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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025578
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20230215BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C23C16/44 J
H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130911
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA18
4K030EA12
4K030FA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030KA22
4K030KA30
4K030KA45
4K030KA46
5F045AA06
5F045AB39
5F045AC00
5F045AC11
5F045AC14
5F045AC15
5F045AD04
5F045AE21
5F045BB08
5F045BB15
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EB03
5F045EB06
5F045EB09
5F045EC09
5F045EE02
5F045EE04
5F045EE12
5F045EE20
5F045EF05
5F045EG02
5F045EG08
5F045EH05
5F045EH14
5F045EJ03
5F045EK07
5F045EM09
5F045EM10
5F045EN04
(57)【要約】
【課題】排気経路に付着するデポを抑制する。
【解決手段】成膜装置は、ステージと、第1の容器と、ガス供給部と、多孔質部材と、ヒータとを備える。ステージには、基板が載せられる。第1の容器は、ステージを収容する。ガス供給部は、第1の容器内に2種類のモノマーのガスを供給することにより、ステージ上に載せられた基板上に重合体の膜を形成する。多孔質部材は、基板の上方の空間である処理空間の外側に配置され、第1の容器内から排気される2種類のモノマーのガスによって形成される重合体を取り込む。ヒータは、基板上に重合体の膜が形成される際に、多孔質部材を第1の温度に加熱する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載せられるステージと、
前記ステージを収容する第1の容器と、
前記第1の容器内に2種類のモノマーのガスを供給することにより、前記ステージ上に載せられた前記基板上に重合体の膜を形成するガス供給部と、
前記基板の上方の空間である処理空間の外側に配置され、前記第1の容器内から排気される2種類のモノマーのガスによって形成される重合体を取り込む多孔質部材と、
前記基板上に重合体の膜が形成される際に、前記多孔質部材を第1の温度に加熱するヒータと
を備える成膜装置。
【請求項2】
前記多孔質部材は、前記第1の容器内のステージと、前記第1の容器に形成された排気口との間に設けられている請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記ガス供給部は、前記ステージ上に前記基板が載せられていないときに前記第1の容器内にクリーニングガスを供給し、
前記成膜装置は、前記ステージ上に前記基板が載せられていないときに前記第1の容器内にRF(Radio Frequency)電力を供給することにより前記クリーニングガスをプラズマ化し、プラズマに含まれる活性種により前記多孔質部材に取り込まれた重合体の膜を除去するRF電源をさらに備える請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記多孔質部材は、前記第1の容器内のガスを排気する排気管内に設けられている請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記ガス供給部は、前記多孔質部材が設けられた前記排気管内に活性種を供給するためのプラズマを生成する第2の容器内にクリーニングガスを供給し、
前記成膜装置は、前記第2の容器内にRF電力を供給することにより前記クリーニングガスをプラズマ化し、プラズマに含まれる活性種を前記多孔質部材が設けられた前記排気管内に供給することで、前記活性種により前記多孔質部材に取り込まれた重合体の膜を除去するRF電源をさらに備える請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記クリーニングガスは、酸素原子またはフッ素原子を含む分子を有するガスである請求項3または5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記ヒータは、前記クリーニングガスが供給されている間、前記多孔質部材を前記第1の温度よりも高い第2の温度に加熱する請求項3、5または6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第1の温度は、前記モノマーの吸着時間が0.00001ミリ秒以上かつ0.01ミリ秒以下の範囲内の時間となる温度である請求項1から7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1の温度は、130℃~170℃の範囲内の温度である請求項1から7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記多孔質部材の表面積は、50,000,000cm2以上である請求項1から9のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記ガス供給部は、
前記第1の容器内に2種類のモノマーのガスとして、アミンのガスおよびイソシアネートのガスを供給することにより、前記ステージ上に載せられた前記基板上に尿素結合を有する重合体の膜を形成する請求項1から10のいずれか一項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、尿素結合を有する重合体を、基板に形成された空隙内に埋め込み、基板上に酸化膜を形成した後に、重合体を解重合させる技術が開示されている。解重合した重合体は、酸化膜を介して脱離することにより、酸化膜の下層に空隙が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-207909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、排気経路に付着するデポを抑制することができる成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、成膜装置であって、ステージと、第1の容器と、ガス供給部と、多孔質部材と、ヒータとを備える。ステージには、基板が載せられる。第1の容器は、ステージを収容する。ガス供給部は、第1の容器内に2種類のモノマーのガスを供給することにより、ステージ上に載せられた基板上に重合体の膜を形成する。多孔質部材は、基板の上方の空間である処理空間の外側に配置され、第1の容器内から排気される2種類のモノマーのガスによって形成される重合体を取り込む。ヒータは、基板上に重合体の膜が形成される際に、多孔質部材を第1の温度に加熱する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、排気経路に付着するデポを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態における成膜装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、異なる表面積の多孔質部材による重合体の吸収量の一例を示す図である。
図3図3は、異なる表面積の多孔質部材による重合体の吸収量の一例を示す図である。
図4図4は、部材の温度とその部材に積層される重合体のデポジションレート(D/R)との関係の一例を示す図である。
図5図5は、部材の温度とその部材に積層された重合体のクリーニングレートとの関係の一例を示す図である。
図6図6は、成膜方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、成膜方法の他の例を示すフローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態における成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示される成膜装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される成膜装置が限定されるものではない。
【0009】
ところで、処理容器内に供給されたガスに含まれるモノマーは、全てが反応に寄与するわけではないため、反応に寄与しなかったモノマーは、処理容器内から排気される。しかし、排気される過程でモノマー同士の重合反応が起こり、排気経路に有機膜(以下、デポと記載する)が形成される場合がある。排気経路内に設けられている圧力調整バルブや排気ポンプ等にデポが形成されると、処理容器内を所定の圧力に維持することが困難になる。
【0010】
そのため、排気経路において重合反応が起こらないようにするために、排気経路全体を加熱することが考えられる。しかし、排気経路全体を加熱することは、加熱部材の配置による装置の大型化や、消費電力の増大を招く。また、排気経路に配置されたトラップを用いて排気ガスに含まれる未反応のモノマーを重合体の形で取り込む場合、トラップ内に生成された重合体を定期的に除去する必要がある。そのため、排気機構を定期的に停止させることになり、成膜装置のダウンタイムが長くなる。
【0011】
そこで、本開示は、排気経路に付着するデポを抑制することができる技術を提供する。
【0012】
(第1の実施形態)
[成膜装置10の構成]
図1は、第1の実施形態における成膜装置10の一例を示す概略断面図である。成膜装置10は、装置本体200と、装置本体200を制御する制御装置100とを備える。装置本体200は、処理容器209を有する。処理容器209は、下部容器201、排気ダクト202、支持構造体210、およびシャワーヘッド230を有する。処理容器209は、第1の容器の一例である。
【0013】
下部容器201は、例えばアルミニウム等の金属により形成されている。排気ダクト202は、下部容器201の上部の周縁に設けられている。また、排気ダクト202の上には、環状の絶縁部材204が配置されている。シャワーヘッド230は、下部容器201の上方に設けられており、絶縁部材204に支持されている。下部容器201の略中央には、基板Wを載置する支持構造体210が設けられている。以下では、下部容器201、排気ダクト202、支持構造体210、およびシャワーヘッド230で囲まれた処理容器209内の空間を処理空間SPと定義する。
【0014】
下部容器201の側壁には、基板Wの搬入および搬出を行うための開口部205が形成されている。開口部205は、ゲートバルブGによって開閉される。排気ダクト202は、縦断面が中空の角型形状であり、下部容器201の上部の周縁に沿って環状に延在している。排気ダクト202には、排気ダクト202の延在方向に沿ってスリット状の排気口203が形成されている。排気口203は、支持構造体210に載せられた基板Wの周縁に沿って、基板Wの領域の外側に配置され、処理空間SP内のガスを排気する。
【0015】
排気ダクト202には、排気管206の一端が接続されている。排気管206の他端は、APC(Auto Pressure Controller)バルブ等の圧力調整バルブ207を介して真空ポンプ等を有する排気装置208に接続されている。圧力調整バルブ207は、制御装置100によって制御され、処理空間SP内の圧力を予め設定された圧力に制御する。
【0016】
処理空間SP内には、多孔質部材250が設けられている。本実施形態において多孔質部材250は、鉛直方向において基板Wが配置される支持構造体210の領域の外側であって、下部容器201と排気ダクト202との間の支持構造体210上に配置されている。即ち、多孔質部材250は、ステージ211に載せられた基板Wの上方の空間である処理空間SPの外側に配置されている。多孔質部材250は、処理容器209内から排気される2種類のモノマーのガスによって形成される重合体を取り込む。なお、多孔質部材250は、下部容器201に載せられた基板Wの上方の処理空間SPの外側に配置されていれば、絶縁部材204の下面、または、排気ダクト202の処理空間SP側の側壁に配置されてもよい。
【0017】
多孔質部材250の下方の下部容器201内には、ヒータ251が埋め込まれている。ヒータ251は、制御装置100によって制御され、多孔質部材250を予め定められた温度に加熱する。予め定められた温度は、第1の温度の一例である。本実施形態において、予め定められた温度は、モノマーの吸着時間が例えば0.00001ミリ秒以上かつ0.01ミリ秒以下の範囲内の時間となる温度である。本実施形態において、予め定められた温度は、例えば130℃~170℃の範囲内の温度である。本実施形態において、モノマーは、例えばイソシアネートおよびアミンである。
【0018】
また、排気ダクト202の側壁およびシャワーヘッド230の上面にも図示しないヒータが設けられており、排気ダクト202およびシャワーヘッド230は、例えば200℃以上の温度となるように加熱される。これにより、排気ダクト202およびシャワーヘッド230への反応副生成物(いわゆるデポ)の付着を抑制することができる。なお、排気管206、圧力調整バルブ207、および排気装置208においても、ヒータが設けられ、デポが付着しにくい温度に加熱されてもよい。
【0019】
支持構造体210は、ステージ211および支持部212を有する。ステージ211は、例えばアルミニウム等の金属により構成され、上面に基板Wが載せられる。支持部212は、例えばアルミニウム等の金属により筒状に構成され、ステージ211を下方から支持する。
【0020】
ステージ211には、ヒータ214が埋め込まれている。ヒータ214は、供給された電力に応じてステージ211上に載せられた基板Wを加熱する。ヒータ214に供給される電力は、制御装置100によって制御される。
【0021】
また、ステージ211内には、冷媒が流通する流路215が形成されている。流路215には、配管216aおよび配管216bを介して、図示しないチラーユニットが接続されている。チラーユニットによって予め定められた温度に調整された冷媒が配管216aを介して流路215に供給され、流路215内を循環した冷媒が、配管216bを介してチラーユニットに戻される。流路215内を循環する冷媒によりステージ211が冷却される。チラーユニットは、制御装置100によって制御される。
【0022】
支持部212は、下部容器201の底部に形成された開口部を貫通するように下部容器201内に配置されている。支持部212は、昇降機構240の駆動により上下に昇降する。基板Wが搬入される際には、昇降機構240の駆動により支持構造体210が下降し、ゲートバルブGが開けられる。そして、開口部205を介して基板Wが下部容器201内に搬入され、ステージ211上に載せられる。そして、ゲートバルブGが閉じられ、昇降機構240の駆動により支持構造体210が上昇し、基板Wへの成膜処理が実行される。また、基板Wが搬出される際には、昇降機構240の駆動により支持構造体210が下降し、ゲートバルブGが開けられる。そして、開口部205を介してステージ211上から基板Wが搬出される。
【0023】
シャワーヘッド230は、拡散室231aおよび拡散室231bを有する。拡散室231aおよび拡散室231bは互いに連通していない。拡散室231aおよび拡散室231bには、ガス供給部220が接続されている。具体的には、拡散室231aには、配管225aを介して、バルブ224a、MFC(Mass Flow Controller)223a、気化器222a、および原料供給源221aが接続されている。原料供給源221aは、モノマーの一例であるイソシアネートの供給源である。気化器222aは、原料供給源221aから供給されたイソシアネートの液体を気化させる。MFC223aは、気化器222aによって気化されたイソシアネートの蒸気の流量を制御する。バルブ224aは、イソシアネートの蒸気の配管225aへの供給および供給停止を制御する。
【0024】
拡散室231bには、配管225bを介して、バルブ224b、MFC223b、気化器222b、および原料供給源221bが接続されている。原料供給源221bは、モノマーの一例であるアミンの供給源である。気化器222bは、原料供給源221bから供給されたアミンの液体を気化させる。MFC223bは、気化器222bによって気化されたアミンの蒸気の流量を制御する。バルブ224bは、アミンの蒸気の配管225bへの供給および供給停止を制御する。
【0025】
また、シャワーヘッド230には、配管225aおよび配管225bを介して、バルブ224c、MFC223c、および不活性ガス供給源221cが接続されている。不活性ガス供給源221cは、希ガスまたは窒素ガス等の不活性ガスの供給源である。MFC223cは、不活性ガス供給源221cから供給された不活性ガスの流量を制御する。バルブ224cは、不活性ガスの配管225aおよび配管225bへの供給および供給停止を制御する。
【0026】
また、シャワーヘッド230には、配管225aおよび配管225bを介して、バルブ224d、MFC223d、およびクリーニングガス供給源221dが接続されている。クリーニングガス供給源221dは、例えば酸素原子またはフッ素原子を含む分子を含有するクリーニングガスの供給源である。MFC223dは、クリーニングガス供給源221dから供給されたクリーニングガスの流量を制御する。バルブ224dは、クリーニングガスの配管225aおよび配管225bへの供給および供給停止を制御する。
【0027】
拡散室231aは、複数の吐出口232aを介して処理空間SPと連通しており、拡散室231bは、複数の吐出口232bを介して処理空間SPと連通している。配管225aを介して拡散室231a内に供給されたイソシアネートの蒸気は、拡散室231a内を拡散し、吐出口232aを介して処理空間SP内にシャワー状に吐出される。また、配管225bを介して拡散室231b内に供給されたアミンの蒸気、不活性ガス、およびクリーニングガスは、拡散室231b内を拡散し、吐出口232bを介して処理空間SP内にシャワー状に吐出される。イソシアネートおよびアミンの蒸気は、吐出口232aおよび吐出口232bを介して処理空間SP内に吐出された後、処理空間SP内において混合され、ステージ211に載せられた基板Wの表面に尿素結合を有する重合体の膜を形成する。
【0028】
シャワーヘッド230には、整合器261を介して、プラズマ発生用のRF(Radio Frequency)電力を供給するRF電源260が接続されている。シャワーヘッド230は、ステージ211に対してカソード電極として機能する。処理空間SP内のクリーニングにおいて、シャワーヘッド230を介してガス供給部220から処理空間SP内にクリーニングガスが供給され、整合器261を介してRF電源260から処理空間SP内にRF電力が供給される。これにより、処理空間SP内においてクリーニングガスがプラズマ化され、プラズマに含まれる活性種により、処理空間SP内のクリーニングが行われる。
【0029】
制御装置100は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを備える。メモリには、制御プログラムおよび処理レシピ等が格納される。プロセッサは、制御プログラムをメモリから読み出して実行し、メモリに格納されたレシピ等に基づいて、入出力インターフェイスを介して装置本体200の各部を制御する。
【0030】
[多孔質部材250の構造]
本実施形態における多孔質部材250は、約500cm3の体積を有し、開口の直径が約1μmの細孔が複数形成されている。多孔質部材250は、50,000,000cm2以上の表面積を有する。本実施形態において、多孔質部材250の表面積は、約60,000,000cm2である。
【0031】
図2および図3は、異なる表面積の多孔質部材250による重合体の吸収量の一例を示す図である。図2および図3の例では、平坦な表面を有する構造物の表面積を基準として、4倍の表面積を有する多孔質部材による重合体の吸収量と、20倍の表面積を有する多孔質部材による重合体の吸収量とが示されている。4倍の表面積を有する多孔質部材の表面には、開口部の直径および深さが40nm~150nmの凹部が多数形成されている。また、20倍の表面積を有する多孔質部材の表面には、開口部の直径および深さが80nm~2000nmの凹部が多数形成されている。図2および図3の例では、実験の対象となる多孔質部材がステージ211上に載せられ、ヒータ214によって温度調整が行われた。
【0032】
例えば図2および図3に示されるように、どの温度帯および圧力帯においても、20倍の表面積を有する多孔質部材による重合体の吸収量は、4倍の表面積を有する多孔質部材による重合体の吸収量の約5倍となっている。そのため、多孔質部材の表面積を増やすことにより、重合体の吸収量を増やすことが可能となる。
【0033】
[重合体のデポジションレート]
図4は、部材の温度とその部材に積層される重合体のデポジションレート(D/R)との関係の一例を示す図である。例えば図4に示されるように、部材の温度が低くなるに従い、原料分子の表面吸着時間が長くなり、分子同士の衝突確率が上がりD/Rが増加するようになる。一方、部材の温度が高くなるに従い、表面吸着時間が短くなり、部材表面での分子衝突確率によってD/Rが支配されるようになる。つまり、部材の温度が130℃以上の範囲では、分子の吸着時間が0.01ミリ秒以下となり、D/Rは部材の温度に依存せず、ガス濃度に依存するようになる。また、部材の温度が130℃以上の範囲では、分子の表面吸着時間が十分に短いため、多孔質部材の内部までガスが拡散し、ガスによって多孔質部材内に膜が均等に形成されることが想定できる。
【0034】
ここで、多孔質部材250の温度が低い場合、多孔質部材250に形成される重合体のD/Rが高いため、多孔質部材250の表面の細孔が重合体で早期に閉塞する。これにより、重合体が多孔質部材250の内部の細孔まで届かなくなり、結果的に、多孔質部材250に多くの重合体を取り込ませることが困難となる。そこで、本実施形態では、多孔質部材250をある程度の温度に加熱し、多孔質部材250に形成される重合体のD/Rを低下させる。これにより、多孔質部材250の表面の細孔が重合体によって閉塞することなく、重合体が多孔質部材250の内部の細孔まで届くようになり、重合体が多孔質部材250全体に取り込まれる。従って、多孔質部材250による重合体の吸収能力を向上させることができ、重合体を多孔質部材250に効率よく取り込ませることができる。
【0035】
ただし、多孔質部材250の温度が高すぎると、多孔質部材250の表面において重合反応が起こらなくなり、重合体が多孔質部材250に取り込まれなくなる。そのため、多孔質部材250の温度は、多孔質部材250の表面で重合反応が起こる温度の範囲において、解重合反応が過度に起こらない温度であることが好ましい。
【0036】
図4を参照すると、温度が高くなるに従って重合体のD/Rが低下し、約130℃付近でD/Rの低下が緩やかになっている。そして、170℃付近までD/Rがほとんど変化せず、200℃付近でD/Rが再び低下している。そのため、本実施形態では、多孔質部材250の温度は、130℃~170℃であることが好ましい。これにより、重合体を多孔質部材250に効率よく取り込ませることができる。
【0037】
[多孔質部材250に取り込まれた重合体の除去]
図5は、部材の温度とその部材に積層された重合体のクリーニングレートとの関係の一例を示す図である。図5において、実験1では、酸素ガスを用いたプラズマを用いてクリーニングが行われ、実験2では、NF3ガスを用いたプラズマを用いてクリーニングが行われた。また、実験3では、重合体が積層された部材が酸素ガスに晒され、実験4では、重合体が積層された部材がフッ素ガスに晒され、実験5では、重合体が積層された部材がオゾンガスに晒された。実験3~5では、プラズマは用いられていない。
【0038】
図5を参照すると、実験1および2では、重合体が積層された部材の温度が100℃~200℃の範囲において、10~1000nm/minのクリーニングレートが得られている。実験1および2を比較すると、酸素ガスを用いたプラズマの方が、NF3ガスを用いたプラズマよりもクリーニングレートが高かった。
【0039】
また、実験3では、重合体が積層された部材の温度を400℃以上に加熱しないと、重合体のクリーニングレートが得られなかった。一方、実験4および5では、重合体が積層された部材の温度が100℃~200℃程度であっても、ある程度のクリーニングレートが得られた。従って、プラズマを用いない場合には、フッ素ガスやオゾンガスのように酸素ガスよりも反応性の高いガスを用いることが好ましい。なお、いずれの実験結果においても、重合体が積層された部材の温度を高くすることにより、クリーニングレートが向上する傾向が見られた。
【0040】
[成膜方法]
図6は、成膜方法の一例を示すフローチャートである。図6に例示された各処理は、制御装置100が装置本体200の各部を制御することにより実現される。
【0041】
まず、処理容器209内に基板が搬入される(S10)。ステップS10では、昇降機構240の駆動により支持構造体210が下降し、ゲートバルブGが開けられる。そして、開口部205を介して基板Wが下部容器201内に搬入され、ステージ211上に載せられる。そして、ゲートバルブGが閉じられ、昇降機構240の駆動により支持構造体210が上昇する。
【0042】
次に、基板Wに対して成膜処理が実施される(S11)。ステップS11では、ヒータ214によって、ステージ211上の基板Wが予め定められた温度に加熱される。また、ヒータ251によって、多孔質部材250が予め定められた温度に加熱される。そして、ガス供給部220からシャワーヘッド230を介して処理空間SP内に窒素ガス等の不活性ガスが供給される。そして、排気口203を介して排気装置208によって処理空間SP内のガスが排気される。そして、ガス供給部220からシャワーヘッド230を介して処理空間SP内にイソシアネートおよびアミンのガスがさらに供給され、圧力調整バルブ207によって処理空間SP内の圧力が予め定められた圧力に調整される。これにより、ステージ211上の基板Wの表面に、尿素結合を有する重合体の膜が形成される。
【0043】
この際、成膜に寄与しなかったイソシアネートおよびアミンのガスは、多孔質部材250に取り込まれ、多孔質部材250内に重合体を形成する。これにより、成膜に寄与しなかったイソシアネートおよびアミンのガスは、ほとんど排気管206へは流れず、圧力調整バルブ207や排気装置208に形成される重合体のデポが抑制される。
【0044】
ステップS11における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
基板Wの温度:80[℃]
多孔質部材250の温度:150[℃]
処理容器209内の圧力:1[Torr]
イソシアネートのガス:10[sccm]
アミンのガス:10[sccm]
不活性ガス(N2ガス):200[sccm]
成膜時間:120[秒]
【0045】
そして、基板W上に予め定められた厚さの重合体の膜が形成された場合、成膜処理が停止され、処理容器209内から基板が搬出される(S12)。ステップS10では、昇降機構240の駆動により支持構造体210が下降し、ゲートバルブGが開けられる。そして、開口部205を介してステージ211上から基板Wが搬出される。
【0046】
次に、処理容器209内をクリーニングする第1のクリーニングが実行される(S13)。ステップS13では、シャワーヘッド230を介してガス供給部220から処理空間SP内にクリーニングガスが供給され、圧力調整バルブ207によって処理空間SP内の圧力が予め定められた圧力に調整される。そして、整合器261を介してRF電源260から処理空間SP内にRF電力が供給される。これにより、処理空間SP内においてクリーニングガスがプラズマ化され、プラズマに含まれる活性種により、シャワーヘッド230および絶縁部材204の下面、排気ダクト202の側壁、およびステージ211の上面等に付着した重合体がクリーニングされる。クリーニングでは、プラズマに含まれる活性種により、シャワーヘッド230の下面等に付着した重合体が分解され、デポ性のない物質となって排気ダクト202および排気管206を介して排気される。
【0047】
この際、プラズマに含まれる活性種により、多孔質部材250の表面や細孔内に形成された重合体も分解され、デポ性のない物質となって排気ダクト202および排気管206を介して排気される。クリーニングにより、多孔質部材250に取り込まれていた重合体が除去されると、多孔質部材250による重合体の取り込み能力が復活する。そのため、処理容器209を大気開放して多孔質部材250を処理容器209内から取り出し、多孔質部材250に付着している重合体を除去したり、重合体が付着していない多孔質部材250と交換する必要がない。これにより、成膜装置10のダウンタイムを短くすることができ、成膜処理のスループットを向上させることができる。
【0048】
ステップS13における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
多孔質部材250の温度:150[℃]
処理容器209内の圧力:5[Torr]
クリーニングガス(O2ガス):1000[sccm]
クリーニング時間:10[秒]
【0049】
次に、制御装置100は、基板Wの処理を終了するか否かを判定する(S14)。制御装置100が基板の処理を終了しないと判定した場合(S14:No)、再びステップS10に示された処理が実行される。一方、制御装置100が基板の処理を終了すると判定した場合(S14:Yes)、本フローチャートに示された処理が終了する。
【0050】
以上、第1の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における成膜装置10は、ステージ211と、処理容器209と、ガス供給部220と、多孔質部材250と、ヒータ251とを備える。ステージ211には、基板Wが載せられる。処理容器209は、ステージ211を収容する。ガス供給部220は、処理容器209内に2種類のモノマーのガスを供給することにより、ステージ211上に載せられた基板W上に重合体の膜を形成する。多孔質部材250は、基板Wの上方の空間である処理空間SPの外側に配置され、処理容器209内から排気される2種類のモノマーのガスによって形成される重合体を取り込む。ヒータ251は、基板W上に重合体の膜が形成される際に、多孔質部材250を第1の温度に加熱する。これにより、排気経路に付着するデポを抑制することができる。
【0051】
また、上記した実施形態において、多孔質部材250は、処理容器209内のステージ211と、処理容器209に形成された排気口203との間に設けられている。これにより、多孔質部材250は、処理容器209内から排気される2種類のモノマーのガスによって形成される重合体を効率よく取り込むことができる。
【0052】
また、上記した実施形態における成膜装置10は、RF電源260をさらに備える。ガス供給部220は、ステージ211上に基板Wが載せられていないときに処理容器209内にクリーニングガスを供給する。RF電源260は、ステージ211上に基板Wが載せられていないときに処理容器209内にRF電力を供給することによりクリーニングガスをプラズマ化し、プラズマに含まれる活性種により多孔質部材250に取り込まれた重合体の膜を除去する。これにより、多孔質部材250に取り込まれた重合体の膜を効率よく除去することができる。
【0053】
また、上記した実施形態において、クリーニングガスは、酸素原子またはフッ素原子を含む分子を有するガスである。これにより、多孔質部材250に取り込まれた重合体の膜を効率よく除去することができる。
【0054】
また、上記した実施形態において、成膜処理の間は、多孔質部材250は、モノマーの吸着時間が例えば0.00001ミリ秒以上かつ0.01ミリ秒以下の範囲内の時間となる温度に加熱される。例えば、成膜処理の間は、多孔質部材250の温度が130℃~170℃の範囲内の温度となるように多孔質部材250が加熱される。これにより、多孔質部材250の表面の細孔が重合体で閉塞することなく、重合体が多孔質部材250の内部の細孔まで届くようになり、重合体が多孔質部材250全体に取り込まれる。従って、多孔質部材250による重合体の吸収能力を向上させることができ、重合体を多孔質部材250に効率よく取り込ませることができる。
【0055】
また、上記した実施形態において、多孔質部材250の表面積は、50,000,000cm2以上である。これにより、1つの基板Wに対して重合体の膜を形成する間、多孔質部材250による重合体の取り込み効果が飽和することなく、継続的に重合体を取り込むことができる。そのため、排気経路に付着するデポを抑制することができる。
【0056】
また、上記した実施形態において、ガス供給部220は、処理容器209内に2種類のモノマーのガスとして、アミンのガスおよびイソシアネートのガスを供給することにより、ステージ211上に載せられた基板W上に尿素結合を有する重合体の膜を形成する。成膜処理中において、排気ガスには、基板W上での重合体の膜の形成に寄与しなかった2種類のモノマーが含まれる。このモノマーが多孔質部材250に取り込まれることにより、排気経路に付着するデポを抑制することができる。
【0057】
なお、クリーニングにおいて多孔質部材250の細孔に取り込まれた重合体を十分に除去するためには、クリーニングを長時間実行する必要がある。しかし、1つの基板Wに対する成膜処理が終了する都度、長時間のクリーニングが実行されると、複数のWに対する成膜処理全体のスループットの向上が困難となる。そのため、1つの基板Wに対する成膜処理が終了した場合、1つの基板Wに対する成膜処理の間、多孔質部材250による重合体の取り込み効果が飽和しない程度まで多孔質部材250の細孔に取り込まれた重合体を除去する短時間のクリーニングが行われてもよい。
【0058】
しかし、その場合、多孔質部材250の細孔内には、除去しきれなかった重合体が累積することになる。そこで、例えば図7に示されるように、複数の基板Wに対する成膜処理が終了する都度、多孔質部材250の細孔に取り込まれた重合体を十分に除去する長時間のクリーニングが実行されることが好ましい。図7は、成膜方法の他の例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する点を除き、図7において、図6と同じ符号が付された処理は、図6において説明された処理と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0059】
ステップS12において基板Wが搬出された後、処理容器209内をクリーニングする第1のクリーニングが実行される(S20)。ステップS20におけるクリーニング時間は、1つの基板Wに対する成膜処理の間、多孔質部材250による重合体の取り込み効果が飽和しない程度まで多孔質部材250の細孔に取り込まれた重合体を除去するのに要する時間であり、例えば10秒である。なお、ステップS20におけるクリーニング時間以外の条件は、図6におけるステップS13の条件と同様である。
【0060】
次に、制御装置100は、予め定められた数の基板Wに対する成膜処理が終了したか否かを判定する(S21)。制御装置100が予め定められた数の基板Wに対する成膜処理が終了していないと判定した場合(S21:No)、再びステップS10に示された処理が実行される。
【0061】
一方、制御装置100が予め定められた数の基板Wに対する成膜処理が終了したと判定した場合(S21:Yes)、第2のクリーニングが実行される(S22)。ステップS22におけるクリーニング時間は、ステップS20におけるクリーニング時間より長い。ステップS22におけるクリーニング時間は、多孔質部材250の細孔に取り込まれた重合体を十分に除去するのに要する時間であり、例えば600秒である。なお、ステップS22におけるクリーニング時間以外の条件は、図6におけるステップS13の条件と同様である。そして、ステップS14に示された処理が実行される。これにより、複数のWに対する成膜処理全体のスループットの向上が可能となる。
【0062】
(第2の実施形態)
上記した実施形態では、多孔質部材250が処理容器209内に設けられた。しかし、開示の技術はこれに限られず、多孔質部材250は、例えば図8に示されるように、排気管206内に設けられてもよい。図8は、第2の実施形態における成膜装置10の一例を示す概略断面図である。なお、以下に説明する点を除き、図8において、図1と同じ符号を付した構成は、図1における構成と同一または同様の機能を有するため説明を省略する。
【0063】
本実施形態において、排気管206の側壁には、多孔質部材250およびヒータ251が設けられている。ヒータ251は、基板Wに対する成膜処理が実行されている間、モノマーの吸着時間が例えば0.00001ミリ秒以上かつ0.01ミリ秒以下の範囲内の時間となる温度となるように多孔質部材250を加熱する。例えば、ヒータ251は、多孔質部材250を130℃~170℃の範囲内の温度に加熱する。
【0064】
処理容器209内から排気されたガスは、排気管206を流れ、多孔質部材250を通過する。その際、排気ガスに含まれるモノマーにより形成される重合体の膜が多孔質部材250の細孔に取り込まれる。これにより、多孔質部材250が配置された排気管206より下流に重合体の膜が形成されることが抑制される。
【0065】
多孔質部材250が設けられた排気管206の部分と圧力調整バルブ207との間の排気管206には、配管を介してプラズマ生成室272が接続されている。当該配管には、バルブ273が設けられている。プラズマ生成室272は、第2の容器の一例である。プラズマ生成室272には、整合器271を介してRF電源270が電気的に接続されている。また、プラズマ生成室272には、配管を介してクリーニングガス供給源221dが接続されている。この配管には、MFC223eおよびバルブ224eが設けられている。
【0066】
本実施形態では、処理容器209内のクリーニングと、排気管206内に設けられた多孔質部材250のクリーニングとは、互いに独立して実行される。排気管206内に設けられた多孔質部材250のクリーニングが実行される場合、バルブ224eおよびバルブ273が開けられ、MFC223eの制御により、プラズマ生成室272内に予め定められた流量のクリーニングガスが供給される。そして、バルブ273の制御により、プラズマ生成室272内の圧力が調整される。そして、整合器271を介してRF電源270からRF電力がプラズマ生成室272内に供給される。これにより、プラズマ生成室272内のクリーニングガスがプラズマ化され、プラズマに含まれる活性種が、バルブ273を介して排気管206内の多孔質部材250に供給される。
【0067】
排気管206内の多孔質部材250のクリーニングにおける主な処理条件は、例えば以下の通りである。
多孔質部材250の温度:150[℃]
プラズマ生成室272内の圧力:5[Torr]
クリーニングガス(O2ガス):1000[sccm]
クリーニング時間:10[秒]
【0068】
これにより、プラズマに含まれる活性種によって多孔質部材250の表面や細孔内に形成された重合体が分解され、デポ性のない物質となって多孔質部材250が配置された排気管206より下流に排出される。従って、本実施形態においても、排気経路に付着するデポを抑制することができる。
【0069】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0070】
例えば、上記した各実施形態において、ヒータ251は、基板Wの成膜処理時および多孔質部材250のクリーニング時の両方において、多孔質部材250を同じ温度に加熱する。しかし、開示の技術はこれに限られない。例えば、ヒータ251は、基板Wの成膜処理時には、多孔質部材250を第1の温度に加熱し、多孔質部材250のクリーニング時には、多孔質部材250を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱してもよい。第1の温度は、モノマーの吸着時間が例えば0.00001ミリ秒以上かつ0.01ミリ秒以下の範囲内の時間となる温度であり、例えば130℃~170℃の範囲内の温度である。また、第2の温度は、例えば300℃以上の温度である。
【0071】
多孔質部材250のクリーニング時に、多孔質部材250を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することにより、多孔質部材250の細孔内に形成された重合体の解重合が促され、モノマーが多孔質部材250の外部に出やすくなる。これにより、プラズマに含まれる活性種とモノマーとがより効率よく反応することができ、多孔質部材250のクリーニングを効率よく行うことができる。
【0072】
また、上記した各実施形態では、プラズマを用いて多孔質部材250のクリーニングが行われるが、開示の技術はこれに限られない。例えば図5に例示されたフッ素ガスを用いた実験4、および、オゾンガスを用いた実験5においても、多孔質部材250のクリーニングが可能である。そのため、プラズマを用いない場合であっても、フッ素ガスやオゾンガスのように酸素ガスよりも反応性の高いガスを用いることにより、多孔質部材250のクリーニングが行われてもよい。
【0073】
また、上記した第1の実施形態では、多孔質部材250が処理容器209内に設けられ、上記した第2の実施形態では、多孔質部材250が排気管206内に設けられた。しかし、開示の技術はこれに限られず、多孔質部材250は、処理容器209内および排気管206内の両方に設けられてもよい。即ち、第1の実施形態と第2の実施形態とは組み合わせられてもよい。
【0074】
また、上記した実施形態では、2種類のモノマーの重合により形成される重合体の一例として尿素結合を有する重合体が用いられたが、2種類のモノマーの重合により形成される重合体としては、尿素結合以外の結合を有する重合体が用いられてもよい。尿素結合以外の結合を有する重合体としては、例えばウレタン結合を有するポリウレタン等が挙げられる。ポリウレタンは、例えばアルコール基を有するモノマーとイソシアネート基を有するモノマーとを共重合させることにより合成することができる。また、ポリウレタンは、予め定められた温度に加熱されることにより、アルコール基を有するモノマーとイソシアネート基を有するモノマーとに解重合する。
【0075】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
G ゲートバルブ
P 処理空間
W 基板
10 成膜装置
100 制御装置
200 装置本体
201 下部容器
202 排気ダクト
203 排気口
204 絶縁部材
205 開口部
206 排気管
207 圧力調整バルブ
208 排気装置
209 処理容器
210 支持構造体
211 ステージ
212 支持部
214 ヒータ
215 流路
216 配管
220 ガス供給部
221a 原料供給源
221b 原料供給源
221c 不活性ガス供給源
221d クリーニングガス供給源
222 気化器
223 MFC
224 バルブ
225 配管
230 シャワーヘッド
231 拡散室
232 吐出口
240 昇降機構
250 多孔質部材
251 ヒータ
260 RF電源
261 整合器
270 RF電源
271 整合器
272 プラズマ生成室
273 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8