝セグメントを有し、
前記少なくとも1つの第1のガス供給路は、前記複数の第1の中間溝セグメントにそれぞれ連通する複数の第1のガス供給路を含む、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第2の内側環状溝は、周方向に分割された複数の第2の内側溝セグメントを有し、
前記第2の中間環状溝は、周方向に分割された複数の第2の中間溝セグメントを有し、
前記第2の外側環状溝は、周方向に分割された複数の第2の外側溝セグメントを有し、
前記少なくとも1つの第2のガス供給路は、前記複数の第2の中間溝セグメントにそれぞれ連通する複数の第2のガス供給路を含む、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項11】
上面及び少なくとも1つの第1のガス供給路を有するチャック本体部を備え、
前記上面は、
複数の突起と、
第1の内側環状溝、第1の中間環状溝及び第1の外側環状溝を含む第1の環状溝群であり、前記第1の内側環状溝、前記第1の中間環状溝及び前記第1の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第1のガス供給路に連通している、前記第1の環状溝群と、を有する、静電チャック。
【請求項12】
前記チャック本体部は、少なくとも1つの第2のガス供給路をさらに有し、
前記チャック本体部の前記上面は、前記第1の環状溝群を囲む第2の環状溝群をさらに有し、
前記第2の環状溝群は、第2の内側環状溝、第2の中間環状溝及び第2の外側環状溝を含み、
前記第2の内側環状溝、前記第2の中間環状溝及び前記第2の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第2のガス供給路に連通している、
請求項11に記載の静電チャック。
【請求項13】
前記チャック本体部は、少なくとも1つの第3のガス供給路をさらに有し、
前記チャック本体部の前記上面は、前記第2の環状溝群を囲む第3の環状溝群をさらに有し、
前記第3の環状溝群は、第3の内側環状溝及び第3の外側環状溝を含み、
前記第3の内側環状溝及び前記第3の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第3のガス供給路に連通している、
請求項12に記載の静電チャック。
【請求項14】
前記第1の環状溝群、前記第2の環状溝群及び前記第3の環状溝群は、円形状を有する、
請求項13に記載の静電チャック。
【請求項15】
前記第1の環状溝群及び前記第2の環状溝群は、多角形状を有する、
請求項13に記載の静電チャック。
【請求項16】
前記第1の環状溝群及び前記第2の環状溝群は、中心非対称の形状を有する、
請求項13に記載の静電チャック。
【請求項17】
前記第1の内側環状溝は、周方向に分割された複数の第1の内側溝セグメントを有し、
前記第1の中間環状溝は、周方向に分割された複数の第1の中間溝セグメントを有し、
前記第1の外側環状溝は、周方向に分割された複数の第1の外側溝セグメントを有し、
前記少なくとも1つの第1のガス供給路は、前記複数の第1の中間溝セグメントにそれぞれ連通する複数の第1のガス供給路を含む、請求項11に記載の静電チャック。
【請求項18】
前記第2の内側環状溝は、周方向に分割された複数の第2の内側溝セグメントを有し、
前記第2の中間環状溝は、周方向に分割された複数の第2の中間溝セグメントを有し、
前記第2の外側環状溝は、周方向に分割された複数の第2の外側溝セグメントを有し、
前記少なくとも1つの第2のガス供給路は、前記複数の第2の中間溝セグメントにそれぞれ連通する複数の第2のガス供給路を含む、
請求項12に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電チャックが、チャック表面上に位置する複数の密閉バンドを備えることが開示されている。複数の密閉バンドは、基板と接触して隣接する冷却帯間で密閉を形成する。
【0003】
特許文献2には、静電チャックの基板保持面において、最外周を環状に囲む外周リングが設けられることが開示されている。外周リングは、基板保持面に基板を載置した際に基板に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-512692号公報
【特許文献2】特開2006-257495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示にかかる技術は、基板の温度を適切に制御し、基板面内におけるプラズマ処理の均一性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、チャンバと、前記チャンバ内に配置され、少なくとも1つの第1のガス供給路を有する基板支持部であり、基台と、前記基台上に配置され、上面を有する静電チャックであり、前記上面は、複数の突起と、第1の環状溝群とを有し、前記第1の環状溝群は、第1の内側環状溝、第1の中間環状溝及び第1の外側環状を含み、前記第1の内側環状溝、前記第1の中間環状溝及び前記第1の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第1のガス供給路に連通している、前記静電チャックと、を有する、前記基板支持部と、前記少なくとも1つの第1のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を制御するように構成される少なくとも1つの制御バルブと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の温度を適切に制御し、基板面内におけるプラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プラズマ処理システムの構成を模式的に示す説明図である。
図2】プラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図3】静電チャックの構成の概略を示す平面図である。
図4】静電チャックの一部構成の概略を示す平面図である。
図5】静電チャックの構成の概略を示す縦断面図である。
図6】環状溝周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図7】第1の環状溝群の構成の概略を示す平面図である。
図8】第2の環状溝群の構成の概略を示す平面図である。
図9】第3の環状溝群の構成の概略を示す平面図である。
図10】環状溝の機能を示す説明図である。
図11】比較例における実験結果(伝熱空間の圧力)を示すグラフである。
図12】本実施形態における実験結果(伝熱空間の圧力)を示すグラフである。
図13】比較例における実験結果(基板の温度)を示すグラフである。
図14】本実施形態における実験結果(基板の温度)を示すグラフである。
図15】他の実施形態にかかる環状溝周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図16】他の実施形態にかかる環状溝周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図17】他の実施形態にかかる環状溝の構成の概略を示す平面図である。
図18】他の実施形態にかかる環状溝の構成の概略を示す平面図である。
図19】他の実施形態にかかる環状溝の構成の概略を示す平面図である。
図20】他の実施形態にかかる環状溝の構成の概略を示す平面図である。
図21】他の実施形態にかかる環状溝周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図22】他の実施形態にかかる環状溝周辺の構成の概略を示す平面図である。
図23】他の実施形態にかかる環状溝周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図24】他の実施形態にかかる環状溝周辺の構成の概略を示す平面図である。
図25】他の実施形態にかかる環状溝周辺の構成の概略を示す平面図である。
図26】他の実施形態にかかる環状溝周辺の構成の概略を示す縦断面図である。
図27】他の実施形態にかかる静電チャックの一部構成の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
半導体デバイスの製造工程では、例えばプラズマ処理装置において半導体基板(以下、「基板」という。)にプラズマ処理が行われる。プラズマ処理装置では、チャンバの内部で処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによって、静電チャックに支持された基板を処理する。
【0010】
プラズマ処理では、基板に対するプラズマ処理の面内均一性を向上させるため、処理対象の基板の温度を適切に制御することが求められる。そこで、例えば基板の裏面と静電チャックの表面との空間にヘリウムガス等の伝熱ガスを供給し、当該伝熱ガスの圧力を制御することで、基板の温度を制御している。
【0011】
また近年、基板の温度制御のさらなる高精度化に対応するため、上記基板の裏面と静電チャックの表面との空間を複数の領域に区画し、領域間に伝熱ガスの圧力差を設けることで、領域毎に基板の温度を制御することが行われている。従来、領域毎に伝熱ガスの圧力を制御するため、例えば静電チャックの表面には、いわゆるシールバンドといわれる、基板の裏面に直接接触する仕切りが設けられる。例えば上述した特許文献1には、静電チャックの表面に、シールバンドとして複数の密閉バンドを設けた構成が開示されている。また、上述した特許文献2には、静電チャックの表面に、最外周の外周リングの内側に内周リングを設けてもよいことが記載されている。
【0012】
しかしながら、シールバンドは基板の裏面に直接接触するため、接触部分が局所的な温度特異点となる。具体的には、接触部分で基板に伝熱し、当該接触部分における基板の温度が低下する。基板の温度特異点はプラズマ処理のレート影響を与え、その結果、プラズマ処理が基板面内で均一に行われない場合がある。従って、従来のプラズマ処理には改善の余地がある。
【0013】
本開示にかかる技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板の温度を適切に制御し、基板面内におけるプラズマ処理の均一性を向上させる。以下、本実施形態にかかるプラズマ処理装置及び静電チャックについて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<プラズマ処理システム>
先ず、一実施形態にかかるプラズマ処理システムについて、図1を用いて説明する。図1は、プラズマ処理システムの構成を模式的に示す説明図である。
【0015】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、基板処理装置としてのプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、チャンバとしてのプラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0016】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0017】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0018】
<プラズマ処理装置>
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合プラズマ処理装置の構成例について、図2を用いて説明する。図2は、プラズマ処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。本実施形態のプラズマ処理装置1では基板(ウェハ)Wにプラズマ処理を行うが、プラズマ処理対象の基板Wはウェハに限定されるものではない。
【0019】
容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0020】
基板支持部11は、支持本体部111及びリングアセンブリ112を含む。支持本体部111の上面は、基板Wを支持するための中央領域である基板支持面111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域であるリング支持面111bとを有する。支持本体部111のリング支持面111bは、平面視で支持本体部111の基板支持面111aを囲んでいる。基板Wは、支持本体部111の基板支持面111a上に配置され、リングアセンブリ112は、支持本体部111の基板支持面111a上の基板Wを囲むように支持本体部111のリング支持面111b上に配置される。
【0021】
一実施形態において、支持本体部111は、基台113及び静電チャック114を含む。基台113は、導電性部材を含む。基台113の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック114は、基台113の上面に配置される。静電チャック114の上面は、基板支持面111aを有する。なお、一実施形態において、静電チャック114の上面は、リング支持面111bを有していてもよい。この静電チャック114の構成は後述する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。
【0022】
また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック114、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に制御するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、基台113には流路が形成され、静電チャック114にはヒータが設けられていてもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。
【0023】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0024】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0025】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10s内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0026】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0027】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック114内に設けられた、後述する吸着電極201のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a、32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0028】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0029】
<プラズマ処理方法>
次に、以上のように構成されたプラズマ処理システムを用いて行われるプラズマ処理について説明する。プラズマ処理としては、例えばエッチング処理や成膜処理が行われる。
【0030】
先ず、プラズマ処理チャンバ10の内部に基板Wを搬入し、静電チャック114上に基板Wを載置する。その後、静電チャック114の後述する吸着電極201にDC電圧を印加することにより、基板Wはクーロン力によって静電チャック114に静電吸着され、保持される。この際、基板Wは所望の温度に調整される。また、基板Wの搬入後、排気システム40によってプラズマ処理チャンバ10内を所望の真空度まで減圧する。
【0031】
次に、ガス供給部20からシャワーヘッド13を介してプラズマ処理空間10sに処理ガスを供給する。また、RF電源31の第1のRF生成部31aによりプラズマ生成用のソースRF電力を基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給する。そして、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。この際、第2のRF生成部31bによりイオン引き込み用のバイアスRF信号を供給してもよい。そして、生成されたプラズマの作用によって、基板Wにプラズマ処理が施される。
【0032】
<静電チャック>
次に、上述した静電チャック114の構成について説明する。図3は、静電チャック114の構成の概略を示す平面図である。図4は、静電チャック114の一部構成の概略を示す平面図である。図5は、静電チャック114の構成の概略を示す縦断面図である。なお、図4及び図5において、Cは静電チャック114の中心線を示している。
【0033】
図3図5に示すように、静電チャック114は、チャック本体部200を有する。チャック本体部200は、誘電体からなり、例えばアルミナ(Al)等のセラミックスから形成されている。静電チャック114は、略円盤形状を有している。チャック本体部200の内部には、例えば第1のDC生成部32aに接続される吸着電極201が設けられている。第1のDC生成部32aから吸着電極201に直流電圧を印加しクーロン力を発生させることにより、静電チャック114は基板Wを吸着できる。また、チャック本体部200の内部には、ヒータ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0034】
チャック本体部200の上面は、基板Wを支持するための基板支持面111aを有する。基板支持面111aは、例えば支持される基板Wよりも小さい径を有する円形に形成されている。これにより、基板支持面111aに基板Wが支持されると、基板Wの外周部が基板支持面111aの端部から外側に突出する。
【0035】
チャック本体部200の基板支持面111aは、複数の突起としての基板接触部210と、外周接触部211とを有している。基板接触部210は、円柱形状を有するドットであり、基板支持面111aから突出して設けられている。複数の基板接触部210は、外周接触部211の内側に設けられている。外周接触部211は、基板支持面111aの最外周部において、当該基板支持面111aから突出して環状に設けられている。複数の基板接触部210と外周接触部211は、上面が同じ高さで且つ平坦に形成されており、基板支持面111aで基板Wを支持する際に基板Wに接触する。従って、基板Wは、複数の基板接触部210と外周接触部211により支持される。
【0036】
また、チャック本体部200の基板支持面111aは、複数の環状溝220を有している。環状溝220は、基板支持面111aから窪んで環状、本実施形態では円環状に設けられている。また、環状溝220は、断面視において矩形状を有している。
【0037】
図6に示すように、環状溝220の深さD1(基板支持面111aから環状溝220の底部までの深さ)は、基板接触部210の高さH1(基板支持面111aから基板接触部210の上面までの高さ)以上である。また、環状溝220の深さD2(基板接触部210の上面から環状溝220の底部までの深さ)は、基板接触部210の高さH1の2倍以上である。例えば、基板接触部210の高さH1が5μm~20μmに対して、環状溝220の深さD2は10μm~40μmである。
【0038】
環状溝220の深さD1、D2の上限値は、特に限定されるものではない。例えば環状溝220は、その底部が吸着電極201まで到達せず、且つ吸着電極201の上面の僅かに上方に位置するまで鉛直下方に延在していてもよい。また例えば、環状溝220の深さD1は、基板接触部210の上面から吸着電極201の上面までの距離H2の半分以下であってもよい。
【0039】
なお、環状溝220の幅Eも特に限定されるものではないが、例えば0.3mm~10mmである。
【0040】
図3図5に示すように、一実施形態において基板支持面111aには、例えば8つの環状溝220a~220hが、径方向に内側から外側に向けてこの順で並べて配置されている。これら8つの環状溝220a~220hの平面視における中心位置はそれぞれ、基板支持面111aにおける中心位置と同じであり、すなわち、8つの環状溝220a~220hは同心円上に設けられている。
【0041】
一実施形態において、8つの環状溝220a~220hは、例えば3つの環状溝群G1~G3を構成している。3つの環状溝群G1~G3は、径方向に内側から外側に向けてこの順で並べて配置されている。
【0042】
図7に示すように第1の環状溝群G1は、3つの環状溝220a~220cから構成される。隣り合う第1の内側環状溝220aと第1の中間環状溝220bは近接し、また隣り合う第1の中間環状溝220bと第1の外側環状溝220cも近接している。第1の内側環状溝220aと第1の中間環状溝220bの溝間距離L1(第1の中間環状溝220bと第1の外側環状溝220cの溝間距離L1)は、例えば1mm~10mmである。
【0043】
図8に示すように第2の環状溝群G2は、3つの環状溝220d~220fから構成される。隣り合う第2の内側環状溝220dと第2の中間環状溝220eは近接し、また隣り合う第2の中間環状溝220eと第2の外側環状溝220fも近接している。第2の内側環状溝220dと第2の中間環状溝220eの溝間距離L2(第2の中間環状溝220eと第2の外側環状溝220fの溝間距離L2)は、例えば1mm~10mmである。
【0044】
図9に示すように第3の環状溝群G3は、2つの環状溝220g、220hから構成される。隣り合う第3の内側環状溝220gと第3の外側環状溝220hは近接している。第3の内側環状溝220gと第3の外側環状溝220hの溝間距離L3は、例えば1mm~10mmである。
【0045】
また図3図5に示すように、3つの環状溝群G1~G3によって、基板支持面111aが4つの領域R1~R4に区画される。第1の領域R1は、第1の環状溝群G1の径方向内側の円形の領域である。第2の領域R2は、第1の環状溝群G1と第2の環状溝群G2の間の環状の領域である。第3の領域R3は、第2の環状溝群G2と第3の環状溝群G3の間の環状の領域である。第4の領域R4は、第3の環状溝群G3と外周接触部211の間の環状の領域である。各領域R1~R3には、上述した複数の基板接触部210が配置されている。また、図示の例において第4の領域R4の径方向幅は小さいが、当該径方向幅はこれに限定されるものではなく、状況に応じて大きい場合もあり得る。
【0046】
チャック本体部200には、複数の伝熱ガス供給孔230が設けられている。図6に示すように伝熱ガス供給孔230は、環状溝220の底部からチャック本体部200を貫通して設けられている。図3図5に示すように、一実施形態において、チャック本体部200には、3つの環状溝群G1~G3のぞれぞれに伝熱ガス供給孔230a、230b、230cが設けられている。なお、伝熱ガス(バックサイドガス)には、例えばヘリウムガスが用いられる。
【0047】
第1の環状溝群G1には、第1の中間環状溝220bの底部に複数の第1の伝熱ガス供給孔230aが設けられている。第1の伝熱ガス供給孔230aには第1のガス供給路としての第1の伝熱ガス供給路231aが接続され、さらに第1の伝熱ガス供給路231aは伝熱ガス供給源232に連通している。第1の伝熱ガス供給路231aには、伝熱ガス供給源232側から第1の制御バルブ233aと第1の圧力計234aが設けられている。第1の制御バルブ233aの開度は、第1の圧力計234aによって検出される圧力が所望の圧力になるように制御される。これにより、第1の制御バルブ233aは、伝熱ガス供給源232から第1の伝熱ガス供給路231aを介して供給される伝熱ガスの流量又は圧力を制御するように構成される。なお、第1の制御バルブ233aと第1の圧力計234aは一体として設けられていてもよい。そして、伝熱ガス供給源から供給された伝熱ガスは、第1の伝熱ガス供給路231a及び第1の伝熱ガス供給孔230aを介して第1の中間環状溝220bに供給され、当該第1の中間環状溝220bに沿って周方向に拡散する。さらに伝熱ガスは、第1の中間環状溝220bに近接する環状溝220a、220cに流入し、当該環状溝220a、220cに沿って周方向に拡散する。また伝熱ガスは、基板Wの裏面と基板支持面111aとの空間(以下、「伝熱空間」という。)にも供給される。なお、第1の伝熱ガス供給孔230a、第1の伝熱ガス供給路231a及び第1の制御バルブ233aは、環状溝220a~220cのいずれかに設けられていればよい。
【0048】
第2の環状溝群G2には、第2の中間環状溝220eの底部に複数の第2の伝熱ガス供給孔230bが設けられている。第2の伝熱ガス供給孔230bには第2のガス供給路としての第2の伝熱ガス供給路231bが接続され、さらに第2の伝熱ガス供給路231bは伝熱ガス供給源232に連通している。第2の伝熱ガス供給路231bには、伝熱ガス供給源232側から第2の制御バルブ233bと第2の圧力計234bが設けられている。第2の制御バルブ233bと第2の圧力計234bはそれぞれ、第1の制御バルブ233aと第1の圧力計234aと同様の構成を有し、第2の制御バルブ233bは伝熱ガスの流量又は圧力を制御するように構成される。そして第1の環状溝群G1と同様に、伝熱ガス供給源から第2の伝熱ガス供給路231b及び第2の伝熱ガス供給路231bを介して供給された伝熱ガスは、環状溝220d、220e、220fに沿って周方向に拡散するとともに、伝熱空間にも供給される。なお、第2の伝熱ガス供給孔230b、第2の伝熱ガス供給路231b及び第2の制御バルブ233bは、環状溝220d~220fのいずれかに設けられていればよい。
【0049】
第3の環状溝群G3には、第3の外側環状溝220hの底部に複数の第3の伝熱ガス供給孔230cが設けられている。第3の伝熱ガス供給孔230cには第3のガス供給路としての第3の伝熱ガス供給路231cが接続され、さらに第3の伝熱ガス供給路231cは伝熱ガス供給源232に連通している。第3の伝熱ガス供給路231cには、伝熱ガス供給源232側から第3の制御バルブ233cと第3の圧力計234cが設けられている。第3の制御バルブ233cと第3の圧力計234cはそれぞれ、第1の制御バルブ233aと第1の圧力計234aと同様の構成を有し、第3の制御バルブ233cは伝熱ガスの流量又は圧力を制御するように構成される。そして第1の環状溝群G1と同様に、伝熱ガス供給源から第3の伝熱ガス供給路231c及び第3の伝熱ガス供給路231cを介して供給された伝熱ガスは、環状溝220g、220hに沿って周方向に拡散するとともに、伝熱空間にも供給される。なお、第3の伝熱ガス供給孔230c、第3の伝熱ガス供給路231c及び第3の制御バルブ233cは、環状溝220g、220hのいずれかに設けられていればよい。
【0050】
なお、本実施形態では伝熱ガス供給路231a~231cは合流して共通の伝熱ガス供給源232に連通していたが、それぞれ個別の伝熱ガス供給源に連通していてもよい。また、本実施形態では制御バルブ233a~233cを用いて伝熱ガス供給孔230a~230cから供給される伝熱ガスの流量又は圧力を制御したが、これに加えて、伝熱ガス供給孔230a~230cの径を変更することで伝熱ガスの流量又は圧力を制御してもよい。そして例えば、伝熱ガス供給孔230a~230cから供給される伝熱ガスの圧力が異なる場合、3つの領域R1~R3毎に伝熱空間の圧力が異なる。
【0051】
図10は、第2の伝熱ガス供給孔230bからの伝熱ガスの圧力が第1の伝熱ガス供給孔230aからの圧力より高い場合に、領域R1、R2間の伝熱空間で差圧が発生する様子を示す説明図である。なお、図10においては、説明を簡略化するため、伝熱ガス供給孔230a、230bが設けられた環状溝220b、220eのみを図示している。上述したように第1の環状溝群G1では環状溝220b(220a、220c)に沿って周方向に伝熱ガスが拡散し、第2の環状溝群G2では環状溝220e(220d、220f)に沿って周方向に伝熱ガスが拡散する。かかる場合、領域R1、R2間(径方向)では伝熱空間におけるガスコンダクタンスが低くなり、領域R1、R2間の伝熱空間に差圧が発生する。すなわち、第2の領域R2の伝熱空間の圧力が第1の領域R1の伝熱空間の圧力より高くなる。
【0052】
上記理論により、例えば伝熱ガス供給孔230a~230cから供給される伝熱ガスの圧力がこの順で大きくなる場合、各領域R1~R3の伝熱空間の圧力もこの順で大きくなる。本発明者らは、伝熱ガス供給孔230a、230b、230cから供給される伝熱ガスの圧力をそれぞれP1、P2、P3(P1<P2<P3)とした場合に、各領域R1~R3の伝熱空間の圧力を調べた。図11は、比較例として基板支持面111aに環状溝220を設けない場合であり、すなわち伝熱ガス供給孔230a、230b、230cがそれぞれ基板支持面111aに設けられた場合の実験結果を示す。図12は、本実施形態のように基板支持面111aに環状溝220a~220hを設けた場合の実験結果を示す。図11及び図12において、縦軸は伝熱空間における圧力を示し、横軸は基板Wの特定方向における径方向位置を示す。なお、図11及び図12においては、説明を容易にするため、第4の領域R4の図示を省略している。
【0053】
図11に示すように比較例においては、伝熱空間の圧力が基板Wの径方向に略一定となり、領域R1~R3の伝熱空間の差圧が小さくなった。これは、基板支持面111aにおいて環状溝220が形成されていないため、各伝熱ガス供給孔230a~230cの径方向内側と外側で伝熱空間のガスコンダクタンスが高くなり、伝熱ガスが径方向に拡散したためである。
【0054】
これに対して、図12に示すように本実施形態においては、領域R1~R3の伝熱空間で差圧を発生させることができる。第1の環状溝群G1及び第1の領域R1の伝熱空間には、第1の伝熱ガス供給孔230aから伝熱ガスが拡散する。そして、これら第1の環状溝群G1及び第1の領域R1における伝熱空間の圧力は、第1の伝熱ガス供給孔230aからの伝熱ガスの圧力P1と略同一になる。
【0055】
第2の環状溝群G2の伝熱空間には、第2の伝熱ガス供給孔230bからの伝熱ガスが拡散し、当該伝熱空間の圧力は、第2の伝熱ガス供給孔230bからの伝熱ガスの圧力P2と略同一になる。また、第2の領域R2の伝熱空間の圧力は、径方向内側から外側に向けて、P1からP2に変化する。ここで、第2の領域R2の伝熱空間には、第1の伝熱ガス供給孔230aから圧力P1で供給された伝熱ガスと、第2の伝熱ガス供給孔230bから圧力P2で供給された伝熱ガスとが拡散する。そうすると、当該第2の領域R2においては、径方向内側から外側に向けて、圧力がP1からP2に緩やかに変化する。
【0056】
第3の環状溝群G3の伝熱空間には、第3の伝熱ガス供給孔230cからの伝熱ガスが拡散し、当該伝熱空間の圧力は、第3の伝熱ガス供給孔230cからの伝熱ガスの圧力P3と略同一になる。また、第3の領域R3の伝熱空間の圧力は、径方向内側から外側に向けて、P2からP3に緩やかに変化する。
【0057】
以上のように本実施形態によれば、領域R1~R3の伝熱空間で差圧を発生させることができ、当該領域R1~R3の伝熱空間の圧力を制御して、領域R1~R3毎に基板Wの温度を制御することができる。この際、環状溝220a~220hを設けることによって、基板Wに接触することなく領域R1~R3の伝熱空間で差圧を発生させることができるので、従来のようにシールバンドが基板に接触する場合に生じる局所的な温度特異点が生じ得ない。従って、本実施形態によれば、基板Wの温度制御性を向上させることができ、プラズマ処理を適切に行うことができる。
【0058】
なお、このように本実施形態によれば、基板支持面111aを領域R1~R3に区画する際、基板Wに接触しないので、従来のシールバンドのように消耗して形状が変化することがない。このため、経時変化が生じにくく、領域R1~R3の伝熱空間での圧力を適切に制御することができる。
【0059】
ここで、従来のようにシールバンドで伝熱空間を複数の領域に区画し、領域毎に圧力を制御して基板の温度を制御する場合、基板の温度が領域の境界で急激に変化する。この点、本実施形態では、伝熱空間における径方向の圧力変化が緩やかであるため、基板Wの温度も径方向に緩やかに変化させることができる。したがって、本実施形態によれば、基板Wの温度制御性をさらに向上させることができる。
【0060】
また、本発明者らが鋭意検討した結果、本実施形態のように環状溝220の深さD2が基板接触部210の高さH1の2倍以上の場合、上述した環状溝220の効果、すなわち領域R1~R3の伝熱空間の圧力を制御する効果を発揮できることが分かった。環状溝220の深さD1、D2の上限値は特に限定されないが、例えば環状溝220の深さD1、D2が大きいほど、上述した効果を顕著に享受できる。但し、装置構成上の制約はあり、例えば環状溝220は、その底部が吸着電極201まで到達せず、且つ吸着電極201の上面の僅かに上方に位置するまで鉛直下方に延在していてもよい。また例えば、環状溝220の深さD1は、基板接触部210の上面から吸着電極201の上面までの距離H2の半分以下であってもよい。
【0061】
また、環状溝220の幅E又は環状溝220の数も本実施形態に限定されない。例えば、環状溝220の幅Eが小さく、また環状溝220が1つであっても、上述した領域R1~R3の伝熱空間の圧力を制御する効果を享受できる。但し、環状溝220の幅Eが大きく、また環状溝220の本数も多い方が、この効果をより顕著に発揮できる。
【0062】
換言すれば、基板支持面111aにおける環状溝220の形状や設置範囲は本実施形態に限定されない。環状溝220の形状や設置範囲を任意に設定することで、基板支持面111aを任意の領域に区画することができ、各領域の伝熱空間の圧力を任意に制御することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、各環状溝群G1~G3において伝熱ガスが周方向に沿って拡散するため、基板Wにおける周方向の温度均一性も向上させることができる。
【0064】
次に、本発明者らが本実施形態の効果を検証した結果について説明する。本検証では、伝熱ガスの供給圧力を変動させた場合の基板Wの温度分布について実験を行った。なお、上記実施形態では伝熱ガス供給孔230a~230cが径方向に3箇所に設けられたが、本実験では、第1の伝熱ガス供給孔230aを省略し、伝熱ガス供給孔230b、230cから伝熱ガスを供給した。すなわち、本実験において基板支持面111aは、中央領域(第1の領域R1と第2の領域R2)と外周領域(第3の領域R3)の2つの領域に区画されている。
【0065】
図13は、比較例として基板支持面111aに環状溝220を設けない場合であり、すなわち伝熱ガス供給孔230b、230cがそれぞれ基板支持面111aに設けられた場合の実験結果である。図14は、本実施形態において基板支持面111aに第2の環状溝群G2(環状溝220d~220f)と第3の環状溝群G3(環状溝220g、220h)を設けた場合の実験結果を示す。図13及び図14において、縦軸は基板Wの温度を示し、横軸は基板Wの特定方向における径方向位置を示す。また、図13及び図14において、「Back Pressure」は伝熱ガスの圧力を示し、「Center」は第2の伝熱ガス供給孔230bからの伝熱ガスを示し、「Edge」は第3の伝熱ガス供給孔230cからの伝熱ガスを示す。また、「Center Zone」は中央領域(第1の領域R1と第2の領域R2)を示し、「Edge Zone」は外周領域(第3の領域R3)を示す。
【0066】
図13に示すように比較例においては、伝熱ガス供給孔230b、230cからの伝熱ガスの圧力を変動させても、中央領域における基板Wの温度と外周領域における基板Wの温度の差は小さい。すなわち、基板Wを領域毎に制御することは困難であった。
【0067】
これに対して、図14に示すように本実施形態においては、伝熱ガス供給孔230b、230cからの伝熱ガスの圧力を変動させる。かかる場合、外周領域における基板Wとの熱伝達率が中央領域における基板Wとの熱伝達率より高くなり、その結果、中央領域における基板Wの温度に対して、外周領域における基板Wの温度を低くすることができる。すなわち、中央領域と外周領域の基板Wの温度差を大きくすることができ、基板Wを領域毎に制御することができる。従って、本実施形態のように基板支持面111aに環状溝220を設けることで、基板支持面111aを複数の領域に区画して、当該領域毎に基板Wの温度を制御することができることが分かった。
【0068】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、基板支持面111aに8つの環状溝220a~220hを設け、さらに3つの環状溝群G1~G3を構成して基板支持面111aを3つの領域R1~R3に区画したが、環状溝220の数と環状溝群Gの数はこれに限定されない。
【0069】
また、以上の実施形態では、環状溝群G1、G2は3つの環状溝220で構成され、環状溝群G3は2つの環状溝220で構成されたが、環状溝群Gを構成する環状溝220の数もこれに限定されない。例えば、隣り合う環状溝220が径方向に離間して配置され、当該環状溝220によって基板支持面111aを複数の領域に区画してもよい。
【0070】
いずれにしても、基板支持面111aにおける環状溝220や環状溝群Gの配置を任意に設定することで、基板支持面111aを任意の領域に区画することができ、各領域の伝熱空間の圧力を任意に制御することができる。
【0071】
以上の実施形態では、環状溝220は断面視において矩形状を有していたが、環状溝220の断面形状はこれに限定されない。例えば図15に示すように環状溝220は断面視において五角形状を有し、当該環状溝220の底部は鉛直方向に突出していてもよい。また、例えば図16に示すように環状溝220の底面は、鉛直方向に突出して湾曲していてもよい。いずれにしても、上述した環状溝220の効果、すなわち領域R1~R3の伝熱空間の圧力を制御する効果を発揮することができる。
【0072】
なお、本実施形態においても環状溝220の深さD2は基板接触部210の高さH1の2倍以上であってもよい。この場合、環状溝220の深さD2は、基板支持面111aから環状溝220の底部の最上部までを指す。
【0073】
以上の実施形態では、環状溝220は円環状に設けられていたが、環状溝220の平面形状はこれに限定されず、環状であればよい。図17図20はそれぞれ、他の実施形態にかかる環状溝220の平面形状を示す。なお、図17図20において、図面を簡略化するため、各環状溝群G1~G3は一重の環状で図示している。
【0074】
図17に示すように環状溝220は多角形状であってもよい。図示の例においては、第1の環状溝群G1の環状溝220a~220cと第2の環状溝群G2の環状溝220d~220fが多角形状であるが、環状溝220a~220hのいずれか又はすべてが多角形状であってもよい。
【0075】
図18に示すように環状溝220は円環状ではなく他の平面形状であってもよい。また、複数の環状溝220は、平面視における中心位置が異なっていてもよい。例えば、プラズマ処理装置1のプラズマ処理チャンバ10の平面形状が中心非対称である場合、複数の環状溝220の平面視における中心位置を異なるようにしてもよい。図示の例においては、第1の環状溝群G1の環状溝220a~220cと第2の環状溝群G2の環状溝220d~220fが他の平面形状を有し、且つ平面視における中心位置が異なっているが、環状溝220a~220hのいずれか又はすべてが他の平面形状であってもよい。
【0076】
図19及び図20に示すように環状溝220は、一部が不連続になっていてもよい。この際、図19に示すように1箇所が不連続になっていてもよいし、図20に示すように複数箇所、例えば4箇所が不連続になっていてもよい。環状溝220が全体として環状に形成されていれば、上述した環状溝220の効果を享受することができる。図示の例においては、第1の環状溝群G1の環状溝220a~220cと第2の環状溝群G2の環状溝220d~220fが不連続であったが、環状溝220a~220hのいずれか又はすべてが不連続であってもよい。
【0077】
また、図20に示すように第1の環状溝群G1の環状溝220a~220cと第2の環状溝群G2の環状溝220d~220fはそれぞれ、周方向に複数の溝セグメントに分割されていてもよい。第1の内側環状溝220aは、周方向に分割された複数の第1の内側溝セグメントを有し、第1の中間環状溝220bは、周方向に分割された複数の第1の中間溝セグメントを有し、第1の外側環状溝220cは、周方向に分割された複数の第1の外側溝セグメントを有している。第1の伝熱ガス供給路231aは、複数の第1の中間溝セグメントにそれぞれ連通している。第2の内側環状溝220dは、周方向に分割された複数の第2の内側溝セグメントを有し、第2の中間環状溝220eは、周方向に分割された複数の第2の中間溝セグメントを有し、第2の外側環状溝220fは、周方向に分割された複数の第2の外側溝セグメントを有している。第2の伝熱ガス供給孔230bは、複数の第2の中間溝セグメントにそれぞれ連通している。なお、図示の例においては、環状溝220a~220fをそれぞれ4分割したが、分割数はこれに限定されない。
【0078】
以上のように本開示における環状溝220の環状は、円環状に加えて他の環状を含む。また、本開示における環状溝220の環状は、連続している必要は無く、全体として環状形状を有していればよい。そしていずれにおいても、上述した環状溝220の効果、すなわち領域R1~R3の伝熱空間の圧力を制御する効果を発揮することができる。
【0079】
以上の実施形態では、伝熱ガス供給孔230は環状溝220の底部からチャック本体部200を貫通して設けられていたが、図21及び図22に示すように伝熱ガス供給孔300は環状溝220の外側近傍に設けられていてもよい。なお、ここでいう近傍とは、例えば伝熱ガス供給孔300の側面と環状溝220の側面との距離Fが10mm以下である。
【0080】
伝熱ガス供給孔300は、基板支持面111aからチャック本体部200を貫通して設けられている。伝熱ガス供給孔300には伝熱ガス供給路(図示せず)が接続され、さらに伝熱ガス供給路は伝熱ガス供給源(図示せず)に連通している。そして、伝熱ガス供給源から供給された伝熱ガスは、伝熱ガス供給路及び伝熱ガス供給孔300を介して伝熱空間に供給され、さらに近接する環状溝220に流入し、当該環状溝220に沿って周方向に拡散する。このように本実施形態の伝熱ガス供給孔300も、上記実施形態の伝熱ガス供給孔230と同様の機能を発揮し、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0081】
以上の実施形態では、基板接触部210は環状溝220の外側に設けられていたが、図23及び図24に示すように基板接触部310は環状溝220の底部から突出して設けられていてもよい。基板接触部310は、円柱形状を有するドットであり、基板支持面111aで基板Wを支持する際に基板Wに接触する。また、基板接触部310は、当該基板接触部310が環状溝220の内部に設けられたとしても、伝熱ガスが環状溝220に沿って流れるように形成される。かかる場合、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0082】
以上の実施形態において、プラズマ処理装置1は基板支持部11に対して基板Wを昇降させるためのリフターピン(図示せず)を有していてもよい。リフターピンは、基板支持部11を挿通して設けられる。
【0083】
かかる場合、図25及び図26に示すようにチャック本体部200には、リフターピンを挿通させる貫通孔320が設けられる。また、貫通孔320は環状溝220と同心円上に設けられる場合があり、図25及び図26に示す例において、貫通孔320は例えば第2の環状溝群G2の第2の中間環状溝220eの内側において、チャック本体部200を貫通して設けられている。
【0084】
貫通孔320の内部は、異常放電対策として真空引きされる場合がある。かかる場合、貫通孔320の周囲には、シールバンド321が設けられる、シールバンド321は、基板支持面111aで基板Wを支持する際に基板Wに接触する。このようにシールバンド321が基板Wに接触することで、貫通孔320の内部が減圧される。
【0085】
第2の中間環状溝220eは、貫通孔320及びシールバンド321を囲うように設けられる。詳細には、第2の中間環状溝220eは、貫通孔320及びシールバンド321の外側において分岐して設けられる。かかる場合でも、伝熱ガスは第2の中間環状溝220eに沿って流れ、周方向に拡散する。したがって、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0086】
以上の実施形態では、3つの環状溝群G1~G3によって基板支持面111aが4つの領域R1~R4に区画されたが、溝構造(環状溝220a~220h)の一部を、シールバンド構造にしてもよい。すなわち、溝構造とシールバンド構造によって、基板支持面111aを複数の領域に区画してもよい。
【0087】
例えば図27に示すように基板支持面111aには、上記実施形態の第3の環状溝群G3に代えて、突出部330が設けられる。突出部330は、基板支持面111aから突出して環状に設けられている。突出部330の上面は、複数の基板接触部210の上面と同じ高さで且つ平坦に形成されており、基板支持面111aで基板Wを支持する際に基板Wに接触する。
【0088】
かかる場合、2つの環状溝群G1、G2と突出部330によって、基板支持面111aが4つの領域R1~R4に区画される。すなわち、第3の領域R3は、第2の環状溝群G2と突出部330の間の環状の領域であり、第4の領域R4は、突出部330と外周接触部211の間の環状の領域である。
【0089】
上述したように2つの環状溝群G1、G2によって区画される領域R1~R3の伝熱空間の圧力は緩やかに変化し、基板Wの温度も径方向に緩やかに変化する。一方、突出部330によって区画される領域R3~R4の伝熱空間の圧力は、その境界(突出部330)において急激に変化し、基板Wの温度も急激に変化する。このように、基板Wの温度変化を領域毎に制御したい場合は、溝構造とシールバンド構造を併用することは有用である。
【0090】
なお、本実施形態では、第3の環状溝群G3に代えて突出部330が設けられたが、突出部330の設置場所はこれに限定されない。基板Wの温度制御に応じて、突出部330の位置を任意に設定することができる。
【0091】
以上の実施形態において、基板接触部210の単位面積当たりの個数を、領域R1~R3毎に変更してもよい。基板接触部210の単位面積当たりの個数を調整することで、基板接触部210と基板Wとの接触率(=「接触している面積」/「領域内の全面積」)を調整することができ、その結果、基板Wとの熱伝達率を調整することができる。例えば、第1の領域R1と第2の領域R2に比べて、第3の領域R3における基板接触部210の単位面積当たりの個数を多くすると、当該第3の領域R3における基板Wとの熱伝達率が大きくなり、基板Wの温度を下げることができる。このように、基板接触部210の単位面積当たりの個数を領域R1~R3毎に調整することで、基板Wの温度制御性をさらに向上させることができる。
【0092】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
113 基台
114 静電チャック
210 基板接触部
220a 第1の内側環状溝
220b 第1の中間環状溝
220c 第1の外側環状溝
231a 第1の伝熱ガス供給路
233a 第1の制御バルブ
G1 第1の環状溝群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
第2の環状溝群G2には、第2の中間環状溝220eの底部に複数の第2の伝熱ガス供給孔230bが設けられている。第2の伝熱ガス供給孔230bには第2のガス供給路としての第2の伝熱ガス供給路231bが接続され、さらに第2の伝熱ガス供給路231bは伝熱ガス供給源232に連通している。第2の伝熱ガス供給路231bには、伝熱ガス供給源232側から第2の制御バルブ233bと第2の圧力計234bが設けられている。第2の制御バルブ233bと第2の圧力計234bはそれぞれ、第1の制御バルブ233aと第1の圧力計234aと同様の構成を有し、第2の制御バルブ233bは伝熱ガスの流量又は圧力を制御するように構成される。そして第1の環状溝群G1と同様に、伝熱ガス供給源から第2の伝熱ガス供給路231b及び第2の伝熱ガス供給孔230bを介して供給された伝熱ガスは、環状溝220d、220e、220fに沿って周方向に拡散するとともに、伝熱空間にも供給される。なお、第2の伝熱ガス供給孔230b、第2の伝熱ガス供給路231b及び第2の制御バルブ233bは、環状溝220d~220fのいずれかに設けられていればよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
第3の環状溝群G3には、第3の外側環状溝220hの底部に複数の第3の伝熱ガス供給孔230cが設けられている。第3の伝熱ガス供給孔230cには第3のガス供給路としての第3の伝熱ガス供給路231cが接続され、さらに第3の伝熱ガス供給路231cは伝熱ガス供給源232に連通している。第3の伝熱ガス供給路231cには、伝熱ガス供給源232側から第3の制御バルブ233cと第3の圧力計234cが設けられている。第3の制御バルブ233cと第3の圧力計234cはそれぞれ、第1の制御バルブ233aと第1の圧力計234aと同様の構成を有し、第3の制御バルブ233cは伝熱ガスの流量又は圧力を制御するように構成される。そして第1の環状溝群G1と同様に、伝熱ガス供給源から第3の伝熱ガス供給路231c及び第3の伝熱ガス供給孔230cを介して供給された伝熱ガスは、環状溝220g、220hに沿って周方向に拡散するとともに、伝熱空間にも供給される。なお、第3の伝熱ガス供給孔230c、第3の伝熱ガス供給路231c及び第3の制御バルブ233cは、環状溝220g、220hのいずれかに設けられていればよい。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の一態様は、チャンバと、前記チャンバ内に配置され、少なくとも1つの第1のガス供給路を有する基板支持部であり、基台と、前記基台上に配置され、上面を有する静電チャックであり、前記上面は、複数の突起と、第1の環状溝群とを有し、前記第1の環状溝群は、第1の内側環状溝、第1の中間環状溝及び第1の外側環状を含み、前記第1の内側環状溝、前記第1の中間環状溝及び前記第1の外側環状溝のうちいずれかが前記少なくとも1つの第1のガス供給路に連通している、前記静電チャックと、を有する、前記基板支持部と、前記少なくとも1つの第1のガス供給路を介して供給されるガスの流量又は圧力を制御するように構成される少なくとも1つの制御バルブと、を備える。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
なお、本実施形態においても環状溝220の深さD2は基板接触部210の高さH1の2倍以上であってもよい。この場合、環状溝220の深さD2は、基板接触部210の上面から環状溝220の底部の最上部までを指す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
また、図20に示すように第1の環状溝群G1の環状溝220a~220cと第2の環状溝群G2の環状溝220d~220fはそれぞれ、周方向に複数の溝セグメントに分割されていてもよい。第1の内側環状溝220aは、周方向に分割された複数の第1の内側溝セグメントを有し、第1の中間環状溝220bは、周方向に分割された複数の第1の中間溝セグメントを有し、第1の外側環状溝220cは、周方向に分割された複数の第1の外側溝セグメントを有している。第1の伝熱ガス供給路231aは、複数の第1の中間溝セグメントにそれぞれ連通している。第2の内側環状溝220dは、周方向に分割された複数の第2の内側溝セグメントを有し、第2の中間環状溝220eは、周方向に分割された複数の第2の中間溝セグメントを有し、第2の外側環状溝220fは、周方向に分割された複数の第2の外側溝セグメントを有している。第2の伝熱ガス供給孔231bは、複数の第2の中間溝セグメントにそれぞれ連通している。なお、図示の例においては、環状溝220a~220fをそれぞれ4分割したが、分割数はこれに限定されない。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図15
【補正方法】変更
【補正の内容】
図15
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図16
【補正方法】変更
【補正の内容】
図16