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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025288
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】検査試料の自動前処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20230214BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20230214BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20230214BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20230214BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20230214BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230214BHJP
   G01N 1/34 20060101ALI20230214BHJP
   G01N 1/40 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G01N35/04 G
G01N35/02 B
G01N35/10 C
G01N1/10 H
G01N1/38
G01N1/28 X
G01N1/34
G01N1/40
G01N1/28 J
G01N1/10 C
G01N1/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201279
(22)【出願日】2022-12-16
(62)【分割の表示】P 2021073200の分割
【原出願日】2017-02-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)学会予稿集 日本食品衛生学会第112回学術講演会予稿集(平成28年度),第131頁、発行日:平成28年10月7日 (2)学会発表 日本食品衛生学会第112回学術講演会(平成28年度),ポスター発表P-33、開催日:平成28年10月27日、
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599067053
【氏名又は名称】株式会社ピーエムティー
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】八津川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】松田 高博
(72)【発明者】
【氏名】小林 和浩
(72)【発明者】
【氏名】杉田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】島崎 知久
(57)【要約】
【課題】機器分析等に利用できる、汎用性の高い検査試料の自動前処理装置を開発する。
【解決手段】検査試料の自動前処理装置として、検査試料から所定の溶媒等の抽出・等の各種処理を行う際に、試料チューブTuを所定のXY平面上で自在に移載・昇降できる機構3、7を採用するともに、当該チューブTuの移動と一体として、溶液の分取・供給等のピペッティング装置9も移動させることによって、効率的な自動前処理装置とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)移動軸と、当該移動軸上をスライド移動し、所定の平面内を移動可能な移送部を有す
る移送ユニットと、
2)前記移送部に装着され、スクリューキャップ式の試料チューブを挟持・解放し、昇降
可能なチューブ昇降装置と、
3)前記移送部に装着され、所定の先端部を脱着可能とし、液体を吸入又は吐出する昇降
可能なピペッティング装置と、
4)前記スクリューキャップ式の試料チューブの載置部と、当該スクリューキャップのキ
ャップ部を挟持・回転させてキャップを着脱し、所定場所に載置可能なキャップ脱着装置
と、
5)前記スクリューキャップ式の試料チューブを載置し、スライド移動可能な移動式スト
ック部と、
6)前記移動式ストック部に収容された試料チューブ内に挿入可能な昇降式のホモジナイ
ザー装置と、
7)前記試料チューブを収容するラックと、当該ラックを振とう可能な振とう部を有する
振とう装置と
8)前記スクリューキャップ式の試料チューブの載置部と、当該試料チューブに溶液を分
注可能なポンプ部を備えた分注装置、を有する溶媒分注ユニットと、
9)前記試料チューブを遠心する遠心分離装置とを備えた、
検査試料の自動前処理装置であって、
前記ピペッティング装置を用いて試料チューブ中の二層状態の溶液の下層部を吸引する場合において、試料チューブを斜めにした状態で前記ピペッティング装置に装着されたチップを垂直下向きに下降させ、二層状態の溶液の界面部を通過させる構成とした、検査試料の自動前処理装置。
【請求項2】
前記自動前処理装置が、さらに、
10)カラムによる処理部を備えた、請求項1に記載の検査試料の自動前処理装置。
【請求項3】
前記自動前処理装置が、さらに、
11)遠心エバポレータ装置を備えた、請求項2に記載の検査試料の自動前処理装置。
【請求項4】
前記検査試料の自動前処理装置が、動物用医薬品の分析に利用する検査試料の自動前処理装置である請求項1~3のいずれかに記載の自動前処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査試料の自動前処理装置に関するものである。特に機器分析に好適に用いられる検査試料の自動前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検査試料から検出対象物を抽出するために抽出操作をする場合は多いがこれらの操作は煩雑であることが多い。例えば、動物用医薬品や農薬等が残留しているかどうかの分析に際して、食品検査試料や、生体検査試料等から当該動物用医薬品や農薬等の検出対象物を抽出等する操作は、煩雑である場合が多い。
一方、これらの操作は、所定の手順に従って実施することが多く、これらの操作を自動化できれば抽出操作の正確性や再現性の高いデータを得ることができる。さらに人件費の軽減や、抽出操作の均一性や人による人為的ミス等を排除できるというメリットもある。
このように、種々の分析に使用する検査試料の前処理については、可能な限り自動化をすることが好ましい。
【0003】
例えば、本願発明者らは、農薬の分析において効率的に分析をするための機械的に自動で抽出操作を行う自動前処理方法について検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-3003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の文献は、農薬の分析には適合できるものの、動物用医薬品を含む他の分析への応用度が小さかった。そこで、より汎用性の高い自動前処理装置を開発することを課題とすることとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的の下、種々の検討の行った結果、検査試料の自動前処理装置として、所定の溶媒等の抽出・等の各種処理を行う際に、試料チューブを所定のXY平面上で自在に移載できる機構を採用するともに、当該チューブの移動と一体として、溶液の分取・供給等のピペッティング装置も移動させることによって、より効率的な装置とすることができ、動物用医薬品を始め、種々の機器分析の自動前処理装置に利用することができることを見出した。
【0007】
すなわち、種々の抽出工程の操作性を検討した結果、自動化した場合において、試料チューブ中の溶液の上澄みの採取や溶媒の追加等のピペッティング操作に関して、液体を吸入又は吐出というピペッティング操作を実施する装置を、試料チューブの移動と一体化させる方法が有効であることを見出した。
【0008】
すなわち、本願第一の発明は、
“1)移動軸と、当該移動軸上をスライド移動し、所定の平面内を移動可能な移送部を有する移送ユニットと、
2)前記移送部に装着され、試料チューブを挟持・解放し、昇降可能なチューブ昇降装置と、
3)前記移送部に装着され、所定の先端部を脱着可能とし、液体を吸入又は吐出する昇降可能なピペッティング装置と、
を備えた、検査試料の自動前処理装置。“、である。
【0009】
さらに、請求項1に記載の自動前処理装置において、試料チューブがスクリューキャップ式の試料チューブとして、当該スクリューキャップの脱着装置を設ける方法が有効であることを見出した。
すなわち、本願第二の発明は。
“前記自動前処理装置において、試料チューブがスクリューキャップ式の試料チューブであって、さらに、
4)前記スクリューキャップ式の試料チューブの載置部と、当該スクリューキャップのキャップ部を挟持・回転させてキャップを着脱し、所定場所に載置可能なキャップ脱着装置を備えた、請求項1に記載の検査試料の自動前処理装置。“、である。
【0010】
次に、本発明においては、試料チューブ内のサンプルをホモジナイズするホモジナイザー機構と、当該チューブ振とう機構と、当該チューブに溶媒を分注可能な分注装置と、遠心分離装置を備えることが好ましい。
【0011】
すなわち、本願第三の発明は、
“前記自動前処理装置であって、さらに
5)前記スクリューキャップ式の試料チューブを載置し、スライド移動可能な移動式ストック部と、
6)前記移動式ストック部に収容された試料チューブ内に挿入可能な昇降式のホモジナイザー装置と、
7)前記試料チューブを収容するラックと、当該ラックを振とう可能な振とう部を有する振とう装置と
8)前記スクリューキャップ式の試料チューブの載置部と、当該試料チューブに溶液を分注可能なポンプ部を備えた分注装置、を有する溶媒分注ユニットと、
9)前記試料チューブを遠心する遠心分離装置を備えた、
、請求項2に記載の検査試料の自動前処理装置。“、である。
【0012】
次に、当該さらなる精製を行うために、カラムをする装備を設けてもよい。
すなわち、本願第四の発明は、
“前記自動前処理装置が、さらに、
10)カラムによる処理部を備えた、請求項3に記載の検査試料の自動前処理装置。”、である。
【0013】
さらに、濃縮工程として、遠心エバポレータも装備した態様でも可能である。
すなわち、本願第五の発明は、
“前記自動前処理装置が、さらに、
11)遠心エバポレータ装置を備えた、請求項4に記載の検査試料の自動前処理装置。”、である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施態様の自動前処理装置の全体の斜視模式図と移送部の拡大斜視図である。
図2】本発明の第一の実施態様の自動前処理装置の全体の平面図である。
図3】移送ユニット(移送部、移動軸、固定レール)の斜視図である。
図4】試料チューブ昇降装置の斜視図である((1)昇状態(2)下降状態)。
図5】試料チューブ昇降装置の動作を示した正面模式図である。
図6】ピペッティング装置の斜視図である((1)昇状態(2)下降状態(3)昇状態の写真(4)下降状態の写真)。
図7】チップ脱着部の拡大図である。
図8】チップラックの斜視図である((1)チップを収納していない場合(2)チップを収納した場合の写真)
図9】チップの先端部を試料チューブに挿入していく過程の正面模式図である。
図10】キャップ脱着装置の斜視図である((1)図面(2)写真)。
図11】キャップ脱着の動作を示した正面図である。
図12】移動式ストック部とホモジナイザー装置群を示した斜視図である。
図13】振とう装置の斜視図である((1)略水平状態の写真(2)回転後の写真(3)斜視図)
図14】溶媒分注ユニットの斜視図である((1)図面(2)写真)。
図15】溶媒のストック部(溶媒分注ユニットへの供給するため)の斜視写真であ る。
図16】加圧ユニット(分注ユニットへのシリンジポンプ部及びカラム上部の加圧のためのシリンジ部)
図17】固定ストック部の斜視図である((1)図面(2)写真)。
図18】カラム又は濾過による処理部の斜視図である((1)図面(2)写真(3)溶媒ストックビンも含めた全体写真)。
図19】遠心エバポレータの斜視図である。
【符号の説明】
【0015】
1 移動軸
3 移送部
5 固定レール
6 移送ユニット
7 チューブ昇降装置
8 チューブ挟持部
8-1 チューブ挟持バー
9 ピペッティング装置
10 チップ先端カバー部
11 チップラック
12 チップ脱着部材
13 キャップ脱着装置
15 キャップ回転・移動部
16 キャップ昇降部
17 キャップ載置部
18 キャップ挟持バー
21 移動式チューブ載置部
22 チューブ保持部
23 スライド移動式ストック部
25 ホモジナイザー部
26 スライドカバー
27 振とう装置
28 振とう装置のチューブラック
29 溶媒分注ユニット
30 溶媒供給部
31 加圧ユニット(シリンジ部及びシリンジポンプ部)
31-1 カラム加圧シリンジ
31-2 溶媒分注用シリンジポンプ
33 固定式ストック部
35 遠心分離装置
37 遠心エバポレータ装置
39 チューブラック
40 カラム処理部
41 カラム載置部
43 カラム溶媒供給部
44 カラム圧力供給部
47 溶媒ストック部
49 遠心エバポレータ
51 廃液ビン
53 冷却トラップ
55 吸引ポンプ
Tu スクリュー式試料チューブ
C キャップ(スクリュー式チューブの蓋部)
Ti チップ(先端部)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の第一の実施形態について説明する。但し、本発明はこれらの実施の態様に限定されるものではないことは勿論である。
【0017】
図1及び2に示すように本願第一の実施形態の自動前処理装置は、検査試料の自動前処理装置であって、
1)移動軸と、当該移動軸上をスライド移動し、所定の平面内を移動可能な移送部を有する移送ユニットと、
2)前記移送部に装着され、スクリューキャップ式の試料チューブを挟持・解放し、昇降可能なチューブ昇降装置と、
3)前記移送部に装着され、所定の先端部を脱着可能とし、液体を吸入又は吐出する昇降可能なピペッティング装置と、
4)前記スクリューキャップ式の試料チューブの載置部と、当該スクリューキャップのキャップ部を挟持・回転させてキャップを着脱し、所定場所に載置可能なキャップ脱着装置と、
5)前記スクリューキャップ式の試料チューブを載置し、スライド移動可能な移動式ストック部と、
6)前記移動式ストック部に収容された試料チューブ内に挿入可能な昇降式のホモジナイザー装置と、
7)前記試料チューブを収容するストック用のラックと、当該ラックを振とう可能な振とう部を有する振とう装置と
8)前記スクリューキャップ式の試料チューブの載置部と、当該試料チューブに溶液を分注可能なポンプ部を備えた分注装置、を有する溶媒分注ユニットと、
9)前記試料チューブを遠心する遠心分離装置と、
10)カラムによる処理部を備えた、請求項3に記載の検査試料の自動前処理装置と、
11)遠心エバポレータ装置と、を備えた、
検査試料の自動前処理装置、である。
【0018】
尚、本発明は本第一の実施態様に限定されるものではないことは勿論である。図1は本発明の第一の実施態様の自動前処理装置の全体の斜視模式図である。尚、図1においては、廃液ビンとチューブラック等の一部構成を省略している。
次に図2は、本発明の第一の実施態様の自動前処理装置の全体の平面図である。尚、移送ユニット等の一部構成は省略している。
また、各種装置、ユニットについては、動力源として所定のモータや各種の動力部、電源等と連結されている。これらの記載は省略する。
【0019】
○移送ユニット
本発明の第一の実施態様における移送ユニット6は、図3に示すように移送部3、移動軸1及び固定レール5を包含しており、前記移送部3は所定の移動軸1に装着されている。また、当該移動軸1については、当該移動軸1の両端が、当該移動軸1と直交する一対の固定レール5に滑り移動が可能となるように装着されている。
この結果、前記移動軸1は、図3に示すようにY軸方向に移動となっている。さらに、移送部3は当該移動軸1上をスライド移動が可能となっているので、図3に示すようにX軸方向の移動が可能となっている。
このように移動軸1がY軸方向を移動可能であり、前記移送部3は当該移動軸1上をX軸方向に移動可能であるため、図3のXY平面上を自在に移動可能となっている。
そして、当該移送部3には、後述するチューブTuを挟持・解放するチューブ昇降装置7と、液体を吸入又は吐出するピペッティング装置9が装着されている。
【0020】
これによって、チューブ昇降装置7とピペッティング装置9について図3に示すXY平面内での自由な移動を実現している。尚、図3には図示しないが、移送ユニット内には、別途移動軸1のY軸方向の移動を駆動する駆動部と、移送部3が移動軸1上をスライド移動できるように駆動モータが装着されている。
【0021】
○試料チューブ昇降装置
本発明においては、検査試料をスクリュー式にキャップCを有する試料チューブTuに収容するとともに、当該チューブTu内でホモジナイズ・抽出等の種々の操作を行う。ここで、当該試料チューブTuに対して各種の処理を施すために、前記XY平面上に種々の装置が配置されている(図2)。
【0022】
当該チューブTuは、上述の移送ユニット6の移送部3に装着された試料チューブ昇降装置7に挟持された状態で、移送部3の移動とともに運ばれる。
次に、所定のXY軸上の所定位置に配置された後、当該チューブTuを各種装置へ供するために、上述の移送部3に装着された試料チューブ昇降装置7によって当該チューブTuを降下させる必要がある。
【0023】
ここで、試料チューブ昇降装置7は図4に示すように、前記の移送部3に装着されており、略直方体状の筐体の内部に円柱状の挟持部8が設けられており、昇降可能自在に設定されている。尚、当該昇降機構については、ポールネジ等を用いた公知の方法を利用することができる。
【0024】
また、円柱状の挟持部8については、試料チューブ挟持バー8-1が円周回りに三本設けられており、図5に示すように試料キャップCの上部を挟持・解放することが可能に構成されている。
【0025】
尚、本発明の実施態様のおけるチューブTuはスクリュー式キャップのチューブTuを開示しているが、必ずしもこれに限定されず、押圧によって開閉可能なキャップ式のチューブや、キャップCをせずに解放状態のチューブによって前処理操作を行うことも可能である。この場合、それぞれのチューブの形態に応じて、備えるべき装置は異なってくることになる。
【0026】
○ピペッティング装置
図5に示すように前記移送部3に装着され、所定の先端部(チップ)Tipを脱着可能とし、液体を吸入又は吐出する昇降可能なピペッティング装置9が装備されている。当該ピペッティング装置9は、前述の移送部3に装着されており、前記の試料チューブ昇降装置7に隣接して装着されている。
【0027】
尚、本発明においては、移送部3に上述の試料チューブ昇降装置7と、ピペッティング装置9とを装着しているとの記載があるが、本装着の記載は必ずしも移送部3と試料チューブ昇降装置7と、ピペッティング装置9とが明確に部材として区分けられることを意図しない。
例えば、これらが、一体に構成されている場合においても、本発明にいう移送部3、試料チューブ昇降装置7及びピペッティング装置9のそれぞれを備えるものとなる。
【0028】
当該ピペッティング装置9は、図6に示すように略直方体状の筐体の内部に円柱状の挟持部が設けられており、昇降可能自在に設定されている。尚、当該昇降機構については、ポールネジ等を用いた公知の方法を利用することができる。
当該ピペッティング装置9においては、図7に示すようにチップTiに対する所定の嵌合部を有しており、当該嵌合部の上部に設けられたチップ脱着部においてチップTiの脱着を行っている。
【0029】
尚、前記のチップの嵌合部の中央には、内部を引圧とするための導管が設けられており、当該導管はチューブ等を介して、吸引装置と連通するように構成され、チップTi内に溶液が吸引可能となるように構成されている。
【0030】
そして、所定サイズのチップTiを、ピペッティング装置9の先端の嵌合部に押圧により装着し、当該ピペッティング部の先端部は、通常のピペットマン(登録商標)と同様に溶液を吸引できるように構成されている。
すなわち、チップTiを装着した状態で溶液を吸引することができるように内部が引圧として吸引できるように構成されている。また、当該圧力を解除することによって、吸引した溶液を吐出することができる。
【0031】
また、本発明の第一の実施態様においては、チップTiを装着するタイプを開示しているが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、例えば、ガラス製やプラスチック製のピペットを装着するような構成であってもよいことは勿論である。
また、チップTiを使用する場合においては、異なる溶液を扱う際にチップを交換する必要があるが、当該交換のために、図8に示す所定のチップラック11が設置されている。これによって、先端部のチップTiの交換を実施できるように構成されている。
【0032】
当該ピペッティング装置9の動作としては、所定のチューブTuに対して溶液の供給又は吸引をする場合において、当該対象となるチューブTuの上部に当該装置9が位置した状態で、キャップCを外した状態のチューブTuの開口部に、ピペッティング装置9が下降し、当該先端部をチューブTu開口部より挿入する。そして溶液の吐出又は吸引を行うように構成される。
【0033】
また、上記ピペッティング操作において、分注する溶液を吸引した状態で、先端部のチップTiの先端からの液漏れによるタレを防止することが好ましい。
そこで、図6(3)に示すように吸引した状態で当該ピペッティング装置を上方に上昇させて、移送部3の移動を介して移動させる場合、当該チップTiの先端部からの液漏れによるタレを防止するために、液が漏れてもこれを受けられるようにチップ先端カバー部10でチップTi先端部の下方をカバーした状態で移送部3を移動させることが好ましい。
【0034】
次に、本発明においては、サンプルの精製等のために、溶液を二層としてその一方を採取する場合もある。当該二層の場合、チューブTu内が二層の溶液になり、当該層間の界面が生じる場合もある。
【0035】
前記ピペッティング装置9を用いて溶液の吸引・吐出をする場合においては、当該溶液の層間の界面層を吸引しないようにするために、チューブTuを斜めにした状態チップTiを垂直下向きに下降させる方法が採用することが好ましい。すなわち、具体的には、以下の図9に示すようにチップTiをチューブTuに挿入していく際に、予めチューブTuを斜めに傾けておき、当該状態でチップTiを下方に下降させていく、当該チップTiの先端部をチューブTuの壁面に沿わすようにして界面をできるだけ避けながら、チップTiを下降させていくことで界面を可能な限り避けながら、チップTiを下方の層に侵入させることができる。
図9の右に示すように、チップTiの先端部が下層の溶液内に充分、挿入された状態で溶液を吸引することで、界面の吸引を避けながら、下層の溶液を無理なく吸引して回収することができる。
【0036】
尚、ピペッティング装置9による溶液の吸引・排出する際においては、当該チューブTuを後述するキャップ脱着装置13の移動式のチューブ載置部21で行うことが可能である。当該、チューブ載置部21においては、上述のピペッティング際においてチューブTuを斜めに傾斜させることができるように構成されている。
このように、斜めにしてサンプルをピペッティング操作で界面を吸引しないように設定することができる。また、ピペッティング操作によって残渣となる溶液を捨てるのため、廃液ビン51が図2の略中央部に設置されている。
【0037】
尚、このように、ピペッティング装置9によってチップTiから溶液を吸引して採取する場合においては、当該採取した溶液を吐出するための新しいチューブTuを所定のラック及び使用後のチップTiをすてるチップ廃棄ビン等に準備しておくことが好ましい。
次に、本発明の第一の実施態様においては、さらに以下の構成を有している。
【0038】
○キャップ脱着装置
本第一の実施態様におけるキャップ脱着装置13は、必要に応じて前記スクリューキャップCを回転させて当該チューブTuからキャップCを外したり、又はキャップCを装着する装置である。図10に示すように、本第一の実施態様においては、当該キャップ脱着装置13は、移動可能なチューブ載置部21、略直方体状のキャップ回転・移動部15と、円盤状のキャップ載置部17を有している。
【0039】
チューブ載置部21において、キャップCを装着又は外す対象となるキャップ付のチューブTuを載置して、当該チューブTuの下方部を支持して回転できない状態とする。
次に、キャップCの装着・脱着のために、チューブ載置部21に運ばれたキャップ付の溶液チューブTuに対して、キャップ回転・移動部15が接近して、当該下にキャップ付の溶液チューブTuが位置するように配置される。
【0040】
具体的には、チューブ載置部21には、図11に示すようにチューブTuの保持部22が形成されており、当該保持部22の間隔に、チューブTuが挿入される。
【0041】
当該保持部22の下方及び底部において、チューブTuの下方部を支持・固定及びその解除をするこができるように構成されており、固定されるとチューブTuの回転が阻止される。この状態で、チューブTuの上部より、キャップ回転・移動部15が接近して、キャップ昇降部16が下降し、3本のキャップ挟持バー18が降下してキャップCを挟持したのち、回転することでキャップCを外すことができる。
【0042】
さらに、外したスクリュー式のキャップCについては、これを円盤状の載置部17にこれを載置することでキャップCの外しを完了する。
【0043】
一方、キャップCを装着する際には、キャップCを外したチューブTuに対して、円盤状のキャップCを挟持した状態でチューブ上部に載置した後、キャップCを回転してキャップCによって開口部を閉じてキャップCによる封鎖を完了する。当該、チューブTuの下方部を挟持した状態で上部に、キャップ回転・移動部15が接近して、キャップ昇降部16が下降し、当該チューブTuのキャップCを挟持し、回転してキャップCを外す。次に、キャップC部分を円盤台の載置部17の上部に載置して、次工程に移行する。
【0044】
本発明の第一の実施態様においては、さらに、以下の構成を有していてもよい。
【0045】
○移動式ストック部
本発明の第一の実施態様においては、前記スクリュー式キャップの試料チューブTuを複数載置可能なスライド移動式のストック部23が設けられている(図1図2)。本発明においては、図12に示すようにホモジナイザー装置25の手前の領域に設けられている。
【0046】
○ホモジナイザー装置
本発明の第一の実施態様においては、前記試料チューブTu内に挿入可能な図13に示すような昇降式のホモジナイザー装置25を有している。
当該ホモジナイザー装置25は垂直上下方向に昇降可能に構成されており、当該ホモジナイザー装置25の手前において、ホモジナイザー装置の直下に位置可能な移動式ストック部23であるチューブラックに収納されたチューブTuが移動して、ホモジナイザー装置25の下方部に位置するように運ばれる。
当該状態においてホモジナイザー装置25が垂直下方向に下降し、液ダレ防止のためのスライドカバー26の孔部を通過してチューブTu内にホモジナイザーの先端部が液面内に挿入され、当該ホモジナイザーを稼働することで固形物等を粉砕することができる。
ホモジナイズ後においては、ホモジナイザー装置25を上昇させて、ホモジナイザーの刃についた液がチューブTu内に落ちるよう、チューブTu上で短時間静止させる。また、スライドカバーを移動させて、ホモジナイザー装置からの液ダレを防止することができる。さらに、移動式ストック部(チューブラック)25を移動させてもとに戻す。
【0047】
尚、本発明の実施態様におけるホモジナイズは、図12に示すようY軸方向の上部方向(紙面奥側)から順に1、3、5、7、9、11番目のチューブTuに対するY軸方向に一列のホモジナイザー列と、2、4、6、8、10、12番目のチューブTuに対するY軸方向に一列のホモジナイザー列が並列に配置されており、これらのチューブTuに対するホモジナイズを順次実施するように配置されている。
【0048】
○振とう装置
本願発明の第一の実施態様においては振とう装置27を有している。当該振とう装置27において、前記試料チューブTuを収容し、振とうすることが可能である。
【0049】
本発明の第一の実施態様においては、図13に示すような振とう機27が設けられており、当該振とう機27においては、振とう機27のチューブラック28に収納されたチューブTuに対して振とう前に、複数のL字状部を有するスライドカバーがチューブラックの長手方向にスライドして、当該チューブTuの上部にカバー部が位置されるように構成されている。これによって、ラック28が回転してもチューブTuが落下することがなく、当該チューブTuがラック28に保持された状態でラック28が図14に示すように左右に回転
して、試料チューブTu内の溶液を振とうして混合することが可能となる。
【0050】
○溶媒分注ユニット
本発明の第一の実施態様においては、図14に示すように溶媒(溶液)の分注装置29を有している。当該分注装置29は、先のキャップ脱着装置15におけるスクリューキャップ式の試料チューブ載置部21が移動して、当該試料チューブTuに溶媒(溶液)を分注可能な溶媒供給部30を備えている。
溶媒分注ユニット29については、複数の溶媒供給部30が柔軟性のある細チューブによって溶媒のストック部47に配置された溶媒ストックビンに連結されており(図15)、
当該ストック部47の溶媒ストックビンから供給される溶媒が分注される。
尚、試料チューブ載置部21がキャップ脱着装置15から、溶媒供給部30まで移動可能となっているのは、スクリュー式のキャップCを外した状態で溶媒の分注をすることが多いためである。
【0051】
すなわち、試料チューブTuは、前述のキャップ脱着装置13によってチューブTuよりキャップCが外された状態で、チューブ載置部21が移動し、キャップCが外されて上部が解放状態の試料チューブTuが移動せしめられ、溶媒分注ユニット29の溶媒の供給部30の先端部の下方部に位置するように構成されている。
図14に示す本発明の第一の実施態様における溶媒分注ユニット29においては、6種類の溶媒のいずれかを分注できるように6つの供給部30を有するように構成されており、所定の溶媒を分注するために、前述のチューブ載置部21が当該供給部30のうちいずれかの先端部の下方部にまで移動し、供給部30のいずれかの一つが矢印方向にスライドして、チューブTuの上部に位置することとなり、溶媒が供給可能となるように構成されている。
【0052】
尚、チューブTu内の液量を定容とするために、不足分の溶液を追加供給できるように光センサーを用いた定容制御が可能となっている。
例えば、30mlに定容する必要がある場合、当該チューブTu内の溶液が28mlであった場合、光センサーを用いて30mlとなるように追加分の2mlを供給できるように構成されている。
【0053】
また、当該分注装置29の分注する溶媒(溶液)については、図15に示すような複数の溶媒ストックビンを備えたストック部47が存在して、当該ストック部47から図17に示すシリンジポンプ部31-2の動作によって溶媒が吸引排出されるように構成されている。
【0054】
本シリンジポンプ部31-2は所定の溶媒ストックビンに貯蔵されたバッファー等の溶媒を必要に応じてチューブTu内に供給するための装置である。
当該溶媒ストックビンの中には、供給するための溶媒が存在しており、先のシリンジポンプ31-2によって吸引・排出するように設定されている。
さらに、前述の溶媒分注ユニット29におけるチューブ載置部21は、前述したピペッティング装置9による溶液の吸引・吐出等のピペッティング操作を実施する際の、移動式のチューブ載置部21にもなっており、図9に示すように所定の角度でチューブTuを傾斜させるように構成もされている。
【0055】
○遠心分離装置
本発明においては、前記試料チューブTuを遠心する遠心分離装置35を備えている。遠心分離するこれによって、ホモジナイズ等した溶液において、残渣と上澄み部分を分離することができる。尚、本発明においてはスイングタイプのロータを使用することが好ましい。
【0056】
また、当該遠心分離装置35においては、ロータへの試料チューブTuの挿入の際に前述のチューブ昇降装置7が垂直に当該チューブTuを下降させることが好ましい。このため、ロータが回転を停止している状態で、当該ロータのチューブ収納部が垂直方向を向いていることが好ましい。
さらに、本発明の第一の実施態様においては次の構成を備えている。
【0057】
○固定式ストック部
本発明の第一の実施態様においては、試料チューブTuを載置可能なラック式の固定式のストック部33が設けられている。また、当該ストック部33においては冷却トラップ53によって低温で保持するように冷却ユニットにもなっている(図17)。
本ストック部に適宜、試料チューブTuを載置することができる。また、遠心分離操作を終了した試料チューブTuや揮発性の比較的高い有機溶媒をキャップCを外した状態で保持する場合に有用に利用することができる。
【0058】
○カラムによる処理部
本発明の第一の実施態様においては、カラム又は濾過による精製工程を加えることでさらなる精製を行うことができるため、好ましい。本発明の第一の実施態様においては、図18に示すようにカラムによる処理のための処理部40を有している。
当該カラム処理部は、カラムの載置部41と、当該カラムの上部よりバッファー等を供給するシリンジ等を備えたカラム溶媒供給部43が水平方向からスライドしてカラム上部に位置されることになる。
また、カラム中の液体の通液を促進するために、装着したカラムの上部より空気等を送り、カラムに圧力を供給するカラム圧力供給部44も設けられている。尚、当該圧力供給部に空気圧を供給する圧力供給シリンジ31-1を図16に示す。
【0059】
○遠心エバポレータ装置
本発明においては、遠心エバポレータ49を用いて、乾固・濃縮工程を加えることでサンプルの最終的な調整まで可能とすることができる。本発明の第一の実施態様においては、当該遠心エバポレータ装置49も備えた構成を示している(図19)。
当該遠心エバポレータ装置49は、本自動前処理装置の右側面に設置された吸引ポンプ55と連結されており、上部が開放状態のチューブTuを収納し、脱気状態で遠心することによって溶媒を揮発させて乾固させることができる。
当該乾固後のチューブTuに対して所定の溶媒を供給し、内容物を溶解することで最終的に試料サンプルを完成することができる。
【0060】
当該遠心エバポレータ装置49においては、ロータへの試料チューブTuの挿入の際に前述のチューブ昇降装置7が垂直に当該チューブTuを下降させることが好ましいため、水平状態においてロータのチューブ受け部が垂直方向に対して傾斜している場合、ロータ又は遠心エバポレータ装置49自体を傾斜させて当該チューブTuを垂直に下降させて、チューブ受けに挿入してロータに収容するようにすることが好ましい。
【0061】
〇その他
その他、未使用の新しいスクリュー式チューブTuを載置するためのチューブラック部やピペッティング操作において、除去する溶液を捨てる廃液ビン51等は、図2に示す以外にも必要に応じて適宜設けることが可能である。尚、スクリュー式のチューブTuは、前述の固定式ストック部33や移動式ストック部23に載置しておくことも可能である。
【0062】
次に、本発明の第一の実施態様の自動前処理装置における検査試料の処理例を示す。本開示は処理例にすぎないため、本処理例に限定されるものではない。
【0063】
特に食品中から動物用医薬品を抽出・精製・乾固等する場合について、表1及び表2に示す操作手順を参照しながら説明する。但し、各設定条件は以下に示すものに限定されな
いことは勿論である。
次の動物用医薬品分析用の前処理方法においては、抽出→精製→濃縮の3ステップにより前処理を行っている。
尚、このフローについては親水及び親油のそれぞれについて表1及び表2に示す。これらは、農作物や食品等の試料から抽出溶媒に動物用医薬品を溶出させる工程となっている。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
本発明の第一の実施態様においては、以下のように自動前処理装置が稼働して、機器分析(LC-MS/MS)に供するサンプルを自動で調製することができる。
スクリュー式のチューブTuに対して、試料(食品、農作物等の粉砕しているものが好ましい)を添加する。当該試料の重量については記録しておく。
【0066】
また、本発明の第一の実施態様の場合、当該チューブTuに対してスクリュー式のキャップCを装着したままとしておくことができる。
【0067】
本第一の実施態様においては、12のサンプルを処理することができる。サンプルの装着は、図1及び図2に示す移動式ストック部23に固形又は液状サンプルを収容した状態のキャップC付のチューブTuを配置することで可能である。この状態で本第一の実施態様の自動前処理装置による自動前処理を開始することができる。

1)親水性の動物用医薬品を抽出する場合
(1)抽出工程
サンプルの収容されたキャップC付のチューブTuに対して、移動軸1のY軸方向の固定レール5上での移動及び、移送部3の移動軸1上のZ軸方向の移動を通じて、チューブ昇降装置7がキャップC付の試料チューブTiに接近し、当該試料チューブTiの上部に対して試料キャップ挟持バー18が下方向に降りて、当該試料チューブTuの上部を挟持する。
【0068】
そして、当該挟持した状態で、挟持バー18が上方向に上昇し、続けて、移動軸1及び固定レール5を介して移動し、当該サンプルが入った試料チューブTuをキャップ脱着装置13のチューブ載置部に移動させる。
【0069】
当該チューブ載置部17に載置された試料チューブTuに対してキャップ脱着装置の挟持キャップ回転部15が水平方向にスライドしてきて、当該チューブTuのキャップ部を回転させてキャップCを外す、外されたキャップCは円盤状のキャップ載置プレート17に載置される。脱着装置のチューブ載置部に載置されたサンプル入りのチューブTuは、Y軸方向にスライド移動して、分注するための位置まで運ばれる。
【0070】
分注のための位置に移動したチューブTuに対して、分注装置29のうちの一つの供給部30がX軸方向にずれて、チューブTuの上部に位置するようになる。そして、上部の供給部30よりマッキルぺインバッファーが15ml注加される。次に、脱着装置のチューブ載置部21に載置されたサンプル入りのチューブTuは、Y軸方向に逆にスライド移動して、元の位置に戻される。
バッファー注加後のチューブTuが、元の位置に戻ったチューブ載置部21から前記と同様にチューブ昇降装置7によって挟持されてホモジナイザー装置25前の移送式ストック部23に載置される。
当該、操作が繰り返されて、移動式ストック部23に順に載置されたサンプル入りのチューブTuに対して順番にマッキルベインバッファーが注加されて、すべてのサンプル入りのチューブTuにマッキルベインバッファーが注加され、移動式ストック部23に整列配置される。
【0071】
当該移動式ストック部23は、スライド移動して、バッファーが注加された各チューブTuがホモジナイザー装置25の下方部に移動する。
【0072】
ホモジナイザー部25が下降して、当該ホモジナイザー25の先端部がチューブTuの液面内に入りホモジナイズが開始される。ホモジナイズは2分実施され、ホモジナイズ後にホモジナイズ部25が上昇して、試料チューブTuよりホモジナイザーの先端が離れる。尚、ホモジナイズはサンプル数によっては、2列に分けて実施される。
【0073】
ホモジナイズ後の試料チューブTuをチューブ昇降装置7がキャップ脱着部13に移載して、先の工程とは逆にキャップCを装着する。そして、キャップ装着後の試料チューブTuは、チューブ昇降装置7により遠心分離装置35まで移載する。
【0074】
本操作を偶数回繰り返して、遠心分離機35において対象となるようにホモジナイズ後の試料チューブTuを載置する。尚、処理するサンプルが奇数の場合には、空のチューブTuを入れて偶数とすることが好ましい。
【0075】
遠心後のチューブTuは、一旦、冷却保存ラック33に順次運ばれて配置される。一方、空のチューブTuがキャップCを開けられた状態で振とう装置のラック27に整列する。冷却ラックに載置された遠心後のチューブTuが順次、前記キャップ脱着装置13によってキャップCを外された後に、チューブ載置部21において吸引・排出部(ピペッティング部)され、上澄み液が採取され、振とう装置のラック27に事前に準備して置いた空チューブTuに注加される。
すなわち、当該採取後の液が、振とう装置のラック27に載置されたチューブTuに移載される。本実施態様においては、移送部に装着されたピペッティング装置9による吸引・排出機構によって、吸引された上澄み液が運ばれて、当該新しい試料チューブTuに排出される。
【0076】
ピペッティング装置9によるバッファーが除かれた残渣の試料チューブTuに対して、前記と同様にマッキルぺインバッファーが注加されて、ホモジナイズ装置25に移載されて、ホモジナイズが実施され(1分間)、その後、遠心分離が行われる。
【0077】
ホモジナイズ+遠心分離の後において、先に上澄み液が入っているチューブTuに、二度目のホモジナイズ+遠心分離によって生じた上澄み液が吸引されて、ピペッティング操作により排出される。
【0078】
二度の抽出操作により、回収されたバッファーを含むチューブTuが分注するための位置に載置されて、30mlにメスアップするように、マッキルベインバッファーが注加されて定容される。尚、30mlのラインに定容するように光センサーが用いられる。

(2)精製工程
これらの操作が繰り返されて、動物用医薬品が存在すれば、当該成分を含む画分が回収される。次に30mlに定容された回収溶液に対して、精製用の水飽和ヘキサンを20ml加える。キャップCを閉めて、閉キャップ後のチューブTuを振とう装置27のラック28に収納される。所定回数の収納を繰り返したのち、振とう装置27のラック28が前後に回転往復を繰り返して振とうが行われる。
【0079】
振とう後の試料チューブTuは、前記と同様に遠心分離された後、ピペッティング装置9によって上層のヘキサン層が除去される。その後、下層のマッキルベインバッファー層がピペッティング操作によって回収される。
【0080】
尚、この際、図9に示すようにピペッティング操作におけるヘキサン層とバッファー層との界面の吸引を避けるため、試料チューブTuはやや斜めに傾けられて、当該傾いた状態で上部よりピペッティング装置のチップTiが装着部が下方向に下降して、ヘキサン層との界面の吸引が発生しないようにチップTiがバッファー層に挿入されるように操作される。
【0081】
上記のヘキサンによる精製操作を実施している間に、カラム処理部40においては、装着しておいたカラムを載置しておく、当該カラムに対して、当該カラムの上部よりバッファー等を供給するカラム溶媒供給部43が水平方向からスライドしてカラム上部に移動してきて、装着された供給シリンジからメタノール5mlを供給する。このように、大気圧にて通液して、カラム層を洗浄する。次に、蒸留水5mlを大気圧にて通液する。
【0082】
次に、ピペッティング装置9が接近して、新規なチップTiを装着した上で、当該ヘキサン層除去後のチューブ中の溶液の下層を20ml分取してカラム(OASIS HLB)に供与する。尚、当該カラムは予めコンディショニングとして、メタノール5mlと蒸留水5mlを大気圧下で通液させておいたものを用いる。
【0083】
次に、チューブTu中の溶液の下層を20ml分取してカラム(OASIS HLB)に供与し、大気圧下で通液した後、上部より空気圧をかけてカラムを完全に通液させる。次に、蒸留水5mlを供与しカラムを洗浄する。大気圧による通液の後、再度上部より空気圧をかけてさらに通液させる。カラムを通過した廃液の入ったチューブTuは、チューブ昇降装置7によって、除去する。
その後、回収用のチューブTuをカラム下方部に配置し、溶出液としてエタノール5mlを添加して、圧力を付加した後大気圧によって通液して、親水性の動物用医薬品を含む試料液をチューブTuに回収する。その後、空気加圧した状態でさらに通液を行い、カラム中のエタノール回収液を溶出させる。

(3)濃縮工程
親水性の動物用医薬品を含むエタノール回収液が入った開放チューブTuに対して、試料チューブ昇降装置7が接近して、これを遠心エバポレータ37にまで運び、ロータ内に収容する。遠心機のバランスを取るために対象となる部位に同重量のブランクを収容する。
減圧のための吸引(真空)ポンプを起動させて脱気を実施しながら、遠心を行い、溶媒
を揮発させて減圧乾固する。
【0084】
次に、50%メタノールを1ml添加して(乾燥品の場合0.5ml)、キャップ脱着装置13によってキャップCを閉めて、振とう装置27で3分間振とうし、4℃で保存する。

2)親油性の動物医薬品を抽出する場合
(1)抽出工程
粉体またはペースト状の検体1.5gが入った50mlのチューブTuを試料チューブ昇降装置7がキャップ脱着装置13まで運び、そのキャップCを開ける。開封後のチューブTuを溶液分注装置29したまで移載し、アセトニトリルを分注して加える。分注後のチューブTuを、試料チューブ昇降装置7がホモジナイズ装置25下の移動式ストック部(スライドラック)23に移載し、移動式ストック部(スライドラック)23をホモジナイズ装置25下までスライドさせて、ホモジナイズ装置25が降下して、液面内に挿入されて固形物を破砕して均質化する。
【0085】
均質化した後、ホモジナイザ装置25は上昇して、スライドラック23はスライドして、もとの位置に復帰する。復帰したスライドラック23上のチューブTuは、キャップ脱着装置13によってキャップCが装着された後、遠心分離装置35に移載されて、所定時間の遠心分離が実行される。
【0086】
遠心終了後、チューブ昇降装置7によってキャップ脱着装置13のチューブ載置部21に移載され、キャップCが外された後、チップTiが装着されたピペッティング装置9によって、上清が吸引され上清が新しいチューブTuに回収される。
次に、元のチューブTuは溶液分注装置29の溶媒供給部30に移動せしめられ、これに対してアセトニトリルが再度分注された後、当該チューブTuは、チューブ昇降装置7によってホモジナイズ装置25の下方に移載され、前述と同様にホモジナイズされる。
【0087】
当該ホモジナイズ後に遠心処理が加えられた後、先と同様にピペッティング装置9によってピペッティングによって吸引され、上清が先の新しいチューブTuに追加される。
二度の抽出操作により、回収されたバッファーを含むチューブTuが溶媒分注ユニット下の分注のためのポジションに移動し、30mlにメスアップするように、マッキルベインバッファーが注加されて定容される。尚、30mlのラインに定容するように光センサーが用いられる。
その後、キャップCを閉めて遠心分離した後、キャップCをあけ、遠心上清を新しいチューブTuに回収する。上記操作を繰り返す。
【0088】
(2)精製工程
これらの操作が繰り返されて、動物用医薬品が存在すれば、当該成分を含む画分が回収される。次に30mlに定容された回収アセトニトリル溶液に対して、溶媒分注ユニット29やピペッティング装置9を利用して、精製用のアセトニトリム飽和ヘキサンを20ml加える。キャップCを閉めて、閉キャップ後のチューブTuを振とう装置27のチューブラック28に収納される。所定回数の収納を繰り返したのち、チューブラック28が左右に回転往復を繰り返して振とうが行われる。
【0089】
振とう後の試料チューブTuは、前記と同様に遠心分離された後、ピペッティング装置9によって上層のヘキサン層が除去される。
その後、アセトニトリル飽和ヘキサンを15ml加えて、50mlに定容し、キャップ脱着装置13によりキャップCが回転して装着された後、ミキサー部で10分間振とうする。その後、遠心分離機によって3000rpmで3分間遠心分離が行われ、キャップ脱着装置13によってキャップCが外されて、上層であるヘキサン層が除去される。
【0090】
その後、新しいチューブTiに当該下層が10ml分取される。尚、この際、ピペッティング操作におけるヘキサン層とバッファー層との界面の吸引を避けるため、試料チューブTuはやや斜めに傾けられて、当該傾いた状態で上部よりピペッティング装置のチップTiが装着部が下方向に下降して、ヘキサン層との界面の吸引が発生しないようにチップTiがバッファー層に挿入されるように操作される。下層のアセトニトリル層の10mlが分取され、新しいチューブTuに分注される
【0091】
(3)濃縮工程
新油性の動物用医薬品を含む回収液を含む開放チューブTuに対して、試料チューブTu昇降装置が接近して、これを遠心エバポレータ37にまで運び、ロータ内に収容する。遠心機のバランスを取るために対象となる部位に同重量のブランクを収容する。
減圧のための吸引(真空)ポンプ55を起動させて脱気を実施しながら、遠心を行い、溶媒を揮発させて減圧乾固する。
50%メタノールを0.5ml添加してキャップCを閉めて、ミキサーで3分間振とうし、4℃で保存する。
【実施例0092】
以下に、動物用医薬品について具体的な処理の例を説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されないことは勿論である。
以下に、動物用医薬品の分析した場合の例について記載する。
前述の精製工程(親水及び親油)の場合、
[実施例1](自動前処理装置 サンプル:豚 親水性)
サンプルとして、豚の筋肉を用い当該サンプルに表3に記載の親水性の動物用医薬品を添加し、回収試験を実施した。
【0093】
【表3】
具体的には、豚の筋肉(生)(フードプロセッサーにより均一なペースト状にしたもの:500g)に表3に記載の42種の親水性の動物用医薬品を添加し、添加・回収試験用の食品サンプルとした。
【0094】
当該食品サンプルを用いて、本発明の自動前処理装置を用いて、上述の親水性サンプルの手順に従い抽出操作を行った。
【0095】
当該、抽出後のサンプルを以下の条件でLC/MS/MSによって分析した。
<LC-MS/MS測定条件>
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル
カラム温度:40℃
移動相:A液(0.1%ぎ酸水溶液)及びB液(0.1%ぎ酸含有メタノール)について濃度勾配をかけて送液する。
移動相流量:0.3 mL/分
イオン化モード:ESI
注入量:5μL
当該、分析の結果、回収率が70%以上120%未満の回収率を得られた動物用医薬品の数を評価対象とした。結果を表5に示す。
【0096】
[比較例1](手作業 サンプル:豚 親水性)
実施例1で調製した、表3に記載の42種の親油性の動物医薬品を添加し、添加・回収試験用の食品サンプルを用いて、実施例1において自動前処理装置が実施するのと同様の手順を技術者が手作業で動物用医薬品の抽出操作を行った。その他の条件は実施例1に示したものと同様である。
【0097】
[実施例2](自動前処理装置 サンプル:えび 親水性)
サンプルとして、エビを用い当該サンプルに表3に記載の親水性の動物医薬品を添加し、回収試験を実施した。
【0098】
具体的には、エビ(フードプロセッサーにより均一なペースト状にしたもの:500g)に表3に記載の42種の親油性の動物用医薬品を添加し、添加・回収試験用の食品サンプルとした。
【0099】
当該食品サンプルを用いて、本発明の自動前処理装置を用いて、上述の親油性サンプルの手順に従い抽出操作を行った。その他の条件は、実施例1に示したものと同様である。
【0100】
[比較例2](手作業 サンプル:えび 親水性)
実施例2で調製したエビを用いて、表3に記載の42種の親油性の動物医薬品を添加し、添加・回収試験用の食品サンプルを用いて、実施例2において自動前処理装置が実施するのと同様の手順を技術者が手作業で動物用医薬品の抽出操作を行った。その他の条件は実施例2に示したものと同様である。
【0101】
[実施例3](自動前処理装置 サンプル:豚 親油性の動物性医薬品)
サンプルとして、実施例1で調製した豚の筋肉(生)を用い当該サンプルに表4に記載の親油性の動物医薬品を添加し、回収試験を実施した。
【0102】
【表4】
具体的には、豚の筋肉(生)(フードプロセッサーにより均一なペースト状にしたもの:500g)に表4に記載の154種の親油性の動物医薬品を添加し、添加・回収試験用の食品サンプルとした。
【0103】
当該食品サンプルを用いて、本発明の自動前処理装置を用いて、上述の親油性サンプルの手順に従い抽出操作を行った。
【0104】
当該、抽出後のサンプルを以下の条件でLC/MS/MSによって分析した。
<LC-MS/MS測定条件>
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル
カラム温度:40℃
移動相:A液(10 mmol/L酢酸アンモニウム含有10%メタノール)及びB液(10 mmol/L酢酸アンモニウム含有メタノール)について濃度勾配をかけて送液する。
移動相流量:0.3 mL/分
イオン化モード:ESI
注入量:5μL
当該、分析の結果、回収率が70%以上120%未満の回収率を得られた動物用医薬品の数を評価対象とした。結果を表5に示す。
【0105】
[比較例3](手作業 サンプル:豚 親油性)
実施例3で調製した豚の筋肉(生)、表4に記載の154種の親油性の動物医薬品を添加し、添加・回収試験用の食品サンプルを用いて、実施例3において自動前処理装置が実施するのと同様の手順を技術者が手作業で動物用医薬品の抽出操作を行った。
その他の条件は実施例3に示したものと同様である。
【0106】
[実施例4](サンプル:えび 親油性)
サンプルとして、エビを用い当該サンプルに表4に記載の親油性の動物医薬品を添加し、回収試験を実施した。
【0107】
具体的には、エビ(フードプロセッサーにより均一なペースト状にしたもの:500g)に表4に記載の154種の親油性の動物用医薬品を添加し、添加・回収試験用の食品サンプルとした。
【0108】
当該食品サンプルを用いて、本発明の自動前処理装置を用いて、上述の親油性サンプルの手順に従い抽出操作を行った。その他の条件は、実施例3に示したものと同様である。
【0109】
[比較例4](手作業 サンプル:えび 親油性)
実施例4で調製したエビを用いて、表4に記載の154種の親油性の動物医薬品を添加し、添加・回収試験用の食品サンプルを用いて、実施例4において自動前処理装置が実施するのと同様の手順を技術者が手作業で動物用医薬品の抽出操作を行った。その他の条件は実施例4に示したものと同様である。
【0110】
【表5】
結果として、手作業に比較して本自動前処理装置を利用すると、70%以上120%未満の回収率を得ることができる動物用医薬品の数が向上した。
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