(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025308
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】QoI殺菌剤に対して耐性を有するダイズさび病菌の防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 37/06 20060101AFI20230215BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230215BHJP
A01N 43/56 20060101ALI20230215BHJP
A01N 43/54 20060101ALI20230215BHJP
A01N 37/44 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A01N37/06
A01P3/00
A01N43/56 D
A01N43/54 A
A01N37/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020015188
(22)【出願日】2020-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝明
(72)【発明者】
【氏名】飛田 英克
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄一
(72)【発明者】
【氏名】野倉 吉彦
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BB06
4H011BB09
4H011DA15
4H011DC05
4H011DD03
4H011DE15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌の防除方法の提供。
【解決手段】式(I)〔Qは、Q1~Q4で示される基(●はベンゼン環との結合部位);R
1は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4アルキル基等;Eは、R
2-CH=C-等;R
2は、シクロプロピル基等を表す〕で示される化合物は、ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌の防除に用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、
R
1は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4アルキル基、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4アルコキシ基、又はハロゲン原子を表し、
E、Q、及びnの組合せは、
EがR
2-CH=CH-であり、
QがQ1で示される基であり、
nが0又は1である組合せ;
EがR
3-C≡C-であり、
QがQ1で示される基であり、
nが1である組合せ;
Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、
QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基であり、
nが0、又は1である組み合わせ;又は、
EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、
QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基であり、
nが1である組合せを表し、
Q1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、及びQ4で示される基は、次式で示される基(●はベンゼン環との結合部位を表す)を表し、
【化2】
R
2は、シクロプロピル基(該シクロプロピル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい)を表し、
R
3は、C2-C6鎖式炭化水素基(該C2-C6鎖式炭化水素基は、C3-C6シクロアルキル基又は1以上のハロゲン原子で置換されていてもよい)、又はC3-C6シクロアルキル基を表し、
R
4は、フェニル基(該フェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい)を表し、
R
5は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C3鎖式炭化水素基又は水素原子を表す。〕
で示される化合物の有効量をダイズ又はダイズを生育する土壌に施用することによる、ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌の防除方法。
【請求項2】
請求項1において、式(I)で示される化合物が、QがQ1で示される基である化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1において、式(I)で示される化合物が、EがR2-CH=CH-であり、QがQ1で示される基であり、nが0又は1である化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1において、式(I)で示される化合物が、EがR3-C≡C-であり、QがQ1で示される基であり、nが1である化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1において、式(I)で示される化合物が、Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基であり、nが0、又は1である化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1において、式(I)で示される化合物が、EがR4R5C=N-OCH2-であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基であり、nが1である化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌を防除するための、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載する式(1)で示される化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌を防除する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用殺菌剤に対して抵抗性の獲得形質を示す植物病原性真菌の蔓延が大きな問題となっている。このような状況下、既存の農業用殺菌剤に対する抵抗性の獲得、及び抵抗性を獲得した菌の蔓延を抑止、遅延させるためのガイドラインを提供する組織として、FRAC(殺菌剤抵抗性作用委員会;Fungicide Resistance Action Committee)が設けられた。FRACの提供するウェブサイトでは、農業用殺菌剤に対し抵抗性を示す植物病原性真菌に対する種々情報が入手可能である(http://www.frac.info/)。
植物病原性真菌の場合、抵抗性獲得の主たる原因は、殺菌剤の標的酵素をコードする植物病原性真菌の遺伝子が変異することにより、殺菌剤の標的酵素中のアミノ酸が部分的に置換し、殺菌剤と標的酵素との親和性が低下することであることが知られている。
【0003】
QoI殺菌剤は別名ストロビルリン系殺菌剤、もしくはその特徴的な構造からメトキシアクリレート系殺菌剤とも呼ばれる。QoI殺菌剤はダイズさび病を含む植物病原性真菌を防除するために広く使用されている農業用殺菌剤の1群である。QoI殺菌剤は通常、ミトコンドリア中のチトクロームbc1複合体(電子伝達複合体III)のユビヒドロキノン酸化中心に結合し、呼吸を抑制することによって植物病原性真菌を死滅、もしくは生育を停止させる。上記の酸化中心は、ミトコンドリア内膜の外側に位置している(非特許文献1参照)。
農業用殺菌剤として実際にQoI殺菌剤が広範に使用される以前から、植物病原性真菌がQoI殺菌剤による淘汰圧を受けることにより、標的酵素であるチトクロームbc1複合体中のチトクロームb遺伝子中に、G143A等の特定の単一アミノ酸置換が起こるような遺伝子変異を獲得したQoI殺菌剤に抵抗性を有する菌が容易に生じることが、実験室内でのモデル研究により明らかとなっていた(非特許文献2~4参照)。
【0004】
一方、ダイズさび病菌(学名:Phakopsora pachyrhizi)はダイズに被害をもたらす植物病原性真菌である。QoI殺菌剤が農業用殺菌剤としてダイズさび病菌防除に広く使用されて以降、QoI殺菌剤に抵抗性を示すダイズさび病菌の出現が報告された(非特許文献5参照)。
ダイズさび病菌では、同チトクロームb遺伝子中に、F129Lの単一アミノ酸置換が生じる遺伝子変異を獲得した菌株がQoI殺菌剤に対する耐性菌として問題となっている。従来からダイズさび病菌に使用されているQoI殺菌剤、即ち、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、メトミノストロビン等の効力は、当該耐性菌に対して実用上問題のあるレベルまで低下している(非特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sauter、"Modern Crop Protection Compounds"、第2巻、Wiley-VCH Verlag、2007年、p.457-495:第13.2章 Strobilurins and other complex III inhibitors
【非特許文献2】"Journal of Biological Chemistry"、1989年、第264巻、第24号、p.14543-14548
【非特許文献3】"Genetics"、1991年、第127巻、p.335-343
【非特許文献4】"Current Genetics"、2000年、第38巻、p.148-155
【非特許文献5】"Pest Management Science"、2014年、第70巻、第3号、p.378-388
【非特許文献6】"Pesq. agropec. bras." (Brasilia)、2016年、第51巻、第5号、p.407-421
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら事実に基づき本発明では、ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌の防除方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
〔1〕 式(I):
【化1】
〔式中、
R
1は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4アルキル基、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4アルコキシ基、又はハロゲン原子を表し、
E、Q、及びnの組合せは、
EがR
2-CH=CH-であり、
QがQ1で示される基であり、
nが0又は1である組合せ;
EがR
3-C≡C-であり、
QがQ1で示される基であり、
nが1である組合せ;
Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、
QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基であり、
nが0、又は1である組み合わせ;又は、
EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、
QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基であり、
nが1である組合せを表し、
Q1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、及びQ4で示される基は、次式で示される基(●はベンゼン環との結合部位を表す)を表し、
【化2】
R
2は、シクロプロピル基(該シクロプロピル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい)を表し、
R
3は、C2-C6鎖式炭化水素基(該C2-C6鎖式炭化水素基は、C3-C6シクロアルキル基又は1以上のハロゲン原子で置換されていてもよい)、又はC3-C6シクロアルキル基を表し、
R
4は、フェニル基(該フェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい)を表し、
R
5は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C3鎖式炭化水素基又は水素原子を表す。〕
で示される化合物(以下、本化合物と記す)の有効量をダイズ又はダイズを生育する土壌に施用することによる、ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌の防除方法。
〔2〕 〔1〕において、式(I)で示される化合物が、QがQ1で示される基である化合物である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 〔1〕において、式(I)で示される化合物が、EがR
2-CH=CH-であり、QがQ1で示される基であり、nが0又は1である化合物である、〔1〕に記載の方法。
〔4〕 〔1〕において、式(I)で示される化合物が、EがR
3-C≡C-であり、QがQ1で示される基であり、nが1である化合物である、〔1〕に記載の方法。
〔5〕 〔1〕において、式(I)で示される化合物が、Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基であり、nが0、又は1である化合物である、〔1〕に記載の方法。
〔6〕 〔1〕において、式(I)で示される化合物が、EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基であり、nが1である化合物である、〔1〕に記載の方法。
〔7〕 ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌を防除するための、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載する式(I)で示される化合物の使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌を防除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における置換基について説明する。
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を意味する。
置換基が2以上のハロゲン原子で置換されている場合、それらのハロゲン原子は各々同一でも異なっていてもよい。
本明細書における「CX-CY」との表記は、炭素原子数がX乃至Yであることを意味する。例えば「C1-C4」との表記は、炭素原子数が1乃至4であることを意味する。
鎖式炭化水素基とは、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-プロペニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基及び5-ヘキセニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル基、1-エチル-2-プロピニル基、2-ブチニル基、4-ペンチニル基及び5-ヘキシニル基が挙げられる。
【0010】
シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0011】
本化合物は、一つ以上の立体異性体が存在する場合がある。立体異性体としては、エナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何異性体などが挙げられる。本化合物には各立体異性体及び任意の比率の立体異性体混合物が含まれる。
【0012】
本明細書における用語について説明する。
ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌とは、ミトコンドリアチトクロームタンパク質をコードするミトコンドリアチトクロームb遺伝子中に変異を有し、該変異の結果としてF129Lのアミノ酸置換が起こったことにより、QoI殺菌剤に抵抗性を示すダイズさび病菌(学名:Phakopsora pachyrhizi)である。
【0013】
本化合物はQoI殺菌剤である。
【0014】
本化合物の態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【0015】
〔態様1〕本化合物において、式(II-I):
【化3】
〔式中、R
1及びR
2は、〔1〕で定義された通りの意味を表し、nは0又は1を表す。〕で示される化合物。
〔態様2〕本化合物において、式(II-II):
【化4】
〔式中、R
1及びR
3は、〔1〕で定義された通りの意味を表す。〕で示される化合物。
〔態様3〕本化合物において、式(II-III):
【化5】
〔式中、R
1は、〔1〕で定義された通りの意味を表し、Qは、Q1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基を表し、nは0又は1を表し、R
6は1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基を表す。〕で示される化合物。
〔態様4〕本化合物において、式(II-IV):
【化6】
〔式中、R
1、R
4、及びR
5は、〔1〕で定義された通りの意味を表し、Qは、Q1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基を表す。〕で示される化合物。
〔態様5〕本化合物において、QがQ1で示される基である化合物。
〔態様6〕本化合物において、QがQ2で示される基であり、E及びnの組合せが、Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、nが0、又は1である組み合わせ;又は、EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、nが1である組合せである化合物。
〔態様7〕本化合物において、QがQ3で示される基であり、E及びnの組合せが、Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、nが0、又は1である組み合わせ;又は、EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、nが1である組合せである化合物。
〔態様8〕本化合物において、QがQ4で示される基であり、E及びnの組合せが、Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、nが0、又は1である組み合わせ;又は、EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、nが1である組合せである化合物。
〔態様9〕本化合物において、E、Q、及びnの組合せが、EがR
2-CH=CH-であり、QがQ1で示される基であり、nが0又は1である組合せ;EがR
3-C≡C-であり、QがQ1で示される基であり、nが1である組合せ;Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、又はQ3で示される基であり、nが0、又は1である組み合わせ;又は、EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、又はQ3で示される基である化合物。
〔態様10〕本化合物において、E、Q、及びnの組合せが、EがR
2-CH=CH-であり、QがQ1で示される基であり、nが0又は1である組合せ;EがR
3-C≡C-であり、QがQ1で示される基であり、nが1である組合せ;Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、QがQ1で示される基又はQ2で示される基であり、nが0、又は1である組み合わせ;又は、EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、QがQ1で示される基又はQ2で示される基である化合物。
〔態様11〕本化合物において、E、Q、及びnの組合せが、Eが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、QがQ2で示される基又はQ3で示される基であり、nが0、又は1である組み合わせ;又は、EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、QがQ2で示される基又はQ3で示される基である化合物。
〔態様12〕本化合物において、nが0であり、E及びQの組合せが、EがR
2-CH=CH-であり、QがQ1で示される基である組合せ;又はEが[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基{該[(1-フェニル-1H-ピラゾール-3-イル)オキシ]メチル基におけるフェニル基は、1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4鎖式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい}であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、Q3で示される基、又はQ4で示される基である組合せである化合物。
〔態様13〕本化合物において、nが1である化合物。
〔態様14〕本化合物において、R
1が1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4アルキル基である化合物
〔態様15〕本化合物において、R
1が1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-C4アルコキシ基である化合物
〔態様16〕本化合物において、R
1がハロゲン原子である化合物。
〔態様17〕本化合物において、R
1がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フッ素原子、又は塩素原子である化合物
〔態様18〕本化合物において、QがQ1で示される基であり、nが0又は1であり、EがR
2-CH=CH-であり、R
2が、シクロプロピル基(該シクロプロピル基は、メチル基及びフッ素原子からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい)である化合物。
〔態様19〕本化合物において、QがQ1で示される基であり、nが0又は1であり、EがR
2-CH=CH-であり、R
2が、シクロプロピル基、2,2-ジフルオロシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、又は2,2-ジメチルシクロプロピル基である化合物。
〔態様20〕態様2において、R
3がC2-C6鎖式炭化水素基(該C2-C6鎖式炭化水素基は、C3-C6シクロアルキル基又は1以上のハロゲン原子で置換されていてもよい)である化合物。
〔態様21〕態様2において、R
3がC3-C6シクロアルキル基である化合物。
〔態様22〕態様2において、R
3がプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、3-クロロプロピル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロペンチル基である化合物。
〔態様23〕態様3において、R
6が1以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基である化合物。
〔態様24〕態様3において、R
6が1以上の塩素原子で置換されていてもよいフェニル基である化合物。
〔態様25〕態様3において、R
6が4-クロロフェニル基である化合物。
〔態様26〕態様4において、R
5がメチル基である化合物。
〔態様27〕態様4において、R
4がフェニル基(該フェニル基は、塩素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい)であり、R
5がメチル基である化合物。
〔態様28〕態様4において、R
4が4-クロロフェニル基、又は3-(トリフルオロメチル)フェニル基であり、R
5がメチル基である化合物。
〔態様29〕態様17において、E、Q、及びnの組合せが、
EがR
2-CH=CH-であり、QがQ1で示される基であり、nが0又は1である組合せ;
EがR
3-C≡C-であり、QがQ1で示される基であり、nが1である組合せ;
Eが{[1-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-3-イル]オキシ}メチル基であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、又はQ3で示される基であり、nが0、又は1である組み合わせ;又は、
EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、又はQ3で示される基であり、nが1である組合せであり、
R
2が、シクロプロピル基、2,2-ジフルオロシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、又は2,2-ジメチルシクロプロピル基であり、
R
3がプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、3-クロロプロピル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロペンチル基であり、
R
4が4-クロロフェニル基、又は3-(トリフルオロメチル)フェニル基であり、
R
5がメチル基である化合物。
〔態様30〕態様17において、EがR
2-CH=CH-であり、
R
2が、シクロプロピル基、2,2-ジフルオロシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、又は2,2-ジメチルシクロプロピル基であり、R
3がプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、3-クロロプロピル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロペンチル基であり、
QがQ1で示される基であり、
nが0又は1である化合物。
〔態様31〕態様17において、EがR
3-C≡C-であり、
R
3がプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、3-クロロプロピル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロペンチル基であり、
QがQ1で示される基であり、
nが1である化合物。
〔態様32〕態様17において、E、Q、及びnの組合せが、
EがR
2-CH=CH-であり、QがQ1で示される基であり、nが0又は1である組合せ;又は、
EがR
3-C≡C-であり、QがQ1で示される基であり、nが1である組合せであり、
R
2が、シクロプロピル基、2,2-ジフルオロシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、又は2,2-ジメチルシクロプロピル基であり、R
3がプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、3-クロロプロピル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロペンチル基であり、
R
3がプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、3-クロロプロピル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロペンチル基である化合物。
〔態様33〕態様17において、E、Q、及びnの組合せが、
Eが{[1-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-3-イル]オキシ}メチル基であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、又はQ3で示される基であり、nが0、又は1である組合せ;又は、
EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、QがQ1で示される基、Q2で示される基、又はQ3で示される基であり、nが1である組合せであり、
R
4が4-クロロフェニル基、又は3-(トリフルオロメチル)フェニル基であり、
R
5がメチル基である化合物。
〔態様34〕態様17において、Eが{[1-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-3-イル]オキシ}メチル基であり、
QがQ1で示される基、Q2で示される基、又はQ3で示される基であり、
nが0、又は1である化合物。
〔態様35〕態様17において、EがR
4R
5C=N-OCH
2-であり、
R
4が4-クロロフェニル基、又は3-(トリフルオロメチル)フェニル基であり、
R
5がメチル基であり、
QがQ1で示される基、Q2で示される基、又はQ3で示される基であり、
nが1である化合物。
【0016】
〔態様I-1〕本化合物において、式(II-I-1):
【化7】
で示される化合物。
〔態様I-2〕本化合物において、式(II-I-2):
【化8】
で示される化合物。
〔態様I-3〕本化合物において、式(II-I-3):
【化9】
で示される化合物。
〔態様I-4〕本化合物において、式(II-I-4):
【化10】
で示される化合物。
〔態様I-5〕本化合物において、式(II-I-5):
【化11】
で示される化合物。
〔態様I-6〕態様I-1~I-4のいずれかにおいて、R
1がメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フッ素原子又は塩素原子である化合物。
〔態様I-7〕態様I-1~I-4のいずれかにおいて、R
1がメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フッ素原子又は塩素原子であり、nが1である化合物。
〔態様I-8〕態様I-1~I-4のいずれかにおいて、R
1がメチル基、フッ素原子又は塩素原子である化合物。
〔態様I-9〕態様I-1~I-4のいずれかにおいて、R
1がメチル基、フッ素原子又は塩素原子であり、nが1である化合物。
〔態様I-10〕態様I-1~I-5のいずれかにおいて、R
2がシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基又は2,2-ジフルオロシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-11〕態様I-1~I-5のいずれかにおいて、R
2がシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-12〕態様I-6において、R
2がシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基又は2,2-ジフルオロシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-13〕態様I-6において、R
2がシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-14〕態様I-7において、R
2がシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基又は2,2-ジフルオロシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-15〕態様I-7において、R
2がシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-16〕態様I-8において、R
2がシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基又は2,2-ジフルオロシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-17〕態様I-8において、R
2がシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-18〕態様I-9において、R
2がシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基又は2,2-ジフルオロシクロプロピル基である化合物。
〔態様I-19〕態様I-9において、R
2がシクロプロピル基である化合物。
【0017】
〔態様II-1〕本化合物において、式(II-II-1):
【化12】
で示される化合物。
〔態様II-2〕態様II-1において、R
1がメチル基、プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フッ素原子又は塩素原子である化合物。
〔態様II-3〕態様II-1において、R
1がメチル基、メトキシ基又は塩素原子である化合物。
〔態様II-4〕態様II-1~II-3のいずれかにおいて、R
2がプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチルメチル基又はシクロペンチル基である化合物。
〔態様II-5〕態様II-1~II-3のいずれかにおいて、R
2がブチル基又はイソブチル基である化合物。
【0018】
〔態様III-1〕本化合物において、式(II-III-1):
【化13】
で示される化合物。
〔態様III-2〕態様III-1において、R
1がメチル基であり、nが0又は1である化合物。
〔態様III-3〕態様III-1において、R
1がメチル基であり、nが1である化合物。
〔態様III-4〕態様III-1において、nが0である化合物。
〔態様III-5〕態様III-1において、R
6が4-クロロフェニル基である化合物。
〔態様III-6〕態様III-2において、R
6が4-クロロフェニル基である化合物。
〔態様III-7〕態様III-3において、R
6が4-クロロフェニル基である化合物。
〔態様III-8〕態様III-4において、R
6が4-クロロフェニル基である化合物。
〔態様III-9〕態様III-1~III-8のいずれかにおいて、QがQ1で示される基、Q2で示される基又はQ3で示される基である化合物。
〔態様III-10〕態様III-1~III-8のいずれかにおいて、QがQ1で示される基又はQ2で示される基である化合物。
〔態様III-11〕態様III-1~III-8のいずれかにおいて、QがQ2で示される基又はQ3で示される基である化合物。
〔態様III-12〕態様III-1~III-8のいずれかにおいて、QがQ1で示される基である化合物。
〔態様III-13〕態様III-1~III-8のいずれかにおいて、QがQ2で示される基である化合物。
〔態様III-14〕態様III-1~III-8のいずれかにおいて、QがQ3で示される基である化合物。
【0019】
〔態様IV-1〕本化合物において、式(II-IV-1):
【化14】
で示される化合物。
〔態様IV-2〕態様IV-1において、R
1がメチル基である化合物。
〔態様IV-3〕態様IV-1において、R
4が塩素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基である化合物。
〔態様IV-4〕態様IV-3において、R
4が塩素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基である化合物。
〔態様IV-5〕態様IV-1~IV-4のいずれかにおいて、Qが!1で示される基である化合物。
【0020】
次に、本化合物の製造法について説明する。
【0021】
本化合物は、国際公開第2019/189286号、国際公開第2019/189287号、米国特許第5965613号、Scientific Reports, 2018, 8(1), 1.、Molecules, 2014, 19, 8140.、国際公開第2001/001779号等に記載の方法に準じて製造することができる。また、以下の製造法により製造することもできる。
【0022】
製造法A
式(I-Q1)で示される化合物(以下、化合物(I-Q1)と記す)は、式(M-1)で示される化合物(以下、化合物(M-1)と記す)と式(R-1)で示される化合物(以下、化合物(R-1)と記す)とを塩基の存在下で反応させて生成物(以下、粗生成物(1)と記す)を得る工程(以下、工程(1)と記す)、及び粗生成物(1)と式(R-2)で示される化合物(以下、化合物(R-2)と記す)とを塩基の存在下で反応させる工程(以下、工程(2)と記す)により製造することができる。
【化15】
[式中、R
51はC1-C4アルキル基を表し、X
51はヨウ素原子、メトキシスルホニル基、メシルオキシ基、又はトシルオキシ基を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。]
【0023】
工程(1)は、通常溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル(以下、エーテル類と記す);ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す)、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記す)等の非プロトン性極性溶媒(以下、非プロトン性極性溶媒と記す)、及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
反応に用いられる塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物(以下、アルカリ金属水素化物類と記す)が挙げられる。
反応には、化合物(M-1)1モルに対して、化合物(R-1)が通常1モル~10モルの割合、塩基が通常0.5モル~5モルの割合で用いられる。
反応時間は、通常5分間~72時間の範囲である。反応温度は、通常-20℃~100℃の範囲である。
反応終了後は、反応混合物に水を加え、有機溶媒で抽出し、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより粗生成物(1)を得ることができる。
化合物(M-1)、及び化合物(R-1)は、市販の化合物であるか、米国特許第5962436号、国際公開第2019/189286号、国際公開第2019/189287号等に記載の方法に準じて製造することができる。
【0024】
工程(2)は、通常溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、エーテル類;非プロトン性極性溶媒、及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
反応に用いられる塩基としては、例えば、アルカリ金属水素化物類;及び、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩(以下、アルカリ金属炭酸塩類と記す)が挙げられる。
反応には、工程(1)で用いた化合物(M-1)1モルに対して、化合物(R-2)が通常1モル~10モルの割合、塩基が通常1モル~5モルの割合で用いられる。
反応時間は、通常5分間~72時間の範囲である。反応温度は、通常-20℃~100℃の範囲である。
反応終了後は、反応混合物に水を加え、有機溶媒で抽出し、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより、化合物(I-Q1)を単離することができる。
【0025】
製造法B
式(II-I)で示される化合物(以下、化合物(II-I)と記す)は、式(M-2)で示される化合物(以下、化合物(M-2)と記す)と式(R-3)で示される化合物(以下、化合物(R-3)と記す)とを、触媒及び塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
【化16】
[式中、X
52は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。]
反応は、通常溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素(以下、炭化水素類と記す);エーテル類;クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素(以下、ハロゲン化炭化水素類と記す);非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル等のエステル(以下、エステル類と記す)、及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
反応に用いられる塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩類(以下、アルカリ金属炭酸塩類と記す);リン酸三カリウム等のアルカリ金属リン酸塩;及び酢酸ナトリウム等の酢酸塩等が挙げられる。
反応に用いられる触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物等のパラジウム触媒が挙げられる。
反応には、化合物(M-2)1モルに対して、化合物(R-3)が通常1モル~10モルの割合、触媒が通常0.0001モル~1モルの割合、塩基が通常0.1モル~5モルの割合で用いられる。
反応時間は、通常5分間~72時間の範囲である。反応温度は、通常0℃~150℃の範囲である。
反応終了後は、反応混合物に水を加え、有機溶媒で抽出し、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより、化合物(II-I)を単離することができる。
化合物(M-2)、及び化合物(R-3)は、市販の化合物であるか、欧州特許第307101号等に記載の方法に準じて製造することができる。
【0026】
製造法C
式(II-II)で示される化合物(以下、化合物(II-II)と記す)は、式(M-3)で示される化合物(以下、化合物(M-3)と記す)と式(R-4)で示される化合物(以下、化合物(R-4)と記す)とを、パラジウム触媒、銅触媒及び塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
【化17】
[式中、X
53は臭素原子又はヨウ素原子を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。]
反応は、通常溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、炭化水素類;エーテル類;ハロゲン化炭化水素類;非プロトン性極性溶媒;エステル類、及び2種類以上のこれらの混合物が挙げられる。
反応に用いられる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン等のアルキルアミンが挙げられる。
反応に用いられるパラジウム触媒としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド等が挙げられる。
反応に用いられる銅触媒としては、例えば、ヨウ化銅(I)が挙げられる。
反応には、化合物(M-3)1モルに対して、化合物(R-4)が通常1モル~5モルの割合、塩基が通常1モル~10モルの割合で用いられる。
反応時間は、通常5分間~72時間の範囲である。反応温度は、通常-20℃~100℃の範囲である。
反応終了後は、反応混合物に水を加え、有機溶媒で抽出し、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより、化合物(II-II)を単離することができる。
化合物(R-4)は、市販の化合物であるか、欧州特許第307101号等に記載の方法に準じて製造することができる。
【0027】
製造法D
式(II-III)で示される化合物(以下、化合物(II-III)と記す)は、式(M-4)で示される化合物(以下、化合物(M-4)と記す)と式(M-5)で示される化合物(以下、化合物(M-5)と記す)とを塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
【化18】
〔式中、記号は前記と同じ意味を表す。〕
反応は、通常溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、炭化水素類;エーテル類;アミド類;エステル類;スルホキシド類;ケトン類;ニトリル類;水及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
反応に用いられる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;アルカリ金属炭酸塩類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;及び水素化ナトリウムが挙げられる。
反応には化合物(M-4)1モルに対して、化合物(M-5)が通常1~10モルの割合、塩基が通常1~10モルの割合で用いられる。
反応温度は通常0~150℃の範囲である。反応時間は通常0.1~24時間の範囲である。
反応は、必要に応じて、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム等を加えて行ってもよく、これらの化合物は通常、化合物(M-4)1モルに対して、0.001~1.2モルの割合で用いられる。
反応終了後は、反応混合物を有機溶媒で抽出し、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより、化合物(II-III)を単離することができる。
化合物(M-4)及び化合物(M-5)は、公知であるか、公知の方法に準じて製造することができる。
【0028】
製造法E
式(II-IV)で示される化合物(以下、化合物(II-IV)と記す)は、式(M-6)で示される化合物(以下、化合物(M-6)と記す)と化合物(M-5)とを塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
【化19】
〔式中、記号は前記と同じ意味を表す。〕
反応は、化合物(M-4)の代わりに化合物(M-6)を用い、製造法Dに準じて実施することができる。
化合物(M-6)は、市販の化合物であるか、公知の方法に準じて製造することができる。
【0029】
本化合物は、通常、本化合物と、固体担体、液体担体、オイル、及び/又は界面活性剤等とを混合し、必要に応じてその他の製剤用補助剤を添加して、乳剤、油剤、粉剤、粒剤、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、ドライフロアブル剤、マイクロカプセル剤等に製剤化して用いられる。これらの製剤には本化合物が重量比で通常0.1~99%、好ましくは0.2~90%含有される。
【0030】
固体担体としては、例えば、粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、酸性白土等)、乾式シリカ、湿式シリカ、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)等の微粉末及び粒状物等、並びに合成樹脂(ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン-6、ナイロン-11、ナイロン-66等のナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-プロピレン共重合体等)が挙げられる。
【0031】
液体担体としては、例えば水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノキシエタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等)、アミド類(DMF、N,N-ジメチルアセトアミド等)、スルホキシド類(DMSO等)、炭酸プロピレン及び植物油(大豆油、綿実油等)が挙げられる。
【0032】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。具体的には、Nimbus(登録商標)、Assist(登録商標)、Aureo(登録商標)、Iharol(登録商標)、Silwet L-77(登録商標)、BreakThru(登録商標)、SundanceII(登録商標)、Induce(登録商標)、Penetrator(登録商標)、AgriDex(登録商標)、Lutensol A8(登録商標)、NP-7(登録商標)、Triton(登録商標)、Nufilm(登録商標)、Emulgator NP7(登録商標)、Emulad(登録商標)、TRITON X 45(登録商標)、AGRAL 90(登録商標)、AGROTIN(登録商標)、ARPON(登録商標)、EnSpray N(登録商標)、及びBANOLE(登録商標)等が挙げられる。
【0033】
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤、着色剤及び安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)、酸性リン酸イソプロピル、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、BHA(2-tert-ブチル-4-メトキシフェノールと3-tert-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
【0034】
本化合物を施用する方法としては、例えばダイズの茎葉に散布する方法、種子に処理する方法及びダイズを生育する土壌に施用する方法が挙げられる。
【0035】
本化合物の施用量は、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、対象病害、対象作物等によっても異なるが、ダイズの茎葉に散布する場合又はダイズを生育する土壌に施用する場合は、1000m2あたり、通常1~500g、好ましくは2~200gである。種子に処理する場合は、種子1Kgに対して、本化合物の量が、通常0.001~100g、好ましくは0.01~50gの範囲で施用される。乳剤、水和剤、懸濁剤等は通常水で希釈して施用されるが、その場合の希釈後の本化合物の濃度は、通常0.0005~2重量%、好ましくは0.005~2重量%である。粉剤、粒剤等は通常希釈することなくそのまま施用される。
【0036】
前記ダイズは、自然交配で作出しうるダイズ、突然変異により発生しうるダイズ、F1ハイブリッドダイズ、トランスジェニックダイズ(遺伝子組換えダイズとも言う)であってもよい。これらのダイズは、一般に、除草剤に対する耐性、有害生物に対する毒性物質の蓄積(害虫抵抗性とも言う)、病害に対する感性抑制(病害抵抗性とも言う)、収量ポテンシャルの増加、生物的及び非生物的ストレス因子に対する抵抗性の向上、生産物の品質改変(例えば、成分の含有量増減、組成の変化、又は保存性若しくは加工性の向上)等の特性を有する。上記のダイズを作出するための技術としては、例えば、従来型の品種改良技術;遺伝子組換え技術;ゲノム育種技術;新育種技術(new breeding techniques);及びゲノム編集技術が挙げられる。
【0037】
除草剤に対する耐性を有するダイズ(除草剤耐性ダイズ)としては、例えば、2,4-D又はジカンバ等のオーキシン型除草剤耐性ダイズ;グリホシネート耐性ダイズ、グリホサート耐性ダイズ、イソキサフルトール耐性ダイズ、メソトリオン等の4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ阻害型除草剤耐性ダイズ;イミダゾリノン系除草剤、スルホニルウレア系除草剤等のアセト乳酸合成酵素(ALS)阻害型除草剤耐性ダイズ;及びフルミオキサジン等のプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ阻害型除草剤耐性ダイズが挙げられる。
遺伝子組換え技術により除草剤耐性が付与されたダイズは、外来遺伝子(例えば、微生物等の他の生物の遺伝子)を導入することにより得ることができる。例えば、2,4-Dに対する耐性は、Delftia acidovorans由来の遺伝子「aad-12」;ジカンバに対する耐性は、Stenotrophomonas maltophilia strain DI-6由来の遺伝子「dmo」;グリホシネートに対する耐性は、Streptomyces hygroscopicus由来の遺伝子「bar」又はStreptomyes viridochromogenes由来の遺伝子「pat」;グリホサートに対する耐性は、Zea mays由来の遺伝子「2mepsps」、Agrobacterium tumefaciens strain CP4由来の遺伝子「CP4 epsps」、又はBacillus licheniformis由来の遺伝子「gat4601」;イソキサフルトールに対する耐性は、Pseudomonas fluorescens strain A32由来の遺伝子「hppdPF W336」;メソトリオンに対する耐性は、Oat (Avena sativa)由来の遺伝子「avhppd-03」;イミダゾリノン系除草剤に対する耐性は、Arabidopsis thaliana由来の遺伝子「csr1-2」;スルホニルウレア系除草剤に対する耐性は、Glycine max由来の遺伝子「gm-hra」を導入することにより得ることができる。
従来型の品種改良技術又はゲノム育種技術により除草剤耐性が付与されたダイズとしては、例えば、チフェンスルフロンメチル等のスルホニルウレア系ALS阻害型除草剤耐性を有するダイズ「STS(登録商標) soybean」が挙げられる。
新育種技術により除草剤耐性が付与されたダイズとしては、例えば、グリホサート耐性を有するRoundup Ready(登録商標)ダイズを台木として用いて、非トランスジェニックダイズ穂木にグリホサート耐性を付与したダイズが挙げられる(Weed Technology, 2013, 27, 412.参照)。
【0038】
害虫抵抗性ダイズとしては、例えば鱗翅目害虫(例えば、Pseuoplusia includes、Helicoverpa zea、Spodoptera frugiperda)抵抗性ダイズ、半翅目害虫(例えば、Aphis glycines)抵抗性ダイズ及び線虫(例えば、Heterodera glycines、Meloidogyne incognita)抵抗性ダイズが挙げられる。
遺伝子組換え技術により害虫抵抗性が付与されたダイズは、外来遺伝子(例えば、Bacillus thuringiensis由来の殺虫性タンパク質であるδ-endotoxinをコードする遺伝子)を導入することにより得ることができる。例えば、鱗翅目害虫に対する耐性は、Bacillus thuringiensis subsp. Kurstaki strain HD73由来の遺伝子「cry1Ac」、Bacillus thuringiensis var. aizawai由来の遺伝子「cry1F」、Bacillus thuringiensis subsp. kumamotoensis由来の遺伝子「cry1A.105」、Bacillus thuringiensis subsp. kumamotoensis由来の遺伝子「cry2Ab2」を導入することにより得ることができる。
従来型の品種改良技術又はゲノム育種技術により害虫抵抗性が付与されたダイズとしては、例えば、アブラムシ抵抗性遺伝子である「Rag1(Resistance to Aphis glycines 1)」又は「Rag2(Resistance to Aphis glycines 2)」遺伝子を有し、ダイズアブラムシ(Aphis glycines)に抵抗性を示すダイズ(J. Econ. Entomol., 2015, 108, 326.参照);ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)に抵抗性を示すダイズ(Phytopathology, 2016, 106, 1444. 参照);及びハスモンヨトウ(Spodoptera litura)に抵抗性を示すダイズ「フクミノリ」が挙げられる。
【0039】
病害抵抗性が付与されたダイズとしては、例えば、従来型の品種改良技術又は遺伝子組み換え技術によってダイズさび病抵抗性が付与された品種が挙げられる。よく使用される抵抗性遺伝子の例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、Rpp1、Rpp2、Rpp3、Rpp4、Rpp5、Rpp6がある。これらの遺伝子は単独でダイズに挿入されていてもよいが、複数組み合わせて挿入されていてもよい。これらの遺伝子については、以下の学術文献等に記載されている。Crop Science, 2007, 47, 837.; Theoretical and Applied Genetics, 2008, 117, 57.; Theoretical and Applied Genetics, 117, 545.; Crop Science, 2009, 49, 783.; Theoretical and Applied Genetics, 2009, 119, 271.; Theoretical and Applied Genetics, 2010, 121, 1023.; Theoretical and Applied Genetics, 2012, 125, 133.。
ゲノム編集技術により病害抵抗性が付与されたダイズは、例えば、CRISPR-Cas9を用いて、RXLR エフェクター遺伝子(Avr4/6)の破壊により、Phytophthora sojaeによって引き起こされるダイズ茎疫病に抵抗性を示すダイズ(Mol. Plant. Pathol., 2016, 17, 127.参照)が挙げられる。
また、ダイズさび病以外のダイズ病害(例えば、斑点病、褐色輪紋病、茎疫病、及び突然死症候群)に対して抵抗性を付与されたダイズがある。
【0040】
遺伝子組換え技術により生産物の品質が改変されたダイズとしては、例えば、脂肪酸の不飽和化酵素であるGlycine max 由来のω-6デサチュラーゼの部分遺伝子「gm-fad2-1」を導入することによって同遺伝子発現を抑制し、オレイン酸含量が増加したダイズ「Plenish(商標)」又は、「Treus(商標)」;Glycine max由来のアシル-アシル キャリア・プロテイン・チオエステラーゼ遺伝子「fatb1-A」の二重鎖RNAを生成する遺伝子と、Glycine max由来のδ-12デサチュラーゼ遺伝子「fad2-1A」の二重鎖RNAを生成する遺伝子を導入することによって飽和脂肪酸含量が低下したダイズ「Vistive Gold(商標)」;Primula juliae由来のδ-6デサチュラーゼ遺伝子「Pj.D6D」及びNeurospora crassa由来のδ-12デサチュラーゼ遺伝子「Nc.Fad3」を導入することによってω3脂肪酸の1つであるステアリドン酸が産生されたダイズ;油含有量が改変されたダイズ;アレルゲン含有量が低下したダイズ(米国特許第6864362号参照);リジン含有量が増加したダイズ(Bio/Technology, 1995, 13, 577.参照);メチオニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンの組成が改変されたダイズ;硫黄アミノ酸含有量が増加したダイズ(国際公開1997/041239号参照);フェノール性化合物含有量が改変されたダイズ(米国出願公開2008/235829号参照);ビタミンE含有量が増加したダイズ(国際公開第2004/058934号参照)がある。
ゲノム育種技術により生産物の品質が改変されたダイズとしては、例えば、アレルゲン含有量が低下したダイズ「ゆめみのり」がある。
植物の生長や収量に関する形質が改変されたダイズとしては、例えば、シロイヌナズナ由来の日周性を制御する転写因子をコードする遺伝子「bbx32」を導入することで植物の生長が強化され、結果として高収量が見込めるダイズが挙げられる。
【0041】
その他の特性を有するダイズとしては、例えば、リンの取り込みが改善されたダイズ;稔性形質が付与されたダイズ;乾燥に対する耐性が付与されたダイズ;低温に対する耐性が付与されたダイズ;高塩分に対する耐性が付与されたダイズ;鉄欠乏クロロシス(iron chlorosis)が改善されたダイズ;クロライド感受性(chloride sensitivity)が改変されたダイズが挙げられる。
【0042】
前記ダイズには、先に述べたような除草剤耐性、害虫抵抗性、病害抵抗性、非生物的ストレス耐性、生長や収量に関する形質、栄養取り込みに関する形質、生産物の品質に関する形質、稔性形質等が2種以上付与されたダイズも含まれる。例えば、グリホサート耐性;グリホシネート耐性;ダイズ斑点病(frogeye leaf spot)、ダイズ突然死症候群(Sudden Death Syndrome)、ダイズ茎かいよう病(southern stem canker)、ダイズ茎疫病(Phytophthora root rot)、サツマイモネコブセンチュウ(southern root-knot nematode)、ダイズ白絹病(Sclerotinia white mold)、ダイズ落葉病(brown stem rot)、ダイズシストセンチュウ(soybean cyst nematode)に対する抵抗性;鉄欠乏クロロシス(iron chlorosis)の改善、及びクロライド感受性(chloride sensitivity)が改変されたダイズ「Credenz(登録商標)soybean」がある。
【0043】
以下、市販あるいは開発されているダイズを列挙する。以下、[Event Name, Event code, Tread name]と記す。また、NAは、情報がない又は入手不可能な情報を意味する。これらのダイズの多くは、国際アグリバイオ事業団(INTERNATINAL SERVICE for the ACQUISITION of AGRI-BIOTECH APPLICATIONS, ISAAA)のウェブサイト(http://www.isaaa.org/)中の登録データベース(GM APPROVAL DATABASE)に収載されている。
[260-05(G94-1, G94-19, G168), DD-026005-3, NA], [A2704-12, ACS-GM005-3, Liberty Link(商標)soybean], [A2704-21, ACS-GM004-2, Liberty Link(商標)soybean], [A5547-127, ACS-GM006-4, Liberty Link(商標)soybean], [A5547-35, ACS-GM008-6, Liberty Link(商標)soybean], [CV127, BPS-CV127-9, Cultivance], [DAS44406-6, DAS-44406-6, NA], [DAS68416-4, DAS-68416-4, Enlist(商標)Soybean], [DAS68416-4xMON89788, DAS-68416-4xMON-89788-1, NA], [DAS81419, DAS-81419-2, NA], [DAS81419xDAS44406-6, DAS-81419-2xDAS-44406-6, NA], [DP305423, DP-305423-1, Treus(商標)又はPlenish(商標)], [DP305423xGTS40-3-2, DP-305423-1xMON-04032-6, NA], [DP356043, DP-356043-5, Optimum GAT(商標)], [FG72(FG072-2,FG072-3), MST-FG072-3, NA], [FG72xA5547-127, MST-FG072-3xACS-GM006-4, NA], [GTS40-3-2(40-3-2), MON-04032-6, Roundup Ready(商標)soybean], [GU262, ACS-GM003-1, Liberty Link(商標)soybean], [IND-00410-5, IND-00410-5, Verdeca HB4 Soybean], [MON87701, MON-87701-2, NA], [MON87701xMON89788, MON-87701-2xMON-89788-1, Intacta(商標)Roundup Ready(商標)2 Pro], [MON87705, MON-87705-6, Vistive Gold(商標)], [MON87705xMON87708, MON-87705-6xMON-87708-9, NA], [MON87705xMON87708xMON89788, MON-87705-6xMON-87708-9xMON-89788-1, NA], [MON87705xMON89788, MON-87705-6xMON-89788-1, NA], [MON87708, MON-87708-9, Genuity(登録商標)Roundup Ready(商標)2 Xtend(商標)], [MON87708xMON89788, MON-87708-9xMON-89788-1, Roundup Ready 2 Xtend(登録商標)], [MON87712, MON-87712-4, NA], [MON87751, MON-87751-7, NA], [MON87751xMON87701xMON87708xMON89788, MON-87751-7xMON-87701-2xMON87708xMON89788, NA], [MON87769, MON87769-7, NA], [, MON87769xMON89788, MON-87769-7xMON-89788-1, NA], [MON89788, MON-89788-1, Genuity(登録商標)Roundup Ready 2 Yield(商標)], [SYHT0H2, SYN-000H2-5, Herbicide-tolerant Soybean line], [W62, ACS-GM002-9, Liberty Link(商標)soybean], [W98, ACS-GM001-8, Liberty Link(商標)soybean], [OT96-15, OT96-15, NA], [NA, NA, STS(登録商標) soybean」, [NA, NA, Credenz(登録商標) soybean], [NA, NA, Enlist E3(商標)], [NA, NA, Enlist(商標) Roundup Ready 2 Yield(登録商標)], [NA, NA, フクミノリ], [NA, NA, ゆめみのり], [DP305423 x MOV87708, DP-305423-1 x MON-87708-9, NA], [DP305423 x MOV87708 x MON89788, DP-305423-1 x MON-87708-9 x MON-89788-1, NA], [DP305423 x MON89788, DP-305423-1 x MON-89788-1, NA]
【0044】
本化合物をダイズに処理することにより、苗立ち率向上、健全葉数増加、草丈増、植物体重量増加、葉面積増加、種子数又は重量の増加、着花数又は着果数の増加、根部生長の増加等の、植物の成長を促進する効果が得られる。また、本化合物をダイズに処理することにより、高温ストレスもしくは低温ストレス等の温度ストレス、乾燥ストレスもしくは過湿ストレス等の水分ストレス、又は塩ストレス等の非生物的ストレスに対する耐性が向上される。
【実施例0045】
以下に本化合物の例、製剤例、試験例及び比較試験例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
本明細書中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表し、i-Prはイソプロピル基を表し、Buはブチル基を表し、s-Buはsec-ブチル基を表し、i-Buはイソブチル基を表し、Penはペンチル基を表し、i-Penはイソペンチル基を表し、Hexenylは1-ヘキセニル基を表し、c-Prはシクロプロピル基を表し、c-Penはシクロペンチル基を表し、OMeはメトキシ基を表し、Phはフェニル基を表し、c-Pen-CH2-はシクロペンチルメチル基を表す。c-Pr、及びPhが置換基を有する場合は、置換基を記号の前に置換位置とともに記す。例えば、2,2-F2-c-Prは、2,2-ジフルオロシクロプロピル基を表し、4-Cl-Phは4-クロロフェニル基を表す。
【0046】
本化合物の例を以下に示す。
【0047】
式(II-I):
【化20】
で示される化合物において、R
1、R
2及びnが[表I-1]~[表I-5]に記載のいずれかの組合せである化合物。(以下、化合物群TX1と記す)。なお、R
1の置換位置は、式(II-I)に記載の位置を表す。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
式(II-II):
【化21】
で示される化合物において、R
1及びR
3が[表II-6]~[表II-9]に記載のいずれかの組合せである化合物。(以下、化合物群TX2と記す)。なお、R
1の置換位置は、式(II-II)に記載の位置を表す。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
式(II-III):
【化22】
で示される化合物において、R
1、R
6、n及びQが[表III-10]~[表III-15]に記載のいずれかの組み合わせである化合物。(以下、化合物群TX3と記す)。なお、R
1の置換位置は、式(II-III)に記載の位置を表す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
式(II-IV):
【化23】
で示される化合物において、R
5がメチル基であり、R
1、R
4及びQが[表IV-16]~[表IV-21]に記載のいずれかの組合せである化合物。(以下、化合物群TX4と記す)。なお、R
1の置換位置は、式(II-IV)に記載の位置を表す。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
次に製剤例を示す。なお、部は重量部を表す。また、本化合物Sは、本化合物1~493を表す。
【0073】
製剤例1
本化合物Sのいずれか1種50部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸マグネシウム2部及び湿式シリカ45部をよく粉砕混合することにより、製剤を得る。
【0074】
製剤例2
本化合物Sのいずれか1種20部とソルビタントリオレエート1.5部とを、ポリビニルアルコール2部を含む水溶液28.5部と混合し、湿式粉砕法で微粉砕した後、この中に、キサンタンガム0.05部及びアルミニウムマグネシウムシリケ-ト0.1部を含む水溶液40部を加え、さらにプロピレングリコール10部を加えて攪拌混合し、製剤を得る。
【0075】
製剤例3
本化合物Sのいずれか1種2部、カオリンクレー88部及びタルク10部をよく粉砕混合することにより、製剤を得る。
【0076】
製剤例4
本化合物Sのいずれか1種5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル14部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部及びキシレン75部をよく混合することにより、製剤を得る。
【0077】
製剤例5
本化合物Sのいずれか1種2部、湿式シリカ1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト30部及びカオリンクレー65部をよく粉砕混合した後、水を加えてよく練り合せ、造粒乾燥することにより、製剤を得る。
【0078】
製剤例6
ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩及び湿式シリカの混合物(重量比1:1)35部と、本化合物Sのいずれか1化合物20部と、水45部とを十分に混合し、製剤を得る。
【0079】
次に、試験例を示す。
【0080】
試験例1
ダイズ(品種:黒千石)の本葉を直径1cmに切り抜きリーフディスクを作製した。24ウェルマイクロプレートに寒天培地(寒天濃度1.2%)を1mLずつ分注した後、各ウェルの上に、当該リーフディスクを1枚ずつ置いた。0.5μLのソルポール(登録商標)1200KX、DMSO4.5μL及びキシレン5μLの混合物に、供試化合物を10000ppm含有するDMSO溶液20μLを加えて混合した。得られた混合物をイオン交換水で希釈して供試化合物を所定濃度含有する散布液を調製した。この散布液を、リーフディスク1枚につき10μL散布した。1日後に、ミトコンドリアチトクロームbタンパク質にF129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌(Phakopsora pachyrhizi)の胞子の水懸濁液(1.0×105/mL)を、リーフディスク上に噴霧接種した。接種後、人工気象器内(6時間点灯、18時間消灯、温度23℃、湿度60%)に置いた。1日後、リーフディスクの表面の水滴が無くなるまで風乾させ、再び人工気象器内に12日間置いた。その後、ダイズさび病の病斑面積を調査した。その結果、所定濃度を50ppmとし、供試化合物として本化合物1、2、3、5、11、26、31、36、38、46、51、56、59、61、66、96、128、130、154、166、178、186、200、202、203、205、207、210、214、216、221、222、250、258、294、322、391、又は392のいずれか1つを処理したリーフディスクの病斑面積は、いずれも無処理のリーフディスクの病斑面積の30%以下であった。なお、ここで無処理とは、供試化合物を含む散布液をリーフディスクへ散布しなかったことを意味する。
【0081】
比較試験例1
供試化合物として、本化合物3、5、11、59、200、202、207、214、222、294若しくは391、又はアゾキシストロビン、ジモキシストロビン若しくはメトミノストロビンを用い、所定濃度を50ppm、又は12.5ppmとし、試験例1に従って試験を行った。その結果を[表A]及び[表B]に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
上記結果は、各種の市販のQoI殺菌剤と比較して、本化合物が、F129Lのアミノ酸置換を有するダイズさび病菌に対して優れた活性を有することを示すものである。