(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025290
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】飲料容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/72 20060101AFI20230214BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B65D85/72 200
B65D1/02 220
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201679
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2019022391の分割
【原出願日】2019-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399068018
【氏名又は名称】日清ヨーク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 宗一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
(72)【発明者】
【氏名】池田 久太郎
(72)【発明者】
【氏名】松崎 学
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量化した容器であっても、外部衝撃による蓋材の剥離や、容器側面に対する外部衝撃によって、容器の変形を伴う破損を防ぐことができる飲料容器を提供することを目的とする。
【解決手段】同心円状の有底飲料容器1であって、フランジ11を備えた開口部10と、開口部10から該開口部10と同径のまま垂下した頸部20と、頸部20から逆テーパ状に延びる肩部30と、肩部30のうち、頸部20とは反対側の一端から所定幅垂下した後、テーパ状に縮径している胸部40と、縮径した胸部40から同径のまま垂下した胴部50と、胴部50から前記胸部40の最大径と同径となるまで逆テーパ状に延びた後、前記胸部40と同じかそれ以上の幅になるまで垂下した足部60と、を備えた飲料容器であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向の軸を中心とした円筒状の有底飲料容器であって、
蓋材と熱溶着されるフランジを備えた開口部と、
開口部から該開口部と同径のまま垂下した頸部と、
頸部から逆テーパ状に延びる直線状の肩部と、
肩部のうち、頸部とは反対側の一端から所定幅垂下した後、テーパ状に縮径している胸部と、
縮径した胸部から同径のまま垂下した胴部と、
胴部から前記胸部の最大径と同径となるまで逆テーパ状に延びた後、前記胸部と同じかそれ以上の幅になるまで垂下した足部と、
を備える非炭酸系飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器に関する。より詳しくは、外部衝撃が加わっても、中身が漏れ出しにくい飲料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の飲料容器に対するニーズとしては、様々なものが存在する。例えば、保温性、携帯性、容量またはこれらの組み合わせが挙げられる。そして、これらのニーズに応えるべく、多種多様な飲料容器が市場に登場している。
【0003】
例えば、保温性を満たす飲料容器としては、外壁と内壁の間に断熱層を備えた二重容器が知られている。断熱層を設けることで手に熱が伝わりにくく、かつ、保温性を高めることができる。
【0004】
携帯性を満たす飲料容器としては、リキャップできる飲料容器が知られている。リキャップすることで容器内の中身が外にこぼれ出ず、持ち運びに便利である。また、容器の軽量化によっても携帯性を向上させている。容器の軽量化方法としては、材質の種類や厚みの改良が知られている。
【0005】
容量を満たす飲料容器としては、様々なサイズの飲料容器が存在する。例えば、牛乳であれば、サイズの異なる紙パックがいくつも展開されている。また、飲料によっては、容量に応じて飲料容器の材質を変えて展開されている。例えば乳酸菌飲料の場合、紙パックだけでなく、ポリスチレン(PS)による少量の飲料容器も展開されている。珈琲飲料の場合には、チルドカップや缶による少量の飲料容器が展開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
ところで、PSによる少量の飲料容器は、容器内に飲料が充填され、飲み口のフランジに金属製の蓋材を溶着することで密封されている。PSと金属の蓋材との溶着が弱いと、容器に外部衝撃が加わった際に蓋材が剥離してしまい、中身が漏れ出してしまうという問題が以前から存在した。
【0008】
そこで、フランジ幅を広げ、蓋材との溶着強度を高める方法が取られている。当該方法により、上下方向における外部衝撃に対して耐衝撃性が増すため、蓋材剥離による中身の漏れ出しは防げるようになった。しかし、近年、容器の原料資材価格の上昇や容器の軽量化などから、容器の厚みが薄くなっている。そのため、外部衝撃が加わると、今度は蓋材の剥離ではなく容器の破損によって、中身が漏れだすという問題が生じるようになった。特に、外部衝撃が側面に対して加わった場合には容器が変形しやすく、容器が破損しやすいという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、軽量化した容器であっても、外部衝撃による蓋材の剥離や、容器側面に対する外部衝撃によって、容器の変形を伴う破損を防ぐことができる飲料容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決のため、本発明の飲料容器は、同心円状の有底飲料容器であって、フランジを備えた開口部と、開口部から該開口部と同径のまま垂下した頸部と、頸部から逆テーパ状に延びる肩部と、肩部のうち、頸部とは反対側の一端から所定幅垂下した後、テーパ状に縮径している胸部と、縮径した胸部から同径のまま垂下した胴部と、胴部から前記胸部の最大径と同径となるまで逆テーパ状に延びた後、前記胸部と同じかそれ以上の幅になるまで垂下した足部と、を備えている。
【0011】
さらに、上記構成において、足部と底面との間にRが設けられていることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、飲料容器の肩部を曲線ではなく直線とすることで、容器側面への外部衝撃に対する容器自体の耐衝撃性が増す。これにより、胸部、足部及び肩部によって容器の変形を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、肩部を直線とすることで、容器側面への外部衝撃を胸部と足部だけで受け止めるのではなく、肩部においても外部衝撃を受け止めることができる。肩部を直線とすることで、従来の曲線に比べて容器が変形しにくくなり、外部衝撃の一部を肩部も負担できるようになる。これにより、容器を軽量化した場合であっても、容器の変形を伴う破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態にかかる飲料容器を説明するための図面であって、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【
図2】肩部が曲線である飲料容器(比較例1)を説明するための説明図である。
【
図3】肩部と胸部との間に段差を有する飲料容器(比較例2)を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0016】
図1(a),(b)に示すように、本実施形態にかかる飲料容器1は、同心円状の有底飲料容器である。
本実施形態にかかる飲料容器1は、上段部と下段部とに大別できる。さらに、上段部は、飲み口であり、フランジ11を備えた開口部10と、頸部20と、頸部20から逆テーパ状に直線状に延びる肩部30とに細分化できる。また、下段部は、本実施形態にかかる飲料容器において最大径である胸部40と、飲料容器の把持部として機能する胴部50と、飲料容器を立たせた際の安定性に寄与する足部60とに細分化される。
【0017】
本実施形態にかかる飲料容器1の材料としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のα-オレフィン重合体;ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサン、ポリ(2-オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル;ポリ乳酸樹脂、ポリグリコール酸系樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、またはこれらの共重合体等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)樹脂が挙げられる。このうち、寸法安定性、加工性などの観点からポリスチレン系樹脂が好ましい。また、本実施形態にかかる飲料容器の製造方法としては、真空成形、プレス成形、射出成形(ダイレクトブロー、インジェクションブロー)が挙げられる。このうち、インジェクションブローが好ましい。
【0018】
本実施形態にかかる開口部10は円形であり、本実施形態にかかる飲料容器1において最小径となっている。また、開口部10は外径に向かって所定幅のフランジ11を備えている。ここで、開口部10は飲み口であると同時に、フランジ11と蓋材(図示せず)とを溶着することで飲料容器内に中身を封入することができる。フランジ11の所定幅としては、1~3mm程度であることが好ましい。1mm未満だと蓋材との溶着が不十分となり、外部衝撃によって蓋材が剥離してしまう恐れがある。一方、3mmを超えると、蓋材との溶着が強固になりすぎ、開封しづらくなってしまう。
【0019】
本実施形態にかかる頸部20は、開口部10と同径のまま垂下した部位である。頸部20は容器の耐久性を向上させるのに有効である。頸部20の垂直方向における長さは、0.5~4.5mm程度であることが好ましい。4.5mmより大きいと外観が悪くなる。また、強度も大差がないか、逆に低下する。なお、頸部20は必須の構成要素ではなく、なくても構わない。
【0020】
本実施形態にかかる肩部30は、頸部20から逆テーパ状に延びる部位である。また、肩部30は直線状になっている。肩部30の一端は頸部20の末端と連続し、他端は後述する胸部40の末端と連続している。垂線と肩部30とのなす角度は20~40度が好ましく、25~35度がより好ましい。20度未満だと容器が全体に縦長になってしまい、容量が確保できない。一方、40度より大きいと、飲むときに口や鼻が胸部とぶつかりやすくなるため、飲みにくくなってしまう。
【0021】
本実施形態にかかる胸部40は、肩部30の他端から所定幅だけ垂下したのち、容器内側に向かってテーパ状に縮径している。
図1(b)から明らかなように、本実施形態にかかる飲料容器1においては、肩部30と胸部40との間に段差は設けられず、肩部30の他端からすぐに垂下している。胸部40は、製造ラインにおいてガイドに従って容器を整列させるのに有効である。また、飲料容器1を複数本まとめてパッケージする際に、開口部10、胸部40、後述する足部60にパッケージフィルムが当接することで、パッケージフィルムにハリを持たせることができる。テーパによる縮径の割合としては、7~14%程度であることが好ましい。
【0022】
本実施形態にかかる胴部50は、飲料容器1に占める割合が最も大きい。胴部50は胸部40と後述する足部との間に位置し、縮径した胸部40から同径のまま垂下した部位である。胴部50は飲食時の把持部として機能する。また、胴部50は、製品情報を印字するための印字部としても機能する。胴部50の鉛直方向における長さは、容量にもよるが、30~40mm程度が好ましい。
【0023】
本実施形態にかかる足部60は、胴部50の末端から胸部40の最大径と同径となるまで逆テーパ状に延びた後、胸部40と同じかそれ以上の長さになるまで垂下している。足部60は、製品情報を印字するための印字部としても機能する。また、容器が安定して立つのに重要である。そのため、足部60の鉛直方向における長さは胸部40と同じかそれ以上となっている。なお、足部60と容器本体1の底面との間には、所定の曲率半径Rを介して接続されていることが好ましい。ここで、曲率半径Rとしては、1~5mmが好ましく、3~4mmがより好ましい。
【0024】
本実施形態にかかる飲料容器用の蓋材としては、金属シートを用いることができる。このうち、アルミシートにホットメルト樹脂を塗布したものが好ましい。蓋材とフランジ11との溶着方法としては、熱板シール方法、高周波シール方法、超音波シール方法が挙げられる。このうち、充填した飲料に影響の出にくい高周波シール方法が好ましい。
【実施例0025】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。ここでは、インジェクションブローによりポリスチレン製の飲料容器を製造した。各容器の寸法は表1の通りである。また、本発明の各特性は、以下の方法により評価した。なお、比較例1は市販の65ml乳酸菌飲料(日清ヨーク社製 商品名「ピルクル」)である。
【0026】
【0027】
<横圧縮強度の測定>
各実施例及び比較例における各容器の圧縮強度は、テンシロン万能試験機(A&D社製 製品名「RTG-1310」)を用いて行った。また、試験に用いる冶具には、圧縮テストなどに用いる金属の平板を用いた。試験方法としては、各飲料容器を横倒しの状態で測定台に設置し、胸部、足部または容器全体に冶具が当たるようにセットした。続いて500mm/minの速さで上部から冶具を下げ破損するまで圧力を加え、ピーク値を測定した。各実施例及び比較例に対して、飲料の有無で場合分けし、各10サンプル試験を行った。そして、得られた測定値の平均値を算出した。なお、飲料の入った容器については、アルミ製の蓋材を高周波でフランジに溶着した。
【0028】
<剥離強度(ピール強度)の測定>
各実施例及び比較例に溶着した実施例1および比較例1の蓋材を容器本体から剥がす際の剥離力を測定した。剥離力(ピール力)の測定は、引張試験機(A&D社製 製品名「RTG-1310」)を用いて実施した。容器本体と蓋材とをシールした後、把持部をエアージョウで挟み、300mm/minの速さでエアージョウを垂直方向に引っ張り、その時の抵抗力を剥離強度とした。
【0029】
測定の結果を表2に示す。
【0030】
【0031】
表2に示すように、実施例1,2は比較例1に比べた場合、中身の有無にかかわらず、胸部及び全体の横圧縮強度の増加が認められた。特に、全体の横圧縮強度については、比較例1よりも大幅な増加が認められた。例えば、空の容器の場合、実施例1における胸部の圧縮強度は約20N近く強度が増加していることがわかる。また、全体の圧縮強度は100N以上強度が増加していた。一方、容器の足部においては、そこまでの横圧縮強度の増加は認められなかった。
【0032】
次に、中身の入っている容器について見てみると、胸部、足部及び全体のいずれにおいても横圧縮強度が増加していることがわかる。例えば、実施例1では130N以上も増加している。また、空の容器に比べて圧縮強度の増加の割合が極端に増えていることもわかる。これは、中身を入れた容器が蓋材でシールされているためではないかと考えられる。ところで、比較例1も蓋材で開口部がシールされている。そのため、本来であれば、横圧縮強度の増加割合は空の容器の場合とさほど変わらないのではないかとの疑問も生じる。この点については次のように考えられる。肩部が曲線になっていると(
図2参照)、容器内の圧力が開口部に向かって集中しやすくなる。その結果、肩部が直線のものよりも横圧縮強度が弱くなるため、横圧縮強度の増加割合に差が出たのではないかと推察される。実際、蓋材のピール強度は各実施例・比較例とも大差なかった。また、比較例2の横圧縮強度の増加割合は比較例1よりも大きくなっている。
【0033】
実施例1と実施例2を比較すると、実施例2は容器の肉厚が実施例1よりも厚い。表2の結果から明らかなように、肉厚を厚くすることで、耐衝撃性をより高められることがわかる。
【0034】
実施例1と比較例2はどちらも肩部が直線である。
図1(b)、
図3から明らかなように差異点は肩部に段差があるかどうかである。表2の結果を見ると、胸部における横圧縮強度が実施例1よりも低いことがわかる。この結果は、肩部に段差を設けてしまうと、胸部における圧縮強度が低下する可能性を示唆している。
【0035】
以上説明したように、本発明にかかる飲料容器は、従来の飲料容器よりも横圧縮強度が優れた耐性を備えている。